(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バラストタンクを備える船舶としては、荷油を運搬する例えばタンカー等の船舶があり、特に、このような船舶において、荷油を積載する荷油槽側と荷油を積載しない船尾側とに各々バラストタンクを設ける場合がある。この場合、荷油槽側の設備等には、万一荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスがバラスト水に混入した場合に備え、所定の防爆措置が施されている。一方、荷油槽から離間した船尾側のバラストタンクやライン等には、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスがバラスト水に混入し難いため、防爆措置は施されていない。
【0005】
ところで、このような船舶にバラスト水処理システムを設けようとした場合、防爆措置の施されていない船尾側のラインに、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽側のバラスト水が流通するラインを接続することは好ましくない。そこで、荷油槽側のバラスト水と船尾側のバラスト水との両方に対し別個のバラスト水処理システムを設けようとすると、装置の構成が重複化及び複雑化し、船舶の製造コストが上昇してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、簡素な構成で、製造コストの上昇を抑制できるバラスト水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるバラスト水処理システムは、荷油を運搬する船舶の荷油槽側に設けられバラスト水が貯留される第1のバラストタンクと、船舶の船尾側に設けられバラスト水が貯留される第2のバラストタンクと、バラスト水中の海洋生物を除去又は死滅させるバラスト水処理部と、第1のバラストタンクとバラスト水処理部とを結び、バラスト水が流通可能な第1のラインと、第2のバラストタンクとバラスト水処理部とを結び、バラスト水が流通可能な第2のラインと、第1のラインが開のときに第2のラインを閉とし、第2のラインが開のときに第1のラインを閉とすることが可能な流路切換部と、を有することを特徴としている。
【0008】
このようなバラスト水処理システムよれば、流路切換部によって、荷油槽側に設けられた第1のバラストタンクとバラスト水処理部とを結ぶ第1のラインと、船尾側に設けられた第2のバラストタンクとバラスト水処理部とを結ぶ第2のラインと、が同時に開となることを防止できる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽側のバラスト水が、防爆措置の施されていない第2のラインを流通してしまうことを抑制できる。従って、荷油槽側のバラスト水と船尾側のバラスト水との両方に対し、別個のバラスト水処理システムを設ける必要がなく、一つのバラスト水処理システムで処理することが可能となる。よって、簡素な構成で、製造コストの上昇を抑制できる。
【0009】
ここで、バラスト水処理システムは、流路切換部による第1のライン及び第2のラインの開閉を制御する制御部を更に備え、制御部は、流路切換部を制御して、第1のラインが開のときに第2のラインを閉とし、第2のラインが開のときに第1のラインを閉としてもよい。この場合、制御部によって流路切換部の動作を制御できるため、流路切換部を手動で操作する必要がない。このため、流路切換部を容易且つ確実に動作させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で、製造コストの上昇を抑制できるバラスト水処理システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による船舶の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るバラスト水処理システムが適用される船舶を示す概略側面図、
図2は、
図1に示す船舶の概略平面図、
図3は、
図2におけるIII-III線断面図である。船舶は、荷油を運搬する船舶であって、一例として、ここではタンカーであるとする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、この船舶100にあっては、船体内の船尾側(
図1及び
図2の左側)に機関室1が設けられ、この機関室1より船首側(
図1及び
図2の右側)に第1の隔壁4を隔ててポンプ室2が設けられ、このポンプ室2より船首側に第2の隔壁5を隔てて荷油槽3が複数設けられる。また、船舶100における荷油槽3側には第1のバラストタンク6が複数設けられ、機関室1より船尾側には第2のバラストタンク7が設けられる。これら機関室1、ポンプ室2、荷油槽3の天井面は上甲板10で構成され、床面側は、
図1〜
図3に示すように、船体の外殻を形成する船底外板11と、この船底外板11の船体内側に設けられた内底板12とによって2重船底構造とされている。また、第1の隔壁4及び第2の隔壁5は、船幅方向(
図2の上下方向)に延びると共に、船底外板11から上甲板10まで延びるように設けられている。
【0014】
機関室1には、メインエンジン等の機器が配設されている。メインエンジンは、機関室1内で最も大きな機器であって推進力を発生するプロペラを駆動するものである。なお、機関室1の上方には、居住区や操舵室が設けられる。また、機関室1には第2のバラストポンプ21が設けられている(
図4参照)。
【0015】
ポンプ室2には、海水を圧送する第1のバラストポンプ20(
図4参照)と、荷油を圧送する荷油ポンプ(不図示)と、が設けられている。荷油ポンプは、荷油槽3内の荷油を吸い込み、陸上施設の接続口となる上甲板10上のマニホールドに送り出し、陸上施設への荷揚げを行う。
【0016】
荷油槽3には、船舶100によって運搬される原油、精製油等の荷油が貯留される。荷油槽3は、船体内側を、例えば船幅方向に2つに分割すると共に船長方向に7つに分割することで合計14の区画に分けられている。荷油槽3に貯留される荷油によっては、可燃性ガスが揮発する場合がある。
【0017】
第1のバラストタンク6は、荷油槽3側に設けられ、バラスト水が収容されるタンクである。具体的には、第1のバラストタンク6は、荷油槽3を下側及び船幅方向両側から囲って、船底外板11と内底板12との間に設けられている。従って、第1のバラストタンク6には、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが荷油槽3から混入するという可能性がある。そこで、荷油槽3側の設備等は、防爆措置が施されている。
【0018】
第2のバラストタンク7は、船尾側に設けられ、バラスト水が収容されるタンクである。具体的には、第2のバラストタンク7は、機関室1よりも船尾側の上下方向中央付近に設けられている。従って、第2のバラストタンク7は、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが荷油槽3から混入し難い。このため、荷油槽3側の設備等は、防爆措置は施されていない。
【0019】
第1及び第2のバラストタンク6,7は、船舶100に積載された荷油の重量に応じた量のバラスト水を収容した状態とされる。第1及び第2のバラストタンク6,7は、荷油の重量が小さい場合には、各々第1及び第2のバラストポンプ20,21(
図4参照)で海水(バラスト水)を吸い上げ、収容されているバラスト水を増加させる。一方、積載された荷油の重量が大きい場合には、バラスト水を海に排出し、収容されているバラスト水を減少させる。これにより、荷油及びバラスト水を含んだ船舶100全体としての重量は、船舶100の安定性を確保できると共に十分な喫水を確保できる重量となるように調節される。
【0020】
図4は、本発明の実施形態に係るバラスト水処理システムを示す概略側面図である。
図4に示すように、バラスト水処理システム30は、上述した第1及び第2のバラストタンク6,7と、第1及び第2のバラストポンプ20,21と、に加えて、バラスト水を処理するバラスト水処理部22と、バラスト水の給排水口である第1及び第2のシーチェスト23,24と、バラスト水が流通可能なラインL1〜L14と、ラインL1〜L14の流路を切り替えるバルブV1〜V4(流路切換部)と、バルブV1〜V4を制御する制御部25と、を備えている。
【0021】
バラスト水処理部22は、バラスト水中の海洋生物を除去又は死滅させる装置である。バラスト水処理部22は、荷油槽3の上甲板10上に配置されている。なお、バラスト水処理部22は、荷油槽3の上甲板10上に代えて、ポンプ室2の内部に装備されていてもよい。バラスト水処理部22としては、例えばバラスト水に通電することでバラスト水を処理する方式、バラスト水に薬剤を注入する方式等、種々の方式を用いることができる。バラスト水処理部22は、第1及び第2のバラストタンク6,7に収容されるバラスト水を処理する。また、バラスト水処理部22は、海水を海からバラストタンクへ注入する前、及び、バラストタンクから海へ排出する前においてバラスト水を処理する。なお、バラスト水処理部22は、海水を海からバラストタンクへ注入する前のみ、或いは、バラストタンクから海へ排出する前のみにおいてバラスト水を処理してもよい。
【0022】
第1のシーチェスト23は、ポンプ室2の下方に設けられた開口であり、小径の孔(例えば直径8mmの円形の孔)が多数形成されたストレーナーを装備している。フィルターで覆われている。第2のシーチェスト24は、機関室1の船底付近に設けられた開口であり、小径の孔(例えば直径8mmの円形の孔)が多数形成されたストレーナーを装備している。
【0023】
第1のシーチェスト23には、ラインL1が接続されている。ラインL1には、第1のシーチェスト23とは反対側において、分岐点D1を介してラインL2及びラインL9が接続されている。ラインL2には、分岐点D1とは反対側において、第1のバラストポンプ20が接続されている。第1のバラストポンプ20には、ラインL2の他に、ラインL3及びラインL8が接続されており、ラインL2からラインL3へのバラスト水の圧送、及び、ラインL8からラインL3へのバラスト水の圧送が可能である。ラインL3には、第1のバラストポンプ20とは反対側において、分岐点D2を介してラインL4及びラインL12が接続されている。ラインL4には、分岐点D2とは反対側において、バラスト水処理部22が接続されている。バラスト水処理部22には、ラインL4の他に、ラインL5が接続されており、ラインL4からのバラスト水を処理してラインL5へ送り出すことが可能である。ラインL5には、バラスト水処理部22とは反対側において、分岐点D3を介してラインL6及びラインL13が接続されている。ラインL6には、分岐点D3とは反対側において、分岐点D4を介してラインL7及び上記ラインL9が接続されている。ラインL7には、分岐点D4とは反対側において、第1のバラストタンク6が接続されている。第1のバラストタンク6には、ラインL7の他に、上記ラインL8が接続されており、ラインL7からバラスト水を注入可能、且つ、ラインL8へバラスト水を排出可能である。
【0024】
第2のシーチェスト24には、ラインL10が接続されている。ラインL10には、第2のシーチェスト24とは反対側において、分岐点D5を介してラインL11及びラインL14が接続されている。ラインL11には、分岐点D5とは反対側において、第2のバラストポンプ21が接続されている。第2のバラストポンプ21には、ラインL11の他に、上記ラインL12が接続されており、ラインL11からラインL12へのバラスト水の圧送が可能である。上述したラインL13には、分岐点D3とは反対側において、第2のバラストタンク7が接続されている。第2のバラストタンク7には、ラインL13の他に、上記ラインL14が接続されており、ラインL13からバラスト水を注入可能、且つ、ラインL14へバラスト水を排出可能である。
【0025】
ラインL12には、ラインL12を開閉してバラスト水の流通を許可/禁止するバルブV1が設けられている。ラインL3には、ラインL3を開閉してバラスト水の流通を許可/禁止するバルブV2が設けられている。ラインL13には、ラインL13を開閉してバラスト水の流通を許可/禁止するバルブV3が設けられている。ラインL6には、ラインL6を開閉してバラスト水の流通を許可/禁止するバルブV4が設けられている。
【0026】
制御部25は、バルブV1,V2,V3及びV4に接続されてバルブV1,V2,V3及びV4の開閉を制御可能である。
【0027】
続いて、本実施形態に係るバラスト水処理システム30の動作を説明する。
【0028】
まず、バラスト水をバラスト水処理部22にて処理してから第1のバラストタンク6へ注入する場合におけるバラスト水処理システム30の動作を説明する。この場合、制御部25によってバルブV2及びV4が開とされ、バルブV1及びV3が閉とされる。第1のバラストポンプ20が駆動すると、バラスト水は、第1のシーチェスト23からラインL1,L2の順に流れ、第1のバラストポンプ20によって圧送されてラインL3,L4の順に流れ、バラスト水処理部22によって処理された後、ラインL5,L6,L7の順に流れて第1のバラストタンク6に注入される。
【0029】
このとき、第1のバラストタンク6とバラスト水処理部22とを結ぶラインL7,L6,L5(第1のライン)が開とされ、第2のバラストタンク7とバラスト水処理部22とを結ぶラインL13(第2のライン)が閉とされる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽3側の第1のラインと、防爆措置の施されていない船尾側の第2のラインと、が互いに連通することがない。
【0030】
次に、バラスト水をバラスト水処理部22にて処理してから第1のバラストタンク6から排出する場合におけるバラスト水処理システム30の動作を説明する。この場合、制御部25によってバルブV2及びV4が開とされ、バルブV1及びV3が閉とされる。第1のバラストポンプ20が駆動すると、バラスト水は、第1のバラストタンク6からラインL8を流れ、第1のバラストポンプ20によって圧送されてラインL3,L4の順に流れ、バラスト水処理部22によって処理された後、ラインL5,L6,L9,L1の順に流れて第1のシーチェスト23から排出される。
【0031】
このとき、第1のバラストタンク6とバラスト水処理部22とを結ぶラインL8,L3,L4(第1のライン)が開とされ、第2のバラストタンク7とバラスト水処理部22とを結ぶラインL14,L11,L12(第2のライン)が閉とされる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽3側の第1のラインと、防爆措置の施されていない船尾側の第2のラインと、が互いに連通することがない。
【0032】
次に、バラスト水をバラスト水処理部22にて処理してから第2のバラストタンク7へ注入する場合におけるバラスト水処理システム30の動作を説明する。この場合、制御部25によってバルブV1及びV3が開とされ、バルブV2及びV4が閉とされる。第2のバラストポンプ21が駆動すると、バラスト水は、第2のシーチェスト24からラインL10,L11の順に流れ、第2のバラストポンプ21によって圧送されてラインL12,L4の順に流れ、バラスト水処理部22によって処理された後、ラインL5,L13の順に流れて第2のバラストタンク7に注入される。
【0033】
このとき、第1のバラストタンク6とバラスト水処理部22とを結ぶラインL7,L6(第1のライン)が閉とされ、第2のバラストタンク7とバラスト水処理部22とを結ぶラインL13,L5(第2のライン)が開とされる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽3側の第1のラインと、防爆措置の施されていない船尾側の第2のラインと、が互いに連通することがない。
【0034】
次に、バラスト水をバラスト水処理部22にて処理してから第2のバラストタンク7から排出する場合におけるバラスト水処理システム30の動作を説明する。この場合、制御部25によってバルブV1及びV4が開とされ、バルブV2及びV3が閉とされる。第2のバラストポンプ21が駆動すると、バラスト水は、第2のバラストタンク7からラインL14,L11を流れ、第2のバラストポンプ21によって圧送されてラインL12,L4の順に流れ、バラスト水処理部22によって処理された後、ラインL5,L6,L9,L1の順に流れて第1のシーチェスト23から排出される。
【0035】
このとき、第1のバラストタンク6とバラスト水処理部22とを結ぶラインL8,L7,L3(第1のライン)が閉とされ、第2のバラストタンク7とバラスト水処理部22とを結ぶラインL14,L11,L12,L4(第2のライン)が開とされる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽3側の第1のラインと、防爆措置の施されていない船尾側の第2のラインと、が互いに連通することがない。
【0036】
このように、本実施形態のバラスト水処理システム30によれば、バルブV1,V2,V3及びV4によって、荷油槽3側に設けられた第1のバラストタンク6とバラスト水処理部22とを結ぶ第1のラインと、船尾側に設けられた第2のバラストタンク7とバラスト水処理部22とを結ぶ第2のラインと、が同時に開となることを防止できる。このため、荷油或いは荷油から揮発した可燃性ガスが混入し得る荷油槽3側のバラスト水が、防爆措置の施されていない第2のラインを流通してしまうことを抑制できる。従って、荷油槽3側のバラスト水と船尾側のバラスト水との両方に対し、別個のバラスト水処理システムを設ける必要がなく、一つのバラスト水処理システム30で処理することが可能となる。よって、簡素な構成で、製造コストの上昇を抑制できる。
【0037】
また、バラスト水処理システム30は、バルブV1,V2,V3及びV4による第1のライン及び第2のラインの開閉を制御する制御部25を更に備え、制御部25は、バルブV1,V2,V3及びV4を制御して、第1のラインが開のときに第2のラインを閉とし、第2のラインが開のときに第1のラインを閉とする。この場合、制御部25によってバルブV1,V2,V3及びV4の動作を制御できるため、バルブV1,V2,V3及びV4を手動で操作する必要がない。このため、バルブV1,V2,V3及びV4を容易且つ確実に動作させることが可能となる。
【0038】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、バラスト水処理システム30は、制御部25を設けずに、バルブV1,V2,V3及びV4の開閉を手動で行ってもよい。