【課題を解決するための手段】
【0004】
本方法は、後処理ユニット内でシート束を留めるための方法であって:
a)シート束を形成する工程;
b)ワイヤ源から弾塑性変形可能なワイヤを提供する工程;
c)留め部材の種類をクリップ部材形式(clip element type)及びステープル部材形式(staple element type)のうちの1つから選択する工程;
d)前記工程c)で選択された留め部材の種類の留め部材を形成するためのワイヤ変形プログラムを決定する工程;
e)前記ワイヤ変形プログラムに従って、前記ワイヤを前記ワイヤ沿いのいくつかの位置で屈曲させ、前記ワイヤを切断することにより前記留め部材を形成する工程;及び
f)形成された前記留め部材を前記シート束に適用して前記シート束を留める工程;を含む。
【0005】
工程a)ではシート束が形成される。シート束の属性を工程a)の後で求めてもよい。シート束のそのような属性としては、例えばシート束の厚さ、シート束の位置、シート束の面積等が挙げられる。
【0006】
前記属性は測定してもよいし、予測してもよいし(例えば、シート束内の所定数のシートに基づいて予測する)又は他の方法で求めてもよい。
【0007】
工程b)では、ワイヤ源からワイヤが提供される。ワイヤは弾塑性変形可能(plastically-elastically deformable)である。ワイヤは金属ワイヤ、プラスチックワイヤ又は弾塑性変形可能な任意の他の材料で構成されるものであり得る。ワイヤは、圧力及び熱のうちの少なくとも一方を加えることにより弾塑性変形可能であり得る。ワイヤ源は容器に密閉されたワイヤであってもよいし、リール上に設けられたワイヤロールであってもよいし又は他の方法で提供してもよい。
【0008】
工程c)では、留め部材の種類がクリップ部材形式及びステープル部材形式のうちの1つから選択される。この選択を制御ユニットにより自動的に行われるようにしてもよい。制御ユニットはこの選択をシート束の属性に基づいて自動的に行ってもよい。例えば、上記の選択はシート束の厚さに基づき得る。他の例では、シート束が再利用可能なシートを含む場合にクリップ部材形式が選択されるようにしてもよい。
【0009】
留め部材の形式の選択をオペレータ入力に基づいて行われるようにしてもよい。オペレータ入力はローカルユーザーインターフェースで行われ得るか又は制御ユニットに接続されたコンピュータインターフェース上で行われ得る。制御ユニットは、ユーザーインターフェースのオペレータに対して選択のための提案を行ってもよい。オペレータはその選択を受け入れるか又は調整する決定を下し得る。
【0010】
工程d)では、選択された留め部材の種類の留め部材を形成するためのワイヤ変形プログラムが決定される。ワイヤ変形プログラムは留め部材のいくつかの形状属性(shape attribute)を含む。いくつかの形状属性としては、屈曲部の数、各屈曲部の曲げ角度、ワイヤ沿いの隣接する2つの屈曲部間のワイヤ長及びワイヤの端部とワイヤ沿いの隣接する屈曲部との間のワイヤ長が挙げられる。
【0011】
ワイヤ変形プログラムは、留め部材のいくつかの形状属性を提供するためにワイヤを変形するためのいくつかの処理ステップをさらに含む。ワイヤを変形するためのこれらの処理ステップは、屈曲工程及び切断工程が行われるワイヤ変形ユニットにより提供される製造プロセスに基づく。
【0012】
工程e)では、前記ワイヤ変形プログラムに従って、前記ワイヤを前記ワイヤ沿いのいくつかの位置で屈曲させ、前記ワイヤを切断することにより前記留め部材が形成される。留め部材はワイヤ変形ユニット内で形成される。ワイヤは、ワイヤ源からワイヤ変形ユニットの屈曲部へと供給され得る。例えば、ワイヤが主搬送方向に搬送され、屈曲部形成要素の外面上で前記主搬送方向に対して屈曲させ、第1の屈曲部形成方向に第1の屈曲部が提供され得る。
【0013】
工程f)では、形成された留め部材をシート束に適用してシート束を留める。ステープル部材がステープル駆動ユニットによって適用されることで、シート束がステープル留めされる。クリップ部材がクリップ駆動ユニットによって適用されることで、シート束がクランプされる。
【0014】
シート束に対する留め部材の位置を構成可能にしてもよい。例えば、工程e)で形成される留め部材の大きさに応じてステープル部材又はクリップ部材の位置を調整してもよい。
【0015】
本発明に係る方法は、結束能力、留め部材の使い易さ及びシート束の再利用性を最適化することができる。ステープル部材及びクリップ部材並びに留め部材の形状属性を、留められるシート束の知識に基づいて選択してもよい。
【0016】
前記方法の一実施形態では、前記工程d)において、前記ワイヤ変形プログラムは前記工程a)で形成された前記シート束の厚さに基づく。例えば、クリップ部材のクランプ力をシート束の厚さの知識に基づいて最適化してもよい。他の例では、ステープル部材の突起部分の長さをシート束の厚さの知識に基づいて最適化してもよい。例えば、ワイヤの端部とワイヤ沿いの隣接する屈曲部との間のワイヤの長さを調整してもよい。
【0017】
前記方法の他の実施形態において、前記工程c)ではクリップ部材形式が選択され、前記工程d)は、前記工程a)で形成された前記シート束及び所定のクランプ力に基づいてクリップ部材の形状属性を選択することをさらに含み、前記クリップ部材の形状属性は、屈曲部の数、各前記屈曲部の曲げ角度及び前記ワイヤ沿いの隣接する2つの屈曲部間のワイヤ長のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
前記方法の特定の実施形態において、前記工程d)では、隣接する2つの屈曲部間の第1のワイヤ長が前記工程a)で形成された前記シート束の厚さに基づいて選択される。例えば、隣接する2つの屈曲部間の第1のワイヤ長をシート束の厚さに応じて調整することでクリップ部材のクランプ力を最適化させてもよい。前記第1の長さを有するワイヤの部分は、シート束に適用された場合にシート束の厚さ方向に方向付けられるクリップの屈曲部であってもよいし又はシート束に適用された場合にシート束の厚さ方向に対して垂直に方向付けられるクリップのねじれ部であってもよい。屈曲部及びねじれ部の双方はクリップ部材のクランプ力に寄与する。
【0019】
前記方法の他の実施形態において、前記工程c)ではステープル部材が選択され、前記工程d)は、前記工程a)で形成された前記シート束の厚さに基づいて前記ステープル部材の形状属性を選択することをさらに含み、前記ステープル部材の形状属性は、前記ワイヤ沿いの隣接する2つの屈曲部間のワイヤ長及び前記ワイヤの端部と前記ワイヤ沿いの隣接する屈曲部との間のワイヤ長のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
前記方法の他の実施形態では、前記工程c)は、オペレータ入力に基づいて前記留め部材の種類を選択することをさらに含む。オペレータ入力に基づいて留め部材の種類を選択することの利点は、制御ユニットには分からないユーザーの意見又は要件を考慮に入れることができる点である。選択工程を実行し得る制御ユニットは、シート束、シートの材料組成及び特性、シートの用途、所望のクランプ力等に関する知識が限られていることがある。
【0021】
前記方法の他の実施形態では、前記工程d)は、構成可能な形状属性を示すオペレータ入力に基づいて前記留め部材の形状属性を選択することをさらに含む。オペレータ入力に基づいて留め部材の形状属性を選択することの利点は、制御ユニットには分からないユーザーの意見又は要件を考慮に入れることができる点である。
【0022】
一例として、オペレータは、シート束の厚さに対して垂直な方向との関連で、クリップ部材が留めている状態にある場合のクリップ部材の大きさを選択してもよい。
【0023】
他の例として、制御ユニットは、いくつかの形状属性をそれぞれが含む留め部材の様々なデザインをオペレータに提案してもよく、オペレータは提案された留め部材の様々なデザインのうちの1つを選択してもよい。
【0024】
前記方法の特定の実施形態において、前記工程e)では、2つの搬送ローラーによって提供される搬送ピンチにより前記ワイヤを主搬送方向に搬送し、屈曲部形成要素は2つの搬送ローラーのうちの1つである。前記ワイヤは2つの搬送ローラーのうちの他方の外面上で主搬送方向に対しても屈曲され、第2の屈曲部形成方向に第2の屈曲部が提供され得る。この実施形態は、ワイヤ沿いのいくつかの位置でワイヤを屈曲するための簡単なプロセスを提供する。
【0025】
前記方法の特定の実施形態では、前記工程e)は、前記主搬送方向に対して前記屈曲部形成要素の下流側にある前記ワイヤの一部を、前記主搬送方向及び前記第1の屈曲部変形方向により定義される面に対して角度を有する方向に一時的に屈曲させることをさらに含む。ワイヤの一部を一時的に屈曲させることは、屈曲部形成要素に対してワイヤを所定の位置で弾性屈曲させることによって行われ得る。
【0026】
あるいは、ワイヤの一部を一時的に屈曲させることは、ワイヤの一部をワイヤ沿いの位置で塑性屈曲させ、ワイヤに沿っていくつかの屈曲工程を行い、その後に一時的に屈曲させた屈曲部をワイヤ沿いの同じ位置で塑性的に解消する(即ち脱屈曲(de-bending)工程)ことによって行われ得る。
【0027】
この実施形態は、屈曲部形成要素を用いて複数の屈曲部を形成するための簡単なプロセスをサポートする。この結果得られる留め部材は、形成プロセスの後で少なくとも部分的に互いに重なるように配置されたワイヤ部分を含む。
【0028】
前記方法の他の実施形態では、前記工程a)で形成される前記シート束は少なくとも1枚の再利用可能なシートを含み、前記工程c)では前記クリップ部材形式が選択される。再利用可能なシートが用いられる場合、再利用可能なシートを再利用できるようにするために再利用可能なシートを損傷することなくシート束を留めることが望ましい。クリップ部材形式を選択することで、ステープル部材形式等の突起部を有する結束部材形式によって生じ得る再利用可能なシートへの損傷を防ぐことができる。
【0029】
本発明の他の態様では、シート束を留めるための装置が提供される。当該装置は:
a)シート束を形成するための束形成ユニット;
b)弾塑性変形可能なワイヤを保管するためのワイヤ源;
c)留め部材の種類をクリップ部材形式及びステープル部材形式のうちの1つから選択するための選択ユニット;
d)ワイヤ変形プログラムに従って前記ワイヤを屈曲させ、切断することにより、選択された留め部材の種類の留め部材を動作時に形成するように構成されたワイヤ変形ユニット;
e)形成された前記留め部材を前記シート束に適用するための留めユニット;及び
f)前記シート束を留めるために前記束形成ユニット、前記選択ユニット、前記ワイヤ変形ユニット及び前記留めユニットを制御し、前記ワイヤ変形ユニットのための前記ワイヤ変形プログラムを決定する制御ユニット;を含む。
【0030】
前記装置は、最適化された留め部材の結束能力、留め部材の使い易さ及びシート束の再利用性を提供する。ステープル部材及びクリップ部材並びに留め部材の形状属性を、留め部材によって留められるシート束の知識に基づいて選択してもよい。
【0031】
前記装置の他の実施形態では、前記装置は前記シート束の厚さを測定するためのセンサをさらに含み、前記制御ユニットは、前記センサによって前記制御ユニットに提供される前記シート束の厚さを示すセンサ信号に基づいて前記ワイヤ変形プログラムを決定する。
【0032】
前記装置の他の実施形態では、前記装置はユーザーが選択可能な留め部材の種類及び前記留め部材の構成可能な形状属性のうちの少なくとも1つをオペレータに示すためのプレビュー装置と、前記留め部材の種類に関するオペレータ入力及び前記留め部材の構成可能な形状属性に関するオペレータ入力のうちの少なくとも1つを受信するための入力装置とをさらに含む。ユーザーインターフェースは要望に応じた留め部材の種類及び形状属性の選択をサポートし、それによりシート束の保持の質を向上させる。
【0033】
前記装置の他の実施形態では、前記ワイヤ変形ユニットは、2つの搬送ローラーを含む、前記ワイヤを主搬送方向に搬送するための搬送ピンチと、前記2つの搬送ローラーのうちの一方の外面上で前記ワイヤを第1の屈曲部形成方向に屈曲させ、前記2つの搬送ローラーのうちの他方の外面上で前記ワイヤを第2の屈曲部形成方向に屈曲させるためのワイヤ変形要素とを含む。この実施形態は、ワイヤ沿いのいくつかの位置でワイヤを屈曲させるための簡単な構成を提供する。
【0034】
前記装置の他の実施形態では、前記留めユニットはシート束をステープル留めするためのステープル駆動ユニットと、クリップ部材を適用することによりシート束をクランプするためのクリップ駆動ユニットとを含む。
【0035】
前記装置の他の実施形態では、前記装置は、前記束形成ユニットにおいて再利用可能なシートの積み重ねを検出するように構成された検出手段をさらに含み、前記検出手段は、再利用可能なシートが検出された場合に前記選択ユニットに信号を送信するように構成され、該信号に基づいて前記選択ユニットは前記クリップ部材形式を自動的に選択する。
【0036】
再利用可能なシートの積み重ねを検出するために検出手段を束形成ユニット内に配置してもよい。代替実施形態では、検出手段は、束形成ユニット内で再利用可能な紙の積み重ねが行われる前に束形成ユニットへの再利用可能なシートの供給を検出してもよい。
【0037】
再利用可能なシートが検出された場合、再利用可能なシートを再使用できるようにするために再利用可能なシートを損傷することなくシート束を留めることが望ましい。クリップ部材形式を選択することで、ステープル部材形式等の突起部を有する結束部材形式によって生じ得る再利用可能なシートへの損傷を防ぐことができる。
【0038】
また、後処理ユニット内でシート束を留めるための方法であって:シート束を形成する工程;ワイヤ源から弾塑性変形可能なワイヤを提供する工程;クリップ部材を形成するためのワイヤ変形プログラムを決定する工程;前記ワイヤ変形プログラムに従って、前記ワイヤを前記ワイヤ沿いのいくつかの位置で屈曲させ、前記ワイヤを切断することにより前記クリップ部材を形成する工程;及び形成された前記クリップ部材を前記シート束に適用して前記シート束を留める工程;を含む方法が提供される。
【0039】
また、シート束を留めるための装置であって:シート束を形成するための束形成ユニット;弾塑性変形可能なワイヤを保管するためのワイヤ源;ワイヤ変形プログラムに従って前記ワイヤを屈曲させ且つ切断することにより、クリップ部材を動作時に形成するように構成されたワイヤ変形ユニット;形成された前記クリップ部材を前記シート束に適用するための留めユニット;及び前記シート束を留めるために前記束形成ユニット、前記ワイヤ変形ユニット及び前記留めユニットを制御し、前記ワイヤ変形ユニットのための前記ワイヤ変形プログラムを決定する制御ユニット;を含む装置が提供される。
【0040】
以下で記載の詳細な説明から本発明の利用可能性のさらなる範囲が明らかになる。なお、下記の詳細な説明及び具体例は本発明の実施形態を示すものであるが、それらは一例として記載しているに過ぎない。何故なら、当業者にはこの詳細な説明から本発明の範囲内で様々な変更及び修正を加えることができるのが明らかになるからである。