特許第6203838号(P6203838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特許6203838少なくとも2つの異なる結合実体を含む、テーラーメイドの高度に選択的かつ多重特異的なターゲティング実体を選択および作製するための方法、ならびにその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203838
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】少なくとも2つの異なる結合実体を含む、テーラーメイドの高度に選択的かつ多重特異的なターゲティング実体を選択および作製するための方法、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20170914BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20170914BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   C12P21/02 C
   C12P21/08
   A61K39/395 M
   !C12N15/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-519056(P2015-519056)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公表番号】特表2015-527981(P2015-527981A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】EP2013063258
(87)【国際公開番号】WO2014001324
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年4月13日
(31)【優先権主張番号】12173875.1
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フェン セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】コペツキ エアハルト
(72)【発明者】
【氏名】ティーフェンタラー ゲオルク
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−525904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0321183(US,A1)
【文献】 David A,PLoS ONE,2011年,Vol.6,p.1-6
【文献】 Mariusz P,Biotechnology and Bioengineering,2012年,Vol.109,p.1461-1470
【文献】 H.T.Ta,Circulation Research ,2011年,Vol.109,p.365-373
【文献】 Maximilian Wei-Lin Popp,Angewandte Chemie International Edition,2011年,Vol.50,p.5024-5032
【文献】 Martin D.Witte,PNAS,2012年,Vol.109,p.11993-11998
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
C07K1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法:
(i)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、抗体Fab断片またはscFv抗体、
(ii)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、
該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が抗原結合部位を形成し、
該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、
該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、
一アーム抗体断片、ならびに
(iii)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって該二重特異性抗体を作製する段階。
【請求項2】
以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法:
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつそれらから少なくとも第1の細胞表面マーカーおよび第2の細胞表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、該第1の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体、
(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、該第2の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片、ならびに
(c)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって該二重特異性抗体を作製する段階。
【請求項3】
以下の段階を含む、抗原結合部位の組合せを決定するための方法:
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、抗体Fab断片またはscFv抗体が第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する、該抗体Fab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、
(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、該一アーム抗体断片の多数群の各メンバーならびに
(c)ソルターゼA酵素
と組み合わせることによって調製された多数の二重特異性抗体の、結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を決定する段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する該二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の方法によって得られる、二重特異性抗体。
【請求項5】
Fc領域が、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含むことを特徴とし、該Fc領域中の残基が、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
Fc領域が、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含むことを特徴とし、該Fc領域中の残基が、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
請求項4記載の二重特異性抗体を含む、薬学的製剤。
【請求項8】
医薬の製造における、請求項4記載の二重特異性抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特異性が互いとは無関係に選択され得る、ソルターゼAなどのトランスペプチダーゼを用いることによって多重特異性実体を選択および作製するための方法、ならびに、新規のテーラーメイドの多重特異性抗体の作製のための本方法の使用が、本明細書において報告される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノクローナル抗体は、大きな潜在的治療能力を有し、今日の医療ポートフォリオ(portfolio)において重要な役割を果たしている。この10年の間、製薬業界における顕著な動向は、腫瘍学、慢性炎症性疾患、移植、感染症、循環器内科、または眼科疾患を含む様々な臨床現場に対応する治療物質としてモノクローナル抗体(mAb)および抗体Fc融合ポリペプチド(結晶性断片融合ポリペプチド)を開発することであった(Carter, J.P., Nature Reviews Immunology 6 (2006) 343-357(非特許文献1); Chan, A.C. and Carter, J.P., Nature Reviews Immunology 10 (2010) 301-316(非特許文献2))。
【0003】
治療的抗体の臨床的効率は、主に次の2つの機能性に依拠している:(i)Fvドメインによって媒介される標的特異的結合、および(ii)抗体Fc領域によって媒介されるADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)、CDC(complement-dependent cytotoxicity)、およびADCP(antibody-dependent cellular phagocytosis)などの免疫介在性エフェクター機能。IgGクラスの免疫グロブリンのFc領域は、ヒンジ領域ならびに2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。Fc領域はまた、新生児型FcRn受容体と相互に作用し、かつそれによって、インビボでの抗体の半減期を決定する。ヒンジ領域は、抗体分子のアームがYに似た構造体を形成して、分子のこの箇所に可動性を与えている領域である。1つまたは複数のIgGサブクラスは、ジスルフィド結合の数およびヒンジ領域の長さが異なる。
【0004】
抗体のFc領域に関連付けられているエフェクター機能は、抗体のクラスおよびサブクラスによって異なり、例えば、様々な生物学的応答を引き起こす、細胞上の特異的Fc受容体(FcR)へのFc領域を介した抗体の結合が含まれる(例えば、Jiang, X.-R., et al., Nature Reviews Drug Discovery 10 (2011) 101-110(非特許文献3); Presta, L.G., Current Opinion in Immunology 20 (2008) 460-470(非特許文献4)を参照されたい)。
【0005】
抗体またはFc領域を含む融合ポリペプチドもしくは結合体のヒンジ領域は、抗原結合およびFc領域を介した抗体エフェクター機能などの抗体機能の少なくとも一部分に関与している。抗原結合(特に二価の強力な(avid)抗体結合)は、個々/天然のヒンジ領域の可動性、長さ、および空間的向きに依存するのに対し、Fc領域を介したエフェクター機能は、抗体のクラスおよびサブクラスに依存している。他のIgG抗体の二価性と比べて、いくつかのヒトIgG4抗体で観察される機能的一価性は、Fc領域の領域の抗原結合特性への関与を示す別の例である。(Salfeld, J.G., Nature Biotechnology 12 (2007) 1369-1372(非特許文献5); Presta, L.G., Current Opinion in Immunology 20 (2008) 460-470(非特許文献6))。
【0006】
Levary, D.A.らは、ソルターゼAによって触媒されるタンパク質とタンパク質の融合を報告している(PLOS ONE 6 (2011)(非特許文献7))。抗上皮増殖因子受容体抗体を単鎖形式に人工的に設計すること、およびソルターゼAを媒介としたタンパク質連結による標識化が、Madej, M.P.らによって報告されている(Biotechnol. Bioeng. 109 (2012) 1461-1470(非特許文献8))。Ta, H.T.らは、心血管疾患におけるターゲティングされた分子イメージングおよび細胞ホーミングに対する一般的アプローチとして、酵素学的単鎖抗体タグ付けを報告している(Cir. Res. 109 (2011) 365-373(非特許文献9))。Popp, M.らは、ペプチド結合の作製および切断−ソルターゼを用いたタンパク質工学を報告している(Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 50 (2011) 5024-5032(非特許文献10))。WO 2010/087994(特許文献1)では、連結のための方法およびその使用が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2010/087994
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Carter, J.P., Nature Reviews Immunology 6 (2006) 343-357
【非特許文献2】Chan, A.C. and Carter, J.P., Nature Reviews Immunology 10 (2010) 301-316
【非特許文献3】Jiang, X.-R., et al., Nature Reviews Drug Discovery 10 (2011) 101-110
【非特許文献4】Presta, L.G., Current Opinion in Immunology 20 (2008) 460-470
【非特許文献5】Salfeld, J.G., Nature Biotechnology 12 (2007) 1369-1372
【非特許文献6】Presta, L.G., Current Opinion in Immunology 20 (2008) 460-470
【非特許文献7】Levary, D.A.ら、PLOS ONE 6 (2011)
【非特許文献8】Madej, M.P.ら、Biotechnol. Bioeng. 109 (2012) 1461-1470
【非特許文献9】Ta, H.T.ら、Cir. Res. 109 (2011) 365-373
【非特許文献10】Popp, M.ら、Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 50 (2011) 5024-5032
【発明の概要】
【0009】
治療を必要とする患者において、癌のような疾患を治療するためのテーラーメイドの高度に特異的な治療的分子を提供するための方法であって、治療的分子が、患者の疾患の特徴および/または患者の遺伝子型/表現型に適応させられる、方法が、本明細書において報告される。
【0010】
このような適応は、患者の疾患を有する/該疾患に罹患している細胞の遺伝子型/表現型を考慮に入れたテーラーメイドの分子を作製することによって実現する。
【0011】
第1段階において、治療的分子を用いてターゲティングされることが意図される細胞の遺伝子型/表現型(例えば、疾患に特異的な細胞表面抗原の存在および数/量)が判定される。例えば、蛍光標識した単特異性の(治療的または診断用)抗体を用いた、例えば血液および/または生検材料に由来する患者細胞の免疫組織化学染色(IHC、免疫組織化学)のような細胞イメージング技術によって、これを実現することができる。あるいは、細胞の遺伝子型/表現型は、標識された治療的抗体または診断用抗体を用いて染色した後に、FACSに基づく方法を用いて解析することもできる。また、光学イメージング、分子イメージング、蛍光イメージング、生物発光イメージング、MRI、PET、SPECT、CT、および生体顕微鏡検査を含むインビボイメージング技術も、患者の疾患関係細胞の遺伝子型/表現型を判定するのに使用され得る。患者の疾患関係細胞の判定された遺伝子型/表現型に応じて、ターゲティング/結合実体のテーラーメイドの組合せが選択されることができ/選択され、治療的分子中で組み合わせられる。このような治療的分子は、例えば、二重特異性抗体であってよい。
【0012】
このようなテーラーメイドの治療的分子は、(i)高度に特異的であると考えられ、(ii)十分な有効性を有していると考えられ、かつ(iii)慣例的に選択された治療的物質と比べて、誘発する副作用は少ないと考えられる。これは、例えば、意図された作用部位への治療的物質搭載量(therapeutic payload)に関して向上したターゲティング特性および/または向上したテーラーメイドの送達特性を治療的分子に付与することによって実現することができる。
【0013】
例えば癌細胞のような作用部位への治療的分子の送達の向上は、慣例的に選択された治療的分子と比べて高い/増大した、ターゲティングされた治療的分子の選択性および/または特異性によって実現され得る。治療的分子は、異なる抗原(例えば、2種の異なる表面マーカー)または同じ抗原上の異なるエピトープ(例えば、同じ表面マーカー上の2種の異なるエピトープ)に特異的に結合する、少なくとも2つの実体を含む。
【0014】
テーラーメイドの治療的分子の選択性および/または特異性の増大は、両方のターゲティング実体が各々の標的/エピトープに同時に結合することによって実現され得る。すなわち、結合力の効果によって実現される。各々の標的/エピトープに対して低度から中度の親和性を有する2つの結合実体の組合せが、特に適している。さらに、オフターゲット結合が大きく減少するか、または完全になくなる場合さえある。
【0015】
テーラーメイドのターゲティングし結合する二重特異性分子は、C末端アミノ酸配列領域中にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、第1の結合実体、例えば、ダルピンドメインをベースとする結合実体、アンチカリンドメインをベースとする結合実体、T細胞受容体断片に似たscTCRドメインをベースとする結合実体、ラクダVHドメインをベースとする結合実体、10番目のフィブロネクチン3ドメインをベースとする結合実体、テネイシンドメインをベースとする結合実体、カドヘリンドメインをベースとする結合実体、ICAMドメインをベースとする結合実体、タイチンドメインをベースとする結合実体、GCSF-Rドメインをベースとする結合実体、サイトカイン受容体ドメインをベースとする結合実体、グリコシダーゼ阻害剤ドメインをベースとする結合実体、スーパーオキシドジスムターゼドメインをベースとする結合実体、または抗体断片(Fab断片もしくはscFv断片)と、同種の完全長軽鎖と対になった完全長抗体重鎖およびN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)を含む抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片(OA-Fc)との、酵素ソルターゼAを用いた酵素的結合反応によって提供され得ることが判明している。
【0016】
本明細書において報告される方法を用いて、例えば、癌細胞のような細胞の表面に存在する2種の表面マーカーを特異的に対象とする二重特異性抗体をテーラーメイドすることが可能であることが判明している。結合特異性は出発構成要素によって個々に与えられるため、細胞、例えば癌細胞上に存在する表面マーカーを決定し、これらの表面マーカーまたはそれらの各々のリガンドに特異的に結合する各抗体断片を酵素的手順によって結合させるだけで、ターゲティングし結合する多重特異性分子をテーラーメイドすることが可能である。酵素的結合は酵素ソルターゼAによって実施されるため、結果として生じる二重特異性抗体は、アミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)の存在を特徴とする。
【0017】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段落を含む、多重特異性結合分子を作製するための方法である:
(i)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む第1の結合実体、
(ii)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、
完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が抗原結合部位を形成し、
完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、
抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、
抗体断片、ならびに
(iii)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって多重特異性結合分子を作製する段階。
【0018】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、多重特異性結合分子を作製するための方法である:
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつ、i)それらから少なくとも第1の細胞表面マーカーおよび第2の細胞表面マーカーを選択するか、またはii)それらから多重特異性結合分子の結合特異性の数に相当する多数の細胞表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)第1の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合し、かつ20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む第1の結合実体、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、抗体断片、ならびに、(c)ソルターゼA酵素をインキュベートし、
かつそれによって多重特異性結合分子を作製する段階。
【0019】
本明細書において報告される1つの局面は、治療物質として使用するために、(a)第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合し、かつ20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む第1の結合実体、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、抗体断片、ならびに、(c)ソルターゼA酵素をインキュベートすることによって単一の多重特異性結合分子中に集められる結合実体のコレクション/ライブラリーから、少なくとも2つの結合実体を選択するための方法である。このような作用物質は、ターゲティング/送達特性が向上している。
【0020】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法である:
(i)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、抗体Fab断片またはscFv抗体、
(ii)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、
完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が抗原結合部位を形成し、
完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ
抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、
一アーム抗体断片、ならびに
(iii)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって二重特異性抗体を作製する段階。
【0021】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法である:
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつ、それらから少なくとも第1の細胞表面マーカーおよび第2の細胞表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、第1の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片、ならびに、(c)ソルターゼA酵素をインキュベートし、
かつそれによって二重特異性抗体を作製する段階。
【0022】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、多重特異性結合分子のための結合実体の組合せを決定するための方法である:
(i)多数の多重特異性結合分子の結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階であって、多数の多重特異性結合分子に、結合実体の各(あり得る)組合せが含まれている、段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する多重特異性結合分子を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階。
【0023】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、抗原結合部位の組合せを決定するための方法である:
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、抗体Fab断片またはscFv抗体が第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片の多数群の各メンバーと、ならびに(c)ソルターゼA酵素と組み合わせることによって調製された多数の二重特異性抗体の、結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階。
【0024】
1つの態様において、結合実体は、ダルピンドメインをベースとする結合実体、アンチカリンドメインをベースとする結合実体、T細胞受容体断片に似たscTCRドメインをベースとする結合実体、ラクダVHドメインをベースとする結合実体、10番目のフィブロネクチン3ドメインをベースとする結合実体、テネイシンドメインをベースとする結合実体、カドヘリンドメインをベースとする結合実体、ICAMドメインをベースとする結合実体、タイチンドメインをベースとする結合実体、GCSF-Rドメインをベースとする結合実体、サイトカイン受容体ドメインをベースとする結合実体、グリコシダーゼ阻害剤ドメインをベースとする結合実体、スーパーオキシドジスムターゼドメインをベースとする結合実体、またはFab断片もしくはscFv断片のような抗体断片より、互いとは無関係に選択される。
【0025】
すべての局面の1つの態様において、多重特異性結合分子は二重特異性抗体であり、かつ/または第1の結合実体は、抗体Fab断片もしくはscFv抗体である。
【0026】
1つの態様において、組み合わせる段階は、抗体Fab断片またはscFv抗体断片ならびに完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む抗体断片を、ソルターゼA 酵素と共にインキュベートすることを特徴とする。
【0027】
1つの態様において、Fab断片またはscFv抗体断片は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0028】
1つの態様において、一アーム抗体断片の完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖は同種の抗体鎖であり、それらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対は、第2の表面マーカーに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している。
【0029】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO: 02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含む。
【0030】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 03; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0031】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 04; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0032】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 05; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0033】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 06; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含み、X3はアミノ酸配列タグである。
【0034】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 07; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよく、X3はアミノ酸配列タグである。
【0035】
すべての局面の1つの態様において、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、そのN末端に2つのグリシン残基を含む。
【0036】
すべての局面の1つの態様において、一アーム抗体断片は、その重鎖のN末端にアミノ酸配列GGCPX4C(SEQ ID NO: 08)を含み、X4はSまたはPのいずれかである。
【0037】
すべての局面の1つの態様において、X1はEである。
【0038】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される方法によって得られる多重特異性結合分子である。
【0039】
1つの局面は、多重特異性結合分子の重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む多重特異性結合分子である。
【0040】
1つの態様において、多重特異性結合分子は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO: 02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含む。
【0041】
1つの態様において、多重特異性結合分子は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 09; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよく、n=1、2、または3)を含む。
【0042】
1つの態様において、多重特異性結合分子は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 10; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよい)を含み、X2が、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0043】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される方法によって得られる二重特異性抗体である。
【0044】
1つの局面は、二重特異性抗体の重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む二重特異性抗体である。
【0045】
1つの態様において、二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO: 02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含む。
【0046】
1つの態様において、二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 09; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよく、n=1、2、または3)を含む。
【0047】
1つの態様において、二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 10; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよい)を含み、X2が、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0048】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合分子を含む薬学的製剤である。
【0049】
本明細書において報告される1つの局面は、医薬を製造する際の、本明細書において報告される多重特異性結合分子の使用である。
【0050】
1つの態様において、医薬は、癌の治療のためである。
【0051】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合分子の有効量を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法である。
【0052】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合分子の有効量を個体に投与する段階を含む、個体中の癌細胞を破壊するための方法である。
【0053】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体を含む薬学的製剤である。
【0054】
本明細書において報告される1つの局面は、医薬を製造する際の、本明細書において報告される二重特異性抗体の使用である。
【0055】
1つの態様において、医薬は、癌の治療のためである。
【0056】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体の有効量を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法である。
【0057】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与する段階を含む、個体中の癌細胞を破壊するための方法である。本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、Fc領域は、ヒトFc領域またはその変種である。
【0058】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラス、またはヒトIgG2サブクラス、またはヒトIgG3サブクラス、またはヒトIgG4サブクラスのものである。
【0059】
1つの態様において、抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラスまたはヒトIgG4サブクラスのヒト抗体Fc領域である。
【0060】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、次のアミノ酸位置:228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、329、および/または331のうちの少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基の変異を含み、抗体Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。
【0061】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、Fc領域のエフェクター機能が、未改変(野生型)のFc領域と比べて変化する。
【0062】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、対応する野生型IgG Fc領域を含む結合体と比べて、ヒトFcγRIIIA、および/またはFcγRIIA、および/またはFcγRIに対する親和性が低い。
【0063】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の329位のアミノ酸残基は、グリシンもしくはアルギニン、またはFc領域内のプロリンサンドイッチを消失させるのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている。
【0064】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の天然に存在するアミノ酸残基の変異は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、および/またはP331Sのうちの少なくとも1つである。
【0065】
1つの態様において、変異は、抗体Fc領域がヒトIgG1サブクラスのものである場合にはL234AおよびL235Aであり、または抗体Fc領域がヒトIgG4サブクラスのものである場合にはS228PおよびL235Eである。
【0066】
1つの態様において、抗体Fc領域は、変異P329Gを含む。
【0067】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366Wならびに第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366S、L368A、およびY407Vを含み、番号付与は、KabatのEUインデックスに従う。
【0068】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異S354Cおよび第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異Y349Cを含む。
[本発明1001]
以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法:
(i)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、抗体Fab断片またはscFv抗体、
(ii)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、
該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が抗原結合部位を形成し、
該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、
該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、
一アーム抗体断片、ならびに
(iii)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって該二重特異性抗体を作製する段階。
[本発明1002]
以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法:
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつそれらから少なくとも第1の細胞表面マーカーおよび第2の細胞表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、該第1の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、該第2の細胞表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片、ならびに(c)ソルターゼA酵素をインキュベートし、
かつそれによって該二重特異性抗体を作製する段階。
[本発明1003]
以下の段階を含む、抗原結合部位の組合せを決定するための方法:
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、抗体Fab断片またはscFv抗体が第1のエピトープまたは抗原に特異的に結合する、該抗体Fab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が、互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、該一アーム抗体断片の多数群の各メンバーと、ならびに(c)ソルターゼA酵素と組み合わせることによって調製された多数の二重特異性抗体の、結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する該二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階。
[本発明1004]
本発明1001または本発明1002の方法によって得られる、二重特異性抗体。
[本発明1005]
二重特異性抗体の重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、前記二重特異性抗体。
[本発明1006]
Fc領域が、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含むことを特徴とし、該Fc領域中の残基が、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている、本発明1001〜1003のいずれかの方法または本発明1004もしくは1005の抗体。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、該Fc領域のエフェクター機能が、未改変(野生型)の該Fc領域と比べて変化する。
[本発明1007]
本発明1004または本発明1005の二重特異性抗体を含む、薬学的製剤。
[本発明1008]
医薬の製造における、本発明1004または本発明1005の二重特異性抗体の使用。
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の態様の詳細な説明
I. 定義
本明細書および特許請求の範囲において、免疫グロブリン重鎖Fc領域中の残基の番号付与は、KabatのEUインデックスのものである(参照により本明細書に明確に組み入れられるKabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242)。
【0070】
「改変」という用語は、変種抗体または融合ポリペプチドを得るための、例えば、Fc領域のFcRn結合部分の少なくとも1つを含む抗体または融合ポリペプチドの親アミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の変異、付加、または欠失を意味する。
【0071】
「アミノ酸変異」という用語は、親アミノ酸配列のアミノ酸配列中の変更を意味する。例示的な変更には、アミノ酸の置換、挿入、および/または欠失が含まれる。1つの態様において、アミノ酸変異は置換である。「特定の位置におけるアミノ酸変異」という用語は、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を意味する。「指定された残基に隣接する挿入」という用語は、それから残基1〜2個の範囲内への挿入を意味する。挿入は、指定された残基に対してN末端側またはC末端側でよい。
【0072】
「アミノ酸置換」という用語は、異なる「置換」アミノ酸残基による、所定の親アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換を意味する。1つまたは複数の置換残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」(すなわち遺伝コードにコードされる)でよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);トレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択され得る。1つの態様において、置換残基はシステインではない。1つまたは複数の天然に存在しないアミノ酸残基による置換もまた、本明細書におけるアミノ酸置換の定義に包含される。「天然に存在しないアミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖中の隣接したアミノ酸残基に共有結合することができる、上記に挙げた天然に存在するアミノ酸残基以外の残基を意味する。天然に存在しないアミノ酸残基の例には、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、aib、およびEllman, et al., Meth. Enzym. 202 (1991) 301-336で説明されているもののような他のアミノ酸残基類似体が含まれる。このような天然に存在しないアミノ酸残基を作製するために、Noren, et al. (Science 244 (1989) 182)および/またはEllman, et al. (前記)の手順を使用することができる。簡単に説明すると、これらの手順は、天然に存在しないアミノ酸残基を用いてサプレッサーtRNAを化学的に活性化し、続いて、RNAをインビトロで転写および翻訳することを含む。また、天然に存在しないアミノ酸は、化学的ペプチド合成を行い、続いて、組換えによって作製したポリペプチド、例えば抗体または抗体断片とこれらのペプチドを融合することによって、ペプチドに組み入れることもできる。
【0073】
「アミノ酸挿入」という用語は、所定の親アミノ酸配列中に少なくとも1つの付加的なアミノ酸残基を組み入れることを意味する。通常、挿入は、1つまたは2つのアミノ酸残基の挿入からなるが、本出願は、より大きな「ペプチド挿入」、例えば、約3個〜約5個またはさらに最高で約10個のアミノ酸残基の挿入を企図する。挿入される残基は、上記に定義したように、天然に存在するものまたは天然に存在しないものでよい。
【0074】
「アミノ酸欠失」という用語は、アミノ酸配列中の所定の位置において少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれることを意味する。
【0075】
本出願の範囲内においては、アミノ酸改変に言及する場合は常に、計画的なアミノ酸改変であり、ランダムなアミノ酸変更ではない。
【0076】
「アミノ酸配列タグ」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結された、特異的な結合特性を有するアミノ酸残基の配列を意味する。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、アフィニティータグまたは精製タグである。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、Argタグ、Hisタグ、Flagタグ、3×Flagタグ、Strepタグ、Nanoタグ、SBPタグ、c-mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、GSTタグ、またはMBPタグより選択される。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、
より選択される。
【0077】
「抗体断片」という用語は、インタクト抗体が結合する抗原に結合する完全長抗体の一部分を含む、完全長抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0078】
抗体断片には、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、およびscFv断片、ならびに後述する他の断片が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの抗体断片の概要については、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。scFv断片の概要については、例えば、Plueckthun, A., In: The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp. 269-315を参照されたい。また、WO 93/16185; US 5,571,894、およびUS 5,587,458も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長くなっているFab断片およびF(ab')2断片の考察については、US 5,869,046を参照されたい。
【0079】
ダイアボディとは、二価または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 0404097;WO 1993/01161; Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134;およびHolliger, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディもまた、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134)において説明されている。
【0080】
単一ドメイン抗体とは、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む抗体断片である。一定の態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。
【0081】
抗体断片は、本明細書において説明するように、インタクト抗体のタンパク質分解消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E. coli)またはファージ)による作製を非限定的に含む様々な技術によって作製することができる。
【0082】
「二重特異性抗体」という用語は、第1の抗原またはエピトープおよび第2の抗原またはエピトープに特異的に結合できる抗原結合分子であって、第1の抗原またはエピトープが第2の抗原またはエピトープと異なる、抗原結合分子を意味する。
【0083】
二重特異性抗体形態は、例えば、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254、WO 2010/112193、WO 2010/115589、WO 2010/136172、WO 2010/145792、およびWO 2010/145793において説明されている。
【0084】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」、略して「ADCC」という用語は、FcRを発現する非抗原特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、好中球、およびマクロファージ)が、免疫グロブリンFc領域に結合することによって標的細胞を認識し、続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介反応を意味する。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492の464頁の表3に要約されている。
【0085】
「抗体依存性細胞性食作用」、略して「ADCP」という用語は、抗体で覆われた細胞の全体または一部のいずれかが、免疫グロブリンFc領域に結合する食作用性免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球、または樹状細胞)の内部に取り入れられるプロセスを意味する。
【0086】
「Fc受容体への結合」という用語は、例えばBIAcore(登録商標)アッセイ法(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)における、Fc受容体へのFc領域の結合を意味する。
【0087】
BIAcore(登録商標)アッセイ法では、Fc受容体が表面に結合され、分析物、例えば、Fc領域を含む融合ポリペプチドまたは抗体の結合が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。結合親和性は、ka(結合定数:Fc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体が結合してFc領域/Fc受容体複合体を形成する際の速度定数)、kd(解離定数;Fc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体がFc領域/Fc受容体複合体から解離する際の速度定数)、およびKD(kd/ka)という用語を用いて定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さおよび解離挙動に関して、参照物の応答シグナルと直接比較することもできる。
【0088】
「C1q」という用語は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドを意味する。C1qは、2種のセリンプロテアーゼC1rおよびC1sと一緒になって、複合体C1、すなわち補体依存性細胞障害(CDC)経路の第1成分を形成する。ヒトC1qは、例えばQuidel, San Diego, Califから市販されているものを購入することができる。
【0089】
「CH2ドメイン」という用語は、おおよそEU位置231番目からEU位置340番目(KabatによるEU番号付与方式)まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH2ドメインは、
のアミノ酸配列を有する。CH2ドメインは、別のドメインと接近して対になっていないという点で、独特である。もっと正確に言えば、N結合型分枝状炭水化物鎖2つが、インタクトな天然Fc領域の2つのCH2ドメインの間に介在している。炭水化物が、ドメイン間の対形成のための代用品となり、CH2ドメインを安定化するのに寄与し得ると推測されている。Burton, Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206。
【0090】
「CH3ドメイン」という用語は、おおよそEU位置341番目からEU位置446番目まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH3ドメインは、
のアミノ酸配列を有する。
【0091】
抗体の「クラス」という用語は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを意味する。ヒトの抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、α、δ、ε、γ、およびμとそれぞれ呼ばれる。
【0092】
「補体依存性細胞障害」、略して「CDC」という用語は、標的に結合したFc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体のFc領域が一連の酵素反応を活性化して、結果的に標的細胞の膜に穴を形成させる、細胞死を誘導するためのメカニズムを意味する。典型的には、抗体に覆われた標的細胞上のもののような抗原-抗体複合体が、補体成分C1qに結合し活性化し、次に、補体成分C1qが、補体カスケードを活性化して、標的細胞の死をもたらす。また、補体の活性化は、標的細胞の表面への補体成分の沈着ももたらす場合があり、これにより、白血球上の補体受容体(例えばCR3)に結合することによってADCCまたはADCPが促進される。
【0093】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のサブクラスによって変わる、抗体のFc領域に起因し得る生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);食作用(ADCP);細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が含まれる。このような機能は、例えば、食作用活性もしくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体にFc領域を結合させることによって、または補体系の成分にFc領域を結合させることによって、もたらすことができる。
【0094】
薬学的製剤などの剤の「有効量」とは、所望の治療結果または予防的結果を達成するのに必要な用量においておよび期間にわたって有効な量を意味する。
【0095】
「エフェクター機能の低下」という用語は、例えばADCCまたはCDCのような、ある分子に関連した特定のエフェクター機能が、対照分子(例えば、野生型Fc領域を有するポリペプチド)と比較して少なくとも20%低下していることを意味する。「エフェクター機能の大きな低下」という用語は、例えばADCCまたはCDCのような、ある分子に関連した特定のエフェクター機能が、対照分子と比較して少なくとも50%低下していることを意味する。
【0096】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンのC末端領域を意味する。Fc領域は、ジスルフィド結合されている2つの抗体重鎖断片(重鎖Fc領域ポリペプチド鎖)を含む二量体分子である。Fc領域は、インタクト(完全長)抗体のパパイン消化もしくはIdeS消化、もしくはトリプシン消化によって生成させることができ、または組換えによって作製することができる。
【0097】
完全長抗体または免疫グロブリンから得られるFc領域は、完全長重鎖の少なくとも残基226(Cys)からC末端までを含み、したがって、ヒンジ領域の一部分および2つまたは3つの定常ドメイン、すなわち、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ならびにIgEクラス抗体およびIgMクラス抗体の付加的な/追加のCH4ドメインを含む。US5,648,260およびUS5,624,821から、Fc領域中の所定のアミノ酸残基の変更が表現型に影響することが公知である。
【0098】
2つの同一または同一でない抗体重鎖断片を含む二量体Fc領域の形成は、含まれるCH3ドメインの非共有結合的二量体化によってもたらされる(関与するアミノ酸残基については、例えば、Dall'Acqua, Biochem. 37 (1998) 9266-9273を参照されたい)。Fc領域は、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合の形成によって共有結合的に安定化されている(例えば、Huber, et al., Nature 264 (1976) 415-420; Thies, et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 67-79を参照されたい)。CH3-CH3ドメインの二量体化相互作用を妨害するためにCH3ドメイン内にアミノ酸残基変化を導入しても、新生児型Fc受容体(FcRn)結合は悪影響を受けない。これは、CH3-CH3ドメインの二量体化に関与している残基の場所はCH3ドメインの内側の境界に位置しているのに対し、Fc領域-FcRn相互作用に関与している残基は、CH2-CH3ドメインの外側に位置しているためである。
【0099】
Fc領域のエフェクター機能に関連している残基は、完全長抗体分子に関して決定される場合、ヒンジ領域、CH2ドメイン、および/または、CH3ドメインに位置している。Fc領域が関連/媒介する機能は、
(i)抗体依存性細胞障害(ADCC)、
(ii)補体(C1q)の結合、活性化、および補体依存性細胞障害(CDC)、
(iii)抗原-抗体複合体の貪食/クリアランス、
(iv)場合によりサイトカイン放出、ならびに
(v)抗体および抗原-抗体複合体の半減期/クリアランス速度
である。
【0100】
Fc領域が関連するエフェクター機能は、Fc領域とエフェクター機能に固有の(specific)分子または受容体との相互作用によって開始される。主に、IgG1サブクラスの抗体は受容体活性化をもたらし得るのに対し、IgG2サブクラスおよびIgG4サブクラスの抗体は、エフェクター機能を有していないか、またはエフェクター機能が限定されている。
【0101】
エフェクター機能を惹起する受容体は、Fc受容体タイプ(ならびにサブタイプ)FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIである。IgG1サブクラスに関連付けられているエフェクター機能は、ヒンジ領域下流に、FcγRおよびC1q結合に関与している特定のアミノ酸変化、例えばL234Aおよび/またはL235Aを導入することによって、低下することができる。また、特にCH2ドメインおよび/またはCH3ドメイン中に位置しているある種のアミノ酸残基は、血流中での抗体分子またはFc領域融合ポリペプチドの循環中半減期に関連している。循環半減期は、新生児型Fc受容体(FcRn)へのFc領域の結合に左右される。
【0102】
Fc領域糖鎖構造(glycostructure)上に存在するシアリル残基は、Fc領域の抗炎症媒介性活性(anti-inflammatory mediated activity)に関与している(例えば、Anthony, R.M., et al. Science 320 (2008) 373-376を参照されたい)。
【0103】
抗体の定常領域中のアミノ酸残基の番号付与は、KabatのEUインデックスに従って行われている(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91 3242)。
【0104】
「ヒトFc領域」という用語は、ヒンジ領域の部分の少なくとも1つ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、ヒト由来の免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。1つの態様において、ヒトIgG抗体重鎖Fc領域は、重鎖のGlu216あたり、またはCys226あたり、またはPro230あたりからカルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、抗体Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば存在しない場合もある。
【0105】
「変種Fc領域」という用語は、少なくとも1つ(1種)の「アミノ酸改変/変異」が原因で「天然」または「野生型」Fc領域アミノ酸配列のものとは異なる、アミノ酸配列を意味する。1つの態様において、変種Fc領域は、天然Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比べて、少なくとも1つのアミノ酸変異、例えば、約1〜約10個のアミノ酸変異を有しており、1つの態様において、天然Fc領域または親ポリペプチドのFc領域中に約1〜約5個のアミノ酸変異を有している。1つの態様において、(変種)Fc領域は、野生型Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性を有しており、1つの態様において、変種Fc領域は、少なくとも(least)約90%の相同性を有しており、1つの態様において、変種Fc領域は、少なくとも約95%の相同性を有している。
【0106】
本明細書において報告される変種Fc領域は、含まれるアミノ酸改変に基づいて定義される。したがって、例えば、P329Gという用語は、親(野生型)Fc領域を基準としてアミノ酸329位がプロリンからグリシンに変異した変種Fc領域を意味する。野生型アミノ酸のアイデンティティが特定されていない場合があり、その場合、前述の変種は329Gと呼ばれる。本発明で考察したすべての位置に関して、番号付与は、EUインデックスに従う。EUインデックス、もしくはKabatによるEUインデックス、またはEU番号付与スキームとは、EU抗体の番号付与を意味する(参照により全体が本明細書に組み入れられるEdelman, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78-85)。改変は、付加、欠失、または変異であってよい。「変異」という用語は、天然に存在するアミノ酸への変化、ならびに天然に存在しないアミノ酸への変化を意味する。例えば、US 6,586,207, WO 98/48032、WO 03/073238、US 2004/0214988、WO 2005/35727、WO 2005/74524、Chin, J.W., et al., J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 9026-9027; Chin, J.W. and Schultz, P.G., ChemBioChem 11 (2002) 1135-1137; Chin, J.W., et al., PICAS United States of America 99 (2002) 11020-11024;および Wang, L. and Schultz, P.G., Chem. (2002) 1-10(すべて、参照により全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0107】
IgG1サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0108】
変異L234A、L235Aを有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0109】
T366S、L368A、およびY407V変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0110】
T366W変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0111】
L234A、L235A、ならびにT366S、368A、およびY407V変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0112】
L234A、L235A、およびT366W変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0113】
P329G変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0114】
L234A、L235A、およびP329G変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0115】
P239GおよびT366S、368A、およびY407V変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0116】
P329GおよびT366W変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0117】
L234A、L235A、P329GおよびT366S、368A、およびY407V変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0118】
L234A、L235A、P329G、およびT366W変異を有するIgG1サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0119】
IgG4サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0120】
S228PおよびL235E変異を有するIgG4サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0121】
S228P、L235E、およびP329G変異を有するIgG4サブクラスの変種ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0122】
「Fc受容体」、略して「FcR」という用語は、Fc領域に結合する受容体を意味する。1つの態様において、FcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、1つの態様において、FcRは、IgG抗体に結合するFcR(Fcγ受容体)であり、サブクラスFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIの受容体が含まれ、それらの対立遺伝子変種および選択的にスプライシングされた形態も含まれる。FcγRII受容体には、類似したアミノ酸配列を有し、主にその細胞質内ドメインが異なる、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質内ドメイン中に免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞質内ドメイン中に免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron, M., Annu. Rev. Immunol. 15 (1997) 203-234を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492、Capel, et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34、de Haas, et al., J. Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341において概説されている。今後同定されるものを含む、他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。また、この用語は、母親のIgGを胎児に移行させるのに関与している新生児型受容体FcRnも含む(例えば、Guyer, et al., J. Immunol. 117 (1976) 587; Kim, et al., J. Immunol. 24 (1994) 249を参照されたい)。
【0123】
「Fcγ受容体」、略して「FcγR」という用語は、IgG抗体Fc領域に結合し、FcγR遺伝子にコードされるタンパク質ファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーは、アイソフォームFcγRIA、FcγRIB、およびFcγRICを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIA(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIB(FcγRIIB-1およびFcγRIIB-2を含む)、およびFcγRIICを含むFcγRII(CD32);ならびにアイソフォームFcγRIIIA(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIB(アロタイプFcγRIIB-NA1およびFcγRIIB-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)(例えば、参照により全体が組み入れられるJefferis,et al., Immunol. Lett. 82 (2002) 57-65を参照されたい)、ならびに、任意の未発見のヒトFcγRまたはFcγRのアイソフォームもしくはアロタイプを含むが、それらに限定されるわけではない。FcγRは、限定されるわけではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルを含む、任意の生物に由来してよい。マウスFcγRには、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII-2(CD16-2)、ならびに任意の未発見のマウスFcγRまたはFcγRのアイソフォームもしくはアロタイプが含まれるが、それらに限定されるわけではない。Fc領域-FcγR相互作用に関与しているアミノ酸残基は、234〜239(ヒンジ領域下流)、265〜269(B/Cループ)、297〜299(D/Eループ)、および327〜332(F/G)ループである(Sondermann, et al., Nature 406 (2000) 267-273)。FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、および/またはFcγRIIIAに対する結合/親和性の減少をもたらすアミノ酸変異には、N297A(免疫原性の低下および結合/親和性半減期の延長に付随)(Routledge, et al., Transplantation 60 (1995) 847; Friend, et al., Transplantation 68 (1999) 1632; Shields, et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)、残基233〜236(Ward and Ghetie, Ther. Immunol. 2 (1995) 77; Armour, et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)が含まれる。いくつかの例示的なアミノ酸置換が、US7,355,008およびUS7,381,408において説明されている。
【0124】
「新生児型Fc受容体」、略して「FcRn」という用語は、IgG抗体Fc領域に結合し、少なくとも一部がFcRn遺伝子にコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、限定されるわけではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサルを含む、任意の生物に由来してよい。当技術分野において公知であるとおり、機能的なFcRnタンパク質は、重鎖および軽鎖と呼ばれることが多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖はβ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子にコードされる。本明細書において別段の注記の無い限り、FcRnまたはFcRnタンパク質とは、FcRn重鎖とβ-2-ミクログロブリンの複合体を意味する。Fc領域とFcRnの相互に作用するアミノ酸残基は、CH2ドメインおよびCH3ドメインの連結部の近くにある。Fc領域とFcRnの接触残基はすべて、単一のIgG重鎖の内部にある。関与しているアミノ酸残基は、248、250〜257、272、285、288、290〜291、308〜311、および314(すべてCH2 ドメイン中)ならびにアミノ酸残基385〜387、428、および433〜436(すべてCH3ドメイン中)である。FcRnに対する結合/親和性の増大をもたらすアミノ酸変異には、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが含まれる(Shields, et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。
【0125】
「完全長抗体」という用語は、天然の抗体構造ならびに本明細書において報告されるFc領域を含むポリペプチドと実質的に同一な構造およびアミノ酸配列を有する抗体を意味する。
【0126】
「完全長抗体重鎖」という用語は、N末端からC末端の方向に、抗体可変ドメイン、第1の定常ドメイン、抗体重鎖ヒンジ領域、第2の定常ドメイン、および第3の定常ドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0127】
「抗体重鎖Fc領域」という用語は、抗体重鎖ヒンジ領域、第1の定常ドメイン、および第2の定常ドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0128】
「完全長抗体軽鎖」という用語は、N末端からC末端の方向に、抗体可変ドメインおよび定常ドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0129】
「ヒンジ領域」という用語は、野生型抗体重鎖においてCH1ドメインおよびCH2ドメインを連結する、例えばKabatのEU番号方式によれば216位あたりから230位あたりまでの、またはKabatのEU番号方式によれば226位あたりから230位あたりまでの、抗体重鎖ポリペプチド部分を意味する。他のIgGサブクラスのヒンジ領域は、IgG1サブクラス配列のヒンジ領域システイン残基と整列させることによって決定することができる。
【0130】
通常、ヒンジ領域は、アミノ酸配列が同一である2つのポリペプチドからなる二量体分子である。一般に、ヒンジ領域は約25個のアミノ酸残基を含み、可動性であるため、抗原結合領域が独立に動くことが可能である。ヒンジ領域は、3つのドメイン:上部ヒンジドメイン、中央部ヒンジドメイン、下部ヒンジドメインに細分することができる(例えば、Roux, et al., J. Immunol. 161 (1998) 4083を参照されたい)。
【0131】
Fc領域の「ヒンジ領域下流」という用語は、ヒンジ領域のC末端側のすぐ近くのアミノ酸残基、すなわち、KabatのEU番号方式によればFc領域の残基233〜239のストレッチを意味する。
【0132】
「野生型Fc領域」という用語は、自然界に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を意味する。野生型ヒトFc領域には、天然ヒトIgG1 Fc領域(A以外のアロタイプおよびAアロタイプ)、天然ヒトIgG2 Fc領域、天然ヒトIgG3 Fc領域、および天然ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらの変種が含まれる。
【0133】
「個体」または「対象」という用語は、家畜化した動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(マウスおよびラット)を含むが、それらに限定される訳ではない。一定の態様において、個体または対象はヒトである。
【0134】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列を整列させ、かつ必要な場合にはギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを実現した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部分とみなさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど公的に使用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長に渡って最大限のアライメントを実現するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を用いて、アミノ酸配列同一性%の値を得る。配列比較コンピュータープログラムALIGN-2は、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードはユーザー向け文書と共にU.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559に提出され、米国著作権登録番号(U.S. Copyright Registration No.)TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムにおける使用向けにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0135】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために使用される状況において、所与のアミノ酸配列Bに対する、該Bとの、または該Bと比較しての所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して、と、または比較してある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、次のようにして算出される。
100×比X/Y
上式で、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムによるAおよびBのアライメントにおいて同一のマッチとして採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが認識されるであろう。別段の記載が特に無い限り、本明細書において使用されるアミノ酸配列同一性%の値はすべて、すぐ前の節で説明したように、ALIGN-2コンピュータープログラムを用いて得られる。
【0136】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物活性が有効になるのを可能にするような形態で存在し、かつその製剤が投与されると思われる対象に対して許容されないほど毒性である追加成分を含まない、調製物を意味する。
【0137】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、薬学的製剤中の有効成分以外の成分を意味する。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0138】
「患者の表現型」という用語は、患者由来のある一種の細胞における細胞表面受容体の組成物を意味する。組成物は、質的組成物ならびに量的組成物であることができる。遺伝型が決定された/示された細胞は、単一の細胞、または複数の細胞を含む試料であることができる。
【0139】
「位置」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列におけるあるアミノ酸残基の場所を意味する。位置は、順を追って、または確立された形式、例えば抗体番号付与のためのKabatのEUインデックスに従って、番号付与してよい。
【0140】
「変化」したFcR結合親和性またはADCC活性という用語は、親ポリペプチド(例えば、野生型Fc領域を含むポリペプチド)と比べて、FcR結合活性および/またはADCC活性が増大または減少しているポリペプチドを意味する。FcRに対する「結合が増大している」変種ポリペプチドは、親ポリペプチドまたは野生型ポリペプチドより小さい解離定数(すなわち、優れた/より高い親和性)で、少なくとも1つのFcRに結合する。FcRに対する「結合が減少している」ポリペプチド変種は、親ポリペプチドまたは野生型ポリペプチドより大きい解離定数(すなわち、劣る/より低い親和性)で、少なくとも1つのFcRに結合する。FcRに対して結合の減少を示すこのような変種は、FcRに対して感知できる結合をほとんどまたはまったく有していない場合がある。例えば、野生型IgG Fc領域または親IgG Fc領域と比べて、FcRへの結合は0〜20%である。
【0141】
親ポリペプチドまたは野生型ポリペプチドと比べて「低い親和性」でFcRに結合するポリペプチドとは、結合アッセイ法におけるポリペプチド変種および親ポリペプチドの量が(本質的に)ほぼ同じである場合に、親ポリペプチドと比べて(実質的に)低い結合親和性で、上記に特定したFcRのうちの任意の1つまたは複数に結合するポリペプチドである。例えば、低いFcR結合親和性を有するポリペプチド変種は、FcR結合親和性が測定される場合、親ポリペプチドと比べて約1.15分の1〜約100分の1、例えば、約1.2分の1〜約50分の1へのFcR結合親和性の減少を示し得る。
【0142】
親ポリペプチドよりも「低い有効性でヒトエフェクター細胞の存在下の抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)を媒介する」変種Fc領域を含むポリペプチドとは、アッセイ法で使用される変種ポリペプチドおよび親ポリペプチドの量が(本質的に)ほぼ同じである場合に、インビトロまたはインビボでADCCを媒介する有効性が(実質的に)低いポリペプチドである。一般に、このような変種は、本明細書において開示するインビトロのADCCアッセイ法を用いて同定するが、例えば動物モデルなどにおけるADCC活性を測定するための他のアッセイ法または方法が企図される。1つの態様において、変種は、例えば、本明細書において開示するインビトロのアッセイ法において、ADCCを媒介する有効性が親よりも低く、約1.5分の1〜約100分の1、例えば、約2分の1〜約50分の1である。
【0143】
「受容体」という用語は、少なくとも1つのリガンドに結合することができるポリペプチドを意味する。1つの態様において、受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、および任意で他のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、および/または膜アンカー)を有する細胞表面受容体である。本明細書において説明するアッセイ法で評価される受容体は、完全な受容体またはその断片もしくは派生物(例えば、1つもしくは複数の異種ポリペプチドに融合された受容体の結合ドメインを含む融合タンパク質)であってよい。さらに、結合特性を評価される受容体は、細胞中に存在してもよく、または単離され、アッセイプレートもしくは他の何らかの固相に任意で塗られてもよい。
【0144】
本明細書において使用される場合、「治療(treatment)」(およびその文法的変形、例えば「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」)とは、治療される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を意味し、予防のため、または臨床的病状の過程のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的転帰の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせるため、または疾患の進行を遅くするために使用される。
【0145】
II. テーラーメイドの多重特異性結合分子
細胞に基づく大半の疾患において、抗体に基づく受容体分子結合を介して疾患関係細胞をターゲティングすることは、1つの有望なアプローチである。しかし、臨床的に関連する表面受容体(=標的)の発現レベルは患者によって異なり、したがって、標準化された抗体ベースの薬物の有効性は非常に様々である。これは、2つの異なるエピトープ/受容体を同時にターゲティングすることがその作用様式である二重特異性結合分子および多重特異性結合分子に特に当てはまる。
【0146】
1つの有望なアプローチは、各患者の特有の/個々の状況に特に合わせて薬物(本明細書においては二重特異性結合分子または多重特異性結合分子)を設計することである。
【0147】
ある個体に由来する各細胞は、発現される細胞表面分子、例えば受容体の点から見ると、数および種類が異なっている。これは、癌細胞および非癌細胞に特に当てはまる。したがって、細胞は、提示される細胞表面分子に基づいて特徴決定することができる。
【0148】
患者の疾患関連細胞上の臨床的に関連する表面受容体の発現プロファイルデータに基づいて、一連の結合実体(例えばFab断片)がライブラリーから具体的に選択され、患者に特異的な薬物として多重特異性結合分子と組み合わされる。これらの選択された結合分子は、例えば、表面受容体の発現レベル、したがって、個々の患者のニーズおよび表現型に基づいて、例えば腫瘍細胞のような各々の疾患関連細胞に対して特異的に選択される。
【0149】
このような特徴決定は、インビトロおよびインビボに基づく細胞イメージング技術によって実施され得る。インビボイメージング技術には、例えば、光学イメージング、分子イメージング、蛍光イメージング、生物発光イメージング、MRI、PET、SPECT、CT、および生体顕微鏡検査が含まれる。インビトロイメージング技術には、例えば、特定の細胞表面マーカーを認識する蛍光標識した抗体を例えば用いた、患者細胞の免疫組織化学的染色および顕微鏡検査による蛍光シグナルの解析が含まれる。あるいは、細胞の遺伝子型/表現型は、標識された治療的抗体または診断用抗体を用いて染色した後に、FACSに基づく方法を用いて解析することもできる。
【0150】
1つの態様において、患者に由来する細胞の遺伝子型/表現型は、FACSに基づく方法によって判定される。1つの態様において、細胞表面マーカーは、蛍光標識した診断用抗体または治療的抗体を用いることによって決定される。1つの態様において、蛍光標識した治療的抗体が使用される。
【0151】
ある種の疾患は、特定の細胞表面分子の数の変化または新しい細胞表面分子の出現と相関関係があり得る。
【0152】
このような疾患に罹患している個体は、一定の範囲内で、疾患および/または個体に特異的な細胞表面マーカーパターンを示すと考えられる。
【0153】
テーラーメイドのターゲティングされた治療的物質をそのような個体に提供するためには、このことが考慮に入れられなければならない。
【0154】
テーラーメイドの多重特異性ターゲティング実体の選択および構築のために使用され得る、細胞表面分子およびそれらのリガンドに対するいくつかの治療的抗体が公知であり、例えば、リツキサン/マブセラ/リツキシマブ、2H7/オクレリズマブ、ゼバリン/イブリズモマブ(Ibrizumomab)、アーゼラ/オファツムマブ(CD20)、HLL2/エプラツズマブ、イノツゾマブ(Inotuzomab)(CD22)、ゼナパックス/ダクリズマブ、シムレクト/バシリキシマブ(CD25)、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ(Her2/ERBB2)、マイロターグ/ゲムツズマブ(CD33)、ラプティバ/エファリズマブ(Cd11a)、エルビタックス/セツキシマブ(EGFR、epidermal growth factor receptor)、IMC-1121B(VEGF受容体2)、タイサブリ/ナタリズマブ(α4β1インテグリンおよびα4β7インテグリンのα4-サブユニット)、レオプロ/アブシキシマブ(gpIIb-gpIIaおよびαvβ3-インテグリン)、オルソクローンOKT3/ムロモナブ-CD3(CD3)、ベンリスタ/ベリムマブ(BAFF)、トレレックス(Tolerx)/オテリキシマブ(Oteliximab)(CD3)、ソリリス/エクリズマブ(C5補体タンパク質)、アクテムラ/トシリズマブ(IL-6R)、パノレックス/エドレコロマブ(EpCAM、epithelial cell adhesion molecule)、CEA-CAM5/ラベツズマブ(CD66/CEA、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen))、CT-11(PD-1、T細胞抑制性のプログラム死-1受容体、CD-d279)、H224G11(c-Met 受容体)、SAR3419(CD19)、IMC-A12/シクスツムマブ(Cixutumumab)(IGF-1R、insulin-like growth factor 1 receptor)、MEDI-575(PDGF-R、platelet-derived growth factor receptor)、CP-675、206/トレメリムマブ(細胞障害性Tリンパ球抗原4)、RO5323441(胎盤増殖因子またはPGF)、HGS1012/マパツムマブ(TRAIL-R1)、SGN-70 (CD70)、ベドチン(SGN-35)/ブレンツキシマブ(CD30)、およびARH460-16-2(CD44)である。
【0155】
例えば患者の試料中に存在する細胞表面マーカーの決定のために、様々な方法が公知である。1つの例示的な方法は、蛍光活性化細胞選別(FACS)、特に、特異的に染色され選別された細胞集団の解析に基づいている。この方法において、試料(細胞集団)の表現型判別は、細胞集団における表面マーカーの統計学的分布を任意で含めて、提示された細胞表面マーカーに関してこれらのマーカーに対する蛍光標識抗体を用いて個々の細胞を解析することによって実現される。蛍光標識で標識された治療的抗体をこの目的のために使用することが特に適切であり、それらを用いると、後でテーラーメイドされる多重特異性結合分子が診断用抗体と同じエピトープに確実に結合するようになる。本明細書において報告される多重特異性結合分子/二重特異性抗体は、例えば、腫瘍疾患、心血管疾患、感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患、代謝(例えば、内分泌)疾患、または神経(例えば、神経変性)疾患の治療のための医薬の調製において使用され得る。これらの疾患の例示的な非限定的例は、アルツハイマー病、非ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病およびB細胞性慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリーセル白血病、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病、T細胞リンパ腫およびT細胞白血病、多発性骨髄腫、神経膠腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、癌腫(例えば、口腔、胃腸管、結腸、胃、肺気道(pulmonary tract)、肺、乳房、卵巣、前立腺、子宮、子宮内膜、子宮頸、膀胱、膵臓、骨、肝臓、胆のう、腎臓、皮膚、および精巣の癌腫)、黒色腫、肉腫、神経膠腫、および皮膚癌、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化肺胞炎である。
【0156】
いくつかの細胞表面マーカーおよびそれらのリガンドが公知である。例えば、癌細胞は、非限定的に以下を含む、以下の細胞表面マーカーおよびまたはリガンドのうちの少なくとも1つを発現することが報告されている:炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、αアクチニン-4、A3(A33抗体に特異的な抗原)、ART-4、B7、Ba-733、BAGE、BrE3抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CDS、CD8、CD1-1A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1-α、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、c-met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、GROB、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2またはHST-1a、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、KC4抗原、KS-1抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、膵癌ムチン、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺性酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、P1GF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物(例えば、Sensi, et al., Clin. Cancer Res. 12 (2006) 5023-5032; Parmiani, et al, J. Immunol. 178 (2007) 1975-1979; Novellino, et al., Cancer Immunol. Immunother. 54 (2005) 187-207を参照されたい)。
【0157】
したがって、特異的な細胞表面受容体をそれらのリガンドを含めて認識する抗体は、疾患に関連しているいくつかの/多数の細胞表面マーカーを特異的かつ選択的にターゲティングし結合するのに使用され得る。細胞表面マーカーは、例えばシグナル伝達事象またはリガンド結合に関連している、細胞(例えば、疾患関係細胞)の表面に位置しているポリペプチドである。
【0158】
1つの態様において、癌/腫瘍を治療するために、Herberman, "Immunodiagnosis of Cancer", in Fleisher (ed.), "The Clinical Biochemistry of Cancer", page 347 (American Association of Clinical Chemists (1979))ならびにUS 4,150,149;US 4,361,544;およびUS 4,444,744において報告されているもののような腫瘍関連抗原を標的とする多重特異性結合分子/二重特異性抗体が使用される。
【0159】
腫瘍関連抗原(TAA)に関する報告には、Mizukami, et al., (Nature Med. 11 (2005) 992-997);Hatfield, et al., (Curr. Cancer Drug Targets 5 (2005) 229-248);Vallbohmer, et al., (J Clin. Oncol. 23 (2005) 3536-3544);およびRen, et al., (Ann. Surg. 242 (2005) 55-63)が含まれ、同定されたTAAに関して、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0160】
疾患がリンパ腫、白血病、または自己免疫障害を伴う場合、標的とされる抗原は、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD54、CD67、CD74、CD79a、CD80、CD126、CD138、CD154、CXCR4、B7、MUC1またはMUC1a、HM1.24、HLA-DR、テネイシン、VEGF、P1GF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物(例えば、c-metまたはPLAGL2)、CD66a〜d、壊死抗原、IL-2、T101、TAG、IL-6、MIF、TRAIL-R1(DR4)、およびTRAIL-R2(DR5)からなる群より選択され得る。
【0161】
2つの異なる標的を対象とするいくつかの二重特異性抗体、例えば、第1の特異性が、BCMA/CD3、HERファミリーの異なる抗原の組合せ(EGFR、HER2、HER3)、CD19/CD3、IL17RA/IL7R、IL-6/IL-23、IL-1-β/IL-8、IL-6またはIL-6R/IL-21またはIL-21R;Lewis x構造体、Lewis b構造体、およびLewis y構造体、Globo H構造体、KH1、Tn抗原、TF抗原、ならびに、ムチン、CD44、糖脂質およびスフィンゴ糖脂質、例えばGg3、Gb3、GD3、GD2、Gb5、Gm1、Gm2、シアリルテトラオシルセラミド(sialyltetraosylceramide)、の炭水化物構造体からなる群より選択される抗原の糖鎖エピトープに対するものであり、かつ、第2の特異性が、EGFR、HER2、HER3、およびHER4からなる群より選択されるErbB受容体型チロシンキナーゼに対するものである、BCMA/CD3、HERファミリーの異なる抗原の組合せ(EGFR、HER2、HER3)、CD19/CD3、IL17RA/IL7R、IL-6/IL-23、IL-1-β/IL-8、IL-6またはIL-6R/IL-21またはIL-21R、Tリンパ球NK細胞、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞、神経幹細胞からなる群より選択される免疫学的細胞に関連付けられ第2の抗原結合部位と組み合わせられたGD2、ANG2/VEGF、VEGF/PDGFR-β、血管内皮増殖因子(VEGF)アクセプター2/CD3、PSMA/CD3、EPCAM/CD3、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、FLT3、c-FMS/CSF1R、RET、c-Met、EGFR、Her2/neu、HER3、HER4、IGFR、PDGFR、c-KIT、BCR、インテグリン、およびMMPからなる群より選択される抗原の組合せは、公知であり、水溶性リガンドは、VEGF、EGF、PIGF、PDGF、HGF、およびアンギオポエチン、ERBB-3/C-MET、ERBB-2/C-MET、EGF受容体1/CD3、EGFR/HER3、PSCA/CD3、C-MET/CD3、ENDOSIALIN/CD3、EPCAM/CD3、IGF-1R/CD3、FAPALPHA/CD3、EGFR/IGF-1R、IL17A/F、EGF受容体1/CD3、およびCD19/CD16からなる群より選択される。
【0162】
したがって、本明細書において報告されるモジュール方式のアプローチを用いることによって、テーラーメイドの二重特異性治療的抗体を提供できることが判明している。これらの抗体は、治療を必要とする個体の細胞上に実際に存在する細胞表面分子に対して、またはそのような細胞表面分子と相互作用するリガンドに対して、テーラーメイドである。個体の細胞表面分子の状態を明らかにすることによって、治療標的のテーラーメイドの組合せを選択することができる。
【0163】
2種の異なるエピトープを同時にターゲティングし結合するように2つの単一の治療的分子を組み合わせることによる、二重特異性治療的物質のこのテーラーメイド作製を用いると、単一の治療的分子と比較して相加/相乗効果が予想され得る。
【0164】
治療的抗体に由来するもののような既に入手可能な単特異性治療的結合実体を用いることによって、必要とされる多重特異性結合分子の迅速かつ容易な作製を実現することができる。
【0165】
結合活性を操作されたこれらの結合分子/抗体は、単一の細胞上に存在する2種またはそれ以上の細胞表面マーカーに結合し得る。この結合は、すべての/両方の結合実体が細胞に同時に結合する場合にのみ強い(avid)。この目的には、中度から低度の親和性の(affine)抗体が特に適している。一方で、これにより、スクリーニング過程の間に結合特異性の特異性が低い組合せを除外することも可能になる。
【0166】
選択された患者特異的多重特異性結合分子は、関連する判定基準(例えば、最適な結合/結合相手、最適なリンカー長など)に関して、様々なインビトロ細胞アッセイ法/細胞試料において試験することができる。
-ホスホチロシンキナーゼのリン酸化状態の測定。
-c-Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害の測定。
-分子誘導性アポトーシスの測定。
-単特異性結合分子対多重特異性結合分子を用いて実施される結合アッセイ法。
-増殖阻害の測定。
【0167】
このようなアプローチを用いることにより、テーラーメイドの、したがって極めて効率的な治療的分子の作製が可能である。これらの分子は、ターゲティング/送達(例えば、腫瘍細胞に対する搭載量)の向上によって副作用が減少していると考えられ、標的細胞へのターゲティングの向上は、(少なくとも2つの結合分子を含む)ターゲティング構成要素のより高い選択性および特異性に基づいている。
【0168】
多重特異性結合分子のより高い選択性および特異性は、起こり得る「オフィターゲット」結合を減少させる2つの「低親和性」結合体の組合せによる同時結合(結合力)の寄与によっている。
【0169】
本明細書において報告される方法
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法である:
(i)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、抗体Fab断片またはscFv抗体、
(ii)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、
完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が抗原結合部位を形成し、
完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、
抗体重鎖Fc領域が、そのN末端にオリゴグリシンアミノ酸配列を有している、
抗体断片、ならびに
(iii)ソルターゼA酵素
をインキュベートし、
かつそれによって二重特異性抗体を作製する段階。
【0170】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、二重特異性抗体を作製するための方法である:
(i)試料中の細胞の表面に存在する表面マーカーを決定し、かつそれらから第1の表面マーカーおよび第2の表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、第1の表面マーカーに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体断片、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2の表面マーカーに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ、抗体重鎖Fc領域が、そのN末端にオリゴグリシンアミノ酸配列を有している、抗体断片、ならびに(c)ソルターゼA酵素をインキュベートし、
かつそれによって二重特異性抗体を作製する段階。
【0171】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、抗原結合部位の組合せを決定するための方法である:
(i)抗体Fab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む抗体断片の第2の多数群の各メンバーと組み合わせることによって調製された多数の二重特異性抗体の、結合特異性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階であって、第1の多数群が第1の細胞表面分子に特異的に結合し、かつ第2の多数群が第2の細胞表面分子に特異的に結合する、段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階。
【0172】
1つの態様において、組み合わせる段階は、抗体Fab断片またはscFv抗体断片ならびに完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む抗体断片を、ソルターゼA酵素と共にインキュベートすることを特徴とする。
【0173】
1つの態様において、Fab断片またはscFv抗体断片は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0174】
1つの態様において、一アーム抗体断片の完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖は同種の抗体鎖であり、それらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対は、第2の表面マーカーに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、そのN末端にオリゴグリシンアミノ酸配列を有している。
【0175】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO: 02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含む。
【0176】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 03; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0177】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、アミノ酸配列
(SEQ ID NO: 05; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0178】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 06; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含み、X3はアミノ酸配列タグである。
【0179】
すべての局面の1つの態様において、抗体Fab断片またはscFv抗体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 07; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよく、X3はアミノ酸配列タグである。
【0180】
すべての局面の1つの態様において、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、そのN末端に2つのグリシン残基を含む。
【0181】
すべての局面の1つの態様において、一アーム抗体Fc領域は、その重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端にアミノ酸配列GGCPX4C(SEQ ID NO: 08)を含み、X4はSまたはPのいずれかである。
【0182】
すべての局面の1つの態様において、X1はEである。
【0183】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される方法によって得られる多重特異性結合分子/二重特異性抗体である。
【0184】
1つの局面は、多重特異性結合分子/二重特異性抗体の重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPX1TG(SEQ ID NO: 01; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む多重特異性結合分子/二重特異性抗体である。
【0185】
1つの態様において、多重特異性結合分子/二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO: 02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含む。
【0186】
1つの態様において、多重特異性結合分子/二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 09; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよく、n=1、2、または3)を含む。
【0187】
1つの態様において、多重特異性結合分子/二重特異性抗体は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 10; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、X4がSまたはPでよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0188】
1つの態様において、X1はEである。
【0189】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される抗体/多重特異性結合分子を含む薬学的製剤である。
【0190】
本明細書において報告される1つの局面は、医薬を製造する際の、本明細書において報告される二重特異性抗体/多重特異性結合分子の使用である。
【0191】
1つの態様において、医薬は、癌の治療のためである。
【0192】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体/多重特異性結合分子の有効量を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法である。
【0193】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体/多重特異性結合分子の有効量を個体に投与する段階を含む、個体中の癌細胞を破壊するための方法である。
【0194】
本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、Fc領域は、ヒトFc領域またはその変種である。
【0195】
1つの態様において、ヒトFc領域は、ヒトIgG1サブクラス、またはヒトIgG2サブクラス、またはヒトIgG3サブクラス、またはヒトIgG4サブクラスのものである。1つの態様において、Fc領域は、ヒトIgG1サブクラスまたはヒトIgG4サブクラスのヒトFc領域である。
【0196】
1つの態様において、ヒトFc領域は、異なる残基への、次のアミノ酸位置:228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、329、および/または331のうちの少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基の変異を含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。
【0197】
1つの態様において、ヒトFc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、Fc領域のエフェクター機能が、未改変(野生型)のFc領域と比べて変化する。
【0198】
1つの態様において、ヒトFc領域は、対応する野生型IgG Fc領域を含む結合体と比べて、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性が低い。
【0199】
1つの態様において、ヒトFc領域中の329位のアミノ酸残基は、グリシンもしくはアルギニン、またはFc領域内のプロリンサンドイッチを消失させるのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている。
【0200】
1つの態様において、天然に存在するアミノ酸残基の変異は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、および/またはP331Sである。1つの態様において、変異は、Fc領域がヒトIgG1サブクラスのものである場合にはL234AおよびL235Aであり、またはFc領域がヒトIgG4サブクラスのものである場合にはS228PおよびL235Eである。1つの態様において、Fc領域は、変異P329Gを含む。
【0201】
Fc領域中の所定の位置に2つの変異を組み合わせることによって、Fc領域が関連するエフェクター機能の完全な低下を実現することができる。
【0202】
エフェクター機能を惹起するFc領域の選択は、多重特異性結合分子/二重特異性抗体の所期の用途に依存する。
【0203】
所望の用途が、可溶性標的の機能を無効にすることである場合、エフェクター機能を惹起しないサブクラスまたは変種が選択されるべきである。
【0204】
所望の用途が、(可溶性)標的を除去することである場合、エフェクター機能を惹起するサブクラスまたは変種が選択されるべきである。
【0205】
所望の用途が、細胞に結合した標的に拮抗することである場合、エフェクター機能を惹起しないサブクラスまたは変種が選択されるべきである。
【0206】
所望の用途が、標的提示細胞を除去することである場合、エフェクター機能を惹起するサブクラスまたは変種が選択されるべきである。
【0207】
抗体または抗体Fc領域結合体の循環中半減期は、Fc領域とFcRnの相互作用を調節することによって影響され得る。
【0208】
抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)および補体依存性細胞障害(CDC)を最小化することまたはさらになくすことは、いわゆるヒンジ領域アミノ酸変化/置換によって実現することができる。
【0209】
古典的な補体カスケードの活性化を最小化することまたはさらになくすことは、いわゆるヒンジ領域アミノ酸変化/置換によって実現することができる。
【0210】
抗体または抗体Fc領域結合体の循環半減期の延長は、新生児型Fc受容体への結合を増大させることによって実現することができ、その結果、有効性が改善され、投与用量もしくは投与頻度が減少し、または標的への送達が改善される。抗体または抗体Fc領域結合体の循環半減期の短縮は、新生児型Fc受容体への結合を減少させることによって実現することができ、その結果、全身曝露が減少し、または標的と非標的の結合比が改善される。
【0211】
通常、本明細書において報告される方法は、野生型Fc領域または改変/変種Fc領域のいずれかを含む抗体Fc領域結合体の作製に応用可能である。
【0212】
1つの態様において、Fc領域はヒトFc領域である。
【0213】
1つの態様において、Fc領域は「概念的」であり、物理的には存在しないものの、抗体技術者は使用すべき変種Fc領域を決定することができる。
【0214】
1つの態様において、抗体Fc領域結合体のFc領域部分をコードする核酸は、抗体Fc領域結合体の変種Fc領域部分をコードする変種核酸配列を生じるように改変される。
【0215】
抗体Fc領域結合体のFc領域部分のアミノ酸配列をコードする核酸は、当技術分野において公知の様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、部位特異的(またはオリゴヌクレオチドを媒介とした)変異誘発、PCR変異誘発、および抗体Fc領域結合体のポリペプチドをコードする前もって調製されたDNAのカセット変異誘発による調製が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0216】
Fc領域は、限定されるわけではないが、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIA)、補体タンパク質C1q、ならびにプロテインAおよびプロテインGなどの他の分子を含むいくつかの受容体またはリガンドと相互作用する。これらの相互作用は、限定されるわけではないが、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞性食作用(ADCP)、および補体依存性細胞障害(CDC)を含む、様々なエフェクター機能および下流のシグナル伝達事象のために不可欠である。
【0217】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される) 抗体Fc領域結合体は、次の特性のうちの少なくとも1つまたは複数を有する:低下もしくは消失した(ablated)エフェクター機能(ADCCおよび/もしくはCDCならびに/またはADCP)、Fc受容体への減少もしくは消失した結合、C1qへの減少もしくは消失した結合、または減少もしくは消失した毒性。
【0218】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、少なくとも2つのアミノ酸変異、付加、または欠失を有する野生型Fc領域を含む。
【0219】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、野生型ヒトFc領域を含む抗体または抗体Fc領域結合体と比べて、ヒトFc受容体(FcγR)および/またはヒト補体受容体に対する親和性が低下している。
【0220】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、野生型ヒトFc領域を含む抗体または抗体Fc領域結合体と比べてヒトFc受容体(FcγR)および/またはヒト補体受容体に対する親和性が低下しているFc領域を含む。
【0221】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、FcγRI、FcγRII、および/またはFcγRIIIAのうちの少なくとも1つに対する親和性が低下している。1つの態様において、FcγRIおよびFcγRIIIAに対する親和性が低下している。1つの態様において、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIAに対する親和性が低下している。
【0222】
1つの態様において、FcγRI、FcγRIIIA、およびC1qに対する親和性が低下している。
【0223】
1つの態様において、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIA、およびC1qに対する親和性が低下している。
【0224】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、野生型Fc領域を含む抗体または抗体Fc領域結合体と比べて、ADCCが減少している。1つの態様において、ADCCは、野生型Fc領域を含むFc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体によって誘導されるADCCと比べて、少なくとも20%減少している。
【0225】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、野生型Fc領域を含む抗体Fc領域結合体と比べて、Fc領域によって誘導されるADCCおよびCDCが減少または消失している。
【0226】
1つの態様において、(本明細書において報告される方法を用いて作製される)抗体Fc領域結合体は、野生型Fc領域を含むOA-Fc領域結合体と比べて、ADCC、CDC、およびADCPが減少している。
【0227】
1つの態様において、抗体Fc領域結合体は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、およびP331Sを含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸置換をFc領域中に含む。
【0228】
1つの態様において、野生型Fc領域はヒトIgG1 Fc領域またはヒトIgG4 Fc領域である。
【0229】
1つの態様において、抗体Fc領域は、329位のアミノ酸残基プロリンの変異に加えて、抗体Fc領域結合体の安定性上昇と相関関係があるFc領域中のアミノ酸残基の、少なくとも1つのさらなる付加、変異、または欠失を含む。
【0230】
1つの態様において、Fc領域中のアミノ酸残基のさらなる付加、変異、または欠失は、Fc領域がIgG4サブクラスのものである場合、Fc領域の228位および/または235位に存在する。1つの態様において、228位のアミノ酸残基セリンおよび/または235位のアミノ酸残基ロイシンが、別のアミノ酸によって置換される。1つの態様において、抗体Fc領域結合体は、228位にプロリン残基を含む(セリン残基からプロリン残基への変異)。1つの態様において、抗体Fc領域結合体は、235位にグルタミン酸残基を含む(ロイシン残基からグルタミン酸残基への変異)。
【0231】
1つの態様において、Fc領域は、3つのアミノ酸変異を含む。1つの態様において、3つのアミノ酸変異は、P329G、S228P、およびL235E変異(P329G/SPLE)である。
【0232】
1つの態様において、Fc領域中のアミノ酸残基のさらなる付加、変異、または欠失は、Fc領域がIgG1サブクラスのものである場合、Fc領域の234位および/または235位に存在する。1つの態様において、234位のアミノ酸残基ロイシンおよび/または235位のアミノ酸残基ロイシンが、別のアミノ酸に変異する。
【0233】
1つの態様において、Fc領域は、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を234位に含む。
【0234】
1つの態様において、Fc領域は、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を235位に含む。
【0235】
1つの態様において、Fc領域は、プロリンアミノ酸残基がグリシンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を329位に、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を234位に、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を235位に含む。
【0236】
FcRnに対する親和性が上昇しているFc領域変種は、より長い血清半減期を有しており、このような分子は、例えば、慢性的な疾患または障害を治療するために、投与される抗体Fc領域結合体の全身半減期が長いことが望ましい場合、哺乳動物を治療する方法において有用な用途があると考えられる。
【0237】
FcRn結合親和性が低下している抗体Fc領域結合体は、より短い血清半減期を有しており、このような分子は、例えば、毒性の副作用を回避するため、またはインビボの画像診断法に応用するために、投与される抗体Fc領域結合体の全身半減期がより短いことが望ましい場合、哺乳動物を治療する方法において有用な用途があると考えられる。FcRn結合親和性が低下したFc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体は、胎盤を通過する可能性が低いことが予期され、したがって、妊婦の疾患または障害の治療において使用され得る。
【0238】
1つの態様において、FcRnに対する結合親和性が変化したFc領域は、アミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439、および/または447のうちの1つまたは複数においてアミノ酸改変を有するFc領域である。
【0239】
1つの態様において、Fc領域は、アミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439、および/または447において1つまたは複数のアミノ酸改変を有するFc領域である。
【0240】
1つの態様において、FcRnへの結合の増大を示すFc領域は、アミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、および/または434に1つまたは複数のアミノ酸改変を含む。
【0241】
1つの態様において、Fc領域は、IgG1サブクラスのFc領域であり、アミノ酸変異P329G、ならびに/またはL234AおよびL235Aを含む。
【0242】
1つの態様において、Fc領域は、IgG4サブクラスのFc領域であり、アミノ酸変異P329G、ならびに/またはS228PおよびL235Eを含む。
【0243】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366Wならびに第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366S、L368A、およびY407Vを含み、番号付与は、KabatのEUインデックスに従っている。
【0244】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異S354Cおよび第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異Y349Cを含む。
【0245】
ソルターゼAを用いた酵素的結合
一アーム抗体(OA-Fc)および1つまたは複数の抗原結合ドメインを含む二重特性抗体は、例えば、酵素ソルターゼAを用いることによって得ることができる。
【0246】
多くのグラム陽性菌は、ソルターゼを用いて、病原性因子を含む様々な表面タンパク質をそれらの細胞壁(ペプチドグリカン)に共有結合的に固定する。ソルターゼは、細胞外膜結合型酵素である。野生型黄色ブドウ球菌ソルターゼA(SrtA)は、N末端に膜貫通領域を有する、アミノ酸206個からなるポリペプチドである。第1段階において、ソルターゼAは、LPX1TGアミノ酸配列モチーフを含む基質タンパク質を認識し、活性部位Cysを用いてThrとGlyの間のアミド結合を切断する。このペプチド切断反応により、ソルターゼAチオエステル中間体が生じる。第2段階で、チオエステルアシル−酵素中間体は、(黄色ブドウ球菌(S. aureus)のペプチドグリカンのペンタグリシン単位に相当する)オリゴグリシンを含む第2の基質ポリペプチドのアミノ基の求核攻撃によって分解されて、共有結合的に結合された細胞壁タンパク質が生じ、ソルターゼAが再生される。オリゴグリシン求核剤がない場合、アシル−酵素中間体は水分子によって加水分解される。
【0247】
ソルターゼを媒介とした連結/結合は、様々なタンパク質工学およびバイオコンジュゲーションの目的に応用され始めている。この新しい技術により、LPX1TGタグ付きの組換えポリペプチドまたは化学的に合成されたポリペプチドに天然および非天然の機能性を導入することが可能になる。例には、オリゴグリシンで誘導体化されたポリマー(例えばPEG)、蛍光体、ビタミン(例えば、ビオチンおよび葉酸)脂質、炭水化物、核酸、合成ペプチドおよび合成タンパク質(例えばGFP)の共有結合が含まれる(Tsukiji, S. and Nagamune, T., ChemBioChem 10 (2009) 787-798; Popp, M.W.-L. and Ploegh, H.L., Angew. Chem. Int. Ed. 50 (2011) 5024-5032)。
【0248】
アミノ構成要素のトリグリシンおよびジグリシンモチーフでさえ、SrtAを媒介とする連結段階に十分であることが示されている(Clancy, K.W., et al., Peptide Science 94 (2010) 385-396)。
【0249】
酵素的結合のために、膜貫通領域を欠く可溶性の短縮型ソルターゼA(SrtA;黄色ブドウ球菌SrtAのアミノ酸残基60〜206)が使用され得る(Ton-That, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (1999) 12424-12429; Ilangovan, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001) 6056-6061)。短縮型可溶性ソルターゼA変種は、大腸菌(E.coli)において作製することができる。
【0250】
少なくともN末端の1つにオリゴグリシン(Gm、m=2または3または4または5)を含む抗体Fc領域は、真核細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞)の上清から発現および精製することができる。
【0251】
1つのポリペプチド鎖のC末端にSrtA認識モチーフを含む結合実体(例えば、scFv、scFab、もしくはダルピンなどの単鎖抗原結合ポリペプチドまたはdsFvもしくはFabなどの多鎖抗原結合ポリペプチド)は、真核細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞)の上清から発現および精製することができる。
【0252】
本明細書において報告される1つの局面は、酵素ソルターゼAを用いて抗原結合ポリペプチド/ドメイン(例えば、scFvまたはFab)を一アーム抗体変種(OA-Fc)に結合することによって得られる二重特異性抗体であって、ソルターゼ認識配列が、単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、scFv、scFab、もしくはダルピン)のC末端または多鎖抗原結合複合体(例えば、dsFvまたはFab)の1つのポリペプチド鎖のC末端に位置しており、グリシン2個または3個(double or triple)のモチーフが、一アーム抗体変種のFc鎖のN末端に位置している(OA-Fc-Gm;m=2または3)、二重特異性抗体である。抗体Fab断片(OA-Fc〜Fab)またはscFv抗体断片(OA-Fc〜scFv)および一アーム抗体(OA-Fc)を含む、一アーム抗体とFabまたはscFvとの結合体は、(i)そのC末端領域にアミノ酸配列GnSLPX1TG(SEQ ID NO:02; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含むポリペプチド、(ii)そのN末端にオリゴグリシンを含む重鎖Fc領域ポリペプチド、および(iii)酵素ソルターゼAを用いることによる酵素的結合において高収率で得ることができる。
【0253】
反応物のこの組合せを用いると、反応回数が増えると通常起こっている以下は、減少し得るかまたはさらになくなり得る:
(i)生成物である結合体の内部のLPX1TGアミノ酸配列を基質として認識する逆反応、および/または
(ii)行き止まりの加水分解ポリペプチド断片(Gm-抗体Fc領域求核剤の代わりに水によってチオアシル−結合実体ソルターゼA中間体が切断されて生成する、LPX1TG認識配列を有していない/が切断されたポリペプチド)の生成。
【0254】
C末端およびN末端のアミノ酸配列組合せの様々な組合せが試験された。
【0255】
より詳細には、例示的な結合実体として抗体Fab断片が使用され、例示的な抗体Fc領域として、一アーム抗体Fc領域(OA-Fc領域=完全長抗体重鎖およびその同種の軽鎖と重鎖抗体Fc領域ポリペプチドとの対)が使用された。抗体Fab断片VH-CH1重鎖のC末端およびOA-Fc領域のN末端において、それぞれ3種の異なる配列を、例示的なトランスペプチダーゼであるソルターゼAを用いて結合した。9種の異なる結合体が得られた。結合反応の進行/効率を様々な時点に測定した。このために、ペプチド転移反応の分取物をSDS-PAGEによって解析した。連結効率は、ゲルから濃度測定によって推定した。これらの結果を下記の表1に示す。
【0256】
(表1)
【0257】
1つの態様において、Fab抗体断片またはscFv抗体断片は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 03; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含む。
【0258】
1つの態様において、Fab抗体断片またはscFv抗体断片は、アミノ酸配列
(SEQ ID NO: 05; X1が、任意のアミノ酸残基であってよい)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよい。
【0259】
1つの態様において、Fab抗体断片またはscFv抗体断片は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 06; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含み、X3はアミノ酸配列タグである。
【0260】
1つの態様において、Fab抗体断片またはscFv抗体断片は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列
(SEQ ID NO: 07; X1が、任意のアミノ酸残基であってよく、n=1、2、または3)を含み、X2は、G以外の任意のアミノ酸残基であってよく、X3はアミノ酸配列タグである。
【0261】
「コンビマトリックス(Combimatrix)」アプローチ
抗体Fab断片のような第1の結合実体を別の特異的結合実体、例えば、第2のFab断片または完全長重鎖およびその同種の軽鎖およびジスルフィド結合された重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片と組み合わせることが望ましい。さらに、第1の結合実体をいくつかの異なる他の結合実体に連結した場合に、第1の結合実体がより優れた特性を示すかどうかスクリーニングすることも可能である。いわゆるコンビマトリックスアプローチを用いて、結合実体の多数の組合せを簡単な方法で扱うことができる。第2の結合実体が、異なる標的/エピトープ/抗原に結合できるのか、または同じ抗原に結合するが異なるエピトープに結合できるのか、または同じエピトープに結合するが、単一の結合実体の異なる変種(例えば、ヒト化候補物)であり得るのかを指摘しなければならない。
【0262】
このシナリオでは、自動化プラットホームが、結合実体およびそれらの反応物(reactions)または派生物(derivatives)をピペットで量り、精製し、混合する任務を果たし得る。例えば96ウェルプレートまたは他のハイスループットな形式、例えばEppendorf epMotion 5075vacピペッティングロボットを使用する任意のプラットホームが適している。
【0263】
最初に、結合実体をコードする構築物のクローニングが実施される。結合実体をコードする核酸を有するプラスミドは、コードされる1つの結合実体のC末端領域がソルターゼモチーフおよびHisタグを含み、他の各結合実体の1つのN末端領域がオリゴグリシンモチーフを含むようにする遺伝子合成によって、または定常領域、ソルターゼモチーフ、およびHisタグのような必要なエレメントをそれぞれ含む適切なベクター中に、B細胞PCRならびに配列およびライゲーションに依存しないクローニング(SLIC)によって可変ドメインをクローニングすることによって、通常は得られる。プラスミドは、マルチウェルプレートの別々のウェル中に個別に移される(プレート全体に載せることができる)。その後、プラスミドは、結合実体コード領域を切り離す制限酵素ミックスを用いて消化される。すべてのプラスミドに対して必要な制限酵素ミックスが1種類だけになるようにすべての遺伝子合成を設計することが望ましい。その後、任意の洗浄段階により、精製されたDNA断片が得られる。これらの断片は、前述したのと同じ制限ミックスを用いてアクセプターベクターから切り取っておかれたプラスミド骨格にライゲーションされる。あるいは、クローニング手順は、SLICによるクローニング段階によっても実施され得る(例えば、PCT/EP2012/076155を参照されたい)。ライゲーション後、自動化プラットホームは、すべてのライゲーションミックスを、コンピテント大腸菌(E. coli)細胞を有する別のマルチウェルプレート(例えば、Top10 Multi Shot、Invitrogen)に移し、形質転換反応が実施される。これらの細胞は、所望の密度まで培養される。
【0264】
培養混合物の分取物から、グリセロールストックを得ることができる。培養物から、(例えば、プラスミド単離ミニキット(例えば、NucleoSpin 96 Plasmid、Macherey&Nagel)を用いて)プラスミドが単離される。適切な制限ミックスによる分取物の消化およびポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、E-Gel 48、Invitrogen)によって、プラスミドのアイデンティティが検査される。その後、対照の配列決定反応を実施するために、プラスミド分取物を新しいプレートに載せることができる。
【0265】
次の段階において、結合実体が発現される。したがって、HEK細胞は、マルチウェルプレート(例えば48ウェルプレート)または小型の振盪フラスコに播種され、(適切なバックボーンベクター中に結合実体コード領域を含む)単離されたプラスミドを用いてトランスフェクトされる。トランスフェクトされたHEK細胞は数日間培養され、(例えば、バキュームステーションを用いて1.2μmおよび0.22μmのフィルタープレートに通してろ過することにより)回収される。力価は、例えばELISAを実施することによってモニターされ得る。
【0266】
結合実体は、ソルターゼを媒介としたペプチド転移反応を用いて、互いに連結され得る。第1の結合実体、第2の結合実体、およびソルターゼの反応ミックスは、マルチウェルの形式で混合され得る。37℃で4〜72時間(例えば16時間)インキュベーションした後、Hisタグネガティブ選択手順を用いることによって、結合体を回収することができる(混合物が、例えばHis MultiTrap HPプレート(GE Healthcare)に添加され、ろ過される。Hisタグを引き続き有している分子はすべて、クロマトグラフィーカラムに結合しているのに対し、結合体はろ液中に存在する;例えば、結合体を限外ろ過膜にアプライすることによって、または結合実体のうちの1つに対して特異的な親和性媒体を含むプレートを用いることによって、ろ液のバッファー交換が行われるべきである。
【0267】
多重特異性結合分子は、コンビマトリックスアプローチを用いて作製され得る。下記の表を参照されたい。
【0268】
マルチウェルプレートの最初の列の、アラビア数字(例えば1〜11)で示された各ウェル(最初の列の最初のウェルを除く)に、C末端ソルターゼモチーフを含む等モル濃度の様々な第1の結合実体がピペットで分注される。同じプレートの最初の縦列の、文字(例えばA〜G)で示された各ウェル(最初の縦列の最初のウェルを除く)に、N末端領域にオリゴグリシンを含む等モル濃度の様々な第2の結合実体がピペットで分注される。その後、最初の列の第1の結合実体のすべてが、最初の縦列の第2の結合実体のすべてと組み合わされ(例えば、96ウェルプレートにおいて77個の組合せが得られる)、数字と文字の組合せによって示される(例えば、1A〜11G)。すべての組合せに対して、適切な緩衝液に溶かしたソルターゼが添加される。酵素的結合が実施された後、最適な精製段階が実施され得る。次いで、多重特異性結合分子は、細胞ベースのアッセイ法においてそのまま評価される。
【0269】
III. 組換え法
OA-Fc領域結合体の連結構成要素、特に、一アーム抗体変種(OA-Fc-Gm)および単鎖抗原結合ポリペプチド(例えば、scFv、scFab、もしくはダルピン)または多鎖抗原結合複合体(例えば、dsFvまたはFab)は、組換え法および組換え組成物を用いて作製することができる。例えば、US4,816,567を参照されたい。
【0270】
1つの局面において、OA-Fc〜ポリペプチド結合体を作製する方法が提供され、この方法は、(i)結合体の一アーム抗体変種(OA-Fc-Gm)部分をコードする核酸を含む第1の宿主細胞を、一アーム抗体変種(OA-Fc-Gm)の発現/分泌に適した条件下で培養し、任意で、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)からOA-Fc-Gm部分を回収する段階、および(ii)結合体のポリペプチド部分をコードする核酸を含む第2の宿主細胞を、ポリペプチドの発現/分泌に適した条件下で培養し、任意で、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)からポリペプチド部分を回収する段階、および(iii)ソルターゼAを媒介としたペプチド転移を用いて、OA-Fc〜ポリペプチド結合体の組換えによって作製した部分を酵素的に結合させる段階を含む。
【0271】
OA-Fc〜ポリペプチド結合体のOA-Fc-Gm部分およびポリペプチド部分を組換えによって作製するために、例えば、前述したようなOA-Fc〜ポリペプチド結合体のOA-Fc-Gm部分およびポリペプチド部分をコードする核酸が単離され、宿主細胞においてさらにクローニングおよび/または発現/分泌させるために、1つまたは複数のベクター中に挿入される。このような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および/または作製され得る。
【0272】
ポリペプチドをコードするベクターのクローニングまたは発現/分泌に適した宿主細胞には、本明細書において説明する原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、ポリペプチドは細菌において作製され得る(例えば、大腸菌における抗体断片の発現を説明しているUS5,648,237、US5,789,199、およびUS5,840,523、Charlton, Methods in Molecular Biology 248 (2003) 245-254 (B.K.C. Lo, (ed.), Humana Press, Totowa, NJ)を参照されたい)。発現後、ポリペプチドは、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、または可溶化して生物活性型にリフォールディングされ得る不溶性画分、いわゆる封入体から単離され得る。その後、ポリペプチドはさらに精製され得る。
【0273】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、ポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的または全面的にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する真菌株および酵母株が含まれる(例えば、Gerngross, Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414、およびLi, et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照されたい)。
【0274】
またグリコシル化ポリペプチドの発現のために適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0275】
植物細胞培養物もまた、宿主として使用することができる(例えば、US5,959,177、US6,040,498、US6,420,548、US7,125,978、およびUS6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を産生させるためのPLANTIBODIES(商標)技術を説明している)を参照されたい)。
【0276】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように順応させた哺乳動物細胞株が、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、COS-7細胞株(SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞;HEK293細胞株(ヒト胎児腎(human embryonic kidney))BHK細胞株(仔ハムスター腎臓(baby hamster kidney));TM4マウスセルトリ細胞株(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23 (1980) 243-251で説明されているTM4細胞);CV1細胞株(サル腎臓細胞);VERO-76細胞株(アフリカミドリザル腎臓細胞);HELA細胞株(ヒト子宮頸部癌細胞);MDCK細胞株(イヌ腎臓細胞);BRL-3A細胞株(バッファローラット肝臓細胞(buffalo rat liver cell));W138細胞株(ヒト肺細胞);HepG2細胞株(ヒト肝臓細胞);MMT060562細胞株(マウス乳房腫瘍細胞(mouse mammary tumor cell));例えば、Mather, et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68で説明されているTRI細胞株;MRC5細胞株;およびFS4細胞株である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR欠損(negative)CHO細胞株(Urlaub, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216)を含むCHO細胞株(チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell))、ならびにY0、NS0、およびSp2/0細胞株などの骨髄腫細胞株が含まれる。ポリペプチド産生に適したいくつかの哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、Yazaki, and Wu, Methods in Molecular Biology, Antibody Engineering 248 (2004) 255-268 (B.K.C. Lo, (ed.), Humana Press, Totowa, NJ)を参照されたい。
【0277】
IV. 診断および検出のための方法および組成物
一定の態様において、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかは、生物試料において一方または両方の抗原の存在を検出するのに有用である。本明細書において使用される「検出する」という用語は、定量的検出または定性的検出を包含する。一定の態様において、生物試料は、細胞または組織、例えば癌細胞の生検材料を含む。
【0278】
1つの態様において、診断または検出の方法において使用するための二重特異性抗体が提供される。さらなる局面において、癌細胞の存在を生物試料において検出する方法が提供される。一定の態様において、この方法は、二重特異性抗体がその1つまたは複数の抗原に結合するのを許容する条件下で、生物試料を本明細書において説明する二重特異性抗体と接触させる段階、および二重特異性抗体とその1つまたは複数の抗原との間で複合体が形成されるかどうかを検出する段階を含む。このような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であってよい。
【0279】
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害には、癌が含まれる。
【0280】
一定の態様において、標識された二重特異性抗体が提供される。標識には、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光性標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)、ならびに例えば酵素反応または分子相互作用を通じて間接的に検出される酵素またはリガンドなどの部分が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的な標識には、ラジオアイソトープ32P、14C、125I、3H、および131I、蛍光体、例えば、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなど、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシターゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、過酸化水素を使用して色素前駆体を酸化する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼと併用される、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの糖類酸化酵素、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環系酸化酵素、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、ならびに、安定なフリーラジカルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0281】
V. 薬学的製剤
本明細書において説明する二重特異性抗体の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有するそのような抗体を1種または複数種の任意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.), (1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水性液剤の形態で調製される。通常、薬学的に許容される担体は、使用される投与量および濃度において受容者に非毒性であり、限定されるわけではないが、次のものが含まれる:リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)のような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸; グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムのような、塩を形成する対イオン;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン系界面活性剤。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、さらに、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)のような間質(interstitial)薬物分散剤、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International, Inc.)のようなヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が含まれる。rhuPH20を含む、いくつかの例示的なsHASEGPおよび使用方法は、US 2005/0260186およびUS 2006/0104968において説明されている。1つの局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼのような1種または複数種の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0282】
例示的な凍結乾燥抗体製剤が、US 6,267,958において説明されている。水性抗体製剤には、US6,171,586およびWO 2006/044908において説明されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0283】
また本明細書における製剤は、治療される個々の適応症に対する必要に応じて複数種の有効成分、好ましくは、補完的な活性を有し、互いに悪影響を及ぼさないものも含んでよい。このような有効成分は、意図される目的のために有効な量で組み合わせられて存在するのが適切である。
【0284】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に閉じ込めることができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)で開示されている。
【0285】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは造形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0286】
通常、インビボ投与のために使用される製剤は、滅菌済みである。無菌状態は、例えば、滅菌ろ過膜に通してろ過することによって、容易に実現することができる。
【0287】
VI. 治療方法および治療的組成物
本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかを治療方法で使用することができる。
【0288】
1つの局面において、医薬として使用するための二重特異性抗体が提供される。さらなる局面において、癌を治療する際に使用するための二重特異性抗体が提供される。一定の態様において、治療の方法において使用するための二重特異性抗体が提供される。一定の態様において、本発明は、有効量の二重特異性抗体を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法において使用するための、二重特異性抗体を提供する。1つのこのような態様において、この方法は、例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において、本発明は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解する際に使用するための二重特異性抗体を提供する。一定の態様において、本発明は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の二重特異性抗体を個体に投与する段階を含む、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解する方法において使用するための、二重特異性抗体を提供する。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであることができる。
【0289】
さらなる局面において、本発明は、医薬を製造または調製する際の二重特異性抗体の使用を提供する。1つの態様において、医薬は、癌の治療のためである。さらなる態様において、医薬は、癌を有している個体に有効量の医薬を投与する段階を含む癌を治療する方法において使用するためである。1つのこのような態様において、この方法は、例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において、医薬は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するためである。さらなる態様において、医薬は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の医薬を個体に投与する段階を含む、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解する方法において使用するためである。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであってよい。
【0290】
さらなる局面において、本発明は、癌を治療するための方法を提供する。1つの態様において、この方法は、癌を有している個体に有効量の二重特異性抗体を投与する段階を含む。1つのこのような態様において、この方法は、後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであってよい。
【0291】
さらなる局面において、本発明は、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するための方法を提供する。1つの態様において、この方法は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の二重特異性抗体を個体に投与する段階を含む。1つの態様において、「個体」はヒトである。
【0292】
さらなる局面において、本発明は、例えば、上記の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書において提供される二重特異性抗体いずれかを含む薬学的製剤を提供する。1つの態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかおよび薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかおよび例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質を含む。
【0293】
本発明の抗体は、治療法において単独でまたは他の作用物質と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1種の追加の治療物質と同時投与されてよい。一定の態様において、追加の治療物質は、細胞毒性剤または化学療法剤である。
【0294】
前述のこのような併用療法は、併用投与(2種またはそれ以上の治療物質が同じ製剤または別々の製剤に含まれる)、ならびに、追加の治療物質および/またはアジュバントの投与の前、同時、および/または後に本発明の抗体の投与が行われ得る個別投与を包含する。また、本発明の抗体は、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0295】
本発明の抗体(および任意の追加の治療物質)は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに局所的治療のために望ましいならば、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短時間であるかまたは長期的であるかにある程度応じて、任意の適切な経路によって、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によって行うことができる。限定されるわけではないが、単回投与または様々な時点に渡る複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含む様々な投薬スケジュールが、本明細書において企図される。
【0296】
本発明の抗体は、優良医療規範(good medical practice)と一致する様式で製剤化され、分量を決定され(dosed)、投与される。この状況で考慮すべき因子には、治療される個々の障害、治療される個々の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用物質の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、および医療担当者に公知である他の因子が含まれる。抗体は、そうする必要はないが、任意で、問題の障害を予防または治療するのに現在使用されている1種または複数種の作用物質と共に製剤化される。このような他の作用物質の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上記の他の因子に依存する。通常、これらは、本明細書において説明するのと同じ投与量および投与経路で、もしくは本明細書において説明する投与量の約1〜99%で、または適切であると実験的に/臨床的に判定される任意の投与量および任意の経路で、使用される。
【0297】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な投与量(単独で、または1種もしくは複数種の他の追加の治療物質と組み合わせて使用される場合)は、治療しようとする疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、その抗体が予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのか、以前の治療法、患者の臨床歴、および抗体に対する応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は、1回で、または一連の治療の間、患者に適宜投与される。疾患のタイプおよび重症度によって、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.5mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、患者に投与するための最初の候補投与量であることができ、例えば、1回または複数回の個別投与によるか持続輸注によるかを問わない。1つの典型的な1日投与量は、前述の因子に応じて、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲にわたり得る。数日間またはそれより長い期間に渡る反復投与の場合、病態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、通常、治療は継続される。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは10mg/kg(またはその任意の組合せ)という1種または複数種の用量が、患者に投与され得る。このような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間ごとに(例えば、患者に抗体が約2〜約20回、または例えば約6回与えられるように)投与されてよい。最初に多めの負荷用量、続いて、1回または複数回の少なめの用量を投与してよい。例示的な投薬計画は、[[公知であれば、例示的な投薬計画を追加されたい、例えば「約4mg/kgの初期負荷用量の抗体、続いて約2mg/kgの週に一度の維持用量の抗体」]]を投与する段階を含む。しかしながら、他の投与計画が有用である場合がある。この治療法の経過は、従来の技術およびアッセイ法を用いて容易にモニターされる。
【0298】
二重特異性抗体の代わりにまたは二重特異性抗体に加えて、本発明の免疫結合体を用いて、上記の製剤または治療方法のいずれかを実施できることが理解される。
【0299】
VII. 製造物
本発明の別の局面において、前述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な材料を含む製造物が提供される。製造物は、容器、および容器の上または容器に伴うラベルまたは添付文書を含む。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてよい。容器は、単独であるか、または病態を治療、予防、および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせられた組成物を含み、無菌取出口を有してよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺すことができる栓を有する静注液バッグまたはバイアルでよい)。組成物中の少なくとも1種の活性物質は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、その組成物が、選ばれた病態を治療するのに使用されることを示す。さらに、製造物は、(a)本発明の抗体を含む組成物がその中に含まれる第1の容器;および(b)別の細胞障害性物質またはそうでなければ治療物質を含む組成物がその中に含まれる第2の容器を含んでよい。本発明のこの態様の製造物は、それらの組成物を用いて特定の病態を治療できることを示す添付文書をさらに含んでよい。あるいはまたはさらに、製造物は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の(または第3の)容器をさらに含んでよい。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料もさらに含んでよい。
【0300】
上記の製造物のいずれかは、二重特異性抗体の代わりにまたは二重特異性抗体に加えて、本発明の免疫結合体を含んでよいことが理解される。
【0301】
配列表の説明:
SEQ ID NO: 01〜07および66〜67 ソルターゼモチーフ
SEQ ID NO: 08 Fc領域求核剤
SEQ ID NO: 09〜10 結合体中のソルターゼモチーフの残り
SEQ ID NO: 11〜29 アミノ酸配列タグ
SEQ ID NO: 30 ヒトCH2ドメイン
SEQ ID NO: 31 ヒトCH3ドメイン
SEQ ID NO: 32〜46 例示的な野生型および変種の抗体重鎖Fc領域ポリペプチド
SEQ ID NO: 47〜65 実施例で使用される配列
【実施例】
【0302】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例である。上記に提供した一般的説明を前提として、他の様々な態様が実施され得ることが理解されよう。
【0303】
前述の本発明は、理解を明確にするために、例示および例としていくらか詳しく説明してきたが、これらの説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0304】
材料および方法
組換えDNA技術
Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)において説明されているように、標準的方法を用いてDNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の取扱い説明書に従って使用した。
【0305】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、Geneart GmbH(Regensburg, Germany)において化学合成によって調製された。合成された遺伝子断片を、増殖/増幅のために大腸菌プラスミド中にクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。
【0306】
タンパク質測定
280nmにおける光学濃度(OD)を測定し、ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いることによって、精製したポリペプチドのタンパク質濃度を決定した。
【0307】
実施例1
発現プラスミドの作製
基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドの説明
ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)の一過性トランスフェクションによって、所望のタンパク質を発現させた。所望の遺伝子/タンパク質(例えば、完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、またはN末端にオリゴグリシンを含むFc鎖)を発現させるために、以下の機能的エレメントを含む転写ユニットを使用した:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列(SS)、
-発現させようとする遺伝子/タンパク質(例えば、完全長抗体重鎖)、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0308】
発現させようとする所望の遺伝子を含む発現ユニット/カセットのほかに、基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、
-大腸菌においてこのプラスミドが複製するのを可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
-大腸菌にアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0309】
以下のポリペプチド/タンパク質をコードする発現プラスミドを構築した:
-T366W変異を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域と組み合わせられたペルツズマブ重鎖可変ドメイン:

-ヒトκ軽鎖定常領域と組み合わせられたペルツズマブ軽鎖可変ドメイン:

-T366S、L368A、およびY407V変異を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域と組み合わせられたトラスツズマブ重鎖可変ドメイン:

-ヒトκ軽鎖定常領域と組み合わせられたトラスツズマブ軽鎖可変ドメイン:

-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
アミノ酸配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体Fab断片:

-N末端
配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):

-N末端GGHTCPPC配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):

-N末端GGCPPC配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):

-N末端
配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):

-N末端GGHTCPPC配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):

-N末端GGCPPC配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
【0310】
実施例2
一過性発現、精製、および分析的特徴決定
F17培地(Invitrogen Corp.)中で培養したHEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞株293に由来(human embryonic kidney cell line 293-derived))の一過性トランスフェクションによって、抗体鎖を生じさせた。トランスフェクションには、「293フェクチン」トランスフェクション試薬(Invitrogen)を使用した。抗体鎖は、完全長重鎖(ペルツズマブ-ノブまたはトラスツズマブ-ホールのいずれか)、対応する完全長軽鎖、およびノブとしてまたはホール変種としてのN末端オリゴグリシン配列のうちの1つを含む重鎖Fc領域ポリペプチドをコードする3種の異なるプラスミドから発現させた。これら3種のプラスミドは、トランスフェクションの際、等モルのプラスミド比で使用した。トランスフェクションは、製造業者の取扱い説明書で指定されたようにして実施した。トランスフェクション後7日目に、抗体Fc領域を含む細胞培養上清を回収した。精製するまで、上清を凍結して保存した。
【0311】
抗体Fc領域を含む培養上清をろ過し、2回のクロマトグラフィー工程によって精製した。PBS(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl)、pH7.4で平衡にしたHiTrap MabSelectSuRe(GE Healthcare)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体Fc領域を捕捉した。平衡緩衝液で洗浄することによって、未結合タンパク質を除去し、0.1Mクエン酸緩衝液、pH3.0を用いて抗体Fc領域を回収した。溶離の直後に、1M Tris塩基、pH9.0を用いて溶液をpH6.0に中和した。Superdex 200(商標)(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを、2回目の精製工程として使用した。サイズ排除クロマトグラフィーは、40mM Tris-HCl緩衝液、0.15M NaCl、pH7.5中で実施した。溶出した抗体Fc領域を、Biomax-SK膜(Millipore, Billerica, MA)が装備されたUltrafree-CL遠心ろ過装置を用いて濃縮し、-80℃で保存した。
【0312】
280nmにおける光学濃度(OD)を測定し、アミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いることによって、抗体Fc領域のタンパク質濃度を決定した。還元剤(5mM 1.4-ジチオトレイトール(dithiotreitol))の存在下および非存在下でのSDS-PAGEならびにクーマシーブリリアントブルーを用いた染色によって、精製および適切な抗体Fc領域形成を解析した。
【0313】
実施例3
C末端LPX1TGモチーフを含む抗体Fab断片の一過性発現、精製、および分析的特徴決定
F17培地(Invitrogen Corp.)中で培養したHEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞株293に由来(human embryonic kidney cell line 293-derived))の一過性トランスフェクションによって、抗体Fab断片を生じさせた。トランスフェクションには、「293フェクチン」トランスフェクション試薬(Invitrogen)を使用した。抗体Fab断片は、完全長軽鎖(ペルツズマブまたはトラスツズマブのいずれか)およびC末端LPX1TG配列のうちの1つを含む対応する短縮型重鎖をコードする、2種の異なるプラスミドから発現させた。これら2種のプラスミドは、トランスフェクションの際、等モルのプラスミド比で使用した。トランスフェクションは、製造業者の取扱い説明書で指定されたようにして実施した。トランスフェクション後7日目に、Fab断片を含む細胞培養上清を回収した。精製するまで、上清を凍結して保存した。
【0314】
Fab断片を含む培養上清をろ過し、2回のクロマトグラフィー工程によって精製した。PBSおよび20mMイミダゾール(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl、20mMイミダゾール)、pH7.4で平衡化したHisTrap HP Ni-NTAカラム(GE Healthcare)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、Fab断片を捕捉した。平衡緩衝液で洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。ヒスチジンタグ付きタンパク質を、10カラム容量のPBS中20mM〜400mMイミダゾールの直線勾配(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl、400mMイミダゾール)を用いて溶出させた。Superdex 200(商標)(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを、2回目の精製工程として使用した。サイズ排除クロマトグラフィーは、40mM Tris-HCl緩衝液、0.15M NaCl、pH7.5中で実施した。Biomax-SK膜(Millipore, Billerica, MA)が装備されたUltrafree-CL遠心ろ過装置を用いてFab断片を濃縮し、-80℃で保存した。
【0315】
280nmにおける光学濃度(OD)を測定し、アミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いることによって、Fab断片のタンパク質濃度を決定した。還元剤(5mM 1,4-ジチオトレイトール)の存在下および非存在下でのSDS-PAGEならびにクーマシーブリリアントブルーを用いた染色によって、精製および適切なFab形成を解析した。
【0316】
実施例4
ソルターゼAの媒介による抗体Fc領域と結合実体(Fab断片)との連結
ソルターゼの媒介によるペプチド転移反応のために、N末端が短縮された黄色ブドウ球菌ソルターゼAを使用した(Δ1〜59)。反応は、50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5を含む緩衝液(ソルターゼ緩衝液)中で実施した。反応において、VH-CH1重鎖のC末端(...KSC)とソルターゼモチーフのN末端の間に短い連結アミノ酸配列を含まないかまたは2つの異なる短い連結アミノ酸配列を含むVH-CH1重鎖のC末端にソルターゼモチーフ(LPETG)を有するFab断片
と、重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端にオリゴグリシンモチーフおよび3種の異なるヒンジ配列(それぞれ、GGCPPC、X4がPであるSEQ ID NO: 8、GGHTCPPC、SEQ ID NO: 66、およびGGGDKTHTCPPC、SEQ ID NO: 67)を有する一アーム抗体とを連結して、抗体Fc領域結合体を得た。反応を実施するために、試薬をすべて、ソルターゼ緩衝液に溶解させた。第1段階において、抗体Fc領域および抗体Fab断片を混合し、続いてソルターゼAおよび5mM CaCl2を添加することによって、反応を開始させた。ピペッティングによって成分を混合し、37℃で72時間インキュベートした。続いて、反応混合物を凍結することによって反応を停止させ、解析するまで-20℃で保存した。
【0317】
Fab:一アーム抗体:ソルターゼのモル比=20:4:1
【0318】
結果
FabのC末端および抗体のN末端それぞれの3種の異なる配列をソルターゼAによって結合して、抗体Fc領域結合体の9種の異なる組合せを得た。結合反応の効率を様々な時点に評価した。このために、ペプチド転移反応の分取物をSDS-PAGEによって解析した。連結効率は、SDS PAGEゲルから濃度測定によって推定した。各配列について、72時間の反応後の結果を表2に示す。
【0319】
(表2)Fab断片と一アーム抗体との結合
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]