【文献】
KNODLER LA,Dissemination of invasive Salmonella via bacterial-induced extrusion of mucosal epithelia.,Proc Natl Acad Sci U S A,米国,2010年10月12日,Vol.107,No.41,Page.17733-17738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
A.カスパーゼ−1染色によって細胞バリア機能不全を検出する方法
A1.カスパーゼ−1媒介性IEC押し出しは、上皮単層の破れ目を生じる
【0017】
カスパーゼ−1誘発性IEC押し出しの形態を調査するために、本発明者らは、ニゲリシン(十分に確立されたNlrp3依存性インフラマソーム活性化因子)を極性化されたT84単層に適用した。FLICA 1染色を使用して、本発明者らは、処理後3時間で単層において増大した活性化カスパーゼ−1および細胞押し出しを観察した(
図1a)。ニゲリシン処理T84細胞における活性カスパーゼ−1発現を、ウェスタンブロット分析によって確認した(
図1b)。走査型電子顕微鏡法(TEM)による単層から押し出された細胞の形態学的外見から、核における明瞭なクロマチン凝集、無傷のミトコンドリアおよび細胞質中の小さなもしくは大きな透明な液胞が明らかになった(
図1c)。
【0018】
細胞押し出しのこの形態がバリア機能の喪失を生じるか否かを決定するために、本発明者らは、経上皮電気抵抗(TER)を測定した。ニゲリシン曝露後に、用量依存性バリア機能不全が発生し、これは、3時間で(
図2a)および一晩の処理後(
図2b)に、選択的で強力かつ不可逆性のカスパーゼ−1インヒビターAc−YVAD−CMKでの予備処理によって排除された。T84単層における破れ目がTEM画像上、直径1〜2μmであると思われると仮定すると、本発明者らは、最低用量のニゲリシン処理を使用して、微粒子(1μm Fluoresbrite(登録商標)ミクロスフェア)および微生物(E.coli TMW2.497)に対する上皮完全性を評価した。Transwellの上側のチャンバから単層を通って下側のチャンバへのミクロスフェアおよびE.coliの移動が観察された(
図2c)。FluoresbriteミクロスフェアおよびE.coli TMW2.497を、基底側面のウェルの培地中で回収した。
【0019】
A2.インビボでの細胞押し出しおよび上皮完全性に関するカスパーゼ−1の調節
インビボでの腸の透過性に対するカスパーゼ−1誘発性IEC押し出しの効果を理解するために、本発明者らは、129/SvEv(WT)マウスと比較して、(上皮ギャップの増大した密度によって測定される場合の)IL−10 KOにおいて認められた増大した細胞押し出しが、増大したカスパーゼ−1活性化に起因するか否かを最初に試験した。IL−10 KOマウスの小腸における活性カスパーゼ−1発現の増大は、ウェスタンブロット分析(
図3a)で認められ、ELISAによる増大した活性IL−1β発現(
図3b)とともに確認された。IL−10 KOにおける低下した細胞増殖が、観察された上皮ギャップ密度の差異に寄与したか否かを決定するために、本発明者らは、2種類のマウス系統に由来する腸サンプルをPCNAで染色した。IL−10 KOは、WTマウスと比較して、細胞増殖において38%低下を有した(
図3cおよび
図3d)。
【0020】
腸の透過性に対する増大したIEC押し出しの効果を、IL−10 KOマウスおよびWTマウスにおいて、高分子(デキストラン)および微粒子(Fluoresbrite(登録商標)ミクロスフェア)の血液への透過、ならびに肝臓および脾臓への微生物(E.coli TMW2.497)の移動に関して調査した。増大したIEC押し出しは、血液へのデキストラン(
図4a)および0.5μm ミクロスフェア(
図4b)の増強された透過、ならびに組織培養によって決定した場合のE.coliの移動(
図4c)と相関した。GFP標識E.coliを強制投与したマウスに由来する回腸組織を共焦点顕微鏡法で検鏡すると、IL−10 KOの腸における押し出しゾーン付近に細菌が存在していることが明らかになった(
図4d)。
【0021】
インビボでのIEC押し出しに対するカスパーゼ−1阻害の効果を経時的に評価するために、本発明者らは、選択的カスパーゼ−1インヒビターAc−YVAD−CMK(10mg/kg)で4日間、7日間および10日間(齧歯類腸細胞の平均寿命の5倍
40)にわたって腹腔内注射によってIL−10 KOマウスを処置した。コントロールIL−10 KO群には、等容積の2%(v/v) DMSOを10日間与えた。上皮ギャップ密度の低下によって測定した場合に、IEC押し出しの時間依存性低下が、YVADで処置したIL−10 KOマウスで生じた(
図5a)。ギャップ密度の低下は、7日目に、強制経口投与した(orogavaged)0.5μm 不活性ラテックスミクロスフェアの血液への透過を正規化することを伴った(
図5b)。
【0022】
IEC押し出しおよび上皮完全性に対するカスパーゼ−1活性化の効果を、P.aeruginosa IV型ピリ線毛(カスパーゼ−1活性化を誘発するために経口で与えられ得るICEプロテアーゼ活性化因子(IPAF)インフラマソームアクチベーター)の投与を用いて試験した。ニゲリシンは経口投与できず、顕著な全身毒性と関連したので、本発明者らはP.aeruginosa IV型ピリ線毛を選択した。IV型ピリ線毛(0.33mg/kg)を1日間強制経口投与したWTマウスにおいて、本発明者らは、等容積の食塩水を経口投与したコントロールマウス(
図5c)と比較して、より高い上皮ギャップ密度によって測定した場合に、IEC押し出しの増大に向かう傾向を認めた。
【0023】
A3.ヒト腸における非アポトーシス性のIEC押し出しは、カスパーゼ−1活性化によって媒介される
IECのカスパーゼ−1活性化がヒトにおける細胞押し出しの主要な機構を代表するか否かを調査するために、本発明者らは、IBD患者および無症候性コントロール患者の正常に見える回腸末端部から、粘膜生検物および管腔吸引物を集めた。粘膜生検サンプルを、FLICA−1および3&7で染色して、活性化カスパーゼ−1染色(ピロトーシス性)もしくはカスパーゼ−3&7染色(アポトーシス性)に対して陽性のIECを同定した(
図6a)。コントロールにおける陽性染色されたカスパーゼ−1細胞 対 カスパーゼ−3&7細胞の比は、1.16:1であった;これは、IBD患者では1.7:1に増大していた(
図6b)。管腔吸引物の分析に関しては、コントロール患者は、細胞学的ブロック(cytology block)調製のための材料を不十分にしか有しなかった。IBD患者では、細胞学的ブロックで見られた有核細胞の総数は、12〜155個の細胞に及び、IECは、上記細胞のうちの41〜100%を占めた(
図6c)。本発明者らは、フィルター上に集められた管腔吸引物中の押し出された細胞の総数を定量した:コントロール患者と比較してIBD患者由来の管腔吸引物では、有意により多い細胞数が認められた(
図6d)。押し出された細胞および細胞破片を、活性化カスパーゼ−1および3&7に関してFLICAで染色した。FLICA染色した管腔吸引物の画像を、組織サンプルに使用される等級付けスケールと同様に、2つの膜上に存在する細胞および細胞破片のカスパーゼ染色の強度に基づいてスコア付けした。各画像に、染色強度および染色された細胞もしくは細胞破片の数に応じて、スコア0〜4を割り当てた。このスコア付けシステムを使用して、コントロールにおける陽性染色されたカスパーゼ−1細胞 対 カスパーゼ−3&7細胞の比は、約1:1であった。これは、IBD患者では2:1へと増大した(
図6e)。
【0024】
粘膜生検サンプル中の活性IL−1βの発現をELISAで測定したところ、IBD患者において有意に高かった(
図7a)。粘膜生検サンプルにおける活性カスパーゼ−1およびIL−1βの増大した発現は、ウェスタンブロット分析で確認された(
図7bおよび
図7c)。まとめると、これら結果は、カスパーゼ−1活性化が健康なヒトの腸におけるIEC押し出しの重大な機構を表し、IBD患者において認められる細胞押し出しにおける増大の大部分の原因であると思われることを示唆する。この研究では、本発明者らは、インビトロおよびインビボで上皮の破れ目をもたらす、カスパーゼ−1活性化によって媒介されるIEC押し出しの炎症形態を記載した。IEC押し出しのこの形態は、極性化した単層を横断する微粒子および微生物の移動を可能にした。齧歯類の腸におけるIEC押し出しは、カスパーゼ−1酵素の活性化もしくは阻害によって調節され得る。IL−10 KOマウスにおける増大したIEC押し出しは、高分子(デキストラン)、微粒子の増大した透過および共生細菌の移動と関連した。インビボでのカスパーゼ−1活性の調節は、IEC押し出しの変化とともに、不活性なラテックスミクロスフェアの透過によって測定される場合、上皮完全性における付随する変化を生じた。患者において、カスパーゼ−1媒介性IECの脱落は、健康な患者およびIBD患者の小腸において観察され得るが、IBD患者ではその増大が顕著であった。本発明者らの実験結果は、上皮完全性を損なうと以前に報告された
7IEC押し出しの根底にある機構に根本的な新たな見識を提供する。
【0025】
ピロトーシスおよびアポトーシスの特徴を有する押し出された細胞を示す十二指腸吸引物の以前の形態分析と一致して、本発明者らの管腔吸引物研究から、押し出された細胞におけるカスパーゼ−1およびカスパーゼ−3&7の両方の活性化が明らかになった。本発明者らの粘膜生検分析の知見は、ヒト腸標本の活性化カスパーゼ−3染色を使用して、脱落したIECのうちの44%でアポトーシスが見いだされた以前の研究と一致している。この研究では、本発明者らは、押し出されているIECのうちの46%でカスパーゼ−3&7活性化を認めた。
【0026】
患者由来の押し出された細胞および生検サンプルの本発明者らの分析結果は、補完的かつ首尾一貫しており、押し出されたIECの以前の研究とも一致している。管腔吸引物分析は、押し出されたIECが脱落後に断片へと分解し得るので、粘膜生検分析結果は、カスパーゼ−1陽性細胞およびカスパーゼ3&7陽性細胞の相対比を確認するために必須であったという事実によって制限され得る。カスパーゼ−1媒介性細胞押し出しゾーンは微生物に対して透過性であり得るので、IBD患者におけるその劇的な上昇は、以前の研究で認められた増大した粘膜内およびリンパ節関連細菌負荷に寄与し得る。患者におけるバリア機能は、現在の研究では試験されなかった。上皮の欠陥が微粒子および微生物の侵入を許すようであるので、上皮完全性を調べるための患者における適切な試験は、厳格な検証研究を要する。さらに、本発明者らは、観察された上皮完全性の喪失を定義するために重要なカスパーゼ−1媒介性細胞脱落後の押し出しゾーンの終結機構も回復機構も調査しなかった。アポトーシス誘発性細胞押し出しにおいて、周りの細胞の収縮およびタイトジャンクションの再組織化は、バリア機能の喪失を防止するために必要とされる。ピロトーシスにおける細胞脱落プロセスの生化学的事象を詳細に示すためのさらなる研究は、タイトジャンクション調節、押し出しに関与する収縮タンパク質、および細胞押し出しのこの形態における終結機構の役割の我々の理解を促進する。カスパーゼ(caspse)−1媒介性細胞押し出し後の終結機構の基本的な理解は、適切な試験の開発を促進して、患者における上皮完全性を評価するために必要とされ得る。
【0027】
透過型顕微鏡法(TEM)による押し出された細胞の形態的な外見は、ピロトーシス細胞の以前の報告と一致し(
図1c)、ヒトにおける損なわれた上皮完全性と関連したIEC押し出しの形態の説明に合う。TER研究結果は、細胞押し出しのこの形態によって誘発される上皮内層における破れ目がカスパーゼ−1依存性であることを示唆する。本発明者らのデータは、カスパーゼ−1活性化から生じる細胞押し出しゾーンが管腔の微生物および抗原の侵入部位を提供し得ることをさらに示唆する。微生物侵入の部位としての細胞内空間は、代謝的ストレスを受けている上皮において、ならびに腸細胞、単球および樹状細胞の三次元共存培養システムにおいて、観察された。ここで、本発明者らは、IECのみでのインフラマソーム/カスパーゼ−1活性化を有する上皮における類似のバリア欠損の発生を観察した。
【0028】
齧歯類モデルでは、カスパーゼ−1活性の調節は、上皮内層の完全性における関連した変化とともに、IEC押し出しを変化させた。上皮のバリア機能が保存されるアポトーシス媒介性細胞押し出しと比較したところ、本発明者らは、ピロトーシス媒介性IEC押し出しが粘膜への微生物および微粒子の進入に好都合な上皮の破れ目を導入することを見いだした。P.aeruginosaのIV型ピリ線毛での一晩処理を伴うピロトーシスの誘発は、WTマウスにおいてミクロスフェアの透過の増大を付随する、より高いIEC押し出しを生じた。逆に、IL−10 KOマウスにおけるカスパーゼ−1活性の阻害は、上皮ギャップ密度によって測定した場合に、IEC押し出しの時間依存性低減を生じた。これら観察に基づいて、本発明者らは、大腸炎の定常状態の薬理学的活性(半減期の5倍)を達成する時間が、IL−10 KOマウスに関しては約35日間であると概算した。従って、本発明者らは、低減した細胞押し出しの生理学的効果を研究するために、通常の臨床エンドポイント(大腸炎スコアにおける改善)ではなく、強制経口投与したラテックスミクロスフェアの透過(代理エンドポイントとしての上皮完全性の評価)を使用することを選択した。本発明者らの研究において、強制投与したミクロスフェアの透過の正規化を、7日間の処置の後に行った。
【0029】
IL−1βの上流で、Nlrp3は、免疫細胞および上皮細胞の両方で発現され、腸のホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすようである。Nlrp3−/−マウスは、DSS、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホネート(TNBS)、もしくはCitrobacter rodentium感染によって誘発される実験的大腸炎により罹りやすい。以前の研究と一致して、本発明者らの結果は、Nlrp3もしくは他の経路のいずれかによって媒介されるカスパーゼ−1活性化誘発性IEC押し出しが、健康上、腸のホメオスタシスに非常に重要であり得ることを示す。カスパーゼ−1活性化から生じるIL−1βおよびIL−18生成は、いくつかの報告において腸の炎症に寄与することが示された。その一方で、より近年の研究から、カスパーゼ−1が大腸炎および大腸炎関連がんに対する保護を与えたことが示唆される。実験結果の矛盾は、遺伝的バックグラウンドにおける差異、使用される動物の性別、もしくは動物施設の微生物叢の変動に一部起因し得る。
【0030】
まとめると、本発明者らの研究結果は、IECのカスパーゼ−1活性化が、粘膜への微生物侵入に都合がよいと思われる腸上皮のバリア機能不全の発生に寄与する細胞押し出しを誘発し得ることを示す。細胞押し出しのこの形態は、上皮内層に破れ目を導入すると以前に観察された脱落事象の原因となる機構であるようである。
【0031】
A4.OECおよびBECにおいて上昇したカスパーゼ−1レベルは、クローン病の診断である。
OECのカスパーゼ−1活性化がクローン病の診断であるか否かを決定するために、本発明者らは、標準的手順を使用して、正常個体およびクローン病個体の中咽頭領域の歯科生検物を得た。生検で得られた上皮細胞を、上記のように、カスパーゼ−1マーカーを用いてインビトロで染色し、蛍光顕微鏡法によって検鏡して、カスパーゼ−1レベルを決定した。
図11における棒グラフから認められるように、クローン病患者におけるカスパーゼ(capase)−1レベルは、正常レベルの約2倍に上昇した。
【0032】
データは、染色したOECのインビトロ検出によってヒトにおけるカスパーゼ−1レベルをアッセイすることが、クローン病を検出する単純な方法を提供することを実証する。OECを必要とする診断法は、BEC(例えば、穏やかな口腔粘膜スワブによって得られる)で行われ得、他のIBDおよびIBS状態にも適用可能であり、OECもしくはBECのインビボ染色、続いて、例えば、口腔での染色した細胞の蛍光レベルを決定するためのX線透視ツールを使用して、インサイチュでの検出によって行われ得る。
【0033】
B.pCLEによる細胞バリア機能不全を検出する方法
合計35名の患者(IBSを有する17名および18名のコントロール)を研究に採用し、IBSを有すると考えられた1名の患者を、大腸生検での顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis)の存在に起因して、さらなる分析から排除した。ベースラインの患者特徴を、表1に示す。16名のIBS患者の平均年齢は、42.8±18.5歳であった。7名の女性患者および9名の男性患者がいた。コントロール患者(n=18)は、平均年齢47.4±10.1歳であり、10名の女性患者および8名の男性患者がいた。コントロールにおける結腸内視鏡検査の適応症は、結腸直腸がんスクリーニング(n=9)および直腸出血もしくは便潜血検査陽性(n=9)であった。IBS群は、12名の下痢型IBS患者および4名の便秘型IBSを含んでいた。彼らの症状の他の原因の評価に関しては、本発明者らは、全ての患者に対して詳細な病歴を訊いて、ラクトース/フルクトース不耐症を排除した。1名の下痢型IBS患者を除く他のすべての患者については、血清抗体(抗tTGもしくは抗筋内膜抗体)もしくは生検を伴うEGDを行って、セリアック病を除外した。血清検査もEGDも行わなかった1名の患者は、セリアック病の低リスク群にいた。2名の患者を除く他のすべての患者については、血清TSHをチェックして、彼らの症状の原因として甲状腺機能障害を排除した。通常の大腸内視鏡検査は、IBS患者およびコントロール患者の両方における最も一般的な内視鏡検査所見であった。他の所見は、ポリープ(n=8)、憩室症(n=4)および痔(n=8)であった。全てのIBS患者およびコントロールで行った回腸末端部および結腸のランダム生検は、正常範囲内であった。計数において使用した3連続の視野でのコントロール患者およびIBS患者の代表的なpCLE画像を、
図2に示す。
【0034】
IBS患者は、コントロールと比較して有意に高いギャップ密度を有した(
図3):コントロールについて細胞1000個あたり6つ(0〜13)のギャップに対して、IBS患者のメジアンギャップ密度は、細胞1000個あたり32(17〜42)個のギャップであった(p<0.001)。ギャップ密度値は正規分布ではなかった(p=0.005、Shapiro−Wilk検定)ので、本発明者らは、メジアン回帰分析を使用して、群間の差異を定量した。IBSとコントロールとの間のギャップ密度における概算のメジアン差異は、細胞1000個あたり26(95% CI:12,39)個のギャップであった。年齢および性別を調整しても、メジアンギャップ密度値は、細胞1000個あたり25(95% CI:18,32)個のギャップという概算のメジアン差異を伴って、コントロール群と比較してIBS群で有意により高いままであった(p<0.001)。
【0035】
本発明者らは、性別、年齢、およびIBSのサブタイプに関して上皮ギャップ密度の関係性を調べた。コントロール患者では、本発明者らは、−0.43というSpearmanの相関係数(ρ)(p=0.07)で上皮ギャップ密度と年齢との間の負の相関に向かう傾向に注目した。さらに、本発明者らは、男性と比較して、女性においてより高いメジアンギャップ密度に向かう傾向を見いだした(細胞1000個あたり0個のギャップに対して11個のギャップ,p=0.07)。IBS患者では、これら傾向が認められなかった。IBSのサブタイプに関しては、下痢型IBSを有する患者(n=12)は、便秘型IBS患者(n=4)と比較して、類似のメジアンギャップ密度を有した:それぞれ、細胞1000個あたり32個のギャップと38個のギャップ。
【0036】
健康なコントロール群からのギャップ密度値の概算90パーセンタイルは、細胞1000個あたり30個のギャップであった。異常なギャップ密度に関するカットオフとして細胞1000個あたり30個のギャップを使用すると、IBSのギャップ密度の診断感度は62%であり、特異度は89%である(陽性的中率83%および陰性的中率73%)。IBSに関するギャップ密度の診断精度を表2に示す。
【0037】
この研究では、本発明者らは、IBS患者が、pCLEによって測定した場合に、健康なコントロールと比較して、回腸末端部における上皮ギャップの有意により高い密度を有することを見いだした。この知見は、IBS患者の腸において上昇した上皮ギャップ(小腸において増大した上皮細胞押し出しの代理マーカー)が、IBSにおいて以前報告されたバリア機能不全および低グレードの粘膜炎症に寄与し得ることを示唆する。本発明者らの結果は少数の患者に基づいているものの、それは、疾患の病因への潜在的な機械論的見識を提供する。
【0038】
IBSにおいて増大した腸透過性が上皮のタイトジャンクションの変化およびサイトカインプロフィールの変化と関連するという証拠は増えつつある。タイトジャンクションタンパク質(クローディン−1およびオクルディンを含む)の変化した発現および細胞分布が、IBS患者で報告された。サイトカインプロフィールの変化は、IBS患者において増強した腸透過性という概念をさらに裏付ける。本発明者らの研究の知見は、増大した上皮細胞押し出しがIBS患者において認められるバリア機能不全および粘膜炎症に関する潜在的機構であり得ることを示す。
【0039】
本発明者らの二次的な分析では、本発明者らは、女性のコントロール患者が男性より高いギャップ密度に向かう傾向を有することを見出した。この知見は、女性におけるIBSのより高い有病率のあり得る説明を提供し得る。ベースラインでのより高い上皮ギャップがあることから、女性は、疾患をより発症しやすい。さらに、本発明者らは、健康なコントロールにおいて、ギャップ密度と年齢との負の相関という傾向を観察した。これは、これまで報告されていない。これらの知見は、より大規模な研究においてさらに調査されるべきである。本発明者らは、下痢型IBSと便秘型IBSとの間の上皮ギャップ密度における差異を観察しなかった。しかし、この研究に含めたのは、便秘型IBSを有するわずか4名の患者であった。下痢型IBS患者の腸透過性の有意な変化は以前に報告されており、便秘型IBS患者では報告されていない。
【0040】
これまでに、IBSを健康な患者から鑑別し得る具体的な内視鏡検査による所見はない。現在、IBS患者のうちの最大で50%までが彼らの評価の間に結腸内視鏡検査を受けているが、米国でIBS関連症状のために行われたのは、結腸内視鏡検査のうちの25%である。大部分の結腸内視鏡検査は、他の下痢の原因(例えば、顕微鏡的大腸炎)を除外するために行われる。本発明者らの研究では、IBS患者および健康なコントロール患者の小腸における上皮ギャップを位置決めおよび定量するために慣用的な結腸内視鏡検査の間にpCLEを使用して、本発明者らは、IBS患者が上皮ギャップの有意により高い密度を有することを実証できた。小腸において増大した上皮ギャップの本発明者らの知見は、IBSの病因の可能性のある機構のみならず、上記疾患の診断の考えられる内視鏡検査による基準をも提供する。この研究において、上昇したギャップ密度は、IBSの診断に関して感度62%および特異度89%を有した。IBS病因の本発明者らの理解が進んだので、pCLEは、この複雑な疾患グループをさらに定義し得る別の診断試験であり得る。ギャップ密度は、本発明者らの現在の研究においてコントロールと比較するとIBS患者において有意により高いが、ギャップ密度の増大は、本発明者らの以前の報告でのIBD患者と比較すると遙かにより低い。コントロール患者、IBS患者およびIBD患者におけるギャップ密度の比較は、補足
図1に示される。
【0041】
本発明者らの研究には多くの制限がある。これは、共焦点レーザー内視鏡検査および上皮ギャップの定量の専門技術を有するたった1箇所の三次医療機関での34名の患者という小規模研究である。本発明者らの研究におけるIBS患者は、不均一な患者群を示す。本発明者らは、研究の被験体を下痢型IBS患者にも便秘型IBS患者にも限定しなかった。研究の目的は、IBS患者とコントロール患者との間のギャップ密度における任意の差異を同定することであった。pCLE画像を使用した上皮ギャップおよび細胞の定量には誤差があった可能性がある。しかし、評価者は手順の表示については盲検であったので、これら誤差は、IBS患者とコントロール患者との間で等しく分布したはずである。本発明者らの現在の研究の予備的な知見を確認するためには、さらに大きな多施設研究が必要とされる。この研究では、本発明者らは、上皮ギャップ密度を定量するために小腸をpCLEで画像化したのみであった。本発明者らは、齧歯類モデルを使用して、回腸末端部の上皮ギャップ密度の観察者間変動性および観察者内変動性を特徴付ける確証研究を以前に行った。本発明者らは、結腸のCLE画像化のこのような確証研究を認識していない。
【0042】
結論として、本発明者らは、回腸末端部の上皮ギャップ密度が、結腸内視鏡検査の間にpCLEによって決定した場合に、健康なコントロールよりIBS患者において有意により高いことを示した。この知見は、上皮ギャップ密度によって測定した場合に増大した上皮細胞押し出しが、IBS患者において認められる変化した腸透過性の考えられる機構を表し得ることを示唆する。
【0043】
C1.実験:カスパーゼ−1の方法
マウス
少なくとも10世代にわたって本発明者らの動物施設で交配した、24〜28週齢の間のIL−10 KOマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, Maine)およびバックグラウンド129/SvEvマウス(Taconic Farms Inc. Cambridge City, Indiana)を、全ての実験に使用した。マウスを従来の明暗サイクルの飼育施設の中で飼育した。動物プロトコルは、University of AlbertaのAnimal Care and Use Committee for Health Sciencesによって承認された。
【0044】
患者サンプル
研究プロトコルは、University of Albertaのthe Human Ethics Research Review Boardによって検討および承認され、その研究は、ClinicalTrial.Gov(NCT00988273)で登録された。結腸内視鏡検査を受ける患者は、上記研究に参加する書面によるインフォームドコンセントを提供した。結腸内視鏡検査を受けるIBD患者(N=11、6人のクローン病患者、5人の潰瘍性大腸炎患者)および無症候性コントロール患者(N=8)において、正常に見える回腸末端部からの管腔吸引物を、以前に記載された方法
7を使用して0.9% NaCl溶液で腸表面を穏やかに洗浄した後に集め、直ぐに(<15分)分析した。細胞学的ブロックを、食塩水洗浄後に集めた25mLの管腔吸引物から調製し、上皮細胞もしくは免疫細胞の形態同定のために、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。FLICA染色のために、吸引液のうちの5mLに由来する細胞を、5.0μM 孔サイズを有する25mmポリカーボネートMembra−fil Nucleopore膜(Whatman, GE Healthcare Life Sciences, Piscataway, NJ)上に、真空濾過を使用して固定化し、0.5%(w/v) BSAを含むさらに20mLのPBS(pH7.4)の濾過によって洗浄した。蛍光活性な部位特異的不可逆的インヒビター特異的活性化カスパーゼ−1およびカスパーゼ−3&7(カルボキシフルオレセインFLICAアポトーシス検出キット;Immunochemistry Technologies LLC, Bloomington, MN)を使用して、Nucleopore膜上で吸引した細胞を直接染色した。固定化した吸引細胞を有する膜を、半分にカットし、FAM−YVAD−FMK(FLICA−1)染料の1:700希釈物で染色して、活性化カスパーゼ−1を検出するか、またはFAM−DEVD−FMK(FLICA 3&7)染料の1:700希釈物で染色して、活性化カスパーゼ−3&7を検出した。正常に見える回腸末端部に由来する4つの粘膜生検サンプルを、分析のために得(コントロール N=3, IBD N=3)、2つの生検サンプルを、液体窒素の中に入れ、サイトカインアッセイに使用するまで−80℃で貯蔵した。2つの生検サンプルを、OCT(Tissue−Tek, Torrence, CA)の中に包埋し、液体窒素の中に入れ、切片を調製するまで−80℃で貯蔵した。
【0045】
試薬
ニゲリシン(Invitrogen, Burlington, ON)、Ac−YVAD−CMK(Alexis Biochemicals, Farmingdale, NY)、種々の直径(0.5〜6μm)のFluoresbrite
TM Yellow Green Carboxylate Microspheres(Polysciences Inc, Warrington, PA)を購入した。IV型ピリ線毛を、Pseudomonas aeruginosa K株から以前に記載された方法で調製し、SDS−PAGEによる純度、アシアロ−GM1に結合するがGM1には結合しない能力、およびステンレス鋼に結合する能力に関して特徴付けした。上記ピリ線毛調製物は、銀染色したSDS−PAGEゲル上で検出可能でなかった少量のP.aeruginosa血清型05 LPSを含んだ。Escherichia coli TMW2.497は、Dr. M. Gantzleの厚意であったプラスミドpQBI−63上に緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を有するE.coli JM109誘導体であった。
【0046】
細胞培養およびインビトロ透過性の測定
T84ヒト結腸がん上皮細胞を、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)/F−12、10% (v/v) 熱非働化ウシ胎仔血清(FBS)、1%(w/v) ペニシリン−ストレプトマイシン中で、組織培養プレート(10cm)で維持した。その細胞をTranswells(2×10
5 細胞/ウェル、6.5mm直径; 0.4μm孔サイズ; Corning Life Sciences, Tewksbury, MA)にプレートし、研究のために頂端細胞接着複合体(apical junctional complex)(経上皮抵抗>2,000Ω・cm
2によって示される場合)の発生まで増殖させた。カスパーゼ−1阻害実験に関しては、ニゲリシン処理前に、組織培養培地を除去し、50□M カスパーゼ−1インヒビター(Ac−YVAD−CMK)を含む新たな培地を導入した。ニゲリシン(10、25、50□M)を、Transwellの頂端側および基底側の両方に添加した。経上皮抵抗(TER)を、Millicell−ERS Voltmeterおよび箸型電極(Millipore, Bedford, MA)を使用して、ニゲリシン処理の前および処理3時間後に測定した。ミクロスフェアおよびE.coli実験のために、ニゲリシンとともに一晩インキュベートした後、10
7/mlの1μm ミクロスフェアもしくは10
9/ml E.coli TMW2.497を、Transwellの頂端側に添加した。ミクロスフェアもしくはE.coliとともにインキュベートして1時間後、細胞を冷メタノール中で5分間固定した。次いで、細胞を0.2%(v/v) Triton X−100で15分間透過性にし、0.2% (v/v) ヤギ血清および1%(w/v) BSAを含むPBS中で1時間ブロックした。
【0047】
タンパク質抽出
ヒト生検サンプルおよび齧歯類回腸組織を、溶解緩衝液(0.01M PBS、0.5% (v/v) Tween 20、およびHaltプロテアーゼインヒビター(ジメチルスルホキシドおよび4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド(Thermo Scientific, Pittsburgh, PA)を含む))中、氷の上でタンパク質抽出のためにホモジナイズした。タンパク質含有上清を、13,000gで30分間、4℃での遠心分離によって分離し、分析まで−70℃で貯蔵した。
【0048】
サイトカイン発現アッセイ
ヒトサンプル由来の活性IL−1βの濃度を、Human IL−1β Ultra−Sensitive Kit(Meso Scale Discovery, Gaithersburg, MD)で測定した。マウス腸組織における活性IL−1β発現を、Mouse ProInflammatory 7−Plex Ultra−Sensitive Kit(Meso Scale Discovery, Gaithersburg, MD)で測定した。得られたサイトカインを、ビシンコニン酸アッセイ(Pierce, Rockford, IL)によって決定される場合の各個々のサンプルの総タンパク質含有量に対して正規化した。
【0049】
ウェスタンブロット分析
ヒト生検組織、マウス回腸粘膜をこすり取ったものおよびT84細胞を、プロテアーゼインヒビターを含むM−PER Mammalian Protein Extraction Reagent(Thermo Scientific, Pittsburgh, PA)中に溶解した。総細胞溶解物(サンプルに対して正規化した50μg タンパク質)を、15% SDS-PAGEゲルに載せ、その後、ニトロセルロース膜へのタンパク質の電気泳動転写を行った。膜をODYSSEYブロッキング緩衝液(Infrared Imaging System, Marysville, OH)で1時間、室温(RT)においてブロックし、ローディングコントロールとして働くβ−アクチン抗体(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)とともに、4℃において一晩、IL−1β抗体(Cell Signaling Technology, Danvers, MA)もしくはカスパーゼ−1抗体(Abcam, Cambridge, MA)でプローブした。洗浄後、膜を蛍光二次抗体とともに1時間RTにおいてインキュベートし、LI−COR Odyssey
*(Infrared Imaging System, Marysville, OH)によって分析した。
【0050】
細胞培養物および腸サンプルの免疫蛍光分析
カスパーゼ−1活性化および透過性実験からの細胞培養サンプルを、冷メタノール中で5分間固定し、ウサギ抗ZO−1一次抗体(Invitrogen, Burlington, ON)とともに一晩、4℃においてインキュベートした。洗浄後、細胞を、カスパーゼ−1活性化に関するFLICA−1染料もしくはヤギ抗ウサギIgG Alex546抗体(Invitrogen, Burlington, ON)いずれかの1:150希釈物とともにインキュベートし、DAPIで対比染色した。次いで、単層を支持している膜を切り出し、スライドガラス(DakoCytomation Mounting Medium, Carpentaria, CA)に載せた。凍結ヒト生検サンプルを、5μmの切片にし、風乾し、アセトン固定し、その後、活性化カスパーゼ1に関してはFLICA−1の1:50希釈物で、および活性化カスパーゼ−3&7に関してはFLICA 3&7(Immunochemistry Technologies LLC, Bloomington, MN)の1:50希釈物で染色した。次いで、切片を4% パラホルムアルデヒドで15分間、RTにおいて後固定し、F−アクチンに関してはローダミン−ファロイジン(Invitrogen, Burlington, ON)で、および核に関してはDAPIで染色した。
【0051】
齧歯類腸凍結組織ブロックを、クリオスタットを使用して5μmの切片にし、RTにおいて30分間静置し、PBS中にあらたに調製した4% パラホルムアルデヒドの中で30分間固定した。そのスライドをPBSで10分洗浄し、PBS中の2% ヤギ血清および1% BSAで1時間RTにおいてブロックし、PBS中2% ヤギ血清および1% BSAの中の0.2% Triton−X100で30分間透過性にした。スライドを、PBS中1:40希釈したAlexa568結合ファロイジンとともに1時間インキュベートすることによって染色し、過剰な蛍光色素を50ml PBSでの3×15分のすすぎによって除去し、DAPIで対比染色した。そのスライドを、封入剤としてFluorSave試薬(Calbiochem)を使用して検鏡用に固定した。
【0052】
増殖性細胞核抗原(PCNA)染色
マウス回腸末端部組織を、以前に公開された方法を使用して、ウサギ抗PCNA抗体(Abcam, Cambridge, MA)で染色した。PCNAに関する染色後に、その切片をDAPIで染色し、Zeiss倒立顕微鏡法(Zeiss, Toronto, Ontario)で画像化した。PCNA陽性細胞を、最低限でも動物1匹あたり5つのピリ絨毛において2名の盲検状態の評価者に計数させた。
【0053】
インビボ透過性アッセイ
インビボ透過性を、FITC−デキストランの透過、蛍光ミクロスフェアおよび細菌移動研究で評価した。デキストラン研究のために、自由に水を利用させて一晩絶食させた後、マウスに0.6μg/kg FITC−デキストラン(FD−4, 4kD; Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を強制投与した。心臓穿刺後4時間で血液サンプルを集め、血清を1,957×gで4℃において20分間遠心分離にかけた。上清の蛍光発光を、Typhoon Variable Mode Imager(GE Healthcare, Piscataway, NJ)で488nmレーザーを使用して測定した。
【0054】
ミクロスフェア研究のために、マウスに、200μl 溶液中に0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μm、および6.0μmの直径を有する10
7 Fluoresbrite(登録商標)YGミクロスフェアを含む混合物を、一晩の絶食後に以前に記載されるように強制投与した。上記ビーズの投与後4時間で血液サンプルを集めた。次いで、予めヘパリン処理したチューブの中で全血混合物を1,250×gで10分間、RTにおいて遠心分離にかけ、そのサンプルの血漿部分を取り出し、フローサイトメトリー分析の前に、1,250×gで5分間遠心分離にかけた。上記サンプルの残ったバフィーコートおよびヘマトクリットを、5mLの溶解緩衝液(4.15g NH
4Cl、0.84g NaHCO
3、1ml 0.5mM EDTA(pH8)、および500mLのddH
2O)でRTにおいて溶解し、混合し、1,250×gで5分間、4℃において3回遠心分離にかけた。上清を廃棄した。WBCペレットを、ウシ胎仔アルブミンを含む0.03% PBSの400μl中で、再懸濁した。血漿サンプルおよびWBCペレットサンプルを、ミクロスフェア数を決定するためにフローサイトメトリーで分析した。
【0055】
細菌移動研究のために、マウスに、0.17mLのLBブロス中に懸濁した1×10
10 CFUのGFP標識E.coliを強制投与した。20時間後、脾臓および肝臓のサンプルを、無菌手術条件下で集めた。器官を、予め秤量したLBブロス入りチューブ中で懸濁し、無菌RNAase非含有プラスチック乳棒で5〜10分間ホモジナイズした。そのホモジネートを遠心分離にかけ、その上清を種々の希釈度で培養のために4枚のプレートにプレートした。
【0056】
共焦点レーザー内視鏡検査および共焦点顕微鏡検査
マウス回腸の共焦点レーザー内視鏡検査および上皮ギャップ密度の決定のためのホールマウントマウス腸組織の共焦点顕微鏡検査を、以前に記載された方法を使用して行った。細胞培養、ヒトおよびマウスの腸スライドを、スピニングディスク型共焦点顕微鏡(Quorum Technologies Inc, Guelph, ON)を使用して、以前に記載された方法を使用して画像化した。
【0057】
電子顕微鏡検査
コントロールおよびニゲリシン処理したT84細胞を、0.1M カコジル酸−HCl(pH7.4)で一晩4℃において緩衝化した2%(v/v) グルタルアルデヒドを用いて固定化した。固定の後、それらをカコジル酸緩衝液中で洗浄し、1%(w/v) 四酸化オスミウム中で2時間後固定し、次いで、カコジル酸緩衝液で再洗浄した。段階的な一連のエタノール濃度で脱水した後、標本をプロピレンオキシドのいくつかの洗浄液中に入れ、その後、エポキシ樹脂(EPON 12)に包埋した。超薄切片を、酢酸ウラシルおよびクエン酸鉛でコントラストを上げ、加速電圧60kVでHitashi 7650透過型電子顕微鏡で検鏡した。視野を記録し、1000〜4800の最終倍率でプリントし、カーボン格子レプリカの助けを借りて較正した。
【0058】
統計分析
GraphPad(La Jolla, CA) Prism 4によって計算したWilcoxonランクサム検定を使用して、サンプルを比較した。0.05未満の両側P値を、有意とみなした。多重比較のためにBonferroni調整を行った。
【0059】
C2.実験:IECギャップ法
方法
これは、ClinicalTrial.Gov (NCT00988273)で登録された前向きコホート研究であった。研究プロトコルは、University of AlbertaのHuman Ethics Research Review Boardによって検討および承認された。研究群は、Rome III基準に基づいて、IBSと一致する症状を有する患者からなった。コントロール群は、他の適応症について結腸内視鏡検査を受けており、IBSの症状、最も一般的には、結腸直腸がんスクリーニングおよび便潜血検査陽性を有しない患者からなった。研究の包含基準は、以下であった:18歳齢より上で書面によるインフォームドコンセントを与える能力がある患者。排除基準は、以下を含んだ:フルオレセインもしくは貝類に対するアレルギーのあることが既知、腎臓機能が損なわれている(血清クレアチニンが1.5mg/dLを超える)、および妊娠もしくは授乳している患者。全ての患者は、研究参加への書面によるインフォームドコンセントを与えた。患者の人口統計学、病歴、身体検査所見、および内視鏡検査所見を、前向きデータベースに記録した。
【0060】
本発明者らは、全ての患者において、回腸末端部の挿管によって標準結腸内視鏡検査を行った。患者に標準心肺機能モニタリングを行い、ミダゾラムおよびフェンタニルでの静脈内鎮静を与えた。蠕動および移動人工産物(movement artifacts)を低減するために必要な場合、鎮痙剤(グルカゴン)を使用した。回腸末端部の挿管後に、5mLの10% フルオレセイン溶液を静脈内投与した。回腸末端部の共焦点画像を、以前に報告されたプロトコルに従って、超高分解能(ultra−high−definition)プローブベースの共焦点レーザー内視鏡検査(pCLE)プローブ(UHD Coloflex, Mauna Kea Technologies, Paris, France)で得た。回盲弁に対して近位約10cmにある回腸末端部のコマ毎の共焦点画像を集め、分析のためにデジタル保存した。回腸末端部において最低5つの異なる部位を、pCLEを使用して画像化した。pCLE画像化は通常、回盲弁から10cm近位側で始められ、その後、画像化の開始部位に対して5〜10cmの間で近位にある腸表面から、5から10部位のサンプリングを行った。pCLEビデオ画像の連続記録を、全ての患者で約10分間行い、患者1名あたり4000枚超の画像を記録した。pCLEを行う内視鏡検査医は、患者の状態について盲検状態でなかったが、pCLE画像の評価者は、患者の状態および結腸内視鏡検査の適応症について盲検状態であり、バイアスを最小限にした。
【0061】
pCLE画像の検討および分析を、以前に記載されたように事後様式で行った。適切に画像化された絨毛は、pCLE画像で可視化された75% 表面積を覆う絨毛として定義され、最低でも、見られる絨毛の3連続視野を、上皮細胞およびギャップの分析に選択した。これら絨毛画像のうち、 任意の個々の患者で見られる(範囲:患者1名あたり3〜10の絨毛)ギャップの最高頻度を有した絨毛における上皮細胞およびギャップを計数した。計数した絨毛の代表画像を
図1に示す。上皮細胞およびギャップを、絨毛で手動で計数し、任意の個々の患者に関する上皮ギャップの最高頻度を使用して、ギャップ密度を決定した(範囲:患者1名あたり3〜10の絨毛を評価)。ギャップ密度を、適切に画像化した絨毛で計数した上皮細胞1000個あたりの上皮ギャップの数として計算した。
【0062】
初期研究エンドポイントは、IBS患者およびコントロール患者においてpCLEによって決定される場合の上皮ギャップ密度のコホート比較であった。本発明者らはまた、上皮ギャップ密度と、性別、年齢およびIBSのサブタイプ(IBS−下痢型 対 IBS−便秘型)との間の関連性を調べるために探査分析を行った。
【0063】
統計分析
サンプルサイズ計算:
サンプルサイズ計算を、本発明者らの以前の研究
24からの無症候性患者およびIBS患者の上皮ギャップ密度データに基づいて行った。10ギャップ/1000細胞という平均ギャップ密度の差異および10ギャップ/1000細胞という標準偏差を想定すると、合計32名の患者(1群あたり16名)が、タイプI誤差(α)0.05で80% 検出力を達成するために必要とされる。ノンパラメトリック法が使用されると予測されたので、患者登録を、合計35名の患者に対して約10%増やした。
【0064】
研究の初期エンドポイントは、上皮ギャップ密度であり、コントロール患者とIBS患者との間の比較は、Wilcoxonランクサム検定を使用して行った。正規分布した連続変数を、平均±標準偏差として表した一方で、正規分布しなかった連続変数を、メジアン(四分位数範囲)として表した。Shapiro−Wilk検定を使用して、上皮ギャップ密度の分布の正規性を評価した。さらなる分析に、ノンパラメトリック法(Wilcoxonランクサム検定、Spearman相関、およびメジアン回帰を含む)を使用した。初期分析のために、0.05未満の両側P値を有意とみなした。全ての分析を、STATAデータ分析および統計ソフトウェア(StataCorp LP, College Station, Texas)を使用して行った。
【0065】
本発明は、具体的な局面、実施形態、および適用に関して記載されてきたが、特許請求されるとおりの本発明から逸脱することなく、種々の変更および改変がなされ得ることは、認識される。