(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203862
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】警告領域、特に、死角における物標の存在に基づいて自動車において警告信号を維持する方法、対応する運転者支援システムおよび自動車
(51)【国際特許分類】
G01S 13/93 20060101AFI20170914BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20170914BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
G01S13/93 220
G08G1/16 C
B60R21/00 621B
B60R21/00 622A
B60R21/00 626A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-548294(P2015-548294)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-508218(P2016-508218A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2013069404
(87)【国際公開番号】WO2014095104
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】102012025064.9
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】マルクス、コーラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルス、リュッベルト
(72)【発明者】
【氏名】ローランド、ガイガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、ゲルナー
【審査官】
中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0291874(US,A1)
【文献】
米国特許第06674394(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0189451(US,A1)
【文献】
特開2011−047694(JP,A)
【文献】
特開2008−298543(JP,A)
【文献】
特開2003−182490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/51
G01S13/00−13/95
G01S17/00−17/95
B60R21/00
G08G 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)の運転者支援システム(2)によって、前記自動車(1)に対して規定された警告領域(13)における車外物標(12)の存在について自動車(1)の運転者に警告するための警告信号を出力し、前記運転者支援システム(2)において、
−レーダセンサ(5、6)が、前記レーダセンサ(5、6)の連続する測定サイクルのそれぞれにおいて、前記レーダセンサ(5、6)の検知領域(9、10)内に電磁レーダ信号を送信し、前記物標(12)によって反射されるレーダ信号を受信信号として受信するように使用され、
−前記受信信号は、前記レーダセンサ(5、6)によって前記物標(12)を検出し、前記測定サイクルにわたって前記検知領域(9、10)において前記物標を追跡するために使用され、
−前記警告信号は、追跡していた前記物標(12)が前記規定の警告領域(13)に入れば、出力装置(3)によって出力される、
前記警告信号の出力方法であって、
追跡していた前記物標(12)が前記警告領域(13)に入った後、前記レーダセンサ(5、6)が、規定の近距離(18)内の前記検知領域(9、10)において前記物標(12)または別の物標(12)を検出する間、前記警告信号の出力が維持され、
以下の2つの基準、すなわち、
−前記レーダセンサ(5、6)が、前記規定の近距離(18)内の前記検知領域(9、10)において前記物標(12)または別の物標(12)を検出しているか、および
−前記レーダセンサ(5、6)が、前記自動車(1)に対して規定され、前記警告領域(13)とは異なる追跡領域(14)において、少なくとも1つの物標(12)を追跡しているか、
を同時に満たす間、前記物標(12)が前記警告領域(13)に入った後、前記警告信号の前記出力が維持され、
前記追跡領域(14)が、前記自動車(1)の長手方向(x)において前記警告領域(13)の後方に規定され、前記自動車(1)の長手方向(x)において前記警告領域(13)に直接隣接する、ことを特徴とする警告信号出力方法。
【請求項2】
前記警告領域(13)における前記物標(12)の追跡と関係なく、または前記警告領域(13)における前記物標(12)の追跡を使用せずに、前記警告信号の前記出力が、前記レーダセンサ(5、6)が前記規定の近距離(18)内において前記物標(12)または別の物標(12)を検出する間、維持されることを特徴とする、請求項1に記載の警告信号出力方法。
【請求項3】
前記警告領域(13)が、前記自動車(1)の死角であることを特徴とする、請求項1または2に記載の警告信号出力方法。
【請求項4】
前記検知領域(9、10)における前記物標(12)の前記検出が、前記受信信号のレベルと検出しきい値とを比較することによって行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出信号出力方法。
【請求項5】
前記近距離(18)は、2mから6mの値の範囲にある前記レーダセンサ(5、6)からの距離上限値まで伸びることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の警告信号出力方法。
【請求項6】
前記レーダセンサ(5、6)の測定サイクル内において、前記検知領域(9、10)全体の複数のサブ領域(A〜G)が、前記レーダセンサ(5、6)によって順に検知され、前記警告信号の前記出力は、前記レーダセンサ(5、6)が、少なくとも1つのサブ領域(A〜G)において同時に、前記規定の近距離(18)内における前記物標(12)または別の物標(12)を検出する間、維持されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の警告信号出力方法。
【請求項7】
前記規定の近距離(18)内の前記検出が、前記レーダセンサ(5、6)の少なくとも2つの距離分解能セルおよび/または少なくとも2つのドップラー分解能セルにおいて行われる間、前記警告信号の前記出力が維持されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の警告信号出力方法。
【請求項8】
前記自動車(1)の長手方向(x)における前記追跡領域(14)の長さ(17)が、5mから15mの値の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の警告信号出力方法。
【請求項9】
前記自動車(1)の短手方向(y)における前記追跡領域(14)の幅(16)は、1mから3mの値の範囲であり、および/または、前記警告領域(13)の前記幅(16)に相当することを特徴とする、請求項1または8に記載の警告信号出力方法。
【請求項10】
自動車(1)に対して規定された警告領域(13)に物標(12)が存在する場合に警告信号を出力するように構成された自動車(1)用運転者支援システム(2)であって、前記運転者支援システム(2)は、レーダセンサ(5、6)であって、連続する測定サイクルのそれぞれにおいて、前記レーダセンサ(5、6)の検知領域(9、10)内に電磁レーダ信号を送信し、前記物標(12)によって反射されるレーダ信号を受信信号として受信し、前記受信信号を使用して前記物標(12)を検出し、前記測定サイクルにわたって前記検知領域(9、10)において前記物標を追跡するように構成されたレーダセンサ(5、6)と、追跡していた前記物標(12)が前記規定の警告領域(13)に入れば、前記警告信号を出力するように構成された出力装置(3)とを備える運転者支援システム(2)であって、
前記出力装置(3)は、追跡していた前記物標(12)が前記警告領域(13)に入った後、前記レーダセンサ(5、6)が、規定の近距離(18)内の前記検知領域(9、10)において前記物標(12)または別の物標(12)を検出する間、前記警告信号の出力を維持するように構成され、
以下の2つの基準、すなわち、
−前記レーダセンサ(5、6)が、前記規定の近距離(18)内の前記検知領域(9、10)において前記物標(12)または別の物標(12)を検出しているか、および
−前記レーダセンサ(5、6)が、前記自動車(1)に対して規定され、前記警告領域(13)とは異なる追跡領域(14)において、少なくとも1つの物標(12)を追跡しているか、
を同時に満たす間、前記物標(12)が前記警告領域(13)に入った後、前記警告信号の前記出力が維持され、
前記追跡領域(14)が、前記自動車(1)の長手方向(x)において前記警告領域(13)の後方に規定され、前記自動車(1)の長手方向(x)において前記警告領域(13)に直接隣接する、ことを特徴とする運転者支援システム(2)。
【請求項11】
請求項10に記載の運転者支援システム(2)を備える自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に対して規定された警告領域における車外物標の存在について自動車の運転者に警告するために使用される警告信号を出力する方法に関する。連続する測定サイクルのそれぞれにおいて、レーダセンサの検知領域内に電磁レーダ信号を送信するためにレーダセンサが使用され、物標によって反射されたレーダ信号は、レーダセンサによって受信信号として受信される。受信信号は、レーダセンサによる物標の検出用に使用されるとともに、測定サイクルにわたって検知領域において前記物標を追跡するために使用される。物標が規定の警告領域に入ると、警告信号は、出力装置によって出力または開始される。さらに、本発明は、このような方法を実行するための運転者支援システムおよびこのような運転者支援システムを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のレーダセンサ(自動車レーダセンサ)はすでに従来技術であり、およそ24GHzまたはおよそ79GHzの周波数で作動される。レーダセンサは、一般に、自動車の周囲において物標を検出するために使用され、自動車を運転する多くの面で運転者を支援する。本願では、特に、自動車の死角における物標の存在について運転者に警告するために使用される死角識別システム(死角警告)に着目している。
【0003】
レーダセンサは、まず、物標と自動車との間隔を測定する。次に、レーダセンサは、物標に対する相対速度と、ターゲット角度として知られるもの、すなわち、物標までの仮想接続線と基準線、例えば、自動車の長手軸との間の角度との両方をさらに測定する。したがって、レーダセンサを使用すると、自動車に対する物標のそれぞれの現行位置を決定することができ、レーダセンサの検知領域において物標を追跡でき、すなわち、物標の相対位置は、レーダセンサの複数の測定サイクルにわたって継続的に決定されうる。「追跡動作」は、物標で検出された反射点が測定サイクルにわたって安定したままであればうまく動作する。
【0004】
レーダセンサは、通常、バンパの後方、例えば、リアバンパの角領域のそれぞれに配置される。物標を検出するために、レーダセンサは、送信信号(電磁波)を送信し、この送信信号は、検出物標で反射され、レーダセンサによってレーダエコーとして受信される。本願では、特に、周波数変調連続波レーダセンサ(FMCWレーダ)として知られるものに関係し、送信信号は、順に送信される周波数変調チャープ信号のシーケンス(バースト)を含む。したがって、レーダセンサの受信信号は、上述した測定変数に関して処理され評価されるこのような複数のチャープ信号も含む。これに伴い、受信信号は、まず、ベースバンドに変換され、次に、アナログ・ディジタル変換器によって複数のサンプルを有するディジタル受信信号に変換され、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transformation)を用いて変換される。そして、サンプルは、電子計算機(ディジタル信号プロセッサ)によって、時間領域および/または周波数領域で処理される。
【0005】
水平方向において、150°であってもよい比較的広い方位角範囲を典型的に検知するために、レーダセンサが使用される。このように、レーダセンサは、比較的大きな方位検知角を有し、これは、レーダセンサの視野または検知領域が、方位角方向における対応する幅のものであることを意味する。方位検知角は、前方センサ面に垂直に伸びるレーダ軸に対して通常対称であり、すなわち、方位検知角は、レーダ軸に対して、例えば、−75°〜+75°で測定される。この方位検知領域は、レーダセンサによって順に照射または検知されるより狭いサブ領域に分割されてもよい。このため、一例として、送信アンテナのメインローブは、例えば、位相アレイ原理に基づいて、方位角方向に電子的に旋回する。この場合、受信アンテナは、全方位検知領域に及ぶ方位角方向の受信特性を有しうる。このようなレーダセンサは、例えば、独国特許出願公開第102009057191(A1)号から知られている。さらなるレーダセンサは、既知の米国特許出願公開第2011/0163909号によって明らかにされている。
【0006】
このように、レーダセンサは、自動車の死角をモニタし、必要であれば、運転者に警告するように使用されうる。従来技術において、死角モニタリングの機能は、引用されたターゲット追跡に基づくものであり、すなわち、レーダセンサは、まず、物標、例えば、別の車両を検出し、この物標を検知領域において追跡する。物標が、死角に対応する規定の警告領域に入るとき、例えば、運転者自身の自動車を追い越すとき、警告信号が自動車に出力される。したがって、運転者は、死角における物標の存在について知らされる。レーダセンサの複数の測定サイクルにわたって物標を追跡できるようにするために、同一の物標に対して十分な数の未加工検出値を得る必要がある。すなわち、1つの特定の測定サイクルにおいて物標に対して検出された反射点が、後続の測定サイクルにおいても検出される必要があるということである。言い換えれば、物標を安定して追跡するということは、すなわち、各検出が、連続する測定サイクル間で距離および角度の点で安定したままの物標の反射点からのものであるということである。したがって、異なる測定サイクルで検出された反射点は、互いに関連したものである。
【0007】
通常、反射点のみの検出は、周波数領域において起こる。1つ以上の物標での反射点は、受信スペクトルのピークで表される。ターゲットエコーおよび測定ノイズは、この場合、付加的に重畳される。測定ノイズは、周波数依存のものであり、周波数が高くなるほど増大する。「クラッタ」として知られるもの、すなわち、地面、草木および広がりのある基盤構造物からの望ましくない反射などは、周波数依存で有用な信号にさらなる干渉信号が重畳することを意味する。したがって、受信信号に存在する信号ピークまたはターゲットエコーは、しきい値検出器を用いて検出される。受信信号のレベルが検出しきい値を超えれば、検出が行われる。検出しきい値は、レーダセンサの動作中、特に、例えば、一定誤警報率(CFAR:constant false alarm rate)に基づいて適応判定される。この方法によれば、検出しきい値は、所定の要因によってノイズレベルを常に超えるように個別調整される。物標がない場合、ノイズ信号や干渉信号が検出しきい値を超えると、検出器が誤ってターゲットと検出してしまう。検出しきい値が干渉パワーに対して設定されれば、一定誤警報率、すなわち、検出しきい値を超える瞬間干渉信号の一定の確度が得られる。
【0008】
受信信号におけるターゲットエコーの正確な周波数を高精度に決定するために、例えば、重心(COG:centre of gravity)アルゴリズムが適用される。このアルゴリズムにより、レーダセンサの測定変数をより正確に推定できるため、物標の高精度な追跡が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レーダセンサの場合、車両は広がりのあるターゲットであり、すなわち、レーダセンサの単一の距離分解能セルより大きなターゲットである。したがって、実際には、物標を追跡するとき、ひいては、警告信号を運転者に出力するときに問題が生じる。問題が起こる理由として、広がりのあるターゲットにより、複数の反射点が互いに干渉し合い、連続する測定サイクルにおける検出値が、距離および角度の点で比較的大幅に変動することが挙げられる。変動が過度である場合、データの関連付け、ひいては、物標の正確な追跡が誤動作する。車両の反射挙動は、複数の距離分解能セルにわたって分布する複数の基本反射によってモデリングされえ、これらの複数の距離分解能セルは、ある程度、互いに重畳し、単一の分解能セル内において互いに干渉する。ターゲットがレーダセンサの分解能セルよりも小さければ、すべての基本リフレクタは、互いに干渉する。結果的に得られるターゲットモデルは、反射率、ひいては、レーダセンサにおける信号振幅がランダム分布に基づいて変動するポイントターゲットを表す。物標が、車両の場合のように、単一の距離分解能セルよりも大きければ、個々の分解能セルにおける信号振幅が変動するだけでなく、上述したCOGアルゴリズムにおいて測定されたターゲット距離が、隣接する反射群の間で変動する。基礎反射そのものは、車両の表面上を移動しうる。
【0010】
車両での反射と測定反射の移動とが干渉すると、追跡アルゴリズムの入力で可能な安定した検出値が断続的に存在しないことになり、すなわち、測定データは、連続する測定サイクルにおいて反射点を互いに有意に関連付けることができない程度まで変動する。
【0011】
この問題は、大型輸送車(HGV)が自動車と並んで走行しており、自動車の死角にあるとき、特に顕著である。また、国によっては、HGVがアンダーライド防護を備える必要がなく、さらに、HGVの中にも、例えば、「トレーラトラック」として知られるものなどのように、レーダセンサのレベルでトレーラの下の中央領域には反射部が存在しないものもあるということにより、上述した問題はさらに深刻になる。レーダセンサは、HGVの下側部分からの弱い反射を特定できるが、連続する測定サイクルにおける反射点の関連付けは、常に保証されるとは限らない。したがって、このようなHGVの場合、近距離(2m〜5m)でのレーダセンサの感度が比較的低いということは、すなわち、アンダーライド防護がない場合にHGVからの弱い反射が検出できないということであり、これは依然として問題である。
【0012】
ターゲット追跡に問題があることの影響は、運転者への警告信号の出力が常に安定しないということである。アラームが一時的に誤動作し、または安定しないことにより、運転者を混乱させるという影響を及ぼし、運転者の気を散らしてしまう可能性もある。
【0013】
本発明の目的は、冒頭に記載したタイプの方法の場合において、自動車の周囲の警告領域における物標の存在について、自動車の運転者に対して特に高い信頼性で警告を出すことができる方法についての解決策を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、独立請求項のそれぞれに記載の特徴を備えた方法、運転者支援システムおよび自動車によって上記目的を達成する。本発明の好適な実施形態は、従属請求項、本願明細書および図面に示す発明の主題である。
【0015】
本発明による方法は、自動車に対して規定された警告領域における物標の存在について自動車の運転者に警告するように、自動車の運転者支援システムによって使用される警告信号を出力するために使用される。運転者支援システムは、レーダセンサの連続する測定サイクルのそれぞれにおいて、レーダセンサの検知領域内に電磁レーダ信号を送信し、物標によって反射されるレーダ信号を受信信号または受信エコーとして受信するために使用されるレーダセンサを備える。受信信号は、測定サイクルにわたって、物標を検出し、検知領域において前記物標を追跡するために使用される。物標が規定の警告領域に入ると、自動車の車内において警告信号を出力するために出力装置が使用される。物標が警告領域に入った後、レーダセンサが、規定の近距離内の検知領域において物標または別の物標を検出する間、警告信号の出力は維持される。
【0016】
このように、物標が規定の警告領域に入るとすぐに、警告信号の出力が行われるのではなく、または物標の追跡に基づいてのみ行われるのではなく、警告信号は、レーダセンサによる検出が、規定の近距離内において行われているか、すなわち、レーダセンサの規定数の第1の距離分解能セル内において行われているか否かに基づいて維持され、そして、この場合は特に、受信信号の振幅、すなわち、検討対象の距離分解能セルの周波数ビンとして知られるものが、規定の検出しきい値を超えているかに基づいて維持される。したがって、警告信号は、物標がレーダセンサの警告領域に入った後、レーダセンサが、規定の範囲内において何らかの反射点を検出する間、出力される。規定の近距離にターゲットが含まれれば、ターゲットはレーダセンサによって検出され、この警告領域内への物標の追跡が不要となる。近距離検出は、警告信号を維持するために使用可能であるが、警告信号をこの検出自体が引き起こすわけではない。なぜなら、近距離検出は、物標の正確な位置ではなく、近距離における物標の存在を推測するだけであるためである。本発明による方法によって達成される効果は、警告領域における物標の存在について運転者に確実に警告を与えることができることである。アラームが一時的に誤動作したり動作が不安定であると、運転者も現在の道路状況から気をそらせないことを意味する。
【0017】
一実施形態において、警告信号は、警告領域における物標の追跡とは関係なく、またはこの追跡を使用することもなく維持される。このように、近距離にある未加工検出値のみが、警告信号の出力が維持されているか否かを決定できる。したがって、物標の追跡や警告領域内における反射点の追跡が不要になる。
【0018】
警告領域は、自動車の死角であることが好ましい。好ましくは、警告領域は、自動車の傍に規定され、特に、自動車の側面に直接隣接して規定される。車両横断方向における警告領域の幅は、例えば、2mであってもよく、車両長手方向における警告領域の長さは、例えば、7mであってもよい。車両長手方向に見た場合、警告領域は、好ましくは、自動車の後端の前方2mから始まり、好ましくは、自動車後方5mで終わる。したがって、運転者は、実際に危険を与えうる物標について警告を受ける。不要なアラーム信号が回避される。
【0019】
レーダセンサの検知領域における物標または反射点の検出は、好ましくは、受信信号のレベルと検出しきい値とを比較することによって行われる。受信信号の振幅が検出しきい値を超えると、検出値が得られる。また、検出しきい値は、レーダセンサの動作中に上述したCFAR方法に基づいて動的に個別調整されうる。
【0020】
未加工検出値を求める規定の近距離は、2mから6mの値の範囲、特に、3mから5mの値の範囲にあるレーダセンサからの距離上限値まで広がりうる。近距離の距離上限値は、例えば、4mであってもよい。反射点がレーダセンサによってこの距離上限値まで検出されれば、警告信号の出力は維持される。必要であれば、距離下限値を規定することもでき、この距離下限値を超えると、警告信号が維持される。この距離下限値は、例えば、0.5mから1mの値の範囲のものであってもよい。規定の近距離の距離限界値を上述したように選択することによって得られる効果は、自動車の関連する周囲領域に実際に物標が存在する間、警告信号の出力を維持するという効果である。このようにして、運転者には、特に、運転者支援システムによって自動車を運転する際の効果的な支援が与えられる。
【0021】
レーダセンサの検知角度またはビーム角度、特に、ビーム方位角は、複数の角度サブ領域に分割されてもよく、レーダセンサの測定サイクル内において、検知領域全体の複数のサブ領域が、レーダセンサによって順に、すなわち、特に、方位角方向に検知される。一例として、これは、レーダセンサの送信アンテナおよび/または受信アンテナのメインローブが、比較的狭いメインローブで全体的に広い検知領域を検知可能にするために、特に方位角方向に電子的に旋回されることを意味する。レーダセンサが規定の近距離内の少なくとも1つのサブ領域、特に、規定の近距離内の少なくとも2つの、好ましくは、直接隣接するサブ領域において反射点を検出する限り、警告信号の出力は維持されることが好ましい。警告信号を維持するために、この場合、検知領域全体のすべてのサブ領域または反射のためのサブ領域のサブセットのみのいずれかをモニタすることが可能である。このように、規定の近距離の角度幅は、詳細には、警告信号を維持するために、すなわち、反射点のために探索されるべきサブ領域を適切に選択することによって調節可能である。
【0022】
警告信号の維持も合理化されうる。すなわち、警告信号の出力は、規定の近距離内の検出が、レーダセンサの少なくとも2つ、特に直接隣接する距離分解能セルにおいて行われる間、維持されうる。さらに、または他の形態において、規定の近距離内の検出が、少なくとも2つ、特に、直接隣接するドップラー分解能セルにおいて行われる間、警告信号が維持されるようにされてもよい。したがって、警告信号は、近距離における検出が、実際に存在する物標、特に、他の車両のものとされうる場合のみ維持される。
【0023】
警告信号の維持にさらなる基準が規定されてもよい。すなわち、物標が警告領域に入った後、警告信号の出力は、以下の2つの基準が同時に満たされている限り維持され、すなわち、第1の基準として、レーダセンサが規定の近距離における何らかの物標を検出する限り、および第2の基準として、レーダセンサが、自動車に対して規定され、警告領域とは異なる追跡領域において物標上の少なくとも1つの反射点を追跡する限り維持される。このように、警告領域の他に、さらなる追跡領域が自動車の周囲に規定され、警告領域は、第1の基準の他に、さらに、この追跡領域が、レーダセンサによって追跡される現在安定した反射点であって、レーダセンサに対して現行位置が既知である反射点を含むという第2の基準も満たされた場合のみ、警告信号が維持される。したがって、追跡領域は、特定の基準、例えば、所定の測定サイクル数の間、すでに存在していたこと、および/または、ゼロより大きな絶対速度を有していること、および/または規定の距離より長く移動したことなどの基準を満たす少なくとも1つの有効化された反射点(追跡)を含む必要がある。追跡領域を規定することにより、自動車の運転者に、死角にある、特に、大型輸送車などの大型車について特に高い信頼性で警告を出すことができる。HGVなどの大型の物標の場合、多数の検出点が、多くの場合に車両の後部に存在する。大多数の場合、警告領域外にある追跡可能な複数の検出点は存在する。その理由は、このようなHGVが、レーダセンサの多数の分解能セルにわたって延伸する特に広がりのある物標であるためである。このようなHGVが警告領域に入ると、HGVの1つの領域のみが警告領域内にあり、HGVのより広い部分は警告領域外にある。そして、警告領域外にあるHGVの当該領域は、レーダセンサによって追跡可能な反射点を生じる。
【0024】
この種の広がりのある車両の場合でも、危険性について可能な限り高い信頼性で完全に運転者に警告するために、一実施形態において、追跡領域が、車両長手方向において警告領域の後方に規定され、車両長手方向において警告領域と直接隣接するように設けられる。車両長手方向における追跡領域の長さは、5mから15m、特に、8mから10mの値の範囲にあってもよい。長さは、例えば、9mであってもよい。一方で、車両短手方向における追跡領域の幅は、1mから3mの値の範囲のものであってもよく、特に、2mであってもよい。このように、追跡領域の幅は、警告領域の幅に相当しうる。
【0025】
さらに、本発明は、本発明による方法を実行するように構成された運転者支援システムに関する。本発明による自動車、特に、車は、本発明による運転者支援システムを備える。本発明による方法を参照して提示される好ましい実施形態および当該好ましい実施形態の利点は、本発明による運転者支援システムおよび本発明による自動車に対して対応して有効である。
【0026】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面および図面の説明から明らかになるであろう。上記説明において記載したすべての特徴および特徴の組み合わせ、ならびに以下の図面の説明に記載および/または図面のみに示されるすべての特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ、示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせなど、独自の組み合わせであってもよい。
【0027】
以下、好ましい例示的な実施形態を用いて、添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態によるレーダセンサを備えた自動車の概略図。
【
図2】詳細に説明される本発明の一実施形態による方法を用いる自動車の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示す自動車1は、例えば、車である。自動車1は、自動車1の運転時に運転者を支援する運転者支援システム2を備える。運転者支援システム2は、死角における物標の存在について運転者に警告するように構成された死角モニタリングシステムである。運転者支援システム2は、自動車1のリアバンパ4の裏側に隠して配設された2つのレーダセンサ5、6を含む。第1のレーダセンサ5は、後方左手側の角領域に配設され、第2のレーダセンサ6は、自動車1の後方右手側の角領域に配設される。レーダセンサ5、6は共にバンパ4の裏側にあるため、自動車1の外側からは見えない。運転者支援システム2は、レーダセンサ5、6に電気的に接続され、運転者に警告信号を出力するように構成された出力装置3をさらに備える。警告信号は、例えば、可聴アラームおよび/または視覚ディスプレイであってもよい。警告信号は、死角における物標の存在について運転者に警告するために使用される。
【0030】
例示的な実施形態において、レーダセンサ5、6は、周波数変調連続波レーダセンサ(FMCW)である。レーダセンサ5、6は、
図1において、2本の線7a、7b(左手側レーダセンサ5に対して)および2本の線8a、8b(右手側レーダセンサ6に対して)によって境界が定められた方位検知領域φをそれぞれ有する。方位検知角φは、例えば、150°である。この方位検知角φは、方位角方向、ひいては、水平方向におけるそれぞれのレーダセンサ5、6のそれぞれの視野または検知領域9または10を規定する。視野9、10には重複部分がある場合があり、その結果、重複領域11が存在する。
【0031】
各レーダセンサ5、6は、レーダセンサ5、6を作動させて、受信信号をさらに処理し評価する統合型計算機、例えば、ディジタル信号プロセッサの形態の統合型計算機を含む。あるいは、2つのセンサ5、6に共通し、2つのセンサ5、6からの受信信号を処理しうる外部計算機を設けることもできる。
【0032】
それぞれの視野9、10において、レーダセンサ5、6は、車外物標12a(左側)および12b(右側)を検知しうる。特に、レーダセンサ5、6は、それぞれのレーダセンサ5、6から物標12aおよび12bの距離と、自動車1に対する物標12aおよび12bのそれぞれのターゲット角度および相対速度とを決定でき、これらは、レーダセンサ5、6からの測定変数である。
【0033】
図1をさらに参照すると、レーダセンサ5(センサ6も同様)は、方位角視野9のさまざまなサブ領域A、B、C、D、E、F、Gを連続して照射しうる。これらのサブ領域A〜Gは、角度範囲であり、サブ領域A〜Gを連続して検知するために、レーダセンサ5の送信アンテナの送信ローブは、例えば、方位角方向に、すなわち、位相アレイ原理に基づいて電子的に旋回される。
図1には、異なる向きの送信ローブが、異なる領域A〜Gごとに概略的に示されている。方位角方向において、レーダセンサ5の受信アンテナは、全体として全方位角視野9に及ぶ広い受信特性を有しうる。あるいは、他の改良例として、広い送信ローブとともに狭い受信角度範囲を提供することもできる。
【0034】
明確にするために、
図1は、第1のレーダセンサ5の視野9のサブ領域A〜Gしか示していない。しかしながら、この場合、第2のレーダセンサ6の水平視野10も複数のサブ領域に分割されている。以下の記載は、第1のセンサ5の動作に関するものであるが、第2のセンサ6の動作は、第1のセンサ5の動作に対応する。
【0035】
サブ領域A〜Gの数は、
図1に一例として示しているにすぎず、実施形態に応じて異なるものであってもよい。例示的な実施形態では、全部で7つのサブ領域A〜Gが与えられ、レーダセンサ5によって順に照明される。あるいは、このような「ビーム」が4つ与えられてもよく、または、1つのみの「ビーム」が与えられてもよい。
【0036】
レーダセンサ5の動作は、以下の通りである。レーダセンサ5の1回の測定サイクルにおいて、送信アンテナのメインローブは、サブ領域Aからサブ領域Gまで1つずつ段階的に旋回されることで、サブ領域A〜Gが順に照明される。各サブ領域A〜Gに対して、時間シーケンスの周波数変調チャープ信号(チャープ)がそれぞれ送信される。まず、チャープ信号のこのようなシーケンスは、サブ領域Aに対して送信される。規定の送信中断後、チャープ信号のシーケンスがサブ領域Bに送信される。さらなる規定の送信中断後、サブ領域Cが照明され、以下同様である。
【0037】
図2は、警告領域13および追跡領域14が自動車1の周囲に規定された、自動車1の平面図を示す。警告領域13は、自動車1の死角に相当する。明確にするために、警告領域13は、自動車1の左手側のもののみ示されているが、右手側にも対応する領域が規定され、レーダセンサ6として検知される。
【0038】
警告領域13の車両長手方向xの長さ15は、例えば、7mである。警告領域13は、自動車1の後縁部またはバンパ4から見た場合、まず、例えば、2m前方に伸び、5m後方に伸びる矩形領域である。車両横断方向yの警告領域13の幅16は、例えば、2mである。
【0039】
また、追跡領域14は、車両長手方向xにおいて警告領域13と後部にて直接隣接する矩形領域である。追跡領域14の長さ17は、例えば、9mであってもよく、すなわち、追跡領域14は、自動車1の後方14mの距離で終了する。追跡領域14の幅は、同様に、2mである。
【0040】
以下、本発明の一実施形態による方法についてさらに詳細に説明する。レーダセンサ5は、例えば、追跡領域14にある物標12a(
図1)を検出するために使用される。この物標は、例えば、HGVである。この場合、送信レーダ波は、HGVの複数の反射点で反射される。反射点は、同じ物標、すなわち、HGVに関連する。レーダセンサ5は、複数の測定サイクルにわたって物標を追跡する。そして、物標は、警告領域13に入る。出力装置3は、警告信号の出力を(例えば、連続的または非連続的に)開始する。警告領域13にある物標は、さらに追跡される必要はない。物標が警告領域13に入った後、レーダセンサ5は、
図2には概略的にしか示されていない規定の近距離18に少なくとも1つの反射点が存在するか否かを検証する。このようにして、しきい値を超えているかに関して、反射、ひいては検出が近距離18において実際に起きているか否かを決定するために検証が実行される。この基準、さらには、少なくとも1つの反射点が追跡領域14においてレーダセンサ5に現在追跡されているという状況が満たされれば、警告信号の出力が維持される。近距離18において検出が起こらず、または追跡領域14において反射点(追跡)が追跡されていない場合のみ、警告信号の出力が中断される。
【0041】
近距離18における検出とは、特に、センサ5からの所定の距離内において、ターゲットエコーが検出しきい値を超えたある種の反射点が実際に検出されていることを意味する。近距離18の角度範囲に関して、すべてのサブ領域A〜Gが反射点に対して検討され、またはサブ領域A〜Gのサブセットのみが考慮されうる。一例として、中央サブ領域B〜Fのみが検討されてもよい。
【0042】
一例として、近距離18は、レーダセンサ5から、例えば、2.4m〜4mの距離上限値で終了する。これは、レーダセンサ5の前2つ、3つ、4つ、または5つの距離分解能セルに相当しうる。
【0043】
このようにして、有効化された反射点、すなわち、すでに早めに追跡され、そのような追跡に際し、所定の基準を満たす反射点、例えば、所定の期間すでに追跡された反射点、および/または、ゼロより大きい絶対速度を有する反射点、および/または、所定の距離より長く移動した反射点などの反射点が警告領域13に入るとすぐに、警告信号が作動される。このような反射点が警告領域13に入ると、第1に、ある種の反射点が近距離において検出される限り、第2に、追跡領域14において少なくとも1つの反射点が現在追跡されている、すなわち、現在の位置がすべてレーダセンサ5において既知である限り、警告信号が出力される。
【0044】
上記第1の基準は、検出が同時に起こるという状況、すなわち、同一の測定サイクル内において、いずれも所定の近距離18内にある少なくとも2つの隣接するサブ領域A〜Gのそれぞれにおいて同時に検出が起こるという状況で具現化されうる。また、この基準は、さらに改良されてもよく、すなわち、レーダセンサ5の少なくとも2つの距離分解能セルおよび/またはドップラー分解能セルにおける同時検出が要求されるように改良されてもよい。