(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する吸着材を備えるキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐベーパ通路に設けられている封鎖弁とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量が零から所定範囲内にあるときが閉弁状態で前記燃料タンクを密閉状態に保持可能であり、前記ストローク量を開弁方向に変化させて前記燃料タンクの内圧が所定値以上低下したときの前記ストローク量に基づいて開弁開始位置を学習できるように構成されており、
前記封鎖弁の開弁開始位置の学習では、第1所定ストロークだけ開弁方向に変化させて第1の時間維持し、次に第1所定ストロークよりも小さい第2所定ストロークだけ閉弁方向に変化させて第1の時間より長い第2の時間維持する工程を繰り返すことで前記ストローク量を開弁方向に変化させ、前記燃料タンクの内圧が所定値以上低下したときの工程、あるいはその前工程の第2の時間維持状態における前記ストローク量に基づいて開弁開始位置が決められる蒸発燃料処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図14に基づいて本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、車両のエンジンシステム10に備えられており、車両の燃料タンク15で発生した蒸発燃料が外部に漏れ出ないようにするための装置である。
【0015】
<蒸発燃料処理装置20の構造概要について>
蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、キャニスタ22と、そのキャニスタ22に接続されたベーパ通路24、パージ通路26、及び大気通路28とを備えている。キャニスタ22内には、吸着材としての活性炭(図示省略)が装填されており、燃料タンク15内の蒸発燃料を前記吸着材により吸着できるように構成されている。ベーパ通路24の一端部(上流側端部)は、燃料タンク15内の気層部と連通されており、ベーパ通路24の他端部(下流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。そして、ベーパ通路24の途中にはベーパ通路24を連通・遮断する封鎖弁40(後記する)が介装されている。また、パージ通路26の一端部(上流側端部)は、キャニスタ22内と連通されており、パージ通路26の他端部(下流側端部)がエンジン14の吸気通路16におけるスロットルバルブ17よりも下流側通路部と連通されている。そして、パージ通路26の途中にはパージ通路26を連通・遮断するパージ弁26vが介装されている。
さらに、キャニスタ22は故障検出に使用されるOBD用部品28vを介して大気通路28が連通されている。大気通路28の途中にはエアフィルタ28aが介装されており、大気通路28の他端部は大気に開放されている。前記封鎖弁40、パージ弁26v及びOBD用部品28vは、ECU19からの信号に基づいて制御される。さらに、ECU19には、燃料タンク15内の圧力を検出するタンク内圧センサ15p等の信号が入力される。
【0016】
<蒸発燃料処理装置20の動作概要について>
次に、蒸発燃料処理装置20の基本的動作について説明する。車両の駐車中は、封鎖弁40が閉弁状態に維持される。このため、燃料タンク15の蒸発燃料がキャニスタ22内に流入することはない。そして、駐車中に車両のイグニッションスイッチがオンされると、封鎖弁40の開弁開始位置を学習する学習制御が行われる(後記する)。また、車両の駐車中は、パージ弁26vは閉弁状態に維持されてパージ通路26は遮断状態となり、大気通路28は連通状態に維持される。車両の走行中は、所定のパージ条件が成立する場合に、ECU19がキャニスタ22に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。この制御では、キャニスタ22を大気通路28により大気に連通させたまま、パージ弁26vが開閉制御される。パージ弁26vが開弁されると、エンジン14の吸気負圧がパージ通路26を介してキャニスタ22内に作用する。これにより、キャニスタ22内に大気通路28から空気が流入するようになる。さらに、パージ弁26vが開弁されると、封鎖弁40が開弁方向に動作して燃料タンク15の圧抜き制御が行なわれる。これにより、キャニスタ22内にベーパ通路24から燃料タンク15内の気体が流入するようになる。この結果、キャニスタ22内の吸着材がキャニスタ22に流入する空気等によりパージされ、前記吸着材から離脱した蒸発燃料が空気と共にエンジン14の吸気通路16に導かれて、エンジン14内で燃焼される。
【0017】
<封鎖弁40の基本構造について>
封鎖弁40は、閉弁状態でベーパ通路24を封鎖し、開弁状態でベーパ通路24を流れる気体の流量を制御する流量制御弁であり、
図2に示すように、バルブケーシング42とステッピングモータ50とバルブガイド60とバルブ体70とを備えている。バルブケーシング42には、弁室44、流入路45及び流出路46により、一連状をなす逆L字状の流体通路47が構成されている。また、弁室44の下面すなわち流入路45の上端開口部の口縁部には、弁座48が同心状に形成されている。前記ステッピングモータ50は、前記バルブケーシング42の上部に設置されている。前記ステッピングモータ50は、モータ本体52と、そのモータ本体52の下面から突出し、正逆回転可能に構成された出力軸54を有している。出力軸54は、バルブケーシング42の弁室44内に同心状に配置されており、その出力軸54の外周面に雄ネジ部54nが形成されている。
【0018】
バルブガイド60は、円筒状の筒壁部62と筒壁部62の上端開口部を閉鎖する上壁部64とから有天円筒状に形成されている。上壁部64の中央部には筒軸部66が同心状に形成されており、その筒軸部66の内周面に雌ネジ部66wが形成されている。前記バルブガイド60は、前記バルブケーシング42に対して、回り止め手段(図示省略)により軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向(上下方向)に移動可能に配置されている。バルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wには、前記ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nが螺合されており、ステッピングモータ50の出力軸54の正逆回転に基いて、バルブガイド60が上下方向(軸方向)に昇降移動可能に構成されている。前記バルブガイド60の周囲には、そのバルブガイド60を上方へ付勢する補助スプリング68が介装されている。
【0019】
前記バルブ体70は、円筒状の筒壁部72と筒壁部72の下端開口部を閉鎖する下壁部74とから有底円筒状に形成されている。下壁部74の下面には、例えば、円板状のゴム状弾性材からなるシール部材76が装着されている。前記バルブ体70は、前記バルブガイド60内に同心状に配置されており、そのバルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接可能に配置されている。バルブ体70の筒壁部72の上端外周面には、円周方向に複数個の連結凸部72tが形成されている。そして、バルブ体70の連結凸部72tがバルブガイド60の筒壁部62の内周面に形成された縦溝状の連結凹部62mと一定寸法だけ上下方向に相対移動可能な状態で嵌合している。そして、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに対して下方から当接した状態で、バルブガイド60とバルブ体70とが一体で上方(開弁方向)に移動可能となる。また、前記バルブガイド60の上壁部64と前記バルブ体70の下壁部74との間には、バルブガイド60に対してバルブ体70を常に下方、即ち、閉弁方向へ付勢するバルブスプリング77が同心状に介装されている。
【0020】
<封鎖弁40の基本動作について>
次に、封鎖弁40の基本動作について説明する。封鎖弁40は、ECU19からの出力信号に基づいてステッピングモータ50を開弁方向、あるいは閉弁方向に予め決められたステップ数だけ回転させる。そして、ステッピングモータ50が予め決められたステップ数だけ回転することで、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用により、バルブガイド60が上下方向に予め決められたストローク量だけ移動するようになる。前記封鎖弁40では、例えば、全開位置においてステップ数が約200Step、ストローク量が約5mmとなるように設定されている。
【0021】
封鎖弁40のイニシャライズ状態(初期状態)では、
図2に示すように、バルブガイド60が下限位置に保持されて、そのバルブガイド60の筒壁部62の下端面がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接している。また、この状態で、バルブ体70の連結凸部72tは、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bに対して上方に位置しており、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。即ち、封鎖弁40は全閉状態に保持されている。そして、このときのステッピングモータ50のステップ数が0Stepであり、バルブガイド60の軸方向(上方向)の移動量、即ち、開弁方向のストローク量が0mmとなる。
【0022】
また、車両の駐車中等では、封鎖弁40のステッピングモータ50がイニシャライズ状態から開弁方向に、例えば、4Step回転する。これにより、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が約0.1mm上方に移動し、バルブケーシング42の弁座48から浮いた状態に保持される。これにより、気温等の環境変化で封鎖弁40のバルブガイド60とバルブケーシング42の弁座48間に無理な力が加わり難くなる。なお、この状態で、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。
【0023】
ステッピングモータ50が4Step回転した位置からさらに開弁方向に回転すると、前記雄ネジ部54nと雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が上方に移動し、
図3に示すように、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに下方から当接する。そして、バルブガイド60がさらに上方に移動することで、
図4に示すように、バルブ体70がバルブガイド60と共に上方に移動し、バルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48から離れるようになる。これにより、封鎖弁40が開弁される。
【0024】
ここで、封鎖弁40の開弁開始位置は、バルブ体70に形成された連結凸部72tの位置公差、バルブガイド60の連結凹部62mに形成された底壁部62bの位置公差等により、封鎖弁40毎に異なるため、正確に開弁開始位置を学習する必要がある。この学習を行なうのが学習制御であり、封鎖弁40のステッピングモータ50を開弁方向に回転(ステップ数を増加)させながら燃料タンク15の内圧が所定値以上低下したタイミングに基づいて開弁開始位置のステップ数を検出する。このように、封鎖弁40が閉弁状態のときはバルブガイド60が本発明の弁可動部に相当し、封鎖弁40が開弁状態のときはバルブガイド60とバルブ体70とが本発明の弁可動部に相当する。
【0025】
<封鎖弁40の学習制御について>
次に、
図5から
図7に基づいて、封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御について説明する。学習制御は、車両の駐車中にエンジンのイグニッションスイッチがオンしたタイミングで行われる。ここで、
図5の上図は、時間を基準(横軸)としてステッピングモータ50のステップ数の変化、即ち、バルブガイド60、及びバルブ体70のストローク量(軸方向の移動量)を表している。このため、以後、ステップ数とストローク量とは同意語として使用する。また、
図5の下図は、時間を基準(横軸)として燃料タンク15の内圧(タンク内圧)の変化を表している。ここで、タンク内圧は、一定周期(ΔTs)毎に検出される。
【0026】
前述のように、車両の駐車中では、ステッピングモータ50が開弁方向に、例えば、4Step回転してバルブガイド60がバルブケーシング42の弁座48から約0.1mm浮いた状態に保持されている。この状態で、エンジンのイグニッションスイッチがオンすると、ステッピングモータ50が閉弁方向に4Step(−4Step)回転し、前記封鎖弁40はイニシャライズ状態(0Step)に戻される。次に、
図5の上図に示すように、ステッピングモータ50が封鎖弁40の設計上の閉弁限界位置S0Stepまで開弁方向に高速回転する。これにより、バルブガイド60が比較的速く閉弁限界位置まで上方に移動するようになり、学習時間の短縮を図れるようになる。なお、このときには、バルブ体70のシール部材76は、バルブスプリング77のバネ力でバルブケーシング42の弁座48の上面に当接しており、封鎖弁40は閉弁状態である。
【0027】
ステッピングモータ50が封鎖弁40の閉弁限界位置S0Stepまで開弁方向に回転すると、ステッピングモータ50が停止して一定時間T1(例えば、500msec)だけこの状態が維持される(
図5の上図参照)。次に、ステッピングモータ50がBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向に回転し、一定時間T2(例えば、1sec)だけこの状態が維持される。そして、ステッピングモータ50が一定時間T2維持されている間の所定タイミングでタンク内圧が検出される。このとき、検出されたタンク内圧が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していなければ、閉弁限界位置S0StepからBStep(B=2)減算した値、即ち、(S0−2)Stepがストローク量として記憶される。
【0028】
次に、
図6の上図に示すように、ステッピングモータ50がAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転して一定時間T1(例えば、500msec)維持された後、ステッピングモータ50がBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向に回転し、一定時間T2(例えば、1sec)維持される。そして、ステッピングモータ50が一定時間T2維持されている間の所定タイミングでタンク内圧が検出される。このとき、タンク内圧が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していなければ、前回のストローク量(S0−2)Stepに今回の開弁方向のストローク量Aと閉弁方向のストローク量Bとの差(A−B=2)Stepを加算した値が新たなストローク量となる。即ち、ストローク量が(S0−2)StepからS0Stepに更新される。ここで、タンク内圧の検出周期(ΔTs)と、ステッピングモータ50が開弁方向に回転して一定時間T1維持され、閉弁方向に回転して一定時間T2維持される学習周期とが等しく設定されている。
【0029】
そして、このような工程が繰り返し実行されて、
図6のタンク内圧のグラフに示すように、今回検出されたタンク内圧が前回(タイミングTs3 参照)の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していると(タイミングTs4 参照)、封鎖弁40の開弁が開始されたと判定される。これにより、
図6の下図に示すように、タイミングTs4で学習フラグがオンする。この結果、
図6の学習値のグラフに示すように、一つ前の工程(タイミングTs3 参照)で更新したストローク量S3に(A−B−1=1)Stepが加算された値が開弁開始位置の学習値Sxとして記憶され、学習制御が終了する。ここで、封鎖弁40の開弁開始位置の判定に使用されるタンク内圧の変化量である所定値(ΔP1)は、タンク内圧センサ15pの特性のばらつきや、車両走行等による燃料タンク15の液面揺れを考慮して、例えば、0.3kPa程度の値に設定されている。
【0030】
また、学習フラグがオンしたときに、一つ前の工程(タイミングTs3 参照)で更新したストローク量S3に(A−B−1=1)Stepを加算して学習値Sxとする例を示したが、
図7の学習値のグラフに示すように、学習フラグがオンした工程(タイミングTs4 参照)でストローク量をS3StepからS4Stepに更新し、更新したストローク量S4から(A−B−1=1)Stepを減算した値を学習値Sxとして記憶することも可能である。上記したように、ステッピングモータ50をAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転させる状態が、本発明の弁可動部を第1所定ストロークだけ開弁方向に変化させる状態に相当し、ステッピングモータ50をBStep(例えば、2Step)だけ閉弁方向に回転させる状態が、本発明の弁可動部を第2所定ストロークだけ閉弁方向に変化させる状態に相当する。また、一定時間T1(例えば、500msec)は本発明の第1の時間に相当し、一定時間T2(例えば、1sec)が本発明の第2の時間に相当する。
【0031】
<本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の長所>
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20によると、封鎖弁40の開弁開始位置の学習では、ステッピングモータ50をAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転させて一定時間T1(例えば、500msec)維持し、さらに、ステッピングモータ50をBStep(例えば、2Step)だけ閉弁方向に回転させて一定時間T2(例えば、1sec)維持する工程を繰り返し、段階的にバルブガイド60、バルブ体70(弁可動部)のストローク量を開弁方向に変化させる。即ち、封鎖弁40の開弁開始位置では、流路が多めに開かれた状態から閉方向に戻されるようになるため、燃料タンク15内の内圧変化の応答性が良くなり、実際の開弁開始時と開弁開始判定時(燃料タンク15の内圧低下検出タイミング)との時間ずれが小さくなり、学習精度を向上させることができる。
【0032】
<変更例1>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、燃料タンク15の内圧(タンク内圧)を学習周期に合わせて一定周期(ΔTs)毎に検出する例を示したが、タンク内圧を常時検出することも可能である。これにより、例えば、
図8のタンク内圧のグラフに示すように、タンク内圧が所定値(ΔP1)以上低下したことを検出した時点で(タイミングTsx 参照)、学習周期に係わりなく、学習フラグをオンし、学習値Sx(=S4+A−B−1)を更新することができる。さらに、学習値を更新したら、封鎖弁40のステッピングモータ50をXStepだけ閉弁方向に回転させてバルブガイド60、バルブ体70を閉弁位置まで戻すのが好ましい。これにより、燃料タンク15の内圧が高い場合でも、燃料タンク15内の気体が多量にキャニスタ22側に流入するのを防止できるようになる。
【0033】
<変更例2>
また、本実施形態では、燃料タンク15の内圧(タンク内圧)が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下して始めて、封鎖弁40の開弁が開始されたと判定された。しかし、タンク内圧が低い場合、封鎖弁40の開弁が開始されても、タンク内圧が所定値(ΔP1)以上低下しない場合が考えられる。このような場合でも、正確に学習制御が行なわれるようにするため、
図9に示すように、仮学習フラグをオンさせることで、ストローク量の更新を保留することが行なわれる。
【0034】
即ち、
図9に示す方法は、燃料タンク15の内圧(タンク内圧)を学習周期に合わせて一定周期(ΔTs)毎に検出し、タンク内圧が所定値(ΔP1)よりも小さい第1基準値(ΔP01)より低下した場合に、封鎖弁40の開弁開始の可能性があると判定して仮学習フラグをオンするように構成されている。例えば、ステッピングモータ50がBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向に回転して一定時間T2(例えば、1sec)維持されている間のタンク内圧が、
図9のタンク内圧のグラフに示すように、前回の検出値(タイミングTs2 参照)に対して第1基準値(ΔP01)より低下していることが検出されると(タイミングTs3 参照)、このタイミングTs3で仮学習フラグがオンする。
【0035】
このとき、ステッピングモータ50のステップ数は、
図9の上図に示すように、S3Stepであるが、仮学習フラグがオンすることでストローク量の更新が禁止される。即ち、前回の工程で更新されたストローク量(S2Step)が保留される。次に、ステッピングモータ50がAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転して一定時間T1(例えば、500msec)維持された後、ステッピングモータ50がBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向に回転し、一定時間T2(例えば、1sec)維持される。そして、ステッピングモータ50が一定時間T2維持されている間のタイミングTs4でタンク内圧が検出される。このとき、今回検出されたタンク内圧が前回の検出値(タイミングTs3 参照)に対して所定値(ΔP1)以上低下していると(タイミングTs4 参照)、このタイミングTs4で学習フラグがオンする。これにより、保留されたストローク量(S2Step)に(A−B−1=1)Stepが加算された値が開弁開始位置の学習値Sxとして記憶され、学習制御が終了する。即ち、タンク内圧が低い場合でも、正確に学習制御が行なえるようになる。
【0036】
ここで、
図9では、仮学習フラグがオンしたときに、ストローク量の更新が禁止される例を示したが、
図10に示すように、タイミングTs3で仮学習フラグがオンした場合でもストローク量をS2StepからS3Stepに更新し、次の工程で学習フラグがオンしたときに(タイミングTs4 参照)、更新されたストローク量(S3Step)から(A−B−1=1)Stepを減算する方法でも可能である。
【0037】
ここで、
図9、
図10では、燃料タンク15の内圧(タンク内圧)を一定周期(ΔTs)毎に検出する例を示した。しかし、
図11に示すように、タンク内圧を常時検出できるようにし、タンク内圧が前回の検出値(タイミングTs4 参照)に対して所定値(ΔP1)以上低下した時点で(タイミングTsx 参照)、学習フラグをオンすることも可能である。また、
図9、
図10では、タンク内圧が一定周期(ΔTs)の間で第1基準値(ΔP01)より低下したタイミング(タイミングTs3 参照)で仮学習フラグをオンし、タンク内圧が一定周期(ΔTs)内に所定値(ΔP1)以上低下したタイミング(タイミングTs4 参照)で学習フラグをオンする例を示した。しかし、
図12に示すように、タンク内圧が一定周期(ΔTs)の間で第1基準値(ΔP01)より低下したタイミング(タイミングTs4 参照)で仮学習フラグをオンし、次の工程(一定周期(ΔTs)の間)でタンク内圧が低下した値と前回の工程でタンク内圧が低下した値との加算値、即ち、タンク内圧の低下量積算値が所定値(ΔP1)以上の場合に学習フラグをオンすることも可能である。さらに、
図13に示すように、タンク内圧を常時検出できるようにし、タンク内圧の低下量積算値が所定値(ΔP1)以上となった時点(タイミングTsx 参照)で学習フラグをオンすることも可能である。
【0038】
<変更例3>
タンク内圧が低い場合、封鎖弁40の開弁が開始されてもタンク内圧が緩やかに低下して所定値(ΔP1)以上低下するまでに時間が掛かる場合が考えられる。このような場合でも、正確に学習制御が行なわれるようにするため、
図14に示すように、仮学習フラグがオンしてからタンク内圧の低下状況を監視し、タンク内圧の低下量積算値が所定値(ΔP1)以上となったときに学習フラグをオンすることが行われる。
【0039】
即ち、
図14のタンク内圧のグラフに示すように、タンク内圧が前回の検出値(タイミングTs2 参照)に対して第1基準値(ΔP01)より低下していることが検出されると(タイミングTs3 参照)、このタイミングTs3で仮学習フラグがオンする。このとき、ステッピングモータ50のステップ数(ストローク量)は、
図14の上図に示すように、S3Stepであるが、仮学習フラグがオンすることでストローク量の更新が禁止される。即ち、前回の工程で更新されたストローク量(S2Step)が保留される。そして、次の工程におけるタンク内圧の低下分、即ち、第2基準値(ΔP02)が第1基準値(ΔP01)よりも大きい場合に、仮学習フラグのオン状態が維持される。さらに、次の工程におけるタンク内圧の低下分、即ち、第3基準値(ΔP03)が第2基準値(ΔP02)よりも大きい場合に、仮学習フラグのオン状態が維持される。そして、最終的に、タンク内圧の低下量積算値が所定値(ΔP1)以上となったときに学習フラグがオンする。
【0040】
これにより、仮学習フラグがオンすることで保留されたストローク量(S2Step)に(A−B−1=1)Stepが加算され、その値が開弁開始位置の学習値Sxとして記憶されて、学習制御が終了する。そして、学習制御が終了した段階で、封鎖弁40のステッピングモータ50がXStepだけ閉弁方向に回転してバルブガイド60、バルブ体70が閉弁位置まで戻される。ここで、仮学習フラグがオンした後に、例えば、次の工程におけるタンク内圧の低下分、即ち、第2基準値(ΔP02)が第1基準値(ΔP01)よりも小さくなった場合には、封鎖弁40の開弁開始によるタンク内圧の低下ではないと判定して仮学習フラグをオフする。
【0041】
<その他の変更例>
本実施形態では、ステッピングモータ50をAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転して一定時間T1(例えば、500msec)維持し、ステッピングモータ50をBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向に回転し、一定時間T2(例えば、1sec)維持し、一定時間T2維持されている間の所定タイミングでタンク内圧を検出する例を示した。しかし、ステッピングモータ50を開弁方向に回転する値(AStep)と閉弁方向に回転する値(BStep)とを適宜変更することは可能である。また、開弁方向に回転したときの一定時間T1、及び閉弁方向に回転したときの一定時間T2も適宜変更可能である。また、本実施形態では、封鎖弁40のモータにステッピングモータ50を使用する例を示したが、ステッピングモータ50の代わりにDCモータ等を使用することも可能である。
【0042】
[実施形態2]
以下、
図5、及び
図15から
図19に基づいて本発明の実施形態2に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20では、学習制御において封鎖弁40のストローク量を変化させる制御(以下、ストローク制御という)と、燃料タンク15の内圧が所定値(ΔP1)以上低下したことを検出する制御(以下、内圧検知制御という)とを独立して行なえるように構成されている。なお、本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の他の構成については、実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の学習制御では、封鎖弁40のストローク制御は、
図15のフローチャートに基づいて実行される。ここで、
図15のフローチャートに示す処理は、ECU19(
図1参照)のメモリに格納されたプログラムに基づいて所定周期Tx毎に繰り返し実行される。本実施形態では、所定周期Txは、例えば、Tx=300msに設定されている。また、前記学習制御における内圧検知制御は、
図16のフローチャートに基づいて実行される。ここで、
図16のフローチャートに示す処理は、同じくECU19のメモリに格納されたプログラムに基づいて所定周期Tv毎に繰り返し実行される。本実施形態では、所定周期Tvは、例えば、Tv=1/3×Tx=100msに設定されている。また、
図17のグラフは、封鎖弁40のストローク制御と内圧検知制御との時間毎の変化を表すグラフであり、
図5のグラフにおいて、封鎖弁40のステッピングモータ50が開弁方向に閉弁限界位置S0Stepまで回転した後の状態を詳細に表している。
【0044】
次に、
図5、及び
図15〜
図17に基づいて、本実施形態に係る学習制御の具体的な手順について説明する。エンジンのイグニッションスイッチがオンされると、
図5の上図に示すように、ステッピングモータ50が閉弁方向に4Step(−4Step)回転し、前記封鎖弁40はイニシャライズ状態(0Step)に戻される。次に、ステッピングモータ50が封鎖弁40の設計上の閉弁限界位置S0Stepまで開弁方向に高速回転する。また、
図5の下図に示すように、燃料タンク15の内圧(タンク内圧)が所定周期Tv毎に繰り返し検出される。
【0045】
そして、封鎖弁40が閉弁限界位置S0Step(ストローク量S0)にある状態(
図17の上図 タイミングT1 参照)で、
図15、
図16のフローチャートに示す処理が開始される。即ち、
図15のステップS101で封鎖弁40のステッピングモータ50がAStep(例えば、4Step)だけ開弁方向に回転(封鎖弁40がAStep開弁方向動作)したか否かが判定される。
図17のタイミングT1では、封鎖弁40がAStep開弁方向動作する前であるため、
図15のステップS101の判定がNOとなり、このタイミングのタンク内圧PD1が記憶され(ステップS110)、さらに封鎖弁40をAStep開弁方向動作させる処理が行なわれて(ステップS111)、今回の処理が終了する。また、
図16のフローチャートに示す処理では、学習制御が完了していないため(ステップS201 YES)、ステップS202で現在のタンク内圧Pと
図17のタイミングT1で記憶されたタンク内圧PD1とが比較される。
図17のタイミングT1,T1a,T1bでは、現在のタンク内圧Pがタンク内圧PD1からΔP1以上低下していないため、ステップS202の判定がNOとなる。このため、
図16のフローチャートに示す処理では、現在のタンク内圧Pがタンク内圧PD1からΔP1以上低下するまで、ステップS201、ステップS202の処理が所定周期Tv(=100ms)で繰り返し実行される。
【0046】
図15のフローチャートにおける次回の処理(所定周期Tx(=300ms)後の処理)、即ち、
図17のタイミングT2では、封鎖弁40がAStep開弁方向動作しているため(ステップS101 YES)、ステップS102で封鎖弁40がBStep(例えば、−2Step)だけ閉弁方向動作したか否かが判定される。
図17のタイミングT2では、封鎖弁40がBStep閉弁方向動作する前であるため、
図15のステップS102の判定がNOとなり、ステップS113で封鎖弁40をBStep閉弁方向動作する処理が行なわれ、今回の処理が終了する。即ち、封鎖弁40はAStep開弁方向動作すると、
図15のフローチャートの周期Tx(=300ms)に等しい時間だけ開弁方向動作状態が維持される。
【0047】
図15のフローチャートにおける次回の処理、即ち、
図17のタイミングT3では、封鎖弁40のAStep開弁方向動作とBStep閉弁方向動作とが終了しているため(ステップS101、S102 YES)、BStep閉弁方向動作後に時間Yが経過しているか否かが判定される(ステップS103)。ここで、時間Yは、例えば、所定周期Tx×4に設定されている(時間Y=1200ms)。
図17のタイミングT3では、時間Yが経過していないため(ステップS103 NO)、今回の処理を終了する。このようにして、
図15のステップS101、S102、S103の処理が繰り返されて、時間Yが経過すると(ステップS103 YES
図17のタイミングT6参照)、ステップS104で現在のタンク内圧PとタイミングT1で記憶されたタンク内圧PD1とが比較される。
図17のタイミングT6では、現在のタンク内圧Pがタンク内圧PD1からΔP1以上低下していないため、ステップS104の判定がNOとなる。
【0048】
このため、ステップS108で次のAStep開弁方向動作とBStep閉弁方向動作を行なえるようにするため、封鎖弁40の開閉実施履歴をクリアする。また、
図17に示すように、学習値が、封鎖弁40の設計上の閉弁限界位置S0Step(ストローク量S0)に今回のAStep開弁方向動作とBStep閉弁方向動作のストローク量差(A−B=2)Stepを加算した値S1に更新される。ここで、
図15のフローチャートの処理とは並行して、
図16のフローチャートのステップS201、S202の処理が所定周期Tv(=100ms)で繰り返し実行される。
【0049】
図15のフローチャートにおける次回の処理、即ち、
図17のタイミングT7では、タイミングT6で、封鎖弁40の開閉実施履歴をクリアされているため、今回の封鎖弁40のAStep開弁方向動作は行なわれておらず、ステップS101の判定はNOとなる。このため、
図17のタイミングT7でタンク内圧PD2が記憶され(ステップS110)、さらに封鎖弁40のAStep開弁方向動作が行なわれる(ステップS111)。そして、上記したタイミングT2〜タイミングT6の場合と同様に、封鎖弁40のAStep開弁状態が時間Txだけ維持された後、封鎖弁40のBStep閉弁方向動作が行なわれ、BStep閉弁状態が時間Yだけ維持される。この状態で、
図17のタイミングT10bに示すように、現在のタンク内圧Pが
図17のタイミングT7におけるタンク内圧PD2からΔP1以上低下すると、
図16のフローチャートにおけるステップS202の判定がYESとなる。このため、ステップS203で学習完了処理が行なわれる。即ち、
図17に示すように、学習フラグがオンして、封鎖弁40の開弁が開始されたと判定される。そして、一つ前の工程(
図17のタイミングT6)で更新されたストローク量S1に(A−B−1=1)Stepが加算された値が開弁開始位置の学習値Sxとして記憶される。次に、ステップS204で、封鎖弁40を閉弁方向に8Step戻して、封鎖弁40を閉鎖する。
【0050】
図16のフローチャートの処理で学習完了処理等(
図17のタイミングT10b参照)が行なわれているときに、
図15のフローチャートでは、ステップS101、S102、S103の処理が繰り返し行なわれている。そして、
図17のタイミングT12において、時間Yが経過すると(
図15 ステップS103 YES)、ステップS104で現在のタンク内圧PとタイミングT7で記憶されたタンク内圧PD2とが比較される。上記したように、現在のタンク内圧Pがタンク内圧PD2からΔP1以上低下しているため、学習完了処理が行なわれ、封鎖弁40が閉鎖される(ステップS105、S106)。このため、
図15のフローチャートの処理では、
図16のフローチャートの処理に対して、
図17のタイミングT10bからタイミングT12までの時間分だけ学習制御の完了時間が遅れるようになる。なお、
図16のフローチャートの処理で学習完了処理等が行なわれているときに、
図15のフローチャートの処理を終了させるようにすることも可能である。
【0051】
<変更例>
次に、
図18、
図19に基づいて実施形態2に係る蒸発燃料装置20の変形例について説明する。変形例に係る蒸発燃料装置20では、封鎖弁40のストローク制御のフローチャート(
図15)を改良したものであり、
図16に示す内圧検知制御のフローチャートは変更がない。
【0052】
先ず、封鎖弁40が閉弁限界位置S0Step(ストローク量S0)まで動作すると(
図19のタイミングT1 参照)、
図16、
図18のフローチャートに示す処理が実行される。即ち、
図18のステップS301の判定がYESになり、
図19のタイミングT1におけるタンク内圧PD1が記憶される(ステップS303)。さらに、封鎖弁40のAStep開弁方向動作が行なわれ(ステップS304)、今回の処理が終了する。また、
図16のフローチャートに示す処理では、ステップS201、ステップS202の処理が所定周期Tvで繰り返し実行される。
【0053】
図18のフローチャートに示す次の処理(
図19 タイミングT2 参照)では、封鎖弁40が閉弁限界位置S0Stepでなく、また、BStep閉弁方向動作が行なわれていないため、ステップS301の判定がNOとなる。さらに、ステップS302の判定もNOとなるため、ステップS305で、封鎖弁40のBStep閉弁方向動作が行なわれ、今回の処理が終了する。
図19のタイミングT3では、BStep閉弁方向動作が行なわれてから時間Yが経過しておらず(ステップS301 NO)、さらにBStep閉弁方向動作は終了しているため(ステップS302 YES)、処理を終了する。そして、
図8のステップS301、S302の処理が繰り返し行なわれて、BStep閉弁方向動作が終了してから時間Yが経過すると(
図19 タイミングT6)、ステップS301の判定がYESとなる。このため、
図19のタイミングT6におけるタンク内圧PD2が記憶される(ステップS303)。さらに、封鎖弁40のAStep開弁方向動作が行なわれる(ステップS304)。
【0054】
このように、
図18のフローチャートに示す処理によると、AStep開弁方向状態を時間Txだけ維持し、BStep閉弁方向状態を時間Yだけ維持する動作を繰り返し実行できるようになる。このため、
図15のフローチャートに示す処理にように、封鎖弁40の開閉実施履歴のキャンセル処理が不要になり、封鎖弁40のBStep閉弁方向動作が終了してから時間Yの経過後、直ぐにAStep開弁方向動作を行なうことができる。このため、学習制御に要する時間を短くできる。そして、
図19のタイミングT9bに示すように、現在のタンク内圧Pが
図19のタイミングT6におけるタンク内圧PD2からΔP1以上低下すると(
図16のフローチャートのステップS202 YES)、ステップS203で学習完了処理が行なわれる。ここで、本実施形態では、封鎖弁40のストローク制御の制御周期を時間Tx(=300ms)にし、内圧検知制御の制御周期Tv(=100ms)にする例を示した。しかし、時間Tx>時間Tvであれば、具体的な値は適宜変更可能である。