特許第6203869号(P6203869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203869
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】酸素分離装置及び酸素生成方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20170914BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20170914BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B01D53/047
   C01B13/02 A
   A61M16/10 B
   A61M16/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-557555(P2015-557555)
(86)(22)【出願日】2014年2月15日
(65)【公表番号】特表2016-509957(P2016-509957A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2014059011
(87)【国際公開番号】WO2014125446
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】61/765,217
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クーベル アヒム ヒェラルド ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルビフ ライネル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル スライス パウル
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−238017(JP,A)
【文献】 特表2000−501335(JP,A)
【文献】 特開平08−257341(JP,A)
【文献】 特開平07−000745(JP,A)
【文献】 実開昭61−183121(JP,U)
【文献】 特開平09−047624(JP,A)
【文献】 特開平03−224613(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/171628(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/164728(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02 − 53/12
C01B 13/00 − 13/36
A61M 11/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着により酸素富化ガスのフローを生成するための酸素分離装置であって、
酸素含有ガスが酸素分離器内にガイドされる側である、前記酸素分離器の一次側を通じて、前記酸素分離装置の外へ使用されたパージ用ガスを有する排出ガスをガイドするための排出管に接続され、前記酸素含有ガスから酸素を分離するための少なくとも1つの酸素分離器と、
前記排出管に設けられる、前記排出ガスの酸素濃度を決定するための酸素センサと、
前記酸素分離装置の二次側の外へ前記酸素富化ガスのフローをガイドするための出口管に設けられる、前記酸素富化ガスの酸素濃度を決定するための他の酸素センサと、
前記酸素センサ及び前記他の酸素センサによって決定されるデータに基づいて、前記酸素分離器が周期的な定常状態で動作しているかを決定し、前記周期的な定常状態は、前記酸素分離器に格納される酸素の量の変化が一定であることを示し、並びに前記周期的な定常状態の動作の決定に基づいて、酸素を分離する期間及びパージする期間、前記一次側と前記二次側との間の圧力差、並びに各ガスのフローレートを調整するように制御するための制御装置と、
を有する、酸素分離装置。
【請求項2】
前記酸素含有ガスのフローを前記酸素分離器内にガイドするための入口管に設けられる、前記酸素含有ガスの酸素濃度を決定するための第2の他の酸素センサをさらに有する、請求項1に記載の酸素分離装置。
【請求項3】
前記酸素分離装置は、携帯用機器として形成される、請求項1又は2に記載の酸素分離装置。
【請求項4】
前記酸素センサは、光センサを有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸素分離装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記酸素分離装置を手動制御するための入力ユニットを有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸素分離装置。
【請求項6】
酸素富化ガスのフローを生成するために吸着により酸素含有ガスから酸素を分離する方法であって、前記方法は、
酸素分離器の一次側に酸素含有ガスをガイドし、前記酸素分離器の一次側と、前記生成される酸素富化ガスが前記酸素分離器の外へガイドされる側である、前記酸素分離器の二次側との間に圧力差を作ることによって、前記酸素分離器を通じて酸素のフローを生成する酸素分離ステップを実行するステップと、
前記酸素分離ステップの前又は後に、前記二次側から前記一次側へ前記酸素分離器を通じてパージ用ガスをガイドするとともに、排出管を通じて使用されたパージ用ガスを有する排出ガスをガイドすることによって、前記酸素分離器をパージするステップと、
前記排出管における、前記排出ガスの酸素濃度を決定するステップと、
出口管における、前記酸素富化ガスの酸素濃度を決定するステップと、
前記排出管における前記排出ガスの前記決定された酸素濃度及び前記出口管における前記酸素富化ガスの前記決定された酸素濃度に基づいて、前記酸素分離器が周期的な定常状態で動作しているかを決定し、前記周期的な定常状態は、前記酸素分離器に格納される酸素の量の変化が一定であることを示し、並びに前記周期的な定常状態の動作の決定に基づいて、酸素を分離する期間及びパージする期間、前記一次側と前記二次側との間の圧力差、並びに各ガスのフローレートを調整するように制御するステップと、
を有する、方法。
【請求項7】
入口管における、前記酸素含有ガスの酸素濃度を決定するステップをさらに有し、さらに前記入口管における前記酸素含有ガスの前記決定された酸素濃度に基づいて、前記制御するステップを実行する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記排出管におけるガス濃度は、パージ段階に亘って、測定及び平均化される、請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素分離の分野に関する。より具体的には、本発明は、治療アプリケーションのための、特に、ホームケアの分野における、圧力スイング吸着法を用いた酸素分離に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素療法は、治療学的モダリティとしての酸素投与である。細胞代謝に必須であり、ひいては、組織酸素化が、全ての生理学的機能にとって必須であるため、当該酸素療法は、慢性及び急性の患者ケアの両方における様々な目的のために広く用いられている。特に、患者が、低酸素症及び/又は低酸素血症を患っている場合、酸素療法は、肺への酸素供給を増加させることによって、患者の利益となるように用いられ、これにより、体組織への酸素の利用可能性を増加させる。酸素療法は、病院内のアプリケーション又はホームケアの両方において用いられてもよい。酸素療法の主なホームケアアプリケーションは、深刻な慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)を患っている患者のためのものである。
【0003】
酸素は、多くの態様で投与されてもよい。酸素投与の好ましい態様は、いわゆるオンデマンド酸素生成を用いることによるものである。これに関し、いわゆる酸素濃縮器又は酸素分離装置が、広く知られている。これらの酸素濃縮器は、酸素含有ガスから酸素をほぼ分離し、結果、酸素がオンデマンドで、即ち、使用直前で供給される。
【0004】
米国特許第7329304号明細書から、携帯用酸素濃縮器、より詳細には、酸素を濃縮するための携帯用圧力スイング吸着システム、及び、かかる装置を使用するための方法が知られている。上記装置は、複数の篩床(sieve bed)又はタンク、コンプレッサ、複数の経路を規定する下流又は空気の連結管、貯蔵タンク又は容器、空気分流板内の経路を通じて1又は複数のフロー経路を作るための空気制御バルブのセット、及び、上流又は酸素配送連結管を含む。さらに、酸素センサが、容器の下流に供給される。酸素センサは、コントローラに結合されてもよく、コントローラによって処理され、装置の動作を制御又は変更するために用いられる、純度に比例する電子信号を生成してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸素分離器の動作状態を改善する余地がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、コスト節約が可能で、実行が容易で、及び/又は、酸素純度を制御するのに好適な、酸素分離装置、及び、酸素含有ガスから酸素を分離する方法を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1に記載の酸素分離装置によって達成される。また、この目的は、請求項7に記載の酸素含有ガスから酸素を分離する方法によって達成される。好ましい実施形態が、従属請求項において規定されている。
【0008】
酸素富化ガスのフローを生成するための酸素分離装置は、酸素含有ガスから酸素を分離するための少なくとも1つの酸素分離器を有し、前記酸素分離器は、酸素分離装置の外へ排出ガスをガイドするための排出管に接続され、排出ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するためのガスセンサが排出管において供給され、ガスセンサによって決定されたデータに基づいて、酸素分離装置を制御するための制御装置が供給される。
【0009】
ここで用いられる酸素分離装置なる用語は、特に、酸素含有ガスから酸素を分離可能な装置に関する。結果として、酸素分離装置により、酸素含有ガスから開始し、純粋又は実質的に純粋な酸素、あるいは、少なくとも酸素富化ガスが生成され得る。
【0010】
酸素分離器なる用語は、特に、酸素分離装置のアクティブな部分に関する。酸素分離器は、例えば、酸素含有ガス又はガス中の所定の成分と相互作用することができる酸素分離ソルベントを有していてもよく、酸素含有ガスの少なくとも1つの成分との相互作用により酸素から当該成分を分離することにより、酸素含有ガスから酸素を分離することができる。結果として、上記酸素分離器、又は、酸素分離ソルベントは、各々、特に、吸着プロセスなどの収着プロセスにより、酸素含有ガスから酸素を分離することができる。従って、酸素分離器は、吸着ベッドとして設計され得る。
【0011】
さらに、ここで用いられる、酸素分離器の一次側という用語は、酸素含有ガスが酸素分離器にガイドされる方向に向けられた酸素分離器の側又は部分に関する一方、ここで用いられる、酸素分離器の二次側という用語は、その反対側、即ち、生成された純粋な酸素又は酸素富化ガスが存在し、所望のアプリケーションにガイドされる側に向けられた酸素分離器の側又は部分に関する。
【0012】
さらに、ここで用いられる、酸素含有ガスという用語は、気体酸素を少なくとも部分的に有する、又は、酸素からなる、任意のガスに関する。酸素富化ガスという用語は、酸素含有ガスと比して、酸素に関してより高い濃度を有するガスを特に意味すべきであり、極端に言えば、純粋な酸素であってもよい。
【0013】
圧力調整装置という用語は、酸素分離器の一次側と二次側との間で圧力差を生成可能な任意の装置に関する。圧力調整装置は、例えば、酸素分離器の一次側に接続されるガス圧縮装置、又は、酸素分離器の二次側に接続される真空ポンプであってもよい。
【0014】
酸素分離ソルベントは、酸素含有ガスから酸素以外の少なくとも1つの物質を酸素よりも多く収着する、吸着させる、又は、吸着する、ひいては、酸素を少なくとも大量に通過させる材料として理解され得る。
【0015】
本発明に従ったパージ用ガスという用語は、吸着された物質を脱着し、再生目的の、酸素分離器、又は、酸素分離ソルベントをパージするために使用可能なガスに関する。例えば、パージ用ガスは、酸素分離器によって生成された酸素富化ガスであってもよい。
【0016】
排出ガスなる用語は、パージ状態にある場合の酸素分離器から排出されるガスフローに関する。排出ガスは、従って、特に、ガスをパージするために「使用」される。
【0017】
例示的な実施形態において、酸素分離装置は、例えば、酸素含有ガスから酸素を分離するための酸素分離ソルベントを有する少なくとも1つの酸素分離器を有していてもよい。酸素分離器は、酸素含有ガスのフローを酸素分離器の中にガイドするための入口管に接続される一次側において、ガスインレットを備えていてもよく、また、酸素富化ガスのフローを酸素分離器の外へガイドするための出口管に接続される二次側において、ガスアウトレットを備えていてもよい。酸素分離器の二次側は、酸素分離器を通じてパージ用ガスをガイドするためのパージ用ガス源に接続されてもよく、酸素分離器の一次側は、排出ガスを酸素分離器の外へガイドするための排出管に接続されてもよい。これとは別に、酸素分離器は、酸素分離器の中に酸素含有ガスのフローを生成するとともに、酸素分離器の外へ酸素富化ガスのフローを生成するためのガス輸送装置を有していてもよい。例えば、ガス輸送装置は、例えば、酸素分離器の一次側と二次側との間に圧力差を作るための圧力調整装置であってもよい。
【0018】
上述のような酸素分離装置は、改善された酸素分離純度を提供するとともに、動作状態の変更に対する調整に関して、より効率的且つ迅速な制御を提供する。
【0019】
これを達成するために、上述のような酸素分離装置は、少なくとも1つの酸素分離器を有する。従って、酸素分離装置は、たった1つの酸素分離器、又は、2つ以上の複数の酸素分離器を有していてもよい。例えば、酸素分離器は、2つの酸素分離器を有していてもよく、従って、一般的な圧力スイング吸着システム(PSAシステム)を形成してもよい。しかしながら、酸素分離装置は、真空スイング吸着システム(VSA:vacuum swing adsorption)、又は、真空圧力スイング吸着システム(VPSA:vacuum pressure swing adsorption)を形成してもよい。
【0020】
分離目的のため、例示的な実施形態では、酸素分離器は、酸素含有ガスから酸素を分離するための酸素分離ソルベントを有する、又は、酸素分離ソルベントで満たされている。従って、酸素分離器は、篩床を形成してもよい。酸素分離ソルベントは、酸素含有ガスの少なくとも1つの成分を酸素から離すように吸着することによって、又は、少なくとも酸素よりもよく吸着することによって、酸素含有ガスから酸素を分離することが可能である。この特徴は、分離ソルベントが、酸素含有ガスの少なくとも1つの酸素以外の成分と相互作用するか、又は、酸素よりもよく相互作用することによって、酸素を通過させる圧力スイング吸着システムの一般的設定に従っている。例えば、特に、空気などの酸素含有ガスのフローをガイドする場合、酸素分離ソルベントは、酸素を通過させ、純粋又は実質的に純粋な酸素のフロー、あるいは、酸素富化ガスのフローを生成するために、窒素を吸収するが、酸素とより少なく相互作用する、又は、相互作用しないように設計されてもよい。
【0021】
酸素分離ソルベントの非限定的な例は、ソディウムゼオライト又はリチウムゼオライトなどのゼオライトを含み、例えば、CECA社から提供されるSXSDMという名前で購入可能なソルベント材料を含む。
【0022】
酸素含有ガスを酸素分離器にガイドするために、酸素分離器は、特に、酸素分離器の各々は、酸素分離器の中に酸素含有ガスのフローをガイドするための入口管に接続される一次側においてガスインレットを有するとともに、酸素分離器の外へ酸素富化ガスのフローをガイドするための出口管に接続される二次側においてガスアウトレットを有する。
【0023】
ガスフロー、特に、酸素分離器の中への酸素含有ガスのフロー及び酸素分離器の外への酸素富化ガスのフローが、酸素分離器の一次側と二次側との間に圧力差を作る圧力調整装置などのガス輸送装置を供給することによって、達成され得る。圧力調整装置は、例えば、酸素分離器の一次側に配置されるコンプレッサであってもよく、及び/又は、酸素分離器の二次側に配置される真空ポンプとして形成されてもよい。
【0024】
酸素分離器の一次側と二次側との間に圧力差を作るのとは別に、圧力調整装置は、酸素分離器を通じて、酸素含有ガスの源からガスインレットへ酸素含有ガスを輸送するために有用であるとともに、生成された酸素を、出口管を通じてユーザに輸送するために有用である。このステップは、特に、酸素分離器が、酸素を生成し、酸素分離モードにある、又は、供給モードにある場合に実行される。
【0025】
しかしながら、ある時間の使用後、ソルベント材料は、特に、窒素などの吸着済み材料を脱着するために再生される必要があることが、酸素分離器及び酸素分離ソルベントのために知られている。従って、酸素分離装置又は酸素分離器を、酸素分離器を通じてパージ用ガスを運ぶパージモードで動作させることが知られている。従って、酸素分離器の二次側、例えば、酸素分離器のガスアウトレットは、好ましくは、酸素分離器を通じてパージ用ガスをガイドするためのパージ用ガス源に接続されており、酸素分離器の一次側、例えば、酸素分離器のガスインレットは、好ましくは、酸素分離装置の外へ排出ガスをガイドするための排出管に接続されている。
【0026】
このため、酸素分離装置は、空気などの酸素含有ガスを、動作のサイクルモードにおいて、基本的に、窒素及び酸素に分離する。上記サイクルの第1の段階において、酸素含有ガスが、より高い圧力で酸素分離器の中に「インフロー」として供給され、窒素が当該装置の内部に吸着されるなどして保持され、純粋な酸素が出力される「製品」として収集される。上記サイクルの第2の段階において、酸素分離装置が、再生される、即ち、生成された酸素富化ガスの一部などのパージ用ガスが、例えば、より低い圧力で当該装置に戻され、上述のように吸着された窒素が、周囲の大気中への「排出」として解放される。例えば、適切且つ選択的な酸素分離ソルベントで満たされた少なくとも2つの分離装置が用いられ、一方が、より高い圧力で酸素富化ガスを生成する「供給」段階にある場合、他方が、より低い圧力で「パージ」段階にあり、例えば、第1の装置によって生成された酸素フローの一部で再生される。ある時間後、それぞれに配置されたバルブが切り替えられて、両装置の役割が変わる。
【0027】
酸素分離装置の使用におけるよく知られている要件は、周囲温度、酸素フローの実際の要求、及び/又は、個々の分離装置の状態などのプロセス状況の変化に対するプロセスの適合である。従って、酸素濃縮器は、好ましくは、マイクロコントローラを有する電子ユニットによって制御されてもよい。
【0028】
本発明者は、驚くべきことに、排出ガスの少なくとも1つのガス成分の濃度を決定するためにガスセンサを排出管において供給することによって、酸素分離装置の制御、ひいては、生成される酸素富化ガスの純度及び質が、著しく高められ得ることを発見した。
【0029】
詳細には、上述のような酸素分離装置は、全フロー、即ち、「インフロー」、「製品フロー」、及び、「排出フロー」において、サイクルの厳密に限られた数の段階に亘って平均化された、フローレート及び酸素濃度を推定することが可能である。このようにして、総酸素バランスが作られることができる。かかる酸素バランスにより、分離装置に含まれる酸素の総量が、経時的に、減少又は増加しているレートを計算することが容易に可能である。「格納された」酸素の総量の上記変化レートは、分離プロセスを制御するために、即ち、必要なパワー入力を最小化し、「製品」ストリームへの窒素の「ブレイクスルー」を回避し、及び/又は、製品の酸素純度の飽和を回避するために、重要な診断法である。さらに、他の診断方法は、通常、数〜10のプロセスサイクルオーダの反応時間を有するため、この診断法は、例えば、製品フローのみの酸素含有量に基づく、他のプロセス診断法よりも、極めて早く、プロセスサイクルの限られた数の時間分解能を要求する。これにより、各酸素分離ソルベントが、窒素と相互作用し、酸素を通過させるように設計されていたとしても、例えば、酸素の特定の量が、酸素分離床にいずれにせよ格納され、検出可能であるという事実のために、酸素分離器における酸素ストレージの診断法が可能となる。
【0030】
例えば、要求された酸素純度を達成又は維持するため、酸素分離装置の排出フローにおけるガスの濃度は、製品フローにおけるガス濃度又は酸素純度の感知に比して、酸素分離装置を制御するためのより敏感且つ早い測定である。上記制御は、例えば、供給段階及びパージ段階のタイムスケールを調整するため、一次側と二次側との間の圧力差を調整するため、及び、他の基準のために、各ガスストリームのフローレートを調整するために適切な制御装置によって実行され得る。
【0031】
さらに、改善された、より効果的な制御のため、上述のような酸素分離装置は、著しく改善された信頼性を供給することができる。これは、酸素富化ガスの質が潜在的に低下する状況であっても、又は、より少ない製品ストリームにつながる質の変化であっても、迅速且つ効果的な制御によって補償され得るという事実のためである。酸素分離装置は、従って、長期間の使用後であっても、改善された分離を保証する。
【0032】
これにより、上記の改善された制御は、上記酸素分離装置が、極めて省エネルギーであるように、更なるエネルギー消費なしに実現され得る。
【0033】
上述のような、酸素分離装置又は酸素濃縮器は、生成された酸素富化ガスの改善された制御を供給し、改善された信頼性を提供する。かかる酸素分離装置は、特に、特別に訓練されたユーザがいないホームケアアプリケーションのために、及び、医療用アプリケーションのために、高い信頼性及び改善された酸素純度が極めて好適であるという事実のために、ホームケアアプリケーションなどの医療用アプリケーションのために使用され得る。
【0034】
一実施形態によれば、ガスセンサは、酸素センサ又は窒素センサである。酸素センサを供給する場合、測定結果の極めて容易且つ直接的な分析が達成され得る。さらに、当該実施形態は、情報が要求される成分、即ち、酸素に対応するデータの生成を直接的に可能とする。測定の質の低下につながる測定の分析に潜在的に悪影響を及ぼす副作用が、回避され得る。窒素センサの使用に関し、例えば、空気が、酸素含有ガスとして用いられる場合、窒素の濃度が比較的高いという事実のために、これは、好適であろう。
【0035】
他の実施形態によれば、入口管又は出口管において、少なくとも1つの他の計測器が供給される。例えば、かかる計測器は、ガスセンサ又は風量計などであってもよい。当該実施形態によれば、酸素分離装置の制御が、より効果的且つ正確に実行され得る。詳細には、排出管における計測器を、入口管及び/又は出口管におけるガスセンサとともに結合することによって、生成される酸素富化ガスの質の動向又は相対変化だけでなく、他の正確且つ客観的な値が決定され得る。さらに、1つのガスセンサが故障した場合、又は、正確でないデータを供給する場合であっても、ガスセンサなどの他の計測器を用いることによって、通常の制御が、なお可能であるという事実のために、セキュリティ上の利点がもたらされ得る。
【0036】
他の実施形態によれば、酸素分離装置は、携帯装置として形成される。これは、例えば、エネルギー源を備えた携帯用バッグなどに当該装置を配置することによって、実現され得る。基本的に、本発明によれば、携帯可能であるということは、完全に独立しており、自給自足の実施形態を意味する。かかる実施形態は、電力源や、酸素含有ガスの源などへの、酸素分離装置に隣接する他のコンポーネントへの接続が、使用中、必要でない接続がないことを意味する。基本的に、使用中、ひいては、酸素を生成している間、固定素子への接続が要求されない。かかる携帯装置は、当該装置を運ぶための把持部を有していてもよく、当該把持部は、バッグなどの輸送用装置に配置されてもよい。特に、携帯用酸素濃縮器は、酸素分離装置の限られた空間のため、酸素分離材料の限られた量のため、動作状態の影響に対して敏感である。例えば、携帯用酸素濃縮器に関して、動作温度などを変える酸素分離材料の不純物などの影響は、例えば、低下された酸素選択性に直ぐに繋がり得る。結果、本発明に従った酸素分離装置は、携帯装置、あるいは、小型の酸素分離器及び/又は限られた量の酸素分離材料を有する装置にとって、特に好適である。
【0037】
他の実施形態によれば、ガスセンサは、光センサを有する。例えば、光酸素センサなどの光センサは、極めて柔軟且つ正確な制御を可能とするほど、酸素などのガスを極めて正確に検出するために使用可能である。さらに、これらのタイプのガスセンサは、とても早い測定を可能にし、極めて動的な制御を可能とする。これによれば、生成された酸素含有ガスの酸素濃度などの質が、複数の他のセンサよりも改善され得る。他の利点として、光センサは、所望の濃度範囲のために設計されてもよく、特に正確な測定結果を供給できるように、所望のアプリケーションに調整されてもよい。また、これとは別に、光センサは、一般的に、ガス中と同様に液体中においても用いられてもよく、汚染が許容できる限りにおいて極めて安定的な動作をもたらす。結果として、特に、光ガスセンサは、高い正確性、高い信頼性、低い電力消費、低い交差感受性、及び、早い反応時間についての利点を提供可能である。例示的且つ非限定的な例として、光センサは、酸素に対して選択的であってもよく、Pyro Science GmbH社から購入可能な光ファイバ酸素計測器「FireSting O2」などの装置から形成されてもよく、又は、前記装置を有していてもよい。この光センサは、例えば、酸素相互作用による消灯に基づいている。
【0038】
他の実施形態によれば、制御装置は、酸素分離装置を手動で制御するための入力ユニットを有する。当該実施形態によれば、ガスセンサ及び/又は他の計測器によって決定され、例えば、ディスプレイによりユーザのために供給されるデータが、手動で、酸素分離装置を制御するために用いられてもよい。従って、ユーザは、入力装置を介して、各ガスストリームのフローレートを調整、供給段階及びパージ段階のタイムスケールを調整、一次側と二次側との間の圧力差を調整、及び、他の手段を調整するように制御し得る。
【0039】
他の実施形態によれば、制御ユニットは、少なくとも1つのガスセンサ及び少なくとも1つの他の計測器に接続されて供給され、少なくとも1つのガスセンサによって供給されるデータに基づき、酸素分離装置を制御するように設計されてもよい。制御ユニットは、ただ1つの制御装置であってもよいし、又は、上述の入力ユニットに付加されて存在してもよい。当該実施形態によれば、制御ユニットは、ガスセンサ及び/又は他の計測器のデータ、ひいては、排出管に供給されるガスセンサのデータ、存在する場合は、例えば、製品管、又は、出口管、及び/又は、入口管に供給されるガスセンサなどの他の計測器のデータを備えていてもよい。制御ユニットは、例えば、格納されたプロトコル、又は、制御命令に基づいて、上述のような酸素分離装置の動作を自動的に制御してもよい。このことは、酸素分離装置の自給自足の制御が常に供給されること、とりわけ、酸素富化ガスの可能な最高の質且つ可能な最小のエネルギー消費を可能とする。
【0040】
酸素分離装置の他の利点及び技術的特徴に関し、酸素を生成する方法の説明、図面、及び、図面の説明が言及されている。
【0041】
本発明は、酸素含有ガスから酸素を分離する方法であって、当該方法は、酸素分離器の一次側に酸素含有ガスをガイドし、酸素分離器の一次側と二次側との間に圧力差を作ることによって、酸素分離器を通じて酸素のフローを生成する酸素分離ステップを実行するステップと、酸素分離ステップの前又は後に、二次側から一次側へ酸素分離器を通じて排出ガスをガイドするとともに、排出管を通じてパージ用ガスをガイドすることによって、酸素分離器をパージするステップと、排出管における少なくとも1つの成分の濃度を決定するステップと、排出管における少なくとも1つの成分の決定された濃度に基づいて、酸素分離装置を制御するステップとを有する、方法に関する。
【0042】
上述のような方法は、酸素分離装置の制御、ひいては、生成される酸素富化ガスの純度及び質、又は、エネルギー消費を著しく向上させることを可能とする。これにより、かかる方法は、製品フローにおいて、ガス濃度、又は、酸素純度を感知することに比して、要求される酸素純度を達成又は維持するための、より敏感且つ早い測定を提供する。
【0043】
詳細には、上述のような測定を供給することによって、総酸素バランスが、設定され得る。かかる酸素バランスにより、分離装置に含まれる酸素の総量が、経時的に、減少又は増加しているレートを計算することが容易に可能である。「格納」される酸素の総量の上記変化レートは、分離プロセスを制御するために、即ち、必要なパワー入力を最小化し、「製品」ストリームにおける窒素の「ブレイクスルー」を回避し、及び/又は、製品の酸素純度の飽和を回避するために、重要な診断法である。
【0044】
従って、第1のステップによれば、酸素分離ステップが実行され、ここで、酸素分離ステップは、酸素分離器の一次側に酸素含有ガスをガイドするステップと、コンプレッサ又は真空ポンプなどによって、圧力差を作ることで、酸素分離器を通じて酸素のフローを生成するステップとを有する。当該ステップは、このため、一般的に知られている、酸素含有ガスが酸素分離器の中にガイドされ、他の成分が酸素から離れて酸素分離ソルベントに吸着され、酸素分離器の外へガイドされてユーザに供給される酸素分離装置を用いる酸素分離ステップに対応する。
【0045】
酸素分離器又は酸素分離ソルベントから吸着された物質を脱着するために、酸素分離器は、酸素分離器を通じてパージ用ガスをガイドすることによって、及び、排出管を通じて排出ガスをガイドすることによって、酸素分離ステップの前又は後でパージされる。この再生ステップは、コンプレッサ又は真空ポンプなどのガス輸送装置によって実行されてもよい、例えば、圧力スイング吸着システムから知られている従来のステップである。
【0046】
酸素富化ガスの所定のガスクオリティを保証するために、排出管における、少なくとも1つの成分の濃度、及び、特定の少なくとも1つのガスの濃度が決定される。さらに、酸素分離装置は、ガス濃度などの決定された濃度に基づいて、制御される。結果、例えば、意図されたモードにおける酸素分離装置の動作、又は、温度などの影響によって劣化されるプロセスを決定するために、各ガス濃度が、酸素バランスを決定すべく、用いられる。結果として、酸素分離装置は、生成される酸素富化ガスの改善された質を可能とする改善された態様で制御され、これにより、上記制御のための時間を著しく低減させる。
【0047】
一実施形態によれば、酸素濃度又は窒素濃度が、排出管において、決定される。酸素濃度の測定に関し、測定結果の極めて容易且つ直接的な分析が、達成され得る。さらに、この実施形態は、情報が要求される成分、即ち、酸素に対応するデータの生成を直接的に可能とする。結果の質の低下につながる測定結果の分析に潜在的に悪影響を及ぼす副作用が、回避され得る。
【0048】
他の実施形態によれば、排出管における少なくとも1つの成分のガス濃度は、パージ段階に亘って、測定及び平均化される。このことは、制御が、ただ1つのパージ段階の測定結果に基づいているという事実のために、酸素分離装置の極めて動的な制御を可能とする。結果として、酸素富化ガスの質を劣化させる副作用が、著しい質の劣化が供給される前に、極めて効果的な制御を可能にするように、直接的に決定され得る。このことは、さらに、特に、例えば、酸素分離装置が、ホームケアの分野において、医療用アプリケーションのために用いられる場合、セキュリティ上の著しい利点をもたらす。当該実施形態は、これにより、主に、排出管におけるガス濃度の決定のため、可能となる。
【0049】
他の実施形態によれば、酸素分離器が、酸素分離装置を制御するための周期的な定常状態にあるかどうかが決定される。このことは、標準的な状態を有する酸素分離装置を制御するために極めて効果的な測定であり、常に、エラーの発生がない。上記周期的な定常状態は、酸素分離ソルベントに格納される酸素の量の変化が一定である状況として理解され得る。これは、酸素分離装置の所望の動作であり、duO2/dt=0として記述される。実際は、酸素分離器は、まず、酸素分離器に格納される酸素量が上昇する段階を有し、その後、周期的な定常状態に達してもよい。さらに、格納される酸素量が減少する段階が続いてもよい。酸素分離器の状態に依存して、制御は、好適であってもよい。酸素分離器の現在の状態の決定は、これにより、制御の多様性をもたらす。
【0050】
酸素生成方法の他の利点及び技術的特徴に関し、酸素を生成する方法の説明、図面、及び、図面の説明が言及されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の上記態様及び他の態様が、以下に説明される実施形態を参照して、明確且つ明らかとなる。
図1図1は、本発明に従った酸素分離装置の一実施形態の概略図を示している。
図2図2は、本発明に従った酸素分離装置の他の実施形態の一部の簡略図を示している。
図3図3は、排出管及び出口管における酸素濃度に対する供給段階の変化の効果を示す概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1において、酸素を生成するための酸素分離装置10の例示的な実施形態が概略的に示されている。酸素分離装置10は、例えば、COPD治療の分野において、治療アプリケーションに関して、酸素を生成するために用いられてもよい。酸素分離装置10は、例えば、病院内で使用されるため、固定配置として設計されてもよく、又は、例えば、ホームケアアプリケーションの分野において使用されるため、携帯装置であってもよい。しかしながら、酸素分離装置10は、飛行機内又は溶接目的などの、純粋又は実質的に純粋な酸素が供給される必要のある任意のアプリケーションのために使用されてもよい。上記の酸素濃縮器、又は、酸素分離装置10は、フィリップスレスピロニクス(登録商標)社から購入可能なSimplyGo(登録商標)と呼ばれる酸素濃縮器などに基づいていてもよい。
【0053】
図1に記載の酸素分離装置10は、酸素含有ガスから酸素を分離することが可能な少なくとも1つの酸素分離器12を有する。しかしながら、酸素分離装置10は、並列に配置された、少なくとも2つの酸素分離器12,14を有することが望ましい。以下では、本発明は、2つの酸素分離器12,14を参照して説明される。しかしながら、たった1つの酸素分離器12、又は、2つより多くの酸素分離器12,14を用いることによって、全ての特徴が、然るべく供給され得るということが、当該技術分野における当業者にとって明らかである。各酸素分離器12,14は、篩床として形成されてもよく、酸素分離ソルベント16,18を備えていてもよい。酸素分離ソルベント16,18は、特に、酸素フローを著しく妨げることなく酸素を通過させるように構成されているが、酸素含有ガスにおいて存在している他の成分と相互作用する、又は、当該他の成分を吸着するように構成されている。酸素含有ガスとして空気が用いられる場合、酸素分離ソルベント16,18は、窒素を吸着するように構成されることが望ましい。適切な酸素分離ソルベント16,18は、リチウムゼオライト材料などのゼオライト材料を有していてもよい。しかしながら、例えば、圧力スイング吸着プロセス又は真空スイング吸着プロセスなどのスイングプロセスのために使用される、当該技術分野において既知の全ての適切な酸素分離ソルベント16,18を用いることが可能であってもよい。
【0054】
入口管20が、酸素分離器12の一次側において、酸素分離器12のガスインレット24へ酸素含有ガスのフローをガイドするために供給されている。これに対応して、入口管26が、酸素分離器14の一次側において、酸素分離器14のガスインレット28へ酸素含有ガスのフローをガイドするために供給されている。さらに、酸素富化ガス又は純粋な酸素を酸素分離器12,14の外へガイドするための出口管30,32が、各酸素分離器12,14のガスアウトレット34,36に接続されている。
【0055】
酸素分離器12,14の入口管24,26は、酸素分離装置10のインレット38に接続されている。インレット38は、ガス格納装置、又は、酸素分離装置10を囲んでいる空気などの、酸素含有ガスの源に接続されている。さらに、酸素分離器12,14の一次側と二次側との間に圧力差を作るための圧力調整装置40が、供給されてもよい。図1によれば、圧力調整装置40は、酸素含有ガスを圧縮し、入口管24,26の一部である、又は、入口管24,26に接続され得る入口管42,44を通じて、圧縮した酸素含有ガスを酸素分離器12,14へ送るためのコンプレッサとして形成されている。従って、本発明によれば、入口管なる表現は、これらの入口管42,44,24,26のうちの1つ、幾つか、又は、全てを意味すべきである。酸素含有ガスの第1の清浄ステップを提供するために、圧力調整装置40の上流側又は下流側において、入口フィルタ46が供給されてもよい。詳細には、特に、固体粒子が、酸素含有ガスから排除され得る。
【0056】
酸素含有ガスを、酸素分離器12,14を通じて断続的にガイド可能にするために、入口バルブ48,50が、入口管42,44において供給されてもよい。本発明に従ったバルブは、ガスフローを許可し、ガスフローを抑止し、及び/又は、ガスフローの量を調整することができる任意の装置であってもよい。結果、バルブ50を閉じるとともに、バルブ48を開くことによって、酸素含有ガスは、第1の酸素分離器12を通じてガイドされる一方、バルブ50を開くとともに、バルブ48を閉じることによって、酸素含有ガスは、第2の酸素分離器14を通じてガイドされ得る。これに対応して、逆止弁などのバルブ52が、出口管30において供給され、逆止弁などのバルブ54が、出口管32において供給され得る。酸素含有ガスを第1の酸素分離器12を通じてガイドすることによって、バルブ52が、開く一方、バルブ54が閉じられる。これに対応して、酸素含有ガスを第2の酸素分離器14を通じてガイドすることによって、バルブ54が、開く一方、バルブ52が閉じられる。
【0057】
生成される酸素を格納するために、バルブ52,54の下流側において、出口管30,32が、酸素アキュムレータ56、又は、ガスタンクに接続される。酸素アキュムレータ56は、純粋な酸素のストリームを制御するために、フローコントローラ60が供給され得る出口管58に接続されてもよい。従って、本発明によれば、出口管なる表現は、これらの出口管58,30,32のうちの1つ、幾つか、又は、全てを意味していてもよい。さらに、追加フィルタ62が、生成された酸素がアウトレット64にガイドされる前に、出口管58において供給されてもよい。アウトレット64からは、生成された酸素富化ガスが、患者などの所望のアプリケーションへガイドされ得る。
【0058】
第1の酸素分離器12の出口管30と、第2の酸素分離器14の出口管32とは、開口又はフローコントローラなどのフロー調整器68が供給され得る、バルブ52,54の上流側にある交差導管66によって、接続されてもよい。これは、例えば、酸素分離器12,14で生成された酸素の所定の一部を、酸素分離器12,14を再生するためのパージの目的で、酸素分離器14,12を通じて、又は、その逆において、逆流させるようにガイドすることを可能にする。あるいは、酸素分離器12,14の二次側は、例えば、酸素分離器12,14を通じてパージ用ガスをガイドするための、高純度の酸素を有するタンクなどのパージ用ガスの他の源に接続されてもよい。これに関し、バルブ74,76をそれぞれ有する排出管70,72が、酸素分離器12,14の一次側において供給される。酸素富化ガスなどのパージ用ガスが、再生目的のために、二次側から一次側に、酸素分離器12,14を通じてガイドされる場合、出力フローは、排出管70,72を通じて選択的にガイドされてもよい。さらに、排出管70,72は、各々のアウトレット、又は、1つの共通の排出管73に結合されてもよく、1つの共通の排出管78にガイドされてもよい。
【0059】
さらに、酸素分離器12,14を加熱するための加熱装置80が供給されてもよい。加熱装置80は、酸素分離器12,14全体に作用してもよいし、又は、再生目的のために、特定の領域のみを加熱してもよい。一般的に、当該技術分野において既知の全ての加熱装置80が用いられ得る。例えば、加熱コイルが供給されてもよい。
【0060】
さらに、例えば、光センサである、酸素センサ又は窒素センサなどのガスセンサ82が、排出ガスの少なくとも1つの成分の濃度を決定するために、排出管73において供給される。図1に示されるように、ガスセンサ82が、共通の排出管73に設けられることが望ましく、あるいは、第1の酸素分離器12の排出管70及び/又は第2の酸素分離器14の排出管72において、各ガスセンサが、追加的又は代替的に配置されることが望ましい。1又は複数の排出管70,72,73に配置されるガスセンサ82に加えて、別に、酸素センサ、窒素センサ、又は、フロー計などの計測器84が、1又は複数の入口管42,44に配置されてもよく、酸素センサ、窒素センサ、又は、フロー計などの計測器86が、1又は複数の出口管30,32,58、又は、製品管にそれぞれ配置されてもよい。ガスセンサ82及び/又は他の計測器84,86の少なくとも1つによって供給されるデータに基づいて酸素分離装置10を制御するために、自動的に動作する制御ユニット及び/又は酸素分離装置を手動制御するための入力ユニットなどの制御装置が、ガスセンサ82、及び、他の計測器84,86の少なくとも1つに接続されて供給されてもよい。酸素分離装置の制御は、以下の図面を参照して説明される。
【0061】
図2は、本発明に従った酸素分離装置10の一部の簡略図を示している。詳細には、図2において、例示的且つ非限定的な態様で、酸素分離ソルベント16を具備する酸素分離器12が示されている。酸素分離器12は、異なる接続点を有する当該実施形態によれば、一次側において、入口管20及び排出管70に接続されており、二次側において、出口管30及び他のパージ用ライン31に接続されている。排出管70にガスセンサ82を供給し、潜在的に、入口管44に計測器84を供給し、出口管30に計測器86を供給することによって、総酸素バランスが、計算され、酸素分離装置10、ひいては、供給期間及びパージ期間の長さ、各ガスストリームのフローレート、酸素含有ガスの純度などの正確な制御を可能にする。
【0062】
上述のような酸素分離装置10は、全てのフロー、即ち、「インフロー」、「製品フロー」、及び、「排出フロー」における、1つの半周期、ひいては、1つのパージ段階などのサイクルの厳密に限られた数の段階に亘って平均化された、フローレート及び酸素濃度を推定又は決定可能である。このようにして、総酸素バランスが設定されることができる。上記酸素バランスにより、例えば、酸素分離装置に含まれる酸素の総量が経時的に減少又は増加している一般的傾向及び絶対レートを計算することが容易に可能である。
【0063】
例示的に、計測器84,86はガスセンサであり、このことは、ガスセンサ84によって決定される、インフローにおける、ひいては、供給段階において酸素分離器12へ向けられる酸素含有ガスのフローにおける酸素の総量、ガスセンサ86によって決定される、製品フローの、ひいては、供給段階において酸素分離器12を離れる酸素富化ガスのフローの総量、並びに、ガスセンサ82によって決定される、排出フローの、ひいては、パージフローにおいて酸素分離器12の外へ流れる排出ガスのフローの総量が少なくとも定常状態において一定であると仮定することによって実現され得る。このことは、本発明によれば、各ガスセンサ82,他の計測器84,86によって測定されることができ、ガスセンサは、一般的に、各ガス、又は、ガスストリームのそれぞれの、質的な、且つ、潜在的に質的な測定装置として理解され得る。上記事項は、以下の等式によって明確化され得る。
ΦinyO2in=ΦproyO2pro+ΦexyO2ex+duO2/dt
【0064】
ここで、Φinは、酸素含有ガスのフローレートに対応し、yO2inは、酸素含有ガスの酸素濃度に対応し、Φproは、酸素富化ガス(製品ガス)のフローレートに対応し、yO2proは、酸素富化ガス(製品ガス)の酸素濃度に対応し、Φexは、排出ガスのフローレートに対応し、yO2exは、排出ガスの酸素濃度に対応し、duO2/dtは、酸素分離器12又は酸素分離ソルベント16に格納される酸素の量の変化に対応する。酸素分離装置10の所望の動作は、周期的な定常状態に達する、即ち、duO2/dt=0である状態であってもよい。例えば、半周期又はパージ段階に亘って平均化されるなどして、排出管における酸素濃度が測定される場合、酸素分離器が周期的に定常状態で動作しているかどうか、又は、この所望の状態が失われ、測定が行なわれる必要があるかどうかが、直接的に決定され得る。このことは、周期的な定常状態の排出フローにおける酸素濃度について記述している以下の等式によって、視覚化されることができる。
yO2exCSS=[ΦinyO2in−ΦproyO2pro]/Φin−Φpro
【0065】
結果として、排出管70における酸素濃度を決定することによって、例えば、篩の状態のためのインジケータとして、等式ΔyO2ex = yO2ex - yO2exCSSを用いて、0.1%の正確さで、酸素分離器の定常状態が直接的に決定され得る。このことは、排出ガスにおける酸素濃度を単独で測定することによって、又は、上述のような他のガスを追加的に調査することによって、質的に実行され得る。
【0066】
排出における酸素濃度を知ることによって、ユーザに届けられるフローレート及び酸素濃度の推定が、間接的に計算され得る。総酸素バランスを推察することが可能である。酸素バランスを知ることによって、より迅速な診断法を開始することが可能である。これは、酸素分離器12の「バッファ」ボリュームのために、製品フローにおける純度が極めて遅く変化するという事実のためである。
【0067】
図3は、酸素分離器14の状態の相対評価を示している。詳細には、図3では、曲線Aで示される排出ガスの酸素濃度yO2exが、曲線Bとしての、酸素富化ガス(製品ガス)の酸素濃度yO2proとともに、経時的に、示されている。酸素分離装置10の特徴的なパラメータを変えることによって、排出ガスの酸素濃度yO2exを決定することによって、酸素富化ガス(製品ガス)の酸素濃度yO2proを決定することによってよりもずっと早く、酸素分離器12の状態の変化が見られることが分かる。詳細には、図3のダイアグラムは、供給段階が、650s(点a)において、2.5sから3.5sに変えられるとともに、950s(点b)において、3.5sから4.0sに変えられた場合の、各酸素濃度に対する効果を示している。排出ガスにおける酸素濃度が、上記変換を直接的に示している一方、製品ガス又は酸素富化ガスにおける酸素濃度が、より遅く、著しく鈍感に、酸素分離状態における上記変化を示していることが、明らかに見て取れる。このため、例えば、酸素分離器12が、周期的な定常状態で動作している場合、又は、酸素分離結果を改善するために、制御がトリガされ得る酸素ストレージの増加量又は減少量を有する場合、極めて迅速に決定することが可能である。この例は、酸素分離器12の傾向又は性質を決定するために特に有用であり、本発明に従った酸素分離装置及び方法によって可能である極めて迅速な制御を明確に実行する。
【0068】
本発明が、図面及び上記説明において詳細に図示及び説明されてきたが、かかる図示及び説明は、例示的なものであって、限定的ではないと解釈されるべきであり、即ち、本発明は、開示の実施形態に限定されない。開示の実施形態に対する他の変形が、図面、開示、及び、添付の請求項の研究から、本発明を実施する際、当該技術分野における当業者によって、理解及び実施され得る。請求項中、「有する」なる用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は、複数あることを除外しない。特定の特徴が相互に異なる従属請求項において言及されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせが好適に用いられないということを示すものではない。請求項中の任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3