(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ長手方向に沿って、前記透液性表面シートの外面側から前記裏面シートに向けて窪む圧搾溝が形成され、前記圧搾溝の間に前記高吸水性樹脂の配置領域が位置している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
前記透液性表面シートは、体液排出部位に対応する領域に多数の開孔が形成された単一のシートからなるか、体液排出部位に対応する領域が厚み方向に貫通する貫通部とされた基材シートの前記貫通部に、多数の開孔を備えた孔開きシートが接合された複合シートからなるか、基材シートの体液排出部位に対応する領域に多数の開孔を備えた孔開きシートが積層された積層シートからなる請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記吸収性物品の中でもパンティライナーや生理用ナプキンなどは、粘度が高くドロドロした経血や、固まって塊状になった通常の不織布では表面に残ってしまう経血などが排出される場合がある。このような粘度が高い経血が表面に残っていると、肌に触れたとき不快感に繋がるため、透液性表面シートの表面に残らないようにする必要があった。
【0007】
この点において、上記特許文献1記載の吸収性物品では、液体浸透性の第一ケーシングシート1(透液性表面シート)として不織布や多孔プラスチックフィルムなどを用いた場合には、粘度の高い経血が表面に残ってしまうおそれがあった。また、体圧により表面シート及び吸収体が圧縮されたとき、透液性表面シートを通過して吸収体に吸収された体液が表面シートの外面側に逆戻りするおそれがあった。
【0008】
更に、上記特許文献2記載の吸収性物品では、表面シートが2層の通過層によって構成されているため、粘度の高い経血の場合は、第1の通過層を通過できたとしても、第2の通過層を通過できずに2層の通過層の間に滞留するおそれがあった。また、2層の通過層の間に滞留した経血が、体圧により表面側に逆戻りするおそれがあった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、粘度の高い体液を確実に吸収するとともに、吸収した体液の表面への逆戻りを防止し、装着時の不快感を軽減した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートの少なくとも体液排出部位に対応する領域に多数の開孔が形成されるとともに、前記透液性表面シートの前記吸収体側の面に隣接して、
上層不織布と下層不織布との間に、少なくとも体液排出部位に対応する領域の両側部に
それぞれ長手方向に沿って
連続線状又は連続帯状に高吸水性樹脂が配置され
、前記高吸水性樹脂の配置領域より外側の前記吸収体と重なる領域に前記高吸水性樹脂が介在しない非存在領域が形成されたポリマーシートが備えられ、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤した状態で、前記高吸水性樹脂の配置領域の間であって前記透液性表面シートと前記ポリマーシートとの間に、体液保持用の空間部が形成されるようになっていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記透液性表面シートとして、少なくとも体液排出部位に対応する領域に多数の開孔が形成されたものを用いている。このため、粘度の高い塊状の経血でもこの開孔を通じて透液性表面シートを通過でき、表面の液残りが防止できるようになる。また、本吸収性物品では、前記透液性表面シートの吸収体側の面に隣接して、
上層不織布と下層不織布との間に、少なくとも体液排出部位に対応する領域の両側部に
それぞれ長手方向に沿って
連続線状又は連続帯状に高吸水性樹脂が配置され
、前記高吸水性樹脂の配置領域より外側の前記吸収体と重なる領域に前記高吸水性樹脂が介在しない非存在領域が形成されたポリマーシートが備えられ、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤した状態で、前記高吸水性樹脂配置領域の間の透液性表面シートが肌側に引き上げられることにより、前記高吸水性樹脂の配置領域の間であって前記透液性表面シートとポリマーシートとの間に、体液保持用の空間部が形成されるようになっている。このため、前記開孔を通じて透液性表面シートを通過した粘度の高い経血が、この空間部に保持されるようになり、粘度の高い経血が直接肌に接触せず、装着時の不快感が軽減できるようになる。また、前記空間部に粘度の高い経血が保持された状態で体圧が加わったとき、両側の膨潤した高吸水性樹脂配置領域によって粘度の高い経血に圧縮力が加わるのが抑制されるため、粘度の高い経血が表面に逆戻りするのが防止できる。前記空間部は、排泄時の前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤することによって形成され、排泄前は表面がほぼ平坦に形成されているため、排泄前の装着感は、通常の吸収性物品と変わらない。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記透液性表面シートと前記ポリマーシートとは、前記高吸水性樹脂の配置領域の間では接合されていない請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、前記透液性表面シートと前記ポリマーシートとを高吸水性樹脂配置領域の間で非接合としているため、高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときに、透液性表面シートのみが肌側に引き上げられ、前記空間部が確実に形成されるようになる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ長手方向に沿って、前記透液性表面シートの外面側から前記裏面シートに向けて窪む圧搾溝が形成され、前記圧搾溝の間に前記高吸水性樹脂の配置領域が位置している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ長手方向に沿って圧搾溝が形成された場合において、左右の圧搾溝の間に前記高吸水性樹脂の配置領域が位置している。このため、高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときに透液性表面シートが肌側に引き上げられるのが、前記圧搾溝で阻害されることがなくなり、前記空間部が確実に形成されるようになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記高吸水性樹脂の配置領域の間の離間幅は15〜50mmである請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、粘度の高い経血を確実に保持できる大きさで前記空間部を形成するため、前記高吸水性樹脂の配置領域の間の離間幅を所定の範囲で配置している。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記開孔の大きさは3〜15mmである請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、粘度の高い経血が確実に透液性表面シートを通過して表面に残らないようにするとともに、前記空間部に保持された体液が表面側に逆戻りするのを防止するため、前記開孔を所定の大きさで形成している。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記透液性表面シートは、体液排出部位に対応する領域に多数の開孔が形成された単一のシートからなるか、体液排出部位に対応する領域が厚み方向に貫通する貫通部とされた基材シートの前記貫通部に、多数の開孔を備えた孔開きシートが接合された複合シートからなるか、基材シートの体液排出部位に対応する領域に多数の開孔を備えた孔開きシートが積層された積層シートからなる請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、前記透液性表面シートの体液排出部位に対応する領域に多数の開孔を形成するための手段として、前記透液性表面シートを、体液排出部位に対応する領域に多数の開孔を形成した単一のシートとするか、体液排出部位に対応する領域が厚み方向に貫通する貫通部とされた基材シートの前記貫通部に、多数の開孔を備えた孔開きシートを接合した複合シートとするか、基材シートの体液排出部位に対応する領域に多数の開孔を備えた孔開きシートが積層された積層シートとしている。前記単一シートで構成した場合には、部品点数が少なくて済み、製造が簡略化できる。一方、前記複合シートで構成した場合には、開孔が形成された市販のシートを利用でき、開孔処理が不要となる。また、前記積層シートで構成した場合には、基材シートをポリマーシートに接合することで、高吸水性樹脂が吸水して膨潤した状態で、孔開きシートのみが浮き上がり、孔開きシートと基材シートとの間に空間部が形成されるようになっている。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、粘度の高い体液が確実に吸収できるとともに、吸収した体液の表面への逆戻りが防止でき、装着時の不快感が軽減できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配設されたポリマーシート6とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分にヒップホールド用フラップW
B、W
Bが形成されたものである。なお、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート(図示せず)で囲繞してもよい。
【0026】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。前記透液性表面シート3の所定領域には、多数の開孔11…が形成されているが、これについては後段で詳細に説明する。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間には、
図2に示されるように、2枚の不織布シート6A、6B間の所定領域に高吸水性樹脂が配置されたポリマーシート6が備えられている。このポリマーシート6については、後段で詳細に説明する。
【0031】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0032】
前記サイド不織布7は、
図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、
図1に示されるように、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW
B、W
Bを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップW
Bをショーツの内面に止着するようになっている。一方、前記サイド不織布7の内方側は、
図2に示されるように、吸収体4の側縁部を覆うだけに止まり、透液性表面シート3にホットメルトなどの接着剤によって接着されている。
【0033】
〔体液保持用の空間部について〕
本生理用ナプキン1では、体液排泄時に、粘度が高くドロドロした経血や、固まって塊状になった経血など粘度の高い体液が表面に残るのを防止するとともに、この粘度の高い経血を保持するための空間部10が形成されるようになっている。以下、このことについて詳細に説明する。
【0034】
前記透液性表面シート3は、少なくとも体液排出部位Hに対応する領域に、多数の開孔11、11…が形成されている。前記開孔11は、透液性表面シート3を厚み方向に貫通したシート部材が存在しない部分である。前記開孔11は、粘度の高い経血が通過できる程度の大きさで形成されている。前記開孔11を形成する範囲は、体液排出部位Hに対応する領域を含む体液排出部位Hより広い範囲とするのが好ましい。
【0035】
前記透液性表面シート3の体液排出部位Hに対応する領域に多数の開孔11、11…を形成することにより、粘度の高い塊状の体液がこの開孔11、11…を通じて透液性表面シート3を通過でき、表面の液残りが防止できるようになる。
【0036】
また、本生理用ナプキン1では、透液性表面シート3の吸収体4側(非肌側)の面に隣接して、体液排出部位Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って高吸水性樹脂12が配置されたポリマーシート6が備えられている。
【0037】
前記ポリマーシート6が透液性表面シート3の吸収体4側の面に隣接して配置されることにより、透液性表面シート3を通過した体液が直接ポリマーシート6の肌側面に接触するようになっている。
【0038】
前記ポリマーシート6は、肌側に配置された上層不織布6Aと、非肌側に配置された下層不織布6Bとの間の所定の領域に、高吸水性樹脂が封入された構造をなしている。前記不織布6A、6B間には高吸水性樹脂のみが配置され、パルプを含まない。パルプを配置すると、高吸水性樹脂のみの場合と比較して、吸水前のポリマーシート6の嵩が大きくなって、高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときの厚みの増加割合が低下するおそれがある。
【0039】
前記ポリマーシート6は、
図1及び
図2に示されるように、前記上層不織布6Aと下層不織布6Bとを接合する接合部によって内部に前記高吸水性樹脂が封入された高吸水性樹脂配置領域12が、少なくとも体液排出部位Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って1条ずつ形成されている。前記高吸水性樹脂配置領域12以外の領域は、高吸水性樹脂が介在しない非存在領域となっている。この高吸水性樹脂が介在しないとは、上層不織布6Aと下層不織布6Bとの間に高吸水性樹脂が全く存在しない状態、或いは高吸水性樹脂の散布時に繊維間に入り込むなどして多少存在するが、高吸水性樹脂が封入された高吸水性樹脂配置領域12に比べて格段に少ない状態のことを意味する。
【0040】
前記高吸水性樹脂配置領域12は、生理用ナプキン1の長手方向に対して、体液排出部位Hに対応する領域を含んでいればよいが、これより前側及び後側に長く形成するのが好ましい。
図1に示される例では、ウイング状フラップWの基端部のナプキン長手範囲とほぼ同じ範囲に設けられている。左右の高吸水性樹脂配置領域12、12の間には、高吸水性樹脂が存在せず、上層不織布6Aと下層不織布6Bのみが存在している。
【0041】
前記高吸水性樹脂配置領域12及びその近傍では、前記上層不織布6Aと下層不織布6Bとが接合されず、それ以外の領域で、前記上層不織布6Aと下層不織布6Bとがホットメルトなどの接着剤によって接合されている。前記上層不織布6Aと下層不織布6Bとの接合部は、前記高吸水性樹脂配置領域12に高吸水性樹脂が封入されるように、少なくとも高吸水性樹脂配置領域12の周囲を囲むように配置してあればよく、高吸水性樹脂配置領域12以外の領域を全体に亘って接合するようにしてもよい。
【0042】
前記ポリマーシート6は、前記高吸水性樹脂配置領域12より若干外側に延在した、少なくとも着用者の体液排出部位H及びその周辺を覆う大きさで形成してあればよいが、生理用ナプキン1の幅方向に対しては、吸収体4と略等幅に形成するのが好ましく、生理用ナプキン1の長手方向に対しては、ウイング状フラップWの基端長さより前後に若干長い範囲か、吸収体4とほぼ同じ長さで形成するのが好ましい。
【0043】
前記ポリマーシート6は、少なくとも着用者の体液排出部位Hに対応する位置に配置されている。
図1に示される生理用ナプキン1は、着用者の臀部まで覆う後側に長い夜用生理用ナプキンであるため、前記ポリマーシート6を生理用ナプキン1の前側寄り位置に配置しているが、体液排出部位H及びその周辺を覆う昼用生理用ナプキンの場合には、生理用ナプキン1の中央部に配置されるのが好ましい。
【0044】
本生理用ナプキン1では、
図3に示されるように、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤した状態で、前記高吸水性樹脂配置領域12、12間であって前記透液性表面シート3とポリマーシート6との間に、体液保持用の空間部10が形成されるようになっている。前記空間部10は、左右の高吸水性樹脂配置領域12、12に配置された高吸水性樹脂が吸水して膨潤し肌側に隆起するのに伴って、これら高吸水性樹脂配置領域12、12間の透液性表面シート3が肌側に引き上げられることにより形成された、透液性表面シート3とポリマーシート6(上層不織布6A)との間の隙間部分である。
【0045】
前記高吸水性樹脂配置領域12の高吸水性樹脂が吸水して膨潤することにより前記空間部10が形成されることによって、
図3(B)に示されるように、前記開孔11、11…を通じて透液性表面シート3を通過した粘度の高い経血が、前記空間部10に保持されるようになり、粘度の高い経血が直接肌に接触せず、装着時の不快感が軽減できるようになる。また、前記空間部10に粘度の高い経血が保持された状態で体圧が加わったとき、両側の膨潤した高吸水性樹脂配置領域12、12によって粘度の高い経血に圧縮力が加わるのが抑制されるため、粘度の高い経血が表面に逆戻りするのが防止できるようになる。更に、前記空間部10は、排泄により高吸水性樹脂が吸水して膨潤することによって形成され、排泄前は、
図3(A)に示されるように、表面がほぼ平坦に形成されているため、排泄前の装着感は通常の吸収性物品と変わらないようにすることができる。
【0046】
左右の高吸水性樹脂配置領域12、12間の離間幅(ナプキン幅方向の離間距離)は、15〜50mm、好ましくは15〜30mmとするのがよい。前記離間幅が15mmより小さいと、着用者の体液排出部位が左右の高吸水性樹脂配置領域12、12間に位置しにくく、排泄液が高吸水性樹脂配置領域12より外側に流れるおそれがある。また、前記離間幅が50mmより大きいと、高吸水性樹脂が吸水して膨潤し肌側に隆起したとき、左右の高吸水性樹脂配置領域12、12間の透液性表面シート3が弛んで肌側に引き上がりりにくく、前記空間部10が形成されにくくなる。
【0047】
前記高吸水性樹脂配置領域12のナプキン長手方向の長さは、体液排出部位Hの中心部から前側に30〜50mm、後側に30〜50mm程度が好ましい。体液排出部位Hの中心部から前側の長さと後側の長さとは同じにしてもよいし、異なっていてもよい。体液排出部位Hの中心部から後側に50mmより長くすると、後側に体液が拡散しすぎて後漏れの原因となる。
【0048】
前記高吸水性樹脂配置領域12は、
図1に示されるように、ナプキン幅方向に離間する体液排出部位Hの両側にそれぞれ、ナプキン長手方向に沿って直線状(帯状)に配置することができる。また、
図4(A)に示されるように、幅方向内側又は外側、図示例では内側に膨出する曲線状に配置してもよいし、同
図4(B)に示されるように、左右の高吸水性樹脂配置領域12の前後端同士を結んだ、体液排出部位Hの周囲を囲むように閉合した楕円状、円形状、菱形状、多角形状、図示例では楕円状、などに配置してもよい。
【0049】
前記開孔11の大きさは、粘度の高い塊状の経血が通常は2〜10mmの大きさを有するため、この経血が通過できるように、3〜15mm、好ましくは4〜10mmとするのがよい。前記開孔11が3mmより小さいと、粘度の高い経血が透液性表面シート3を通過しにくく、表面に液残りして装着時の不快感が生じるようになる。また、前記開孔11が15mmより大きいと、粘度の高い経血が通過しやすくなる一方で、前記空間部10に入り込んだ体液が開孔11を通じて表面に逆戻りしやすくなり、装着時の不快感が生じるようになる。
【0050】
隣り合う開孔11、11の離間距離は、粘度の高い経血が開孔11を通過しやすくするとともに、表面への逆戻りを極力少なくするため、2〜8mm程度とするのが好ましい。2mmより小さい場合、不織布に強度が出ず、製造時や使用時に切れてしまうおそれがあり、8mmより大きい場合、非開孔部分が多く、経血が通過しにくくなる。
【0051】
前記開孔11の配置パターンは、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に整列した正格子状としてもよいし、隣り合う列又は行を生理用ナプキン1の長手方向又は幅方向に半ピッチずつずらした千鳥格子状としてもよい。前記開孔11は、
図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向に沿って複数列、好ましくは2列〜5列で設けるのがよい。図示例では、生理用ナプキン1の長手方向に沿って3列で設けられている。
【0052】
前記開孔11の平面形状は、図示例のように円形でもよいし、図示しない楕円形や多角形などとしてもよい。楕円形のように長軸方向と短軸方向とを有する場合は、ナプキン長手方向が長軸方向となるように配向するのが好ましく、短軸方向の長さが3〜15mmで形成するのが好ましい。
【0053】
前記開孔11は、前記ポリマーシート6の左右の高吸水性樹脂配置領域12、12の間であって、前記高吸水性樹脂配置領域12の長手範囲内に形成するのが好ましい。これにより、前記開孔11を通過した粘度の高い経血が排泄により形成される前記空間部10に確実に保持されるようになる。また、前記高吸水性樹脂配置領域12より外側に前記開孔11を形成するのは任意である。
【0054】
前記透液性表面シート3に開孔11を形成する手段としては、次の3つの手段のいずれかとするのが好ましい。第1の手段としては、
図1及び
図2に示されるように、体液排出部位Hに対応する領域に多数の開孔11が形成された単一のシートで構成することができる。1枚のシートで構成することによって、部品点数が少なくて済み、製造が簡略化できる。透液性表面シート3に前記開孔11を形成するには、パンチングによって打ち抜いてもよいし、ピンなどの突き刺しによって形成してもよい。
【0055】
第2の手段としては、
図5及び
図6に示されるように、体液排出部位Hに対応する領域が厚み方向に貫通する貫通部3aとされた基材シート3Aの前記貫通部3aに、多数の開孔11、11…を備えた孔開きシート3Bが接合された複合シートで構成することができる。この構成では、孔開きシート3Bを基材シート3Aに接合しているため、予め開孔が形成された市販のシートを利用することができ、開孔を形成する加工処理が不要となる。
【0056】
第3の手段としては、
図9(A)に示されるように、前記貫通部3aを有さない一様なシート状に形成された基材シート3Cの体液排出部位Hに対応する領域に、多数の開孔11、11…を備えた孔開きシート3Dが積層された積層シートで構成したものである。このとき、前記孔開きシート3Dは、少なくともポリマーシート6の高吸水性樹脂配置領域12、12間において、基材シート3Cに対して接合されず、これより外周部において基材シート3Cと接合されている。また、前記基材シート3Cは、ポリマーシート6の高吸水性樹脂配置領域12、12間においてポリマーシート6と接合されている。これによって、ポリマーシート6の高吸水性樹脂が吸水して膨潤したとき、同
図9(B)に示されるように、前記孔開きシート3Dのみが浮き上がり、孔開きシート3Dと基材シート3Cとの間に前記空間部10が形成されるようになる。
【0057】
次に、
図1に示されるように、体液排出部位Hに対応する領域の両側部にそれぞれ長手方向に沿って、透液性表面シート3の外面側から不透液性裏面シート2に向けて窪む圧搾溝20が形成された生理用ナプキン1の場合について説明する。前記圧搾溝20は、
図1及び
図2に示されるように、透液性表面シート3の外面側(肌当接面側)からの圧搾により、透液性表面シート3から吸収体4にかけての部材を厚み方向に一体的に圧搾したものである。前記圧搾溝20は、少なくとも体液排出部位Hに対応する領域の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配置された両側圧搾溝21、21を含み、図示例では、体液排出部位Hに対応する領域の前後にそれぞれ幅方向に沿って配置された前後圧搾溝22、22が形成されるとともに、これより臀部側位置に幅方向に沿うとともに前側に膨出した曲線状の後部圧搾溝23が形成されている。前記両側圧搾溝21、21及び前後圧搾溝22、22は、これらの圧搾溝21、22によって、体液排出部位Hに対応する領域を周方向にほぼ囲むように配置されている。
【0058】
このような圧搾溝20が形成された生理用ナプキン1では、前記ポリマーシート6の高吸水性樹脂配置領域12は、生理用ナプキン1の幅方向に対しては、前記両側圧搾溝21、21の間に配置するのが好ましい。これにより、
図3(B)に示されるように、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤し、肌側に隆起したときに、前記圧搾溝20によって透液性表面シート3が肌側に引き上げられるのが阻害されることなく、前記高吸水性樹脂配置領域12、12の間に空間部10が確実に形成されるようになる。
【0059】
また、前記高吸水性樹脂配置領域12は、生理用ナプキン1の長手方向に対しては、前後圧搾溝22、22の間に配置するのが好ましい。これにより、上記と同様に、高吸水性樹脂配置領域12、12の間に空間部10が確実に形成されるようになる。
【0060】
一方、前記ポリマーシート6の上層不織布6A及び下層不織布6Bは、
図1及び
図2に示されるように、両側圧搾溝21、21及び前後圧搾溝22、22に重なる大きさとし、前記圧搾溝21、22の付与時に、前記透液性表面シート3及び吸収体4とともに一体的に圧搾されるようにするのが好ましい。これにより、生理用ナプキン1の装着時にポリマーシート6が位置ズレするのが防止でき、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときに前記空間部10が体液排出部位Hに対応する領域に確実に形成されるようになる。
【0061】
次に、前記透液性表面シート3とポリマーシート6との接合について説明する。前記透液性表面シート3とポリマーシート6とは、
図7及び
図8(A)に示されるように、少なくとも高吸水性樹脂配置領域12と重なる部分を通る長手方向に沿って、ポリマーシート6のほぼ全長に亘って線状又は帯状に形成された接着部30にて接合するのが好ましい。これにより、
図8(B)に示されるように、高吸水性樹脂が吸水して膨潤し肌側に隆起したときに、前記高吸水性樹脂配置領域12、12間の透液性表面シート3が肌側に引き上がりやすくなり、透液性表面シート3とポリマーシート6との間に空間部10が確実に形成されるようになる。また、前記接着部30は、前記空間部10が形成されるのを阻害しない範囲で設けることも可能である。ただし、透液性表面シート3の開孔11では接着剤が表面に染み出すおそれがあるので、この開孔11を避けて設けるのが望ましい。
【0062】
前記接着部30は、ホットメルトなどの接着剤をスパイラル、スプレー、ドットなどの体液の浸透を阻害しない程度に間欠的に塗布したものである。
【0063】
また、前記ポリマーシート6を吸収体4側に接着する接着領域としては、透液性表面シート3の開孔11が形成された領域以外の領域とするのが好ましい。前記開孔11が形成された領域は、体液の通過量が多く、できるだけ速く吸収体4側に体液を透過させるのが好ましいため、体液透過の阻害要因となる接着領域を設けないのが好ましい。
【0064】
ところで、前記ポリマーシート6の上層不織布6Aは、前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときに、高吸水性樹脂配置領域12が肌側に隆起しやすくするための手段を備えるようにするのが好ましい。この手段としては、上層不織布6Aの前記高吸水性樹脂配置領域12に、幅方向に弛ませた弛み部を設けたり、下層不織布6Bより上層不織布6Aの方が伸縮性に優れた素材を用いたりすることができる。
【解決手段】透液性表面シート3の少なくとも体液排出部位Hに対応する領域に多数の開孔11を形成する。前記透液性表面シート3の吸収体4側の面に隣接して、体液排出部位Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って高吸水性樹脂が配置されたポリマーシート6を備える。前記高吸水性樹脂が吸水して膨潤した状態で、高吸水性樹脂配置領域12、12の間であって前記透液性表面シート3と前記ポリマーシート6との間に、体液保持用の空間部10が形成されるようにする。