特許第6203906号(P6203906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203906
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20170914BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20170914BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61F13/532 200
   A61F13/47 300
   A61F13/475 200
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-118081(P2016-118081)
(22)【出願日】2016年6月14日
【審査請求日】2017年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽子
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/105533(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側に略長手方向に沿う左右対の圧搾溝が形成された吸収性物品において、
前記圧搾溝は、少なくとも体液排出部に対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ形成され、
前記圧搾溝は、着用者の体液排出部に対応する部位の後方に、左右の離間幅を狭めた離間幅縮小領域が形成されるとともに、前記離間幅縮小領域内であって左右の圧搾溝の離間幅が最小となる部分に、前記圧搾溝の溝幅を急激に拡大させた急拡大部が形成され、前記急拡大部は前記圧搾溝の両方の側壁が外側に膨出して形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記急拡大部は、吸収性物品の幅方向内側に向けて突出する少なくとも2つの凸部を有している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記急拡大部は、略星形の平面形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは肌当接面側に非肌側に向けて窪ませた圧搾溝が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
前記吸収性物品の中でも主に就寝時間帯に装着する夜用吸収性物品は、長時間装着し続けるため漏れが生じないことが重視されている。この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れ等を防止するための手段が種々講じられている。例えば、幅方向への体液の拡散を防止するとともに、吸収体のヨレを防止し、かつ吸収体中央部を隆起させ局部への密着性を向上させるなどの目的で、肌当接面に透液性表面シートの外面側からの熱エンボスによって非肌側(不透液性裏面シート側)に向けて窪ませた圧搾溝を形成する技術が存在する。
【0004】
近年では、前記圧搾溝の付与形状により身体にフィットさせるようにしたものが種々開発されている。例えば、下記特許文献1では、同文献の図5及び図6に示される実施形態において、圧搾条溝を幅方向にほぼ横切るように形成された略横断高圧搾部が配置された領域と、溝長手方向に沿って間隔をおいて略横断高圧搾部が配置された領域との間の圧搾条溝の幅(W1)を、略横断圧搾部領域の位置する圧搾条溝の幅(W2)よりも小さくした吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、同文献の図4に示される実施形態において、防漏溝が、着用者の排泄部当接領域で最大幅を有するように形成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−148706号公報
【特許文献2】特開2001−178775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された吸収性物品は、圧搾条溝が相対的に幅広の部分と相対的に幅狭の部分とを設けることによって、相対的に幅狭の部分の剛性を下げ、装着性を向上させることを目的としたものであるが、相対的に幅狭の部分では、剛性が低くなるため、幅方向両側から内側に向けて作用する脚圧を内方側の吸収体に伝達する効果が低く、中央部の吸収体を肌側に隆起させにくいという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載された吸収性物品では、防漏溝が着用者の排泄部当接領域で最大幅を有するように形成されているため、この排泄部当接領域において、幅方向両側から内側に向けて作用する脚圧が内側の吸収体に伝達されやすくなり、内側の吸収体が隆起しやすくなると考えられるが、防漏溝の幅広部分が排泄部当接領域のほぼ全体に亘って形成されているため、着用時に防漏溝の硬さによって装着感が悪化するとともに、吸収性物品が身体の前後方向の丸みに沿って湾曲しにくくなるおそれがあった。
【0009】
更に、上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、臀部との密着性の問題について十分に解決されたとは言い難く、吸収性物品との隙間をなくし臀部側への伝い漏れを改善する技術の開発が望まれていた。
【0010】
特に、股下の体液排出部から臀部溝の開始位置付近にかけての領域は、排出された体液が後側に伝って流れる際、最初に通過する領域であるため、この領域の肌面との密着性を強化して、後側に流れようとする体液を吸収することが、後漏れを防止するのに有効であると考える。
【0011】
また、従来の吸収性物品において、圧搾溝は、幅方向両側から内側に向けて作用する脚圧や臀部の圧力を内側に伝達して、両側の圧搾溝で挟まれた中央部の吸収体を肌側へ隆起させること、吸収体の略中央部領域に配置された肌側に増厚した中高部の形状を保持することなどを目的として、前記中高部の周縁の外側位置に、ほぼ等幅の線状のエンボス加工によって形成されたものが多かった。
【0012】
しかしながら、圧搾溝がほぼ等幅の線状に形成された場合には、幅方向両側からの脚圧に対して中央部の吸収体へ伝達される圧力が分散しやすく、特定の部位で肌側への隆起高さを高くするのが困難であった。また、幅方向両側からの脚圧に対して圧搾溝が途中で折れ曲がったり潰れたりして、中央側への圧力の伝達がうまくできなくなるなどの問題があった。
【0013】
そこで本発明の主たる課題は、股下の体液排出部と臀部溝の開始位置との間の密着性を向上させることにより、体液の伝い漏れを防止するとともに、幅方向両側からの圧力を中央部に伝達しやすくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側に略長手方向に沿う左右対の圧搾溝が形成された吸収性物品において、
前記圧搾溝は、少なくとも体液排出部に対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ形成され、
前記圧搾溝は、着用者の体液排出部に対応する部位の後方に、左右の離間幅を狭めた離間幅縮小領域が形成されるとともに、前記離間幅縮小領域内であって左右の圧搾溝の離間幅が最小となる部分に、前記圧搾溝の溝幅を急激に拡大させた急拡大部が形成され、前記急拡大部は前記圧搾溝の両方の側壁が外側に膨出して形成されることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項1記載の発明では、前記透液性表面シートの面側に略長手方向に沿って左右対で形成された圧搾溝の途中に、圧搾溝の溝幅を急激に拡大させた急拡大部が形成されている。前記急拡大部は、着用者の体液排出部に対応する部位の後方に、左右の圧搾溝の離間幅を狭めた離間幅縮小領域内であって、左右の圧搾溝の離間幅が最小となる部分に形成されている。これによって、装着時に幅方向外側から内側に向けて脚圧や臀部の圧力が作用したとき、幅方向内側に膨出する形状で形成された圧搾溝の離間幅縮小領域に圧力がかかりやすくなるとともに、この離間幅縮小領域に作用する圧力が離間幅縮小領域の頂部に形成された急拡大部に集約され、前記急拡大部が中央部の吸収体に圧力を伝達する基点となって、前記急拡大部が配置された部分の中央部の吸収体を頂点として左右の圧搾溝間の吸収体が肌側に隆起しやすくなる。そして、この肌側に隆起した部分が、着用者の股下の体液排出部から臀部溝の開始位置にかけての肌面に密着することにより、体液排出部から排出された肌面を伝って後側に流れようとする体液を確実に吸収して、後漏れが防止できるようになる。
【0016】
また、前記急拡大部は、前記圧搾溝の両方の側壁が外側に膨出して形成される。接続する圧搾溝より吸収性物品の幅方向外側に膨出した部分は、幅方向外側からの脚圧を受け止めて前記急拡大部に集中させる働きがあり、吸収性物品の幅方向内側に膨出した部分は、左右の圧搾溝間の吸収体を内側に押し込む基点としての機能を明確化する働きがある。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記急拡大部は、吸収性物品の幅方向内側に向けて突出する少なくとも2つの凸部を有している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、前記急拡大部に、吸収性物品の幅方向内側に向けて突出する少なくとも2つの凸部を形成することにより、これらの凸部が中央部の吸収体に圧力を伝達する基点として作用しやすくなる。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記急拡大部は、略星形の平面形状で形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、前記急拡大部を略星形の平面形状で形成することにより、吸収性物品の幅方向内側に向けて突出する凸部を少なくとも2箇所形成することができるとともに、外観デザインが良好になる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、股下の体液排出部と臀部の開始位置との間の密着性が向上し、体液の伝い漏れが防止できるとともに、幅方向両側からの圧力を中央部に伝達しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】急拡大部20近傍の拡大平面図である。
図5図4のV−V線矢視図である。
図6】(A)、(B)は、急拡大部20の変形例を示す平面図(その1)である。
図7】(A)、(B)は、急拡大部20の変形例を示す平面図(その2)である。
図8】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
図9】急拡大部20近傍の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、前記透液性表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0025】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0026】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0027】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、250〜650g/m、好ましくは300〜400g/mとするのがよい。
【0028】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
図1及び図2に示されるように、前記吸収体4の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に、肌側に増厚された吸収体の中高部6を設けるのが好ましい。前記中高部6は、吸収体4の肌側面に隣接するとともに、吸収体4の幅方向中央部に配置され、吸収体4より幅寸法及び長手寸法が小さく形成されている。前記中高部6の厚みは、厚すぎると剛性が上がり身体への密着性が低下するし、薄すぎると体液排出部Hとの密着性が低下するため3〜25mm、好ましくは5〜18mmとするのがよい。また、前記中高部6が配置された部分の中高部6と吸収体4との合計目付は、400〜900g/m、特に600〜800g/mとするのがよい。
【0030】
前記中高部6は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に配置されている。この中高部6は、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけて連続する細長形状に形成してもよいし、体液排出部Hに対応する部位を含む領域のみに配置し、これより後側の臀部溝に対応する部位を含む領域には配置しないようにしてもよい。
【0031】
図1に示されるように、前記中高部6が体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけて連続する細長形状に形成される場合、体液排出部Hに対応する部位の後方に、両側の外形線が幅方向内側に膨出する湾曲形状からなる幅狭部6aが形成されるようにするのが好ましい。この幅狭部6aが形成されることにより、着用者の体液排出部Hの後端から臀部溝の開始位置にかけての肌面に形成される細かな凹凸にもフィットしやすくなり、肌面との密着性が向上できる。
【0032】
前記中高部6は、少なくともパルプ繊維と合成繊維とを含むとともに、前記パルプ繊維:合成繊維の比率を重量換算で80〜20:20〜80、好ましくは40〜60:60〜40で混合したものが望ましい。また、前記中高部6は吸水性ポリマーを含有することができる。前記吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。配合量は中高部6が吸収体4側への浸透を促進する必要上、配合量を多くすると所謂ゲルブロッキング現象が起きるため、パルプ繊維及び合成繊維の合計重量に対して重量換算で1〜10%の割合で配合するのが望ましい。なお、吸水性ポリマー含有率が50%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなるため望ましくない。
【0033】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成してもよい。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWをショーツの内面に止着するようになっている。
【0035】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図2に示されるように、外側に傾斜しながら表面側に起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
【0036】
〔圧搾溝について〕
本生理用ナプキン1では、前記中高部6の近傍外側部位置に、肌当接面側(透液性表面シート3の外面側)から非肌側(不透液性裏面シート2側)に向けて窪ませた圧搾溝8が形成されている。前記圧搾溝8は、少なくとも体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ形成されている。体液排出部Hに対応する部位を含む領域とは、生理用ナプキン1の装着時に着用者の体液排出部Hが当接する部位を全て含む幅方向中央領域であり、そのナプキン長手方向の範囲は、両側にウイング状フラップWが備えられたものでは、概ねこのウイング状フラップWの長手範囲に相当する。また、臀部溝に対応する部位を含む領域とは、生理用ナプキン1の装着時に着用者の臀部溝の少なくとも一部を含む幅方向中央領域であり、股下側の臀部溝の開始位置から後方に臀部溝の中間位置までの範囲である。
【0037】
前記圧搾溝8は、着用者の体液排出部Hに対応する部位の後方に、左右の離間幅を狭めた離間幅縮小領域11が形成されるとともに、この離間幅縮小領域11内であって、左右の圧搾溝8、8の離間幅が最小となる部分に、圧搾溝の溝幅を急激に拡大させた急拡大部10が形成されている。
【0038】
前記急拡大部10は、圧搾溝8の途中に形成された両側壁の間隔を急激に拡大させた部分であり、前後に接続する圧搾溝8と離間することなく、前後に接続する圧搾溝8とほぼ同等の溝深さで連続的に形成されている。また、前記圧搾溝8は、途中に設けられた前記急拡大部10で圧搾溝が分断や屈曲することなく、前記急拡大部10の前後に接続する圧搾溝8をほぼ同じ曲率の湾曲形状で結ぶことができるようになっている。また、前記急拡大部10の前後に接続する圧搾溝8、8は、全長に亘ってほぼ等幅に形成されている。
【0039】
前記離間幅縮小領域11は、左右の圧搾溝8、8のナプキン幅方向の離間幅が前後の領域より相対的に狭く形成された領域である。前記離間幅縮小領域11では、左右の圧搾溝8がそれぞれ幅方向内側に膨出する湾曲形状で形成されている。前記離間幅縮小領域11は、前記中高部6の体液排出部Hに対応する部位の後方に形成された幅狭部6aの外形線の外側に沿って形成するのが好ましい。具体的には前記離間幅縮小領域11は、図1に示されるように、着用者の体液排出部Hに対応する部位の後方に隣接する位置から股下側の臀部溝の開始位置にかけて設けられ、そのナプキン長手方向の範囲は、ウイング状フラップWの後端部からヒップホールド用フラップWの前方部分にかけて形成されている。具体的なナプキン長手方向の長さとしては、ウイング状フラップWの後端部から後方に40〜70mm、好ましくは50〜60mmとするのがよい。この領域の前記圧搾溝8、8の離間幅を狭めることによって、幅方向両側からの脚圧や臀部の圧力が内側に湾曲した圧搾溝8の形状に沿って、中央部の吸収体を肌側に隆起させる圧力として作用しやすくなり、肌面との密着性を高めることができる。前記離間幅縮小領域11の直ぐ内側に配置された中高部6の幅狭部6aは、外形線が前記離間幅縮小領域11の湾曲形状に沿って湾曲するように形成されている。この幅狭部6aの最小幅は、20〜40mmとするのがよい。これにより、装着時の脚圧によりこの部分が肌側に隆起したときに、肌面に密着しやすくなり、肌を伝う体液を確実に堰き止めることができるようになる。
【0040】
本生理用ナプキン1では、着用者の体液排出部Hに対応する部位の後方に左右の圧搾溝8、8の離間幅縮小領域11が形成されるとともに、この離間幅縮小領域11内であって、左右の圧搾溝8、8の離間幅が最小となる部分に前記急拡大部10が形成されているため、図4及び図5に示されるように、幅方向外側から内側に向けて脚圧や臀部の圧力が作用したとき、幅方向内側に膨出する湾曲形状からなる前記離間幅縮小領域11に圧力がかかりやすくなるとともに、この離間幅縮小領域11に作用する圧力が離間幅縮小領域11の頂部に形成された前記急拡大部10に集約され、前記急拡大部10が中央部の吸収体4に圧力を伝達する基点となって、前記急拡大部10が配置された部分の中央部の吸収体を頂点として左右の圧搾溝8、8間の吸収体が肌側に隆起しやすくなる。そして、この肌側に隆起した部分が、着用者の股下の体液排出部Hから臀部溝の開始位置にかけての肌面に密着することにより、体液排出部Hから排出された肌面を伝って後側に流れようとする体液を確実に吸収して、体液の後漏れが防止できるようになる。
【0041】
また、前記急拡大部10は、離間幅縮小領域11内の一部にしか形成されていないため、着用者に装着時の違和感を与えることがないとともに、前記急拡大部10の剛性によって生理用ナプキン1が身体の前後の丸みに沿って湾曲変形するのを阻害することもない。
【0042】
前記急拡大部10は、各圧搾溝8の前記離間幅縮小領域11に1つだけ配置するのが望ましい。2つ以上配置した場合には、左右の圧搾溝8、8間の吸収体4を幅方向内方側に押し込む力が分散して、中央部が肌側に膨出しにくくなるおそれがある。
【0043】
前記急拡大部10は、図6に示されるように、種々の形態で形成することができる。図6(A)では、圧搾溝8の両側壁が溝幅方向の外側に膨出するように形成され、図6(B)、(C)では、圧搾溝8の一方側の側壁のみが溝幅方向の外側に膨出するように形成されている。更に具体的には、図6(B)の例ではナプキン1の幅方向外側の側壁のみが膨出して形成され、図6(C)の例ではナプキン1の幅方向内側の側壁のみが膨出して形成されている。ここで、前記急拡大部10のうち、ナプキン1の幅方向外側に膨出した部分は、幅方向外側からの脚圧や臀部の圧力を受け止めて急拡大部10に集中させる働きがあり、前後に接続する圧搾溝8よりナプキン1の幅方向内側に膨出した部分は、左右の圧搾溝8、8間の吸収体4を内側に押し込む際の基点としての機能を明確化する働きがある。これらの両方の機能を発揮するため、前記急拡大部10は、図6(A)に示される圧搾溝8の両側壁を膨出させることによって形成するのが望ましい。
【0044】
前記急拡大部10の大きさとしては、図6(A)に示されるように、溝幅方向の長さA及び溝長手方向の長さBがそれぞれ、圧搾溝8の溝幅Cの2〜8倍、好ましくは3〜5倍とするのがよい。急拡大部10の大きさが小さすぎると、脚圧を受け止めて中央の吸収体を押し込む基点としての機能が十分に発揮できないし、急拡大部10の大きさが大きすぎると、中央の吸収体を押し込む圧力が分散して肌側に膨出しにくくなるおそれがある。
【0045】
前記急拡大部10の平面形状としては、図6に示されるように、円形や半円形とすることができる。また、図7に示されるように、ナプキン1の幅方向内側に膨出する部分が、角部を有する三角形状に形成してもよい。これにより、この三角形状に形成された部分で中央の吸収体4が押し込まれるため、力が集中しやすく、中央の吸収体4が肌側により高く隆起しやすくなる。このとき、ナプキン1の幅方向外側は、同図7(A)のように円弧状に膨出させてもよいし、(B)のように膨出させなくてもよい。更に、同図7(C)に示されるように、内側の膨出形状と同じく、ナプキン1の幅方向外側に角部を有する三角形状に膨出させることにより、全体として略菱形又は略四角形の急拡大部10が形成されるようにしてもよい。
【0046】
〔第2形態例〕
次に、第2形態例に係る生理用ナプキン1について、図8及び図9に基づいて説明する。第2形態例に係る生理用ナプキン1では、急拡大部10の形状及び透液性表面シート3の面側に形成される圧搾溝のパターンが異なっている。
【0047】
第2形態例に係る生理用ナプキン1では、前記急拡大部10は、図8及び図9に示されるように、ナプキン1の幅方向内側に向けて突出する少なくとも2つの凸部12、12が形成されている。これにより、前記凸部12が突出する方向に沿って、幅方向内側に向かう圧力が作用しやすくなり、左右の圧搾溝8、8間の吸収体4を確実に幅方向内側に押し込むことができるようになる。これら2つの凸部12、12は、生理用ナプキン1の前後に隣接して配置され、前側の凸部12が斜め前方を向き、後側の凸部12が斜め後方を向くように配置するのが好ましい。これにより、内側に押し込む方向が前後方向に分散され、中央部のより広い範囲を肌側に隆起させることができるようになる。この凸部12は、ナプキン1の幅方向外側の側壁にも同様に形成することができる。
【0048】
また、前記凸部12を、幅方向内側の側壁に2箇所、幅方向外側の側壁に2箇所、接続する圧搾溝8が延びる方向の一方側に1箇所、合計5箇所に設けることによって、前記急拡大部10を全体として略星形の平面形状に形成することができる。略星形の急拡大部10とすることにより、幅方向外側からの脚圧をしっかりと受け止めて、急拡大部10に圧力が集中しやすくなるとともに、中央部の吸収体4を内側に押し込む基点として作用しやすくなる。
【0049】
また、第2形態例に係る生理用ナプキン1において、圧搾溝の配置パターンは、図1に示されるように、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された前側長手方向圧搾溝20、20(図1に示される第1形態例に係る生理用ナプキン1の圧搾溝8と同じ。)と、この前側長手方向圧搾溝20の後側に離間して配置されるとともに、臀部溝の後端部分に対応する部位の両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された後側長手方向圧搾溝21、21と、前記前側長手方向圧搾溝20、20の前側に離間して配置されるとともに、ナプキン1の長手方向中心線を幅方向に横断し、ナプキン1のほぼ幅方向に沿って形成された三日月形状からなる前端三日月形圧搾溝22と、前記後側長手方向圧搾溝21、21の後側に離間して配置されるとともに、ナプキン1の長手方向中心線を幅方向に横断し、後方に向けて膨出する湾曲形状からなる後端湾曲形圧搾溝23とから構成されている。
【0050】
図示例のように、前記前側長手方向圧搾溝20には、着用者の体液排出部Hに対応する部位の後方に、前記離間幅縮小領域11が形成されるとともに、前記離間幅縮小領域11内の左右の離間幅が最小となる部分に前記急拡大部10が形成されている。
【0051】
各圧搾溝20〜23には、それぞれ所定の形態で高圧搾部を形成するのが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…中高部、7…サイド不織布、8…圧搾溝、9…糸状弾性伸縮部材、10…急拡大部、11…離間幅縮小領域、12…凸部、20…前側長手方向圧搾溝、21…後側長手方向圧搾溝、22…前端三日月形圧搾溝、23…後端湾曲形圧搾溝
【要約】
【課題】股下の体液排出部と臀部溝の開始位置との間の密着性を向上させることにより、体液の伝い漏れを防止するとともに、幅方向両側からの圧力を中央部に伝達しやすくする。
【解決手段】透液性表面シート3の面側に略長手方向に沿う左右対の圧搾溝8、8を形成する。前記圧搾溝8は、着用者の体液排出部Hに対応する部位の後方に、左右の離間幅を狭めた離間幅縮小領域11が形成されるとともに、前記離間幅縮小領域11内であって左右の圧搾溝8、8の離間幅が最小となる部分に、前記圧搾溝8の溝幅を急激に拡大させた急拡大部10が形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9