(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マトリックス中に分散したcBN粒からなるPCBN材料であって、cBN粒の含量は、PCBN材料の35〜70体積パーセントの範囲内であり、マトリックスは、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含み、複数のcBN粒表面が、PCBN材料の実質的に平面の表面と境界を共有しており、cBN粒のサイズ分布は、総円相当面積(ECA)の少なくとも50パーセントが、最大で5μmのcBN切片長から生じるようなものであり、総ECAの少なくとも20パーセントが、5μm超のcBN切片長から生じる、PCBN材料。
マトリックスが、炭窒化チタンおよび窒化アルミニウムを含み、炭窒化チタンおよび窒化アルミニウムの組み合わせた含量が、マトリックスの少なくとも80質量パーセントである、請求項1から3のいずれかに記載のPCBN材料。
マトリックスが、ニオブ、タンタル、バナジウム、またはジルコニウムの炭化物、炭窒化物、または窒化物化合物を含む、請求項1から4のいずれかに記載のPCBN材料。
マトリックスが炭化タングステン粒を含有し、炭化タングステン粒の含量が、PCBN材料の3質量パーセント超である、請求項1から5のいずれかに記載のPCBN材料。
マトリックスが、少なくとも50ナノメートル(nm)、かつ最大で1,000ナノメートル(nm)の平均粒度を有する多結晶材料を含む、請求項1から6のいずれかに記載のPCBN材料。
請求項1から7のいずれかに記載のPCBN材料を含むカッターツール用インサートであって、PCBN材料が使用中にカッターエッジをもたらすことができるように構成されている、インサート。
請求項8に記載のインサートを使用する方法であって、少なくとも52HRcのロックウェルC硬度を有する鋼を切削するためにインサートを使用するステップを含む、方法。
請求項1から7のいずれかに記載のPCBN材料を作製する方法であって、粒の円相当径(ECD)に関して質量頻度分布を有する複数のcBN粒を含むcBN集合体を準備するステップであり、該頻度分布は、第1の最頻値および第2の最頻値を有し、第1の最頻値は、0μm超かつ最大で3μmのECDで起こり、第2の最頻値は、3μm超で起こり、0μm超〜最大で3μmのECDを有するcBN粒は、cBN集合体の少なくとも30パーセントを占め、3μm超のECDを有するcBN粒は、cBN集合体の質量の少なくとも20パーセントを占める、ステップと;cBN集合体をアルミニウム(Al)の源およびチタン(Ti)の源、またはAlおよびTiの源と組み合わせて、ブレンドされた集合体を準備するステップと;ブレンドされた集合体を含む前焼結体を形成し、該前焼結体を少なくとも4GPaの圧力および少なくとも1000℃の温度に付して、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含む焼結マトリックス中に分散したcBN粒からなるPCBN材料をもたらすステップとを含み、ブレンドされた集合体中のcBN粒の質量は、PCBN材料中のcBN粒の含量がPCBN材料の35〜70体積パーセントの範囲内であるのに十分である、方法。
PCBN材料中の金属炭化物粒の含量が3質量パーセント超であるように、金属炭化物材料をブレンドされた集合体中に導入するステップを含む、請求項10に記載の方法。
第1のcBN集合体および第2のcBN集合体を準備するステップを含み、第1および第2のcBN集合体のそれぞれが、それぞれの複数のcBN粒を含み、第1のcBN集合体の体積平均ECD(D[4,3])が0超かつ最大で3μmであり、第2のcBN集合体の体積平均ECDが3μm超である、請求項10から14のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【0003】
PCBN材料を含み、特に、鋼ボディの中断続加工に使用されるときに限らず可使時間が増強された切削ツールエレメントの必要性がある。
第1の態様から見ると、マトリックス(言い換えれば、マトリックスは、cBN粒以外のPCBN材料中に含まれるすべての材料を指す)中に分散したcBN粒からなるPCBN材料であって、cBN粒の含量は、PCBN材料の約35〜約70体積パーセントの範囲内であり、マトリックスは、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含み、複数のcBN表面が、PCBN材料の実質的に平面の表面と境界を共有しており、cBN粒のサイズ分布が、総円相当面積(equivalent circle area)(ECA)の少なくとも約50パーセントが、最大で5μmのcBN切片長から生じるようなものであり、総ECAの少なくとも約20パーセントが約5μm超のcBN切片長から生じる、PCBN材料が提供される。
焼結PCBN中のcBN粒の実際のサイズ分布を測定することにおける重大な実用的な課題のために、直接的に、かつ単刀直入に測定することができ、CBN粒のサイズに強く関連する量の観点から少なくとも部分的にサイズ分布を特徴付けることが有用となる可能性が高い。言い換えると、cBNサイズ分布の代理として見ることができる1つまたは複数の量の観点から焼結PCBN中のcBN粒のサイズ分布を特徴付けることが有用であり得る。したがって、開示されるPCBN材料は、複雑な立体補正を必要とすることなく、PCBN材料の表面で露出したcBN粒の直接測定可能な寸法から単刀直入に得ることができる量の統計的分布の観点から部分的に特徴付けられることになる。以下に記載するように、これは、cBNセクションの縁部におけるポイント間の十分に多数の実質的にランダムな「切片長」から計算される、cBN粒の露出セクションの「円相当面積」の観点から行われる。
【0004】
各ECAは、cBN粒の境界であって、PCBN材料の表面と境界を共有している(言い換えれば、表面を交差する、または表面上に位置する)、境界上のポイントのそれぞれの任意の対を接続する一般に任意の直線セグメントの長さであるそれぞれの切片長を使用して計算される。各ECAは、それぞれの切片長に等しい直径を有する円の面積として計算される。総ECAは、複数のECAのすべての合計であり、それぞれのcBN粒と関連した複数のそれぞれの切片長から計算される(本開示では、別段の明言のない限り、切片長は、cBN粒に関連したcBN切片長を意味する)。一部の例では、cBN範囲は、対応するcBN粒を通じたセクションであり得る。特定の所与の切片長および対応するECAは、あまり有用になりそうにないが、統計的に十分な数の自由裁量で抜き出された切片長、したがって対応するECAは、焼結PCBN体内のcBN粒のサイズ分布と関連した情報をもたらすことができ、ただし、切片およびcBN粒は、実質的にランダムに選択される。切片長測定および結果として行われるECA計算のより詳細な非限定的な例を、添付の図面の説明文を提供した後、以下に記載する。
様々な組成および微細構造の態様が、PCBN材料について想定され、これらの限定されない、かつ非網羅的な例を以下に記載する。
【0005】
一部の例では、cBN粒の含量は、PCBN材料の少なくとも約27質量パーセントまたは少なくとも約40質量パーセントであり得る。一部の例では、cBN粒の含量は、PCBN材料の最大で約62質量パーセントまたは最大で約50質量パーセントであり得る。cBN含量は、PCBN材料の約27質量パーセント〜約62質量パーセントであり得る。
一部の例では、マトリックスは、炭窒化チタンまたは炭化チタン系材料を含み得、一部の例では、マトリックスは、炭化チタン材料および/または窒化チタン材料を含み得、一部の例では、マトリックスは、ニオブ、タンタル、バナジウム、もしくはジルコニウムの炭化物、および/または炭窒化物、および/または窒化物化合物を含み得る。これらの材料の任意の1種または複数の(組合せでの)含量は、マトリックスの少なくとも約75質量パーセントもしくは少なくとも約85質量パーセント、および/またはマトリックスの最大で約92質量パーセントであり得る。例えば、これらの材料の任意の1種または組合せの含量は、マトリックスの約90質量パーセントであり得る。
【0006】
一部の例では、マトリックスは、窒化アルミニウムを含み得る。マトリックスは、少なくとも1種のホウ化アルミニウム化合物および/または二ホウ化チタンを含み得る。
一部の例では、マトリックスは、炭窒化チタンおよび窒化アルミニウムを含み得、炭窒化チタンと窒化アルミニウムの組み合わせた含量は、マトリックスの少なくとも約80質量パーセントもしくは少なくとも約90質量パーセントであり得、かつ/または組み合わせた含量は、マトリックスの97質量パーセント未満もしくは最大で約95質量パーセントであり得る。一部の例では、炭窒化チタンの含量は、PCBN材料の少なくとも約35質量パーセントまたは少なくとも約40質量パーセントであり得、一部の例では、炭窒化チタンの含量は、PCBN材料の最大で約50質量パーセントであり得る。
一部の例では、PCBN材料は、マトリックス中に含まれる金属炭化物粒を含有する場合があり、金属炭化物粒の含量は、PCBN材料の3質量パーセント超、少なくとも約4質量パーセント、または少なくとも約5質量パーセントである。例えば、金属炭化物粒は、炭化タングステンを含み得、またはそれからなり得る。
【0007】
一部の例では、マトリックスは、多結晶材料を含み得、またはそれからなり得、マトリックス材料中に含まれる粒の平均サイズは、約1μm未満である(いくつかの例示的なPCBN材料中のマトリックス材料の粒度を測定するのに透過型電子顕微鏡法、TEMをおそらく使用する必要がある)。一部の例では、焼結マトリックス材料の平均粒度は、少なくとも約50ナノメートル(nm)および/または最大で約1,000ナノメートル(nm)であり得る。これは、マトリックス材料を生産するのに非常に微細な原料粉末を使用することから生じ得、一部の例では、粉末の平均粒度は、最大で約1μmであり得る。
一部の例では、ECAおよび/または切片長頻度分布は、二峰性であり得る。例えば、1つの最頻値は、5μm未満で起こり得、別の最頻値は、約8μm〜約10μmの範囲内で起こり得る。一部の例では、ECAおよび/または切片長頻度分布は、単一最頻値を有する単峰性であり得る(実質的により小さいピークに対応する軽微な最頻値も存在し得る)。
【0008】
開示されるPCBN材料は、少なくとも約52HRcのロックウェルC硬度を有する硬化鋼のH05〜H30ハードターニングにおそらく適していることなる。例えば、開示されるPCBN材料は、このような硬化鋼の中程度またはH15ハードターニングにおそらく適していることになる。
第2の態様から見ると、開示されるPCBN材料を含み、PCBN材料が使用中にカッターエッジをもたらすことができるように構成されたカッターツールのインサートが提供される。インサートは、インサートの作業面に隣接するPCBN材料の境界に付着したセラミック膜(これは、コーティングと呼ばれる場合もある)を含み得る。例えば、セラミック膜は、チタン、アルミニウム、窒素、および/またはケイ素を含む1種または複数の化学化合物を含み得る。
【0009】
第3の態様から見ると、開示されるインサートを使用する方法であって、少なくとも52HRcのロックウェルC硬度を有する鋼を切削するためにこのインサートを使用するステップを含む、方法が提供され得る。ボディ中に含まれる鋼は、切削のモードが中断されるように構成され得る。連続切削と断続切削の比は、少なくとも約50パーセントかつ最大で約95パーセントであり得る。本方法は、H05〜H30ハードターニング操作でインサートを使用するステップを含み得る。例えば、本方法は、H15ハードターニング操作でインサートを使用するステップを含み得る。
【0010】
第4の態様から見ると、開示されるPCBN材料を作製する方法であって、粒の円相当径(equivalent circle diameter)(ECD)に関して質量頻度分布を有する複数のcBN粒を含むcBN集合体を準備するステップであり、頻度分布は、第1の最頻値および第2の最頻値を有し、第1の最頻値は、0μm超かつ最大で約3μmのECDで起こり、第2の最頻値は、3μm超で起こり、0μm超〜最大で3μmのECDを有するcBN粒は、cBN集合体の少なくとも約30パーセントを占め、3μm超のECDを有するcBN粒は、cBN集合体の質量の少なくとも約20パーセントを占める、ステップと;cBN集合体をアルミニウム(Al)の源およびチタン(Ti)の源、ならびに/またはTiおよびAlの源と組み合わせて、ブレンドされた集合体を準備するステップと;ブレンドされた集合体を含む前焼結体を形成し、前焼結体を十分な高圧および十分な高温に付して、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含む焼結マトリックス中に分散したcBN粒からなるPCBN材料をもたらすステップ
とを含み、ブレンドされた集合体中のcBN粒の質量は、PCBN材料中のcBN粒の含量がPCBN材料の約35〜約70体積パーセントの範囲内であるのに十分である、方法が提供される。
【0011】
原料のcBN粒は、実質的に自由流動性の粉末の形態で提供され得るので、cBN原料粒度分布の様々な態様を測定するための公知の方法を使用することができる。先述したように、これはcBN粒が、これらがおそらく非常に強く結合されている硬質マトリックス全体にわたって分散している場合にcBN粒度分布を測定することが相対的に困難であることとは対照的である。したがって、開示されるPCBN材料は、cBN粒を通じた切片長の実質的にランダムな集団から計算される、実際のcBNサイズ分布のECA代理型量の統計的分布の観点から少なくとも部分的に特徴付けられる。しかし、一方における焼結PCBN材料中のcBN粒のECA分布と、cBN原料粉末の実際の粒度分布の所与の態様との間の正確な数学的関係は提供されておらず、理由は、それは、PCBN材料のある特定の態様を測定し、特徴付けるのに必要でないはずであるためである。したがって、一方における焼結PCBN材料中のcBN粒度分布、および一方におけるcBN原料粒の特徴付けは、適切に異なる。
一部の例では、圧力は、少なくとも約4ギガパスカル(GPa)であり得、温度は、少なくとも約1,000℃であり得る。
一部の例では、本方法は、PCBN材料中の金属炭化物粒の含量が、PCBN材料の3質量パーセント超、少なくとも約4質量パーセント、または少なくとも約5質量パーセントであるように、ブレンドされた集合体中に十分な金属炭化物材料を導入するステップを含み得る。
【0012】
一部の例では、例示的なPCBN材料中に含有される金属炭化物は、例示的なPCBN材料を製造するプロセス中で実施され得る、粉砕デバイスを使用して相対的に粗いcBN粒を混合し、分散させ、または細かく砕くプロセスから生じ得る。一部の例では、例示的なPCBN材料を製造するプロセスは、cBN粒を含む原料粉末を摩擦粉砕するステップを含み得る。粉砕デバイスは、cBN粒を接触させるための超硬炭化タングステンエレメントを備える場合があり、このエレメントは、特に、開示されるPCBN材料用の原料粉末中の相対的に粗いcBN粒の含量が相対的に高いために、相対的に高い程度の磨損を受けやすい。一部の例では、相対的に粗いcBN粒を粉砕する直接の結果としてのPCBN材料中に存在する金属炭化物材料の量は、例示的なPCBN材料中に少なくとも3質量パーセントの金属炭化物材料を導入するのに十分であり得る。
一部の例では、第2の最頻値は、最大で約20μmのECDで起こり得る。
一部の例では、Alの源および/またはTiの源、ならびに/またはAlおよびTiの源(例えば、Al
3TiなどのAlおよびTiの両方を含有する化学化合物を含む材料)は、粉末形態であり得る。
一部の例では、本方法は、摩擦粉砕装置によって、cBN粒をAlの源、およびTiの源、ならびに/またはAlおよびTiの源とブレンドするステップを含み得る。
【0013】
一部の例では、本方法は、第1のcBN集合体および第2のcBN集合体を準備するステップを含み得、第1および第2のcBN集合体はそれぞれ、複数のcBN粒を含み、第1のcBN集合体の体積平均ECD(D[4,3])は、0超かつ最大で約3μmであり、第2のcBN集合体の体積平均ECDは、約3μm超である。
一部の例では、第2のcBN集合体の平均体積平均ECDは、最大で約10μmであり得、かつ/または第1のcBN集合体の平均体積平均ECDは、最大で約2μmであり得る。
一部の例では、cBN粒の第1の集合体の平均比表面積は、少なくとも1グラム当たり約5平方メートル(m
2/g)であり得、かつ/またはcBN粒の第1の集合体の平均比表面積は、最大で1グラム当たり約0.5平方メートル(m
2/g)であり得る。 一部の例では、cBN集合体の平均比表面積は、最大で1グラム当たり約5平方メートル(m
2/g)であり得る。
一部の例では、第1のcBN集合体の質量と第2のcBN集合体の質量の比は、少なくとも1:5かつ最大で1:1であり得る。
非限定例を添付の図面を参照して以下に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示によるPCBN材料は、PCBN材料の研磨面で露出したcBN粒表面と関連したそれぞれの切片長を使用して計算される円相当面積(ECA)の観点から特徴付けられる。各切片長は、PCBN材料の表面と境界を共有する露出したcBN粒表面の境界上のポイントの対を接続する概念的な直線セグメントの長さとなる。ECAは、切片長に等しい直径を有する円の面積として計算される。測定値の総ECAは、測定したすべての切片長にわたってECA分布を積分する(合計する)ことによって得られる。
表面は、例えば、PCBN材料を切削もしくは研削することによってもたらすことができ、または表面は、実質的に、PCBN材料を含む物品の表面であり得る。
【0016】
複数のECAは、cBN粒の実質的にランダムに選択された露出面のそれぞれの境界上に位置するポイントの実質的にランダムに選択されたそれぞれの対を使用して複数の切片長を測定することによって、PCBN材料の表面の拡大像から得ることができる。切片長の数、したがってECAの数は、これらの用語でPCBN材料を特徴付けるのに十分に統計的に有意であるように十分に大きいことになる。一部の例では、約1,000超の切片長(したがってECA)が使用され得る。
複数の切片長は、表面の一範囲の電子顕微鏡画像を準備し、画像をランダムに横断して1つまたは複数の直線を引くことによって、例示的なPCBN材料の研磨面から得ることができる。これは、手作業で、または画像解析ソフトウェアなどのソフトウェアアプリケーションを活用して行うことができる。複数のECAは、複数のそれぞれの切片長を使用して計算され得る。異なる切片長は、おそらく異なる頻度で起こる。切片長頻度分布は、切片長のある特定の間隔(ビン)内にある測定された切片長の事例の数として、または各間隔内に入る切片長の組み合わせたECAとして表すことができる。
【0017】
実際には、最大切片長値は、一連の等間隔、またはビンに分類することができ、各ビンは、上限および下限を有する。測定された切片長のそれぞれは、切片長がビンの下限より大きく、かつ最大でビンの上限であるようにビンに割り当てることができる。したがって、各ビンは、ビンに対応する切片長の頻度である測定された切片長の数を割り当てることができる。すべての測定された切片長の頻度分布を、ビン化された切片長軸に対してグラフでプロットすることができる。切片長頻度分布は、すべてのビンに対応するすべての値を合計することによって得られる合計値のパーセンテージとして各ビンに対応する切片長頻度値を表現することによって正規化され得る。
【0018】
それぞれのECA頻度は、各ビンの平均切片長値に等しい直径を有する円の面積として、面積値に、ビンに対応する切片長の頻度値を乗じて計算することができる。各ビンと関連する平均切片長は、ビンの上限と下限の合計の半分として計算される。したがって、各ビンは、それぞれのビンに対応する複数のECAを割り当てるこができ、係数は、それぞれのビンに対応する数値またはパーセンテージ頻度である。すべての測定された切片長から計算されるすべてのECAの分布を、ビン化された切片長軸に対してグラフでプロットすることができる。ECA頻度分布は、すべてのビンに対応するすべての値を合計することによって得られる合計値のパーセンテージとして各ビンに対応するECA頻度値を表現することによって正規化され得る。何らかの閾値値未満または少なくともその値である切片長に対応する総ECAパーセンテージは、それぞれ閾値値未満または少なくともその値である切片長に対応するすべてのECA頻度パーセンテージを合計することによって計算することができる。
【0019】
ECA頻度分布は、以下の手順によって判定され得る:
a)PCBN材料を含み、またはそれからなるボディを準備する。
b)PCBN材料の実質的に平面の表面を、PCBN材料を切削することによって、または実質的に平面の表面を既に有するボディを提供することによって準備する。
c)電子顕微鏡によって得られる表面の画像に適するように表面を研磨し、PCBN表面の少なくとも1つのそれぞれの範囲の少なくとも1つの顕微鏡写真画像を得る。
d)画像の少なくとも拡大率、解像度、およびコントラストを、表面で露出したcBN材料をマトリックス材料から識別することができ、少なくとも約100のcBN表面が画像中で明白であるように選択する。デジタルまたはマニュアル画像処理を使用して識別を増強してもよく、ただし、画像上の正確な長さスケールおよびcBN表面形状(境界)の完全性が保存される。
【0020】
適当な画像が準備された後、以下の測定を、手作業で、または画像処理および解析ソフトウェアによって1つまたは複数の画像を使用して実施する。
図1を参照すると、cBN粒の範囲は、黒色の範囲として示されており、マトリックスは、白色の範囲として示されている。
e)1つまたは複数の直線L(実際のまたは概念的な)を、1つまたは複数の画像を横断してランダムに引く。
f)線Lが通過するすべてのそれぞれのcBN粒セクションの境界を線が交差するポイントa−bの間の各線セグメントIの長さを測定し、少なくとも1,000の切片長のリストを準備する(1つを超える線および1つを超える画像が使用される必要があり得る)。
g)それぞれが長さの上限および下限を有する、等間隔の切片長に対応する一連の連続したビンの1つに各切片長Iを配分することによって、数頻度分布を得る。連続したビンの対の1つは、5μmの上限を有し、他のビンは、5μmの下限を有することになる(5μmの測定切片長は、前者のビンに割り当てられるべきである)。
h)その直径としてビンの平均切片長を有する円の面積として、各ビンについてそれぞれのECAを計算する(本開示で使用する円相当面積の概念は、cBN粒の境界上でポイントa−bを接続するそれぞれの切片長Iに対応する円ECとして
図1に概略的に例示されている)。
i)切片長のビンに対するECA分布を、各ビンに対応するECAに、そのビン内に入る切片長の頻度(言い換えれば、そのビン内に入る測定された切片長の数またはパーセンテージ)を乗じることによって計算する。得られた面積値を合計して測定についての総ECAを得、それぞれのパーセンテージ面積値を各ビンについて計算する。ここで各面積値は、総面積値によって除され、パーセンテージとして表現される。こうして正規化されたECA頻度分布を得る。
j)最大で5μmの上限を有するすべてのビン、および少なくとも5μmの下限を有するすべてのビンに対応するECA値のパーセンテージを、それぞれの切片長のビンに対してそれぞれのECA値を合計することによって計算する。
【0021】
切片長に対する立体解析学的補正は、上述した手順を使用して実施されないので、切片長およびECA頻度分布は、PCBN材料の体積全体にわたって分散したcBN粒の実際のサイズ分布を直接的にもたらさない。むしろ、これらは、本開示によるPCBN材料を特徴付けるのに使用されるcBN粒度分布に関連した代理値として使用される。この手法は、これを複雑な画像解析アプリケーションを必要とすることなくPCBN表面の拡大像から直接適用することができ、立体解析学的補正を実施することから生じる数学的複雑性を回避するという利点を有する。それでもやはり、本開示によって得られる分布は、PCBN材料の特徴付けに有用である。
【0022】
異なるそれぞれのcBN粒度分布からなる異なるcBN集合体を使用して、様々なPCBN材料を作製した。例示的なPCBN材料のすべては、炭窒化チタンおよび炭窒化アルミニウムを含むマトリックス中に分散した60体積パーセントの粒、ならびに約5〜6質量パーセントの炭化タングステン粒を含んでいた(体積および質量パーセンテージはともに、PCBN材料のパーセンテージである)。酸化物化合物などの少量の不純物が存在した。炭窒化チタン材料の含量は、マトリックスの質量パーセントの観点から、窒化アルミニウム材料の含量の約9倍であった。
【0023】
例示的なPCBN材料のそれぞれを、ディスクの形態で作製し、これを放電加工(EDM)によって切削して、ディスクを通じてそれぞれの断面を得た。断面(section surface)を研磨し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、PCBN表面のそれぞれの拡大像を得た。
図1に例示したように、線のそれぞれが少なくとも10個のcBN粒表面を横断し、2つのポイントで各cBN粒の境界を交差する直線を、画像のそれぞれの上でランダムに引いた。それぞれのcBN粒の境界における交点間の切片長を、画像を得るのに使用した拡大率による適切な長さスケールを使用して測定した。こうして少なくとも約1,000の切片長を例示的なPCBN材料のそれぞれについて得、10の切片長のビンの1つに割り当てた。各ビンは、1μmの広さであり、順次組み合わせると、10μmの組み合わせた長さに対応する。各ビン内の切片長の測定された事例の数をこうして得た。各ビンに対応するECAを、ビンに対応する平均切片長に等しい直径を有する円の面積として計算し、各ビン中の事例の数にそのビンの対応するECAを乗じて、すべてのビンにわたるECA分布を得た。すべてのビンにわたって合計した合計の組み合わせたECAが100パーセントであるように、ECA分布を正規化した。
【0024】
図2A、2B、および2C中に示したグラフは、様々な例示的なPCBN材料のECA分布を示し、この中で、円相当面積Aは、切片長Dのそれぞれのビンのそれぞれに対応するパーセンテージとして表現されている。5μm以下の上限を有するビンに対応する合計したパーセンテージECAは、垂直の点線(5μmで横軸を交差する)の左側に示されており、5μm以上の下限を有するビンに対応する合計したパーセンテージECAは、垂直の点線の右側に示されている。
図2Aに示したグラフに対応するPCBN材料は、特許請求の範囲の射程内ではなく、理由は、総ECAの実質的に20パーセント未満が、これらの例において5μm超のcBN切片長から生じるためである。グラフの4つにおいて、5μm超に対応する切片長のビンのいずれも、総ECAに実質的に寄与せず、グラフの1つにおいて、5μm超かつ最大で6μmの切片長に対応するビンが、PCBN材料の総ECAの約9パーセントに寄与する。
図2Bおよび
図2Cに対応する例示的なPCBN材料は、本開示によるPCBN材料の例である。これらの例示的なPCBN材料中に含まれるcBN粒のサイズ分布は、総ECAの、それぞれ約80パーセント(
図2B)および68パーセント(
図2C)が最大で5μmのcBN切片長から生じ、総ECAの、それぞれ約20パーセント(
図2B)および約32パーセント(
図2C)が5μm超のcBN切片長から生じるようなものである。
【0025】
例示的なPCBN材料を作製する非限定的な例示的方法を記載する。それぞれ、表1に示した特性を有する単一のそれぞれの最頻値およびサイズ分布を有する、cBN粒からなる第1および第2の実質的に単峰性のcBN集合体(主要な(principle)最頻値より実質的に小さい他の軽微な最頻値も存在し得る)。この特定の例では、第1および第2のcBN集合体を、組み合わされた二峰性のcBN集合体をもたらすように質量比(mass ration)70:30で組み合わせた。例示的なPCBNを作製するための2つの例示的なcBN集合体の質量サイズ分布を
図3に示す。これらの集合体はともに、約1μmで第1の最頻値M1および約7μmで第2の最頻値M2を有する二峰性であり、第2の最頻値を画定するピークは、第1の最頻値を画定するピーク(pea)より粒度の観点から実質的に広い。
【0027】
Al
3Ti材料を含む粉末を、所望の質量比でアルミニウム粉末および準化学量論的な炭窒化チタン粉末をブレンドし、約1,025℃にて真空で粉末が化学的に反応して、Al
3Ti(炭窒化チタン粉末の準化学量論比は、約0.8であった。)、炭素を含む化学化合物、および窒素を含む化学化合物を含む反応済み粉末を形成するのに十分な期間にわたってブレンドした粉末ブレンドを加熱することによって作製した。反応済み粉末を、押し砕き、ふるいにかけ、次いで、ヘキサン溶媒および少量の分散剤材料を使用して4時間、摩擦粉砕機によって粉砕した。次いでcBN粒を粉砕した粉末中に導入し、組み合わせた粉末を、最大で1時間の様々な期間にわたって摩擦粉砕機によってさらに粉砕し、得られたスラリーをロータリーエバポレーターによって乾燥させて前焼結粉末ブレンドを得た。次いで前焼結粉末ブレンドを圧縮して前焼結ディスクを得、これを1,116℃で脱気した。前焼結ディスクを超高圧炉(HPHTプレス)用カプセル中に集め、およそ約5ギガパスカルの圧力および約1,400℃の温度で焼結して粉末を焼結し、例示的なPCBN材料を含むディスクを得た。マトリックスが炭化チタンまたは窒化チタンを含むPCBN材料は、それぞれ炭化チタンまたは窒化チタンをアルミニウムと予め反応させることを含む同様のプロセスによって作製することができる。
【0028】
それぞれのcBN集合体中に含まれるcBN粒のそれぞれのサイズ分布が異なる、異なるPCBNディスク中に含まれる様々な例示的なPCBN材料を上述したように作製した。PCBNディスクを切削および処理して、国際規格ISO1832(Fourth Edition, 15 June 2004, “Indexable inserts for cutting tools − designation”, ISO 2004, Geneva)(この命名法の下で、刃先交換式インサートの寸法および他の態様は、少なくとも9つの記号を含むコードによって指定される)によってエッジ形状SNMN090308 S02020を有するカッターインサートを得た。
【0029】
各カッターインサートを旋回試験(「掘削4340試験(drilled 4340 test)」と呼ばれる)で試験し、ここでカッターインサートを、H15ハードターニングと類似性を有するように選択された条件下で、硬化鋼からなるボディを機械加工(旋削)するのに使用した。各試験は、例示的なPCBN材料によって画定されるカッターのエッジが、破損痕のサイズ(切削速度ベクトルに平行に測定した)が逃げ面摩耗痕の平均サイズより大きい、または逃げ面摩耗痕の長さが少なくとも0.3ミリメートルに到達する程度に破損した状態になったとき終わらせた。これらの出来事のいずれかの発生は、寿命の基準の最後であった。これは、測定される切削力の相対的に急激な変化において明白であり得る。破局的なエッジ破損が、0.3ミリメートル(mm)の逃げ面摩耗ランド寸法が形成される前に起こり得る。PCBN材料の性能は、実現される寿命の基準の最後に必要とされるパスの数の観点から報告することができる。インサートの寿命が長いほど、試験におけるPCBN材料の性能は良好である。この結果は、鋼ボディの断続切削を伴うある特定の産業用機械加工用途におけるPCBN材料の潜在的な可使時間の目安をもたらすことが予期される。
【0030】
ワークピースは、その体積全体にわたって実質的に同じ硬度を有しており(それは、「完全硬化された」とも呼ばれる場合がある)、ロックウェルC硬度は、約52〜54HRCの範囲内であり、AISI4340仕様による硬化鋼材料であった。この試験は、実際には多くの用途における浸炭鋼(特に、しかしもっぱらではない)を機械加工することにおけるPCBN材料の潜在的な性能の合理的に良好な目安をもたらすと考えられている。ワークピースおよび切削条件は、特定の比の連続および断続切削条件にツールを付すように構成し、この比は、各切削サイクル(これは、「パス」と呼ばれる場合がある)について実質的に一定であった。特に、この比は、一定の表面速度制御を用いた面旋削(face−turning)手法を採用することによって、試験全体にわたって実質的に一定に保った。ワークピースは、壁を通じた径方向に硬化の均一性を増強するように(硬化性曲線に従って)均一な厚さの管壁を有する管として構成した。管中の一連の穴は、穴の直径およびピッチ間隔が、産業におけるある特定の一般的なハードターニング操作をおそらく代表する旋削条件をもたらすことが予期されるように管軸に平行に提供した。旋削パラメータは、1分当たり150メートルの速度(m/分)、0.1ミリメートル(mm)のフィード、および0.2ミリメートル(mm)の切削の深さであった。
【0031】
様々な例示的なPCBN材料を含むカッターインサートを使用する旋回試験の結果が
図4に示されており、図中、寿命の基準の最後までのパスの数の観点からのカッター寿命Lが、5μm超の切片長に対応する合計ECAパーセンテージAに対してプロットされている。明白な傾向は、寿命Lについて、この合計ECAパラメータが少なくとも最大で約35パーセントの値まで増大するにつれて増大することである。物理的観点では、これは、一定数の相対的により粗いcBN粒の存在が、少なくとも、ドリル加工4340試験(drilling 4340 test)が広く代表的である旋削用途において有益な効果を有することを示唆する。
【0032】
最大で5μmの切片長に対応する合計ECAが実質的に約50パーセント未満である場合、PCBN材料の強度がおそらく低すぎ、かつ/またはワークピースに対する表面仕上げがある特定の用途に対して低品質すぎる。
5μm超の切片長に対応する合計ECAが実質的に20パーセント未満である場合、PCBN材料を含むカッターインサートの可使時間は、おそらくそれほど高くならず、使用中のPCBN材料の化学的耐摩耗性は、相対的に芳しくない場合がある。
相対的に小さいcBN粒を含むPCBNが一般に、ハードターニング用途に使用されているので、意外にも、開示されるPCBN材料は、相対的に粗いcBN粒が存在するにもかかわらず、ハードターニングを行うのに十分な強度を有すると思われる。やはり意外にも、相対的に粗い原料cBN粒が原料粉末ブレンド中に存在する開示される方法は、焼結されたPCBN材料製品まで粗いcBN粒画分を実質的に保存すると思われる(摩擦粉砕は、高出力粉砕方法であり、摩耗され、原料粉末ブレンド中に導入される粉砕エレメントからより高い量の金属炭化物材料をおそらくもたらすことになる)。
【0033】
別の例示的なPCBN材料は、約35体積パーセントのcBN粒(この特定の例では、PCBN材料の約27質量パーセント)、約60〜約62質量パーセントの炭窒化チタン材料、および約3質量パーセント〜約5質量パーセントの窒化アルミニウムなどのアルミニウムを含む化学化合物を含み得る。マトリックスの残りは、約3質量パーセント〜約6質量パーセントの炭化タングステン材料を含み得る。
別の例示的なPCBN材料は、約70体積パーセントのcBN粒(この特定の例では、PCBN材料の約62質量パーセント)、約30質量パーセントの炭窒化チタン材料、および最大で約3質量パーセントの窒化アルミニウムなどのアルミニウムを含む化学化合物を含み得る。マトリックスの残りは、約3質量パーセント〜約6質量パーセントの炭化タングステン材料を含み得る。
【0034】
PCBNは、2つの広い群、すなわち、cBN含量がそれぞれ、約30〜70体積パーセントおよび約70〜95体積パーセントである「低cBN」および「高cBN」に分類され得る。PCBNツールインサートは、3つの広い群の材料、すなわち硬化鋼(「ハードターニング」)、相対的に軟質のマトリックス中に硬質粒を含む焼結粉末金属、ならびにグレーおよびハード鋳鉄を機械加工するのに使用される。断続切削の程度は、H5〜H30の漸増中断重大度(increasing interruption severity)のスケールで格付けされ得る。高CBN材料は、ワークピースの形状特徴またはそれに含まれる材料の結果として行われ得るより高い程度の断続切削を伴う操作に使用される可能性が高い。より高いcBN含量およびより低い平均cBN粒サイズは、より強いPCBNをもたらす傾向があり、これは、断続操作に特に重要である。
【0035】
cBNは、鉄金属と相対的に非反応性であるが、PCBN材料中に含まれるcBN粒の化学的摩耗は、連続加工で達する高温で明白となる可能性が高い。したがって、相対的に高い含量のcBN粒を含む高PCBNは、ツールインサート材料が相対的に強く、相対的に高温でその硬度を維持する必要がある断続加工などの操作で使用される可能性が高い。相対的により低い含量のcBN粒を含むPCBN材料は、ツールインサート材料が化学的摩耗に相対的に耐性である必要がある連続加工などの操作で使用される可能性が高い。相対的に大きいcBN粒を含むPCBN材料の強度は、一般におそらく、相対的に小さい(微細な)cBN粒を含むPCBN材料の強度より低く、他のすべては同等である(これは、cBNの含量が相対的に高い場合に特に明白であり得る)。したがって、微細な粒のPCBNは、おそらくより粗い粒のPCBN材料より、強く、良好なワークピース表面仕上げをもたらす。しかし、より微細な粒をしたPCBNは、おそらく、PCBN材料の単位体積当たりのcBN粒のより高い表面積のために化学的摩耗に対してより感受性であり、他のすべては同等である。したがって一般に、一方では、高含量の微細cBN粒を含むPCBNは、おそらく、強断続加工に適しており、他方では、低含量のより粗いcBN粒を含むPCBNは、おそらく高速連続加工に適している(ただし、cBN粒サイズは、実現されるべき所望の表面仕上げにとって十分に小さい)。
【0036】
一般に、相対的に粗いcBN粒を含むPCBN材料は、いくつかの用途において低品質すぎるワークピースの表面仕上げをもたらすことが予期され得る。したがって、機械加工操作用PCBN材料中に含まれるcBNは、約4μmより実質的に大きくない傾向となっており、最も商業的に使用されるPCBN材料は、約1μm〜約2μmの範囲内のcBN粒を含む。
【0037】
高機械加工速度と組み合わせてある程度の断続切削を伴う中間機械加工操作は、PCBN材料の設計に課題をもたらす。ある特定の用途、例えば、PCBN材料が、中間断続モード(いわゆる「掘削43/40」を特徴とする)で硬化鋼を機械加工するのに使用される用途では、PCBN中に含まれるcBNのある程度の化学的摩耗および摩損がある傾向がある。このような用途における主要な破損モードは、化学的(クレーター)摩耗とワークピースの中断された性質に関連した衝撃との組合せから生じると考えられるチッピングである。
開示されるPCBN材料を含むカッターインサートは、少なくとも約52HRC(ロックウェル硬度スケールC)の硬度を有する硬化鋼を機械加工するのに使用され得る。開示されるPCBN材料は、化学的摩耗に対する耐性、高靭性、および高強度の良好な組合せを有し得る。
【0038】
本明細書で使用するある特定の用語および概念を以下で簡単に説明する。
本明細書において、分布の最頻値は、最頻値を含む範囲内で他の値が起こるよりデータ中でより頻繁に起こる極大値である。視覚的には、サイズ分布グラフ中の最頻値は、ピークとして明白になる。例えば、単峰性分布では、ただ1つのピークが明白であり、極大がまったくなく、または非常に軽微な、かつごくわずかな他のピークのみがあり、二峰性分布では、2つあり、2つのピークのみが明白であり、その一方は全体の最大であり得、他方は極大であり得、または両方が頻度において実質的に等しい場合がある。一般に、多峰性分布は、少なくとも2つの最頻値を含む。
【0039】
本明細書において、複数の緩い、非結合の、かつ塊になっていない粒のECD分布は、レーザー回折によって測定することができ、レーザー回折では、粒が入射光の経路中にランダムに配置され、粒による光の回折から生じる回折パターンが測定される。回折パターンは、それが複数の球状粒によって生成されたかのように数学的に解釈することができ、その直径分布は、ECDの観点から計算および報告される。粒度分布の様相は、様々な用語および記号を使用して様々な統計的性質の観点から表現され得る。このような用語の特定の例としては、平均値、中央値、および最頻値がある。サイズ分布は、一連のそれぞれのサイズのチャネルに対応する一連の値Diとして考えることができ、ここで各Diは、使用されるチャネルの1〜数nの範囲内の整数であるそれぞれのチャネルiに対応する幾何平均ECD値である。
【0040】
レーザー回折法によって得られる平均値は、粒体積の分布に基づいて最も容易に表現することができ、体積平均値は、周知の数式によってD[4,3]として表すことができる。結果を表面積分布に変換することができ、その平均値は、周知の数式によってD[3,2]である。別段の記載のない限り、本開示で使用するサイズ分布の平均値は、体積ベース平均値D[4,3]を指す。サイズ分布の中央値D50は、複数の粒を2つの等しい集団に分割する値であり、一方は、その値を超えるECDサイズを有する粒からなり、他方の半分は、最大でその値のECDサイズを有する。サイズ分布の最頻値は、粒の最高頻度に対応する値であり、これは、分布のピークとして視覚化され得る(分布は、1つを超える極大頻度を含み得、多峰性であると言われる場合がある)。それ未満で複数の粒の画分yが分布中に存在するサイズを表現する様々な他の値d(y)を提供することができる。例えば、d(0.9)は、それ未満で90パーセントの粒が存在するECDサイズを指し、d(0.5)は、それ未満で50パーセントの粒が存在するECDサイズを指し、d(0.1)は、それ未満で10パーセントの粒が存在するEDCサイズを指す。
本発明は、更に、以下の態様であり得る。
〔1〕マトリックス中に分散したcBN粒からなるPCBN材料であって、cBN粒の含量は、PCBN材料の約35〜約70体積パーセントの範囲内であり、マトリックスは、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含み、複数のcBN粒表面が、PCBN材料の実質的に平面の表面と境界を共有しており、cBN粒のサイズ分布は、総円相当面積(ECA)の少なくとも約50パーセントが、最大で5μmのcBN切片長から生じるようなものであり、総ECAの少なくとも約20パーセントが、5μm超のcBN切片長から生じる、PCBN材料。
〔2〕マトリックスが、炭窒化チタン、炭化チタン、または窒化チタンの1種または複数を含む、前記〔1〕に記載のPCBN材料。
〔3〕マトリックスが、窒化アルミニウムおよび少なくとも1種のホウ化アルミニウム化合物を含む、前記〔1〕または前記〔2〕に記載のPCBN材料。
〔4〕マトリックスが、炭窒化チタンおよび窒化アルミニウムを含み、炭窒化チタンおよび窒化アルミニウムの組み合わせた含量が、マトリックスの少なくとも約80質量パーセントである、前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のPCBN材料。
〔5〕マトリックスが、ニオブ、タンタル、バナジウム、またはジルコニウムの炭化物、炭窒化物、または窒化物化合物を含む、前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のPCBN材料。
〔6〕マトリックスが炭化タングステン粒を含有し、炭化タングステン粒の含量が、PCBN材料の3質量パーセント超である、前記〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のPCBN材料。
〔7〕金属炭化物粒が、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化タンタル、または炭化クロムを含む、前記〔5〕に記載のPCBN材料。
〔8〕マトリックスが、少なくとも50ナノメートル(nm)、かつ最大で1,000ナノメートル(nm)の平均粒度を有する多結晶材料を含む、前記〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のPCBN材料。
〔9〕前記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のPCBN材料を含むカッターツール用インサートであって、PCBN材料が使用中にカッターエッジをもたらすことができるように構成されている、インサート。
〔10〕前記〔9〕に記載のインサートを使用する方法であって、少なくとも52HRcのロックウェルC硬度を有する鋼を切削するためにインサートを使用するステップを含む、方法。
〔11〕鋼が、切削のモードが中断されるように構成されたボディ内に含まれている、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕連続切削と断続切削の比が、少なくとも約50パーセントかつ最大で約95パーセントである、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のPCBN材料を作製する方法であって、粒の円相当径(ECD)に関して質量頻度分布を有する複数のcBN粒を含むcBN集合体を準備するステップであり、該頻度分布は、第1の最頻値および第2の最頻値を有し、第1の最頻値は、0μm超かつ最大で約3μmのECDで起こり、第2の最頻値は、3μm超で起こり、0μm超〜最大で3μmのECDを有するcBN粒は、cBN集合体の少なくとも30パーセントを占め、3μm超のECDを有するcBN粒は、cBN集合体の質量の少なくとも20パーセントを占める、ステップと;cBN集合体をアルミニウム(Al)の源およびチタン(Ti)の源、またはTiおよびAlの源と組み合わせて、ブレンドされた集合体を準備するステップと;ブレンドされた集合体を含む前焼結体を形成し、該前焼結体を十分な高圧および十分な高温に付して、アルミニウム(Al)を含む化学化合物の少なくとも1種およびチタン(Ti)を含む化学化合物の少なくとも1種を含む焼結マトリックス中に分散したcBN粒からなるPCBN材料をもたらすステップとを含み、ブレンドされた集合体中のcBN粒の質量は、PCBN材料中のcBN粒の含量がPCBN材料の約35〜約70体積パーセントの範囲内であるのに十分である、方法。
〔14〕PCBN材料中の金属炭化物粒の含量が3質量パーセント超であるように、十分な金属炭化物材料をブレンドされた集合体中に導入するステップを含む、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕第2の最頻値が、最大で約20μmのECDで起こる、前記〔13〕または〔14〕に記載の方法。
〔16〕Alの源が粉末形態である、前記〔13〕から〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕Tiの源が粉末形態である、前記〔13〕から〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕cBN粒を、摩擦粉砕装置によって、Alの源およびTiの源、ならびに/またはAlおよびTiの源とブレンドするステップを含む、前記〔13〕から〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕第1のcBN集合体および第2のcBN集合体を準備するステップを含み、第1および第2のcBN集合体のそれぞれが、それぞれの複数のcBN粒を含み、第1のcBN集合体の体積平均ECD(D[4,3])が0超かつ最大で約3μmであり、第2のcBN集合体の体積平均ECDが約3μm超である、前記〔13〕から〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕第2のcBN集合体の平均体積平均ECDが、最大で約15μmである、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕第1のcBN集合体の平均体積平均ECDが、最大で約2μmである、前記〔19〕または〔20〕に記載の方法。
〔22〕cBN粒の第1の集合体の平均比表面積が、少なくとも1グラム当たり約5平方メートル(m2/g)である、前記〔19〕から〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕cBN粒の第1の集合体の平均比表面積が、最大で1グラム当たり約0.5平方メートル(m2/g)である、前記〔19〕から〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕cBN集合体の平均比表面積が、最大で1グラム当たり5平方メートル(m2/g)である、前記〔14〕から〔23〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕第1のcBN集合体の質量と第2のcBN集合体の質量の比が、少なくとも1:5かつ最大で1:1である、前記〔19〕から〔24〕のいずれかに記載の方法。