特許第6203949号(P6203949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203949
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】自動車のための回避・ブレーキアシスト
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20170914BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20170914BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20170914BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20170914BHJP
   B62D 103/00 20060101ALN20170914BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   B60W30/09
   B60T7/12 B
   B60T7/12 C
   B60T7/12 Z
   B62D6/00
   B62D101:00
   B62D103:00
   B62D117:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-520333(P2016-520333)
(86)(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公表番号】特表2016-523201(P2016-523201A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014060240
(87)【国際公開番号】WO2014202309
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】102013211643.8
(32)【優先日】2013年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ブロイヒレ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フレーミク フォルコ
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−159077(JP,A)
【文献】 特開2010−179843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/09
B60T 7/12
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 103/00
B62D 117/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の交通環境を検出するためのセンサシステム(10)と、車両のステアリングシステムとブレーキシステムへ介入するためのアクチュエータシステム(12)と、前記センサシステム(10)から供給されるデータを参照して緊急回避操作が必要かどうか調べ、前記アクチュエータシステム(12)を通じて車両のダイナミクスへ作用して、前記緊急回避操作の開始時および/または実行時に車両ドライバーをサポートする緊急回避機能(16)が実装された電子制御デバイス(14)とを有する自動車のための回避・ブレーキアシストにおいて、
前記緊急回避機能(16)は、
左右方向ダイナミクスに対する介入を伴う緊急回避操作が可能である場合、
回避操作の第1の段階では前記車両の速度を一定に保ちながら左右方向ダイナミクスへのみ介入し、当該段階の後で初めて前後方向ダイナミクスへの介入も行うかどうか決定し、
回避操作の第2の段階では左右方向ダイナミクスに対する介入のみを継続して行うか、或いは、左右方向ダイナミクス及び前後方向ダイナミクスに対して複合型の介入を行う
ことを特徴とする回避・ブレーキアシスト。
【請求項2】
前記前後方向ダイナミクスへの介入が行われるかどうかの決定は前記緊急回避機能(16)により閾値基準を参照して決定される時点(t2)で行われる
請求項1に記載の回避・ブレーキアシスト。
【請求項3】
前記閾値基準は次の量すなわち車両の操舵角、操舵角速度、ヨーレート、ヨーイング角度、左右方向位置オフセット、左右方向加速度、車両の左右のホイールの間のホイール回転数比、第1の段階の開始以降に進んだ距離、第1の段階以降に経過した時間のうち少なくとも1つについての閾値比較を含んでいる
請求項2に記載の回避・ブレーキアシスト。
【請求項4】
前記左右方向ダイナミクスへの介入は少なくとも前記回避操作の第1の段階では車両の左右のホイールの非対称の制動を含んでいる
請求項1から3のいずれか1項に記載の回避・ブレーキアシスト。
【請求項5】
前記左右方向ダイナミクスへの介入はアクティブステアリング設備(SA)を通じての介入を含んでいる
請求項1から4のいずれか1項に記載の回避・ブレーキアシスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の交通環境を検出するためのセンサシステムと、車両のステアリングシステムとブレーキシステムへ介入するためのアクチュエータシステムと、センサシステムから供給されるデータを参照して緊急回避操作が必要かどうか調べ、アクチュエータシステムを通じて車両のダイナミクスへ作用して、緊急回避操作の開始時および/または実行時に車両ドライバーをサポートする緊急回避機能が実装された電子制御デバイスとを有する、自動車のための回避・ブレーキアシストに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい世代の車両では、レーダやビデオカメラのような環境センサに基づいて危険状況が判断され、危急の衝突危険性が確認されると、事故を回避するために、または少なくとも事故の重大性を緩和するために能動的になるアシスト機能を利用可能である。
【0003】
このようなアシスト機能のいくつかは、触覚式の行動推奨を運転者に与える。また、走行ダイナミクスへの介入によって運転者を能動的にサポートするアシスト機能も知られており、それは、たとえば緊急ブレーキングを自動的に開始し、および/またはステアリングへの介入によって回避操作を開始することによる。たとえば特許文献1は、回避軌道が計画され、次いでビークルダイナミクスコントローラを通じて実行されるシステムを記載している。しかし安全性の理由により、このような回避機能(回避アシスト)はいつでも運転者によってオーバーライド制御することができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1926646B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、回避操作をいっそう確実に実行することができる回避・ブレーキアシストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、緊急回避機能が回避操作の第1の段階では左右方向ダイナミクスへのみ介入し、当該段階の後で初めて前後方向ダイナミクスへの介入も行うかどうか決定することによって解決される。
【0007】
本発明は、数多くの自動車ドライバーが緊急ブレーキングの際に、それが自分自身によって開始されるか、それともアシストシステムによって開始されるかに関わりなく、車両がコントロールできなくなるのを恐れるために、車両の左右方向運動を相応の逆操舵によって抑制しようと直感的に試みるという事情を考慮している。したがって複合型の回避・ブレーキアシストでは、回避操作の計画に即した自動的な実行が、そのような車両ドライバーの逆操舵によって困難になったり、あるいは無駄になるという危険性がある。そこで本発明では、第1の段階では横方向ダイナミクスへの介入だけが行われ、緊急ブレーキングがすでに開始されることはない。それにより運転者に、回避アシストが能動的になっており、左右方向ダイナミクスへの介入を伴う回避操作が行われることが伝えられる。すると大半のケースにおいて車両ドライバーは、自動的に開始されるこのような介入を受け入れるか、あるいは能動的に支援することさえあり、その後、必要な場合に若干遅れて前後方向ダイナミクスへの介入すなわちブレーキプロセスが行われたときにも、もはや逆操舵をすることがなくなる。このようにして、操作を全体として成功裏に実行できることを、いっそう高い確率で実現することができる。
【0008】
本発明の好ましい発展例と実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0009】
左右方向ダイナミクスへの介入は車両ステアリングを通じて行うことができ、たとえば、運転者により手動で及ぼされる操舵トルクに追加して別の操舵トルクをステアリングシャフトに対して及ぼすアクチュエータを通じて行うことができ、あるいは、操舵角を能動的に調整して、運転者により手動でステアリングホイールを介して調整される操舵角とこれが重ね合わされる、いわゆるアクティブステアリング設備を通じて行うこともできる。
【0010】
その代替または追加として、左右方向ダイナミクスへの介入はブレーキ設備を通じて行うこともでき、すなわち、左右の車両ホイールのうちの少なくとも1つの非対称の制動によって車両の左右方向運動が惹起されることによって行うことができる。
【0011】
通常の場合、回避操作の第1の段階に第2の段階が後続し、この段階では、緊急回避機能が車両の左右方向ダイナミクスへも前後方向ダイナミクスへも介入する。しかしながら第1の段階の進行状況によっては、前後方向ダイナミクスへの介入がもはや必要なく、したがって左右方向ダイナミクスへの介入だけで回避操作が終了することを緊急回避機能が認識するという状況も考えられる。逆に、前後方向ダイナミクスへの介入が終わる前に、左右方向ダイナミクスへの介入が完了または中断するという状況も考えられる。
【0012】
補足として、自動的に開始される操作の前、途中、または完了後に、車両ドライバーへ注意喚起することも当然ながら可能である。
【0013】
次に、図面を参照しながら実施例について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による回避アシストのブロック図である。
図2図2(a)および(b)は緊急回避操作の一例についての回避軌道と速度プロフィルのグラフである。
図3図3(a)および(b)は緊急回避操作の別の例についての回避軌道と速度プロフィルのグラフである。
図4図4(a)および(b)は中断された緊急回避操作についての回避軌道と速度プロフィルのグラフである。
図5】本発明を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1にブロック図として掲げる回避アシストは、センサシステム10と、アクチュエータシステム12と、センサシステム10から供給されるデータを評価して処理し、その処理の結果としてアクチュエータシステム12へコマンドを出力する、たとえば1つまたは複数のマイクロプロセッサの形態の電子制御デバイス14とを含んでいる。
【0016】
センサシステム10は、一方では、自分の車両のダイナミックな状態を検出する、すなわち、たとえばその速度、加速度、操舵角速度、ヨーイング速度、トランスミッション状態、駆動輪のスリップなどを検出するセンサコンポーネントを含んでいる。さらにセンサシステム10は、車両の環境を含むセンサコンポーネント、たとえば電子画像処理部が付属するビデオシステム、レーダセンサ、超音波センサなどを含んでいる。広い意味では、これ以外の仕方で交通環境および特に交通インフラストラクチャーに関係する情報、たとえばナビゲーションシステム、または保存されている地図などのデータを提供する情報源も、センサシステム10に数えることができる。
【0017】
制御デバイス14には、周知の仕方によりセンサシステム10から供給されるデータを参照して危急の交通状況を判定し、他の車両またはその他の障害物との衝突が起こる確率を計算する緊急回避機能16が実装されている。この確率が特定の値に達すると、緊急回避機能16がアクチュエータシステム12へコマンドを出力して、たとえばまず運転者へ相応の注意喚起をすることによって、あるいは必要な場合には車両のダイナミクスへの能動的な介入によって、緊急回避操作を作動させる。
【0018】
アクチュエータシステム12は、たとえば車両ドライバーにより及ぼされる操舵トルクに追加して車両のステアリングシャフトに対して作用する操舵トルクを生起するステアリングアクチュエータSを含んでいる。ステアリングアクチュエータにより及ぼされるトルクは、両方の方向で限界値によって制限されているので、運転者は、ステアリングホイールを介して手動で独自の(同一方向または反対方向への)操舵トルクを及ぼすことによって、アクチュエータシステム12により惹起される操舵介入をオーバーライド制御することができる。
【0019】
その代替または追加としてアクチュエータシステムは、ステアリングホイールの位置に関わりなく操舵角を調整する、いわゆるアクティブステアリングSAを有することもできる。その場合には車両ホイールの操舵角として、最終的に、アクチュエータシステム12により調整される操舵角と、車両ドライバーによりステアリングホイールを介して手動で調整される操舵角との重ね合わせに相当する角度が生じる。つまりこのケースでは運転者は、ステアリングホイールを通じてより大きい操舵角またはより小さい操舵角あるいは反対方向への操舵角を調整することによって、アクチュエータシステム12をオーバーライド制御することができる。
【0020】
さらにアクチュエータシステム12は、ここでは2つのサブシステムで代表される、すなわち車両の左側の前輪および/または後輪のためのブレーキアクチュエータBLと、右側の前輪および/または後輪のためのブレーキアクチュエータBRとによって代表される、ブレーキアクチュエータを有している。
【0021】
緊急回避機能16は、機能面から、計画インスタンス18と、左右方向ダイナミクスコントローラCYと、前後方向ダイナミクスコントローラCVとに区分される。緊急回避操作が必要であることが判明すると、計画インスタンス18がセンサシステム10から供給されるデータを参照して、目標回避軌道とこれに対応する目標速度プロフィルを計算する。すると左右方向ダイナミクスコントローラCYがアクチュエータシステム12に作用して、車両ができるだけ目標回避軌道上で保たれるようになり、前後方向ダイナミクスコントローラCVは車両のブレーキ設備(および場合により駆動システム)に作用して、できるだけ目標速度プロフィルが遵守されるようになる。
【0022】
図2(A)には、車両の左右方向位置yを時間tの関数として表す曲線20によって、目標回避軌道が表現されている。図2(B)では、これに対応する目標速度プロフィルが、車両の速度v(前後方向速度)を時間tの関数として表す曲線22によって表現されている。
【0023】
図2に示す例では、計画インスタンス18は、車両が左側の隣車線へと回避する目標軌道を計算している。回避操作の第1の段階は、ステアリングへの介入をもって時間t1で開始される。ただしこの段階では、前後方向ダイナミクスへの介入はまだ行われないので、車両の速度vはさしあたりまだ一定に保たれる。したがって車両ドライバーは横方向ダイナミクスへの介入だけを認識し、それに基づき、回避アシストが障害物を避けようと試みていると推測する。したがって本例では、運転者が自動式の介入を許容し、緊急回避機能をオーバーライド制御しないものと仮定する。
【0024】
そして、これよりも後の時点t2で初めて回避操作の第2の段階が開始され、この回避操作では、左右方向ダイナミクスへの介入が継続している間に、たとえば開始された回避操作にもかかわらず衝突が起こってしまった場合に事故の結果を緩和するために、前後方向ダイナミクスへの介入も制動プロセスの形態で行われる。それに応じて速度vが時点t2から減少していく。最終的に回避操作は、たとえば車両が当初のコースと平行に隣車線上で走行を続ける結果につながる逆操舵運動によって完了する。このときには車両の速度vが低下しているので、逆操舵運動を小さいコーナリング半径で行うことができる。
【0025】
ここに示している例では、前後方向ダイナミクスへの介入は、左右方向ダイナミクスへの介入よりも早く終了し、それにより、車両はすでに逆操舵運動中に再び一定の速度で走行することになる。しかしながら交通状況によっては、横方向ダイナミクスへの介入が前後方向ダイナミクスへの介入よりも早く終わることも起こり得る。
【0026】
回避操作全体を通じて計画インスタンス18は、センサシステム10から供給されるデータを参照して、実際ダイナミクスが算出された目標ダイナミクスに呼応しているかどうか、または、車両ドライバーの介入によって、もしくはその他の要因に基づいて、実際ダイナミクスと目標ダイナミクスの間の誤差が生じているかどうかをチェックする。計画インスタンス18は実際ダイナミクスを参照して、回避操作の第2の段階が始まる時点t2も決定するのが好ましい。第2の段階およびこれに伴う前後方向ダイナミクスへの介入を開始する1つの基準は、たとえば操舵角、操舵角速度、ヨーレート、ヨーイング角度、左右方向位置y、車両の前後方向で進んだ距離、左右方向加速度、ホイール回転数比、および/または時点t1以降に経過した時間が適当な閾値を超えることなどであり得る。選択的に、これらの複数の基準からなる組み合わせを利用することもでき、その場合、これらの基準がそれぞれ異なる重みで決定に影響を及ぼす。
【0027】
図3は、車両の初期速度vが比較的遅く、それにより、障害物を回避軌道上で速度変更なしに避けることができる例を示している。それに応じて図3の曲線22は、一定の速度vに相当する速度プロフィルを表している。実際回避軌道が目標軌道と一致している限り、計画インスタンス18は時点t2で(たとえば時点t1の後の固定的な時間帯)、前後方向ダイナミクスへの介入が必要ないことだけを決定する。
【0028】
それに対して図4は、運転者が能動的な逆操舵によって回避操作を妨げる例を示している。図4(A)では、計画インスタンス18により算出された目標回避軌道が、破線で図示する曲線24によって表されており、それに対して実際軌道は、曲線24とは相違する曲線26で表されている。時点t2で計画インスタンス18は、実際軌道と目標軌道との相違に基づいて衝突確率の新評価を行い、当初の計画に反して前後方向ダイナミクスへの介入(ないしいっそう強力な介入)が必要であると決定する。それに応じて時点t2で、緊急ブレーキングが作動する。それと同時に、場合により左右方向ダイナミクスへの介入を中断することができる。
【0029】
同様に、当初計画された時点t2でのブレーキ操作が不要であることが判明し、あるいは当初算出された速度プロフィルを改変しなければならないという事例も考えられる。
【0030】
ここで説明している回避・ブレーキアシストの主要な機能が、図5にフローチャートとして図示されている。
【0031】
ステップS1で、計画インスタンス18により、危急の衝突危険性があるかどうか、すなわち、回避操作および/またはブレーキ操作が必要かどうかがチェックされる。それが該当しない場合(N)、ステップS1が周期的に反復される。衝突危険性があるとき(J)、ステップS2で、センサシステム(カメラおよび/またはレーダセンサ)のデータを参照して、回避操作が可能であるかどうかチェックされる。たとえば隣車線が同じくふさがっているために、それが該当しない場合(N)、ただちに(すなわちすでに時点t1で)ステップS3で、緊急ブレーキ操作が開始される。それに対して、左右方向ダイナミクスへの介入を伴う回避操作が可能であるとき、ステップS4で、時点t1で第1の段階の回避操作が開始され、すなわち、車両の左右方向ダイナミクスへの介入が行われるが、まだ前後方向ダイナミクスへの介入は行われない。
【0032】
そしてこれよりも後の時点t2のとき、ステップS5で、回避操作の枠内において、またはそれに代えて(回避操作が中断された場合)、前後方向ダイナミクスへの介入が必要かどうかチェックされる。それが該当しない場合(N)、ステップS6で、図3に示す事例のように、左右方向ダイナミクスへの介入だけを伴う回避操作が継続される。それに対して前後方向ダイナミクスへの介入も必要であるとき(J)、ステップS7をもって、左右方向ダイナミクスと前後方向ダイナミクスへの複合型の介入を伴う回避操作の第2の段階が始まる。運転者が回避操作の中断を強制した場合(図4)、前後方向ダイナミクスへの介入は緊急ブレーキ操作として継続される。
【0033】
車両の左右方向ダイナミクスへの介入は、少なくとも回避操作の第1の段階では、必ずしもステアリングアクチュエータSまたはアクティブステアリング設備SAを通じて行わなくてもよい。図1に示すように、横方向ダイナミクスコントローラCYは、(さまざまに異なる内容をもつ)コマンドも、左右の車両側についてのブレーキアクチュエータBLおよびBRに伝送することができ、そのようにして、非対称の制動によって左右方向ダイナミクスへの介入をする。それに対して前後方向ダイナミクスコントローラCVは、両方の車両側についてのブレーキアクチュエータBLおよびBRへ常に同一のコマンドを伝送して、左右方向ダイナミクスへの(意図的な)影響のない対称のブレーキ介入を惹起する。
【符号の説明】
【0034】
10 センサシステム
12 アクチュエータシステム
14 電子制御デバイス
16 緊急回避機能
図1
図2
図3
図4
図5