(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203983
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】バッテリー電荷に基づく動的スリープモード
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-500917(P2017-500917)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2015031401
(87)【国際公開番号】WO2016007228
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】14/329,790
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595020643
【氏名又は名称】クゥアルコム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】タハ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】コーレト、ヘクター・フレイレス
(72)【発明者】
【氏名】カシャップ、ラフル
【審査官】
緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/147070(WO,A1)
【文献】
特開2014−121805(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0311794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12,7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
G06F 1/26−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力管理集積回路(PMIC)において、
第1の電力レギュレータと
制御論理回路とを具備し、
前記制御論理回路は、
対応する電力レールによって電力供給されているデバイスがスリープモードであるとき、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低い間、前記第1の電力レギュレータを制御して、前記対応する電力レールにソース供給し、
前記デバイスがスリープモードであるとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高い間、前記対応する電力レールを電力急減するように構成されているPMIC。
【請求項2】
前記第1の電力レギュレータは、複数の第1の電力レギュレータを備える請求項1記載のPMIC。
【請求項3】
前記第1の電力レギュレータは、リニアドロップアウトレギュレータを備える請求項1記載のPMIC。
【請求項4】
前記第1の電力レギュレータは、スイッチ電力レギュレータを備える請求項1記載のPMIC。
【請求項5】
前記スイッチ電力レギュレータは、バックコンバータを含む請求項4記載のPMIC。
【請求項6】
前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給するように構成されている第2の電力レギュレータをさらに具備し、
前記制御論理回路は、
前記デバイスが前記スリープモードからアクティブモードに移行するとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高い間、前記第2の電力レギュレータを制御し、第1の電圧ステッピングレートにしたがって、前記第2の電力レールにソース供給し、
前記デバイスが前記スリープモードから前記アクティブモードに移行するとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低い間、第2の電圧ステッピングレートにしたがって、前記第2の電力レールにソース供給するように構成され、
前記第1の電圧ステッピングレートは、前記第2の電圧ステッピングレートより高い請求項1記載のPMIC。
【請求項7】
前記第1の電圧ステッピングレートは、おおよそ毎ミリ秒40ミリボルトであり、前記第2の電圧ステッピングレートは、おおよそ毎ミリ秒5ミリボルトである請求項6記載のPMIC。
【請求項8】
前記動的スリープしきい値電圧は、おおよそ3.5ボルトである請求項1記載のPMIC。
【請求項9】
前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給するように構成されている第2の電力レギュレータをさらに具備し、
前記制御論理回路は、前記動的スリープしきい値電圧とは無関係に前記第2の電力レギュレータを制御するように構成されている請求項1記載のPMIC。
【請求項10】
方法において、
デバイスがスリープ動作モードに移行することに応答して、第1の電力レギュレータに給電するバッテリーに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、前記デバイス用の第1の電圧レールに対する第1の電力レギュレータをシャットオフすることと、
前記デバイスが前記スリープ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、前記第1の電力レギュレータを駆動して、前記第1の電圧レールにソース供給することとを含む方法。
【請求項11】
前記第1の電力レギュレータをシャットオフすることは、リニアドロップアウトレギュレータをシャットオフすることを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電力レギュレータを駆動することは、前記第1の電力レギュレータを駆動して、前記デバイスに対するアクティブ動作モード電圧より低い電圧を前記第1の電圧レールにソース供給することを含む請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスが前記スリープ動作モードからアクティブ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高いとき、第1の電圧ステッピングレートにしたがって、前記デバイスに対する第2の電圧レールにソース供給することとをさらに含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスが前記スリープ動作モードから前記アクティブ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、第2の電圧ステッピングレートにしたがって、前記デバイスに対する第2の電圧レールにソース供給することとをさらに含み、
前記第2の電圧ステッピングレートは、前記第1の電圧ステッピングレートより低い請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記デバイスは、セルラ電話機であり、
前記方法は、
前記セルラ電話機が前記スリープ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、第2の電圧レールに対する第2の電力レギュレータをシャットオフすることをさらに含み、
前記第2の電圧レールは、音声通話をサポートするために不可欠ではない前記セルラ電話機中の回路に給電し、
前記第1の電圧レールは、音声通話をサポートするために不可欠である前記セルラ電話機中の回路に給電する請求項10記載の方法。
【請求項16】
システムにおいて、
バッテリーと、
第1の電力レールによって給電される少なくとも第1の電力ドメインを含むシステムオンチップ(SOC)と、
前記バッテリーに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、前記SOCに対するスリープモードの間、前記第1の電力レールが急減されるように、および、
前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、前記SOCに対する前記スリープモードの間、前記第1の電力レールがソース供給されるように、
前記第1の電力レールを管理する手段とを具備するシステム。
【請求項17】
前記SOCは、第2の電力レールによって給電される第2の電力ドメインをさらに備え、
前記第1の電力レールを管理する手段は、前記動的スリープしきい値電圧に関する前記バッテリー電圧の大きさにかかわらず、前記SOCに対する前記スリープモードの間、前記第2の電力レールを急減させるように、前記第2の電力レールを管理するようにさらに構成されている請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記SOCは、前記バッテリー電圧がカットオフしきい値電圧より低い場合、シャットダウンするように構成されている請求項16記載のシステム。
【請求項19】
前記カットオフしきい値電圧は、おおよそ3.4ボルトであり、前記動的スリープしきい値電圧は、おおよそ3.5ボルトである請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、セルラ電話機を具備する請求項16記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]
本願は、2014年7月11日に出願された米国特許出願シリアル番号第14/329,790号の利益を主張し、その全体が参照により組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
[0002]
本願は、電力管理に関連し、より具体的には、バッテリー電圧に基づく動的スリープモードを有するデバイスに関連する。
【0003】
[0003]
バッテリー電力供給されるデバイスの使用の間、バッテリー電荷が消耗すると、対応するバッテリー電圧は減少する。バッテリーが放電されると、いつかの時点において、バッテリー電圧は、受け入れられないほど低くなり、それゆえ、デバイスは電源を切断する。例えば、バッテリー電圧が、3.5Vのようなソフトウェアカットオフしきい値電圧を下回って降下する場合、ハンドセットが電源を切断することが普通である。デバイスは、その後、バッテリーが再充電されるまで使用不可能である。延長された使用時間を消費者が求めることから、できるだけ長くデバイスをシャットダウンすることを遅らせることが望ましい。
【0004】
[0004]
移動体デバイス内で、バッテリーは対応する電力ドメインに給電する多数の異なる電力レールに電力供給するかもしれない。各電力レールは、低ドロップアウトレギュレータのような、対応する電力レギュレータによってソース供給される。デバイスは、さまざまな電力レールに対する電力レギュレータを管理する、電力管理集積回路(PMIC)を典型的に含んでいる。バッテリー寿命を延長するために、デバイスがスタンバイまたはスリープモードである間、電力レールのうちのアソートされたものの電源をPMICが切断することが普通である。例えば、使用していないとき、移動体電話機は、主に、アイドルスタンバイ(スリープ)モードである。移動体電話機は、その後、その不連続受信(DRX)サイクルにしたがって、周期的にウェイクアップし、メッセージまたは通話をチェックするだろう。スリープモードのとき、バッテリー寿命を延長するために、典型的に、不必要な電力レールは、電源が切断される。スリープモードの間、そうではなく、電力レールにソース供給される場合、電力レールに結合されているトランジスタおよび他のデバイスは、不必要にバッテリーを放電する漏洩電流を導通させるだろう。
【0005】
[0005]
現代の電力管理技術は動作時間を増加させるが、技術的に、さらなるバッテリー寿命に対する必要性がある。
【0006】
[0006]
スリープ動作モードとアクティブ動作モードの両方を有するデバイスが提供される。スリープモードでは、動的スリープしきい値電圧と比較されるバッテリー電圧に依存して、デバイスに対する電力レールが異なって制御される。バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を超える場合、電力レールに対する電力レギュレータは、スリープモードの間、シャットオフされ、それゆえ、電力レールに対する電圧は急減する(電圧がアースに向かう)。逆に言えば、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低い場合、電力レギュレータは、スリープモードの間、電力レールにソース供給する。バッテリーが消耗に近いにもかかわらず、電力レール電圧を維持することは反直観的ではあるが、スリープモードの間、ソース供給される電力レールからの漏洩電流から結果として生じる電力の損失は、バッテリーに対するソフトウェアカットオフしきい値電圧に関してデバイスの延長された動作寿命のおかげで目立たなくなる。これに関して、バッテリー電圧がソフトウェアカットオフしきい値電圧を下回って降下する場合、低減されたバッテリー電圧からの誤作動またはダメージからデバイスを保護するために、デバイスがシャットダウンすることはお決まりである。しかしながら、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回って降下する場合、スリープモードの間に、電力レールにソース供給して電源電圧を維持することにより、ここで開示するデバイスに対しては、このシャットダウンは、従来の動作に関して遅延される。
【0007】
[0007]
スリープモードの間に、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回る場合、SRAMメモリ状態のような状態を維持するのに十分な電圧のような、低電圧動作モードに対して十分な電圧が、電力レールに少なくともソース供給される。電力レール上のこの先に存在する電圧のために、バッテリーは、そうでなければ、デバイスがスリープモードからアクティブ動作に移行するような、その急減された状態からの電力レールのソース供給の際に生じる、サージの電流(突入電流)を給電する必要ないだろう。ソフトウェアカットオフしきい値を下回るようにバッテリー電圧を引っぱり、そして、継続動作のために十分な電荷が、バッテリー中に残存しているにもかかわらず、デバイスのシャットダウンをトリガするのは、この電流サージである。ここで開示する動的電力管理技術は、この残存電荷を有利に活用して、デバイスに対する延長された動作時間を取得する。
【0008】
[0008]
以下に続く詳細な説明を通して、これらおよび他の有利な特徴がより良く認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]
図1は、本開示の実施形態にしたがって、電力管理技術を実行するように構成されている例示的な電子システムのブロックダイヤグラムである。
【
図2A】[0010]
図2Aは、スリープモードからの従来の復旧に対する、バッテリー電圧、カットオフしきい値電圧、バッテリー電流を図示している。
【
図2B】[0011]
図2Bは、従来の移動体デバイスバッテリーの、バッテリー電圧対電荷の残存を図示している。
【
図2C】[0012]
図2Cは、本開示の実施形態にしたがって、動的スリープモードからの復旧に対する、バッテリー電圧、カットオフしきい値電圧、バッテリー電流を図示している。
【
図3A】[0013]
図3Aは、従来のスリープモードからの復旧に対する、バッテリー電圧、レール電圧、バックインダクタ電流、バッテリー電流を図示している。
【
図3B】[0014]
図3Bは、本開示の実施形態にしたがった、スリープモードからの動的電圧ステッパーレート復旧に対する、バッテリー電圧、レール電圧、バックインダクタ電流、バッテリー電流を図示している。
【
図4】[0015]
図4は、本開示の実施形態にしたがった、例示的な動作の方法のフローチャートである。
【0010】
[0016]
本開示の実施形態およびその利点は、以下の続く詳細な説明を参照することにより、最も良く理解される。同様の参照番号は、図のうちの1つ以上中に図示される同様の番号を識別するために使用されていると認識すべきである。
【0011】
[0017]
既存のバッテリーに何らかの変化を要求することなく、バッテリー電力供給されるデバイスに対する動作時間を延長する電力管理技術を開示する。この電力管理技術において、動的スリープしきい値電圧に関して、電力レールが管理される。この技術は、対応するスリープモードにおいて独立的に電源が切断されるかもしれない1つ以上の電力ドメインを有するシステムオンチップ(SOC)のような、集積回路を含むデバイスに適用される。各電力ドメインは、電力ドメインに対する電圧レールに電力供給するリニアドロップアウトレギュレータ(LDO)のような、それ自身の電力レギュレータに対応してもよい。ここで定義するように、用語「電力レール」および「電圧レール」は、交換可能に使用される。スリープモードに移行しそうな電力ドメインを含むデバイスに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を上回る場合、対応する電力レギュレータがシャットダウンされ、それゆえ、スリープモードの間、電力ドメインに対する電力レールは急減する。逆に言えば、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回る場合、スリープモードに移行する電力ドメインに対する電力レギュレータは、少なくとも電力レール上に、低減された電圧を維持するように継続する。例えば、低減された電圧は、スリープモードの間、電力ドメイン中のメモリに対する状態を維持するのに十分なものであってもよい。したがって、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を上回る場合には、スリープモード中の電力レールは急減され、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回る場合には、スリープモードの電力レールは急減されないという点で、スリープモードは動的である。
【0012】
[0018]
さらに、電力レギュレータのうちのいくつかは、ここで開示する電力管理技術中でそれらの電力レールを急減できるようにしてもよいが、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回る場合、スリープモードからアクティブモードに戻る移行の間に、それらのレールにソース供給することに関して、より遅い電圧ステッピングレートを使用してもよい。対照的に、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を上回る場合、スリープモードからアクティブ動作モードに移行するとき、より速い電圧ステッピングレートを使用して、対応する電力レール上の電源電圧をブーストしてもよい。
【0013】
[0019]
ここで開示する電力管理技術の実施形態を実施するように構成されている例示的なシステム100を、
図1中に示している。システム100中のSOC110は、少なくとも1つの対応する電力レール121によってそれぞれ電力供給される複数の独立した電力ドメインを含んでいる。電力管理集積回路(PMIC)101は、さまざまな電力レール121の電圧と電力のシーケンスを管理する。この電力管理を提供するために、PMIC101は、所望の電力シーケンスと電圧レベルとを管理するように構成されている論理回路125を含んでいる。PMIC101は、SOC110中の電力ドメインを管理するだけでなく、ディスプレイ、スピーカドライバ、USBインターフェース等のような(図示されていない)多数の周辺デバイスに対する電力も管理してもよい。電力レール121とともに周辺デバイスに対する電力を調整するために、PMIC101は、対応する低ドロップアウト(LDO)レギュレータ120とともにバックレギュレータ115のようなスイッチング電力レギュレータを含んでいてもよい。レギュレータ120および115は、バッテリー105からそれらの電力を導出する。論理回路125は、動的スリープしきい値電圧に関して、バッテリー105に対するバッテリー電圧を監視する。この動的スリープしきい値電圧は、論理回路125によって実現されるスリープモードの動的性質を決定する。1つの実施形態において、SOC110中の電力ドメインがスリープモードに移行し、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を超える場合、論理回路125は、対応するLDOレギュレータ120をシャットダウンし、それにより、その電力レール121上の電圧を急減(アースに放電)させてもよい。しかしながら、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低い場合、論理回路125は、対応するLDOレギュレータ120を少なくとも低電圧モードに維持して、電源電圧を伝えるために、その電力レール121がソース供給されるように保つ。
【0014】
[0020]
1つの実施形態において、SOCにバッテリー給電するためのバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、SOCに対するスリープモードの間、第1の電力レールが急減されるように、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低いとき、SOCに対するスリープモードの間、第1の電力レールがソース供給されるように、第1の電力レールを管理する手段を、PMIC101が備えていると考えてもよい。ここで使用するように、その電圧が、電力レギュレータによって電源電圧レベルに管理されるとき、電圧レールは「ソース供給されている」と考えられる。
【0015】
[0021]
従来のスリープモードからの移行に対して伴われる電流と電圧を図示した
図2Aを参照すると、動的スリープしきい値電圧を使用することの利点がより良く認識されるだろう。モード移行より前のバッテリー電圧200は、ソフトウェアによってまたはハードウェアによって決定される、カットオフしきい値電圧205を上回っている。バッテリー電圧200がカットオフしきい値電圧205より低いと対応するPMICが決定する場合、対応するPMICは、SOCまたはASICへの電力レールに給電する電力レギュレータをシャットダウンし、SOCまたはASIC中の何らかのダメージまたは誤動作を防ぐ。スリープモードからの移行より前のバッテリー電流210は、ごくわずか(例えば、1ミリアンペア)である。およそ4ミリ秒において、バッテリー電流210において大きなスパイクが明らかであり、これは、対応する電力レールがその急減状態から(電源電圧レベルまで増加した電圧を)ソース供給されるような、突入電流として示される現象である。このような突入電流は、バッテリー電荷が消耗するので問題である。特に、
図2B中に示すように、バッテリー中に残存している電荷の割合が消耗すると、バッテリー電圧200は降下する。同時に、バッテリーの内部抵抗も同様に上がる。したがって、バッテリー電圧200中で突入電流が誘発する下降が、対応するデバイスのソフトウェア制御シャットダウンをトリガするかもしれない領域201がある。バッテリーの内部抵抗の対応する増加により、このようなシャットダウンは、より低い温度でより頻繁にトリガされるだろう。バッテリー電圧200がカットオフしきい値電圧205を下回って下降する場合、温度に関わらず、対応するデバイスに対するシャットダウンが生じるだろう。再び
図2Aを参照すると、突入電流が増加したバッテリー電流210によって乗算される内部バッテリー抵抗による抵抗降下の結果として、このようなシャットダウンは、バッテリー電圧200に対するポイントAで生じる。しかしながら、
図2Bの領域201中に示すように、ソフトウェアが制御するシャットダウンにかかわらず、バッテリー中に残されている利用可能な電荷の部分(例えば、2%)が依然としてある。
【0016】
[0022]
スリープモードを動的に変更することにより、開示した電力管理技術は、カットオフしきい値電圧問題により従来は利用できなかったバッテリー電荷のこの残存部分を有利に利用する。動的スリープモードからのウェイクアップに対する結果的なバッテリー電流215を
図2C中に示している。この動的スリープモード中で、バッテリー電圧200が、この実施形態では3.5Vである、動的スリープしきい値電圧を上回っていた場合、対応する電圧レールは急減するだろう。バッテリー電圧200が動的スリープしきい値を下回って降下することから、対応する電圧レールは、急減しないが、代わりに、対応するLDOレギュレータによって低電圧モードに維持される。したがって、スリープモードがアクティブまたはアウェイクモードに移行するとき、突入電流はない。その後、バッテリー電圧200は、(ある実施形態では、3.5Vに等しい)カットオフしきい値電圧205を上回ったままであり、したがって、デバイスは一度もシャットダウンせず、そうではなく動作を継続してもよい。
【0017】
[0023]
図2Bの領域201に関して上記で議論したように、一般的に、従来のスリープモードで放電されるであろうものに加えて利用できる、バッテリー電荷全体のほんの数パーセントのものがある。しかしながら、総利用可能バッテリー電荷のうちのこのような比較的少数の部分が実は非常に重要である。例えば、従来のセルラ電話機バッテリーは、2000から3100ミリアンペア時間(mAh)の範囲の総電荷畜電を有している。このような総電荷畜電の2%は、追加のバッテリー寿命に対して、おおよそ40から62mAhの電荷と同等である。スリープモード電力使用は、典型的に1.4から2.5mAhであり、したがって、余分の2%は、29から25時間の余分のアイドルスタンバイ時間を提供する。この電荷をより実際的な言い方に変換すると、通常の使用パターンを考慮に入れた移動体電話機に対する平均的な日々の使用(DoU)電流は、およそ40から50mAである。したがって、ここで開示する電荷節約技術は、(電話機を使用することなく、ただ、電話機をスタンバイモードにしておくこととは対照的に)もう1.1から1.2時間の通常の使用を提供する。これは、バッテリーに何らかの変化を要求することのない、バッテリー寿命の実質的な増加である。その点に関して、バッテリーのサイズを増加させることによりバッテリー寿命を増加させることは、比較的単純明快な案である。しかしながら、このようなサイズ増加は、コンパクトなデバイス占有面積の設計意図を無視する。ここで開示する電力管理技術は、バッテリーサイズまたはコストにおける何らかの実際の増加を要求することなく、より大きなバッテリーをユーザに効率的に提供する。
【0018】
[0024]
動的スリープモードは、バッテリー電荷が消耗すると、電力レールの急減がさらに勢いよく強いられるだろうと予想する点で反直観的ある。電力レールが急減するとき、このような電力レールからの漏洩電流があることはなく、したがって、バッテリー上へのドレインはない。対照的に、電力レールが、スリープモード中で、たとえ低減された電圧状態に維持されたとしても、何らかの漏洩電流損失があるだろう。しかしながら、上記で議論したように、イネーブルされている通常の使用の増加した時間だけ優位であるという点で、この損失は受け入れ可能である。いくつかの電力レールは、動的スリープモードのインプリメンテーションにもかかわらず、依然として急減されるかもしれないことに留意すべきである。例えば、移動体デバイスが残存バッテリー寿命の表示を含めることはお決まりであるという点でバッテリー電荷が減少されることになるので、ユーザがバッテリー電荷の危険な状態に気付くと仮定してもよい。したがって、そのようなときに、スピーカを通して音楽をかけるまたはビデオゲームをするような時のような、電力消費の大きい動作モードの使用をユーザは期待しないだろう。これらのオプション的な動作モードを駆動する回路に対応する電力レールは、バッテリー電圧が動的電圧しきい値を下回って減少したとしても急減されるかもしれない。逆に言えば、音声通話に関するような、基本機能を伴う回路に対する電力レールは、スリープモードの間、低電圧状態で維持される。代替的に、これらのレールは、低電圧状態に対して使用される電圧よりも高い、アクティブ電圧に維持されてもよい。
【0019】
[0025]
動的スリープモードに加えて、その対応する電力レールの動的電圧ステッピングまたはランピングを実現するように、電力レギュレータを制御してもよい。バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いときに、スリープモードからのウェイクアップに対して、通常のレートで、それらのレール上の電圧をステップするように、電力レギュレータを制御してもよい。例えば、
図3A中に示す電力レール電圧300は、バッテリー電圧315が動的スリープしきい値電圧より高いときに、動的スリープモードからの対応する電力ドメインのウェイクアップの間、通常のレートでランプされる。電力レール電圧300のこのような比較的速いステッピングは、対応する電力レギュレータに対するバックインダクタ電流305中に、対応する大きなスパイクを生成させる。バッテリー電流310は、バックインダクタ電流305中のスパイクにより、大幅に増加する。バッテリーの内部抵抗により、バッテリー電圧315は、バッテリー電流310の増加から、それにしたがって降下する。対照的に、バッテリー電圧320が動的スリープしきい値より低いときに、スリープモードからウェイクアップする電力レール電圧330に対する、より低い電圧ステッピングレートを
図3B中で示している。より低い電圧ステッピングレートにより、バックインダクタ電流335は、
図3Aのバックインダクタ電流305と比較して、著しく低い増加を有している。したがって、バッテリー電流325は、とても穏やかな増加を有しており、それゆえ、バッテリーの内部抵抗に関わらず、バッテリー電圧320は、電力レール電圧330のランピングアップの間、対応する少ない下降を有している。1つの実施形態において、より速い電圧ステッピングレートは、毎マイクロ秒40ミリボルトであってもよい一方で、より遅い電圧ステッピングレートは、毎マイクロ秒5ミリボルトであってもよい。デバイスの後続するウェイクアップの間に、急減された不可欠ではない電力レールが必要になる場合に、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧を下回って下降したとき、この電圧ステッピングレートを遅くすることを、これらの不可欠でない電力レールに適用してもよいと認識すべきである。例えば、音声通話の間、ユーザは少しの間ウェブブラウジングする必要があるかもしれない。音声通話機能に対する電力レールは、以前説明したように急減されなかった。その後、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低いとき、不可欠ではない電力レールを、低減されたステッピングレートで電源投入し、ソフトウェア制御シャットダウンを防いでもよい。動的スリープしきい値電圧を使用する、電力管理技術のための動作の方法をこれから議論する。
【0020】
図4は、例示的な動作の方法に対するフローチャートである。この方法は、SOC110のようなデバイスおよびその電力レール121に対して、
図1のPMIC101中の論理回路125によって管理されていてもよい。動作400は、デバイスがスリープ動作モードに移行することに応答し、第1の電力レギュレータに給電するバッテリーに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、デバイス用の第1の電圧レールに対する第1の電力レギュレータをシャットオフすることを含んでいる。動作400の例は、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高い間に、
図1のSOC110に対する、対応する電力レール121にソース供給するLDO120をシャットダウンすることである。動作405は、デバイスがスリープ動作モードに移行することに応答し、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低いとき、第1の電力レギュレータを駆動して、第1の電圧レールにソース供給することを含んでいる。このような電源投入状態は、メモリの読み込みおよび書き込みの間に使用されるようなアクティブな電圧を、または、代わりに、アイドル保持動作モードで使用されるような低減された電圧を電圧レールにソース供給することを含んでいてもよい。SOC110がスリープモードである間、および、バッテリー電圧が動的スリープしきい値より低い間、その対応する電力レール121がソース供給されることを保持するためのLDO120の動作が、動作405の例である。
【0021】
[0026]
今では当業者が認識するように、手近な特定のアプリケーションに依存して、その精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正、置換、バリエーションを、本開示の、マテリアル、装置、コンフィギュレーション、および、デバイスの使用の方法にすることができる。この観点から、これらは、そのいくつかの単なる例として、ここで図示し、説明した特定の実施形態の範囲に、本開示の範囲を限定すべきではなく、むしろ、以下に添付した特許請求の範囲とその機能的均等物の範囲に十分に相応させるべきである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 電力管理集積回路(PMIC)において、
第1の電力レギュレータと
制御論理回路とを具備し、
前記制御論理回路は、
対応する電力レールによって電力供給されているデバイスがスリープモードであるとき、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低い間、前記第1の電力レギュレータを制御して、前記対応する電力レールにソース供給し、
前記デバイスがスリープモードであるとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高い間、前記対応する電力レールを電力急減するように構成されているPMIC。
[2] 前記第1の電力レギュレータは、複数の第1の電力レギュレータを備える[1]記載のPMIC。
[3] 前記第1の電力レギュレータは、リニアドロップアウトレギュレータを備える[1]記載のPMIC。
[4] 前記第1の電力レギュレータは、スイッチ電力レギュレータを備える[1]記載のPMIC。
[5] 前記スイッチ電力レギュレータは、バックコンバータを含む[4]記載のPMIC。
[6] 前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給するように構成されている第2の電力レギュレータをさらに具備し、
前記制御論理回路は、
前記デバイスが前記スリープモードからアクティブモードに移行するとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高い間、前記第2の電力レギュレータを制御し、第1の電圧ステッピングレートにしたがって、前記第2の電力レールにソース供給し、
前記デバイスが前記スリープモードから前記アクティブモードに移行するとき、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低い間、第2の電圧ステッピングレートにしたがって、前記第2の電力レールにソース供給するように構成され、
前記第1の電圧ステッピングレートは、前記第2の電圧ステッピングレートより高い[1]記載のPMIC。
[7] 前記第1の電圧ステッピングレートは、おおよそ毎ミリ秒40ミリボルトであり、前記第2の電圧ステッピングレートは、おおよそ毎ミリ秒5ミリボルトである[6]記載のPMIC。
[8] 前記動的スリープしきい値は、おおよそ3.5ボルトである[1]記載のPMIC。
[9] 前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給するように構成されている第2の電力レギュレータをさらに具備し、
前記制御論理回路は、前記動的スリープしきい値とは無関係に前記第2の電力レギュレータを制御するように構成されている[1]記載のPMIC。
[10] 方法において、
デバイスがスリープ動作モードに移行することに応答して、第1の電力レギュレータに給電するバッテリーに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、前記デバイス用の第1の電圧レールに対する第1の電力レギュレータをシャットオフすることと、
前記デバイスが前記スリープ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、前記第1の電力レギュレータを駆動して、前記第1の電圧レールにソース供給することとを含む方法。
[11] 第1の電力レギュレータをシャットオフすることは、リニアドロップアウトレギュレータをシャットオフすることを含む[10]記載の方法。
[12] 前記電力レギュレータを駆動することは、前記電力レギュレータを駆動して、前記デバイスに対するアクティブ動作モード電圧より低い電圧を前記電圧レールにソース供給することを含む[10]記載の方法。
[13] 前記デバイスが前記スリープモードからアクティブ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より高いとき、第1の電圧ステッピングレートにしたがって、前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給することとをさらに含む[12]記載の方法。
[14] 前記デバイスが前記スリープモードから前記アクティブ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、第2の電圧ステッピングレートにしたがって、前記デバイスに対する第2の電力レールにソース供給することとをさらに含み、
前記第2の電圧ステッピングレートは、前記第1の電圧ステッピングレートより低い[13]記載の方法。
[15] 前記デバイスは、セルラ電話機であり、
前記方法は、
前記セルラ電話機が前記スリープ動作モードに移行することに応答して、前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、第2の電圧レールに対する第2の電力レギュレータをシャットオフすることをさらに含み、
前記第2の電圧レールは、音声通話をサポートするために不可欠ではない前記セルラ電話機中の回路に給電し、
前記第1の電圧レールは、音声通話をサポートするために不可欠である前記セルラ電話機中の回路に給電する[10]記載の方法。
[16] システムにおいて、
バッテリーと、
第1の電力レールによって給電される少なくとも第1の電力ドメインを含むシステムオンチップ(SOC)と、
前記バッテリーに対するバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高いとき、前記SOCに対するスリープモードの間、前記第1の電力レールが急減されるように、および、
前記バッテリー電圧が前記動的スリープしきい値電圧より低いとき、前記SOCに対する前記スリープモードの間、前記第1の電力レールがソース供給されるように、
前記第1の電力レールを管理する手段とを具備するシステム。
[17] 前記SOCは、第2の電力レールによって給電される第2の電力ドメインをさらに備え、
前記第1の電力レールを管理する手段は、前記動的スリープしきい値電圧に関する前記バッテリー電圧の大きさにかかわらず、前記SOCに対する前記スリープモードの間、前記第2の電力レールを急減させるように、前記第2の電力レールを管理するようにさらに構成されている[16]記載のシステム。
[18] 前記SOCは、前記バッテリー電圧がカットオフしきい値電圧より低い場合、シャットダウンするように構成されている[16]記載のシステム。
[19] 前記カットオフしきい値電圧は、おおよそ3.4ボルトであり、前記動的スリープしきい値は、おおよそ3.5ボルトである[17]記載のシステム。
[20] 前記システムは、セルラ電話機を具備する[16]記載のシステム。
【要約】
動的スリープしきい値電圧に関して動作する電力管理技術を提供する。デバイスのバッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より高い場合、デバイスに対するスリープモードの間、デバイスに対する電圧レールは急減する。逆に、バッテリー電圧が動的スリープしきい値電圧より低い場合、デバイスに対するスリープモードの間、電圧レールはソース供給される。
【選択図】
図1