特許第6203989号(P6203989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6203989
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】立体像結像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20170914BHJP
   G03B 35/18 20060101ALI20170914BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G02B27/22
   G03B35/18
   B29C45/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-530351(P2017-530351)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2017012622
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/005727
(32)【優先日】2017年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-13351(P2017-13351)
(32)【優先日】2017年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−247459(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/131128(WO,A1)
【文献】 特許第5820955(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/007887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22 − 27/26
G03B 35/18
G02B 5/12 − 5/136
B45C 45/00 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群をそれぞれ備える第1、第2の光制御パネルを、前記帯状光反射面群を平面視して直交させて重ね合わせる立体像結像装置の製造方法において、
前記第1、第2の光制御パネルは、
透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された第1の透明樹脂からなる成型母材をプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造する第1工程と、
前記溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成する第2工程とを有して形成され、
前記第2工程を行った後、前記溝内に第2の透明樹脂を充填し、前記第1、第2の光制御パネルの表側を合わせて重ね合わせる工程を有し、
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から該傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
更に、前記成型母材に用いた前記第1の透明樹脂の屈折率η1に対し、前記溝内に充填される前記第2の透明樹脂の屈折率η2が0.95〜1.05倍の範囲にあることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項2】
立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群をそれぞれ備える第1、第2の光制御パネルを、前記帯状光反射面群を平面視して直交させて重ね合わせる立体像結像装置の製造方法において、
前記第1、第2の光制御パネルは、
透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された第1の透明樹脂からなる成型母材をプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造する第1工程と、
前記溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成する第2工程とを有して形成され、
前記第2工程を行った後、前記溝内に第2の透明樹脂を充填し、1)前記第1、第2の光制御パネルの表側と裏側を合わせて、又は2)前記第1、第2の光制御パネルの裏側を合わせて、前記第1、第2の光制御パネルの前記帯状光反射面群が直交するようにして重ね合わせ
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から該傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
更に、前記成型母材に用いた前記第1の透明樹脂の屈折率η1に対し、前記溝内に充填される前記第2の透明樹脂の屈折率η2が0.95〜1.05倍の範囲にあることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の立体像結像装置の製造方法において、前記傾斜面は平面又は内側に窪む凹面であることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体像結像装置の製造方法において、前記溝の断面三角形の角部及び前記凸条の断面三角形の角部には、それぞれ微小平面部が形成されていることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項5】
透明板材の両側に垂直面と傾斜面を有する断面三角形の第1、第2の溝、及び隣り合う前記第1、第2の溝によって形成される断面三角形の第1、第2の凸条がそれぞれ形成され、かつ前記透明板材の両側にそれぞれ形成された前記第1、第2の溝が平面視して直交して配置される第1の透明樹脂からなる成型母材を、プレス成型、インジェクション成型、又はロール成型によって製造する第1工程と、
前記成型母材の両側にある前記第1、第2の溝の前記垂直面に、選択的に鏡面を形成する第2工程と、
前記第2工程を行った後、前記第1、第2の溝に第2の透明樹脂を充填する第3工程とを有し、
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から前記傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
かつ前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.95〜1.05倍の範囲にあることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の立体像結像装置の製造方法において、前記傾斜面は平面又は内側に窪む凹面であることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の立体像結像装置の製造方法において、前記第1、第2の溝の断面三角形の角部及び前記第1、第2の凸条の断面三角形の角部には、それぞれ微小平面部が形成されていることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体像結像装置の製造方法において、前記成型母材は、成型後、残留応力を除去するためのアニーリング処理が行われていることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の光反射面(鏡面)が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネル(平行光反射パネル)を、それぞれの光反射面が平面視して交差した状態で重合させた立体像結像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1に記載の立体像結像装置(光学結像装置)がある。
この結像装置は、2枚の透明平板の内部に、この透明平板の厚み方向に渡って垂直に多数かつ帯状で、金属反射面からなる光反射面を一定のピッチで並べて形成した第1、第2の光制御パネルを有し、この第1、第2の光制御パネルのそれぞれの光反射面が直交するように、第1、第2の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/131128号公報
【特許文献2】国際公開第2015/033645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した第1、第2の光制御パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板(以下、「透明板」ともいう)を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出している。
このため、透明板に金属反射面を形成する作業において大型の蒸着炉を必要とし、しかも、1枚又は少数枚の透明板を蒸着炉に入れて脱気して高真空にした後、蒸着処理を行い、大気圧に開放して蒸着した透明板を取り出すという作業を百回以上繰り返す必要があり、極めて手間と時間のかかる作業であった。また、金属蒸着された透明板を積層して積層体を形成し、極めて薄い所定厚で切断する作業を行って、この積層体から第1、第2の光制御パネルを切り出し、更にこれら第1、第2の光制御パネルの切り出し面(両面)の研磨作業等を行う必要があるため、作業性や製造効率が悪かった。
【0005】
そこで、特許文献2のように、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成され、この溝の対向する平行な側面に光反射部が形成された凹凸板材を備えた光制御パネルを2つ用意し、この2つの光制御パネルを、それぞれの光反射部を直交又は交差させた状態で向い合わせる方法が提案されている。
しかしながら、インジェクション成型時に、凹凸板材の土手の高さを高くすると(即ち、溝の深さを深くすると)脱型が極めて困難となるという問題があった。更に、平行溝の側面を鏡面化するのは、特許文献2の技術を使用しても難しく、製品にバラツキが多いという問題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、第1、第2の光制御パネルの製造及びこれらを一体化した立体像結像装置本体の製造が容易でより鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群をそれぞれ備える第1、第2の光制御パネルを、前記帯状光反射面群を平面視して直交させて重ね合わせる立体像結像装置の製造方法において、
前記第1、第2の光制御パネルは、
透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された第1の透明樹脂からなる成型母材をプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造する第1工程と、
前記溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成する第2工程とを有して形成され、
前記第2工程を行った後、前記溝内に第2の透明樹脂を充填し、前記第1、第2の光制御パネルの表側を合わせて重ね合わせる工程を有し、
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から該傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
更に、前記成型母材に用いた前記第1の透明樹脂の屈折率η1に対し、前記溝内に充填される前記第2の透明樹脂の屈折率η2が0.95〜1.05倍の範囲にある。
【0008】
また、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群をそれぞれ備える第1、第2の光制御パネルを、前記帯状光反射面群を平面視して直交させて重ね合わせる立体像結像装置の製造方法において、
前記第1、第2の光制御パネルは、
透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された第1の透明樹脂からなる成型母材をプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造する第1工程と、
前記溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成する第2工程とを有して形成され、
前記第2工程を行った後、前記溝内に第2の透明樹脂を充填し、1)前記第1、第2の光制御パネルの表側と裏側を合わせて、又は2)前記第1、第2の光制御パネルの裏側を合わせて、前記第1、第2の光制御パネルの前記帯状光反射面群が直交するようにして重ね合わせ
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から該傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
更に、前記成型母材に用いた前記第1の透明樹脂の屈折率η1に対し、前記溝内に充填される前記第2の透明樹脂の屈折率η2が0.95〜1.05倍の範囲にある。
第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、前記第2工程での鏡面の形成が、前記傾斜面に沿った方向から該傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行うので、溝の傾斜面に鏡面が形成されるのを極力防止し、溝の垂直面に選択的に鏡面を形成することが可能となる。
【0009】
第3の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記傾斜面は平面又は内側に窪む凹面である。これによって、溝の傾斜面に鏡面が形成されるのを更に防止し、溝の垂直面に選択的に鏡面を形成することが可能となる。
【0010】
第4の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第1〜第3の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記溝の断面三角形の角部及び前記凸条の断面三角形の角部には、それぞれ微小平面部が形成されている。これによって、金型成型の寸法精度が向上し、製造過程での疵の発生を防止できる。
【0011】
第1の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第1、第2の光制御パネルを、鏡面が形成された側が向かい合うようにして重ね合わさっているので、第1、第2の光制御パネルの帯状光反射面群(鏡面)が近づき、対象物からの光の集光度合いが向上し、より鮮明な画像を得ることができる。
【0012】
第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記第1の透明樹脂の屈折率η1に対し、前記溝内に充填される第2の透明樹脂の屈折率η2が、η1=η2であるのがよい。
【0013】
第5の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、透明板材の両側(即ち、一側及び他側)に垂直面と傾斜面を有する断面三角形の第1、第2の溝、及び隣り合う前記第1、第2の溝によって形成される断面三角形の第1、第2の凸条がそれぞれ形成され、かつ前記透明板材の両側にそれぞれ形成された前記第1、第2の溝が平面視して直交して配置される第1の透明樹脂からなる成型母材を、プレス成型、インジェクション成型、又はロール成型によって製造する第1工程と、
前記成型母材の両側にある前記第1、第2の溝の前記垂直面に、選択的に鏡面を形成する第2工程と(これによって立体像結像装置本体を造る)、
前記第2工程を行った後、前記第1、第2の溝に第2の透明樹脂を充填する第3工程とを有し、
前記第2工程での鏡面の形成は、前記傾斜面に沿った方向から前記傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行い、
かつ前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.95〜1.05倍の範囲にある。
【0014】
第5の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、前記第2工程での鏡面の形成が、前記傾斜面に沿った方向から前記傾斜面が影になるようにして、前記垂直面に向けてスパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射をすることにより行われるので、溝の傾斜面に鏡面が形成されるのを極力防止し、溝の垂直面に選択的に鏡面を形成することが可能となる。
【0015】
第6の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第5の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記傾斜面は平面又は内側に窪む凹面である。これによって、溝の傾斜面に鏡面が形成されるのを更に防止し、溝の垂直面に選択的に鏡面を形成することが可能となる。
【0016】
第7の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第5、第6の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記第1、第2の溝の断面三角形の角部及び前記第1、第2の凸条の断面三角形の角部には、それぞれ微小平面部が形成されている。これによって、金型成型の寸法精度が向上し、製造過程での疵の発生を防止できる。
第8の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、第1〜第7の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記成型母材は、成型後、残留応力を除去するためのアニーリング処理が行われている。これによって、より変形の少ない立体像結像装置を製造できる。
【0017】
ここで、前記第2工程を行った後、前記第1、第2の溝には第2の透明樹脂が充填され、更にその表面の平板化処理が行われるのが好ましい。
【0018】
【0019】
以上の製造方法によって製造された立体像結像装置は、透明板材の一側及び他側(即ち、両側)にそれぞれ、垂直面と傾斜面を有する断面三角形の第1、第2の溝と、該第1、第2の溝によって形成される第1、第2の凸条を有する第1の透明樹脂からなる成型母材と、
前記成型母材の前記第1、第2の溝の垂直面に形成された垂直光反射面と、
前記第1、第2の溝内に充填された第2の透明樹脂とを有し、
前記第1の溝に形成された前記垂直光反射面と、前記第2の溝に形成された前記垂直光反射面とは平面視して直交し、かつ前記第2の透明樹脂の露出面は平面となっており、
しかも前記第1、第2の溝の底部及び前記第1、第2の凸条の頂部には微小平面部が設けられ、かつ、前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.8〜1.2(より好ましくは、0.95〜1.05)倍の範囲である。
【0020】
この立体像結像装置において、前記傾斜面は平面又は内側に窪む凹面であることが好ましい。
【0021】
特に、この立体像結像装置において、前記第2の透明樹脂の屈折率η2と、前記第1の透明樹脂の屈折率η1は、η1=η2であるのがよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る立体像結像装置の製造方法は、プレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造された成型母材を使用し、平行に多数形成された溝が傾斜面と垂直面を有し、溝の開放側に広くなるので、押型又は脱型が容易となり、(溝の高さ)/(溝の幅)で定義されるアスペクト比の比較的高い立体像結像装置を比較的安価に製造できる。
ここで、スパッターリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を行って、垂直面に選択的に金属被膜を形成できる。
更に、傾斜面を平面、更に内側に窪む凹面にすることで、溝の傾斜面に鏡面が形成されるのを極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ同立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
図3】(A)は同立体像結像装置の成型母材の部分拡大側面図、(B)、(C)はそれぞれ変形例に係る成型母材の凸条の部分拡大側面図である。
図4】(A)〜(D)は同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図5】(A)、(B)は本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置及びその製造方法の説明図である。
図6】立体像結像装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
続いて、本発明の実施例に係る立体像結像装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)、(B)、図2(A)、(B)に示すように、それぞれ本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置10は、上下対となる第1、第2の光制御パネル(平行光反射パネル)11を有している。なお、第1、第2の光制御パネル11は同一の構成を有しているので、同一の番号を付与する。
図1図2に示すように、第1、第2の光制御パネル11は、透明板材12の片側(表側)に(第1の光制御パネル11では下部に、第2の光制御パネル11では上部に)、垂直光反射面13(鏡面)及び傾斜面(非光反射面であって光透過面とするのが好ましい)14を有する断面三角形の溝15及び溝15間に形成される断面三角形の凸条16を備えている。第1、第2の光制御パネル11の溝15及び凸条16はそれぞれ一定のピッチで平行に多数設けられている。従って、第1、第2の光制御パネル11はそれぞれ、立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群を有している。
【0025】
溝15の内部には、透明樹脂17が充填され、充填面18はそれぞれ第1、第2の光制御パネル11(例えば透明板材12)の裏側の表面19と平行となっている。第1、第2の光制御パネル11は、それぞれの垂直光反射面13を平面視して直交(又は例えば、85〜95度、より好ましくは88〜92度の範囲で交差)させた状態で、第1、第2の光制御パネル11の表側の表面31(図4参照)を当接、又は近接させて配置しておく。第1、第2の光制御パネル11は、例えば、透明な接着剤(樹脂)を介して接合され、一体化されている。
【0026】
この実施例においては、第1、第2の光制御パネル11の形状を構成する透明樹脂と溝15に充填する透明樹脂17は同一の樹脂であることが好ましいが、異なる種類の透明樹脂であってもよい。なお、異なる種類の透明樹脂を使用する場合は、屈折率(η)が同一又は近似しているのが好ましい。即ち、異なる屈折率の透明樹脂を使用する場合は、第1、第2の光制御パネル11の形状(透明板材12)を構成する透明樹脂の屈折率(η1)と同一又は略等しい屈折率(η2、例えば±20%の範囲、即ち(0.8〜1.2)×η1の範囲、より好ましくは(0.95〜1.05)×η1)のものを、溝に充填する透明樹脂として使用するのが好ましい(以下の実施例においても同じ)。
【0027】
なお、図1(A)、(B)において第1、第2の光制御パネル11は、例えば、h2/h1は0.5〜5であるのが好ましい。ここで、h1を透明板材12の厚み、h2を凸条16(即ち、垂直光反射面13)の高さとすると、(h1+h2)は0.5〜5mmの範囲、でh1は例えば0.03mm以上であるのが実用的であるが、本発明はこの数値に限定されない。また、垂直光反射面13と傾斜面14との角度θ1は15〜60度の範囲が好ましいが、h1、h2に応じて変えることができる。なお、溝15の幅(ピッチ)wと垂直光反射面13の高さh2の比であるアスペクト比(h2/w)は0.8〜5(より好ましくは2〜3.5)程度とするのが好ましく、これによってより高さの大きい垂直光反射面13を得ることができる。
【0028】
また、断面三角形の鋭角をなす溝15の角部(底部)、及び断面三角形の鋭角をなす凸条16の角部(頂部)には微小平面部20、21が設けられている。この微小平面部20、21の幅は、前記した断面三角形の溝15、凸条16の底辺の幅(w)の0.02〜0.2倍程度が好ましい。また、各微小平面部20、21の幅は同一であっても異なってもよい。微小平面部20、21を設けることによって、製品に疵が付き難くなり、更に製品の精度が上がる。なお、この実施例においては、微小平面部20、21の幅は小さいので無視して、溝15及び凸条16の断面を断面三角形として説明する(以下の実施例においても同じ)。
【0029】
更に、垂直光反射面13は、透明樹脂で形成される成型母材(後述する)22の垂直面23に選択的に鏡面処理を行って形成する(図3(A)参照)。鏡面処理は一般的には、金属蒸着、スパッターリング、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームを当てること(以下、これらを「スパッターリング等」と称する場合もある)によって選択的に行う。傾斜面14は透明な成型母材22のままでよく、図3(A)に示すように、光透過性のよい均一な平面を有している。
このように、傾斜面14は平面であるが、図3(B)、(C)に示すように、断面が内側に窪む凹面24、25、並びに、断面が多角形の一部を用いた凹面であっても、本発明の傾斜面に含まれる。本発明においては、断面が直線、又はこの直線より内側にあって、凸条の頂部から溝の底部までが平均的に下り勾配となる面を傾斜面としている(以下の実施例においても同じ)。
【0030】
図3(B)に示す凹面24は、2つの平面26、27で構成され、2つの平面26と平面27とのなす角θ2が、180度未満(例えば、120〜175度、好ましくは、下限が150度、上限が170度)となるように、構成されている。なお、ここでは、凹面24を2つの平面26、27で構成したが、3つ以上の複数の平面で構成することもでき、この場合、隣接する平面のなす角は、同一でもよいが異なってもよい。
図3(C)に示す凹面25は、断面湾曲又は円弧状の曲面で構成されている。
なお、凹面は、上記した形状に限定されるものではなく、平面と曲面を組み合わせて構成することもできる。
これにより、図3(A)に示すように平面状の傾斜面14の断面傾斜角度θ1と、同一角度、又は、角度θ1を超える角度(例えば1〜10度)で、傾斜面14に沿って、垂直面23にスパッターリング等することで、凹面24、25に鏡面が形成されるのを防止できる。このため、凹面24、25の傾斜面14に対する窪み量は、スパッターリング等の条件に応じて種々変更できる。
【0031】
これによって、図1(A)、(B)において、立体像結像装置10の左下側から斜めに入光した対象物からの光L1、L2は、下側の垂直光反射面13のP1、P2で反射し、更に上側の垂直光反射面13のQ1、Q2で反射して、立体像結像装置10の一側(上側)に立体像を形成する。なお、この実施例においては、鏡面処理によって垂直面23に形成された金属反射膜(金属被膜)28の表側(図1では左側)を第1、第2の光制御パネル11の垂直光反射面13として使用したが、図2(A)、(B)に示すように、金属反射膜28の裏側(図2では右側)を垂直光反射面13として使用することもできる。
【0032】
即ち、図2に示すように、立体像結像装置10の右斜め下から入光した対象物からの光L3、L4は、R1、S1で透明板材12に入光し、下側の垂直光反射面13のR2、S2で反射し、更に上側の垂直光反射面13のR3、S3で反射して、透明板材12のR4、S4から出光して立体像結像装置10の上側(一側)に立体像を形成する。
また、この立体像結像装置10の動作において、空気中から透明板材12へ入光する場合、及び透明板材12から空気中に出光する場合に光の屈折現象、場合によって全反射現象を起こすので、これらを考慮してこの立体像結像装置10を使用する必要がある(以下の実施例においても同じ)。なお、傾斜面14はそのまま光通過面となる。
【0033】
以上の立体像結像装置10において、凸条及びその間の溝を断面矩形とすることも可能であるが、縦横(縦/横)の比が1.5以上になると製造(特に脱型)が困難となる。この実施例においては、凸条16の間に形成される溝15が奥側に幅狭となる断面三角形状となっているので、射出成型で成型母材22を製造することが容易となる。
【0034】
続いて、この立体像結像装置10の製造方法について、図4(A)〜(D)を参照しながら説明するが、第2の光制御パネル11の製造方法と、第1の光制御パネル11の製造方法は同一であるので、第1の光制御パネル11の製造方法を主として説明する。
図4(A)に示すように、透明板材12の一側(表側)に、垂直面23と傾斜面14を有する断面三角形の溝15、及び隣り合う溝15によって形成される断面三角形の凸条16がそれぞれ平行配置された成型母材22をプレス成型、インジェクション成型、及び、ロール成型のいずれか1によって製造する。
【0035】
この場合、成型母材22の材質としては、ポリメチルメタクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、COP、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂を使用するのが好ましい。成型母材22の寸法については光制御パネル11の寸法と略同じであるが、前述の通り、溝15の部分が外広がりのテーパーになっているので、脱型性はよく、長尺の垂直面を容易に得ることができる。なお、成型母材22は成型時に発生した残留応力を除去するためのアニーリング処理を行う。アニーリング処理は、例えば成型母材22を電気炉や熱風乾燥器又は熱水槽(加熱溶媒)に所定時間入れることによって行う(以下の実施例においても同じ。以上、第1工程)。
【0036】
次に、図4(B)に示す方法、例えばスパッターリングによって垂直面23のみを選択的に鏡面(垂直光反射面13)にする。ここで、スパッターリングとは、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、ターゲットにマイナスの電圧を印加してグロー放電を起こさせ、不活性ガス原子をイオン化し、(又はイオン化しない原子状態で)、高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させ、ターゲットを構成する成膜材料(例えば、アルミニウム、銀、ニッケル等)の金属粒子を弾き出し、勢いよく基材(この場合は、垂直面23)に付着、堆積させる技術である。ガスの流れ29を傾斜面14に沿って、かつ傾斜面14が影になるようにして、垂直面23に向けてスパッターリング(金属粒噴射も含む)を行うと、傾斜面14には成膜材料が付着し難く、垂直面23にのみ付着する。傾斜面14の角度θ1が小さい程、また、図3(B)、(C)に示した凹面24、25を採用する程、選択的付着効率がよい。これによって、垂直面23の表面に金属反射膜(金属被膜)28が形成され、垂直光反射面13となり、中間母材30となる。なお、凹面を有する凸条の形成は容易である。
【0037】
垂直面23に選択的に鏡面形成をする他の方法として、全ての傾斜面14をマスクで覆い、垂直面23のみに金属蒸着(PVD又はCVD)する方法、金属蒸着において金属粒子を磁場で加速する方法がある。また、傾斜面14のみに後工程で除去可能な塗膜処理を行い、垂直面14及び塗膜面に金属蒸着、スパッターリング、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を行い、塗膜面を除去して、透明な傾斜面14を露出させる方法もある。なお、塗膜面としては、1)薬剤(溶剤)によって除去可能、2)紫外線を背面から照射することによって除去可能、3)成型母材が変形しない温度に加熱することによって除去可能なものを選択することができる(以上、第2工程)。
【0038】
そして、図4(C)に示すように、真空状態で透明樹脂17を中間母材30の溝15内に充填し、充填面18を平面化処理して表面(上面)31を形成する。この場合の溝15内に投入する透明樹脂17は成型母材22の材質と同じ、又は屈折率が近いものを使用するのが好ましい。表面31の位置は微小平面部21に合わせてもよい。これによって、第1の光制御パネル11が完成する。なお、第2の光制御パネル11も第1の光制御パネル11と同一の構成又は工程となる。
【0039】
この後、図4(D)に示すように、第1、第2の光制御パネル11を凸条16が形成されている側(一側、表側)が向かい合って当接又は近接するようにし、かつ第1、第2の光制御パネル11の垂直光反射面13が平面視して直交又は交差(例えば88〜92度の範囲で)するようにして、両者の表面31を真空中で接合する。第1、第2の光制御パネル11の凸条16の微小平面部21の間隔Cは、例えば、0を超え5mm以下程度である。これによって、立体像結像装置10が完成する。なお、この実施例において、第1、第2の光制御パネル11の凸条16側を当接又は近接させるようにして第1、第2の光制御パネル11を接合したが、双方の透明板材12(裏側)を当接させるようにしてもよく、また、第1の光制御パネル11の凸条16側と第2の光制御パネル11の透明板材12(逆でもよい)を当接させるようにして、立体像結像装置を構成することもできる(以上、第3工程)。
【0040】
次に、図5(A)、(B)を参照しながら、本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置40及びその製造方法について説明する。第1の実施例に係る立体像結像装置10においては、第1、第2の光制御パネル11を別々に製造して、これらを重ね合わせて形成した。しかしながら、この立体像結像装置40は透明板材41の表裏面(両側面)に形成される溝42、43及び凸条44、45を、金型によって一体成型している。
【0041】
この立体像結像装置40は、中央に位置する透明板材(厚みh3)41の一側に、垂直面46と傾斜面47を有する断面三角形の溝42(第1の溝)及び隣り合う溝42によって形成される断面三角形の凸条44(第1の凸条)がそれぞれ平行配置されている。そして、透明板材41の他側に、垂直面48と傾斜面49を有する断面三角形の溝43(第2の溝)及び隣り合う溝43によって形成される断面三角形の凸条45(第2の凸条)がそれぞれ平行配置されている。そして、透明板材41の一側に形成された溝42と透明板材41の他側に形成された溝43が平面視して直交、又は例えば85〜95度、好ましくは88〜92度の角度で交差した成型母材50をプレス成型、インジェクション成型、及び、ロール成型のいずれか1によって製造する。この成型母材50は第1の実施例に係る成型母材22と同様、透明樹脂(第1の透明樹脂)によって形成されている。
【0042】
断面三角形の溝42、43の底部(角部)及び凸条44、45の頂部(角部)には前記した立体像結像装置10と同様、微小平面部(図示せず)を有する。また、成型母材50の材質や製法及び仕様(寸法h2、θ1)については、立体像結像装置10と同様である。但し、この実施例において、透明板材41の厚み(h3)は透明板材12の厚み(h1)の2倍となる(以上、第1工程)。
【0043】
そして、透明板材41の両側にある溝42、43の垂直面46、48にのみ、前述のように、金属蒸着、スパッターリング、場合によって金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射によって鏡面処理を行い鏡面である垂直光反射面51、52を選択的に形成する(中間母材。以上、第2工程)。この中間母材の溝42、43には透明樹脂53、54(第2の透明樹脂)を充填し、その表面の平面化処理を行って、露出面が平面となった第1、第2の光制御パネルが表裏に形成された平面板状の立体像結像装置40とする(以上、第3工程)。
溝42、43の垂直面46、48にのみ鏡面を形成する処理は、前記した実施例と同様、成型母材50の表裏面に順次又は同時に金属蒸着又はスパッターリングを行う等の方法がある。
【0044】
図6は平面視した立体像結像装置10(立体像結像装置40も同様)を示すが、垂直光反射面13が平面視して矩形の外枠55に対して40〜50度の角度を有して配置されている。これによって、立体像は、平面視して直交又は交差して配置された上下の垂直光反射面13を経由して形成されるので、小型の立体像結像装置を有効に利用して、より大きな立体像を結像することができる。
【0045】
本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、それぞれの実施例に係る立体像結像装置の要素、又は製造方法を組み合わせて、立体像結像装置を構成する場合、又は製造する場合も本発明は適用される。なお、以上の実施例では、垂直光反射面(鏡面)は金属被膜の両側に形成される。
以上の発明において、平面化処理はプレス等で押す場合、金型で成型する場合の他、切削又は研磨により形成する場合も含む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置は、アスペクト比の比較的高い立体像結像装置を容易にかつ安価に製造できる。これによって、立体像結像装置を、映像を必要とする機器(例えば、医療機器、家庭電気製品、自動車、航空機、船舶等)で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
10:立体像結像装置、11:第1、第2の光制御パネル、12:透明板材、13:垂直光反射面、14:傾斜面、15:溝、16:凸条、17:透明樹脂、18:充填面、19:表面、20、21:微小平面部、22:成型母材、23:垂直面、24、25:凹面(傾斜面)、26、27:平面、28:金属反射膜、29:ガスの流れ、30:中間母材、31:表面、40:立体像結像装置、41:透明板材、42、43:溝、44、45:凸条、46:垂直面、47:傾斜面、48:垂直面、49:傾斜面、50:成型母材、51、52:垂直光反射面、53、54:透明樹脂、55:外枠
【要約】
第1、第2の光制御パネル11は、透明板材12の表側に、傾斜面14と垂直面23とを有する断面三角形の溝15、及び隣り合う溝15によって形成される断面三角形の凸条16がそれぞれ平行配置された透明樹脂からなる成型母材22をプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造し、溝15の垂直面23のみに選択的に鏡面13を形成して製造され、立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群を備える第1、第2の光制御パネル11を、帯状光反射面群を平面視して交差させて重合する。これによって、第1、第2の光制御パネルの製造が容易でより鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6