【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法のように、編地の表面に樹脂を塗布する方法では、樹脂によって付与された滑り防止機能は十分なものであるが、樹脂皮膜を形成することによって、編地の厚みが増し、また、樹脂皮膜によって編地の表面が覆われることで、編地本来の通気性が損なわれるという問題がある。更に、長期間の使用や、高温化における使用、洗濯の繰り返しなどによって、樹脂皮膜が劣化する、或いは、樹脂皮膜自体が編地から剥離すると、滑り防止機能が損なわれるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2に開示された方法のように、弾性繊維のような摩擦係数の高い繊維を編み糸に使用する方法には、以下に述べるような種々の問題がある。
【0009】
即ち、上述したように、弾性繊維のループを大きくして、当該弾性繊維をニードルループ面に露出させると、編地が嵩高くなり、美観も悪化するといった問題がある。また、編地中のニードルループが不均一になることにより、編地に歪を生じて、編地全体がカールするという問題も生じ、更に、編地中の編み糸の一部が欠損して伝線が発生する、或いは、ループが解除されることによってほつれを生じるといったことも起こりやすく、これによって、美観が損なわれるとともに、滑り防止機能が低下するという問題もある。
【0010】
また、編地の歪みやカールを解消するためには、テンター等を用いて、幅を安定させる、或いは、カールを無くすといった後加工を行わなければならず、このため、テンター等を用いて後加工できる程度に、幅広の状態で編地を編成しなければならない、言い換えれば、幅の狭い編地が必要とされる場合であっても、これに応じた幅で編成することができないため、ロスが大きくなるという問題もある。この意味で、多品種小ロット化への対応が困難であった。
【0011】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、滑り防止機能を具備し、伝線やほつれの発生を抑えた上で、任意の幅に編成することができ、且つ美観に優れた編地及びこの編地の製造方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための
参考態様は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される編地であって、
前記編地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含み、
前記熱融着弾性糸は、自体の交絡部において、その少なくとも一部が融着した編地に係り、
この編地は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される編地であって、該編地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含む編地を編成する工程と、
前記編地を熱セットして、前記熱融着弾性糸同士の交絡部のうち、その少なくとも一部を熱融着させる工程とを含む製造方法によって製造される。
【0013】
この編地によれば、その少なくとも一部分において、前記編み糸として摩擦係数の高い熱融着弾性糸を含み、この熱融着弾性糸がループ(所謂、ニードルループ部)として編地表面に現れるので、かかる熱融着弾性糸によって、滑り防止機能が発現される。
【0014】
そして、この熱融着弾性糸は、一定のループを連ねた状態で編成される、自体の絡み合い部、例えば、所謂、シンカーループ部において、少なくともその一部が融着しているので、この融着によって、ループの解舒が防止され、ほつれの発生や、編み糸の一部の欠損に起因した伝線の発生を抑えることができる。尚、「交絡部」とは、編み糸同士が交差している部分や重なっている部分を指す。
【0015】
また、
上記課題を解決するための本発明は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結された
経編地であって、
前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結節されており、
前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含み、
前記熱融着弾性糸は、自体の交絡部において、その少なくとも一部が融着した
経編地に係り、
この
経編地は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結される
経編地であって、
前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結接されており、前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含む
経編地を編成する工程と、
前記
経編地を熱セットして、前記熱融着弾性糸同士の交絡部のうち、その少なくとも一部を熱融着させる工程とを含む製造方法によって製造される。
【0016】
この
経編地によれば、上述した編地と同様に、その少なくとも一部分において、編み糸として摩擦係数の高い熱融着弾性糸を含んでいるので、滑り防止機能が発現され、また、熱融着弾性糸の交絡部の少なくとも一部が融着しているので、ループの解舒が防止され、ほつれの発生や、編み糸の一部の欠損に起因した伝線の発生を抑えることができる。
【0017】
さらに、編地表面に現れるニードルループが一定のループとして、表生地及び裏生地に等しく形成されるので、編地に歪みが生じにくく、また、カールしにくいものとなっている。したがって、従来のような、テンター等を用いた後加工を行う必要がなく、所望の任意の幅の
経編地を編成することができ、多品種小ロット化に容易に対応することができる。
【0018】
また、熱融着弾性糸が自体の交絡部でのみ融着するため、この
経編地は、従来のように編地の表面に樹脂皮膜を形成するのとは異なり、良好な通気性を確保した上で、優れた滑り防止効果を発揮する。
【0019】
更に、この
経編地は、ニードルループを当該表生地と裏生地とに等しく形成するようにしており、編地の表面に大きなループが形成されることもないため、編地の厚みを薄くすることができるとともに、美観も優れたものとなる。
【0020】
尚、本発明において、前記熱融着弾性糸は、
経編地の一部領域又は全域に用いられるが、この場合において、熱融着弾性糸と熱融着性を有しない弾性糸とを引き揃えた状態で編み糸として用いるなど、編み糸に少なくとも熱融着弾性糸を含んだ状態で編成される。当然のことながら、ループを構成する編み糸に熱融着弾性糸のみを用いても良い。
【0021】
また、熱融着弾性糸以外の糸を編み糸とする場合に、当該編み糸として何ら制限はなく、フィラメント糸、紡績糸の別なく使用することができ、その材質についても、ナイロン,レーヨンといった合成繊維や天然繊維など、何ら制限はない。
【0022】
また、表生地と裏生地から編地を構成する場合において、前記熱融着弾性糸は、表生地及び裏生地の内、少なくとも一方に含まれていれば良いが、両方の生地に含まれていても良い。この場合、表裏両面に滑り防止機能を具備した編地となる。
【0023】
また、本発明に係る編地は、経編み
で編成しているが、上記参考態様に係る編地は、緯編
みで編成しても良い。尚、経編みの場合は、例えば、シングルラッシェル編み機、ダブルラッシェル編み機やクロチェット編み機を用いて編成することができ、緯編みの場合は、ジャガード編み機やラーベン編み機などを用いて編成することができる。
【0024】
また、本発明において、その編み組織は、編み立て方向に一定のループを連ねた状態のものであれば、何ら限定されるものではないが、その一例として鎖編みを挙げることができる。