特許第6204031号(P6204031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204031
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】経編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20170914BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   D04B21/18
   D04B21/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-48833(P2013-48833)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-173211(P2014-173211A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】595125100
【氏名又は名称】株式会社ニューニット
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/121424(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/053218(WO,A1)
【文献】 特開2008−190104(JP,A)
【文献】 特開2006−307409(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3142666(JP,U)
【文献】 特開2008−280627(JP,A)
【文献】 特開平04−257353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結された編地であって、
前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結接されており、
前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含み、
前記熱融着弾性糸は、自体の交絡部において、その少なくとも一部が融着していることを特徴とする編地。
【請求項2】
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結される編地であって、前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結接されており、前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含む編地を編成する工程と、
前記編地を熱セットして、前記熱融着弾性糸同士の交絡部のうち、その少なくとも一部を熱融着させる工程とを含むことを特徴とする編地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り止めシートなどに好適に使用することができる滑り防止機能を備えた編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツウェアなどの衣服を着用して運動すると、衣服がずれ上がる、或いは、ずれ下がるといった問題が生じていた。そこで、この問題を解決するために、シャツの裾やパンツのウエスト部などに滑り止めシートを取り付けることが提案されており、この滑り止めシートは、例えば、編地に滑り防止機能を付与したものが用いられている。
【0003】
ここで、編地などに滑り防止機能を付与する方法として、以下に示すような複数の方法が提案されている。
【0004】
例えば、編地の表面に摩擦係数の高い樹脂などを塗布し、滑り防止機能を付与する方法として、ナイロン系繊維の編物からなる基布の一方の面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂やアクリル系樹脂などからなる樹脂皮膜を形成する方法がある(特開2008−104871号公報)。この方法によれば、高い摩擦係数を有する樹脂皮膜を形成することによって、当該樹脂皮膜が形成された面に滑り防止機能を付与することができる。
【0005】
また、一方で、摩擦係数の高い繊維(弾性繊維など)を編み糸に使用し、滑り防止機能を付与する方法として、例えば、ポリウレタンなどからなる弾性繊維と、ポリエステルなどからなる非弾性繊維とで編地を編成する際に、弾性繊維のループを大きくし、ニードルループ面に露出させることによって、ニードルループ面における弾性繊維の表面占有率を高くする方法が提案されている(特開2008−115511号公報)。このように、ニードルループ面における弾性繊維の表面占有率を高くすることによって、当該ニードルループ面における摩擦抵抗を高くし、高い滑り防止機能を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−104871号公報
【特許文献2】特開2008−115511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法のように、編地の表面に樹脂を塗布する方法では、樹脂によって付与された滑り防止機能は十分なものであるが、樹脂皮膜を形成することによって、編地の厚みが増し、また、樹脂皮膜によって編地の表面が覆われることで、編地本来の通気性が損なわれるという問題がある。更に、長期間の使用や、高温化における使用、洗濯の繰り返しなどによって、樹脂皮膜が劣化する、或いは、樹脂皮膜自体が編地から剥離すると、滑り防止機能が損なわれるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2に開示された方法のように、弾性繊維のような摩擦係数の高い繊維を編み糸に使用する方法には、以下に述べるような種々の問題がある。
【0009】
即ち、上述したように、弾性繊維のループを大きくして、当該弾性繊維をニードルループ面に露出させると、編地が嵩高くなり、美観も悪化するといった問題がある。また、編地中のニードルループが不均一になることにより、編地に歪を生じて、編地全体がカールするという問題も生じ、更に、編地中の編み糸の一部が欠損して伝線が発生する、或いは、ループが解除されることによってほつれを生じるといったことも起こりやすく、これによって、美観が損なわれるとともに、滑り防止機能が低下するという問題もある。
【0010】
また、編地の歪みやカールを解消するためには、テンター等を用いて、幅を安定させる、或いは、カールを無くすといった後加工を行わなければならず、このため、テンター等を用いて後加工できる程度に、幅広の状態で編地を編成しなければならない、言い換えれば、幅の狭い編地が必要とされる場合であっても、これに応じた幅で編成することができないため、ロスが大きくなるという問題もある。この意味で、多品種小ロット化への対応が困難であった。
【0011】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、滑り防止機能を具備し、伝線やほつれの発生を抑えた上で、任意の幅に編成することができ、且つ美観に優れた編地及びこの編地の製造方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための参考態様は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される編地であって、
前記編地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含み、
前記熱融着弾性糸は、自体の交絡部において、その少なくとも一部が融着した編地に係り、
この編地は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される編地であって、該編地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含む編地を編成する工程と、
前記編地を熱セットして、前記熱融着弾性糸同士の交絡部のうち、その少なくとも一部を熱融着させる工程とを含む製造方法によって製造される。
【0013】
この編地によれば、その少なくとも一部分において、前記編み糸として摩擦係数の高い熱融着弾性糸を含み、この熱融着弾性糸がループ(所謂、ニードルループ部)として編地表面に現れるので、かかる熱融着弾性糸によって、滑り防止機能が発現される。
【0014】
そして、この熱融着弾性糸は、一定のループを連ねた状態で編成される、自体の絡み合い部、例えば、所謂、シンカーループ部において、少なくともその一部が融着しているので、この融着によって、ループの解舒が防止され、ほつれの発生や、編み糸の一部の欠損に起因した伝線の発生を抑えることができる。尚、「交絡部」とは、編み糸同士が交差している部分や重なっている部分を指す。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結された編地であって、
前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結節されており、
前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含み、
前記熱融着弾性糸は、自体の交絡部において、その少なくとも一部が融着した編地に係り、
この編地は、
編み糸が編み立て方向に一定のループを連ねた状態で編成される表生地及び裏生地からなり、該表生地と裏生地とが挿入糸によって連結される編地であって、前記表生地のニードルループと前記裏生地のニードルループとが、相互のシンカーループによって結接されており、前記表生地及び裏生地の内、少なくとも一方の生地は、その少なくとも一部分において、前記編み糸として熱融着弾性糸を含む編地を編成する工程と、
前記編地を熱セットして、前記熱融着弾性糸同士の交絡部のうち、その少なくとも一部を熱融着させる工程とを含む製造方法によって製造される。
【0016】
この編地によれば、上述した編地と同様に、その少なくとも一部分において、編み糸として摩擦係数の高い熱融着弾性糸を含んでいるので、滑り防止機能が発現され、また、熱融着弾性糸の交絡部の少なくとも一部が融着しているので、ループの解舒が防止され、ほつれの発生や、編み糸の一部の欠損に起因した伝線の発生を抑えることができる。
【0017】
さらに、編地表面に現れるニードルループが一定のループとして、表生地及び裏生地に等しく形成されるので、編地に歪みが生じにくく、また、カールしにくいものとなっている。したがって、従来のような、テンター等を用いた後加工を行う必要がなく、所望の任意の幅の編地を編成することができ、多品種小ロット化に容易に対応することができる。
【0018】
また、熱融着弾性糸が自体の交絡部でのみ融着するため、この編地は、従来のように編地の表面に樹脂皮膜を形成するのとは異なり、良好な通気性を確保した上で、優れた滑り防止効果を発揮する。
【0019】
更に、この編地は、ニードルループを当該表生地と裏生地とに等しく形成するようにしており、編地の表面に大きなループが形成されることもないため、編地の厚みを薄くすることができるとともに、美観も優れたものとなる。
【0020】
尚、本発明において、前記熱融着弾性糸は、編地の一部領域又は全域に用いられるが、この場合において、熱融着弾性糸と熱融着性を有しない弾性糸とを引き揃えた状態で編み糸として用いるなど、編み糸に少なくとも熱融着弾性糸を含んだ状態で編成される。当然のことながら、ループを構成する編み糸に熱融着弾性糸のみを用いても良い。
【0021】
また、熱融着弾性糸以外の糸を編み糸とする場合に、当該編み糸として何ら制限はなく、フィラメント糸、紡績糸の別なく使用することができ、その材質についても、ナイロン,レーヨンといった合成繊維や天然繊維など、何ら制限はない。
【0022】
また、表生地と裏生地から編地を構成する場合において、前記熱融着弾性糸は、表生地及び裏生地の内、少なくとも一方に含まれていれば良いが、両方の生地に含まれていても良い。この場合、表裏両面に滑り防止機能を具備した編地となる。
【0023】
また、本発明に係る編地は、経編みで編成しているが、上記参考態様に係る編地は、緯編みで編成しても良い。尚、経編みの場合は、例えば、シングルラッシェル編み機、ダブルラッシェル編み機やクロチェット編み機を用いて編成することができ、緯編みの場合は、ジャガード編み機やラーベン編み機などを用いて編成することができる。
【0024】
また、本発明において、その編み組織は、編み立て方向に一定のループを連ねた状態のものであれば、何ら限定されるものではないが、その一例として鎖編みを挙げることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、編み立て方向に一定のループを連ねて編成するとともに、編み糸として熱融着弾性糸を用い、当該熱融着弾性糸同士が交絡している箇所を融着させているので、編地に歪やカールが生じることがなく、任意の幅の編地を編成することができる。また、伝線やほつれの発生を抑えることができ、美観面においても優れた編地となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る経編地を示した図である。
図2】経編地の編成に用いるダブルラッシェル編み機の針床を示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係る経編地の組織図である。
図4】本発明の一実施形態に係る経編地の組織を詳細に示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る経編地の組織を詳細に示した図である。
図6一参考形態に係る緯編地の組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、本例の経編地1は、熱融着弾性糸2aからなる表生地2と、非弾性糸3aからなる裏生地3とが挿入糸4aによって連結された2層構造の編地である。
【0029】
前記熱融着弾性糸2aは、高い摩擦係数を有する素材からなり、所定の温度で熱セットすることによって、当該熱融着弾性糸2a同士が交差した、或いは重なった部分(交絡部)が融着する弾性糸である。尚、この熱融着弾性糸2aとしては、例えば、ポリウレタン弾性糸を例示することができ、本例においては、このポリウレタン弾性糸を採用した。また、非弾性糸3a及び挿入糸4aは、特に限定されるものではないが、ポリエステル糸や、ナイロン糸、レーヨン糸等のフィラメント糸の他、紡績糸などを例示することができ、本例においては、ポリエステル糸を採用した。
【0030】
そして、この経編地1は、図2に示すような2列の針床を有する公知のダブルラッシェル編み機を用いて編成した後、所定の温度で熱セットすることにより製造することができる。
【0031】
具体的には、図3図5に示すように、ダブルラッシェル編み機の表側の針床10において、筬12から供給される熱融着弾性糸2aにより表側鎖編み組織Waを編成する一方、裏側の針床11において、筬13から供給される非弾性糸3aにより裏側鎖編み組織Wbを編成する。この際、両針床10,11の編み目を相互のシンカーループによって結接させるとともに、筬14から供給される挿入糸4aによって、表側鎖編み組織Waと裏側鎖編み組織Wbとを連結するとともに、ウェール方向に隣接するニードルループ列(本例では3列)を当該挿入糸4aによって連結する。また、熱融着弾性糸2aには、所定のテンションをかけた状態で編成する。
【0032】
図2図5において、実線は非弾性糸3a、一点鎖線は熱融着弾性糸2a、破線は挿入糸4aをそれぞれ示しており、図3は、経編地1の組織図であり、同図中のF・Nは表側の針床10を示し、B・Nは裏側の針床11を示す。また、図4は経編地1の組織を詳細に示した図であり、図5は、経編地1の組織をより詳細に示した図である。
【0033】
斯くして、表生地2及び裏生地3は、それぞれ、一定のループ(ニードルループ)を編み立て方向(コース方向)に連ねた鎖編組織の編地として編成され、表の編目(ニードルループ)Wa1と裏の編目(ニードルループ)Wb1とが、相互のシンカーループWa2,Wb2と、ウェール方向に隣接する編目を連結する挿入糸4aとによって密着結合された2層構造の一枚の編地として編成される。この編地では、表生地2と裏生地3とにニードルループが等しく形成される。
【0034】
ついで、上記のようにして編成した編地を、およそ130〜190℃で熱セットすることにより、熱融着弾性糸2a同士の交絡部(図5中の二点鎖線で示した部分D)において、この熱融着弾性糸2a同士を融着させる。
【0035】
このようにして製造された経編地1は、表生地2が摩擦係数の高い熱融着弾性糸2aによって編成され、また、熱融着弾性糸2a同士が交差している箇所Dにおいて、当該熱融着弾性糸2a同士が融着している。
【0036】
斯くして、本例の経編地1は、表生地2の表面に滑り防止機能を具備したものとなり、更に、熱融着弾性糸2a同士が融着しているため、ほつれの発生や、当該熱融着弾性糸2aの一部に欠損が生じたとしても、熱融着弾性糸2aが伝線するのを防止することができる。
【0037】
また、このようにして製造した経編地1は、各ニードルループが一定のループとして、表生地と裏生地とに等しく形成されているため、歪がなく、カールしにくいものとなっている。
【0038】
したがって、従来のような、テンターを用いた後加工を行う必要がなく、所望の任意の幅で編地を編成することができ、多品種小ロット生産に容易に対応することができる。即ち、例えば、様々な異なる柄の編地を低コストで生産することができる。
【0039】
そして、この経編地1は、例えば、所定の大きさのシート状に編成した上で、スポーツウェアのシャツの裾やパンツのウエスト部などに、前記裏生地3とシャツやパンツの生地とを対向させた状態で縫い付けることにより、表生地2の滑り防止機能によって、シャツのずり上がりやパンツのずり下がりを効果的に防止することができる。また、当該経編地1からなるシートを長袖シャツの袖口に縫い付けることによって、袖が捲りあがってしまうのを防止することもできる。
【0040】
更に、この経編地1は、スポーツウェアなどといった衣服の滑り防止以外にも、携帯電話スタンドなどに貼着して、携帯電話がスタンドから滑り落ちるのを防止するといった用途にも用いることができる。
【0041】
因みに、本発明者は、熱融着弾性糸2aとして、日清紡テキスタイル株式会社製のモビロン(登録商標)R(70デニール)、非弾性糸3aとして、東レ株式会社製のポリエステルウーリー糸(75デニール)、挿入糸4aとして、東レ株式会社製のポリエステルウーリー糸(75デニール)を用いて、24ゲージのダブルラッシェル編み機により編地を編成した後、150℃で熱セットすることよって、本発明に係る経編地1を得た。
【0042】
このようにして得られた経編地1は、その表生地2の表面が良好な滑り防止機能を発揮し、美観的にも優れたものであった。また、ほつれも生じず、熱融着弾性糸2aの一部を欠損させても、当該熱融着弾性糸2aの伝線は生じなかった。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は何らこれらに限定されるものではない。
【0044】
例においては、編地を経編みによって編成する態様を示したが、参考態様に係る編地は、例えば、ジャガード編み機を用いて緯編みによって編成するようにしても良い。これについて、図6を参照して説明する。尚、以下の説明においては、熱融着弾性糸22aからなる生地を裏生地、非弾性糸21aからなる生地を表生地とする。また、図6は、緯編みによって編地を編成する過程を説明するための図であり、図中Kはゴム編みを示し、Tはタック編みを示している。
【0045】
まず、図6中左方向から右方向(以下、単に「右方向」という)に向けて針床を送り、表側の針床において、非弾性糸21aによりその編み立て方向に一定のループを形成するように編み立てし(図6(a)参照)、ついで、図6(b)に示すように、同図右方向から左方向(以下、単に「左方向」という)に向けて針床を送り、裏側の針床において、熱融着弾性糸22aによりその編み立て方向に一定のループを形成するように編み立てする。次に、右方向に向けて針床を送り、表側及び裏側の針床において、挿入糸23aによって、隣接する非弾性糸21aのループと熱融着弾性糸22aのループとを連結するようにタック編みした後(図6(c)参照)、左方向に向けて編み立てしない状態で針床を送る(図6(d)参照)。次に、右方向に向けて針床を送り、表側の針床において非弾性糸21aにより編み立てした後(図6(e)参照)、図6(f)に示すように、左方向に向けて針床を送り、裏側の針床において熱融着弾性糸22aにより編み立てする。ついで、編み立てしない状態で右方向に向けて針床を送った後(図6(g)参照)、左方向に向けて針床を送り、表側及び裏側の針床において挿入糸23aによりタック編みする(図6(h)参照)。以後、図6(a)から図6(h)の一連の動作を繰り返すことで、所定の大きさの編地を得ることができる。
【0046】
また、上例の経編地1は、表生地2にのみ熱融着弾性糸2aを用いるようにしたが、これに限られるものではなく、裏生地にも熱融着弾性糸を用いるようにしても良い。このようにすれば、編地の表裏面において滑り防止機能が発現される。
【0047】
また、上例においては、表生地2全体を熱融着弾性糸2aによって編成するようにしているが、用途に応じて表生地の一部の領域に熱融着弾性糸を用いるようにしても良い。また、熱融着弾性糸と、熱融着性を有しない弾性糸とを引き揃えて編地を編成するようにしても良い。
【0048】
また、上例では、表生地2と裏生地3とからなる編地を例示したが、一参考態様としては、所謂、シングル編みの編地としても良い。この場合、例えば、シングルラッシェル編み機を用いて編成することができ、編み組織としては、図4及び図5において、非弾性糸3aを削除した状態のものとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 経編地
2 表生地
2a 熱融着弾性糸
3 裏生地
3a 非弾性糸
4a 挿入糸
10 表側針床
11 裏側針床
12,13,14 筬
Wa 表側鎖編み組織
Wb 裏側鎖編み組織
図1
図2
図3
図4
図5
図6