(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204037
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】隅肉溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20170914BHJP
B23K 9/02 20060101ALI20170914BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20170914BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20170914BHJP
B23K 103/10 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
B23K31/00 F
B23K31/00 B
B23K9/02 D
B23K9/00 501L
B23K9/23 F
B23K103:10
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-57125(P2013-57125)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180689(P2014-180689A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】毛利 雅志
(72)【発明者】
【氏名】佐宗 駿
(72)【発明者】
【氏名】津乗 充良
(72)【発明者】
【氏名】楠本 裕己
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−032837(JP,A)
【文献】
特開平04−162978(JP,A)
【文献】
特開平07−299578(JP,A)
【文献】
特開平08−132273(JP,A)
【文献】
特開2007−014995(JP,A)
【文献】
特開平06−063756(JP,A)
【文献】
特開平06−039581(JP,A)
【文献】
特開昭58−179565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B23K 9/00
B23K 9/02
B23K 9/23
B23K 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ合金により構成された第1金属板とアルミ合金により構成された第2金属板を接合してなる接合構造体の製作に用いられ、前記第1金属板の表面と前記第2金属板の端面を突き合わせた状態で、前記第1金属板と前記第2金属板を隅肉溶接によって接合する隅肉溶接方法において、
溶接電極を保持する溶接トーチを用い、前記溶接トーチを前記第1金属板と前記第2金属板の境界部の長手方向に平行な溶接方向へ前記第1金属板及び前記第2金属板に対して相対的に移動させつつ、前記溶接電極の先端部と前記境界部との間にアークを発生させると共に、
同時に、加熱体を前記溶接方向へ前記第1金属板及び前記第2金属板に対して相対的に移動させつつ、前記加熱体によって前記第1金属板の裏面における前記アークの発生箇所から前記溶接方向の下流側にオフセットした箇所を局所的に加熱し、
前記加熱体の加熱量は、前記第1金属板の裏面の最高温度をアルミ合金の力学的溶融温度未満に保つという条件の下で、前記溶接トーチからの溶接熱量の10%以上に設定され、
前記アークの発生箇所に対する前記オフセットした箇所のオフセット量は、10〜120mmに設定されている、隅肉溶接方法。
【請求項2】
前記第1金属板は、液化ガス用タンクにおけるパネル板であり、前記第2金属板は、前記液化ガス用タンクにおけるロンジである、請求項1に記載の隅肉溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1金属板の表面と第2金属板の端面を突き合わせた状態で、第1金属板と第2金属板を隅肉溶接によって接合する隅肉溶接方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG),液化石油ガス(LPG)等の液化ガスを貯留する液化ガス用タンク、船舶、橋梁等の構造部材として、第1金属板と第2金属板を接合してなる接合構造体が用いられることが多く、この接合構造体の製作(施工)は、次のように行われる。
【0003】
第1金属板をテーブル(定盤)に対してセットし、第1金属板の表面と第2金属板の端面を突き合わるように、第2金属板を第1金属板に対してセットする。そして、溶接電極を保持する溶接トーチを用い、溶接トーチを第1金属板と第2金属板との境界部の長手方向に平行な溶接方向へ第1金属板及び第2金属板に対して相対的に移動させつつ、溶接電極の先端部と前記境界部との間にアークを発生させる。これにより、アーク熱によって前記境界部周辺(前記境界部を含む)等を溶融させながら、境界部に溶接方向に沿って溶接ビード(溶接部)を形成して、隅肉溶接によって第1金属板と第2金属板を接合することができる。
【0004】
また、隅肉溶接時に、溶接ビード周辺(溶接ビードを含む)の熱収縮等によって第1金属板が溶接ビード周辺を境として角変形する傾向にある。そのため、通常、隅肉溶接前に、クランプ等を用いて第1金属板の周縁部を拘束することにより第1金属板の角変形を防止したり、隅肉溶接後に、第1金属板に対して局所的な加熱又はローラの押圧による歪み取りを施すことにより第1金属板の角変形を矯正したりしている。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献4に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−14995号公報
【特許文献2】特開平7−299578号公報
【特許文献3】特開平6−39581号公報
【特許文献4】特開平6−63756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液化ガス用タンク、船舶等の構造部材のような大規模な接合構造体にあっては、その接合構造体を構成する第1金属板及び第2金属板のサイズも大きく、それに伴い、第1金属板の角変形を防止する作業、第1金属板の角変形を矯正する作業が大掛かりなものになり、接合構造体の製作時間(施工時間)が長くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の隅肉溶接方法
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、前述の課題を解決するために、試行錯誤を繰り返した結果、
アルミ合金によりそれぞれ構成された第1金属板と第2金属板との境界部の長手方向に平行な溶接方向に沿ってアークを発生させながら隅肉溶接を行うと同時に、第1金属板の裏面におけるアークの発生箇所(溶接箇所)から溶接方向の後側(下流側)にオフセット(離隔)した箇所を局所的に加熱することにより、隅肉溶接時における第1金属板の角変形を十分に低減できるという(後述の実施例参照)、新規な知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。これは、加熱箇所付近(加熱箇所を含む)において第1金属板の厚み方向の温度分布を均一な分布に近づけて、隅肉溶接時における第1金属板の角変形を相殺したことによるものと考えられる。
【0010】
本発明の
態様は、
アルミ合金により構成された第1金属板と
アルミ合金により構成された第2金属板を接合してなる接合構造体の製作(施工)に用いられ、前記第1金属板の表面と前記第2金属板の端面を突き合わせた状態で、前記第1金属板と前記第2金属板を隅肉溶接によって接合する隅肉溶接方法において、溶接電極を保持する溶接トーチを用い、前記溶接トーチを前記第1金属板と前記第2金属板の境界部の長手方向に平行な溶接方向へ前記第1金属板及び前記第2金属板に対して相対的に移動させつつ、前記溶接電極の先端部と前記境界部との間にアークを発生させると共に、同時に、加熱体を前記溶接方向へ前記第1金属板及び前記第2金属板に対して相対的に移動させつつ
、前記加熱体によって前記第1金属板の裏面における前記アークの発生箇所から前記溶接方向の
下流側にオフセットした箇所を局所的に加熱
し、前記加熱体の加熱量は、前記第1金属板の裏面の最高温度をアルミ合金の力学的溶融温度未満に保つという条件の下で、前記溶接トーチからの溶接熱量の10%以上に設定され、前記アークの発生箇所に対する前記オフセットした箇所のオフセット量は、10〜120mmに設定されていること
である。
【0011】
ここで
、隅肉溶接の方式は、ミグ溶接、ティグ溶接、マグ溶接等のいずれであっても構わなく、前記加熱体による加熱方式は、高周波誘導加熱、アーク加熱、ガス加熱等のいずれであっても構わない。
【0012】
本発明の
態様によると、前記溶接トーチを前記溶接方向へ前記第1金属板等に対して相対的に移動させつつ、前記溶接電極の先端部と前記境界部との間にアークを発生させると同時に、前記加熱体によって前記第1金属板の裏面における前記アークの発生箇所から前記溶接方向の後側へオフセットした箇所を局所的に加熱しているため、前述の新規な知見を適用すると、隅肉溶接時における前記第1金属板の角変形を十分に低減することができる。これにより、前記接合構造体の一連の製作工程から、前記第1金属板の角変形を防止する作業、前記第1金属板の角変形を矯正する作業を省略したり、それらの作業を簡素化したりすることができる。
【0013】
前記第1金属板の裏面の最高温度を
アルミ合金の力学的溶融温度未満に保つという条件の下で、前記加熱体によって前記第1金属板の裏面を加熱しているため、隅肉溶接時における前記第1金属板の強度(材料強度)の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記接合構造体の一連の製作工程から前記第1金属板の角変形を防止する作業等を省略したり、それらの作業を簡素化したりすることができるため、前記接合構造体を構成する前記第1金属板及び前記第2金属板のサイズが大きくても、前記接合構造体の製作時間(施工時間)を大幅に短縮することができる。また、隅肉溶接時における前記第1金属板の強度の低下を防止できるため、前記接合構造体の構造強度を十分に確保することができる。つまり、本発明によれば、前記接合構造体の構造強度を十分に確保しつつ、前記接合構造体の製作時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法及びその方法に用いられる装置を説明する斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法及びその方法に用いられる装置を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法及びその方法に用いられる装置を説明する断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の実施形態に隅肉溶接方法によって製作される接合構造体の平面図、
図4(b)は、
図4(a)を下から見た図、
図4(c)は、
図4(a)における矢視部IVCの拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、過渡伝熱解析及び熱弾塑性解析の解析対象を示す正面図、
図5(b)は、その解析対象を示す側面図である。
【
図6】
図6(a)は、溶接入熱量に対する加熱量の割合と、第1金属板の角変形量と、第1金属板の裏面の最高温度との関係を示す図、
図6(b)は、溶接入熱箇所に対する加熱箇所のオフセット量と、第1金属板の角変形量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に隅肉溶接方法によって製作される接合構造体の構成、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法の実施に用いられる装置の構成、及び本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法等について順次説明する。
【0017】
図4(a)(b)(c)に示すように、本発明の実施形態に隅肉溶接方法によって製作される接合構造体1は、液化天然ガス(LNG)等の液化ガスを貯留する液化ガス用タンク(図示省略)等の構造部材として用いられるものである。また、接合構造体1は、第1金属板としてのパネル板3と複数の第2金属板としての複数のロンジ5を隅肉溶接によって接合してなるものであって、パネル板3及びロンジ5は、アルミ合金によりそれぞれ構成されている。更に、パネル板3とロンジ5との一対の境界部(パネル板3の表面3aとロンジ5の一側面5aとの境界部、パネル板3の表面3aとロンジ5の他側面5bとの境界部)7には、溶接部としての溶接ビード9がそれぞれ形成されている。
【0018】
図1から
図3に示すように、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法の実施には溶接ユニット11が用いられており、この溶接ユニット11の構成は、次のようになる。
【0019】
溶接ユニット11は、テーブル(定盤)13に支持されたパネル板3の表面を境界部7の長手方向に平行な溶接方向Dに沿って走行可能な溶接台車15を備えており、この溶接台車15には、ポスト状のトーチサポート17が設けられている。また、トーチサポート17には、溶接電極としての溶接ワイヤ(消耗溶接電極)19を保持する溶接トーチ21が位置調節可能に設けられており、この溶接トーチ21は、溶接ワイヤ19を供給するワイヤ供給源(図示省略)に接続されている。更に、溶接トーチ21は、アルゴンガス等の不活性ガスを噴出可能であって、不活性ガスを供給するガス供給源(図示省略)に接続されている。なお、溶接電極として溶接ワイヤ19を用いる代わりに、タングステン電極(図示省略)を用いても構わない。
【0020】
本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法の実施には溶接ユニット11の他に、加熱ユニット23が用いられており、この加熱ユニット23の構成は、次のようになる。
【0021】
加熱ユニット23は、テーブル13に形成した溝25の底面25bを溶接方向Dに沿って走行可能な加熱台車27を備えており、この加熱台車27には、コイルサポート29が設けられている。また、コイルサポート29には、加熱体としての加熱コイル31が設けられており、この加熱コイル31は、高周波誘導加熱を行うものであって、整合トランス33を介して高周波電源35に接続されている。なお、加熱体として加熱コイル31を用いる代わりに、ガス加熱を行うガスバーナー又はアーク加熱を行う加熱電極等を用いても構わない。
【0022】
続いて、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法について説明する。
【0023】
本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法は、接合構造体の製作(施工)に用いられ、パネル板3の表面3aとロンジ5の端面5eを突き合わせた状態で、パネル板3とロンジ5を隅肉溶接によって接合するものである。そして、本発明の実施形態に係る隅肉溶接方法の具体的な内容は、次のようになる。
【0024】
パネル板3をパネル板用治具(図示省略)によってテーブル13に対してセットし、パネル板3の表面3aとロンジ5の端面5eを突き合わせるように、ロンジ5をロンジ用治具(図示省略)によってパネル板3に対してセットする。更に、パネル板3の表面3aにおけるロンジ5の両側(一方側と他方側)に溶接ユニット11をそれぞれ配置すると共に、テーブル13の溝25の底面25bに加熱ユニット23を配置する。これにより、パネル板3とロンジ5に対して隅肉溶接を行うための準備(隅肉溶接の準備)が完了する。
【0025】
隅肉溶接の準備が完了した後に、ロンジ5の一方側において、一方の溶接台車15の走行によって一方の溶接トーチ21を境界部7に平行な溶接方向Dへ移動させつつ、一方の溶接トーチ21から一方の境界部7に向かって不活性ガスを噴出させた状態で、一方の溶接ワイヤ19の先端部と一方の境界部7との間にアークAを発生させる。同様に、同時に、ロンジ5の他方側において、他方の溶接台車15の走行によって他方の溶接トーチ21を溶接方向Dへ移動させつつ、他方の溶接トーチ21から他方の境界部7に向かって不活性ガスを噴出させた状態で、他方の溶接ワイヤ19の先端部と他方の境界部7との間にアークAを発生させる。これにより、アーク熱によって一対の境界部7周辺(境界部7を含む)及び一対の溶接ワイヤ19を溶融させながら、一対の境界部7に溶接方向Dに沿って溶接ビード(溶接部)9をそれぞれ形成して、隅肉溶接によってパネル板3とロンジ5を接合することができる。ここで、一対の溶接台車15の走行速度は、同じ走行速度に設定されている。
【0026】
一方の溶接ワイヤ19の先端部と一方の境界部7との間及び他方の溶接ワイヤ19の先端部と他方の境界部7との間にアークAをそれぞれ発生させると同時に、加熱台車27の走行によって加熱コイル31を溶接方向Dへ移動させつつ、加熱コイル31によってパネル板3の裏面3bにおけるアークAの発生箇所(溶接箇所)から溶接方向Dの後側(下流側)にオフセット(離隔)した箇所を局所的に加熱する。ここで、加熱台車27の走行速度は、一対の溶接台車15の走行速度と同じ走行速度に設定されている。また、加熱コイル31の加熱量は、パネル板3の裏面3bの最高温度をパネル板3の材料(アルミ合金)の力学的溶融温度未満に保つという条件の下で、一対の溶接ユニット11から溶接入熱量の10%以上、好ましくは20%以上になるように設定されている。更に、アークAの発生箇所に対する前記オフセットした箇所のオフセット量Lは、10〜120mm、好ましくは、20〜100mmに設定されている。
【0027】
なお、一対の溶接トーチ21及び加熱コイル31を溶接方向Dへ移動させる代わりに、パネル板3の表面3aとロンジ5の端面5eを突き合わせた状態で、パネル板3及びロンジ5を溶接方向Dへ移動させても構わない。
【0028】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
一対の溶接トーチ21を溶接方向Dへパネル板3及びロンジ5に対して相対的に移動させつつ、一方の溶接ワイヤ19の先端部と一方の境界部7との間及び他方の溶接ワイヤ19の先端部と他方の境界部7との間にアークをそれぞれ発生させると同時に、加熱コイル31によってパネル板3の裏面3bにおけるアークAの発生箇所から溶接方向Dの後側へオフセットした箇所を局所的に加熱しているため、前述の新規な知見を適用すると、隅肉溶接時におけるパネル板3の角変形を十分に低減することができる。特に、アークAの発生箇所に対する前記オフセットした箇所のオフセット量Lが10〜120mmに設定されているため、隅肉溶接時におけるパネル板3の角変形をより十分に低減することができる(後述の実施例参照)。また、パネル板3が通常の鉄鋼材料に比べて高い熱伝導率及び高い線膨張係数のアルミ合金により構成され、角変形し易いものであっても、隅肉溶接時におけるパネル板3の角変形を有効に低減することができる。これにより、接合構造体1の一連の製作工程から、パネル板3の角変形を防止する作業、パネル板3の角変形を矯正する作業を省略したり、それらの作業を簡素化したりすることができる。
【0030】
パネル板3の裏面3bの最高温度をパネル板3の材料の力学的溶融温度未満に保つという条件の下で、加熱コイル31によってパネル板3の裏面3bを加熱しているため、隅肉溶接時におけるパネル板3の強度(材料強度)の低下を防止することができる。
【0031】
加熱体として高周波誘導加熱を行う加熱コイル31を用いるため、パネル板3の裏面3bの温度制御が簡単になる。
【0032】
従って、本発明の実施形態によれば、接合構造体1の一連の製作工程からパネル板3の角変形を防止する作業等を省略したり、それらの作業を簡素化したりすることができるため、接合構造体1を構成するパネル板3及びロンジ5のサイズが大きくても、接合構造体1の製作時間(施工時間)を大幅に短縮することができる。また、隅肉溶接時におけるパネル板3の強度の低下を防止できるため、接合構造体1の構造強度を十分に確保することができる。つまり、本発明の実施形態によれば、接合構造体1の構造強度を十分に確保しつつ、接合構造体1の製作時間を大幅に短縮することができる。
【0033】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【実施例】
【0034】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0035】
(実施例1)
図5(a)(b)に示すように、第1金属板(材質:アルミ合金、長さ:1000mm、幅:1000mm、厚み:20mm)の表面と第2金属板(材質:アルミ合金、長さ:1000mm、高さ:500mm、厚み:12mm)の端面を突き合わせた状態で、第1金属板と第2金属板との一対の境界部に溶接方向に沿って溶接入熱を与え、かつ第1金属板の裏面における入熱箇所の真裏に加熱(
図5(b)の一点鎖線の白抜き矢印参照)を与えることを想定した。そして、この場合に、溶接入熱量に対する加熱量の割合と、第1金属板の角変形量(幅方向の端部の変形量)と、第1金属板の裏面の最高温度との関係について過渡伝熱解析及び熱弾塑性解析を行い、その解析結果をまとめると、
図6(a)に示すようになる。
【0036】
即ち、溶接入熱量に対する加熱量の割合が高くなる程、第1金属板の角変形(角変形量)を低減できることが判明した。なお、図示は省略するが、加熱箇所が溶接入熱箇所に対して溶接方向の後側(下流側)にオフセットしている場合も、同様の解析結果を得ることができた。
【0037】
(実施例2)
図5(a)(b)に示すように、第1金属板の表面と第2金属板の端面を突き合わせた状態で、第1金属板と第2金属板との一対の境界部に溶接方向に沿って溶接入熱を与え、かつ溶接入熱量に対する加熱量の割合を20%の下で第1金属板の裏面に加熱を与えることを想定した。そして、この場合に、溶接入熱箇所に対する加熱箇所のオフセット量と、第1金属板の角変形量との関係について熱弾塑性解析を行い、その解析結果をまとめると、
図6(b)に示すようになる。なお、
図6(b)の横軸において、+の符号は、加熱箇所が溶接入熱箇所に対して溶接方向の前側(上流側)にオフセットしていること(
図5(b)の二点鎖線の白抜き矢印参照)を表しており、−の符号は、加熱箇所が溶接入熱箇所に対して溶接方向の後側(下流側)にオフセットしていること(
図5(b)の実線の白抜き矢印参照)を表している。
【0038】
即ち、加熱箇所が溶接入熱箇所に対して溶接方向の後側にオフセットしている場合の方が溶接方向の前側にオフセットしている場合よりも、第1金属板の角変形を十分に低減できることが判明した。特に、溶接入熱箇所に対する溶接方向の後側への加熱箇所のオフセット量が10〜120mm、好ましくは、20〜100mmである場合に、第1金属板の角変形をより十分に低減できることが判明した。
【符号の説明】
【0039】
A:アーク、D:溶接方向、L:オフセット量、1:接合構造体、3:パネル板(第1金属板)、3a:パネル板の表面、3b:パネル板の裏面、5:ロンジ(第2金属板)、5a:ロンジの一側面、5b:ロンジの他側面、5e:ロンジの端面、7:境界部、9:溶接ビード、11:溶接ユニット、13:テーブル、15:溶接台車、17:トーチサポート、19:溶接ワイヤ(溶接電極)、21:溶接トーチ、23:加熱ユニット、25:溝、25b:溝の底面、27:加熱台車、29:コイルサポート、31:加熱コイル(加熱体)、33:整合トランス、35:高周波電源