【文献】
Miao Hong, Toshifumi Ise, Yuki Sato, Toshinari Momose, Christian Dufour,Stability and Accuracy Analysis of Power Hardware-in-the-loop Simulation of Inductor Coupled Systems,電気学会論文誌D(産業応用部門誌),2010年 7月,Vol.130, No.7,902頁-912頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、PHILシミュレーションでは、ハードウエアのインダクタンスがシミュレータのインダクタンスより小さい状態でシミュレーションを行うことができない。このことは、PHILシミュレーションに限らない。HIL(Hardware In the Loop)シミュレーションにおいても、ハードウエアとシミュレータにインダクタンスが設定されている場合、シミュレーションが安定するためには、ハードウエアのインダクタンスがシミュレータのインダクタンスより大きいことが条件になる。
【0006】
本発明は上述した事情のもとで考え出されたものであって、条件を限定することなく、安定してシミュレーションを行うことができるシミュレーションシステムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供されるシミュレーションシステムは、シミュレーションの対象となるシステムの構成要素の一部をシミュレータで構成し、その他の部分をハードウエアで構成して、前記シミュレータと前記ハードウエアとの間で信号の送受信を行ってシミュレーションを行うシミュレーションシステムであって、前記シミュレータで構成された部分の伝達関数をZ
1(s)、前記ハードウエアで構成された部分の伝達関数をZ
2(s)とし、前記シミュレータでの処理に基づく遅延時間をT
d、むだ時間要素をexp(−Td・s)とした場合に、
前記システムの伝達関数のうち、前記伝達関数Z1(s)に対して下記(1’)式に示す伝達関数P(s)で表される負帰還機能を付加した下記(2’)式に示す伝達関数Z1’(s)を前記伝達関数Z1(s)の代わりに用いてシミュレーションを行うことを特徴とする。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記システムの特性方程式は下記(3’)式である。
【数1】
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シミュレータが電力系統を模擬する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ハードウエアはパワーコンディショナである。
【0011】
本発明の第2の側面によって提供されるシミュレータは、シミュレーションの対象となるシステムの構成要素の一部をハードウエアで構成したシミュレーションシステムにおいて、前記ハードウエアとの間で信号の送受信を行って、その他の部分を模擬するシミュレータであって、前記その他の部分の伝達関数をZ
1(s)、前記ハードウエアで構成された部分の伝達関数をZ
2(s)とし、前記シミュレータでの処理に基づく遅延時間をT
d 、むだ時間要素をexp(−Td・s)とした場合に、
前記システムの伝達関数のうち、前記伝達関数Z1(s)に対して下記(4’)式に示す伝達関数P(s)で表される負帰還機能を付加した下記(5’)式に示す伝達関数Z1’(s)を前記伝達関数Z1(s)の代わりに用いてシミュレーションを行うことを特徴とする。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記システムの特性方程式は下記(6’)式である。
【数2】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記シミュレータが電力系統を模擬する。
【0013】
本発明の第3の側面によって提供されるシミュレーション方法は、シミュレーションの対象となるシステムの構成要素の一部をシミュレータで構成する工程と、その他の部分をハードウエアで構成する工程と、前記シミュレータで構成された部分の伝達関数Z
1(s
)を算出する工程と、前記ハードウエアで構成された部分の伝達関数Z
2(s)を算出す
る工程と、前記シミュレータでの処理に基づく遅延時間T
dを算出する工程と、
前記遅延時間Tdに基づいて、むだ時間要素をexp(−Td・s)を算出する工程と、前記システムの伝達関数のうち、前記伝達関数Z1(s)に対して下記(7’)式に示す伝達関数P(s)で表される負帰還機能を付加した下記(8’)式に示す伝達関数Z
1’(s)を算出する工程と、前記シミュレータで構成された部分の伝達関数として、
前記伝達関数Z1(s)の代わりに前記伝達関数Z
1’(s)を設定する工程と、前記シミュレータと前記ハードウエアとの間で信号の送受信を行って、シミュレーションを行う工程とを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記システムの特性方程式は下記(9’)式である。
【数3】
【0014】
本発明の第4の側面によって提供されるプログラムは、シミュレーションの対象となるシステムの構成要素の一部をシミュレータで構成し、その他の部分をハードウエアで構成して、前記シミュレータと前記ハードウエアとの間で信号の送受信を行ってシミュレーションを行うためのシミュレーションシステムにおいて、コンピュータを前記シミュレータとして機能させるためのプログラムであって、前記シミュレータで構成された部分の伝達関数をZ
1(s)、前記ハードウエアで構成された部分の伝達関数をZ
2(s)とし、前記シミュレータでの処理に基づく遅延時間をT
d、むだ時間要素をexp(−Td ・s)とした場合に、
前記システムの伝達関数のうち、前記伝達関数Z1(s)に対して下記(10’)式に示す伝達関数P(s)で表される負帰還機能を付加した下記(11’)式に示す伝達関数Z1’(s)を前記伝達関数Z1(s)の代わりに用いてシミュレーションを行う、ことを特徴とする。
本発明の好ましい実施の形態においては、
前記システムの特性方程式は下記(12’)式である。
【数4】
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、シミュレータで構成された部分の伝達関数として、Z
1(s)に代えて、Z
1’(s)が設定されている。システム全体を示す伝達関数の特性方程式に遅延時間T
dに基づく要素が含まれないので、遅延時間T
dがシミュレーションの安定性に影響を与えない。したがって、条件を限定することなく、安定してシミュレーションを行うことができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、電力システムをシミュレーションする場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係るシミュレーションシステムを説明するための図である。
【0020】
シミュレーションシステムAは、パワーコンディショナ1、センサ2、アンプ3、および、シミュレータ4を備えている。シミュレーションシステムAは、パワーコンディショナ1を電力系統に接続した電力システムをシミュレーションするものであり、PHILシミュレーションを行う。シミュレーションシステムAは、電力系統をシミュレータ4で模擬し、ハードウエアであるパワーコンディショナ1との間で信号を送受信して、電力システムのシミュレーションを行う。例えば、電力系統で事故が発生した状態をシミュレータ4で再現して、その時のパワーコンディショナ1の状態を観察するなどの実験が行われる。
【0021】
パワーコンディショナ1は、太陽電池などが出力する直流電力を交流電力に変換し、負荷や電力系統に供給するものである。パワーコンディショナ1は、図示しないインバータ回路、フィルタ回路、および制御回路などを備えている。インバータ回路は、図示しないスイッチング素子を備えており、制御回路から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタ回路は、スイッチングによる高周波成分を除去するものであり、リアクトルとキャパシタとを有するローパスフィルタを備えている。また、パワーコンディショナ1には、過電流や過電圧、単独運転などを検出する保護機能も備えられている。
【0022】
センサ2は、パワーコンディショナ1の出力電流を検出するものである。センサ2は、検出した出力電流信号をシミュレータ4に出力する。なお、センサ2として、パワーコンディショナ1が備えている出力電流センサを用いてもよい。
【0023】
アンプ3は、シミュレータ4より入力される系統電圧信号を、実際の系統電圧のレベルに増幅して、パワーコンディショナ1に出力する。
【0024】
シミュレータ4は、電力系統を模擬するものである。シミュレータ4は、センサ2より入力される出力電流信号と、設定された伝達関数とに基づいて、電力系統の系統電圧信号を演算し、アンプ3を介してパワーコンディショナ1に出力する。なお、本実施形態では電気回路をシミュレーションするので、電流を入力とし電圧を出力とする伝達関数として、インピーダンスが設定される。
【0025】
シミュレータ4は、アナログ/デジタル変換回路41、デジタル/アナログ変換回路42、データ設定部43、および、演算部44を備えている。
【0026】
アナログ/デジタル変換回路41は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものであり、センサ2より入力される出力電流信号をデジタル信号に変換して演算部44に出力する。デジタル/アナログ変換回路42は、デジタル信号をアナログ信号に変換するものであり、演算部44より入力される系統電圧信号をアナログ信号に変換してアンプ3に出力する。
【0027】
データ設定部43は、各種データを演算部44に入力するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。データ設定部43は、図示しない入力手段によって操作者が直接入力した情報や、操作者がCADを用いて作成した回路図や制御系のブロック線図から各種データを抽出して、演算部44に出力する。本実施形態では、データ設定部43は、操作者が作成した電力系統の回路図から当該電力系統のインピーダンスZ
1(s)を算出し、操作者が入力したパワーコンディショナ1の情報からパワーコンディショナ1のインピーダンスZ
2(s)を算出して、演算部44に出力する。また、データ設定部43は、シミュレータ4での処理などに基づく遅延時間T
dを演算部44に出力する。遅延時間T
dは、アナログ信号とデジタル信号との間での変換処理に必要な時間、演算部44での演算時間、および、アンプ3での処理に必要な時間などから、操作者があらかじめ算出して入力する。
【0028】
演算部44は、電力系統を模擬したシミュレーションを行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。演算部44は、あらかじめ設定されている電力系統のモデルと、データ設定部43より入力された各種データと、アナログ/デジタル変換回路41より入力される出力電流信号(デジタル)とに基づいて、系統電圧信号(デジタル)を生成し、デジタル/アナログ変換回路42に出力する。
【0029】
本実施形態では、演算部44は、電力系統のインピーダンスZ
1(s)の代わりに、当該Z
1(s)、パワーコンディショナ1のインピーダンスZ
2(s)および遅延時間T
dを用いて下記(1)式に基づいて算出したインピーダンスZ
1’(s)を用いている。なお、関数「exp()」は、ネイピア数「e」のべき乗を表している。
【数5】
【0030】
以下に、電力系統のインピーダンスZ
1(s)をそのまま用いた場合の問題について、非特許文献1を参照して、説明する。
【0031】
図2は、インダクタ結合型システムをPHILシミュレーションでシミュレーションする場合について説明するための図である。同図(a)は、インダクタ結合型システムの回路図を示しており、同図(b)は、当該システムをPHILシミュレーションでシミュレーションした場合を、回路図で示している。
【0032】
同図(a)に示すインダクタ結合型システムは、内部電圧Vsの電源に、抵抗R
2、インダクタンスL
2、キャパシタンスC
2からなる負荷を直列接続したものである。電源の内部抵抗はR
1であり、内部インダクタンスはL
1である。このインダクタ結合型システムを、同図(b)に示すように、電源の部分をシミュレータ4で模擬し、負荷の部分をそのまま実機でハードウエア5として、PHILシミュレーションでシミュレーションする。同図(b)では、シミュレータ4が模擬する電源の回路図を記載している。
【0033】
シミュレータ4は、電源の出力電圧信号V
1をアナログ信号に変換してアンプに出力する。アンプは、入力されたアナログ信号を実際の電圧V
2として再生し、ハードウエア5に出力する。そして、ハードウエア5の制御電圧源が、電圧V
2を負荷に供給する。一方、負荷に流れる実際の電流がセンサによって電流信号I
2として検出され、シミュレータ4に出力される。シミュレータ4は、入力される電流信号I
2をデジタル信号に変換し、制御電流源に電流I
1として再現させる。
【0034】
PHILシミュレーションでは、実機での応答とは異なり、信号変換や演算処理による遅延が発生する。シミュレータ4での演算、デジタル/アナログ変換、およびアンプでの処理などによる遅延時間をT
d1とし、アナログ/デジタル変換などによる遅延時間をT
d2とすると、V
1とV
2の関係は下記(2)式で表され、I
1とI
2との関係は下記(3)式で表される。
【数6】
【0035】
また、シミュレータ4のインピーダンスZ
1(s)は下記(4)式で表され、ハードウエア5のインピーダンスZ
2(s)は下記(5)式で表される。
【数7】
【0036】
したがって、
図2(b)に示す回路をブロック線図で表すと、
図3(a)に示すものになる。ここで、PHILシミュレーション全体での遅延時間をT
d(=T
d1+T
d2)とすると、
図3(a)から
図3(b)に書き換えることができる。
図3(b)に示すシステムの特性方程式は、下記(6)式となる。
【数8】
【0037】
上記(6)式において、遅延時間T
dに基づく要素(以下では、「むだ時間要素」とする。)exp(−T
d・s)について下記(7)式の一次パデ近似を行い、上記(4)および(5)式を代入すると、下記(8)式になる。なお、a=2/T
dである。
【数9】
【0038】
上記(8)式の特定方程式において、ラウスの安定判別法を用いると、安定条件は下記(9)〜(11)式を満たすことである。
【数10】
【0039】
つまり、PHILシミュレーションが安定であるためには、上記(9)式に示すように、ハードウエア5のインダクタンスL
2がシミュレータ4のインダクタンスL
1より大きい必要がある。したがって、従来のPHILシミュレーションでは、ハードウエア5のインダクタンスL
2がシミュレータ4のインダクタンスL
1より小さい状態でシミュレーションを行うことができなかった。
【0040】
従来のPHILシミュレーションの安定性を検証するために、
図2(b)に示すシステムでシミュレーションを行った。
図4は、当該シミュレーション結果を示す図である。
【0041】
図4(a)は、パラメータとして、R
1=1[Ω]、L
1=1[mH]、R
2=1[Ω]、L
2=1.2[mH]、C
1=10[μF]、サンプリング周期を10[kHz]、デジタル/アナログ変換での遅延時間を1[μS]、アナログ/デジタル変換での遅延時間を2[μS]、総遅延時間T
dを103[μS]を設定した場合の電流信号I
2の時間応答を示している。同図(a)に示すように、電流信号I
2の波形は正弦波になっており、L
1<L
2なので、安定してシミュレーションが行われていることが確認できる。
【0042】
同図(b)は、パラメータとしてL
2=0.8[mH]を設定し、他のパラメータを同図(a)の場合と同じにしたときの電流信号I
2の時間応答を示している。同図(b)に示すように、電流信号I
2の波形は発散しており、L
1>L
2なので、シミュレーションが安定して行われないことが確認できる。
【0043】
本実施形態では、上記(9)式を満たすか否かに関係なく、PHILシミュレーションを安定して行えるようにするために、電力系統のインピーダンスZ
1(s)の代わりに、上記(1)式に示すインピーダンスZ
1’(s)を用いている。
【0044】
以下に、インピーダンスZ
1(s)の代わりに用いるインピーダンスZ
1’(s)について説明する。
【0045】
上記(6)式に示すように、制御系の特性方程式にむだ時間要素exp(−T
d・s)が含まれるため、制御系が不安定化を起こしている。そこで、制御ループを改良し、特性方程式にむだ時間要素が含まれなくなるように、スミス法を用いる。すなわち、
図3(b)に示すブロック線図において、Z
1(s)のブロックに対して、下記(12)式に示すP(s)を介して負帰還する機能を付加した。
図5(a)は、当該機能を付加したブロック線図を示している。
【数11】
【0046】
図5(b)は、
図5(a)に示すブロック線図において、Z
1(s)のブロックとP(s)のブロックとをまとめて、上記(1)式に示すZ
1’(s)のブロックとしたものである。
図5(c)は、
図5(b)に示すブロック線図を、伝達関数を算出するために書き換えたものであり、同じ制御ループを示している。
【0047】
図5(c)に示すシステムの応答式を求めると、下記(13)式となる。
【数12】
【0048】
図5(b)に示すシステムの特性方程式は、
図5(c)に示すシステムのr→yの伝達関数の分母=0としたものであり、下記(14)式になる。
【数13】
【0049】
上記(14)式に示すように、
図5(b)に示すシステムの特性方程式には、むだ時間要素exp(−T
d・s)が含まれない。したがって、制御系が不安定化を起こさない。
【0050】
インピーダンスZ
1(s)の代わりにインピーダンスZ
1’(s)を用いた場合のPHILシミュレーションの安定性を検証するために、
図2(b)に示すシステムでシミュレーションを行った。シミュレータ4のインピーダンスとしてZ
1’(s)を設定している。
図6は、当該シミュレーション結果を示す図である。
【0051】
図6(a)は、
図4(a)の場合と同じパラメータを設定したときの電流信号I
2の時間応答を示している。
図6(a)に示すように、電流信号I
2の波形は正弦波になっており、安定してシミュレーションが行われていることが確認できる。
【0052】
図6(b)は、
図4(b)の場合と同じパラメータを設定(すなわち、L
1>L
2となるように設定)したときの電流信号I
2の時間応答を示している。
図6(b)に示すように、この場合でも、電流信号I
2の波形は正弦波になっており、安定してシミュレーションが行われていることが確認できる。以上のように、上記(9)式を満たすか否かに関係なく、PHILシミュレーションを安定して行うことができる。
【0053】
演算部44は、データ設定部43より入力される電力系統のインピーダンスZ
1(s)、パワーコンディショナ1のインピーダンスZ
2(s)、および遅延時間T
dから、上記(1)式に基づいて、インピーダンスZ
1’(s)を算出して、あらかじめ設定しておく。そして、設定されたインピーダンスZ
1’(s)と、アナログ/デジタル変換回路41より入力される出力電流信号(デジタル)とに基づいて、系統電圧信号(デジタル)を生成し、デジタル/アナログ変換回路42に出力する。
【0054】
図7は、演算部44が行う演算処理を説明するためのフローチャートである。当該演算処理は、シミュレーション開始時に、実行が開始される。
【0055】
まず、データ設定部43から遅延時間T
dなどが取得されて設定される(S1)。次に、データの変更があったか否かが判別される(S2)。操作者が回路図やブロック線図を変更したり、入力情報を変更した場合に、データの変更があったと判別される。
【0056】
データの変更があったと判別された場合(S2:YES)、インピーダンスZ
1’(s)を変更する処理が行われる。すなわち、データ設定部43より電力系統のインピーダンスZ
1(s)が取得され(S3)、データ設定部43よりパワーコンディショナ1のインピーダンスZ
2(s)が取得される(S4)。そして、インピーダンスZ
1’(s)が演算されて設定される。なお、インピーダンスZ
1(s)またはインピーダンスZ
2(s)の取得は、それぞれ関連するデータの変更があった場合のみとしてもよい。また、遅延時間T
dを変更する場合は、データ設定部43から遅延時間T
dを取得する必要がある。データの変更がなかったと判別された場合(S2:NO)、インピーダンスZ
1’(s)を変更する必要がないので、ステップS6に進む。シミュレーション開始時には、各種データが設定されるので、データの変更があったとしてステップS3〜S5が行われ、インピーダンスZ
1’(s)が設定される。
【0057】
次に、アナログ/デジタル変換回路41より入力される出力電流信号(デジタル)が取得され(S6)、インピーダンスZ
1’(s)に基づいて演算が行われ、系統電圧信号(デジタル)が生成される(S7)。系統電圧信号(デジタル)がデジタル/アナログ変換回路42に出力され(S8)、ステップS2に戻る。なお、演算部44が行う演算処理は、上述したものに限定されない。
【0058】
本実施形態では、シミュレータ1内部のマイクロコンピュータが、演算部44およびデータ設定部43を実現する場合について説明したが、これに限られない。演算部44およびデータ設定部43を汎用コンピュータで実現するようにしてもよい。すなわち、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることで汎用コンピュータを演算部44およびデータ設定部43として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。また、データ設定部43のみを汎用コンピュータで実現して、汎用コンピュータで作成された回路図やブロック線図から各種データを抽出して、シミュレータ4の演算部44に入力するようにしてもよい。
【0059】
本実施形態によると、演算部44は、シミュレーションでの演算に電力系統のインピーダンスZ
1(s)に代えて、インピーダンスZ
1’(s)を用いている。したがって、パワーコンディショナ1およびシミュレータ4を含む電力システム全体の制御系の特性方程式に、むだ時間要素exp(−T
d・s)が含まれない。これにより、制御系が不安定化を起こさない。したがって、シミュレーションシステムAは、条件を限定することなく、安定してシミュレーションを行うことができる。例えば、パワーコンディショナ1のインダクタンスがシミュレータ4のインダクタンスより小さい状態でも、安定してシミュレーションを行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、シミュレータ4が電力系統を模擬し、ハードウエアをパワーコンディショナ1とした場合について説明したが、これに限られない。例えば、シミュレータ4が発電機を模擬するようにしてもよいし、ハードウエアをコンバータやマトリクスコンバータとしてもよい。
【0061】
本実施形態においては、電力システムをシミュレーションする場合について説明したが、これに限られない。他のシステムをシミュレーションする場合にも、本発明を用いることができる。シミュレーションの対象となるシステムの構成要素の一部をシミュレータで構成し、その他の部分をハードウエアで構成して、シミュレータとハードウエアとの間で信号の送受信を行ってシミュレーションを行う場合に、本発明を適用することができる。例えば、モータの駆動システムのシミュレーションにおいて、電源をシミュレータ4で構成し、モータをハードウエアで構成する場合(
図8(a)参照)などにも、本発明を適用することができる。
【0062】
また、モータやインバータ等をシミュレータ4で実現させて、ハードウエアとしての制御装置に接続するようにしてもよい(
図8(b)参照)。この場合、シミュレータ4で実現されたモータやインバータ等の伝達関数Z
1(s)に代えて、伝達関数Z
1(s)、制御装置の伝達関数Z
2(s)、および遅延時間T
dに基づいて、上記(1)式により算出された伝達関数Z
1’(s)が、シミュレータ4に設定される。また、制御装置をシミュレータ4で実現させて、ハードウエアとしてのモータやインバータ等に接続するようにしてもよい(
図8(c)参照)。
【0063】
本発明に係るシミュレータ、シミュレーションシステム、シミュレーション方法、および、プログラムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るシミュレータ、シミュレーションシステム、シミュレーション方法、および、プログラムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。