(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204057
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】建築板、及び建築板の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20170914BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20170914BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170914BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20170914BHJP
C09D 151/06 20060101ALI20170914BHJP
C09D 127/22 20060101ALI20170914BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
E04F13/08 A
B32B7/02 105
C09D7/12
C09D183/04
C09D151/06
C09D127/22
B01J35/02 J
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-96523(P2013-96523)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2014-218786(P2014-218786A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕明
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−212475(JP,A)
【文献】
特開2002−012683(JP,A)
【文献】
特開2012−240281(JP,A)
【文献】
特開平06−248579(JP,A)
【文献】
特開2007−203495(JP,A)
【文献】
特開2009−136727(JP,A)
【文献】
特開2001−064544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
C09D 1/00−10/00;
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質板の表面に、断熱塗膜と光触媒塗膜とを有する建築板であって、
前記断熱塗膜は、塗膜形成材と、有機系中空粒子と、水溶性溶剤とを含有し、
前記光触媒塗膜は、光触媒とバインダーとを含有し、
前記光触媒塗膜は最表側に形成されており、
前記有機系中空粒子の平均中空率は90%以上であり、
前記水溶性溶剤は、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上により構成されている
ことを特徴とする建築板。
【請求項2】
前記有機系中空粒子は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステルの少なくとも1種以上により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記断熱塗膜は、前記水溶性溶剤を、前記断熱塗膜の固形分を100質量部としたとき、0.1〜10質量部含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項4】
前記断熱塗膜の表面にはクリヤー塗膜が形成されており、
前記クリヤー塗膜の表面には前記光触媒塗膜が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項5】
前記バインダーは、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種以上により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項6】
無機質板の表面に、塗膜形成材と、有機系中空粒子と、水溶性溶剤とを含有する断熱塗料を塗布し、断熱塗膜を形成する工程と、
前記断熱塗膜の上に、光触媒とバインダーとを含有する光触媒塗料を塗布し、光触媒塗膜を形成する工程とを備え、
前記有機系中空粒子の平均中空率は90%以上であり、
前記水溶性溶剤は、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上により構成されており、
前記光触媒塗膜を最表側に形成する
ことを特徴とする建築板の製造方法。
【請求項7】
前記有機系中空粒子が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステルの少なくとも1種以上により構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の建築板の製造方法。
【請求項8】
前記断熱塗料には、前記水溶性溶剤が、前記断熱塗料の固形分を100質量部としたとき、0.1〜10質量部含有されている
ことを特徴とする請求項6に記載の建築板の製造方法。
【請求項9】
前記光触媒塗膜を形成する工程は、前記断熱塗膜を形成した後、クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、前記クリヤー塗膜の表面に前記光触媒塗料を塗布することにより行う
ことを特徴とする請求項6に記載の建築板の製造方法。
【請求項10】
前記光触媒塗膜の前記バインダーは、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種以上により構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の建築板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材、屋根材等に好適な建築板、及び建築板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメント等の水硬性無機粉体と、木質パルプ繊維等の木質補強材とを主成分とする無機質板がある。このような無機質板は、曲げ強度などの物性に優れるので、塗装を施し、住宅の内壁材、外壁材、屋根材等の建築板として使用されている。
【0003】
しかし、近年、省エネ等の環境問題の観点から、住宅への断熱効果の向上が求められている。そのために、建築板の表面に断熱塗膜を形成し、住宅の断熱効果を高めることが検討されている。例えば、特許文献1には、断熱効果を備えたセラミック微粉末を塗膜形成材中に分散混合した断熱塗膜を、基材の表面に形成してなる、断熱性壁材が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1のようにセラミック微粉末を分散混合した断熱塗膜を形成した建築板は、実際にはその断熱効果が小さいことが、発明者らの実験によってわかった(後述する比較例を参照)。そして、発明者らが鋭意研究した結果、その要因の一つとして、セラミック微粉末はその中空率が低くなりやすく、断熱効果が得られにくいことがわかった。また、建築板の表面に汚れが付着すると外観が悪くなると共に、該汚れが吸熱し、断熱効果が低下することもわかった。そのため、断熱効果を持続することは難しい現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−71389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、汚れによる断熱性の低下を防ぐことができる建築板及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、無機質板の表面に、断熱塗膜と光触媒塗膜とを有する建築板を提供する。本発明において、断熱塗膜は、塗膜形成材と、有機系中空粒子とを含有することを特徴とする。塗膜形成材としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができる。有機系中空粒子の材質としては有機化合物であれば良いが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、スチレンの少なくとも1種以上により構成されていると、中空率が高い状態を保持できるので好ましい。光触媒塗膜は、光触媒とバインダーとを含有し、最表側に形成されていることを特徴とする。バインダーとしては、メチルシリケート、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリ(メタ)アクリル酸、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサン等があるが、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種以上により構成されていることが好ましい。なお、断熱塗膜の形成工程において、断熱塗膜を形成する塗料が水溶性溶剤を含有していると形成される塗膜が均質となりやすいので、断熱塗膜は水溶性溶剤を含有していることが好ましい。その場合、水溶性溶剤は、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上からなると、均質化により貢献するので好ましい。無機質板としては、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板などの窯業系サイディングボードや、金属系サイディングボード、ALCボードなどあるが、窯業系サイディングボードであると、断熱効果が顕著に向上するので好ましい。更に、断熱塗膜の表面にはクリヤー塗膜が形成されており、該クリヤー塗膜の表面に光触媒塗膜が形成されていると、建築板は耐候性に優れるとともに、該断熱塗膜が光触媒活性により劣化することを防げるので、好ましい。
また、本発明は、無機質板の表面に、塗膜形成材と有機系中空粒子とを含有する断熱塗料を塗布し、断熱塗膜を形成する工程と、該断熱塗膜の上に光触媒とバインダーとを含有する光触媒塗料を塗布し、光触媒塗膜を形成する工程とを備える建築板の製造方法も提供する。塗膜形成材としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができる。有機系中空粒子の材質としては有機化合物であれば良いが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、スチレンの少なくとも1種以上により構成されていると、中空率が高い状態を保持できるので好ましい。光触媒塗料のバインダーとしては、メチルシリケート、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリ(メタ)アクリル酸、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサン等があるが、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種以上により構成されていることが好ましい。また、断熱塗料が水溶性溶剤を含有していると、形成される断熱塗膜が均質となりやすいので好ましい。その場合、水溶性溶剤は、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上からなると、均質化により貢献するので好ましい。無機質板としては、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板などの窯業系サイディングボードや、金属系サイディングボード、ALCボードなどあるが、窯業系サイディングボードに本発明の製造方法を行うと、断熱効果が顕著に向上するので好ましい。更に、光触媒塗膜を形成する工程は、断熱塗膜を形成した後、クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、該クリヤー塗膜の表面に光触媒塗料を塗布することにより行うと、建築板は耐候性に優れるとともに、該断熱塗膜が光触媒活性により劣化することを防げるので、好ましい。光触媒塗膜を最表側に形成すると、光が照射されたときに親水性を獲得し、防汚機能が発現するので、汚れが付着しにくく、断熱効果が保持されやすいので、好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、汚れによる断熱性の低下を防ぐことができる建築板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0010】
本発明の建築板は、無機質板の表面が、断熱塗膜と光触媒塗膜とを有することを特徴とする。
【0011】
無機質板としては、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板などの窯業系サイディングボードや、金属系サイディングボード、ALCボードなどある。本発明においては、無機質板が窯業系サイディングボードであると、断熱塗膜による断熱効果が顕著に向上するので好ましい。なお、断熱塗膜は、無機質板の表面に直接形成されていていても良いが、無機質板の上にシーラー塗膜を形成させ、その上に断熱塗膜が形成されていても良い。シーラー塗膜は、例えば、アクリルエマルション、アクリルウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、溶剤型湿硬ウレタン、水分散型イソシアネート等によって構成することができ、1層でもよいが、2層以上とすることもできる。なお、無機質板としては、表面が平らな板でも、表面に凹凸模様を有する板でも良い。
【0012】
そして、断熱塗膜は、塗膜形成材と、有機系中空粒子とを含有し、無機質板の表面を被覆している。塗膜形成材としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂等がある。有機系中空粒子としては、高い中空率と小さい粒径であるために、有機化合物であれば良い。詳しくは、有機系材料は柔軟性があるので、中空粒子を形成する際に材料が伸び、平均中空率が高くなるとともに、その状態を保持することができるためである。有機系中空粒子の形状としては、平均粒径5〜50μmの範囲で、かつ、平均中空率80%以上であることが好ましい。有機系中空粒子の平均粒径が5μm未満では断熱効果が十分に得られず、50μmより大きいと、形成される断熱塗膜の強度が弱くなり、該断熱塗膜が脆い、塗膜密着の不具合が発生しやすい等の懸念が生ずるためである。また、有機系中空粒子の平均中空率が80%未満では断熱効果が十分に得られない懸念があるためである。有機系中空粒子の平均中空率の好ましい上限値は、有機系中空粒子の中空状態を保持できることを条件に、種々の要因によって異なるが、平均中空率が90%以上であると、より断熱塗膜が断熱効果を発揮することができるので好ましい。なお、この平均中空率とは体積百分率による値である。有機系中空粒子が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、スチレンの少なくとも1種以上により構成されていると、耐久性、断熱性により優れるので好ましい。
【0013】
断熱塗膜において、塗膜形成材、有機系中空粒子の含有量に特に制限は無いが、断熱塗膜が有機系中空粒子を固形分100質量部あたり0.01質量部未満では断熱効果が十分に得られず、5.0質量部より多いと、形成される断熱塗膜の強度が弱くなり、該断熱塗膜が脆い、塗膜密着の不具合が発生しやすい等の懸念があるので、有機系中空粒子を固形分100質量部あたり0.01〜5.0質量部含有することが好ましい。また、断熱塗膜の平均塗膜厚が5μm未満では断熱効果が十分に得られない、500μmを超えると、形成される断熱塗膜の強度が弱くなる、乾燥時間が長くなる、無機質板の表面が意匠柄を有している場合には柄の凹凸が埋もれて外観が変わってしまう等の懸念があるので、断熱塗膜の平均塗膜厚は5〜500μmであることが好ましい。
【0014】
また、本発明では、断熱塗膜の形成工程において、断熱塗膜を形成する塗料が水溶性溶剤を含有していると、断熱塗膜がより均質となるので、断熱塗膜は水溶性溶剤を含有していても良い。その場合、水溶性溶剤がグリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上からなると、均質化により貢献するので好ましい。
【0015】
更に、本発明の建築板は光触媒塗膜を含有する。光触媒塗膜は、光触媒とバインダーとを含有し、最表側に形成されている。バインダーとしては、メチルシリケート、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリ(メタ)アクリル酸、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサン等があるが、スルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種以上により構成されていることが好ましい。光触媒としては、酸化チタンが一般的であるが、酸化チタンの他に、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム等がある。なお、光触媒は、バインダーの種類によっては塗膜を劣化させる懸念があるので、アパタイト、ゼオライト、シリカ等により被覆された光触媒を用いることができる。光触媒の含有量に特に定めはないが、バインダーの固形分100質量部に対して10〜80質量部であると、防汚機能に優れるとともに、該光触媒が安定的に分散できるので、好ましい。また、光触媒塗膜の膜厚は0.1〜3μmであると、防汚機能に優れるとともに、塗膜にクラックが発生することが抑えられるので、好ましい。
【0016】
なお、本発明においては、断熱塗膜の表面にはクリヤー塗膜が形成されており、該クリヤー塗膜の表面に光触媒塗膜が形成されていると、建築板は耐候性に優れるとともに、該断熱塗膜が光触媒活性により劣化することを防げるので、好ましい。クリヤー塗膜は、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂等によって構成することができる。
【0017】
そして、本発明の建築板の製造方法は、無機質板の表面に、塗膜形成材と有機系中空粒子とを含有する断熱塗料を塗布し、断熱塗膜を形成する工程と、該断熱塗膜の上に、光触媒とバインダーとを含有する光触媒塗料を塗布し、光触媒塗膜を形成する工程とを備える。無機質板、塗膜形成材、有機系中空粒子、バインダー、光触媒については前述したとおりである。
【0018】
断熱塗膜を形成する工程において、断熱塗料は、塗膜形成材と有機系中空粒子とを含有した塗料によって形成されている。この塗料としては、例えば、アクリルシリコンエマルション、アクリルエマルション、シリコン樹脂系塗料、アクリルウレタン系塗料、フッ素樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等によって構成することができる。
断熱塗料において、塗膜形成材、有機系中空粒子の含有量に特に制限は無いが、有機系中空粒子の含有量が塗料固形分100質量部あたり0.01質量部未満では形成された断熱塗膜の断熱効果が十分ではない懸念があり、5.0質量部より多いと、形成される断熱塗膜の強度が弱くなり、該断熱塗膜が脆い、塗膜密着が発生しやすい等の懸念があるため、有機系中空粒子を固形分100質量部あたり0.01〜5.0質量部含有することが好ましい。なお、有機系中空粒子の含有量は、断熱塗料を構成する固形分100質量部に対する、有機系中空粒子の膜を形成する有機固形分の割合を表すものである。
また、断熱塗料が水溶性溶剤を含有していると、形成される断熱塗膜が均質となりやすいので好ましい。詳しくは、前述した断熱効果の高い有機系中空粒子が混合されていると、断熱塗料を無機質板に塗布し、乾燥する際に、形成中の塗膜全体に熱が均等に伝わり難いという問題がある。そこで、水溶性溶剤が含有されている断熱塗料を用いることにより、乾燥時に熱が形成中の塗膜全体に伝わりやすくなる。その結果、均質な断熱塗膜を形成することができ、建築板全体にわたって、断熱塗膜によって均質な断熱効果を得ることができ、全体として建築板の断熱性が向上する。水溶性溶剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールN−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等、又はこれらの混合物を用いることができる。その場合には、断熱塗料の塗布及び乾燥における塗膜温度は、水溶性溶剤の沸点よりも低くする。それゆえ、乾燥を経た後にも、水溶性溶剤は、充分に残存して、断熱塗膜の均質な成膜に寄与することができる。水溶性溶剤が、グリコール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の少なくとも1種以上からなると、沸点が高いので、断熱塗膜の形成工程において最後まで残存しやすく、断熱塗膜の均質化に貢献しやすいので好ましい。なお、水溶性溶剤は、断熱塗料の固形分を100質量部としたとき、0.1〜10質量部含有されていると、断熱塗膜全体の均質な成膜を確実に行うことができるので、好ましい。
また、断熱塗料の色調は顔料を用いて調整することができる。すなわち、断熱塗料として顔料が含有されている塗料を用いても良いし、顔料を含有しない塗料を用いても良い。
塗料の塗布方法としては、スプレー塗布、ロールコーター塗布、カーテンコーター塗布、浸漬塗布など様々有るが、いずれでも良い。平均塗膜厚に特に制限はないが、5μm未満では、形成される断熱塗膜は断熱効果が十分ではなく、500μmを超えると、形成される断熱塗膜の強度が弱くなる、乾燥時間が長くなる、無機質板の表面が意匠柄を有している場合には柄の凹凸が埋もれて外観が変わってしまう等の懸念があるので、断熱塗膜の平均塗膜厚を5〜500μmとすることが好ましい。
乾燥は、特に制限は無く、断熱塗膜を形成できれば良いが、有機系中空粒子の中空構造を確実に保持しつつ、断熱塗膜を形成することを考慮すると、乾燥時の塗膜温度を130℃以下とすることが好ましい。有機系中空粒子の耐熱性を考慮すると、40〜110℃とすることがより好ましい。
【0019】
光触媒塗膜を形成させる工程において、光触媒塗料の塗料としては、バインダーに光触媒を分散させた塗料を用いることができる。バインダー、光触媒については、前述したとおりである。光触媒塗料は、断熱塗膜に直接塗布しても良いが、先にクリヤー塗料を塗布し、断熱塗膜の上にクリヤー塗膜を形成させた後、該クリヤー塗膜の上に光触媒塗料を塗布しても良い。クリヤー塗膜の上に光触媒塗膜を形成させると、建築板は耐候性に優れるとともに、該断熱塗膜が光触媒活性により劣化することを防げるので、好ましい。
【0021】
厚さ16mmで、無機質板(木繊維補強セメント板)の表面に、アクリル樹脂を主成分とする白色水性塗料を塗布し、約80℃のドライヤーで約5分乾燥してシーラー層を形成した。次いで、その表面に表1に示す断熱塗料を塗布し、約80℃のドライヤーで約5分乾燥し、実施例1〜7、比較例1〜4の建築板を製造した。なお、いずれも表面がフラット柄の無機質板を用いた。また、クリヤー塗料を塗布したものについては、約80℃のドライヤーで約15分乾燥してクリヤー塗膜を形成した。
【0022】
各建築板の詳細は、表1に記載した通りである。
すなわち、実施例1では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてアクリロニトリルからなり、平均粒径が15μm、平均中空率98%の粒子を2.0質量部、水溶性溶剤としてエチレングリコールを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が50μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、バインダーとしてスルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレンを、光触媒としてアパタイトで表面を被覆した酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し12.5質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が0.5μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例2では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子として塩化ビニリデンとアクリロニトリルからなり、平均粒径が20μm、平均中空率98%の粒子を5.0質量部、水溶性溶剤としてプロピレングリコールを0.2質量部含有する塗料を用いて、膜厚が30μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてスルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレンを、光触媒としてアパタイトで表面を被覆した酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し12.5質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が1.0μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例3では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてメタクリロニトリルとアクリル酸メチルからなり、平均粒径が40μm、平均中空率98%の粒子を0.5質量部、水溶性溶剤としてジエチレングリコールを10質量部含有する塗料を用いて、膜厚が500μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてポリオルガノシロキサンを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてポリオルガノシロキサンを、光触媒として酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し50質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が1.0μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例4では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてアクリロニトリルからなり、平均粒径が15μm、平均中空率98%の粒子を2.0質量部、水溶性溶剤としてエチレングリコールを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が50μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてポリオルガノシロキサンを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてポリオルガノシロキサンを、光触媒として酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し50質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が1.0μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例5では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてアクリロニトリルからなり、平均粒径が15μm、平均中空率98%の粒子を2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が100μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてスルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレンを、光触媒として酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し50質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が1.0μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例6では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてアクリロニトリルからなり、平均粒径が15μm、平均中空率98%の粒子を2.0質量部、水溶性溶剤としてトリプロピレングリコールモノブチルエーテルを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が100μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてスルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレンを、光触媒として酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し50質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が3.0μmの光触媒塗膜を形成した。
実施例7では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてメタクリロニトリルとアクリル酸メチルからなり、平均粒径が40μm、平均中空率98%の粒子を0.5質量部、水溶性溶剤としてジエチレングリコールを10質量部含有する塗料を用いて、膜厚が500μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてフッ素エマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、更にその上に、バインダーとしてスルフォン酸をグラフト重合したポリテトラフルオロエチレンを、光触媒として酸化チタンを該塗膜形成材の固形分100質量部に対し50質量部含有する塗料を塗布して、膜厚が1.0μmの光触媒塗膜を形成した。
一方、比較例1では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてアクリロニトリルからなり、平均粒径が15μm、平均中空率98%の粒子を2.0質量部、水溶性溶剤としてエチレングリコールを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が40μmの断熱塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成した。しかし、比較例1では、光触媒塗料を塗布せず、光触媒塗膜を形成させなかった。
比較例2では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有する塗料を用いて、膜厚が20μmの断熱塗膜を形成した。すなわち、比較例2では、中空粒子と水溶性溶剤を含有しない塗料を用いて塗膜を形成した。そして、その上に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するクリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成したが、光触媒塗料は塗布しなかった。
比較例3では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを、中空粒子としてセラミックからなり、平均粒径150μmで、平均中空率30%の粒子を5.0質量部、水溶性溶剤としてプロピレングリコールを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が100μmの断熱塗膜を形成した。そして、比較例3では、クリヤー塗料と光触媒塗料は塗布しなかった。
比較例4では、断熱塗料に、塗膜形成材としてアクリルシリコンエマルションを含有するとともに、アクリル酸メチルからなり、平均粒径20μmで、平均中空率0%(中実)の粒子を2.0質量部、水溶性溶剤としてエチレングリコールを2.0質量部含有する塗料を用いて、膜厚が100μmの断熱塗膜を形成した。そして、比較例4では、クリヤー塗料と光触媒塗料を塗布しなかった。
【0023】
実施例1〜7、比較例1〜4の建築板に対して、断熱効果の試験を行った。試験方法としてはランプ照射法を用いた。すなわち、建築板表面から10cm離れた位置に配置した100V、150Wのハロゲンランプによって、建築板の表面に光を照射した。そして、10分間連続照射した時点において、建築板表面の温度を放射温度計を用いて測定し、初期の表面温度とした。初期の表面温度を測定した後、経年使用による汚れを想定してカーボン粉を3%含むケイ砂を各建築板の表面に散布し、その後、雨水を想定して霧吹きで水を散布し、粉体を除去した後、再度、各建築板の表面の温度を測定したので、その結果も表1に示す。
【0025】
なお、表1において、中空粒子(中実粒子)の含有量、及び水溶性溶剤の含有量は、塗料固形分100質量部に対する質量部にて表されている。また、中空粒子(中実粒子)の平均中空率は、中空粒子(中実粒子)に対する体積百分率により表されている。
【0026】
表1から分かるように、比較例2〜4の初期表面温度は、60〜65℃に達したのに対し、実施例1〜7の初期表面温度は、50〜56℃に収まった。
また、経時変化をみると、光触媒塗膜を形成していない比較例1〜4は、5〜8℃温度が上昇したのに対し、光触媒塗膜を形成した実施例1〜7は、1℃以下に温度上昇が抑えられていた。
すなわち、実施例1〜7では、確実に建築板の温度上昇を抑制することができ、その断熱性を維持することができると言える。
【0027】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。例えば、断熱塗料、クリヤー塗料、光触媒塗料として、更に、炭酸カルシウム、クレー、アクリルビーズなどの充填剤、艶消しビーズ、光安定剤、紫外線吸収剤を含む塗料を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、汚れによる断熱性の低下を防ぐことができる建築板及びその製造方法を提供することができる。