(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示装置は、前記中継機器および複数の通信回線のそれぞれについて、前記通信不能状態の経路を構成する回数を表示する、請求項1〜3の何れか一項のPLC通信システム。
各前記通信処理ノードは、送信データの送信先アドレスに基づいて他の通信処理ノードに対してデータ送信を行うと共に、データ送信をできない場合にデータを再送信するリトライ処理を行い、
前記PLCは、前記リトライ処理が設定回数行われる場合に、送信元の通信処理ノードと送信先の通信処理ノードとを接続する経路を通信不能状態の経路と認識する、請求項1〜4の何れか一項のPLC通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多数の通信機器が接続されている場合には、通信経路のどの部位が異常であるかを発見することは容易ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、作業者が、通信経路の異常の場合にどの部位が異常であるかを把握できるPLC通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1)本手段に係るPLC通信システムは、プログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)と、複数の処理機器と、前記PLCおよび前記複数の処理機器のそれぞれに設けられ、前記PLCおよび前記複数の処理機器のそれぞれが他と通信可能とする3以上の通信処理ノードと、前記通信処理ノード間をデータ通信可能に接続する中継機器および複数の通信回線と、を備えるPLC通信システムであって、前記PLCは、通信処理ノード間の通信不能状態
および前記通信処理ノード間の正常通信状態を検出し、前記PLC通信システムは、前記中継機器および複数の通信回線のそれぞれについての前記通信不能状態の経路を構成する回数に基づいて、通信経路における異常部位を表示する表示装置を備える。
【0006】
2つの通信処理ノード間を接続する前記中継機器および複数の通信回線のうち前記通信不能状態の経路を構成すると判定された部位には、異なる2つの通信処理ノード間において前記正常通信状態の経路を構成すると判定される部位が含まる場合がある。前記表示装置は、前記中継機器および複数の通信回線のうち前記通信不能状態の経路を構成すると判定された部位の中から、前記正常通信状態の経路を構成すると判定された部位以外の部位
であって、さらに前記通信不能状態の経路を構成する回数が第一閾値以上の部位を、前記異常部位として表示する。
(請求項2,8)好ましくは、前記表示装置は、全ての通信回線図を表示すると共に、前記通信回線図中における前記異常部位を他部位とは異なる表示とする。
【0007】
(請求項3,9)好ましくは、前記表示装置は、
前記中継機器および複数の通信回線のうち前記通信不能状態の経路を構成すると判定された部位の中から、前記正常通信状態の経路を構成すると判定された部位以外の部位であって、さらに前記通信不能状態の経路を構成する回数が前記第一閾値より少なく第二閾値以上の部位を注意部位として、前記異常部位および他部位とは異なる表示方法にて表示する。
(請求項4,10)好ましくは、前記表示装置は、前記中継機器および複数の通信回線のそれぞれについて、前記通信不能状態の経路を構成する回数を表示する。
【0008】
(請求項
5,11)好ましくは、前記通信回線は、FL−netであり、各前記通信処理ノードは、順次トークンの送受を行うと共に、前順の通信処理ノードからトークンを受信しない場合に次順の通信処理ノードに対して再発行したトークンを送信するリトライ処理を行い、前記PLCは、前記リトライ処理が設定回数行われる場合に、当該通信処理ノードと前順の通信処理ノードとを接続する経路を通信不能状態の経路と認識する。
【0009】
(請求項
6,12)好ましくは、各前記通信処理ノードは、送信データの送信先アドレスに基づいて他の通信処理ノードに対してデータ送信を行うと共に、データ送信をできない場合にデータを再送信するリトライ処理を行い、前記PLCは、前記リトライ処理が設定回数行われる場合に、送信元の通信処理ノードと送信先の通信処理ノードとを接続する経路を通信不能状態の経路と認識する。
【0010】
(請求項
7)好ましくは、前記表示装置は、前記通信処理ノード毎のリトライ処理の回数をさらに表示する。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)本手段に係るPLC通信システムによれば、表示装置が、中継機器および複数の通信回線のそれぞれについての通信不能状態の経路を構成する回数に基づいて異常部位を表示している。通信不能状態の経路を構成する回数が多いほど、当該部位が異常部位である可能性が高い。そこで、通信不能状態の経路を構成する回数に基づいた部位を表示装置に表示することで、作業者が容易に異常部位を特定することができる。
【0012】
また、2つの通信処理ノード間における通信経路の一部が他の
2つの通信処理ノード間の通信経路を構成する場合がある。そして、
他の2つの通信処理ノード間における通信経路が正常通信
状態の経路であったとしても、
2つの通信処理ノード間の通信経路が通信不能状態となる場合がある。このような場合には、上記正常通信
状態の経路を構成する部位が、通信不能状態の経路を構成する部位としてカウントされる可能性がある。そこで、通信不能状態の経路としてカウントされたとしても、当該部位が正常通信
状態の経路であれば、当該部位を異常部位
として表示しないようにしている。従って、確実に異常部位を特定することができる。
【0013】
(請求項
2,8)全ての通信回線図を表示した上で、異常部位を他部位と異なる表示とすることで、異常部位がどこに存在しているのかを容易に把握できる。
【0014】
(請求項
3,9)通信不能状態を構成する回数が多い場合には異常であるとしても、当該回数が異常とするほど多くないとしても異常となる可能性がある場合がある。このような場合に、異常部位と注意部位と他部位(異常部位および注意部位以外の部位)とを区別して表示することで、作業者がシステム管理を行い易くできる。そして、作業者に対して、注意部位が異常にならないように注意喚起を図ることができる。
【0015】
(請求項
4,10)表示装置に通信不能状態の経路を構成する回数を表示することで、異常部位の中でも、どのような現象が生じているかを把握することができる。さらに、異常部位と判定された部位が複数存在する場合に、例えば、実際の異常検査を行う順位を当該回数が多い順にすることができる。これにより、早期に、異常部位を検出できる。
【0016】
(請求項
5,11)FL−netによる通信回線の場合に、確実に異常部位を把握できる。
(請求項
6,12)送信先アドレスをもつデータの場合、例えばTCP(Transmission Control Protocol)の場合に、確実に異常部位を把握できる。
【0017】
(請求項
7)リトライ処理の回数をさらに表示することで、異常部位の予測を図ることができる。さらに、リトライ回数を表示しておくことで、どの通信処理ノードが異常であるかを確認することができる。例えば、異常部位が複数存在する場合に、リトライ処理回数が多い通信処理ノードによる通信経路を構成する部位を優先的に確認することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
(ネットワークシステムの全体構成)
第一実施形態のPLC通信システムを含むネットワークシステムの全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、ネットワークシステムは、工作機械や産業用ロボットなどを制御するプログラマブルロジックコントローラ(以下、「PLC」と称する)20を含み、他の処理機器と通信するシステムである。
【0020】
ネットワークシステムは、PLC20の他、PLC20に対してパラメータの入力、通信回線図の入力などを行う入力装置10、PLC20に関する情報を表示する表示装置30を備える。さらに、ネットワークシステムは、PLC20に接続された通信処理ノード41を備える。通信処理ノード41は、FL-net、DeviceNet(登録商標、以下同様)に対応する。
【0021】
そして、
図1においては、ネットワークシステムは、通信処理ノード41を介して、FL-net網100およびDeviceNet網200を形成する。FL-net網100は、複数の処理機器150(以下、「機器」と称する)と、各機器150に設けられる複数の通信処理ノード140と、通信処理ノード41と各通信処理ノード140との間をデータ通信可能に接続する中継機器110および複数の通信回線120とを備える。DeviceNet網200は、複数の処理機器250と、各処理機器250に設けられる複数のスレーブノードとしての通信処理ノード240と、マスタノードとしての通信処理ノード41と各スレーブノードとしての通信処理ノード240との間をデータ通信可能に接続する中継機器210および複数の通信回線220とを備える。
【0022】
FL-net網100により通信処理ノード41に通信可能に接続される他の機器150は、例えば、他のPLCなどである。また、DeviceNet網200により通信処理ノード41に通信可能に接続される他の機器250は、他のPLCやI/Oモジュールなどである。なお、各網100,200において、中継機器110,210としてのハブを用いて、接続する他の機器の数を増加することが可能である。DeviceNet網200において、中継機器210は、例えば、T分岐タップなどのハブである。
【0023】
入力装置10は、作業者によりPLC20における設定値を入力することができ、また、表示装置30において表示する内容の設定変更情報を入力することができる。PLC20は、他の機器150,250の状態情報をハブ110,210および通信回線120,220を介して取得して、演算または機器の動作処理を行う。さらに、PLC20は、自ら演算した結果または接続される機器の状態情報を、他の機器150,250へ送信する。さらに、PLC20は、ネットワークに接続されている通信処理ノード140,240の電源がON状態であるかOFF状態であるかを認識することができる。さらに、PLC20は、通信処理ノード140,240間の通信が不能状態であるか、正常状態であるかを検出することができる。
【0024】
表示装置30には、全ての通信回線図(ネットワーク構成図)が表示される。さらに、表示装置30には、異常部位および注意部位をそれぞれ異なる表示方法(例えば、異なる色)により表示される。また、表示装置30には、全ての通信回線図を表示せずに、異常部位および注意部位を特定できる情報のみを表示することもできる。
【0025】
(PLC通信システムの構成)
次に、本実施形態のPLC通信システム101について、
図2を参照して説明する。本実施形態のPLC通信システム101は、
図1に示すネットワークシステムのうち、入力装置10、PLC20、表示装置30、通信処理ノード41およびFL-net網100を含む部分に相当する。ただし、
図2には、FL-net網100における通信処理ノードの一部のみを図示する。
【0026】
図2に示すように、PLC通信システム101は、入力装置10と、PLC20と、表示装置30と、PLC20に接続される通信処理ノード1(以下、「ノード」と称する)、中継機器としてのハブ111−117および通信回線121−139(以下、「回線」と称する)を介して接続されたノード2〜13と、各ノード2−13に接続された他の機器2−13とを備える。また、PLC通信システム101は、相互に各ノード1−13間をデータ通信可能に接続するために、FL-netに準拠したハブ111−117および回線121−139を備える。回線121−139は、ノード1−13のそれぞれとハブ111−117と間を接続する。
【0027】
ここで、FL-net網100においては、各ノード1−13がデータの送信権(トークン)を決められた順序で移動させる。
図2において、トークンの移動順序は、ノード番号順、すなわち、ノード1→ノード2→ノード3→ノード4→ノード5→ノード6→ノード7→ノード8→ノード9→ノード10→ノード11→ノード12→ノード13としている。そして、トークンを有するノードは、他のノードに対してデータを送信することができる。換言すると、ノードは、トークンを有する場合に他のノードに対してデータを送信でき、トークンを有さない場合にはデータを送信できない。例えば、ノード2が前順のノード1からトークンを受け取ると、受け取ってから規定時間内に他のノード1,3−13へデータを送信し、当該規定時間を経過すると当該ノード2は前順から受け取ったトークンを次順のノード3に送る。
【0028】
しかし、なんらかの原因により、例えばノード6が前順のノード5からトークンを受け取るべきタイミングになったにも関わらず、トークンを受け取ることができない場合には、ノード6はトークンを再発行して、再発行したトークンを次順のノード7に送信する。この処理をリトライ処理と称する。つまり、当該ノード6は、新たなトークンを発行して、必要なデータを他のノード1−5,7−13へ送信した後に、決められた次順のノード7に当該トークンを送信する。
【0029】
(既発行トークンの移動およびトークンの再発行)
次に、回線128に断線などの通信異常が生じた場合を例に挙げ、既発行トークンの移動およびトークンの再発行について
図2−
図4を参照して説明する。
図2および
図3に示すように、時刻t1において、トークンは、ノード1から次順のノード2へ移動する。ここで、
図3において、太線矢印は、既に発行されたトークンが移動したことを示す。そして、直後に回線128が断線したとする。トークンは、時刻t2において、ノード2から次順のノード3へ移動し、時刻t3において、ノード3から次順のノード4へ移動し、時刻t4において、ノード4から次順のノード5へ移動する。
【0030】
続いて、時刻t5において、ノード5から次順のノード6へ送信する。しかし、回線128が断線しているため、ノード6は、前順のノード5からトークンを受け取ることはできない。従って、ノード6は、トークンを再発行して、時刻t6において、再発行したトークンを次順のノード7へ送信する。つまり、ノード6は、リトライ処理を行う。ここで、
図3において、二重線矢印は、再発行されたトークンが移動したことを示す。
【0031】
回線128の断線によって、ノード7は、前順のノード6から送信されたトークンを受け取ることはできない。そのため、ノード7は、トークンを再発行して、時刻t7において、再発行したトークンをノード8へ送信する。つまり、ノード7もリトライ処理を行う。
【0032】
続いて、時刻t8ーt10において、ノード8→ノード9→ノード10→ノード11へ移動する。続いて、回線128が断線しているため、時刻t11,t12において、ノード12,13は、それぞれの前順のノード11,12からトークンを受け取ることができない。従って、ノード12,13は、トークンを再発行する。つまり、ノード12,13は、リトライ処理を行う。時刻t14−26は、時刻t1−t13と同様の処理が行われる。
【0033】
図3に示すように、トークンが移動しまたは再発行される場合において、各ノード1−13のリトライ回数は、
図4に示すようになる。
図4に示すように、ノード1−5,8−11のリトライ回数は、t1−t30の間、0回である。しかし、ノード6のリトライ回数は、時刻t6にて1回となり、t19にて2回となる。また、ノード7のリトライ回数は、t7にて1回、t20にて2回となる。ノード12のリトライ回数は、t12にて1回、t25にて2回となる。ノード13のリトライ回数は、t13にて1回、t26にて2回となる。
【0034】
(PLCによる通信不能状態の判定)
次に、PLC20による通信不能状態の判定について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、ノードのカウンタnを初期値1にセットする(S1)。そして、後述するが、カウンタnを1ずつ加算することで、全てのノード1−13について、以下の処理を行う。S1の次には、ノード(n)におけるリトライ回数が設定回数k回以上であるか否かを判定する(S2)。ここで、kは、例えば1や2とする。つまり、k=1の場合には、リトライ回数が1回以上となるノードが対象となる。そして、nが初期値1の場合には、ノード1におけるリトライ回数がk回以上であるかを判定する。
【0035】
ここで、
図4に示すように、時刻t30において、ノード1−5,8−11は、リトライ回数が0回であるため、この判定はNoとなる。一方、ノード6−7,12−13は、リトライ回数が2回であるため、この判定はYesとなる。
【0036】
続いて、ノード(n)におけるリトライ回数が設定回数k回以上の場合には(S2:Y)、リトライ処理の原因経路を「通信不能状態の経路」と決定する(S3)。例えば、ノード6はトークンのリトライ回数が2回であるため、S2:Yとなり、当該ノード6と前順のノード5とを接続する通信経路が「通信不能状態の経路」であると決定される。ノード5とノード6との通信経路は、回線135→ハブ116→回線134→ハブ115→回線131→ハブ111→回線122→ハブ112→回線125→ハブ113→回線128→ハブ114→回線129である。
【0037】
そして、S3の後およびS2:Nの場合には、ノードのカウンタnが、ノードの最大数n(max)である場合には、処理を終了する(S4:Y)。一方、ノードのカウンタnが最大数n(max)に達していなければ(S4:N)、カウンタnに1を加算して(S5)、S2から繰り返す。このように、PLC20は、リトライ回数が設定回数k回以上となる場合に、リトライ処理の原因経路を通信不能状態の経路として認識する。
【0038】
(表示装置の処理および表示内容)
次に、回線128が断線などの通信異常が生じた場合を例に挙げ、表示装置30による処理および表示内容について
図6−
図8を参照して説明する。ここで、表示装置30には、
図6に示すように、全ての通信回線図が表示される。表示装置30に表示される通信回線図において、各ノード1−13の部位に、カッコ内の数字としてリトライ回数が表示される。例えば、ノード6,7,12,13のカッコ内には、2が表示され、他のノードのカッコ内には0が表示される。
【0039】
表示装置30は、
図7に示すように、通信不能回数のカウント処理を行う。通信不能回数のカウント処理とは、ハブ111−117および回線121−139のそれぞれについて、通信不能状態の経路を構成した回数相当値を算出する処理である。
図7に示すように、通信不能状態の経路のカウンタjを初期値1にセットする(S11)。このカウンタjは、
図5に示すPLC20の処理において、通信不能状態の経路と決定された経路の数に相当する。
【0040】
続いて、カウンタjの通信不能状態の経路を構成するハブおよび回線について、通信不能回数を1ずつ加算する(S12)。例えば、ノード6によるトークンの再発行の場合において、通信不能状態の経路を構成するハブおよび回線とは、ノード5とノード6とを接続する経路である。つまり、当該経路を構成するハブ116,115,111,112,113,114と回線135,134,131,122,125,128,129のそれぞれが、通信不能回数
を1回加算
する。
【0041】
続いて、カウンタjが、最大数j(max)である場合には、処理を終了する(S13:Y)。一方、カウンタjが最大数j(max)に達していなければ(S13:N)、カウンタjに1を加算して(S14)、S12から繰り返す。従って、ハブ111−117および回線121−139のそれぞれについて、「通信不能状態の経路を構成する回数」が決定される。
【0042】
そして、
図6に示すように、表示装置30に表示される通信回線図において、各ハブ111−117および回線121−139のそれぞれの部位に、カッコ内の数字として「通信不能状態の経路を構成する回数」が表示される。例えば、ハブ116,115,111,112,113,114と回線134,131,122,125,128のカッコ内には、4が表示される。また、ハブ117および回線137,129,130のカッコ内には、2が表示される。
【0043】
次に、表示装置30は、
図8に示すように、異常部位と注意部位との判定を行う。この判定は、ハブ111−117および回線121−139のそれぞれについて行う。まず、表示装置30は、通信不能回数が第一閾値Th1以上であるか否かを判定する(S21)。ここでは、第一閾値Th1は、3回とする。従って、例えばハブ114,116の通信不能回数は4回であるため、第一閾値Th1以上である。
【0044】
通信不能回数が第一閾値Th1以上の場合には(S21:Y)、続いて、当該部位が正常通信経路を構成する部位であるか否かを判定する(S22)。ここで、正常通信経路とは、実際に通信が可能であった経路である。例えば、ノード7とノード8とを接続する経路は正常通信経路となる。このときの正常通信経路を構成する部位とは、ハブ117,116,115,111,112および回線138,137,134,131,122,124である。
【0045】
そして、正常通信経路を構成する部位である場合には(S22:Y)、そのまま処理を終了する。一方、正常通信経路を構成する部位ではない場合には(S22:N)、当該部位を異常部位と判定し(S23)、処理を終了する。例えば、ハブ116は、通信不能回数が4回であるが、正常通信経路を構成する部位である。従って、ハブ116は、異常部位とは判定されず、正常部位であると判定される。一方、ハブ114および回線128は、通信不能回数が4回であって、正常通信経路を構成する部位ではない。従って、ハブ114および回線128は、異常部位と判定される。
【0046】
そして、S21において、通信不能回数が第一閾値Th1より少ない場合には(S21:N)、続いて、表示装置30は、通信不能回数が第二閾値Th2以上であるか否かを判定する(S24)。ここでは、第二閾値Th2は、1回とする。従って、例えばハブ117および回線129の通信不能回数は2回であるため、第二閾値Th2以上である。
【0047】
通信不能回数が第二閾値Th2以上の場合には(S24:Y)、続いて、当該部位が正常通信経路を構成する部位であるか否かを判定する(S25)。正常通信経路とは、上述したように、実際に通信が可能であった経路である。そして、正常通信経路を構成する部位である場合には(S25:Y)、そのまま処理を終了する。
【0048】
一方、正常通信経路を構成する部位ではない場合には(S25:N)、当該部位を注意部位と判定し(S26)、処理を終了する。例えば、ハブ117は、通信不能回数が2回であるが、正常通信経路を構成する部位である。従って、ハブ117は、注意部位とは判定されず、正常部位であると判定される。一方、回線129は、通信不能回数が2回であって、正常通信経路を構成する部位ではない。従って、回線129は、注意部位と判定される。
【0049】
そして、
図6に示すように、表示装置30に表示される通信回線図において、異常部位と判定された部位は、太二重実線にて表示され、注意部位と判定された部位は、太二重破線にて表示され、正常部位と判定された部位は、細実線にて表示される。
【0050】
このように、表示装置30には、正常部位、異常部位および注意部位を区別して、それぞれ異なる表示方法により表示される。なお、図面上、線の太さ、線種などにより区別したが、異なる色により区別して表示することもでき、点灯状態または点滅状態により区別して表示することもできる。
【0051】
(回線126およびハブ114が異常となった場合)
上記においては、回線128が断線などの異常となった場合について説明した。以下に、他の部位が異常となった場合について、
図9−
図10を参照して説明する。
【0052】
図9には、実際の異常箇所を示すPLC通信システム101を示す。
図9に示すように、回線126およびハブ114が異常となったとする。この場合、ノード4、ノード5、ノード6、ノード7,ノード12、ノード13がリトライ処理を行う。表示装置30には、
図10に示すように表示される。なお、
図10においては、上記ノード4,5,6,7,12,13は、2回ずつのリトライ処理を行ったものとしている。
【0053】
図10に示すように、回線128およびハブ114が異常部位として表示され、回線126,129,130,135が注意部位として表示され、他は正常部位として表示される。このように、実際に異常となる部位が、異常部位または注意部位に含まれており、作業者は、早期の異常部位の特定できる。
【0054】
(第一実施形態の効果)
上記のように、表示装置30が、ハブ111−117および回線121−139のそれぞれについての通信不能状態の経路を構成する回数に基づいて異常部位を表示している。そして、上記から明らかなように、通信不能状態の経路を構成する回数が多いほど、当該部位が異常部位である可能性が高い。そこで、通信不能状態の経路を構成する回数に基づいた部位を表示装置30に表示することで、作業者が容易に異常部位を特定することができる。
【0055】
さらに、表示装置30は、異常部位の他に注意部位を区別して表示している。通信不能状態を構成する回数が多い場合には異常であるとしても、当該回数が異常とするほど多くないとしても将来異常となる可能性がある場合がある。このような場合に、異常部位と注意部位とを区別して表示することで、作業者がシステム管理を行い易くできる。そして、作業者に対して、注意部位が異常にならないように注意喚起を図ることができる。
【0056】
そして、表示装置30は、全ての通信回線図を表示した上で、異常部位および注意部位を他部位(正常部位)と異なる表示とすることで、異常部位がどこに存在しているのかを容易に把握できる。
【0057】
また、上記においては、表示装置30は、ハブ111−117および回線121−139のうち通信不能状態の経路を構成すると判定された部位の中から、正常通信経路を構成する部位を除外して異常部位および注意部位を表示している。ここで、ハブによりネットワークを構成する場合には、一のノード間における通信経路が他のノード間の通信経路を構成する場合がある。そして、一のノード間における通信経路が正常通信経路であったとしても、他のノード間の通信経路が通信不能状態となる場合がある。
【0058】
このような場合には、正常通信経路を構成する部位が、通信不能状態の経路を構成する部位としてカウントされる可能性がある。上記実施形態において、例えば、正常通信経路を構成するハブ116が、4回の通信不能回数をカウントしている。そこで、通信不能状態の経路としてカウントされたとしても、当該部位が正常通信経路であれば、当該部位を異常部位および注意部位から除外することで、確実に異常部位および注意部位を特定することができる。
【0059】
また、表示装置30は、ハブ111−117および回線121−139のそれぞれについて、通信不能状態の経路を構成する回数を表示している。表示装置30に通信不能状態の経路を構成する回数を表示することで、異常部位または注意部位の中でも、どのような現象が生じているかを把握することができる。さらに、異常部位と判定された部位が複数存在する場合に、例えば、実際の異常検査を行う順位を当該回数が多い順にすることができる。これにより、早期に、異常部位を検出できる。
【0060】
さらに、表示装置30は、ノード毎のリトライ処理の回数を表示している。リトライ処理の回数をさらに表示することで、異常部位および注意部位の予測を図ることができる。さらに、リトライ回数を表示しておくことで、どのノードが異常であるかを確認することができる。例えば、異常部位が複数存在する場合に、リトライ処理回数が多いノードによる通信経路を構成する部位を優先的に確認することもできる。
【0061】
<第一実施形態の変形態様>
次に、第一実施形態の変形態様について、
図11を参照して説明する。上記実施形態においては、
図6に示すように、各ハブ111−117および各回線121−139に表示する通信不能回数は、通信不能状態の経路を構成する回数とした。これに対して、
図11に示すように、各ハブ111−117および各回線121−139に表示する通信不能回数を、t1からt30における通信不能状態となった回数そのものとして表示する。
【0062】
例えば、t1からt30の間では、t6におけるノード6→7、t7におけるノード7→8、t12におけるノード12→13、t13におけるノード13→1、t19におけるノード6→7、t20におけるノード7→8、t25におけるノード12→13、t26におけるノード13→1においてリトライ処理を行う。そして、ハブ113は、上記全てのリトライ経路を構成する。つまり、ハブ113は、合計8回の通信不能回数をカウントする。そこで、表示装置30において、ハブ113のカッコ内の数字は8を表示する。そして、この場合、異常部位と注意部位との判定における第一閾値Th1および第二閾値Th2が異なる値に設定されることになる。このようにしたとしても、上記と実質的に同様の効果を奏する。
【0063】
<第二実施形態>
上記実施形態においては、表示装置30には、正常通信経路を構成する部位を除外して、異常部位および注意部位を表示した。複雑で多数のハブや回線を有するネットワーク構成においては、上記のようにすることで、作業者は確実に異常部位を特定できる。ただし、小規模なネットワーク構成であれば、正常通信経路を構成する部位を除外しないとしても、十分に異常部位を特定することができる場合がある。
【0064】
そこで、正常通信経路を除外しないようにした場合の表示装置30の処理および表示内容について、
図12−
図13を参照して説明する。上記実施形態の
図8に示す異常部位と注意部位との判定処理に代えて、
図12に示す異常部位と注意部位との判定処理を行う。
図12に示すように、通信不能回数が第一閾値Th1以上であるかを判定し(S31)、これを満たす場合には(S31:Y)、当該部位を異常部位と判定する(S32)。一方、通信不能回数が第一閾値Th1より少ない場合には(S31:N)、続いて通信不能回数が第二閾値Th2以上であるかを判定する(S33)。これを満たす場合には(S33:Y)、当該部位を注意部位と判定する(S34)。そして、S33の判定条件を満たさない場合、および、異常部位または注意部位であるとの判定終了後には、当該処理を終了する。
【0065】
この場合、表示装置30には、
図13に示すように表示される。つまり、
図6において、正常通信経路とされた部位(例えば、回線134,137など)も、異常部位または注意部位として表示される。このように、実際の異常部位以外に、異常部位または注意部位として表示される部位があるが、上記したように、小規模なネットワーク構成であれば十分に適用できる。
【0066】
<第三実施形態>
次に、本実施形態のPLC通信システム201について、
図14を参照して説明する。本実施形態のPLC通信システム201は、
図1に示すネットワークシステムのうち、入力装置10、PLC20、表示装置30、通信処理ノード41およびDeviceNet網200を含む部分に相当する。
【0067】
ここで、DeviceNet網200では、例えばTCP(Transmission Control Protocol)により、データの送受信を行う。そして、マスタとして機能するノード41(以下、「マスタノード」と称する)が、スレーブとして機能する他のノード241−248(以下、「スレーブノード」と称する)に対してデータを送信し、それに対して受信したスレーブノードがマスタノード41に対してデータを送信する。詳細には、マスタノード41が、送信データの送信先アドレスに基づいて、他のノード241−248に対してデータ送信を行う。ただし、マスタノード41がデータ送信できない場合には、データを再送信するリトライ処理を行う。
【0068】
また、本実施形態においては、DeviceNetにおける枝状分岐を適用する。そこで、分岐タップとしてのハブ211−218と回線221−236とを介して、各ノード41,241−248間にてデータの送受信を行う。また、各スレーブノード241−248は、それぞれの機器251−258に接続されている。
【0069】
さらに、PLC20は、上記実施形態と同様に、リトライ処理が設定回数行われる場合に、リトライ処理の原因経路を通信不能状態の経路として認識することができる。この場合、PLC20は、送信元のノードであるマスタノード41と、リトライ処理の対象となった送信先のスレーブノードとを接続する経路を、通信不能状態の経路として認識する。
【0070】
次に、
図14に示すように、回線230が断線などの異常となった場合を例に挙げる。この場合において、
図15に示すように、時間経過に伴って、マスタノード41からスレーブノード241−248に対して、データが送信された場合とする。
図15に示すように、時刻t4においては、マスタノード41からスレーブノード245へデータを送信しているが、回線230が断線異常であるため、送信できない。そのため、リトライ処理が行われる。また、時刻t5においてスレーブノード246に対するデータの送信においても、リトライ処理が行われる。このようにして、時刻t27まで経過したとする。
【0071】
この場合、表示装置30には、
図16に示すように表示される。各スレーブノード241−248のカッコ内には、リトライ処理の対象となった回数が表示される。従って、スレーブノード245、246には、それぞれ4回、3回と表示される。また、ハブ211−218および回線221−236のそれぞれにおいても、通信不能状態の経路を構成した回数が表示される。
【0072】
また、異常部位および注意部位の判定においては、正常通信経路を除外する。そのため、回線270およびハブ216が異常部位として表示され、回線231,232が注意回線として表示され、他は正常部位として表示される。このように、DeviceNet網200であっても、FL-net網100と同様の効果を奏する。