(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1の実施形態の構成を
図1ないし
図5を参照して説明する。
【0009】
図1ないし
図5において、11は電気掃除機を示し、この電気掃除機11は、本実施形態では、この電気掃除機11として、被掃除面としての床面F上を自律走行(自走)しつつ床面Fを掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナを例に挙げて以下説明する。
【0010】
そして、この電気掃除機11は、中空状の本体ケース12と、この本体ケース12内に収容された電動送風機13と、この電動送風機13の吸込側に連通する集塵部14と、例えば複数(一対)の駆動部としての駆動輪15と、これら駆動輪15を駆動させる駆動手段としてのモータ16と、旋回用の旋回輪17と、複数の距離検出手段としての測距センサ20と、回路基板などにより構成された制御手段22と、電源部を構成する電池である二次電池23とを備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース12)の走行方向に沿った方向を前後方向(
図1などに示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
【0011】
本体ケース12は、例えば合成樹脂などにより平坦な円柱状(円盤状)などに形成されており、円形状の下面12aに、吸込機構部24が取り付けられている。また、本体ケース12の上部には、図示しないが、各種操作パネルおよび表示部などが配置されている。なお、本体ケース12の下面12aには、塵埃を掻き集めるための旋回清掃部(サイドブラシ)を旋回輪17の両側などの位置にて床面Fに対して略平行に回転可能に配置してもよい。
【0012】
吸込機構部24は、本体ケース12に対して可動的に取り付けられており、集塵口としての吸込口26を区画するノズル部27と、このノズル部27の上部に連続する区画壁部28と、吸込口26と集塵部14とを連通する風路部29と、集塵部14を支持する支持部30とを一体的に備えたユニット状となっている。そして、この吸込機構部24は、本体ケース12の内部に取り付けられた退避手段としての駆動部31により駆動されるようになっている。
【0013】
吸込口26は、左右方向に長手状、すなわち横長に形成され、本体ケース12の下面12aの中央部よりも後方の位置で、かつ、左右方向の中央部に位置している。
【0014】
ノズル部27は、吸込口26の外縁部を枠状に囲むもので、本体ケース12の下面12aに開口された取付開口12bから床面F側である下方に向けて突出している。また、このノズル部27は、前部27aと後部27bとが基端側から先端側へと徐々に傾斜しており、前部27aが後方へと徐々に傾斜し、後部27bが前方へと徐々に傾斜している。したがって、ノズル部27は、開口面積が下側(先端側)へと徐々に狭くなるように形成されており、その下端(先端)が吸込口26を区画している。すなわち、このノズル部27により囲まれる吸込口26は、本体ケース12の下面12aに対して下方で、かつ、床面Fに対して上方に離間されて位置している。さらに、このノズル部27の内部には、吸込口26へと塵埃を導入する塵埃導入体33が取り付けられている。
【0015】
塵埃導入体33は、塵埃をすくい上げて吸込口26へと導くとともに吸込口26の後部を閉塞して真空度を向上し、かつ、吸込口26の後方への塵埃の抜けを防止するなどの、掃除を補助するための掃除補助具であり、例えば弾性を有する軟質の合成樹脂などにより形成されている。また、この塵埃導入体33は、吸込口26の後縁部に沿って左右方向に延びるブレード状となっており、下端部に塵埃掻上部としての掻上片部33aを備えている。この掻上片部33aは、前部が前側下方に向けて傾斜した傾斜状の導入面33bとなっており、先端部である下端部へと徐々に前後方向の厚みが大きくなるように形成され、電気掃除機11を床面F上に載置した状態で床面Fに接触し、電気掃除機11(本体ケース12)の床面F上での走行により下端部が床面Fと摺接するようになっている。したがって、この塵埃導入体33は、掻上片部33aがノズル部27(吸込口26)よりも下方に突出しており、駆動輪15および旋回輪17などの下端部と略等しい位置となっている。
【0016】
区画壁部28は、ノズル部27の前部27aの上方に突出して後方へと湾曲して形成され、吸込口26を下端とする吸込室35をノズル部27とともに内部に区画している。この吸込室35には、回転清掃体としての回転ブラシ36が回転可能に配置されている。
【0017】
回転ブラシ36は、塵埃導入体33よりも前側上方にてノズル部27の両側に両端が回動可能に軸支された長尺の軸部36aと、この軸部36aの外周面に壁状に突出する複数の清掃体部36bとを備えている。また、この回転ブラシ36は、清掃体部36bが下側に位置した状態で吸込口26から本体ケース12の下面12aの下方へと突出しており、電気掃除機11を床面F上に載置した状態で下側に位置する清掃体部36bの先端が床面Fに接触して塵埃を掻き取るように構成されている。さらに、この回転ブラシ36は、清掃体部36bの後側に位置する状態での先端が塵埃導入体33の導入面33bの前端よりも後方に延びるようになっている。また、清掃体部36bの先端の回転軌跡は、導入面33bに沿っている。そして、この回転ブラシ36は、回転清掃体駆動手段としての駆動モータ37により回転駆動される。
【0018】
駆動モータ37は、本体ケース12の内部に収容されており、機構部としての図示しないギヤ機構を介して回転ブラシ36と接続されている。このギヤ機構は、吸込機構部24に一体的に組み込まれており、ノズル部27の一側の位置で保護部材としてのギヤ機構カバー39により覆われている。そして、この駆動モータ37は、回転ブラシ36を本体ケース12の前進方向に沿って回転させるようになっている(順方向回転)。換言すれば、駆動モータ37により、回転ブラシ36は、床面Fに対して清掃体部36bが相対的に前側から接触し、相対的に後側へと塵埃を掻き取って吸込室35へと運ぶように駆動される。
【0019】
風路部29は、吸込口26(吸込室35)と集塵部14とを連通するもので、区画壁部28の上方から後側上方へと傾斜状に延びている。また、この風路部29の下流端部である後端部がシール部材41を介して集塵部14と連通している。
【0020】
支持部30は、ノズル部27の後部27bの後部の上端から後側上方へと屈曲状に延びて本体ケース12内に位置しており、集塵部14を下方から支持している。また、この支持部30は、回動軸30aを両側に備え、これら回動軸30aが本体ケース12の内部に軸支されている。したがって、吸込機構部24が集塵部14と一体的に本体ケース12に対して上下方向に回動可能となっている。
【0021】
駆動部31は、吸込機構部24の前側上方の位置にて本体ケース12の内部に収容されている。この駆動部31は、例えば退避用駆動手段としての退避用モータ44と、この退避用モータ44により回動される滑車45と、この滑車45の周囲に基端が固定された状態で巻き掛けられたワイヤ46とを備えている。そして、退避用モータ44が例えばタイミングベルト47によって滑車45を回動させることで、ワイヤ46を介して吸込機構部24を上下方向に移動させることが可能となっており、上方へと移動させることで塵埃導入体33を床面Fに対して上方へと退避させるようになっている。
【0022】
電動送風機13は、例えば吸込側を後方に向けて、かつ、軸方向を前後方向(水平方向)に沿わせて本体ケース12の内部に収容されている。さらに、この電動送風機13の吸込側には、ダクト部51が気密に接続されている。このダクト部51は、後方上側に向けて延びており、上流端部である後端部が可撓性を有する蛇腹状の接続風路部52を介して集塵部14と連通可能となっている。さらに、このダクト部51の内部には、図示しないフィルタが配置されている。
【0023】
集塵部14は、電動送風機13の駆動により吸込口26から吸い込まれた塵埃を捕集するものであり、例えば本体ケース12の後部に位置しており、本体ケース12に対して着脱可能となっている。この集塵部14は、内部に塵埃を溜める箱状の集塵部本体54と、この集塵部本体54から前方へと突出する筒状の接続部55とを一体的に備えている。
【0024】
集塵部本体54は、シール部材41を介して風路部29と気密に接続される吸込開口54aが下部前側に開口され、シール部材57を介して接続部55と気密に接続される排気開口54bが上部前側に開口されている。また、この集塵部本体54の内部には、吸込開口54aと排気開口54bとの間に位置して、例えば塵埃を濾過捕集するフィルタ部58が取り付けられている。
【0025】
接続部55は、上流端部である後端部がシール部材57を介して排気開口54bと接続され、下流端部である前端部が接続風路部52と気密に接続されている。したがって、吸込口26(吸込室35)から、風路部29、吸込開口54a、フィルタ部58、排気開口54b、接続部55、接続風路部52およびダクト部51に亘って、電動送風機13の吸込側と気密に接続される風路が構成される。また、この接続部55の上部(接続風路部52の上部)には、駆動部31のワイヤ46の先端が接続されている。
【0026】
各駆動輪15は、電気掃除機11(本体ケース12)を床面F上で前進方向および後退方向に走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものであり、左右幅方向に沿って図示しない回転軸を有する円盤状に形成されている。また、これら駆動輪15は、本体ケース12の下部の前後方向の中心付近の位置にて、吸込口26の両側方に幅方向に互いに離間されて配置されており、幅方向に対称な位置となっている。
【0027】
各モータ16は、例えば駆動輪15のそれぞれに対応して配置されており、各駆動輪15を独立して駆動させることが可能となっている。これらモータ16は、各駆動輪15に直接接続されていてもよいし、ギヤ、あるいはベルトなどの図示しない伝達手段を介して各駆動輪15と接続されていてもよい。
【0028】
さらに、これら駆動輪15およびモータ16は、図示しない懸架手段(サスペンション)により一体的に懸架され、下方に向けて弾性的に付勢されている。
【0029】
旋回輪17は、本体ケース12の幅方向の略中央部で、かつ、前部に位置しており、床面Fに沿って旋回可能な従動輪である。すなわち、この旋回輪17は、本体ケース12の前端近傍に位置している。
【0030】
測距センサ20は、例えば超音波センサ、赤外線センサ、あるいは画像センサなどの非接触のセンサであり、例えば本体ケース12の外周の前部ないし両側部に亘って配置され、本体ケース12の前方の障害物(壁部)Wなどの有無、およびそれらと本体ケース12との距離などをそれぞれ検出可能となっている。
【0031】
制御手段22は、例えばタイマなどの計時手段、メモリなどの記憶手段およびマイコンなどの制御部を備えており、電動送風機13、各モータ16、測距センサ20、駆動モータ37、および、駆動部31の退避用モータ44などと電気的に接続され、測距センサ20による検出結果に基づいて、電動送風機13および各モータ16などの駆動を制御可能である。
【0032】
二次電池23は、制御手段22、電動送風機13、各モータ16、測距センサ20、駆動モータ37および退避用モータ44などに給電するものである。そして、この二次電池23は、例えば本体ケース12の下面12aの旋回輪17の両側すなわち前部に位置する充電端子61と電気的に接続されており、例えば室内(部屋)の所定位置などに設置された所定の充電台63の充電用端子64に対して充電端子61が接続されることによって充電可能となっている。
【0033】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
【0034】
電気掃除機11は、例えば制御手段22に予め設定された所定時刻などとなると、電動送風機13、駆動輪15,15(モータ16,16)および回転ブラシ36(駆動モータ37)などを駆動させ、例えば充電台63から、駆動輪15,15により床面F上を自律走行しながら掃除を開始する。なお、掃除の開始位置は、電気掃除機11の走行開始位置、あるいは部屋の出入り口など、任意の場所に設定可能である。
【0035】
走行中、制御手段22は、測距センサ20を介して例えば掃除領域の周囲を囲む壁部や掃除領域内の障害物Wなどとの距離を検出することで電気掃除機11(本体ケース12)の位置や走行状態を監視し、測距センサ20からの検出に対応して、障害物Wを回避しながら床面F上を走行する。
【0036】
そして、この電気掃除機11は、電動送風機13の駆動によって発生した負圧がダクト部51、接続風路部52、接続部55、集塵部14、風路部29および吸込室35を介して作用した吸込口26により、床面F上の塵埃を空気とともに吸い込む。また、回転駆動された回転ブラシ36が清掃体部36bによって床面Fの塵埃を集塵部14へと掻き取る。このとき、塵埃導入体33は、掻上片部33aが床面Fと接触し、吸込口26の後部を閉塞して真空度を向上するとともに、電気掃除機11(本体ケース12)の前進に伴い床面Fに対して掻上片部33aが摺接し、この掻上片部33aの前側の導入面33bに沿って床面F上の塵埃をすくい上げるとともに、回転ブラシ36の清掃体部36bによって掻き取った塵埃を吸込口26へとガイドする。
【0037】
吸込口26から空気とともに吸い込まれた塵埃は、集塵部14の集塵部本体54内のフィルタ部58により分離および捕集されるとともに、塵埃が分離された空気は、接続部55、接続風路部52およびダクト部51を介して電動送風機13に吸い込まれ、この電動送風機13を冷却した後、排気風となって本体ケース12に設けられた図示しない排気口から外部へと排気される。
【0038】
掃除領域の掃除が終了したと判断した場合には、制御手段22は、電気掃除機11(本体ケース12)を充電台63の位置まで自律走行させ、この充電台63の充電用端子64に充電端子61を(機械的および電気的に)接続させて、各部を停止させて運転を終了して二次電池23を充電する。
【0039】
ここで、上記の掃除動作における電気掃除機11(本体ケース12)の走行制御を説明する。
【0040】
まず、充電台63から掃除を開始する際には、制御手段22は、駆動輪15,15(モータ16,16)を後退方向にそれぞれ回動させることで、電気掃除機11(本体ケース12)を充電台63に対して所定距離後退させ、一方の駆動輪15(モータ16)を前進方向、他方の駆動輪15(モータ16)を後退方向に回動させることで、その位置で旋回(超信地旋回)して所定方向に前側を向けた後、前進を開始する(
図5(a1)および
図5(b1))。
【0041】
また、掃除作業中には、通常、制御手段22は、駆動輪15,15(モータ16,16)を前進方向にそれぞれ回動させることで、電気掃除機11(本体ケース12)を前進させる。そして、この前進中に、測距センサ20により本体ケース12の前方に障害物Wを検出した(電気掃除機11(本体ケース12)の正面の所定距離以内に障害物Wがある、または正面に位置する障害物Wに対して電気掃除機11(本体ケース12)が所定距離まで接近した)と判断した場合には、一方の駆動輪15(モータ16)を前進方向、他方の駆動輪15(モータ16)を後退方向に回動させることで、その位置で旋回(超信地旋回)し、測距センサ20により障害物Wを検出しなくなるまで前進方向を変えた後、前進を再開する(
図5(a2)および
図5(b2))。
【0042】
さらに、掃除を終了する際には、制御手段22は、測距センサ20などにより充電台63の正面の位置まで移動したことを検出すると、充電台63の正面の位置で一方の駆動輪15(モータ16)を前進方向、他方の駆動輪15(モータ16)を後退方向に回動させることで電気掃除機11(本体ケース12)の前部が充電台63に向くまで旋回(超信地旋回)した後、電気掃除機11(本体ケース12)を充電台63に向けて前進し、充電端子61が充電用端子64に対して接続されると駆動輪15,15(モータ16,16)を停止させる(
図5(a3)および
図5(b3))。
【0043】
このように、電気掃除機11(本体ケース12)は、掃除動作中の走行制御において、前進の他に、旋回(超信地旋回)や後退を行うこととなる。このような旋回や後退の動作の際、すなわち、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される場合、本体ケース12の下方に突出して床面Fと接触し前進時の集塵効率を高めるための塵埃導入体33(および回転ブラシ36)が、床面Fに対して引っ掛かって抵抗となったり、本体ケース12の相対的に後側からこの本体ケース12の下部へと移動してくる床面F上の塵埃を堰き止めたり、塵埃を本体ケース12の相対的に後側へと弾き飛ばしたりすることが懸念される。そこで、本実施形態では、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される旋回や後退の動作の際、制御手段22が回転ブラシ36(駆動モータ37)を停止させ、かつ、駆動部31の退避用モータ44によりワイヤ46を巻き取る方向に滑車45を駆動させて、ワイヤ46によって吸込機構部24を上方へと引き上げて回動させ、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を床面F側から退避させた状態とする。
【0044】
この結果、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)によって集塵効率を高めつつ、旋回や後退の動作の際にはこれら塵埃導入体33(および回転ブラシ36)が床面Fに引っ掛かることがなく、走行性の低下を抑制できるとともに、本体ケース12に対して相対的に後側から移動してくる塵埃を塵埃導入体33(および回転ブラシ36)で堰き止めたり、回転ブラシ36の回転駆動によって後側に弾き飛ばしたりすることがない。
【0045】
なお、上記のようにワイヤ46によって引き上げた吸込機構部24は、本体ケース12の旋回や後退が終了したときに、退避用モータ44によりワイヤ46を巻き出す方向に滑車45を駆動させることで、自重によって下方へと回動し、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)が床面Fに接触した位置となる。
【0046】
次に、第2の実施形態を
図6および
図7を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態の本体ケース12の下面12aに、測距手段としてのラインセンサ(PSD)66を備えるものである。
【0048】
ラインセンサ66は、本体ケース12の下部のクリアランス、すなわち、本体ケース12の下面12aとこの下面12aの下部に対向する床面F(または床面F上に位置する障害物などの対向物)との間の距離を測定するもので、本体ケース12の下面12aに開口された開口部12cに取り付けられ、下方に向けて光(レーザ光、赤外光など)を照射する発光部66aと、この発光部66aから発光された光の床面F(対向物)からの反射光を検出する受光部66bとを備えている。また、ラインセンサ66は、本体ケース12の下面12aに対して突出しない、すなわちこの下面12aと面一、またはこの下面12aよりも上側に位置して配置されており、例えば駆動輪15,15の前方外側にそれぞれ位置している。そして、ラインセンサ66は、発光部66aから発光された光を受光部66bによって受光する位置のずれに基づいて床面F(対向物)との距離を検出可能(
図6(a1)および
図6(a2))であり、この検出結果を制御手段22へと出力可能である。
【0049】
そして、駆動部31は、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される旋回や後退の動作の際、ラインセンサ66により検出した本体ケース12の下部のクリアランスに対応して塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を上下方向へと移動させる、換言すれば下部のクリアランスが相対的に大きい場合には上方への移動量を少なくし、下部のクリアランスが相対的に小さい場合には上方への移動量を大きくする。
【0050】
具体的に、例えばフローリングなどの床面Fの場合には、床面F(対向物)と本体ケース12の下面12aとの距離が比較的広くなる(
図6(a1))ため、駆動部31は、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を上方へと退避させる際の移動量を相対的に小さくする(
図6(b1))。また、例えば絨毯などの床面Fの場合には、電気掃除機11の自重によって駆動輪15が床面Fに対して沈み込むことで、床面F(対向物)と本体ケース12の下面12aとの距離が比較的狭くなる(
図6(a2))ため、駆動部31は、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を上方へと退避させる際の移動量を相対的に大きくする(
図6(b2))。すなわち、床面F(対向物)と本体ケース12の下面12aとの距離に対応して塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を上方へと退避させる際の移動量を変化させることで、床面Fの種類などに拘らず、いずれの床面Fに対しても同様の距離(位置)まで塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を退避させることができる。
【0051】
このため、駆動部31によって塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を退避させる際の移動量、換言すれば退避用モータ44の回転数(入力)を必要最小限とすることができ、省電力化が図れる。特に、二次電池23によって駆動する電気掃除機11の場合には、省電力化が可能になることで、電気掃除機11の走行距離(掃除範囲)や掃除の継続時間をより長く取ることができる。
【0052】
そして、以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、駆動部31を用いて塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を床面F側に対して退避させるので、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を床面Fに対して上方に離間する位置まで退避させることが可能になる。したがって、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される旋回や後退の動作の際に、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)が床面Fに引っ掛かって走行性を低下させたり、塵埃を堰き止めたりすることを、より確実に抑制できる。
【0053】
しかも、駆動部31は、退避用モータ44、滑車45およびワイヤ46などを用いた簡単な構成であるため、安価に製造できる。
【0054】
なお、上記各実施形態において、駆動部31および吸込機構部24は、塵埃導入体33(および回転ブラシ36)を床面Fに対して退避させることができれば、任意に構成できる。
【0055】
次に、第3の実施形態を
図8および
図9を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この第3の実施形態は、上記各実施形態の駆動部31および塵埃導入体33に代えて、前後方向に回動可能な塵埃導入体71を備えるものである。
【0057】
この塵埃導入体71は、塵埃をすくい上げて吸込口26へと導くとともに吸込口26の後部を閉塞して真空度を向上し、かつ、吸込口26の後方への塵埃の抜けを防止するなどの、掃除を補助するための掃除補助具であり、例えば弾性を有する軟質の合成樹脂などにより形成されている。また、この塵埃導入体71は、吸込口26の後縁部に沿って左右方向に延びるブレード状のフラップとなっており、上端部に回動軸72を備え、この回動軸72が、ノズル部27の内方である吸込室35の内部にて本体ケース12から前側下方に向けて突出する軸支部73に軸支されている。さらに、この塵埃導入体71の前側下部には、前側下方に向けて傾斜した傾斜状の導入面74が形成されている。また、この塵埃導入体71の導入面74の背面側である後部には、退避手段としての接触部75が一体形成されている。この接触部75は、床面Fに接触することでこの床面Fとの接触抵抗によって塵埃導入体71を前後方向に回動させるものであり、導入面74の下端部から後方へと連続する平面状の接触面75aが前後方向に延びて形成されている。さらに、この接触部75の後部は、ノズル部27の後部27bの前端部と対向しており、このノズル部27の後部27bが塵埃導入体71(および接触部75)の後方への回動を規制するストッパ部となっている。また、この塵埃導入体71は、接触部75とともに、例えば本体ケース12(電気掃除機11)の左右方向の略中央部において左右に2分割されている。すなわち、この塵埃導入体71は、左右一対の塵埃導入体71a,71bに分割されている。
【0058】
そして、電気掃除機11(本体ケース12)の移動中、制御手段22が駆動輪15a,15b(モータ16a,16b)を前進方向にそれぞれ回転させて電気掃除機11(本体ケース12)が前進する場合には、塵埃導入体71(塵埃導入体71a,71b)は、接触部75の接触面75aが床面Fに接触し、その接触抵抗によって後方へと回動しようとするものの、ノズル部27の後部27bの前端部に接触部75の後部が当接することで後方への回動が規制され、導入面74が前側下方へと傾斜した位置で塵埃導入体71(塵埃導入体71a,71b)が維持される。したがって、塵埃導入体71(塵埃導入体71a,71b)が吸込口26の後部を閉塞して真空度を向上するとともに、電気掃除機11(本体ケース12)の前進に伴い導入面74に沿って床面F上の塵埃をすくい上げ、回転ブラシ36の清掃体部36bによって掻き取った塵埃を吸込口26へとガイドする(
図8(a))。
【0059】
また、例えば制御手段22が一方の駆動輪15a(一方のモータ16a)を前進方向、他方の駆動輪15b(他方のモータ16b)を後退方向に回動させて電気掃除機11(本体ケース12)が旋回する場合(
図9(a))には、一方の駆動輪15aに対応する塵埃導入体71aは、ノズル部27の後部27bの前端部に接触部75の後部が当接することで後方への回動が規制され、導入面74が前側下方へと傾斜した位置で維持され(
図8(a))、他方の駆動輪15bに対応する塵埃導入体71bは、一体に形成された接触部75の接触面75aと床面Fとの接触抵抗によって前方へと回動し、床面Fに対して退避する(
図8(b))。
【0060】
また、例えば制御手段22が他方の駆動輪15b(他方のモータ16b)を前進方向、一方の駆動輪15a(一方のモータ16a)を後退方向に回動させて電気掃除機11(本体ケース12)が旋回する場合(
図9(b))には、他方の駆動輪15bに対応する塵埃導入体71bは、ノズル部27の後部27bの前端部に接触部75の後部が当接することで後方への回動が規制され、導入面74が前側下方へと傾斜した位置で維持され(
図8(a))、一方の駆動輪15aに対応する塵埃導入体71aは、一体に形成された接触部75の接触面75aと床面Fとの接触抵抗によって前方へと回動し、床面Fに対して退避する(
図8(b))。
【0061】
さらに、例えば制御手段22が駆動輪15a,15b(モータ16a,16b)を後退方向にそれぞれ回転させて電気掃除機11(本体ケース12)が後退する場合(
図9(c))には、塵埃導入体71a,71bは、一体に形成された接触部75の接触面75aと床面Fとの接触抵抗によってそれぞれ前方へと回動し、床面Fに対して退避する(
図8(b))。
【0062】
この結果、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される旋回や後退の動作の際には、塵埃導入体71を、電力を用いることなく床面Fと接触部75との接触抵抗によって床面Fから退避させることができるので、省電力化が図れるとともに複雑な構成が不要となり、電気掃除機11の重量も軽減できることでモータ16による駆動輪15の駆動負荷も相対的に小さくできるので、二次電池23によって駆動する電気掃除機11の走行距離(掃除範囲)や掃除の継続時間をより長く取ることができる。
【0063】
また、塵埃導入体71を左右に2分割しているので、例えば駆動輪15aのみ(駆動輪15bのみ)が後退方向に駆動される旋回動作の際には、塵埃導入体71a(塵埃導入体71b)のみが床面Fから退避し、塵埃導入体71b(塵埃導入体71a)は床面Fから退避しない。したがって、旋回動作の際に床面Fに引っ掛かって抵抗となる側の塵埃導入体71のみが床面Fから退避して走行性の低下を抑制しつつ、抵抗とならない側の塵埃導入体71は床面Fとの接触を維持して床面Fからの集塵効率を高めることができる。
【0064】
なお、上記各実施形態において、充電端子61は本体ケース12の下面12aの前部に設けたが、例えば本体ケース12の下面12aの後部両側などに設けてもよい。この場合には、充電台63から掃除を開始する際に電気掃除機11(本体ケース12)が充電台63に対して前進し、掃除を終了する際に電気掃除機11(本体ケース12)が充電台63に対して後退することとなる。すなわち、上記各実施形態と掃除の開始および終了の動作が反対となる。したがって、この場合には、上記各実施形態の掃除の開始時および終了時の各制御を入れ替える(各制御が入れ替わる)ことで、同様に対応できる。
【0065】
また、電動送風機13を備えず、回転ブラシ36により床面Fの塵埃を掻き上げて集塵部14へと集塵する構成とすることも可能である。
【0066】
さらに、本体ケース12は、平面視で円形状でなくてもよい。
【0067】
そして、集塵部14は、フィルタ部58を用いる構成に代えて、例えば集塵袋を用いて塵埃を濾過捕集する構成、あるいは遠心分離(サイクロン分離)や直進分離などの慣性分離により塵埃を分離して捕集する構成など、任意の構成を用いることができる。
【0068】
以上説明した少なくとも1つの実施形態では、吸込口26の後側に塵埃を吸込口26へと導入する塵埃導入体33または塵埃導入体71を設けるとともに、少なくともいずれか一方の駆動輪15が後退方向に駆動される旋回や後退の動作の際、塵埃導入体33または塵埃導入体71を床面F側から退避させた状態とする。この結果、塵埃導入体33または塵埃導入体71によって集塵効率を高めつつ、旋回や後退の動作の際にはこれら塵埃導入体33または塵埃導入体71が床面Fに引っ掛かることがなく、走行性の低下を抑制できるとともに、本体ケース12に対して相対的に後側から移動してくる塵埃を塵埃導入体33または塵埃導入体71で堰き止めることがない。
【0069】
また、本体ケース12の前進方向に回転可能な回転ブラシ36を、駆動輪15の少なくとも一方が後退方向に回転している旋回や後退の動作の際に停止することで、回転ブラシ36の回転による床面Fとの接触負荷が抵抗とならず、走行性の低下をより確実に抑制できるとともに、回転ブラシ36の回転駆動によって後側に弾き飛ばすことがない。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。