(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シース本体は、前記シース本体の先端側の外径よりも基端側の外径の方が大きくなるように、前記シース本体の前記先端側と前記基端側との境界部分に形成された移行部を有し、
前記トルク伝達部材の前記領域は、前記移行部よりも前記シース本体の前記先端側に取り付けられ、
前記トルク伝達部材は、前記移行部よりも前記シース本体の前記基端側において、前記シース本体の前記ルーメン内で前記シース本体の前記長手軸に沿って延び、前記シース本体に対して回動自在に設けられている
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る内視鏡システムの第1実施形態を、内視鏡用処置具がパピロトームである場合を例にとって
図1から
図14を参照しながら説明する。
図1に示すように、本内視鏡システム1は、可撓性を有する挿入部(シース部)10を有するパピロトーム2と、挿入部10を挿通可能なチャンネル51が形成された内視鏡3とを備えている。すなわち、パピロトーム2は内視鏡3と組合わせて使用されるものである。
【0014】
図1および
図2に示すように、パピロトーム2は、前述の挿入部10と、挿入部10よりも先端側に設けられた処置部30と、挿入部10の基端部に設けられ処置部30を操作するための操作部40とを備えている。
挿入部10は、
図2から
図4に示すように、マルチルーメンチューブ11の基端側を構成するシース本体11aと、シース本体11aに設けられたトルク伝達部材12と、シース本体11aの先端側に設けられた被挟持部13とを有している。
【0015】
マルチルーメンチューブ11はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂で形成され、マルチルーメンチューブ11には、挿入部10の軸線C1に沿って延びる3つのルーメン16、17、18が形成されている。
ガイドワイヤルーメン16は、最も大径で先端に開口している。このガイドワイヤルーメン16は、後述するガイドワイヤの挿通に使用される。ナイフルーメン17は、最も細径で先端が封止されている。ナイフルーメン17には、導電ワイヤ19が挿通されている。送液ルーメン18は、先端が開口し、2番目の太い径を有する。送液ルーメン18は、造影剤などの送液に使用される。
【0016】
トルク伝達部材12は、シース本体11aの外周面に装着された金属製のブレード22と、ブレード22を被覆する被覆チューブ23とを有している。
ブレード22は、例えば、細いステンレス線を複数本の束にし、格子状に編んで管状にしたり、ステンレス線やステンレスの帯を1条または多条のコイル状に巻いて管状にしたり、1条または多条のコイルを巻き方向を交互に違えながら多層に巻いて管状にしたりしたものが使用される。被覆チューブ23は、絶縁性を有する樹脂で形成することができる。
【0017】
シース本体11a、ブレード22、および被覆チューブ23は、屈曲した内視鏡のチャンネルの中でも屈曲して回転トルクが伝えやすいように柔軟性のある接着剤で固定したり、もしくはもともとの内径がブレード22の外径よりも小さい収縮チューブで被覆チューブ23を構成し、被覆チューブ23の収縮力でブレード22が屈曲しやすいように柔軟に密着させたりして構成する。
また、シース本体11a、ブレード22、および被覆チューブ23の固定は、内視鏡によってより小さい半径で曲げられる挿入部10の先端側は、柔軟性を高く固定し、比較的大きな半径でしか曲げられない挿入部10の基端側は、固めの接着剤などで先端側よりも柔軟性を低く固定すると、挿入部10の全長での総合的な回転トルク伝達性がより良くなる。
【0018】
被挟持部13は、シース本体11aの先端外周に固定されたアウターチューブからなる。被挟持部13の基端側は、ブレード22を外嵌した状態でブレード22に固定されている。被挟持部13の基端側の外径は、被覆チューブ23の外径にほぼ等しい。被挟持部13は、被覆チューブ23と同一の材料で形成してもよいし、シース本体11aの材質より滑りにくい材質で形成してもよい。例えば、シース本体11aが滑りやすいPTFEで形成されている場合には、FEP、PFA、ポリアミド、PET、ポリアミドエラストマー、PETエラストマーなどが被挟持部13の材質としてはより好ましい。被挟持部13の先端側の軸線C1に直交する平面による断面は円形であり(
図4参照。)、この断面の外径はL1である。被挟持部13の基端側の外径は、被挟持部13の先端側の外径よりも大きい。
被挟持部13がブレード22に固定されていることで、トルク伝達部材12から被挟持部13に回転トルクが伝わるようになっている。
【0019】
なお、トルク伝達部材12の先端部外周(被覆チューブ23の先端部外周)を被挟持部としてもよい。この場合、トルク伝達部材は、軸線C1方向において挿入部10の基端側から被挟持部まで延びることになる。
別の方法としては、シース本体11aの先端部を熱成型によって外径を膨らませて被挟持部としてもよい。
【0020】
処置部30は、
図2および
図5に示すように、マルチルーメンチューブ11の先端側を構成するナイフ支持部11bと、導電ワイヤ19の先端部で構成されたナイフ部19aとを有している。
ナイフ支持部11bには、ナイフルーメン17の内周面からナイフ支持部11bの側面まで達する2つの透孔11c、11dが形成されている。透孔11c、11dは、軸線C1方向に並ぶとともに互いに離間した位置に形成されている。ナイフ支持部11bには、透孔11c、11dのナイフ支持部11bの外面に形成された開口が曲げられたときに湾曲の内側となるようにプリカーブ(曲がり癖)を付けてもよい。このように構成することで、ナイフ支持部11bが十二指腸乳頭に挿入しやすくなる。
【0021】
導電ワイヤ19は、ナイフ支持部11bの基端側に形成された透孔11cからナイフ支持部11bの外側に引き出され、先端側に設けられた透孔11dから再びナイフルーメン17内に引き戻されている。導電ワイヤ19におけるナイフ支持部11bの外側に引き出されて露出した部分が処置に使用される前述のナイフ部19aになる。
導電ワイヤ19の先端は、ナイフルーメン17に埋め込まれたチップ31を介してナイフ支持部11bに固定されている。
このように、処置部30は、挿入部10の軸線C1に対して回転対称ではない形状(非回転対称形状)に形成されている。
トルク伝達部材12は、シース本体11aやナイフ支持部11bに比べて軸線C1周りの剛性が高い。すなわち、軸線C1周りに作用する回転トルクを伝達しやすい。
【0022】
操作部40は、
図2に示すように、挿入部10の基端部に取付けられた操作部本体41と、操作部本体41に先端が取付けられた棒状のハンドル42と、ハンドル42に対してスライド可能に設けられたスライダ43とを有している。
操作部本体41には、ガイドワイヤルーメン16に連通するガイドワイヤ口金44、および送液ルーメン18に連通する送液口金45が設けられている。送液口金45には、不図示のシリンジが着脱可能となっている。
ハンドル42の基端部には、リング42aが取付けられている。
スライダ43には、導電ワイヤ19に電気的に接続された端子43aが設けられている。端子43aは、外部の高周波電源に接続可能である。スライダ43には、ハンドル42を挟むように一対のリング43b、43cが取付けられている。
ハンドル42に対してスライダ43を基端側に移動させる(引戻す)ことでナイフ支持部11bを湾曲させてナイフ部19aを張ったり、ハンドル42に対してスライダ43を先端側に移動させる(押込む)ことでナイフ支持部11bを直線状にするとともにナイフ支持部11bにナイフ部19aを沿わせたりすることができる。
【0023】
内視鏡3は、
図1に示すように、内視鏡挿入部50の基端に内視鏡操作部70が設けられた側視タイプの公知ものを用いることができる。内視鏡挿入部50は、先端硬質部56と、先端硬質部56の基端部に設けられた湾曲操作可能な湾曲部57と、湾曲部57の基端部に設けられた可撓管部58とを有している。チャンネル51の先端部は、先端硬質部56の側面に設けられた開口56aに連通している。
先端硬質部56内に形成されたチャンネル51には、起上台61が自身の基端部を中心として回動可能に先端硬質部56に取付けられている。起上台61には、先端硬質部56の開口56aの縁部に当接するストッパ61s(
図6参照。)が設けられていて、起上する側となる方向D1に回動したときにストッパ61sが先端硬質部56に当接することで、起上台61がそれ以上方向D1に回動できなくなる。
起上台61の先端部には操作ワイヤ62が接続されていて、操作ワイヤ62の基端部は内視鏡挿入部50を通して内視鏡操作部70まで延びている。なお、操作ワイヤ62は
図1のみに示している。
先端硬質部56における開口56aの縁部には、不図示のLEDなどからなる照明ユニット56bと、不図示のCCDなどからなる観察ユニット56cとが外部に露出した状態で設けられている。
照明ユニット56bおよび観察ユニット56cは、不図示の配線により内視鏡操作部70に接続されている。
【0024】
内視鏡操作部70には、湾曲部57を湾曲操作するためのノブ71や、操作ワイヤ62を進退操作するためのレバー72が設けられている。ノブ71と湾曲部57は不図示の湾曲操作ワイヤに連結されており、ノブ71を操作することで湾曲部57を所望の方向に湾曲させることができる。また、レバー72を操作して操作ワイヤ62を引戻すことで起上台61を方向D1に回動させて起上させたり、操作ワイヤ62を押込むことで起上台61を方向D2に回動させて倒したり(寝かせたり)することができる。なお、本明細書で言う「起上台61を起上させきる」とは、起上台61の前述のストッパ61sが先端硬質部56に当接することなどにより、起上台61を方向D1に回動できなくなるまで移動させることを意味する。「起上台61を起上させきる」ことを、「起上台61を完全に起上させる」と言い換えてもよい。
一方で、「起上台61を起上させる」とは、ストッパ61sが先端硬質部56に当接したか否かを問わず、起上台61を方向D1に回動させることを意味する。
【0025】
内視鏡操作部70には、チャンネル51の基端側には鉗子栓73が設けられていて、チャンネル51の基端部に連通している。鉗子栓73は、ゴムなどの弾性を有する材料で形成されている。鉗子栓73は、外力が作用しない自然状態では、
図1中の拡大断面図に示すように、鉗子栓73に設けられた弁が位置T1にあることで鉗子栓73の貫通孔73aは液漏れが防止されている。鉗子栓73の貫通孔73aにパピロトーム2の挿入部10を挿通させたときには、弁が変形して位置T2に移動することで、鉗子栓73は貫通孔73aに挿通された挿入部10との間におけるチャンネル51からの液漏れを減少させる。このとき、鉗子栓73の弁と挿入部10との間には、摩擦力が作用する。
【0026】
内視鏡操作部70には、ユニバーサルコード75を介して図示はしないが液晶パネルなどの表示部や電源が接続されている。電源は、前述の配線を介して照明ユニット56bに接続され、表示部は配線を介して観察ユニット56cに接続されている。
照明の方法は、照明ユニット56bに代えて、電源に設置されたランプの光を光ファイバーによって内視鏡の先端の照明ユニットに伝える方式でもよい。
【0027】
このように構成された内視鏡3のチャンネル51に挿入部10を挿入したときには、チャンネル51と挿入部10との間には、隙間Sが形成される。すなわち、チャンネル51と挿入部10との間には、摩擦力はほとんど作用しない。
パピロトーム2は、
図7および
図8に示すように、内視鏡3のチャンネル51に挿入部10を挿入し、チャンネル51の先端から処置部30を突出させた向き調整状態において、後述するように処置部30の軸線C1周りの向きを調整される。この向き調整状態において、パピロトーム2の被挟持部13は、起上しきった起上台61とチャンネル51の内周面との間に挟持される。
【0028】
ここで、
図6に示すように、内視鏡3のチャンネル51にパピロトーム2を挿通せずに起上台61を起上しきったときに、起上台61とチャンネル51の内周面の内接円のうち最大のものの直径、すなわち起上台61の被挟持部13を挟む部分61aとチャンネル51の内周面の被挟持部13を挟む部分51aの内接円のうち最大のものの直径L2を規定する。このとき、この直径L2よりも、前述の被挟持部13の先端側の外径L1の方が大きい。被挟持部13の基端側の外径も被挟持部13の先端側の外径よりも大きいため、内接円のうち最大のものの直径L2よりも被挟持部13の基端側の外径の方が大きいことになる。
図8に示すように、起上しきった起上台61とチャンネル51の内周面との間にパピロトーム2の被挟持部13が挟持されたときに、先端硬質部56にストッパ61sは当接しない。起上台61およびチャンネル51の内周面と被挟持部13との間には、摩擦力が作用する。
【0029】
次に、以上のように構成されたパピロトーム2を使用するパピロトーム2の使用方法を、パピロトーム2を使用した手技を例にとって説明する。
図9は、パピロトーム2の使用方法を示すフローチャートである。
まず、電源から照明ユニット56bに電力を供給し、照明ユニット56bの周辺を照明する。反射光による画像を観察ユニット56cで取得し、電気信号に変換する。観察ユニット56cは、変換した電気信号を配線およびユニバーサルコード75を介して表示部に送信し、この画像が表示部に表示される。術者である使用者は、表示部に表示された画像を確認しながら、必要に応じてノブ71を操作して湾曲部57を湾曲させつつ患者の自然開口である口から内視鏡3の内視鏡挿入部50を挿入する。
図10に示すように、十二指腸P1を通して十二指腸乳頭P2付近まで内視鏡挿入部50を導入する。
【0030】
内視鏡3の鉗子栓73の貫通孔73aを通してチャンネル51に、パピロトーム2の挿入部10を挿入させる。鉗子栓73の弁と挿入部10との間に摩擦力が作用し、鉗子栓73と挿入部10とがほぼ水密に封止される。挿入部10の挿入量を調整して、
図10に示すように、チャンネル51の先端から処置部30を突出させた向き調整状態にする(
図9におけるステップS2)。
チャンネル51および起上台61に案内されて、処置部30は内視鏡挿入部50の先端硬質部56の側方に突出する。これにより、処置部30の先端は十二指腸乳頭P2の奥の胆管P3の方向に向けられる。
処置部30の先端を十二指腸乳頭P2に挿入する。
【0031】
胆管P3の位置をX線撮影により確認するときは、送液口金45に装着した不図示のシリンジから送液ルーメン18に造影剤を注入する。造影剤は、送液ルーメン18を通して胆管P3内に注入される。
【0032】
使用者は、表示部に表示された画像で、
図11に示すように、はちまき襞P4の位置を確認して切開する方向を決定するとともに、現在のナイフ部19aの向きを確認する。そして、切開すべき方向を矢印B1に示す12時方向と決定し、ナイフ部19aの向きが2時方向に向いていると確認したとする。
ここで使用者は、以下に説明するようにナイフ部19aの向きを2時方向から12時方向に変える。
【0033】
まず、レバー72を操作して
図12に示すように起上台61を起上させきり、挿入部10の被挟持部13を起上させきった起上台61とチャンネル51の内周面との間で挟持する(ステップS4)。このとき、起上台61の部分61aとチャンネル51の内周面の部分51aの内接円のうち最大のものの直径L2よりも被挟持部13の外径L1の方が大きいため、起上台61およびチャンネル51の内周面と被挟持部13との間に摩擦力(回転トルクに対するカウンタートルク)が作用するようになる。
使用者は、操作部40を挿入部10の軸線C1周りに回動させることで、
図2に示すようにトルク伝達部材12の基端側においてトルク伝達部材12を周方向の一方側E1に回動させる。これにより、使用者が操作部40で入力した回転トルクをトルク伝達部材12が先端側に伝達してシース本体11aが軸線C1周りに回動する。
起上台61およびチャンネル51と被挟持部13との間には摩擦力が作用するため、使用者が操作部40を速く回動させても
図12に示すように起上台61およびチャンネル51に対して被挟持部13がゆっくりと軸線C1周りに方向D3に回動する。このとき、シース本体11aの被挟持部13よりも基端側に回転トルクが蓄積する。
【0034】
使用者は、操作部40を回動させてトルク伝達部材12を介してシース本体11aに回転トルクを作用させつつ、処置部30の軸線C1周りの向きを内視鏡3の表示部に表示された画像で観察する(ステップS6)。
処置部30のナイフ部19aの向きが所望の向き、すなわち12時方向になったときに、
図2に示すようにトルク伝達部材12の基端側においてトルク伝達部材12を周方向の他方側E2に回動させて、シース本体11aの被挟持部13よりも基端側に作用する回転トルクを解除する(ステップS8)。
レバー72を操作して起上台61を倒す。パピロトーム2の端子43aを、高周波電源に接続する。操作部40のリング42a、43b、43cに指を適宜入れて操作部40を把持し、スライダ43を引戻してナイフ部19aを張る。
高周波電源から高周波電流を流し、レバー72を操作して起上台61を起上させたり倒したりして処置部30を首振り動作させる。ナイフ部19aが接触する十二指腸乳頭P2の組織に高周波電流とナイフ部19aの張力による圧力が加わって、
図13に示すように十二指腸乳頭P2が切開される。例えば、
図14に示すように、表示部の画像Gにより必要な切開量に達したことが確認できたら、高周波電流の通電を停止させる。
【0035】
患者の個人差などにより、切開すべき方向が12時方向とは異なる場合にも、前述の方法により処置部30のナイフ部19aの向きを調整することができる。
【0036】
十二指腸乳頭P2の切開が完了したら、スライダ43を押込んでナイフ支持部11bにナイフ部19aを沿わせてから、パピロトーム2を抜去する。
このとき、パピロトーム2の代わりに不図示のバスケット鉗子などを挿入する。バスケット鉗子は、切開された十二指腸乳頭P2から胆管P3に挿入され、結石を捕捉する。結石が大きいときは破砕し、結石が小さいときはそのまま胆管P3から排出する。結石を排出したら、バスケット鉗子および内視鏡3を体内から抜去する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のパピロトーム2および内視鏡システム1によれば、内視鏡3のチャンネル51に挿入部10を挿通させて、パピロトーム2をチャンネル51から処置部30を突出させた向き調整状態にする。レバー72を操作して起上台61を起上させきり、起上台61とチャンネル51の内周面との間で被挟持部13を挟持する。トルク伝達部材12を周方向の一方側E1に回動させつつ、処置部30の軸線C1周りの向きを内視鏡3で観察する。起上台61およびチャンネル51と被挟持部13との間には摩擦力が作用するため、処置部30はゆっくりと軸線C1周りに回動する。
処置部30のナイフ部19aの向きが12時方向になったときに、トルク伝達部材12の基端側においてトルク伝達部材12を周方向の他方側E2に回動させる。シース本体11aに蓄積されていた回転トルクが解除され、処置部30の向きが固定される。
このように、処置部30がゆっくりと回動するため、処置部30が使用者の予想外のタイミングで一気に回りだすのを抑え、使用者が向きを調整する時間的な猶予を増やして、処置部30を軸線C1周りの所望の向きに正確に向かせることができる。
また、このとき被挟持部13の材質がシース本体11aの材質より滑りにくい材質であれば、シース本体11aの十二指腸乳頭P2への良好な挿入性を維持しつつ、挿入部10の回転の制御のしやすさをより向上できる。
【0038】
なお、本実施形態では、前述のようにトルク伝達部材12の先端部外周を被挟持部としてもよい。この場合には、トルク伝達部材12の基端側で伝達された回転トルクを軸線C1方向において被挟持部まで効果的に伝達させることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図15から
図26を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図15から
図18に示すように、本実施形態のパピロトーム6は、挿入部90と、挿入部90よりも先端側に設けられた処置部110と、挿入部90の基端部に設けられ処置部110を操作するための操作部120とを備えている。
【0040】
本実施形態では、挿入部90および処置部110に、
図19に示すようなマルチルーメンチューブ91が用いられている。なお、
図19においては、後述するトルク伝達部材95のうち被覆チューブ101は示していない。
マルチルーメンチューブ91は、先端側の外径よりも基端側の外径の方が大きく、先端側と基端側との境となる部分に移行部91aが形成されている。マルチルーメンチューブ91には、全長にわたり前述の3つのルーメン16、17、18が形成されている。マルチルーメンチューブ91には、基端から移行部91aまでトルクルーメン(ルーメン)92が形成されている。
マルチルーメンチューブ91の先端と移行部91aとの中間部分よりも基端側がシース本体91bであり、シース本体91bよりも先端側がナイフ支持部91cである。
図15および
図17に示すように、シース本体91bのガイドワイヤルーメン16には、シース本体91bの外周面に達する幅狭切欠き91dが形成されている。幅狭切欠き91dは、移行部91aよりも基端側の後述する別体式シース領域R2のほぼ全長にわたり形成されている。幅狭切欠き91dの幅は、パピロトーム6と組合わせて使用するガイドワイヤW(
図26参照。)の外径よりわずかに小さく形成されている。また、幅狭切欠き91dの基端には、組合わせるガイドワイヤWの外径よりも大きな幅の幅広切欠き91eが形成されている。
この幅広切欠き91eおよび幅狭切欠き91dで、切欠き91fを構成する。
【0041】
なお、マルチルーメンチューブ91は、
図20に示すように、移行部91aの前後で別々に製作されたチューブ片131、132を接続して形成してもよい。この場合、3つのルーメン131aが形成された先端側のチューブ片131と、4つのルーメン132aが形成された基端側のチューブ片132とを接続することで、マルチルーメンチューブ91が構成される。
【0042】
チューブ片131、132の接続方法としては、以下に説明する方法を用いることができる。すなわち、第一の方法として、
図21に示すように、チューブ片132の4つのルーメン132aに芯金F1の一端側を挿入し、4つの芯金F1のうちの3つの他端側をチューブ片131の各ルーメン131aに挿入する。チューブ片131およびチューブ片132の端面同士を突合せる。チューブ片131、132の突合せた部分の外側に熱収縮チューブF2を被せる。
図22に示すように、熱収縮チューブF2に熱Hを作用させることで熱収縮チューブF2を収縮させ、チューブ片131、132を接続する。この後で、
図23に示すように、マルチルーメンチューブ91のチューブ片131、132から芯金F1を取外す。
【0043】
また、
図24に示すように、チューブ片132の4つのルーメン132aのうちの3つと、チューブ片131の3つのルーメン131aとに接続用のパイプF3を圧入して、チューブ片131、132を接続し、マルチルーメンチューブ91を構成する方法がある。
マルチルーメンチューブ91のこれらの製造方法では、移行部91aの先端側と基端側でチューブ片131、132を別々に製作できるため、それぞれ異なった材質でチューブ片131、132を製作できる。例えば、先端側のチューブ片131は、処置部30のナイフ部19aで切開することで熱が発生するため、耐熱性の高いフッ素樹脂(より詳しくは、PTFE)で製作し、基端側のチューブ片132は、材料が安価なポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなど製作してもよい。
【0044】
挿入部90は、
図15から
図18に示すように、前述のシース本体91bと、シース本体91bに設けられたトルク伝達部材95と、シース本体91bの先端側に設けられた被挟持部96とを有している。
トルク伝達部材95は、
図15および
図19に示すように、金属製のブレード99と、先端部がブレード99の外周面に固定されたワイヤ100と、ブレード99を被覆する被覆チューブ101とを有している。
ワイヤ100は、
図16および
図19に示すように本実施形態では複数の素線100aを軸線C1に平行に並べ、先端と後端のみを溶接などで互いに固定して構成している。素線100aは、例えばステンレス線やニッケルチタン合金で形成することができる。
複数の素線100aのうちの何本かは先端側に延ばされ、
図15に示すようにブレード99の基端部の外周面に溶接により固定されている。すなわち、ブレード99とワイヤ100とは溶接部105により固定されている。溶接部105は、ブレード99の基端部と被覆チューブ101の基端部との間に挟まれている。
【0045】
ワイヤ100の基端部には、ワイヤ100よりも大径の取っ手106が固定されている。
ブレード99、被覆チューブ101は、前述のブレード22、被覆チューブ23と同様にそれぞれ形成されている。
【0046】
なお、前述のように構成されたマルチルーメンチューブ91に対して、ブレード99およびワイヤ100は以下のように取付けられている。すなわち、
図25に示すように、シース本体91bにおける移行部91aよりも先端側の部分にブレード99を外嵌させ、接着材や熱収縮チューブなどで固定する。マルチルーメンチューブ91のトルクルーメン92に基端側から取っ手106が固定されたワイヤ100を挿通させる。トルクルーメン92から先端側に突出したワイヤ100とブレード99とを溶接部105により固定する。
【0047】
シース本体91b、ブレード99、および被覆チューブ101は、屈曲した内視鏡のチャンネルの中でも屈曲して回転トルクが伝えやすいように柔軟性のある接着剤で固定したり、もしくはもともとの内径がブレード99の外径よりも小さい収縮チューブで被覆チューブ101を構成し、被覆チューブ101の収縮力でブレード99が屈曲しやすいように柔軟に密着させたりして構成する。
被挟持部96は、
図15に示すように、シース本体91bの先端外周に固定されたアウターチューブからなる。被挟持部96の基端側はブレード99を外嵌した状態でブレード99に固定されている。被挟持部96の基端側の外径は、被覆チューブ101の外径にほぼ等しい。被挟持部96は、被覆チューブ101と同一の材料で形成することができる。被挟持部96の先端側の軸線C1に直交する平面による断面は円形であり、この断面の外径は前述のL1に等しい。被挟持部96の基端側の外径は、被挟持部96の先端側の外径よりも大きい。
被挟持部96がブレード99に固定されていることで、トルク伝達部材95から被挟持部96に回転トルクが伝わるようになっている。
【0048】
なお、この例では、被挟持部96がアウターチューブからなるとしたが、トルク伝達部材95の先端部外周(被覆チューブ101の先端部外周)を被挟持部としてもよい。別の方法としては、シース本体91bの先端部を熱成型によって外径を膨らませて被挟持部としてもよい。
挿入部90の先端側は、シース本体91bの外周面の外側にブレード99および被覆チューブ101が取付けられた一体式シース領域R1である。一方で、挿入部90の基端側は、シース本体91bの外周面の外側にワイヤ100が取付けられておらず、シース本体91bのトルクルーメン92内にワイヤ100が回動操作可能に配されている別体式シース領域R2である。
マルチルーメンチューブ91の別体式シース領域R2に対応する部分は、トルク伝達部材95よりも回転トルクの伝達力が小さい、言い換えるとねじれやすい材料で形成されている。
【0049】
処置部110は、第1実施形態の処置部30においてナイフ支持部11bに代えてナイフ支持部91cが用いられているだけで、処置部30と同様の構成となっている。
操作部120の操作部本体121は、第1実施形態の操作部本体41に対して、トルクルーメン92が操作部本体121の基端まで延長されるように形成されている。ガイドワイヤルーメン16に連通するガイドワイヤ口金44は設けられていない。
【0050】
このように構成されたパピロトーム6は、
図26に示すように前述の内視鏡3と組合わせて内視鏡システム7を構成する。
本パピロトーム6を使用した手技は、ガイドワイヤWを内視鏡3の鉗子栓73の貫通孔73aを通してチャンネル51に挿通する。挿入部90における幅狭切欠き91dが形成された部分が鉗子栓73に挿通され、幅広切欠き91eが鉗子栓73よりも基端側に位置するようにする。このガイドワイヤWを、十二指腸P1を通して胆管P3内に導入しておく。
パピロトーム6のガイドワイヤルーメン16の先端にガイドワイヤWの基端部を挿通し、ガイドワイヤWを挿入部90の幅広切欠き91eから外部に引出す。鉗子栓73の貫通孔73aを通してチャンネル51に、パピロトーム6の挿入部90を挿入させる。鉗子栓73に挿入部90が挿通されると、鉗子栓73の弁と挿入部90との間に摩擦力が作用し、鉗子栓73と挿入部90とがほぼ水密に封止される。
使用者は、内視鏡3のチャンネル51に挿入する挿入部90の挿入量を調整入して、パピロトーム6をチャンネル51から処置部110を突出させた向き調整状態にする。このとき、鉗子栓73には別体式シース領域R2の挿入部90、すなわちシース本体91bが挿通されている。摩擦力は鉗子栓73と別体式シース領域R2のシース本体91bとの間に作用している。
【0051】
取っ手106を軸線C1周りに回動させると、回転トルクはシース本体91bのトルクルーメン92に挿通されたワイヤ100を介してブレード99や被覆チューブ101に伝達され一体式シース領域R1に伝わる。このとき、別体式シース領域R2の先端は一体式シース領域R1の基端側と移行部91aを介して接続されているため、一体式シース領域R1から別体式シース領域R2にも回転トルクが伝わる。しかし、マルチルーメンチューブ91はトルク伝達部材95よりも回転トルクの伝達力が低くねじれやすい材料でできているため、別体式シース領域R2の先端に加わった回転トルクはマルチルーメンチューブ91がねじれることで吸収される。したがって、操作部本体121まで回転トルクは伝わらず、操作部本体121を手元で軸線C1周りに回転させる必要は生じない。
また、ワイヤ100はトルクルーメン92に挿通されているため、取っ手106から伝達される回転トルクが鉗子栓73による摩擦力の影響を受けることが抑制される。
処置部110の先端を十二指腸乳頭P2に挿入するときに、ガイドワイヤWに沿って挿入することで手技が容易となる。
チャンネル51に対してブレード99や被覆チューブ101が回動し、処置部110の向きが変わる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のパピロトーム6および内視鏡システム7によれば、挿入部90の基端側を軸線C1周りに回動させたときに、処置部110を軸線C1周りの所望の向きに正確に向かせることができる。
パピロトーム6を向き調整状態にしたときに、鉗子栓73には別体式シース領域R2のシース本体91bが挿通され、ワイヤ100はシース本体91bのトルクルーメン92に挿通されている。したがって、ワイヤ100に伝達される回転トルクが鉗子栓73による摩擦力の影響を受けることを抑制し、この回転トルクをトルク伝達部材95の先端側に効果的に伝達させることができる。
また、ワイヤ100を回転させてトルク伝達部材95に回転トルクを伝達させても、操作部120にはこの回転トルクが伝わらない。ワイヤ100の回転に対応させて操作部120を回転させる必要がないため、操作部120の回転操作が容易である。
【0053】
ワイヤ100の外径はブレード99や被覆チューブ101の外径よりも小さいため、ブレード99などが設けられた部分に比べてワイヤ100が設けられた部分におけるトルク伝達部材95の材料コストを低減させることができる。
別体式シース領域R2におけるシース本体91bのガイドワイヤルーメン16に切欠き91fが形成されている。このため、ガイドワイヤルーメン16に挿通したガイドワイヤWを切欠き91fから外部に引出し、挿入部90をガイドワイヤWに沿って挿入する手技を容易に行うことができる。
【0054】
また、幅狭切欠き91dはガイドワイヤWの外径よりもわずかに小さい幅で作られている。マルチルーメンチューブ91は樹脂材料で形成されているため弾性変形が可能であり、マルチルーメンチューブ91を弾性的に変形させることでガイドワイヤWを幅狭切欠き91dからも外部に引き出すことができる。ガイドワイヤWがマルチルーメンチューブ91の外部に引き出されている位置を、幅狭切欠き91dにおける鉗子栓73の近傍のガイドワイヤ操作位置Q(
図26参照。)に移動させることで、内視鏡3を操作する使用者がガイドワイヤWを操作(押込んだり、引戻したりなど)することが容易になる。
また、パピロトーム6だけで手技を開始し、途中でガイドワイヤWをガイドワイヤルーメンから挿入したいときも、幅狭切欠き91dはガイドワイヤWの外径より小さいため、ガイドワイヤWが幅狭切欠き91dの途中で外に出てしまうということがなく、パピロトーム6の先端までガイドワイヤWを挿入することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、ワイヤ100は複数の素線100aを軸線C1に平行に並べて構成されているとした。しかし、ワイヤが複数の素線100aを撚って構成されているとしてもよいし、ワイヤが単線から構成されているとしてもよい。ワイヤが単線から構成されている場合には、ワイヤの先端部を平板状に削り、この削った部分をブレード99に溶接することが好ましい。
【0056】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組合わせなども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態および第2実施形態では、シース本体およびナイフ支持部に3つまたは4つのルーメンが形成されているとしたが、これらには少なくとも1つのルーメンが形成されていればよい。
【0057】
内視鏡用処置具がパピロトームであるとしたが、内視鏡用処置具はこれに限られない。例えば、内視鏡用処置具が、シース部の先端にL字状の高周波ナイフが設けられた高周波処置具や、一対の把持片が開閉する把持鉗子であってもよい。内視鏡用処置具がこのように構成されていても、高周波ナイフや一対の把持片を、シース部の軸線周りの所望の向きに正確に向かせることができる。
また、処置部が軸線C1に対して回転対称ではない形状であるとした。しかし、処置部が回転対称形状であっても、内視鏡用処置具を使用中に処置部の周方向の一部に組織や体液が付着し、それら組織などを周方向に移動させて処置部を使用する場合などには、本発明を好適に用いることができる。
【0058】
本発明は、さらに以下の技術思想を含むものである。
(付記項1)
請求項1に記載の内視鏡用処置具を、前記シース部を挿通可能なチャンネルを有する内視鏡と組合わせて使用する内視鏡用処置具の使用方法であって、
前記内視鏡の前記チャンネルに前記シース部を挿通させるとともに、前記チャンネルから前記処置部を突出させ、
前記シース本体の前記被挟持部を、起上させきった前記起上台と前記チャンネルの内周面との間で挟持し、
前記トルク伝達部材の基端側において前記トルク伝達部材を周方向の一方側に回動させることで、前記シース本体を前記シース部の軸線周りに回動させて前記シース本体に回転トルクを作用させつつ、前記処置部の前記軸線周りの向きを前記内視鏡で観察し、
前記処置部が所望の向きになったときに、前記トルク伝達部材の基端側において前記トルク伝達部材を周方向の他方側に回動させて、前記シース本体の前記被挟持部よりも基端側に作用する回転トルクを解除する。