特許第6204086号(P6204086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204086
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】呼吸状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61B5/08 200
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-137019(P2013-137019)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-8925(P2015-8925A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】磯野 史朗
(72)【発明者】
【氏名】清水 剛
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−504602(JP,A)
【文献】 米国特許第06475156(US,B1)
【文献】 特許第5039041(JP,B2)
【文献】 欧州特許出願公開第02668900(EP,A1)
【文献】 特表2006−507905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の呼吸流量に対応する信号を取得する信号取得部と、
前記信号から得られる被検者の呼吸流量に係る第1指標を生成する第1指標生成部と、 前記第1指標から予測される被検者の呼吸要求量に係る第2指標を生成する第2指標生成部と、
前記第1指標と前記第2指標に基づいて、被験者の呼吸努力に係る第3指標を生成する第3指標生成部と、
前記第3指標を出力する出力部とを備え、
前記第1指標は、被検者の呼吸流量に対応する信号波形であり、
前記第2指標は、前記信号波形における被検者の吸気開始点を含む第1部分の勾配、および被検者の吸気終了点を示す第2部分に基づいて、当該第1部分と当該第2部分を含むように近似された正弦波形であり、
前記第3指標生成部は、前記正弦波形の振幅を前記第3指標とし、
前記第3指標は被検者の呼吸努力の強さを示す、呼吸状態判定装置。
【請求項2】
被検者の呼吸流量に対応する信号を取得する信号取得部と、
前記信号から得られる被検者の呼吸流量に係る第1指標を生成する第1指標生成部と、 前記第1指標から予測される被検者の呼吸要求量に係る第2指標を生成する第2指標生成部と、
前記第1指標と前記第2指標に基づいて、被験者の呼吸努力に係る第3指標を生成する第3指標生成部と、
前記第3指標を出力する出力部とを備え、
前記第1指標は、被検者の呼吸流量に対応する信号波形であり、
前記第2指標は、前記信号波形における被検者の吸気開始点を含む第1部分の勾配、および被検者の吸気終了点を示す第2部分に基づいて、当該第1部分と当該第2部分を含むように近似された正弦波形であ
前記吸気開始点と前記吸気終了点の間で、前記正弦波形の積分値および前記信号波形の積分値を取得する積分値取得部をさらに備え、
前記第3指標生成部は、前記正弦波形の積分値に対する前記信号波形の積分値の比を前記第3指標とし、
前記第3指標は、呼吸努力による換気の達成度を示す、呼吸状態判定装置。
【請求項3】
前記第1指標を表示する表示部をさらに備え、
前記出力部は、前記第3指標が前記第1指標と同期して前記表示部に表示されるように、前記第3指標を出力する、請求項1または2に記載の呼吸状態判定装置。
【請求項4】
被検者の呼吸圧を測定する圧力センサをさらに備え、
前記信号取得部は、前記圧力センサが出力する呼吸圧に基づいて前記信号を取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の呼吸状態判定装置。
【請求項5】
前記信号取得部は、前記信号を平方根補正する、請求項に記載の呼吸状態判定装置。
【請求項6】
被検者に装着される鼻カニューラをさらに備え、
前記信号取得部は、前記鼻カニューラを通じて導入される呼吸気に基づいて前記信号を取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の呼吸状態判定装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記第3指標に基づくアラームを出力する、請求項1からのいずれか一項に記載の呼吸状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠呼吸障害の検査や監視のために、被検者の呼吸状態を判定する装置に関する。
【0002】
睡眠時に発生する無呼吸低呼吸状態の1つに、気道閉塞状態で呼吸努力が継続される閉塞性無呼吸低呼吸がある。換言すると、被検者の呼吸努力を検出することにより、睡眠呼吸障害が発生していることが判定されうる。呼吸努力は、気道内圧を測定することにより認識されうる。気道内圧を測定するために、被検者の食道にセンサカテーテルを挿入する呼吸状態判定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−540118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
睡眠時呼吸障害の検査・監視には、終夜にわたる長時間の測定を要する。食道にセンサカテーテルが挿入された状態での長時間測定は、被検者に大きな煩わしさや負担を強いることを避けられない。またこのような状況下では、被検者は眠りにつくことができず、適切な睡眠検査を行なうことが困難である。一方、診断を行なう者にとって、終夜にわたり測定された膨大な数の測定信号波形から目視で被検者の呼吸状態を判定する作業は、極めて大きな負担である。また目視観察による判断の場合、観察者の主観や経験による判断結果の相違を排除することは困難である。
【0005】
よって本発明は、被検者の煩わしさや負担を軽減しつつ、正確かつ容易に睡眠時呼吸障害を判定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明がとりうる一態様は、呼吸状態判定装置であって、
被検者の呼吸流量に対応する信号を取得する信号取得部と、
前記信号から得られる被検者の呼吸流量に係る第1指標を生成する第1指標生成部と、
前記第1指標から予測される被検者の呼吸要求量に係る第2指標を生成する第2指標生成部と、
前記第1指標と前記第2指標に基づいて、被験者の呼吸努力に係る第3指標を生成する第3指標生成部と、
前記第3指標を出力する出力部とを備える。
【0007】
このような構成によれば、被検者の呼吸流量に対応する信号より呼吸努力に係る指標が得られる。気道内圧を直接測定するセンサカテーテルを食道に挿入する必要がないため、被検者に与える煩わしさや負担を軽減することができる。
【0008】
また一定の基準で生成される指標を参照することにより、測定波形の目視観察によることなく、被検者の呼吸状態を容易かつ正確に判定することができる。したがって判定結果に高い信頼性を求めることができる。
【0009】
一例として、前記第1指標は、被検者の呼吸流量に対応する信号波形であり、前記第2指標は、前記信号波形における被検者の吸気開始点を含む第1部分の勾配、および被検者の吸気終了点を示す第2部分に基づいて、当該第1部分と当該第2部分を含むように近似された正弦波形である構成とされる。
【0010】
ここで、前記第3指標生成部は、前記正弦波形の振幅を前記第3指標としてもよい。この場合、前記第3指標は被検者の呼吸努力の強さを示す。
【0011】
あるいは、前記吸気開始点と前記吸気終了点の間で、前記正弦波形の積分値および前記信号波形の積分値を取得する積分値取得部をさらに備える構成とし、前記第3指標生成部は、前記正弦波形の積分値に対する前記信号波形の積分値の比を前記第3指標としてもよい。この場合、前記第3指標は、呼吸努力による換気の達成度を示す。
【0012】
前記第1指標を表示する表示部をさらに備え、前記出力部は、前記第3指標が前記第1指標と同期して前記表示部に表示されるように、前記第3指標を出力する構成としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、第1指標と第3指標を適宜に比較することにより、被検者の呼吸状態を詳細かつ複合的に判定することができる。
【0014】
被検者の呼吸圧を測定する圧力センサをさらに備え、前記信号取得部は、前記圧力センサが出力する呼吸圧に基づいて前記信号を取得する構成としてもよい。
【0015】
この場合、被検者の呼吸流量を測定する場合と比較して簡易な測定が可能となる。
【0016】
さらに信号取得部が前記測定波形を平方根補正することにより、精度のよい呼吸流量の近似値が得られる。
【0017】
被検者に装着される鼻カニューラをさらに備え、前記信号取得部は、前記鼻カニューラを通じて導入される呼吸気に基づいて前記信号を取得する構成としてもよい。
【0018】
この場合、多種多様のセンサを身体に装着する必要がないため、被検者が感じる煩わしさや負担を軽減することができる。特に鼻カニューラは比較的軽量であるため、睡眠の妨げを抑制することができる。
【0019】
前記出力部は、前記第3指標に基づくアラームを出力する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るモニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図1のモニタ装置が行なう信号処理を説明するための図である。
図3図1のモニタ装置の表示部に表示される信号波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る呼吸状態判定装置としてのモニタ装置10の構成を示す機能ブロック図である。モニタ装置10は、信号取得部11、高周波フィルタ12、制御部13、および表示部14を備えている。
【0023】
鼻カニューラ21は、一対の管部を被検者の鼻孔に挿入し、チューブ22を介して被検者の鼻呼吸気を圧力センサ23に導くための器具である。圧力センサ23は、被検者の呼吸により生ずる圧力変化を測定するセンサであり、被検者の呼吸状態(呼吸圧)に対応する波形を有する測定信号(以降の説明においては、単に測定波形と称する)を出力する。
【0024】
被検者の呼吸状態は、本来呼吸流量の測定を通じて判断することが望ましいが、呼吸気のリーク対策等が必要になる。一方、呼吸圧の値に所定の定数を乗じて平方根の値をとることによって呼吸流量のよい近似値が得られることが知られており、この演算処理を平方根補正と称する。本実施形態では測定をより容易にするために、信号取得部11において圧力センサ23より入力された測定波形を平方根補正した信号を取得する。
【0025】
高周波フィルタ12は、信号取得部11が平方根補正により取得した信号の高周波成分を除去する電気的なフィルタである。所定の周波数を上回る成分を除去することにより信号波形が滑らかとなり、後述する演算処理の正確性が向上する。高周波フィルタ12を通過した信号は、制御部13に入力される。
【0026】
制御部13は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、モニタ装置10における様々な制御を実行する。
【0027】
制御部13は、第1指標生成部の一例として機能し、高周波フィルタ12より入力された信号より信号波形S1を生成する。図2に示す第1指標の一例としての信号波形S1は、当該信号より得られる被検者の呼吸量を示している。
【0028】
吸気フローリミテーションは、吸気時に気道が閉塞することにより発生する現象であり、息を吸おうとしても吸えない状態に対応する。図2に破線S2で示すように、正常な状態であれば、吸気に伴い呼吸圧が低下(負圧が増加)する。同図の信号波形S1は吸気フローリミテーションが発生している状態を示すものであり、気道閉塞により吸気が阻害される結果、本来呼吸圧が低下すべき箇所において低下せず、むしろ上昇するという現象が起こる。
【0029】
信号波形S1の振幅が正の値から負の値に変わる時点t1を吸気開始点とし、負の値から正の値に変わる時点t2を吸気終了点とした場合、破線S2で示す波形は、時点t1における信号波形S1の勾配と等しい勾配をもって始まり、時点t2において終了するように近似された正弦波形の一部に相当する。
【0030】
時点t1における勾配が大きいほど、近似された正弦波形S2の振幅は大きくなる。時点t1における勾配が大きいという事実は、被検者がより強く吸気を欲しているという事実に対応するため、近似された正弦波形S2の振幅の大きさは、被検者の呼吸努力の強さを示す指標になりうる。強い呼吸努力が継続してなされている状態は、睡眠時無呼吸低呼吸が発生している状態と言えるため、当該指標を評価することにより、被検者の睡眠時呼吸障害の有無を判断することができる。
【0031】
制御部13は、被検者より取得した呼吸流量に対応する信号波形S1より、上記の近似された正弦波形S2を取得するように構成されている。また制御部13は、当該正弦波形S2に基づいて、被検者の被検者の呼吸努力に係る指標S3を生成するように構成されている。具体的な処理について、以下説明する。
【0032】
まず制御部13は、図2における信号波形S1の振幅が正の値から負の値に替わる時点t1、および負の値から正の値に替わる時点t2を特定する。上述のように、時点t1は吸気開始点を、時点t2は吸気終了点を示す。
【0033】
次に制御部13は、第2指標生成部として機能し、時点t1における信号波形S1の勾配を取得する。厳密には、時点t1を開始点とする微小区間に対応する信号波形S1の第1部分の勾配を取得する。そして当該第1部分と、信号波形S1の第2部分としての時点t2を含むように近似された正弦波形S2(第2指標の一例)を、演算により取得する。ここで「第1部分を含む」ということは、時点t1における信号波形S1と、近似された正弦波形S2の勾配が等しいことを意味する。
【0034】
次いで制御部13は、第3指標生成部として機能し、正弦波形S2の振幅を被検者の呼吸努力の強さを示す指標S3(第3指標の一例)として生成する。さらに制御部13は、出力部として機能し、信号波形S1と共に当該指標S3を表示部14に出力する(図1参照)。上述した「生成する」という表現は、表示部14への指標S3の出力態様に応じたデータあるいは信号を生成することを意味する。
【0035】
図3は、ディスプレイ装置を備える表示部14に、信号波形S1と指標S3がリアルタイムに表示された状態を示す図である。図の右側に行くほど時間的に新しいデータであることを示している。制御部13は、指標S3が信号波形S1と時間的に同期して表示されるように、信号S1および指標S3を表示部14へ出力する。本例の場合、指標S3は、図2に破線で示した近似された正弦波形S2そのものとなる。
【0036】
同図から明らかなように、信号波形S1の振幅と指標S3の振幅は、必ずしも正の相関を有しているわけではない。呼吸努力すなわち指標S3の振幅が大きいにも関わらず、呼吸流量すなわち信号波形S1の振幅が小さい場合は、気道閉塞状態で呼吸努力が継続される閉塞性無呼吸低呼吸状態である蓋然性が高い。
【0037】
呼吸努力の強さを示す指標S3のみでも、睡眠時呼吸障害の発生を判定することはできる。例えば指標S3の振幅が所定値を上回る状態が所定時間以上継続した場合に、睡眠時呼吸障害が発生していると判定することができる。図3に示すように、信号波形S1との同期表示を行なうこととすれば、睡眠時呼吸障害の種別までより正確に判定することができる。
【0038】
指標S3の態様は、図3に示したものに限られない。例えば、吸気の度に生成される近似された正弦波形S2の振幅の最大値を取得し、値の大きさに対応する長さのバー指標を生成し、これを表示部14に出力する処理を、制御部13が行なう構成としてもよい。また当該値の大きさに応じて色や形が変化するシンボルを生成し、これを表示部14に出力する処理を、制御部13が行なう構成としてもよい。
【0039】
制御部13は、被検者の呼吸努力に係る指標として、当該呼吸努力による換気の達成度を取得することもできる。換気の達成度は、被検者自身が本来的に必要としている換気の量に対する、実際に行なうことができた換気の量の比として表わされる。
【0040】
制御部13は、上記の呼吸努力の強さを表す指標に加えて、上述した換気の達成度を指標として取得することにより、被検者の睡眠時呼吸障害の状態を、より詳細に分析・把握することができる。
【0041】
具体的には、制御部13は積分値取得部の一例として機能し、吸気開始点t1と吸気終了点t2の間で、信号波形S1および近似された正弦波形S2の積分値を取得する。図2に示す例においては、時間軸の下方に位置する信号波形S1の面積A1と、近似された正弦波形S2の面積A2が、それぞれ取得される。
【0042】
本実施形態においては、近似された正弦波形S2の積分値(すなわち面積A2)を、被検者が本来必要としている換気量とみなすようにしている。これに対して、信号波形S1の積分値(すなわち面積A1)は、実際に行なうことができた換気の量を示している。したがって、面積A1の面積A2に対する比を計算することにより、上述の換気達成度を取得することができる。制御部13は、第3指標生成部として機能し、当該面積比A1/A2(積分値の比)を、換気の達成度を示す指標S4(第3指標の一例)として生成する。
【0043】
制御部13は、図3に示すように、生成された指標S4が信号波形S1および指標S3と時間的に同期して表示されるように、指標S4を表示部14へ出力する。ここでは計算により求めた比の値に対応する長さのバー指標を生成するようにしている。当該比の値の大きさに応じて色や形が変化するシンボルを生成し、これを表示する構成としてもよい。
【0044】
このような構成によれば、被検者の呼吸流量に応じた信号波形S1、呼吸努力の強さを示す指標S3、および換気の達成度を示す指標S4が表示部14に表示される。医療従事者は、これらを適宜比較することにより、被検者の呼吸状態を詳細かつ複合的に判定することができる。例えば図3において符号Aで示す時間領域においては、換気達成度が相対的に低いことが判る。これに引き続く符号Bで示す時間領域において振幅の大きな信号波形S1が確認できるが、これは換気を確保するために生じた覚醒(arousal)と推定される。また各指標は、一定の基準に基づいて生成されたものであるため、測定波形の目視観察によることなく、被検者の呼吸状態を容易かつ正確に判定することができる。したがって判定結果に高い信頼性を求めることができる。
【0045】
また本実施形態のモニタ装置10によれば、上記の一連の処理を通じた被検者の呼吸状態の判定を、被検者の呼吸圧を測定するのみで行なうことができる。気道内圧を直接測定するセンサカテーテルを食道に挿入する必要がないため、被検者が感じる煩わしさや負担を軽減することができる。特に本実施形態において被検者に装着されているのは、比較的軽量で小型の鼻カニューラのみであるため、睡眠の妨げを抑制することができる。一方、診断を行なう者にとっては、換気の達成度を示す指標が判断結果の客観的な指標となりうるだけでなく、終夜にわたり測定された膨大な数の測定信号波形から、問題となる波形を容易に特定することができる。
【0046】
上述した制御部13の第1指標生成部、第2指標生成部、第3指標生成部、積分値取得部、出力部としての機能は、制御部13を構成する回路素子等のハードウェアの動作、演算素子に格納されたプログラム等のソフトウェアの動作、あるいはこれらの組合せにより実現されうる。
【0047】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0048】
図2に示した吸気開始点t1と吸気終了点t2は、必ずしも信号波形S1の振幅値の正負が切り替わる点であることを要しない。一定の基準に則る限りにおいて、適宜に設定することができる。
【0049】
指標S3とS4は、必ずしも双方を取得して出力することを要しない。被検者の呼吸状態の判定に必要な、いずれか一方のみを取得して出力する構成としてもよい。
【0050】
制御部13からの指標S1、S3、およびS4の「出力」は、表示部14における表示を目的とするものに限られない。例えば図示しないプリンタにおける印刷や、図示しない記憶装置におけるデータ格納を目的にして出力が行なわれる構成としてもよい。これらの場合に制御部13は、目的に応じた信号あるいはデータの形式で指標S1、S3、およびS4を生成し、出力対象の装置へ向けて送信する。出力対象の装置が人工呼吸器の場合、送信された指標に基づき、設定等の変更が可能となる。
【0051】
圧力センサ23は、必ずしもモニタ装置10の本体の外部に設けられることを要しない。信号取得部11の一部を構成するものとしてモニタ装置10に内蔵される構成としてもよい。
【0052】
被検者の呼吸状態に対応する信号波形を測定できるものであれば、圧力センサ23に代えて呼吸流量センサや温度センサを用いてもよい。
【0053】
信号取得部11に入力される被検者の呼吸状態に対応する信号波形は、必ずしも被検者の呼吸圧の測定波形であることを要しない。被検者の呼吸流量の測定波形が信号取得部11に直接入力される構成としてもよい。この場合、信号取得部11における平方根補正処理は不要となる。
【0054】
被検者の呼吸気を圧力センサ23またはモニタ装置10に導く器具は鼻カニューラ21に限られない。これに加えてあるいは代えて、被検者の口を覆うマスクを用いてもよい。
【0055】
表示部14は、必ずしもモニタ装置10の一部として設けられることを要しない。モニタ装置10の外部に設置され、制御部13と通信可能に接続されたディスプレイ装置を表示部14として機能させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:モニタ装置、11:信号取得部、13:制御部、14:表示部、S1:信号波形、S2:近似された正弦波形、S3:指標、S4:指標
図1
図2
図3