特許第6204096号(P6204096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204096廃棄物に含まれるセシウムの除去システムおよび除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204096
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】廃棄物に含まれるセシウムの除去システムおよび除去方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20170914BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20170914BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20170914BHJP
   G21F 9/08 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G21F9/28 521A
   G21F9/06 521B
   G21F9/12 501A
   G21F9/12 501D
   G21F9/06 G
   G21F9/08
   G21F9/06 511B
   B01J20/34 G
   B01J20/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-150448(P2013-150448)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-21856(P2015-21856A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成25年1月23日、新聞(日刊工業新聞)にて公開 (2)平成25年1月23日、新聞(日本経済新聞)にて公開 (3)平成25年1月23日、新聞(日経産業新聞)にて公開 (4)平成25年1月23日、株式会社タクマのウェブサイトにて公開 (5)平成25年1月29日、第29回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス講演論文集(発行者:一般社団法人エネルギー・資源学会)にて公開 (5a)平成25年1月29日、第29回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス(主催:一般社団法人エネルギー・資源学会)にて講演(公開) (6)平成25年2月8日、第34回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集(発行者:公益社団法人 全国都市清掃会議)にて公開 (6a)平成25年2月8日、第34回全国都市清掃研究・事例発表会(主催者:公益社団法人全国都市清掃会議)にて公開 (7)平成25年2月21日、新聞(日経産業新聞)にて公開 (8)平成25年3月19日、「JEFMA」(発行者:一般社団法人日本環境衛生施設工業会)No.61にて公開 (9)平成25年4月5日、15日、25日、新聞「ザ・ウエイストマネジメント」にて公開 (10)平成25年4月19日、「JETI」(発行者:株式会社ジェティ)vol.61,No.4にて公開 (11)平成25年5月1日、「都市清掃」(発行者:公益社団法人 全国都市清掃会議)第66巻,第313号(平成25年5月号)にて公開 (12)平成25年6月5日、環境放射能除染学会第2回研究発表会予稿集(発行者:環境放射能除染学会)にて公開 (12a)平成25年6月6日、環境放射能除染学会第2回研究発表会(主催者:環境放射能除染学会)にて公開 (13)平成25年6月29日、「タクマ技報」(発行者:株式会社タクマ)第21巻,第1号にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 宗治
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−064690(JP,A)
【文献】 特開平08−105998(JP,A)
【文献】 特開2013−072763(JP,A)
【文献】 特表2001−500527(JP,A)
【文献】 特表2001−522032(JP,A)
【文献】 特開2013−088361(JP,A)
【文献】 特許第5236835(JP,B2)
【文献】 特開2008−272742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/06
G21F 9/08
G21F 9/12
B01J 20/28
B01J 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状または細砕された廃棄物と洗浄水が導入され、撹拌・洗浄される洗浄槽と、
該洗浄槽から供出された廃棄物が固液分離され、分離された固体成分が回収される固体回収部と、分離された液体成分が供出される液体供出部と、を有するろ過器と、
接液部に充填された吸着剤と、導入された前記液体成分中のセシウムが該吸着剤によって選択的に吸着され、吸着処理された液体成分が処理済液として回収される処理済液回収部と、処理液が導入される処理液導入部と、前記吸着剤から溶離処理されたセシウムを含む溶離液が供出される溶離液供出部と、を有する吸着部と、
前記溶離液が導入され、貯留される貯留槽と、
前記貯留された溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮部と、
を備え、
前記吸着剤として、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態でセシウムに対する選択的吸着特性を有し、酸処理された状態で吸着物に対する選択的脱離特性を有し、該アルカリ処理および酸処理によって再生可能な包接化合物を用いるとともに、
前記処理液として、該吸着剤の前処理として前記接液部に導入されるアルカリ処理液と、該吸着剤からのセシウムの溶離処理として前記接液部に導入される酸処理液が用いられることを特徴とする廃棄物に含まれるセシウムの除去システム。
【請求項2】
回収された前記処理済液またはその一部を、セシウムに対する選択性のないまたは小さい第2吸着剤が充填された第2吸着部に導入し、精製処理を行うことを特徴とする請求項1記載の廃棄物に含まれるセシウムの除去システム。
【請求項3】
少なくとも、前記液体供出部から吸着部への液体成分の導入流路、前記吸着部からの処理済液流路、前記吸着部からの溶離液流路、のいずれかまたはいくつかに空間線量計や放射能測定器を配設し、各流路の空間線量や放射能に応じて、廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整することを特徴とする請求項1または2記載の廃棄物に含まれるセシウムの除去システム。
【請求項4】
前記ろ過器において固液分離された液体成分の一部が分岐され、洗浄水として前記洗浄槽に導入される第1帰還流路、または/および前記吸着部から回収された処理済液の一部が分岐され、洗浄水として前記洗浄槽に導入される第2帰還流路、または/および前記吸着部から供出された溶離液の一部が、再度前記吸着部に導入される第3帰還流路、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物に含まれるセシウムの除去システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセシウムの除去システムを用いた廃棄物に含まれるセシウムの除去方法であって、
粉状または細砕された廃棄物が、洗浄水と混合・撹拌され、洗浄される洗浄工程と、
洗浄された廃棄物が固液分離され、分離された固体成分および液体成分が回収されるろ過工程と、
包接化合物からなる吸着剤がセシウムに対する選択的吸着特性を有するように、予めアルカリ処理液によって該吸着剤をアルカリ処理し、中性またはアルカリ性の状態にするアルカリ処理工程と、
分離された前記液体成分が前記アルカリ処理された吸着剤に導入され、該液体成分中のセシウムが選択的に吸着され、吸着処理された液体成分が処理済液として回収される吸着処理工程と、
吸着されたセシウムに対して選択的に脱離するように、酸処理液によって吸着剤が酸処理され、該吸着剤から溶離処理されたセシウムを含む溶離液が供出される溶離処理工程と、
該溶離液が貯留される貯留工程と、
貯留された溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮工程と、
を有することを特徴とする廃棄物に含まれるセシウムの除去方法。
【請求項6】
回収された前記処理済液またはその一部が、セシウムに対する選択性のないまたは選択性の小さい第2吸着処理される精製処理工程と、を有することを特徴とする請求項5記載の廃棄物に含まれるセシウムの除去方法。
【請求項7】
少なくとも、前記ろ過工程を経た液体成分、前記吸着処理工程を経た処理済液、前記溶離処理工程を経た溶離液、のいずれかまたはいくつかの空間線量や放射能を測定する放射能測定工程と、および測定結果に基づき廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整する制御工程を有することを特徴とする請求項5または6記載の廃棄物に含まれるセシウムの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物に含まれるセシウムの除去システムおよび除去方法に関するものであり、特に、廃棄物に含まれるセシウムの除去システムおよびこれを用いた除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種燃料、廃棄物、汚泥などの焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰などには、有害な重金属が含まれている場合があり、こうした有害物質を含む飛灰をそのまま埋め立て処理することは、環境上好ましいものではなく、埋め立てる場合でも、無害化処理して行うことが要求される。具体的には、放射性セシウムの場合、その濃度が8,000Bq/kg以下であれば通常の管理型埋立処分場にて埋立処分することができる。しかしながら、放射性セシウム等に汚染された廃棄物を焼却すると、放射性セシウムが焼却主灰や焼却飛灰に濃縮されることから、焼却灰、特に焼却飛灰中の放射性セシウム濃度は8,000Bq/kgを超えることが多い。また、社会的要求から8,000Bq/kgを下回る焼却灰でも埋立処分することが難しい場合も多い。こうした廃棄物の無害化は、大きな社会的な要求となっている。
【0003】
焼却飛灰中の放射性セシウムの多くは、塩化セシウムなどの水に可溶な形態で存在している。したがって、焼却飛灰を水洗し、固液分離することによって液層に放射性セシウムを移行させることで焼却飛灰中のセシウムを取り出すことができることは知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、その抽出された液層の処分が課題となり、特に抽出に必要とされる水の容量は焼却飛灰に比べて非常に大きいことから、セシウムの選択的な除去方法や濃縮技術が課題となり、多くの研究・実用化が図られてきた。
【0004】
例えば、特許文献2には、放射性セシウムの分離法として、以下の方法が挙げられているが、いずれも個別に課題を有している(段落0005〜0010)。
(i)リン酸モリブデン酸アンモニウムを担持した無機イオン交換体を用いてセシウムを分離する方法。無機イオン交換体が廃棄物として発生し、この廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。
(ii)硝酸含有水溶液中のセシウムを不溶性のフェロシアン化物系吸着剤を用いて分離する方法。セシウムの分離の際に酸化防止剤としてヒドラジン誘導体などの添加物を共存させる必要がある点、また、吸着剤が放射性廃棄物として発生し、廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。
(iii)ポリ(ヒドロキシアリーレン)ポリマー樹脂を用いた他のアルカリ金属を含む産業流出液からセシウムを分離する方法。イオン交換と同様の技術であり、最終的に放射性固体廃棄物が発生する点、高放射線場に置かれたときに、ポリマー樹脂の分解および配位子の分解による吸着効率の低下、配位子自体や樹脂の脱離などが欠点として挙げられる。
(iv)クラウンカリックス[4]アレン化合物によるセシウムの分離を溶媒抽出法を用いて選択的抽出を行う方法。クラウンカリックス[4]アレンを溶解する、有機溶媒にオルト−ニトロフェニルヘキシルエーテルを用いる必要があり、このオルト−ニトロフェニルヘキシルエーテルは、放射線分解などによるニトロ化など潜在的な危険を有しており、産業利用という点では難点がある。また、クラウンカリックス[4]アレンは、無極性溶媒などには難溶であり、溶媒選定が問題となっている。
(v)モルデナイトと含水チタン酸の混合無機イオン交換体、またはゼオライトやアンチモン酸などの無機イオン交換体などを用いてセシウムを吸着分離する吸着分離法。セシウムを分離回収後にイオン交換体が廃棄物として発生し、廃棄物を処理する必要があるという問題点を有する。また、溶離液中に共存するナトリウムやカリウムなども同時に吸着するため、吸着効率が悪く、繰返し使用することができない。
(vi)コバルトジカルボリド(CCD)を極性の高いニトロベンゼンに溶解した有機溶媒を用いる溶媒抽出方法。コバルトジカルボリド系では、ニトロベンゼンのような有害な溶媒(希釈剤)を用いることになり、抽出試薬の入手先が限定されることから入手が困難であり、また、使用後に焼却すると金属塩(固体廃棄物)が残るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−213697号公報
【特許文献2】特開2009−133707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、これら焼却飛灰等の廃棄物から放射性セシウムを選択的に分離し、濃縮・回収するとともに、再利用可能な分離手段を用いることによって、放射性セシウムを含む2次的に発生する排出物を低減することができる廃棄物に含まれるセシウムの除去システムおよび除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すセシウムの除去システムおよびこれを用いたセシウムの除去方法によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明に係る廃棄物に含まれるセシウムの除去システムは、
粉状または細砕された廃棄物と洗浄水が導入され、撹拌・洗浄される洗浄槽と、
該洗浄槽から供出された廃棄物が固液分離され、分離された固体成分が回収される固体回収部と、分離された液体成分が供出される液体供出部と、を有するろ過器と、
接液部に充填された吸着剤と、導入された前記液体成分中のセシウムが該吸着剤によって選択的に吸着され、吸着処理された液体成分が処理済液として回収される処理済液回収部と、処理液が導入される処理液導入部と、前記吸着剤から溶離処理されたセシウムを含む溶離液が供出される溶離液供出部と、を有する吸着部と、
前記溶離液が導入され、貯留される貯留槽と、
前記貯留された溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮部と、を備え、
前記吸着剤として、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態でセシウムに対する選択的吸着特性を有し、酸処理された状態で吸着物に対する選択的脱離特性を有し、該アルカリ処理および酸処理によって再生可能な包接化合物を用いるとともに、
前記処理液として、該吸着剤の前処理として前記接液部に導入されるアルカリ処理液と、該吸着剤からのセシウムの溶離処理として前記接液部に導入される酸処理液が用いられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のセシウムの除去システムを用いた廃棄物に含まれるセシウムの除去方法であって、
粉状または細砕された廃棄物が、洗浄水と混合・撹拌され、洗浄される洗浄工程と、
洗浄された廃棄物が固液分離され、分離された固体成分および液体成分が回収されるろ過工程と、
包接化合物からなる吸着剤がセシウムに対する選択的吸着特性を有するように、予めアルカリ処理液によって該吸着剤をアルカリ処理し、中性またはアルカリ性の状態にするアルカリ処理工程と、
分離された前記液体成分が前記アルカリ処理された吸着剤に導入され、該液体成分中のセシウムが選択的に吸着され、吸着処理された液体成分が処理済液として回収される吸着処理工程と、
吸着されたセシウムに対して選択的に脱離するように、酸処理液によって吸着剤が酸処理され、該吸着剤から溶離処理されたセシウムを含む溶離液が供出される溶離処理工程と、
該溶離液が貯留される貯留工程と、
貯留された溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
廃棄物に含まれるセシウムの除去システムにおいては、上記のように選択的にセシウムを除去する手段と、除去処理に伴い発生する2次的な除害処理を必要とする排出物を如何に少なくするかが重要な課題である。本発明者は、種々の吸着剤を検証した結果、前処理として、後述するように、クラウンエーテル化合物等の包接化合物をアルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態とすることによって、非常に高いセシウムに対する選択的吸着特性を有する吸着剤として使用できることを見出した。と同時に、該吸着剤は、酸処理された状態とすることによって、非常に高いセシウムに対する選択的脱離特性を有するとともに、アルカリ処理−酸処理を複数回繰り返しても吸着−溶離特性に変化がないことを見出した。本発明は、こうした知見を基に、吸着剤として包接化合物が充填された吸着部を用い、バッチ的に前処理−吸着処理−溶離処理を行うことができる構成によって、セシウムを選択的に分離し、濃縮・回収するとともに、再利用可能な分離手段を用いることによって、セシウムを含む2次的に発生する排出物を低減するセシウムの除去システムおよび除去方法を提供することを可能とした。ここでいう「包接化合物」とは、クラウンエーテル化合物や結晶状シリコチタネート系化合物等、後述するようなセシウムに対して包接することができるいくつかの化合物であり、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態でセシウムに対する選択的吸着特性を有し、酸処理された状態で該吸着物に対する選択的脱離特性を有し、該アルカリ処理および酸処理によって再生可能な化合物に規定される。なお、ここでいう「中性」とは、狭義のpH7の状態をいうものではなく、広くpH7±1程度の「中性領域」をいう。また、ここでいう「洗浄水」や「処理液」とは、新たに本システムに供給される溶液のみならず、各処理において供出された溶液であって再利用可能な、洗浄機能あるいはアルカリ処理や酸処理の機能を有する溶液を含む。
【0011】
本発明は、上記廃棄物に含まれるセシウムの除去システムであって、回収された前記処理済液またはその一部を、セシウムに対する選択性のないまたは小さい第2吸着剤が充填された第2吸着部に導入し、精製処理を行うことを特徴とする。
また、本発明は、上記廃棄物に含まれるセシウムの除去方法であって、回収された前記処理済液またはその一部が、セシウムに対する選択性のないまたは選択性の小さい第2吸着処理される精製処理工程と、を有することを特徴とする。
廃棄物には、セシウム以外にも鉛や亜鉛等の金属元素が含まれており、上記吸着処理によって得られた処理済液中には、極微量のセシウム化合物以外に微量のこうした金属元素の化合物や水溶性のカリウムやナトリウム等の化合物が含まれる。本発明は、セシウムに対する吸着選択性のないゼオライト等の2次吸着剤による2次吸着処理により、こうした成分を除去することによって、処理済液の精製処理を行い、廃棄可能な清浄水を作製することができる。また後述するように、こうした清浄水をセシウムの除去システムにおける洗浄水として使用することによって、エネルギーや物質収支に関してシステム全体の高効率化を図ることが可能となる。
【0012】
本発明は、上記廃棄物に含まれるセシウムの除去システムであって、少なくとも、前記液体供出部から吸着部への液体成分の導入流路、前記吸着部からの処理済液流路、前記吸着部からの溶離液流路、のいずれかまたはいくつかに空間線量計や放射能測定器を配設し、各流路の空間線量や放射能に応じて、廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整することを特徴とする。
また、本発明は、上記廃棄物に含まれるセシウムの除去方法であって、少なくとも、前記ろ過工程を経た液体成分、前記吸着処理工程を経た処理済液、前記溶離処理工程を経た溶離液、のいずれかまたはいくつかの空間線量や放射能を測定する放射能測定工程と、および測定結果に基づき廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整する制御工程を有することを特徴とする。
セシウム、特に放射性セシウムは、その金属の有害性のみならず、処理済の物質に対する空間線量や放射能にも十分管理・監視を行う必要がある。本発明は、少なくとも吸着部に導入される液体成分,吸着処理された処理済液,溶離処理された溶離液のいずれかまたはいくつかの空間線量や放射能を測定することによって、システムから供出される各物質の安全性を確保することを可能とした。と同時に、その変化に応じて、廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整することによって、未然に放射性物質の流出を防止することができる。
【0013】
本発明は、上記廃棄物に含まれるセシウムの除去システムであって、前記ろ過器において固液分離された液体成分の一部が分岐され、洗浄水として前記洗浄槽に導入される第1帰還流路、または/および前記吸着部から回収された処理済液の一部が分岐され、洗浄水として前記洗浄槽に導入される第2帰還流路、または/および前記吸着部から供出された溶離液の一部が、再度前記吸着部に導入される第3帰還流路、を有することを特徴とする。
上記のように、セシウムの除去システムにおいては、セシウム化合物の水溶性を利用することが効果的であり、洗浄水や処理液が利用される。こうした溶液は、各処理によって、非常に清浄あるいは各処理における妨害成分が除去された溶液を構成する。本発明は、こうした処理済の溶液を再利用することによって、新たにシステムに供給すべき洗浄水や処理液の低減を図り、エネルギーや物質収支に関してシステム全体の高効率化を図ることが可能となる。特に、放射性物質の取り扱いおいては、極力処理系を閉ループとすることによって、より安全な処理機能を確保し、システムの安全操業を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るセシウムの除去システムの基本構成を例示する全体構成図。
図2】本発明に係るセシウムの除去システムの第2構成例を示す全体構成図。
図3】本発明に係るセシウムの除去システムの第3構成例を示す全体構成図。
図4】本発明に係るセシウムの除去システムにおける吸着/溶離部の他の構成例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る廃棄物に含まれるセシウムの除去システム(以下「本システム」という)は、粉状または細砕された廃棄物と洗浄水が導入される洗浄槽と、これらが固液分離されるろ過器と、セシウムが選択的に吸着され、吸着処理されたセシウムを含む溶離液が供出される吸着部と、溶離液が貯留される貯留槽と、溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮部と、を備え、吸着剤として、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態でセシウムに対する選択的吸着特性を有し、酸処理された状態で該吸着物に対する選択的脱離特性を有し、該アルカリ処理および酸処理によって再生可能な包接化合物を用いるとともに、処理液として、該吸着剤の前処理としてアルカリ処理液と、セシウムの溶離処理として酸処理液が用いられることを特徴とする。こうした構成によって、廃棄物から放射性セシウムを選択的に分離し、濃縮・回収するとともに、再利用可能な分離手段を用いることによって、放射性セシウムを含む2次的に発生する排出物を低減することができるセシウムの除去システムが可能となった。
【0016】
<本システムの構成例>
本システムの実施態様として、基本的な概略全体構成を、図1に示す(第1構成例)。本システムにおいて、廃棄物1に含まれる(放射性)セシウムは、前処理部10において、粉状または細砕された廃棄物1とともに供出される。次に、抽出部20において、セシウム化合物の大半が廃棄物1から洗浄水3に溶解し(洗浄槽2)、固液分離された液体成分中に抽出される(ろ過器4)。次に、吸着/溶離部50において、吸着剤に選択的に吸着されるとともに(吸着部5)、吸着剤から溶離される(溶離液を形成)。次に、貯留/濃縮部60において、貯留され(貯留槽6)、濃縮工程において、濃縮されて、本システムから回収される。
【0017】
〔廃棄物について〕
処理対象となる廃棄物1としては、建築廃材等を含む各種産業廃棄物、汚泥などの焼却灰、焼却飛灰、溶融飛灰など、セシウムが含まれる可能性のある種々の廃棄物を挙げることができる。燃焼処理のような熱処理された廃棄物のみならず、セシウム等を固定化するために、キレート処理やセメント固化処理等化学的処理された廃棄物も含まれる。
【0018】
〔前処理部について〕
前処理部10において、廃棄物1が、焼却飛灰や溶融飛灰のように、水洗可能な状態の粉状物(例えば、平均粒径200μm以下)の場合には、そのまま、例えばベルト搬送等によって抽出部20に供出される。キレート処理された飛灰やセメント固化された焼却灰等の場合のように、水洗による抽出効率が悪い場合には、前処理手段11において。水洗可能な状態となるように、細砕処理によって粉状または細砕化され、あるいは酸やアルカリによる薬剤処理(中和処理を含む)される。詳細の処理内容は、後述する。
【0019】
〔抽出部について〕
抽出部20は、洗浄槽2,洗浄水供給部31,ろ過器4から構成される。粉状または細砕された廃棄物1が、洗浄槽2に供給される。洗浄槽2には、さらに洗浄水3が洗浄水供給部31から供給され、廃棄物1と撹拌され、廃棄物1の洗浄処理が行われる。これによって、廃棄物1に含まれるセシウム化合物の大半が洗浄水中に溶解する。洗浄水3は、市水あるいは清浄な工場用水あるいは井戸水等を用いることが好ましい。洗浄槽2は、廃棄物1と洗浄水3との混合物を所定時間撹拌できる機能を有する所定容量の装置をいい、撹拌機能は、図示するような撹拌手段21を有する構成のみならず、例えば回転ドラム式の洗浄槽2や洗浄水3を噴流として導入して撹拌流を形成させる構成(図示せず)等他の手段によって確保することも可能である。洗浄槽2の内部は、廃棄物あるいはこれから分離された細粒子や微粒子の付着を防止するような表面処理を行うことによって、効率よく撹拌・洗浄を行うことができる。
【0020】
撹拌・洗浄された廃棄物1と洗浄水3との混合物は、ろ過器4に導入され、固液分離される。ろ過器4としては、フィルタ式や沈降式あるいは遠心分離式等を用いることができるが、図示するように、多段式のろ過機能を有することが好ましい。洗浄処理による凝集物の発生に伴い、混合物には種々の粒径の固体が共存することから、順次ろ過処理することによって、高い固液分離機能を確保することができる。固液の分離機能は、例えば、粒径1.0μm以下の固体成分を含む液体成分とすることが好ましい。吸着部5に設けられた吸着剤表面への付着による吸着処理能力の低下を防止することができる。また、後述するように、洗浄水3をろ過器4の下流側(液体成分供出側)から供給し、ろ過器4から供出される液体成分あるいはその一部を洗浄槽2に導入する構成の場合には、特に下流段における固体成分の存在を低減し、高い固液分離機能を有することが可能となる。分離された固体成分は、固体回収部41に集積・回収され、分離された液体成分は、液体供出部42に貯留される。貯留された液体成分は、給送ポンプ43によって吸着/溶離部50に給送される。
【0021】
〔吸着/溶離部について〕
吸着/溶離部50は、吸着部5,処理液導入部(アルカリ導入部51,酸導入部52および処理液給送ポンプ53から構成される)から構成される。セシウム化合物が溶解した液体成分が、吸着部5に供給される。吸着部5の内部の接液部には、吸着剤(図示せず)が充填され、導入された液体成分中のセシウムが該吸着剤によって選択的に吸着される。吸着部5は、図示するように、複数の吸着層から構成されることが好ましい。第1構成例では、4つの吸着層5a〜5dを直列的に配設された吸着部5を例示するが、これに限定されるものでなく、任意の数量の吸着層5nの配設や並列に配設された構成等を適用することが可能である。また、全ての吸着層5a〜5dに対して吸着処理と溶離処理を切換えて行うバッチ処理、あるいは例えば、処理上流側の吸着層5a,5bで吸着処理を行い、他の吸着層5c,5dで溶離処理を同時に行い所定時間後に切換えを行なう連続的処理等、要求仕様にあった構成を適用することが可能である。
【0022】
吸着剤は、セシウムに対する選択的吸着特性を有するとともに、吸着物に対する選択的脱離特性を有し、かつ再生可能であることが好ましい。本システムは、こうした条件を満たす吸着剤として包接化合物を用いた。具体的には、例えば商品名SuperLig(登録商標:米国IBC社製)や「Calix[4]arene-bis(4-tert-octylbenzo-crown-6)」あるいは「1-(2,2,3,3-tetrafloropropoxy)-3-(4-sec-butylphenoxy)-2-proppanol」等のクラウンエーテル化合物や例えばNaTi(Si)のような結晶状シリコチタネート系化合物を挙げることができる。これらは、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態でセシウムに対する選択的吸着特性を有し、酸処理された状態で該吸着物に対する選択的脱離特性を有し、該アルカリ処理および酸処理によって再生可能な特性を有する。実証過程において、焼却飛灰からのセシウムに対し、約500回以上の繰り返しの吸着処理が可能であることが確認されている。吸着剤の種類や充填量あるいは充填方法は、処理対象となる廃棄物の条件あるいは吸着剤の形状によって、選定・設定される。
【0023】
このとき、吸着剤は、吸着処理に使用される前に、予めアルカリ処理されることが好ましい。吸着処理において、中性またはアルカリ条件下での高い選択的吸着特性を確保することができる。アルカリ処理に用いるアルカリは、アルカリ導入部51を介して処理液給送ポンプ53によって吸着部5に導入される。該アルカリ処理液は、循環的に複数回使用することが好ましく、最終的に本システムから供出される液の中和処理に用いて処分することができる。また、再生した吸着剤を使用する場合にも、アルカリ処理され、中性またはアルカリ性の状態にすることによって、溶離処理に使用し残留した酸成分を除去することができ、吸着能力の低下を防ぎ、吸着処理時の溶離を防止することができる。使用されるアルカリは、水に対する溶解性が高く、上記吸着剤に対する親和性のある物質が好ましく、特に、吸着剤となる包接化合物によって包接された元素とセシウムとの置換が容易な、リチウム,カリウムあるいはナトリウムというアルカリ金属系の水酸化物や炭酸物あるいは炭酸水素物等の水溶液が好適である。具体的には、例えば0.01〜1.0M−NaOH(KOH等),0.01〜1.0M−NaHCO(KHCO等)などを挙げることができる。また、アルカリ処理され、「中性またはアルカリ性の状態」は、pH6〜13が好ましく、pH8〜12がより好ましい。pH6未満の状態では、吸着能力が大きく低下し、pH8〜12において吸着能力の最適条件を得ることができる。一方、pH13を超えると、吸着剤の劣化が進む可能性がある。
【0024】
吸着処理は、予めアルカリ処理された吸着部5(吸着層5a〜5d)に、液体成分が導入されて行われる。上流側の吸着層5aの吸着剤の表面に高濃度のセシウムが吸着し、順次吸着層5b,5c・・に従い濃度が低下し、吸着層5dでは約99.9%以上のセシウムが除去されることが実証された。セシウムが除去された液体成分は、処理済液として処理済液供出部54に貯留され、そのまま、あるいは後述するように、再度除害処理されて(精製処理液として)供出される。
【0025】
吸着剤に吸着されたセシウムは、吸着層5a〜5dに酸処理液が導入されることによって、酸処理液中に溶離する。酸処理液を用いて溶離処理することによって、酸性条件下での高い選択的溶離特性を確保することができる。具体的には、酸処理液が、酸導入部52を介して処理液給送ポンプ53によって吸着部5(吸着層5a〜5dのうちのいずれかまたは複数)に導入される。該酸処理液は、後述するように循環的に複数回使用することが好ましい。溶離したセシウムを含む溶離液は、溶離液供出部55を介して溶離液給送ポンプ56によって貯留槽6に導入される。使用される酸は、水に対する溶解性が高く、かつセシウムとの反応性が高く、上記吸着剤に対する親和性のある物質が好ましく、特に、吸着剤となる包接化合物によって包接されたセシウムの溶離機能の高い強酸好適である。具体的には、例えば0.1〜2.0M−HCl,0.01〜1.0M−HNO,0.01〜1.0M−HSOなどを挙げることができる。
【0026】
〔貯留/濃縮部について〕
貯留/濃縮部60は、溶離液の貯留機能およびセシウムの濃縮機能(水分除去,乾燥機能)を有する。第1構成例においては、貯留槽6が、外周に加熱部62が配設され、内部に貯留部61を有する構成を例示する。所定量の溶離液を貯留し、所定時間の加熱・水分の蒸発処理を行うことによってセシウムを濃縮して回収することができる。ただし、セシウムの蒸散防止が可能で、これらの機能を有すれば、こうした構成に限定されるものではない。例えば水透過膜を貯留槽6に設け(図示せず)、溶離液中の水分を膜分離処理することによって、セシウムの濃縮処理を行うことができる。
【0027】
<本システムを用いたセシウムの除去方法>
次に、本システムを用いたセシウムの除去方法(以下「本方法」という)を詳述する。本方法は、その役割から、
(1)前処理工程を含め、
(2)粉状または細砕された廃棄物が、洗浄水と混合・撹拌され、洗浄される洗浄工程と、
(3)洗浄された廃棄物が固液分離され、分離された固体成分および液体成分が回収されるろ過工程と、
(4)包接化合物からなる吸着剤がセシウムに対する選択的吸着特性を有するように、予めアルカリ処理液によって該吸着剤をアルカリ処理し、中性またはアルカリ性の状態にするアルカリ処理工程と、
(5)分離された液体成分がアルカリ処理された吸着剤に導入され、該液体成分中のセシウムが選択的に吸着され、吸着処理された液体成分が処理済液として回収される吸着処理工程と、
(6)吸着されたセシウムに対して選択的に脱離するように、酸処理液によって吸着剤が酸処理され、該吸着剤から溶離処理されたセシウムを含む溶離液が供出される溶離処理工程と、
(7)該溶離液が貯留される貯留工程と、
(8)貯留された溶離液中の水分が蒸散または分離される濃縮工程と、
を有する。以下、構成例1に基づき、各工程について詳述する。
【0028】
(1)前処理工程
上記のように、廃棄物1が、焼却飛灰や溶融飛灰のように水洗可能な状態の場合には、そのまま、抽出部20に供出される。廃棄物が、キレート処理された飛灰やセメント固化された焼却灰等の場合には、前処理手段11として粉砕機を用いて細砕し、所定の粒径以下(例えば、平均粒径200μm以下)の粉状物として抽出部20に供出されることが好ましい。こうした廃棄物は、粒径が数cm〜数10cm以上の固形物となっているため、水洗による抽出効率が悪く、細砕による表面積の増大および細孔部までの水の浸透による抽出機能の増大によって、高い抽出効率を確保することができる。また、そのままでは水洗による抽出が難しい汚泥焼却灰や土壌等については、前処理手段11において酸処理(例えば塩酸や硝酸等による)を行うことが好ましい。さらに、主灰のように粒径のバラツキが大きく、また水洗による抽出が難しい汚泥状を形成している場合には、前処理手段11において粉砕処理とともに酸処理を行うことが好ましい。また、廃棄物1中に浸出水が多く含まれて酸性度が高い場合や上記のように酸処理を行った場合には、前処理手段11において中和処理(例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等による)を行うことが好ましい。
【0029】
(2)洗浄工程
水洗可能な状態となった廃棄物は、抽出部20において、洗浄槽2に供給され、洗浄水3と混合・撹拌され、洗浄処理される。セシウム化合物の溶解に必要となる廃棄物1の洗浄処理は、廃棄物1の数倍〜数10倍量の洗浄水3によることが好ましい。セシウム化合物の溶解に必要な所定時間、十分撹拌されることによって、廃棄物1に含まれるセシウム化合物の大半が洗浄水中に溶解する。十分に撹拌・洗浄された廃棄物1と洗浄水3との混合物は、固液混合状態でろ過器4に導入される。
【0030】
(3)ろ過工程
洗浄された廃棄物を含む混合物は、ろ過器4において、固液分離される。本方法においては、例えば粒径1.0μm以下の固体成分を含む液体成分に分離することが好ましい。また、多段式のろ過機能を有するろ過器4を用いた場合には、上流において粒径の大きな固体成分をろ過し、下流に従い順次粒径の小さな固体成分をろ過することによって、長期間効率よく固液分離を行うことができる。分離された固体成分は、固体回収部41に集積・回収され、安全性が確認された後、埋立て等処分される。分離された液体成分は、液体供出部42に貯留された後、給送ポンプ43によって吸着/溶離部50に給送される。このとき、給送される液体成分は、中和処理を行うことが好ましい。吸着処理の最適条件の1つである中性またはアルカリ性の状態を維持し安定的な吸着処理を確保することができる。
【0031】
(4)アルカリ処理工程
吸着処理に使用される吸着剤がセシウムに対する選択的吸着特性を有するように、予めアルカリ処理液によって該吸着剤をアルカリ処理し、中性またはアルカリ性の状態にする。具体的には、(5)吸着処理工程の前段あるいは(6)溶離処理工程の後に、水酸化ナトリウム等のアルカリ処理液がアルカリ導入部51を介して処理液給送ポンプ53によって吸着部5に導入される。吸着剤の表面が、アルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態となることによって、セシウムを含む溶液と吸着剤との接液によるセシウムの吸着・包接が促進される。アルカリ処理に用いた処理液は、なおアルカリ性を有することから、本システムにおいて、上記(1)前処理工程あるいは(7)貯留工程における中和処理剤として利用することができ、新たに本システムに供給すべき処理液の低減を図ることができる。
【0032】
(5)吸着処理工程
上記(3)ろ過工程によって分離された液体成分が、アルカリ処理された吸着剤に導入され、該液体成分中のセシウムが選択的に吸着される。具体的には、液体供出部42に貯留された液体成分が、給送ポンプ43によって吸着部5に導入され、吸着剤によって液中のセシウムが、吸着処理される。本方法においては、吸着層5dでは約99.9%以上のセシウムが除去されることが実証された。セシウムが除去された液体成分は、処理済液として処理済液供出部54に貯留され、処理済液として回収される。吸着処理は、液体成分を吸着部5に連続的に流通させて行う連続処理のみならず、供給−停止を繰り返すバッチ処理あるいは同一液体成分を繰り返し循環的に吸着部5に供給する循環処理を適用することができる。
【0033】
(6)溶離処理工程
吸着部5において吸着処理されたセシウムは、酸処理液によって吸着剤から溶離し、溶離液として取り出される。具体的には、吸着処理後、吸着部5への新たな液体成分やアルカリ処理液の導入が停止され、塩酸等の酸処理液が、酸導入部52を介して処理液給送ポンプ53によって吸着部5に導入される。酸処理液によって吸着剤が酸処理され、該吸着剤からセシウムが溶離される。溶離処理されたセシウムは、溶離液供出部55を介して溶離液給送ポンプ56によって、溶離液として回収される。
【0034】
(7)貯留工程
上記(6)溶離処理工程によって回収された溶離液は、貯留槽6において一時的に貯留される。このとき、必要に応じて中和処理を行うことが好ましい。また、複数の吸着層(例えば5a〜5d)を有する吸着部5においては、上流側の吸着層5aほど溶離されるセシウム濃度が高く、下流側の吸着層5b,5c,5dほど低濃度となることから、各吸着層5a〜5dからの溶離液を別々に回収し、貯留槽6において均一化することによって、後述する(8)濃縮工程における均一的な濃縮処理を確保することができる。
【0035】
(8)濃縮工程
貯留槽6において貯留された溶離液中の水分を蒸散または分離させ、セシウムが濃縮された溶離液が作製される。セシウムの濃縮処理は、溶離液を加熱し、水分を蒸発させることによって行うことができる。また、水透過膜を用いた水分の膜分離処理を行うことによって、セシウムの濃縮処理を行うことができる。
【0036】
こうした各処理工程によって、セシウムが除去された固体成分,液体成分(処理済液)およびセシウムが濃縮された溶離液を効率よく回収することができるとともに、本処理によってさらに2次処理が必要となる被処理物の発生を極力低減することができる。
【0037】
<本システムの他の構成例>
図2は、本システムの他の構成例(第2構成例)を示す。基本的な構成は、第1構成例と同じであるが、付加機能として、回収された処理済液またはその一部を、セシウムに対する選択性のないまたは小さい第2吸着剤が充填された第2吸着部7に導入し、精製処理を行うことを特徴とする。また、少なくとも、液体供出部42から吸着部5への液体成分の導入流路L1、吸着部5からの処理済液流路L2、吸着部5からの溶離液流路L3、のいずれかまたはいくつかに空間線量計または放射能測定器S1(〜S3)を配設し、各流路L1〜L3の空間線量または放射能に応じて、廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整することを特徴とする。このとき、第2構成例として、第2吸着部7と空間線量計または放射能測定器S1(〜S3)が配設された構成を例示したが、いずれか一方のみを設けた構成を含むことはいうまでもない。
【0038】
第2吸着部7には、第2吸着剤としてセシウムに対する吸着選択性のないまたは小さいゼオライト、活性アルミナ等を充填することが好ましい。廃棄物中に含まれる鉛や亜鉛等の金属元素や処理済液中に含まれる微量のこうした金属元素の化合物や水溶性のカリウムやナトリウム等の化合物等を、2次吸着処理によって除去することによって、処理済液の精製処理を行い(精製処理工程)、廃棄可能な清浄水を作製することができる。
【0039】
また、少なくとも吸着部に導入される液体成分(流路L1),吸着処理された処理済液(流路L2),溶離処理された溶離液(流路L3)のいずれかまたはいくつかの空間線量や放射能を測定することによって、回収される各セシウム、特に放射性セシウムの有害性のみならず、処理済の物質に対する空間線量や放射能の十分な管理・監視を行い(放射能測定工程)、本システムから供出される各物質の安全性を確保することを可能とした。と同時に、その変化に応じて、廃棄物,洗浄水および処理液の供給および供給量を制御・調整する(制御工程)ことによって、未然に放射性物質の流出を防止することができる。放射能測定工程に用いられる測定器としては、放射線量(μSv/hr)を測定する空間線量計や放射能(Bq/kg)を測定する放射能測定器等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、ヨウ化ナトリウムシンチレーション検出器(NaIシンチレーター)を用い、測定対象液が流通する配管をその周囲に巻回する構成によって、短時間かつ連続的に測定を行うことができる。
【0040】
図3は、本システムの他の構成例(第3構成例)を示す。ろ過器4において固液分離された液体成分の一部が分岐され、帰還ポンプ32を介して洗浄水として洗浄槽2に導入される第1帰還流路(流路R1)、または/および吸着部5から回収された処理済液の一部が分岐され、帰還ポンプ32を介して洗浄水として洗浄槽2に導入される第2帰還流路(流路R2)、または/および吸着部5から供出された溶離液の一部が、溶離液供出部55を介して溶離液給送ポンプ56によって再度吸着部5に導入される第3帰還流路(流路R3)、を有することを特徴とする。本システムにおいては、各処理のために導入された洗浄水や処理液が、各処理によって非常に清浄な溶液あるいは各処理における妨害成分が除去された溶液として供出される。こうした処理済の溶液を、各処理のための洗浄水や処理液として再利用することによって、新たに供給すべき洗浄水や処理液の低減を図ることができる。従って、本システムは、エネルギーや物質収支に関してシステム全体の高効率化を図ることができる。特に、放射性物質の取り扱いおいては、極力処理系を閉ループとすることによって、より安全な処理機能を確保し、システムの安全操業を維持することができる。このとき、第3構成例として、第1構成例を基にした構成を例示したが、こうした構成は、第2構成例にも適用することができる。
【0041】
具体的には、ろ過器4において固液分離された液体成分は、廃棄物1と洗浄水3を含む混合物から固体成分が取り除かれ、セシウム化合物等が溶解しているものの、廃棄物1中の固体成分および廃棄物1の水洗処理によって発生した固体成分(凝集物等)が除去された清浄水に近い溶液である。従って、セシウム化合物等を溶解する機能が十分残っている範囲においては、洗浄機能を有する溶液(洗浄水)として使用することができる。また、新たな廃棄物1の組成がほぼ一定であれば、その水洗処理に必要な洗浄水3が新たに追加されていれば、ろ過器4において固液分離された液体成分は、常にほぼ同じ組成の溶液となる。従って、こうした条件を確保すれば、第1帰還流路(流路R1)を介して洗浄槽2に導入される液体成分は、セシウム化合物等を溶解する機能も十分残っており、洗浄機能を有する溶液(洗浄水)として使用することができる。
【0042】
このとき、新たな洗浄水3を、ろ過器4の上流側に設けられた洗浄水供給部31から供給するのではなく、図4に例示するように、ろ過器4の下流側(液体成分供出側)に設けられた洗浄水供給部33から供給し、ろ過器4から供出される液体成分の全量あるいはその一部を、流路R1を介して帰還ポンプ32によって洗浄水として洗浄槽2に導入される構成が好ましい。ろ過器4の下流段における固体成分の存在を低減し、高い固液分離機能を有することが可能となる。
【0043】
また、吸着部5から回収された処理済液は、上記のように清浄水に近い溶液である液体成分が、さらに吸着処理されて清浄化された溶液である。従って、廃棄物1に対して、さらに高い水洗機能を有することから、洗浄水として使用することができる。また、処理済液は、液体成分がほぼ中性であることおよび予めアルカリ処理された中性またはアルカリ性の状態の吸着剤によって吸着処理された溶液であることから、ほぼ中性あるいは弱アルカリ性を有する。従って、処理済液は、そのまま第2帰還流路(流路R2)を介して洗浄水として洗浄槽2に導入することができ、新たに本システムに供給すべき洗浄水の低減を図ることができる。
【0044】
さらに、吸着部5から供出された溶離液は、酸処理液をベースとしセシウム化合物を含有する酸性の溶液である。従って、吸着剤に包接したセシウム化合物等を溶離する機能が十分残っている範囲においては、酸処理機能を有する溶液(酸処理液)として使用することができる。溶離液は、そのまま第3帰還流路(流路R3)を介して酸処理液として再度吸着部5に導入することができ、新たに本システムに供給すべき処理液の低減を図ることができる。
【0045】
<本システムの検証>
本システムにおけるセシウムの除去機能を、下記の条件において、各処理後のセシウムの含有量および回収された物質の放射能について検証した。
【0046】
〔検証条件〕
(i)セシウム134とセシウム137の合計1987Bq/kg,平均粒径50μmの焼却飛灰を用い、その5倍量(重量比)の洗浄水(市水)によって洗浄処理を行った。
(ii)フィルタ式のろ過器を用い、ろ過処理を行い、液体成分と固体成分に分離した。
(iii)吸着剤として商品名SuperLig(登録商標:米国IBC社製)を用い、所定容量の容器に充填した状態で、0.1M−NaOHによってアルカリ処理を行った後、上記(ii)の液体成分を吸着処理した。
(iv)上記(iii)処理後の吸着剤に対し、1.0M−HClによって酸処理を行い、溶離液を得た。
(v)吸着剤について、アルカリによる再生処理を含む上記(i)〜(iv)を繰り返し、吸着剤の吸着能力の低下を検証した。
【0047】
〔検証結果〕
表1のような検証結果を得た。本システムにおいて、セシウムを効率よく回収できることが実証された。また、同一吸着剤について、再生処理により500回まで、略同効率の吸着処理を行うことができることが実証された。
【表1】
【符号の説明】
【0048】
1 廃棄物
10 前処理部
11 前処理手段
2 洗浄槽
20 抽出部
21 撹拌手段
3 洗浄水
31 洗浄水供給部
4 ろ過器
41 固体回収部
42 液体供出部
43 給送ポンプ
5 吸着部
5a〜5d 吸着層
50 吸着/溶離部
51 アルカリ導入部
52 酸導入部
53 処理液給送ポンプ
54 処理済液供出部
55 溶離液供出部
56 溶離液給送ポンプ
6 貯留槽
60 貯留/濃縮部
図1
図2
図3
図4