【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<試験例1>
[六価クロム溶出低減効果測定]
以下の各実施例、比較例、及び参考例の地盤改良方法について、各方法の実施時における六価クロムの溶出量を測定した。
【0038】
以下に記載の材料を表1に記載の組成で混合し、各実施例、比較例にそれぞれ用いるセメント系固化材とした。又、それらのセメント系固化材による地盤改良の対象となる土壌については、全て下記の火山灰質粘性土とした。
各六価クロム溶出低減材のリグニンとカルボン酸塩のそれぞれの含有量については、相対値を表1に示した。即ち、下記の六価クロム溶出低減材において、溶出低減材1P及び1Cは、リグニンの含有量がカルボン酸の含有量よりも相対的に多いものとした。又、溶出低減材2P及び2Cについては、リグニンの含有量がカルボン酸の含有量よりも相対的に少ないものとした。
【0039】
六価クロム溶出対策型固化材(表1中「対策型固化材」と記載)
:太平洋セメント株式会社製:商品面「GS225型」。
普通ポルトランドセメント(表1中「OPCセメント」と記載)
:太平洋セメント株式会社製:商品面「普通ポルトランドセメント」。
六価クロム溶出低減材1P(表1中に「溶出低減材1P」と記載)
:亜炭を比表面積200〜600cm
2/gとなるように粉砕した粉体。平均粒径100μm。
六価クロム溶出低減材1C(表1中に「溶出低減材1C」と記載)
:溶出低減材1Pと同一組成の亜炭を、平均粒径3〜5mmの不定形のチップ状としたもの。
六価クロム溶出低減材2P(表1中に「溶出低減材2P」と記載)
:褐炭を比表面積200〜600cm
2/gとなるように粉砕した粉体。平均粒径100μm。
六価クロム溶出低減材2C(表1中に「溶出低減材2C」と記載)
:溶出低減材2Pと同一組成の褐炭を、平均粒径3〜5mmの不定形のチップ状に成形したもの。
火山灰質粘性土
:東京都で採取した密度2.66g/cm
3、含水比107.1%(最適含水比65.1%)の火山灰質粘性土を実施例と比較例の地盤改良方法の対象土とした。
【0040】
実施例、比較例、参考例の各セメント系固化材を、六価クロム溶出対策型固化材を所定量ずつ対象土に添加し、ミキサーで撹拌した。セメント系固化材の添加量は、全ての実施例、比較例及び参考例において、対象土1m
3に対して100kg/m
3とした。添加後、JGS 0821−2000「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に則って、実施例、比較例、参考例の各試験体を作製し、各試験体について、環境庁告示第46号に則り、六価クロムの溶出試験を行った。結果を表1に示す。尚、六価クロム溶出量が、0.05%未満の例を「優」(A)、0.05%以上の例を「不可」(D)として評価した。
【0041】
<試験例2>
[改良土の強度測定]
試験例1において、六価クロム溶出量が「優」(A)と評価された実施例1〜5と、一般的な普通ポルトランドセメントを用いた参考例1〜6について、試験例1と同一の各試験体を作成し、各試験体について、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」にしたがい、材齢7日において一軸圧縮強さを測定した。結果を表1に併せて示す。尚、一軸圧縮強度が、180kN/m
2以上の例を、「優」(A)、140以上180N/m
2未満の例を「良」(B)、100以上140N/m
2未満の例を「可」(C)、100N/m
2未満の例を「不可」(D)と評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
<試験例3>
[pH条件試験]
溶出低減材について、六価クロムとの吸着等温線把握のための試験を行った。吸着量については、以下の試験方法により、測定した。
1) 0.5mg/Lの六価クロム標準溶液を作成し、pH8とpH12に調整した。
2) 溶出低減材は、上記試験例1の溶出低減材1Pと2Pとした。
3) 上記六価クロム標準溶液500mLに対し、溶出低減材の含有量が、それぞれ表2に示す量となるように添加し、六価クロムの簡易吸着判定を行った。
4) pH調整した各六価クロム溶液を1Lポリ溶液に500mL採取し、各溶出低減液を上記量添加し24時間往復振とうした。その後、メンブレンフィルターで吸引ろ過したものを検液とした。
5) 上記検疫の六価クロムをIPC質量分析法(JIS K 0102 65.2.5)により測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表1より、本発明の地盤改良方法によれば、六価クロム溶出低減材を亜炭とすることにより、六価クロム溶出量の低減を図った六価クロム溶出対策型セメントの溶出量低減作用をより安定的且つ高度に発現させるとともに、土壌の強度についても好ましい強度を維持することができることが分かる。
【0046】
又、表1より、本発明の地盤改良方法に用いる六価クロム溶出低減材を、平均粒径1m以上5mm以下のチップ形状とすることにより、六価クロム溶出低減材の添加に起因する改良土壌の強度の低減を防止することができることが分かる。
【0047】
表2より、セメント系固化材のpHを7以上11以下の範囲に調整することにより、六価クロム溶出低減材による溶出量低減の効果をより高めることができることが分かる。
【0048】
又、上記各試験例の結果より、本発明の地盤改良方法は、関東ローム層に代表される、火山灰質粘性土からなるローム層の地盤改良方法として、特に有効であることが分かる。
【0049】
以上より、本発明の地盤改良方法は、六価クロム溶出量の低減と土壌の強化を、高い水準で、且つ、安定的に両立することができる方法であることが確認された。