特許第6204099号(P6204099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204099
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20170914BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20170914BHJP
   C04B 14/36 20060101ALI20170914BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 17/34 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 17/44 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20170914BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
   C04B28/02
   C04B14/36
   C04B22/14 B
   C09K17/10 P
   C09K17/06 P
   C09K17/34 P
   C09K17/44 P
   C09K3/00 S
   C09K103:00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-152506(P2013-152506)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-21357(P2015-21357A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】間宮 尚
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 寛昌
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 剛一
(72)【発明者】
【氏名】池松 建治
(72)【発明者】
【氏名】西村 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高塚 義則
(72)【発明者】
【氏名】北本 幸義
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 勝利
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−319758(JP,A)
【文献】 特開2006−193971(JP,A)
【文献】 特開2006−176669(JP,A)
【文献】 特開2001−139948(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00746865(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C04B 14/36
C04B 22/14
C04B 28/02
C09K 3/00
C09K 17/06
C09K 17/10
C09K 17/34
C09K 17/44
C09K 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌にセメント系固化材を混合して固化させる地盤改良方法であって、
前記セメント系固化材は、硫酸カルシウムの無水物又は水和物を含有する六価クロム溶出対策型固化材に、六価クロム溶出低減材を添加してなり、
前記六価クロム溶出低減材は、リグニンの含有量が2%以上10%以下であり、カルボン酸塩の含有量が1%未満である亜炭であり、
該六価クロム溶出低減材は、前記セメント系固化材100質量部に対して、リグニンの含有量比が25〜100質量部である、地盤改良方法。
【請求項2】
前記六価クロム溶出低減材が、平均粒径0.5mm以上10mm以下のチップ形状である請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
前記セメント系固化材のpHを7以上11以下とするために、前記セメント系固化材に酸性化剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良方法。
【請求項4】
前記土壌が、火山灰質粘性土からなるローム層である請求項1から3のいずれかに記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系固化材が添加混合された改良土からの六価クロムの溶出量を低減する地盤改良方法に関する。尚、本発明において、セメント系固化材とは、セメント或いはセメントに石膏、その他の混和材料を添加して得られるものであって、一般的に土質安定材と称されるもののことを言うものとする。
【背景技術】
【0002】
セメント系固化材を土と添加混合により地盤の改質を行う地盤改良は、建設の基盤技術である。しかし、セメント類に微量に含まれる六価クロムが、土との相性によって環境基準を超えて溶出する場合がある。このため、上述の地盤改良においては、適切な固化材、配合比を選定して六価クロム溶出量を低減することが求められている。
【0003】
セメント系固化材からの六価クロムの溶出低減を図る手段としては、例えば、固化材として、一般的な普通ポルトランドセメントの一部又は全部を、エトリンガイトによる六価クロムの吸着機能を強化すること等により六価クロム溶出に対する対策用に特化した固化材(以下、このような固化材のことを「対策型固化材」とも言う)で代替する方法が広く普及している。
【0004】
又、その他の対処手段として、各種の固化材に、所定量以上の高炉スラグを添加することによる六価クロムの溶出低減方法(特許文献1参照)や、或いは、固化材中に石炭や亜炭等の粉末を吸着材として添加することによる方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、セメント系固化材等の吸着機能を向上させる上記のいずれの手段においても、六価クロム溶出量の低減は、一方でセメント系固化材等に本来求められる土壌の強度を増加する効果を低減させる傾向がある。つまり、六価クロム溶出量の低減と、本来の目的である上記の強度増加の効果の発現を高い水準で両立させることは、上記の各文献に記載の方法によっても、尚、困難であった。
【0006】
そこで、六価クロム溶出量の低減と土壌の強化を高い水準で両立させることを目的とした地盤改良方法として、セメント系固化材を複数回に分けて土壌に添加し、そのうちの少なくとも1回の添加時に、六価クロムの溶出低減材を含む固化材を土壌に添加するという改良方法も提案されている。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−348571号公報
【特許文献2】特開2001−139948号公報
【特許文献3】特開2006−193971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、有機物(石炭、亜炭を含む)の存在がセメントの固化を阻害することは周知の事実である。特許文献3に記載の発明においては、あたかも、固化材に石炭や亜炭等の有機物を所定量、所定の回数において添加することにより、容易に所望の程度の六価クロムの溶出低減が図れるとの記載があるが、実際には、固化材に添加する有機物について、本願発明者による独自の知見に基づいた限定的な選択を行わない限り、土壌強度増加と六価クロムの溶出低減効果を安定的に発現させることはできない。
【0009】
本発明は、六価クロム溶出量の低減と土壌強度増加を、より高い水準で、且つ、安定的に両立することのできる地盤改良方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、セメント系固化材等からの六価クロム溶出の低減を目的とした添加物について、その化学的組成に着目した上で、より厳密に添加物の種類を特定の範囲のものに限定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) 土壌にセメント系固化材を混合して固化させる地盤改良方法であって、前記セメント系固化材は、硫酸カルシウムの無水物又は水和物を含有する六価クロム溶出対策型固化材に、六価クロム溶出低減材を添加してなり、前記六価クロム溶出低減材は、亜炭であることを特徴とする地盤改良方法。
【0012】
(1)の発明によれば、六価クロム溶出対策型固化材の溶出量低減作用をより安定的且つ高度に発現させるとともに、改良対象土の強度についても好ましい強度を維持することができる。
【0013】
(2) 前記六価クロム溶出低減材が、平均粒径0.5mm以上10mm以下のチップ形状である(1)に記載の地盤改良方法。
【0014】
(2)の発明によれば、六価クロム溶出低減材の添加量の増加に伴う上記改良対象土の強度低下を防ぐことができる。
【0015】
(3) 前記セメント系固化材のpHを7以上11以下とするために、前記セメント系固化材に酸性化剤を添加することを特徴とする(1)又は(2)に記載の地盤改良方法。
【0016】
(3)の発明によれば、(1)及び(2)の発明の効果の発現を更に促進することができる。
【0017】
(4) 前記土壌が、火山灰質粘性土からなるローム層である(1)から(3)のいずれかに記載の地盤改良方法。
【0018】
(4)の発明によれば、六価クロムの溶出量がより大きくなり易い関東ローム層に代表される火山灰質粘性土からなるローム層においても、六価クロム溶出量の抑制と改良土の強度維持を高い水準で両立することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、六価クロム溶出量の低減と土壌の強化を、高い水準で、且つ、安定的に両立することができる地盤改良方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施態様について説明する。尚、本発明は以下の実施態様に限定されない。
【0021】
本発明の地盤改良方法に用いられるセメント系固化材は、いわゆる六価クロム溶出対策型固化材に、本願特有の組成からなる有機系の六価クロム溶出低減材を添加してなるものである。
【0022】
一般に、六価クロム溶出対策型固化材とは、セメントに硫酸カルシウムの無水物又は水和物又は焼成物(以下、これらを総称して「石膏」とも言う)等を一定以上の割合で添加することによって、地盤改良の目的物たる土壌における六価クロム溶出量の低減を図ったもののことを言う。本発明においては、この六価クロム溶出対策型固化材を好ましく用いることができる。
【0023】
尚、六価クロム溶出対策型固化材は、固化材中の石膏含有量が、例えば、石膏が、焼成石膏である場合には、3.0%程度以上50.0%以下であればよく、5.0%以上35.0%以下程度であることがより好ましい。石膏の作用としては、エトリンガイトの生成を促進することによって六価クロム溶出の低減に寄与しうるばかりでなく、多量に生成したエトリンガイト等の作用によって、更に地盤改良の対象土壌の含水比を低下させ、当該土壌における強度発現性を良好にするものと推定される。又、石膏が、焼成石膏である場合には、石膏含有量が、3.0%未満であると、土壌強度の増加効果が十分に発現しない。一方、石膏含有量が、50.0%を超えると、酸化カルシウム等が不足してエトリンガイトが生成されにくくなることが問題となる場合があるため好ましくない。
【0024】
六価クロム溶出対策型固化材に添加される石膏は、石膏としての形態を有していれば特に限定されるものではない。具体的には、2水石膏、半水石膏又は無水石膏(焼成石膏を含む)のうちの1種又は2種以上であることが好ましく、強度発現性を考慮した場合には無水石膏であることがより好ましい。又、上記石膏は、副産生成物である排脱石膏、燐酸石膏等であってもよい。石膏としての形態を有していれば特に限定されるものではない。この石膏のブレーン比表面積は、強度発現性及び水和反応による六価クロム溶出の早期抑制効果を考慮した場合には、例えば2000cm/g以上が好ましく、ブレーン比表面積を大きくすることで強度発現性及び六価クロムの溶出抑制効果の早期発現性が期待できるので好ましい。石膏の作用としては、エトリンガイトの生成に寄与するばかりでなく、多量に生成したエトリンガイト等の作用によって、対象土の含水比を低下させ、改良対象となる土壌の強度発現性を良好にするものと推定される。
【0025】
本発明の地盤改良方法に用いられる六価クロム溶出低減材としては、低品位炭である亜炭を用いることができる。又、本発明の地盤改良方法に用いられる六価クロム溶出低減材としは、亜炭のうちでも、広く市場に流通している一般的な亜炭よりは、更に石炭化度の進行が少ない段階にある若年炭であり、腐植酸として、リグニンの含有量が概ね2〜10%程度であり、且つ、カルボン酸塩の含有量比が1%未満である炭を用いることが好ましい。そして、その低品位炭は、フルボ酸を含まないものであることがより好ましい。
【0026】
一般に亜炭とは、炭素含有量が70%以下、概ね50%程度以上の低品位炭のことを言う。本明細書における「亜炭」とは、植物系の腐食酸を含む低品位炭である限り、一般に市場等で亜炭と称されて流通しているものに限られず、それよりも相対的に若年炭であって、且つ、上記のような含有量比で腐植酸を含有する低品位炭も含むものとする。
【0027】
六価クロム溶出低減材として、リグニン成分を所定量以上の割合で含有する上記の亜炭を用いた場合と、リグニン成分の含有量が少なく、カルボン酸塩の含有量が多いその他の有機系の溶出低減材を用いた場合との間においては、六価クロム溶出の低減効果について明確、且つ、実施上における優位な差異があることは、本発明者らの研究により明らかにされた新たな知見である。
【0028】
従来、六価クロム溶出の低減を目的として、セメント系固化材に添加される有機系の六価クロム溶出低減材としては、上記の亜炭の他、石炭、褐炭等が適宜用いられている。但し、これらの有機系の添加材は、いずれも、粒径や添加量を最適化することにより、同様の効果を奏するものという認識の下に、費用対効果等の面から、適宜、選択され使用されてきたに過ぎない。六価クロム溶出低減材を、特にリグニンの含有量に着目して特定の組成からなる亜炭に限定することにより、従来よりも、高水準で、土壌の強化と六価クロム溶出の低減を両立することができるという本発明の効果は、当業者間においても想到困難な未知の知見に基づく本発明独自の効果である。
【0029】
本発明に係る六価クロム溶出低減材は、上述の六価クロム溶出対策型固化材を用いるセメント系固化材100質量部に対して、リグニンの含有量比が25〜100質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。この割合が25質量部未満では六価クロムの溶出防止効果が不十分となり、100質量部を超えると固化物の強度が低下するとともに、固化材が土壌と接触する割合が低下する傾向があり好ましくない。
【0030】
六価クロム溶出低減材の形状及びサイズは、粉体或いはチップ形状であればよく特に限定されない。配合比が、概ね150kg/m程度等、十分に高い配合比である場合には、平均粒径が0.5mm以上10mm以下の不定形のチップ状であることがより好ましい。六価クロム溶出低減材が、チップ形状である場合の比表面積は、2cm/g以上120cm/g以下であることが好ましい。特許文献3等に記載の通り、従来、石炭や亜炭の粉末を六価クロム溶出低減材として添加する場合においては、改良の対象となる土壌の強度を十分に高めるためには、平均粒径は、1〜500μmであることが好ましいとされてきたが、本発明においては、強度安定性のために粒径が大きくなるために、比表面積は、むしろ、2cm/g以上であることが好ましく、これにより、低減材の破砕を簡素化することができる点においても従来方法との大きな差異がある。
【0031】
亜炭による六価クロムの溶出抑制作用の機構詳細については不明な点もあるが、従来エトリンガイト等のカルシウムアルミネート系の水和物に六価クロムを固定する能力が認められていることから、リグニンを所定量以上含む亜炭の添加により、新たな吸着成分が供給されたためであると推定される。又、亜炭は、カルボン酸塩の含有量がより大きい褐炭等と比較して、添加時に、土壌の強化を阻害しにくいものであることが推定される。
【0032】
尚、本発明のセメント系固化材には、一定範囲内であれば、高炉スラグ粉末、硫酸第一鉄、生石灰又は消石灰を併用してもよい。この場合、高炉スラグ粉末、硫酸第一鉄、生石灰又は消石灰の添加量は特に限定されるものではないが、セメント系固化材100質量部に対して、高炉スラグ粉末の場合、5〜150質量部であることが好ましく、硫酸第一鉄の場合は、0.1〜5質量部であることが好ましく、更に生石灰又は消石灰の場合には、5〜100質量部であることが好ましい。
【0033】
又、本発明のセメント系固化材には、一定範囲内であれば、その他の混和材料を含むものであってもよい。混和材料としては、アルミナ質材料が好ましく用いられる。又、その他の混和材料の割合は、セメント系固化材中の含有量比が、3〜30質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の地盤改良方法を実施するには、上記の対策型固化材に、上記の六価クロム溶出低減材を添加混合したセメント系固化材を、軟弱土壌に混合する。この場合、上記セメント系固化材の土壌への配合比は、対象土壌や固化材添加方法又は混合機械によっても異なるが、通常の場合、50〜200kg/mの範囲とされる。具体的な施工方法としては、深さ0〜1.5m程度の比較的浅い部分は、セメント系固化材を粉体で散布後、パワーショベル等の混合機械で対象土と本発明のセメント系固化材を均一に混ぜ合わせ、必要に応じて転圧、更に、深さ1.5m以上の比較的深い部分については、スラリー状の本発明に係るセメント系固化材を、圧力をかけて地盤中に噴射し、土を切削しながら混合・置換して柱状の改良体を形成する方法を一例として挙げることができる。
【0035】
本発明の地盤改良方法は、主に火山灰質粘性土からなるローム層をその改良対象土とする地盤改良の実施において、特に好ましく用いることができる。関東ローム層に代表される主に火山杯質粘性土は、火山灰質粘性土が水和に必要なCaイオンを吸着し、水和物の生成を著しく阻害する粘土鉱物(アロフェン等の非晶質粘土鉱物)を多く含有するため、セメント系固化材による土壌改良時に、特に六価クロムが溶出し易いことが分かっている。本発明の地盤改良方法によれば、そのような主に火山灰質粘性土からなるローム層に用いた場合であっても、必要な土壌強度を確保したまま、十分に六価クロムの溶出量を低減することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<試験例1>
[六価クロム溶出低減効果測定]
以下の各実施例、比較例、及び参考例の地盤改良方法について、各方法の実施時における六価クロムの溶出量を測定した。
【0038】
以下に記載の材料を表1に記載の組成で混合し、各実施例、比較例にそれぞれ用いるセメント系固化材とした。又、それらのセメント系固化材による地盤改良の対象となる土壌については、全て下記の火山灰質粘性土とした。
各六価クロム溶出低減材のリグニンとカルボン酸塩のそれぞれの含有量については、相対値を表1に示した。即ち、下記の六価クロム溶出低減材において、溶出低減材1P及び1Cは、リグニンの含有量がカルボン酸の含有量よりも相対的に多いものとした。又、溶出低減材2P及び2Cについては、リグニンの含有量がカルボン酸の含有量よりも相対的に少ないものとした。
【0039】
六価クロム溶出対策型固化材(表1中「対策型固化材」と記載)
:太平洋セメント株式会社製:商品面「GS225型」。
普通ポルトランドセメント(表1中「OPCセメント」と記載)
:太平洋セメント株式会社製:商品面「普通ポルトランドセメント」。
六価クロム溶出低減材1P(表1中に「溶出低減材1P」と記載)
:亜炭を比表面積200〜600cm/gとなるように粉砕した粉体。平均粒径100μm。
六価クロム溶出低減材1C(表1中に「溶出低減材1C」と記載)
:溶出低減材1Pと同一組成の亜炭を、平均粒径3〜5mmの不定形のチップ状としたもの。
六価クロム溶出低減材2P(表1中に「溶出低減材2P」と記載)
:褐炭を比表面積200〜600cm/gとなるように粉砕した粉体。平均粒径100μm。
六価クロム溶出低減材2C(表1中に「溶出低減材2C」と記載)
:溶出低減材2Pと同一組成の褐炭を、平均粒径3〜5mmの不定形のチップ状に成形したもの。
火山灰質粘性土
:東京都で採取した密度2.66g/cm、含水比107.1%(最適含水比65.1%)の火山灰質粘性土を実施例と比較例の地盤改良方法の対象土とした。
【0040】
実施例、比較例、参考例の各セメント系固化材を、六価クロム溶出対策型固化材を所定量ずつ対象土に添加し、ミキサーで撹拌した。セメント系固化材の添加量は、全ての実施例、比較例及び参考例において、対象土1mに対して100kg/mとした。添加後、JGS 0821−2000「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に則って、実施例、比較例、参考例の各試験体を作製し、各試験体について、環境庁告示第46号に則り、六価クロムの溶出試験を行った。結果を表1に示す。尚、六価クロム溶出量が、0.05%未満の例を「優」(A)、0.05%以上の例を「不可」(D)として評価した。
【0041】
<試験例2>
[改良土の強度測定]
試験例1において、六価クロム溶出量が「優」(A)と評価された実施例1〜5と、一般的な普通ポルトランドセメントを用いた参考例1〜6について、試験例1と同一の各試験体を作成し、各試験体について、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」にしたがい、材齢7日において一軸圧縮強さを測定した。結果を表1に併せて示す。尚、一軸圧縮強度が、180kN/m以上の例を、「優」(A)、140以上180N/m未満の例を「良」(B)、100以上140N/m未満の例を「可」(C)、100N/m未満の例を「不可」(D)と評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
<試験例3>
[pH条件試験]
溶出低減材について、六価クロムとの吸着等温線把握のための試験を行った。吸着量については、以下の試験方法により、測定した。
1) 0.5mg/Lの六価クロム標準溶液を作成し、pH8とpH12に調整した。
2) 溶出低減材は、上記試験例1の溶出低減材1Pと2Pとした。
3) 上記六価クロム標準溶液500mLに対し、溶出低減材の含有量が、それぞれ表2に示す量となるように添加し、六価クロムの簡易吸着判定を行った。
4) pH調整した各六価クロム溶液を1Lポリ溶液に500mL採取し、各溶出低減液を上記量添加し24時間往復振とうした。その後、メンブレンフィルターで吸引ろ過したものを検液とした。
5) 上記検疫の六価クロムをIPC質量分析法(JIS K 0102 65.2.5)により測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表1より、本発明の地盤改良方法によれば、六価クロム溶出低減材を亜炭とすることにより、六価クロム溶出量の低減を図った六価クロム溶出対策型セメントの溶出量低減作用をより安定的且つ高度に発現させるとともに、土壌の強度についても好ましい強度を維持することができることが分かる。
【0046】
又、表1より、本発明の地盤改良方法に用いる六価クロム溶出低減材を、平均粒径1m以上5mm以下のチップ形状とすることにより、六価クロム溶出低減材の添加に起因する改良土壌の強度の低減を防止することができることが分かる。
【0047】
表2より、セメント系固化材のpHを7以上11以下の範囲に調整することにより、六価クロム溶出低減材による溶出量低減の効果をより高めることができることが分かる。
【0048】
又、上記各試験例の結果より、本発明の地盤改良方法は、関東ローム層に代表される、火山灰質粘性土からなるローム層の地盤改良方法として、特に有効であることが分かる。
【0049】
以上より、本発明の地盤改良方法は、六価クロム溶出量の低減と土壌の強化を、高い水準で、且つ、安定的に両立することができる方法であることが確認された。