特許第6204112号(P6204112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204112インバータ回路を停止させる停止回路、当該停止回路を備えたインバータ装置、当該インバータ装置を備えた電力システム、および、停止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204112
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】インバータ回路を停止させる停止回路、当該停止回路を備えたインバータ装置、当該インバータ装置を備えた電力システム、および、停止方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170914BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/48 R
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-167635(P2013-167635)
(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-37348(P2015-37348A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−009510(JP,A)
【文献】 特開2006−320149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0115301(US,A1)
【文献】 特開平08−149840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記各インバータ装置が有するインバータ回路を停止させる停止回路であって、
他のインバータ装置と同期させたタイミング位相を生成するタイミング位相生成手段と、
前記タイミング位相を、前記他のインバータ装置のいずれかとは異なる所定値だけ遅らせる位相遅延手段と、
前記位相遅延手段によって遅延されたタイミング位相に応じたタイミングで、前記インバータ回路を停止させるための停止信号を出力する停止信号出力手段と、
を備えていることを特徴とする停止回路。
【請求項2】
少なくとも1つの他のインバータ装置と通信を行う通信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記タイミング位相生成手段が生成したタイミング位相を、前記他のインバータ装置の少なくとも1つに送信し、
前記タイミング位相生成手段は、前記生成したタイミング位相と、前記通信手段が前記他のインバータ装置の少なくとも1つより受信したタイミング位相とに基づく演算結果を用いて、タイミング位相を生成する、
請求項1に記載の停止回路。
【請求項3】
前記タイミング位相生成手段は、
前記生成したタイミング位相と、前記受信したタイミング位相とに基づく演算を行う演算手段と、
前記演算手段が出力する演算結果を所定の角周波数に加算して、修正角周波数として出力する加算手段と、
前記修正角周波数を積分して、タイミング位相を算出する積分手段と、
を備えている、請求項2に記載の停止回路。
【請求項4】
前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算することで、演算結果を演算する、
請求項3に記載の停止回路。
【請求項5】
前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記通信手段が通信を行っている他のインバータ装置の数で除算することで、演算結果を演算する、
請求項3に記載の停止回路。
【請求項6】
前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記生成したタイミング位相を乗算することで、演算結果を演算する、
請求項3に記載の停止回路。
【請求項7】
前記演算手段は、前記受信したタイミング位相を前記生成したタイミング位相からそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記生成したタイミング位相の2乗を乗算することで、演算結果を演算する、
請求項3に記載の停止回路。
【請求項8】
前記停止信号出力手段は、前記インバータ回路を制御する制御回路に停止信号を出力することで前記インバータ回路を停止させ、前記インバータ装置と電力系統とを接続している連系用遮断器に停止信号を出力することで前記インバータ装置と前記電力系統とを切り離す、請求項1ないし7のいずれかに記載の停止回路。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の停止回路と、インバータ回路とを備えていることを特徴とするインバータ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のインバータ装置が、複数並列接続されていることを特徴とする電力システム。
【請求項11】
インバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記各インバータ装置が有するインバータ回路を停止させる方法であって、
他のインバータ装置と同期させたタイミング位相を生成する第1の工程と、
前記タイミング位相を、前記他のインバータ装置のいずれかとは異なる所定値だけ遅らせる第2の工程と、
前記第2の工程で遅延されたタイミング位相に応じたタイミングで、前記インバータ回路を停止させるための停止信号を出力する第3の工程と、
を備えていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路を停止させる停止回路、当該停止回路を備えたインバータ装置、当該インバータ装置を備えた電力システム、および、停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池などによって生成される直流電力を交流電力に変換して、電力系統に供給する分散形電源が開発されている。
【0003】
図6は、従来の一般的な分散形電源を説明するための図である。
【0004】
分散形電源A100は、太陽電池を備える直流電源1が生成した直流電力を交流電力に変換して、電力系統Bに供給するものである。インバータ回路2は、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のスイッチングを行うことで、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換する。制御回路3は、インバータ回路2を制御するためのPWM信号を生成して出力する。フィルタ回路4は、スイッチングによる高周波成分を除去するものであり、リアクトル41とコンデンサ42とからなるローパスフィルタを備えている。
【0005】
また、分散形電源A100には、過電圧や周波数上昇などを検出した場合にインバータ回路2の運転を停止させるための保護機構が備えられている。保護回路6は、過電圧や周波数上昇などを検出するものであり、これらを検出した場合に、制御回路3および連系用遮断器5に停止信号を出力する。制御回路3は、停止信号を入力された場合に、PWM信号の生成を停止する。これにより、インバータ回路2の電力変換動作は停止する。また、連系用遮断器5は、停止信号を入力された場合、インバータ回路2の電力変換動作停止後に開放され、分散形電源A100と電力系統Bとの連系が遮断される。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011‐217442号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Reza Olfati-Saber, J. Alex Fax, and Richard M. Murray, "Consensus and Cooperation in Networked Multi-Agent Systems", Proceedings of the IEEE, Vol.95, No.1, (2007)
【非特許文献2】Mehran Mesbahi and Magnus Egerstedt, "Graph Theoretic Methods in Multiagent Networks", Princeton (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7は、インバータ回路2停止時の分散形電源A100の状態の変化を説明するための図である。なお、分散形電源A100を簡略化して記載している。
【0009】
同図(a)は、インバータ回路2が電力変換動作を行い、交流電力を電力系統Bに供給している状態を示している。この場合、フィルタ回路4のコンデンサ42には、インバータ回路2が出力する電力が供給される。
【0010】
同図(b)は、停止信号を入力されたインバータ回路2が電力変換動作を停止した状態を示している。この場合、インバータ回路2が電力を出力しないので、コンデンサ42には、電力系統Bから電力が供給される。
【0011】
同図(c)は、停止信号を入力された連系用遮断器5が開放されて、分散形電源A100が電力系統Bから切り離された状態を示している。
【0012】
分散形電源A100を停止させる場合、必ず同図(b)の状態が発生する。この時、電力系統Bから電力が供給されるので、分散形電源A100の停止時には、微小であるが電力系統Bに影響を与える。1台の分散形電源A100が電力系統Bに与える影響は微小であるが、電力系統Bに連系している多数の分散形電源A100が同時に停止した場合、電力系統Bに大きな影響を与えてしまう場合がある。
【0013】
本発明は上述した事情のもとで考え出されたものであって、複数のインバータ装置が並列接続されている電力システムにおいて、インバータ回路の停止が及ぼす電力系統への影響を軽減することができるインバータ回路の停止回路を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本発明の第1の側面によって提供される停止回路は、インバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記各インバータ装置が有するインバータ回路を停止させる停止回路であって、他のインバータ装置と同期させたタイミング位相を生成するタイミング位相生成手段と、前記タイミング位相を、前記他のインバータ装置のいずれかとは異なる所定値だけ遅らせる位相遅延手段と、前記位相遅延手段によって遅延されたタイミング位相に応じたタイミングで、前記インバータ回路を停止させるための停止信号を出力する停止信号出力手段とを備えていることを特徴とする。なお、「電力システム」とは、例えば、インバータ装置が複数並列接続された配電系統などを意味し、多数のインバータ装置が並列接続されて太陽光発電を行う発電所(例えば、メガソーラ)なども含まれる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記停止回路は、少なくとも1つの他のインバータ装置と通信を行う通信手段をさらに備え、前記通信手段は、前記タイミング位相生成手段が生成したタイミング位相を、前記他のインバータ装置の少なくとも1つに送信し、前記タイミング位相生成手段は、前記生成したタイミング位相と、前記通信手段が前記他のインバータ装置の少なくとも1つより受信したタイミング位相とに基づく演算結果を用いて、タイミング位相を生成する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記タイミング位相生成手段は、前記生成したタイミング位相と、前記受信したタイミング位相とに基づく演算を行う演算手段と、前記演算手段が出力する演算結果を所定の角周波数に加算して、修正角周波数として出力する加算手段と、前記修正角周波数を積分して、タイミング位相を算出する積分手段とを備えている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算することで、演算結果を演算する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記通信手段が通信を行っている他のインバータ装置の数で除算することで、演算結果を演算する。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記演算手段は、前記受信したタイミング位相から前記生成したタイミング位相をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記生成したタイミング位相を乗算することで、演算結果を演算する。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記演算手段は、前記受信したタイミング位相を前記生成したタイミング位相からそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記生成したタイミング位相の2乗を乗算することで、演算結果を演算する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記停止信号出力手段は、前記インバータ回路を制御する制御回路に停止信号を出力することで前記インバータ回路を停止させ、前記インバータ装置と電力系統とを接続している連系用遮断器に停止信号を出力することで前記インバータ装置と前記電力系統とを切り離す。
【0023】
本発明の第2の側面によって提供されるインバータ装置は、本発明の第1の側面によって提供される停止回路と、インバータ回路とを備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第3の側面によって提供される電力システムは、本発明の第2の側面によって提供されるインバータ装置が、複数並列接続されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第4の側面によって提供される方法は、インバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記各インバータ装置が有するインバータ回路を停止させる方法であって、他のインバータ装置と同期させたタイミング位相を生成する第1の工程と、前記タイミング位相を、前記他のインバータ装置のいずれかとは異なる所定値だけ遅らせる第2の工程と、前記第2の工程で遅延されたタイミング位相に応じたタイミングで、前記インバータ回路を停止させるための停止信号を出力する第3の工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、他のインバータ装置と同期させたタイミング位相を所定値だけ遅延させ、遅延後のタイミング位相に応じたタイミングでインバータ回路を停止させる。インバータ回路の停止により、電力系統からフィルタ回路のコンデンサに電力が供給されるが、他のインバータ回路とは異なるタイミングで停止するので、電力系統へ及ぼす影響を軽減することができる。
【0027】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る分散形電源を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る分散形電源が複数並列接続された電力システムを示す図である。
図3】電力システムにおける各分散形電源の停止回路のタイミング位相の変化のシミュレーション結果を示す図である。
図4】電力システムに並列接続された分散形電源の停止回路の他の通信状態を説明するための図である。
図5】第2実施形態に係る分散形電源を説明するための図である。
図6】従来の一般的な分散形電源を説明するための図である。
図7】インバータ回路停止時の分散形電源の状態の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る停止回路を分散形電源に用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係る分散形電源を説明するための図である。図2は、第1実施形態に係る分散形電源が複数並列接続された電力システムを示す図である。
【0031】
図1に示すように、分散形電源Aは、直流電源1、インバータ回路2、制御回路3、フィルタ回路4、連系用遮断器5、保護回路6、および停止回路7を備えている。分散形電源Aは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して、負荷や電力系統Bに出力する。なお、図示しないが、フィルタ回路4の出力側には、交流電圧を昇圧(または降圧)するための変圧器が設けられている。インバータ回路2、制御回路3、フィルタ回路4、連系用遮断器5、保護回路6、および停止回路7をまとめたものがインバータ装置であり、いわゆるパワーコンディショナと呼ばれるものである。
【0032】
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0033】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路2は、図示しないPWM制御インバータを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。なお、インバータ回路2は、これに限られない。例えば、PWM制御インバータは、単相インバータであってもよいし、マルチレベルインバータであってもよい。また、PWM制御に限定されず、フェーズシフト制御など他の方式を用いるものであってもよい。
【0034】
制御回路3は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路3は、分散形電源Aに設けられた各センサが検出したインバータ回路2の入力電圧、出力電圧、出力電流などに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3は、制御部31およびPWM信号生成部32を備えている。
【0035】
制御部31は、出力電流制御を行うためのものである。制御部31は、センサによって検出されたインバータ回路2の出力電流が目標値になるような補償値を生成し、生成した補償値に基づいて指令信号を生成して、PWM信号生成部32に出力する。なお、制御部31は、インバータ回路2の入力電圧や出力無効電力の制御を行う場合もあるが、これらの説明は省略する。
【0036】
PWM信号生成部32は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部32は、キャリア信号と制御部31より入力される指令信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路2に出力される。なお、PWM信号生成部32は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。また、PWM信号生成部32は、停止回路7から停止信号を入力された場合に、PWM信号の生成を停止する。PWM信号生成部32からのPWM信号の入力が停止することで、インバータ回路2の電力変換動作は停止する。
【0037】
本実施形態では、制御回路3をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0038】
フィルタ回路4は、インバータ回路2より入力される交流電圧から、スイッチングによる高周波成分を除去するものである。フィルタ回路4は、リアクトル41とコンデンサ42とからなるローパスフィルタを備えている。なお、フィルタ回路4の構成はこれに限定されず、高周波成分を除去するための周知のフィルタ回路であればよい。
【0039】
連系用遮断器5は、分散形電源Aと電力系統Bとの連系を遮断するものである。連系用遮断器5は通常時は閉路されており、分散形電源Aは電力系統Bに連系している。しかし、保護回路6によって異常が検出されて、停止回路7から停止信号が入力された場合、連系用遮断器5は開放され、分散形電源Aと電力系統Bとの連系が遮断される。これにより、分散形電源Aの異常が電力系統Bに影響を及ぼしたり、逆に、電力系統Bの異常が分散形電源Aに影響を及ぼしたりてしまうことを防ぐことができる。
【0040】
保護回路6は、異常を検出して、検出信号を停止回路7に出力するものである。保護回路6は、例えば、過電圧(OVR)や不足電圧(UVR)、周波数上昇(OFR)や低下(UFR)不足電力、温度異常などの異常状態を検出する。なお、検出する異常状態は、これらに限られない。また、集中監視装置から停止指示があった場合などにも、保護回路6は検出信号を出力する。なお、異常のうち、瞬時にインバータ回路2の停止を要するものについては、図示しない別の保護回路が異常を検出する。この保護回路は、検出信号を停止回路7に出力する代わりに、停止信号として、PWM信号生成部32および連系用遮断器5に直接出力する。
【0041】
停止回路7は、インバータ回路2を停止させるためのものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。停止回路7は、保護回路6から検出信号を入力された場合に、停止信号を出力する。停止回路7は、タイミング位相生成部71、通信部72、遅延部73、および、停止信号出力部74を備えている。
【0042】
タイミング位相生成部71は、停止信号出力のタイミングを決定するためのタイミング位相θiを生成するものである。タイミング位相生成部71は、生成したタイミング位相θiを通信部72および遅延部73に出力する。タイミング位相生成部71の詳細については、後述する。
【0043】
通信部72は、他の分散形電源Aの停止回路7との間で通信を行うものである。通信部72は、タイミング位相生成部71が生成したタイミング位相θiを入力され、他の分散形電源Aの通信部72に送信する。また、通信部72は、他の分散形電源Aの通信部72から受信したタイミング位相θjを、タイミング位相生成部71に出力する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0044】
図2に示すように、分散形電源Aは電力システムにおいて、他の分散形電源Aと並列接続されている。図2においては、5台の分散形電源A(A1〜A5)と、4つの負荷Lとが接続されている状態を示している。なお、実際の電力システムにおいては、より多くの分散形電源Aおよび負荷Lが接続されているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。
【0045】
図2に示す矢印は、通信を行っていることを示している。分散形電源A1の停止回路7は分散形電源A2の停止回路7とのみ通信を行っており、分散形電源A2の停止回路7は分散形電源A1の停止回路7および分散形電源A3の停止回路7とのみ通信を行っている。また、分散形電源A3の停止回路7は分散形電源A2の停止回路7および分散形電源A4の停止回路7とのみ通信を行っており、分散形電源A4の停止回路7は分散形電源A3の停止回路7および分散形電源A5の停止回路7とのみ通信を行っており、分散形電源A5の停止回路7は分散形電源A4の停止回路7とのみ通信を行っている。このように、分散形電源Aの停止回路7は、電力システムに接続している分散形電源Aのうち、少なくとも1つの分散形電源Aの停止回路7と通信を行っており、電力システムに接続している任意の2つの分散形電源Aの停止回路7に対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、電力システムに接続しているすべての分散形電源Aの停止回路7と通信を行う必要はない。
【0046】
例えば、分散形電源Aが分散形電源A2の場合、停止回路7の通信部72は、タイミング位相生成部71が生成したタイミング位相θ2を分散形電源A1およびA3の停止回路7の通信部72に送信し、分散形電源A1の停止回路7の通信部72からタイミング位相θ1を受信し、分散形電源A3の停止回路7の通信部72からタイミング位相θ3を受信する。
【0047】
遅延部73は、タイミング位相生成部71より入力されるタイミング位相θiを所定値だけ遅延させて、タイミング位相θi’として停止信号出力部74に出力する。本実施形態では、停止信号の出力タイミングが他の分散形電源Aと重ならないようにするために、他の分散形電源Aと同期させたタイミング位相θiを、分散形電源Aごとに少しずつずらして用いる。後述するように、タイミング位相生成部71が生成するタイミング位相θiは、他の分散形電源Aのタイミング位相θjと同期して、同じ位相に収束する。停止信号出力部74は、遅延部73がタイミング位相θiを遅延させたタイミング位相θi’を用いる。位相を遅延させる量は、分散形電源Aごとに異ならせて、あらかじめ設定されている。例えば、図2に示すように、同じ電力系統Bに5台の分散形電源Aが連系している場合、各位相を均等に分散させるために、位相を(2/5)πずつずらすように遅延させる。例えば、タイミング位相θiの角周波数が2.5[Hz](周期が0.4[s])で、分散形電源A1のタイミング位相θ1を基準とする場合、分散形電源A1のタイミング位相θ1については遅延させず、分散形電源A2のタイミング位相θ2においては0.08[s]遅延させ、分散形電源A3のタイミング位相θ3においては0.16[s]遅延させ、分散形電源A4のタイミング位相θ4においては0.24[s]遅延させ、分散形電源A5のタイミング位相θ5においては0.32[s]遅延させる。なお、位相を遅延させる量は、すべての分散形電源Aで異なるようにする必要はない。例えば、同じ電力系統Bに100台の分散形電源Aが連系している場合、1〜10番目の分散形電源Aのタイミング位相については遅延させず、11〜20番目の分散形電源Aのタイミング位相については(1/5)π遅延させ、21〜30番目の分散形電源Aのタイミング位相については(2/5)π遅延させるように、複数の分散形電源Aごとに遅延させる量を変化させるようにしてもよい。
【0048】
停止信号出力部74は、保護回路6から検出信号を入力された場合に、所定のタイミングで、PWM信号生成部32および連系用遮断器5に停止信号を出力する。停止信号が入力されたPWM信号生成部32は、PWM信号の生成を停止する。これにより、インバータ回路2の電力変換動作は停止する。また、停止信号が入力された連系用遮断器5は、分散形電源Aと電力系統Bとの連系を遮断する。これらにより、分散形電源Aまたは電力系統Bの異常が他方に影響を及ぼしてしまうことを防ぐことができる。停止信号出力部74は、遅延部73から入力されるタイミング位相θi’に基づいて、例えばタイミング位相θi’がゼロになるタイミングで停止信号を出力する。
【0049】
次に、タイミング位相生成部71の詳細について説明する。
【0050】
タイミング位相生成部71は、生成したタイミング位相θiと、通信部72より入力される、他の分散形電源Aの停止回路7のタイミング位相θjとを用いて、タイミング位相θiを生成する。タイミング位相θiとタイミング位相θjとが異なっていても、タイミング位相生成部71での演算処理が繰り返されることで、タイミング位相θiとタイミング位相θjとが共通のタイミング位相に収束する。図1に示すように、タイミング位相生成部71は、演算部711、乗算器712、加算器713および積分器714を備えている。
【0051】
演算部711は、下記(1)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部711は、通信部72から入力される各タイミング位相θjから、タイミング位相生成部71が生成したタイミング位相θiをそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果uiを乗算器712に出力する。
【数1】
【0052】
例えば、分散形電源Aが分散形電源A2の場合(図2参照)、演算部711は、下記(2)式の演算を行い、演算結果u2を出力する。
【数2】
【0053】
乗算器712は、演算部711から入力される演算結果uiに所定の係数εを乗算して加算器713に出力する。係数εは、0<ε<1/dmaxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。dmaxは、通信部72が通信を行う他の停止回路7の数であるdiのうち、電力システムに接続しているすべての分散形電源Aの停止回路7の中で最大のものである。つまり、電力システムに接続している分散形電源Aの停止回路7のなかで、一番多くの他の停止回路7と通信を行っているものの通信部72に入力されるタイミング位相θjの数である。なお、係数εは、修正角周波数ωiが大きく(小さく)なりすぎて、タイミング位相θiの変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果uiに乗算されるものである。したがって、タイミング位相生成部71での処理が連続時間処理の場合は、乗算器712を設ける必要はない。
【0054】
加算器713は、乗算器712からの入力を所定の角周波数ω0に加算して、修正角周波数ωiとして積分器714に出力する。積分器714は、加算器713から入力される修正角周波数ωiを積分することでタイミング位相θiを生成して出力する。積分器714は、前回生成したタイミング位相θiに修正角周波数ωiを加算することでタイミング位相θiを生成する。また、積分器714は、タイミング位相θiを(−π<θi≦π)の範囲の値として出力する。なお、タイミング位相θiの範囲の設定の仕方はこれに限定されず、例えば、(0≦θi<2π)としてもよい。タイミング位相θiは、遅延部73、通信部72および演算部711に出力される。
【0055】
本実施形態では、停止回路7をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを停止回路7として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0056】
本実施形態において、タイミング位相生成部71は、生成したタイミング位相θiと、通信部72より入力される、他の停止回路7のタイミング位相θjとを用いて、タイミング位相θiを生成する。タイミング位相θiが各タイミング位相θjの相加平均値より大きい場合、演算部711が出力する演算結果uiは負の値になる。そうすると、修正角周波数ωiは所定の角周波数ω0より小さくなり、タイミング位相θiの変化量は小さくなる。一方、タイミング位相θiが各タイミング位相θjの相加平均値より小さい場合、演算部711が出力する演算結果uiは正の値になる。そうすると、修正角周波数ωiは所定の角周波数ω0より大きくなり、タイミング位相θiの変化量は大きくなる。つまり、タイミング位相θiは各タイミング位相θjの相加平均値に近づいていく。この処理が各停止回路7それぞれで行われることにより、各停止回路7のタイミング位相θiは同じ値に収束する。タイミング位相θiは時間とともに変化するものであり、角周波数ω0に応じて変化する成分と、初期位相のずれを補償するように変化する成分とを合成したものと考えることができる。後者が同じ値θαに収束することで、各分散形電源Aのタイミング位相θiも同じ値に収束する。後者が同じ値に収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。また、収束値θαが、下記(3)式に示すように、各停止回路7のタイミング位相θiの初期値の相加平均値になることも証明されている。nは電力システムに接続されている分散形電源Aの数(すなわち、停止回路7の数)であり、下記(3)式は、分散形電源A1〜Anの停止回路7のタイミング位相θ1〜θnの初期値をすべて加算してnで除算した相加平均値を算出することを示している。
【数3】
【0057】
以下に、図2に示す電力システムにおいて、タイミング位相θiが収束することを確認したシミュレーションについて説明する。
【0058】
分散形電源A1〜A5の停止回路7のタイミング位相θ1〜θ5の初期値を、それぞれ、θ1=π/2,θ2=0,θ3=π,θ4=3π/2,θ5=−π/4としてシミュレーションを行った。図3は、当該シミュレーションの結果を示すものであり、それぞれタイミング位相θ1〜θ5のうちの角周波数ω0に応じて変化する成分を除いたものの時間応答を示している。同図(a)は、タイミング位相θiの同期を行わなかった場合(すなわち、図1に示す演算部711および通信部72がない構成の場合)のものであり、同図(b)は、タイミング位相θiの同期を行った場合(すなわち、図1に示す構成の場合)のものである。同図(a)においては、初期値から変化していない。一方、同図(b)においては、初期値の相加平均値である「11π/20」に収束している。
【0059】
本実施形態によると、タイミング位相生成部71が生成するタイミング位相θiが他の停止回路7のタイミング位相θjと同期され、遅延部73がタイミング位相θiを所定値だけ遅延させたタイミング位相θi’を出力する。停止信号出力部74は、タイミング位相θi’に応じたタイミングで、停止信号を出力する。保護回路6から検出信号が出力されるタイミングが同じであったとしても、停止回路7は、他の停止回路7とは異なるタイミングで停止信号を出力するので、インバータ回路2の停止タイミングも他のインバータ回路2とは異なるタイミングになる。したがって、インバータ回路2の停止が及ぼす電力系統への影響を軽減することができる。電力系統Bに連系している各分散形電源Aの停止回路7はタイミング位相θiの遅延量を少しずつ異ならせているので、保護回路6が異常を検出するタイミングが同じであったとしても、各インバータ回路2の停止のタイミングは分散される。これにより、電力系統Bに連系している各分散形電源Aのインバータ回路2が同時に停止することを抑制することができ、電力系統への影響を軽減することができる。
【0060】
また、本実施形態によると、電力系統Bに連系している各分散形電源Aの停止回路7がそれぞれ少なくとも1つの分散形電源A(例えば、近隣に位置するもの)の停止回路7と相互通信を行っており、電力システムが連結状態であることで、すべての停止回路7のタイミング位相θiが同じ値に収束する。したがって、1つの停止回路7や監視装置が他の全ての停止回路7と通信を行う構成とする必要がなく、システムが大がかりにならない。また、ある分散形電源Aが故障した場合や、ある分散形電源Aを削減した場合でも、他の全ての分散形電源Aの停止回路7がいずれかの分散形電源Aの停止回路7と通信可能であり、電力システムが連結状態であれば、タイミング位相θiを同期させることができる。また、分散形電源Aを増加する場合は、その分散形電源Aの停止回路7が少なくとも1つの分散形電源Aの停止回路7と通信を行うようにすればよいだけである。したがって、分散形電源Aの増減に柔軟に対応できる。
【0061】
本実施形態においては、停止回路7のタイミング位相θiの初期位相のずれを補償するように変化する成分を、各停止回路7のタイミング位相θiの初期値の相加平均値に収束させる場合について説明したが、これに限られない。演算部711に設定する演算式によって、収束値θαは変わってくる。
【0062】
例えば、演算部711に設定する演算式を下記(4)式とした場合、収束値θαは下記(5)式に示すような値になる。diは、通信部72が通信を行う他の停止回路7の数、すなわち、通信部72に入力されるタイミング位相θjの数である。つまり、収束値θαは、通信相手の数による重み付けを行った、各分散形電源Aのタイミング位相θiの初期値の加重平均値である。
【数4】
【0063】
また、演算部711に設定する演算式を下記(6)式とした場合、収束値θαは下記(7)式に示すように、各分散形電源Aのタイミング位相θiの初期値の相乗平均値(幾何平均値)になる。
【数5】
【0064】
また、演算部711に設定する演算式を下記(8)式とした場合、収束値θαは下記(9)式に示すように、各分散形電源Aのタイミング位相θiの初期値の調和平均値になる。
【数6】
【0065】
また、演算部711に設定する演算式を下記(10)式とした場合、収束値θαは下記(11)式に示すように、各分散形電源Aのタイミング位相θiの初期値のP次平均値になる。
【数7】
【0066】
なお、上記第1実施形態においては、各停止回路7が相互通信を行う場合について説明したが、これに限られず、片側通信を行うようにしてもよい。例えば、図4に示すように、分散形電源A1の停止回路7が分散形電源A2の停止回路7に送信のみを行い、分散形電源A2の停止回路7が分散形電源A1の停止回路7から受信のみを行って、分散形電源A3の停止回路7に送信のみを行い、分散形電源A3の停止回路7が分散形電源A2の停止回路7から受信のみを行って、分散形電源A4の停止回路7に送信のみを行い、分散形電源A4の停止回路7が分散形電源A3の停止回路7から受信のみを行って、分散形電源A5の停止回路7に送信のみを行い、分散形電源A5の停止回路7が分散形電源A4の停止回路7から受信のみを行う場合でも、タイミング位相θiの同期を行うことができる。より一般的に言うと、電力システムに接続されたある分散形電源Aの停止回路7から送信先をたどっていくと、電力システムに接続された任意の分散形電源Aの停止回路7に到達することができる状態(グラフ理論における「全域木を含む」状態)であることが、タイミング位相θiの同期を行うことができる条件である。
【0067】
上記第1実施形態においては、分散形電源Aの停止回路7が近隣の他の分散形電源Aの停止回路7とだけ通信することでタイミング位相θiを同期させる場合について説明したが、タイミング位相θiを同期させる方法はこれに限られず、他の方法でタイミング位相θiを同期させるようにしてもよい。各分散形電源を集中監視するための監視装置がタイミング位相θiを同期させる機能を有する場合を第2実施形態として、以下に説明する。
【0068】
図5は、第2実施形態に係る分散形電源を説明するための図である。同図において、第1実施形態に係る分散形電源A(図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0069】
図5に示す分散形電源A’は、監視装置Cがタイミング位相θiの同期を行う点で、第1実施形態に係る分散形電源Aと異なる。
【0070】
通信部72’は、タイミング位相生成部71’が生成したタイミング位相θiを、監視装置Cに送信する。監視装置Cは、受信した各分散形電源A’のタイミング位相θiの例えば相加平均値(算術平均値)を算出して、目標タイミング位相θ*として各分散形電源A’に送信する。通信部72’は、監視装置Cから受信した目標タイミング位相θ*をタイミング位相生成部71’に出力する。タイミング位相生成部71’は、タイミング位相θiが目標タイミング位相θ*になるように制御する。
【0071】
なお、1つの分散形電源A’(マスタ)が監視装置Cの代わりとなり、他の分散形電源A’(スレイブ)に目標タイミング位相θ*を出力するようにしてもよい。
【0072】
第2実施形態においても、タイミング位相θiを同期することができる。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、電力系統Bへの影響を軽減するという効果を奏することができる。
【0073】
上記第1または第2実施形態においては、複数の分散形電源A(A’)が電力系統Bに連系している場合について説明したが、これに限られない。例えば、多数のインバータ装置が並列接続されて太陽光発電を行う発電所(例えば、メガソーラ)などの場合でも、本発明を適用することができる。
【0074】
本発明に係る停止回路、当該停止回路を備えたインバータ装置、当該インバータ装置を備えた電力システム、および、停止方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る停止回路、当該停止回路を備えたインバータ装置、当該インバータ装置を備えた電力システム、および、停止方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0075】
A,A1〜A5,A’ 分散形電源
1 直流電源
2 インバータ回路
3 制御回路
31 制御部
32 PWM信号生成部
4 フィルタ回路
41 リアクトル
42 コンデンサ
5 連系用遮断器
6 保護装置
7,7’ 停止回路
71,71’ タイミング位相生成部
711 演算部
712 乗算器
713 加算器
714 積分器
72,72’ 通信部
73 遅延部
74 停止信号出力部
B 電力系統
C 監視装置
L 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7