(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防潤層の外縁全周の長さは、前記アノードガス拡散層又は前記カソードガス拡散層の少なくとも前記一方の外縁全周の長さに対して1.03倍以上である請求項1に記載の燃料電池用膜電極接合体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の一実施の形態に係る燃料電池1は、メタノールを燃料として発電するダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)であり、膜電極接合体(MEA:Membrane-electrode assembly)11と、膜電極接合体11を挟む板状のアノードセパレータ14およびカソードセパレータ15と、アノードセパレータ14の外側の表面に設けられたアノード集電体12及びカソードセパレータ15の外側の表面に設けられたカソード集電体13と、アノードセパレータ14の内側に設けられたガスケット18及びカソードセパレータ15の内側に設けられたガスケット19と、を備える。なお、
図1は、膜電極接合体11を挟んで組み立てる前の状態のアノードセパレータ14及びカソードセパレータ15を示し、この状態からアノードセパレータ14とカソードセパレータ15が膜電極接合体11を挟んだ状態で組み付けられる。また
図1は単電池の構成を示すが、要求起電力に応じてこの単電池を複数積層した燃料電池を構成してもよい。
【0012】
本例の膜電極接合体11は、水素イオン(陽イオン)伝導性を有する高分子電解質膜111と、アノード触媒層112と、カソード触媒層113と、アノードガス拡散層114と、カソードガス拡散層115とを含む。アノード触媒層112とアノードガス拡散層114がアノード(燃料極)を構成し、カソード触媒層113とカソードガス拡散層115がカソード(空気極)を構成する。なお以下において、アノード触媒層112及びカソード触媒層113を総称する場合は単に触媒層112,113ともいい、アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115を総称する場合は単にガス拡散層114,115ともいう。
【0013】
高分子電解質膜111は、矩形、円形、楕円形、多角形など燃料電池1の外形形状に応じた適宜の形状とされ、アノード触媒層112及びカソード触媒層113は、高分子電解質膜111の外縁より小さい外縁を有する、矩形、円形、楕円形、多角形など適宜の形状とされている。また本例のアノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115は、
図1,2に示すように、それぞれアノード触媒層112及びカソード触媒層113の各外縁形状より大きい外縁形状とされ、アノード触媒層112とアノードガス拡散層114は、アノードガス拡散層114の外縁がアノード触媒層112の外縁より外方へ延出するように積層され、同様にカソード触媒層113とカソードガス拡散層115は、カソードガス拡散層115の外縁がカソード触媒層113の外縁より外方へ延出するように積層されている。
【0014】
高分子電解質膜111としては、特に限定されるものではなく、通常の高分子電解質形燃料電池に搭載される高分子電解質膜を使用することができる。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜、例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名,登録商標)、旭化成(株)製のAciplex(商品名,登録商標)、旭硝子(株)社製のFlemion(商品名,登録商標)などを使用することができる。高分子電解質膜111の厚さは特に限定されないが、通常25〜250μmである。
【0015】
アノード触媒層112およびカソード触媒層113は、例えば白金系の金属触媒などの電極触媒と、当該電極触媒を担持する導電性炭素粒子(カーボン粉末)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質とで構成されている。これらアノード触媒層112およびカソード触媒層113の厚さは特に限定されないが、通常5〜50μmである。
【0016】
アノード触媒層112およびカソード触媒層113における担体である導電性炭素粒子としては、導電性を有する細孔の発達したカーボン材料を用いるのが好ましく、例えばカーボンブラック、活性炭、カーボンファイバーおよびカーボンチューブなどを使用することができる。カーボンブラックとしては、例えばチャネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックおよびアセチレンブラックなどが挙げられる。また、活性炭は、種々の炭素原子を含む材料を炭化処理および賦活処理することによって得ることができる。
【0017】
アノード触媒層112およびカソード触媒層113における電極触媒としては、白金または白金合金を用いるのが好ましい。白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、鉄、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛およびスズからなる群より選択される1種以上の金属と、白金との合金であるのが好ましい。特にアノード触媒層112にあっては、中間生成物である一酸化炭素が白金触媒を被毒する問題があるため、耐一酸化炭素被毒性を有するルテニウムなどを含むことが望ましい。また、上記白金合金には、白金と上記金属との金属間化合物が含有されていてもよい。さらに、白金からなる電極触媒と白金合金からなる電極触媒を混合して得られる電極触媒混合物を用いてもよく、アノード側とカソード側に同じ電極触媒を用いても異なる電極触媒を用いてもよい。
【0018】
アノード触媒層112およびカソード触媒層113に含有されて、上記触媒担持粒子に付着させる上記高分子電解質としては、高分子電解質膜111を構成する高分子電解質を用いることができる。アノード触媒層112およびカソード触媒層113ならびに高分子電解質膜111を構成する高分子電解質は、同じ種類であっても、異なる種類であってもよい。例えば、上述した米国DuPont社製のNafion(商品名,登録商標)、旭化成(株)製のAciplex(商品名,登録商標)、旭硝子(株)社製のFlemion(商品名,登録商標)などを使用することができる。
【0019】
アノード触媒層112およびカソード触媒層113における高分子電解質は、触媒担持粒子を被覆し、3次元に水素イオン伝導経路を確保するために、アノード触媒層112およびカソード触媒層113を構成する触媒担持粒子の質量に比例した量で、アノード触媒層112およびカソード触媒層113に含まれていることが好ましい。具体的には、アノード触媒層112およびカソード触媒層113に含まれる高分子電解質の質量は、触媒担持粒子質量に対して0.2倍以上、2.0倍以下であることが望ましい。この範囲であれば、高い電池出力を得ることができる。上述のように高分子電解質の質量が0.2倍以上であると、十分な水素イオン伝導性が確保でき、2.0倍以下であると、フラッディングの回避が可能であり、より高い電池出力を実現することができる。
【0020】
アノードガス拡散層114およびカソードガス拡散層115は、それぞれアノード触媒層112およびカソード触媒層113の表面側に配置され、アノードセパレータ14およびカソードセパレータ15のアノード流路16及びカソード流路17から流入したメタノールや酸素(空気)をアノード触媒層112およびカソード触媒層113効率よく導く機能と導電性があれば特に限定されず、当該分野において公知の種々のガス拡散層を用いることができる。これらのガス拡散層114,115を構成する基材としては、ガス透過性を持たせるために、発達したストラクチャー構造を有するカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、導電性多孔質基材を用いることができる。また、排水性を向上させるために、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂を代表とする撥水性材料(高分子)を上記基材の内部に分散させて、上記基材は撥水処理を施してもよい。さらに、電子伝導性を持たせるために、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料で上記基材を構成してもよい。なお、カソード側およびアノード側において同じガス拡散層を用いても異なるガス拡散層を用いてもよい。アノードガス拡散層114およびカソードガス拡散層115の厚さは特に限定されないが、通常100〜500μmである。
【0021】
一対のアノードセパレータ14およびカソードセパレータ15は、膜電極接合体11の外形形状に応じた適宜の外形形状とされ、膜電極接合体11の外側に配置されて、膜電極接合体11を機械的に固定するための導電性を有する部材である。アノードセパレータ14のうちの膜電極接合体11と接触する面には、アノードに燃料であるメタノールを供給し、電極反応生成物、未反応のメタノールを含む物質を反応場から外部に運び去るためのアノード流路16が形成され、同様に、カソードセパレータ15のうちの膜電極接合体11と接触する面には、カソードに酸素(空気)を供給し、電極反応生成物、未反応のメタノールを含む物質を反応場から外部に運び去るためのカソード流路17が形成されている。
【0022】
こうしたアノード流路16およびカソード流路17は、図示はしないが、それぞれアノードセパレータ14およびカソードセパレータ15の表面に常法により溝を設けることによって形成されている。特に制限されるものではないが、アノード流路16およびカソード流路17は、例えば複数の直線状溝部と、隣接する直線状溝部を上流から下流へと連結する複数のターン状溝部とで構成されたサーペンタイン形状を有する。
【0023】
ガスケット18,19は、アノードセパレータ14及びカソードセパレータ15の外形形状に応じた形状とされ、枠状(額縁状)又は環状であり、単電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの外部へのリーク防止や混合を防止するため、それぞれアノードおよびカソード(特にアノードガス拡散層114およびカソードガス拡散層115)の周囲に配置される。
図1に示すように、ガスケット18の内縁は、アノード触媒層112の外縁及びアノードガス拡散層114の外縁より外側であって、高分子電解質膜111の外縁より内側に位置する大きさとされている。同様にガスケット19の内縁は、カソード触媒層113の外縁及びカソードガス拡散層115の外縁より外側であって、高分子電解質膜111の外縁より内側に位置する大きさとされている。ガスケット18,19の内縁部がガス拡散層114,115に重なると、その部分のみ過大な厚さになり、燃料漏れの原因となるからである。またガスケット18,19の内縁が高分子電解質膜111より外側であると、厚さが足りずに燃料漏れの原因となるからである。このようなガスケット18,19としては、ゴムなどの当該分野で公知のものを用いることができる。
【0024】
アノード集電体12及びカソード集電体13としては、導電性を有する、たとえば厚さ1〜3mmの金属板(銅板など)に3〜4μmの金コーティングが施されたものを用いることができる。アノード集電体12は導電性を有するアノードセパレータ14の外側の表面に設けられ、カソード集電体13は導電性を有するカソードセパレータ15の外側の表面に設けられる。なお、燃料電池1の組立完成状態において、アノード集電体12は電力負荷の陰極(マイナス)に接続され、カソード集電体13は電力負荷の陽極(プラス)に接続されて燃料電池1からの電力が電力負荷に供給される。
【0025】
以上のように構成された燃料電池1において、上述したアノードセパレータ14のアノード流路16入口にメタノールを供給し、カソードセパレータ15のカソード流路17の入口に空気を供給すると、アノードにおいては、
[数1] CH
3OH+H
2O→CO
2+6H
++6e
−
という酸化反応が生じ、カソードにおいては、
[数2] 1/2O
2+6H
++6e
−→3H
2O
という還元反応が生じる。これによりアノードとカソードとの間に電流が流れることになる。
【0026】
さて、本例の膜電極接合体11は、
図1及び
図2に示すように、高分子電解質膜111への水分の浸入を阻止してその膨張・収縮を抑制するために、高分子電解質膜111の上面の外縁部とアノードガス拡散層114の外縁部との間に、その内縁部が延在し、且つ当該内縁部がアノード触媒層112に重ならないように設けられた額縁状の防潤層116Aを有し、高分子電解質膜111の下面の外縁部とカソードガス拡散層115との間に、その内縁部が延在し、且つ当該内縁部がカソード触媒層113に重ならないように設けられた額縁状の防潤層116Bと、を有する。なお、高分子電解質膜111への水分の浸入を阻止するためには防潤層116A及び116Bの両方を備えることが好ましいが、本発明の膜電極接合体としては少なくともいずれか一方を備えればよい。
【0027】
またこれに加えて本例の膜電極接合体11は、
図1及び
図2に示すように、ガス拡散層114,115の剥がれによる耐折強さの低下を抑制するために、アノードガス拡散層114の外縁部及び防潤層116Aの上面並びに高分子電解質膜111の上面に、その内縁部がアノードガス拡散層114の外縁部に重なるように設けられた額縁状の補強層117Aと、カソードガス拡散層115の外縁部及び防潤層116Bの下面並びに高分子電解質膜111の下面に、その内縁部がカソードガス拡散層115の外縁部に重なるように設けられた額縁状の補強層117Bと、を有する。なお、ガス拡散層114,115の剥がれをより防止するためには補強層117A,117Bの両方を備えることが好ましいが、本発明の膜電極接合体としては少なくともいずれか一方を備えればよい。
【0028】
本例の防潤層116A,116Bは、所望の防水性を有する材料であれば特に限定されない。たとえばポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンナフタレートPEN、ポリテトラフルオロエチレンPTFEなどからなるフィルムを用いることができる。また本例の補強層117A,117Bは、所望の剛性を有する材料であれば特に限定されない。たとえばポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンナフタレートPEN、ポリテトラフルオロエチレンPTFEなどからなるフィルムを用いることができる。補強対象物の材質、耐熱性、防水性、剛性、コスト、接着性などの総合的観点から、防潤層116A,116BにはポリテトラフルオロエチレンPTFE又はポリエチレンナフタレートPENを用い、補強層117A,117BにはポリエチレンテレフタレートPET又はポリエチレンナフタレートPENを用いることがより好ましい。
【0029】
本例の防潤層116A,116B及び補強層117A,117Bの、補強対象物との接着面である一主面には、接着剤が塗布されている。この接着剤としては、高分子電解質膜111及びガス拡散層114,115との間において、ホットプレス機などを用いた加熱加圧による接着が可能であり、且つ燃料電池1の作動温度範囲において接着性が確保できるものであれば特に限定されない。たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。なお、後述するとおり防潤層116A,116B及び補強層117A,117Bは、接着剤の反応温度にて熱プレスにより接着されるため、接着剤の反応温度よりも高い融点を有する材料であることが必要とされる。
【0030】
図3〜
図5は、本例の膜電極接合体11を構成する高分子電解質膜111、アノード触媒層112及びカソード触媒層113、アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115、防潤層116A,116B、補強層117A,117Bの平面視における寸法関係を説明する平面図である。なお、各構成部材はその中心が一致するように積層される。
【0031】
たとえば、全ての構成部材を平面視において矩形形状に形成した場合、
図3に示すように、縦X1,横Y1の高分子電解質膜111に対してアノード触媒層112及びカソード触媒層113は、それより小さい縦X2,横Y2の外縁を有する(X1>X2,Y1>Y2)。また、アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115は、縦X1,横Y1の高分子電解質膜111より小さい外縁であって、縦X2,横Y2のアノード触媒層112及びカソード触媒層113より大きい縦X3,横Y3の外縁を有する(X2<X3<X1,Y2<Y3<Y1)。
【0032】
また、
図4に示す防潤層116A,116Bは、縦X2,横Y2のアノード触媒層112及びカソード触媒層113に対し、それより大きい縦X5,横Y5の内縁を有する(X5>X2,Y5>Y2)。なお、防潤層116A,116Bの外縁の寸法(縦X4,横Y4)は、縦X1,横Y1の高分子電解質膜111に対して、それより小さくてもよいし、等しくてもよいし又は大きくてもよい。さらに、
図5に示す補強層117A,117Bは、縦X1,横Y1の高分子電解質膜111より大きい縦X6,横Y6の外縁を有し(X6>X1,Y6>Y1)、縦X3,横Y3のアノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115に対し、それより小さい縦X7,横Y7の内縁を有する(X7<X3,Y7<Y3)。
【0033】
図6は、高分子電解質膜111とアノード触媒層112と防潤層116Aとをこの順序で下から上へ積層した状態の平面図であり、防潤層116Aの外縁は高分子電解質膜111の外縁より小さく、防潤層116Aの内縁はアノード触媒層112の外縁より大きく高分子電解質膜111の外縁より小さい。なお、高分子電解質膜111とカソード触媒層113と防潤層116Bの関係もこれと同じである。
【0034】
図7は、高分子電解質膜111と、防潤層116Aと、アノード触媒層112と、アノードガス拡散層114と、補強層117Aとをこの順序で下から上へ積層した状態の平面図であり、防潤層116Aを省略した図である。補強層117Aの外縁は高分子電解質膜111の外縁より大きく、補強層117Aの内縁は高分子電解質膜111の外縁及びアノードガス拡散層114の外縁より小さい。なお、高分子電解質膜111とカソードガス拡散層115と補強層117Bの関係もこれと同じである。
【0035】
このように本例の額縁状の防潤層116A,116Bは、その内縁がアノード触媒層112及びカソード触媒層113と重ならないように高分子電解質膜111の外縁部に積層されている。防潤層116A,116Bの内縁をアノード触媒層112及びカソード触媒層113に重ねると、これら触媒層112,113の剥がれが抑制される反面、発電面積が減少するので起電力の低下につながる。したがって、防潤層116A,116Bの内縁が触媒層112,113の外縁に近接するように積層すると高分子電解質膜111への水分の侵入阻止、高分子電解質膜111の剛性向上及び発電量の減少抑制の点において好ましい。なお発電面積とは、既述したアノードにおける酸化反応とカソードにおける還元反応が有効に生じ得る面積であり、アノード触媒層112及びカソード触媒層113それぞれの面積をいう。
【0036】
また本例の防潤層116A,116Bは、その内縁が高分子電解質膜111の主面の外縁部とアノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115との間に延在するように高分子電解質膜111に積層されている。これにより、
図1に矢印で示すように、膜電極接合体11のガス拡散層114,115の外面から当該ガス拡散層114,115の外縁部に沿って侵入しようとする水分Wを高分子電解質膜111に達する前に阻止することができる。
【0037】
したがって、本例の防潤層116A,116Bの外縁は、ガス拡散層114,115の外縁より所定以上大きいことが好ましい。たとえば、防潤層116A,116Bの外縁全周の長さとガス拡散層114,115の外縁全周の長さを比べると、防潤層116A,116Bの外縁全周の長さは、ガス拡散層114,115の外縁全周の長さに対して1.03倍以上であることが好ましく、1.05倍以上であることがより好ましい。この点については実施例により詳細に説明する。
【0038】
本例の防潤層116A,116Bは、高分子電解質膜111の両主面にアノード触媒層112及びカソード触媒層113を形成したのち当該高分子電解質膜111の両主面に積層してもよいが、アノード触媒層112及びカソード触媒層113を高分子電解質膜111の両主面に形成する前に積層することが好ましい。高分子電解質膜111は、その製造時においてアノード触媒層112及びカソード触媒層113のペーストに含まれる水分によって膨張・収縮するため、触媒層112,113を形成する前に防潤層116A,116Bを積層して剛性を高めておけばこのような膨張・収縮を抑制することができ、構成部材の位置ずれによる発電面積の減少を抑制することができる。
【0039】
これに対して、本例の額縁状補強層117Aは、その内縁部がアノードガス拡散層114の外縁部に重なるように積層され、同様に、額縁状補強層117Bは、その内縁部がカソードガス拡散層115の外縁部に重なるように積層されている。なお、補強層117Aとアノードガス拡散層114との重なり条件と、補強層117Bとカソードガス拡散層115との重なり条件は同じである。
【0040】
本例の膜電極接合体11のように、アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115の上面に補強層117A,117Bを重ねると、当該アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115の外縁からの剥がれが抑制される一方、アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115の外縁部の表面が補強層117A,117Bにより覆われるため、重ね合わせる面積によっては見かけ上の発電面積が減少することになる。ただし、ガス拡散層114,115の外縁部に導入されたメタノールや酸素は、当該ガス拡散層114,115の拡散作用によって触媒層112,113の外縁まで廻り込んで到達する。したがって、この重なり面積を適切な値に設定することでガス拡散層114,115の剥がれ防止と発電量低下防止の両立を図ることができる。
【0041】
防潤層116A,116B及び補強層117A,117Bの厚さは、接着剤を含めて12.5〜125μmであることが好ましい。防潤層116A,116B及び補強層117A,117Bの厚さが12.5μm未満であっても膜電極接合体11の機械的強度を向上させるといった目的は達成できるが、折れ易いという欠点があり作業性が損なわれる。また125μmを超えると、防潤層116A,116B及び補強層117A,117Bの各内縁に生じる段差が大きくなるので、防潤層116A,116Bにあってはアノード触媒層112及びカソード触媒層113の端部に空洞が発生し、補強層117A,117Bにあってはアノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115の端部に空洞が発生し、起電力が低下する可能性がある。
【0042】
本例の補強層117A,117Bの外縁部は、高分子電解質膜111の端部を覆うように延在し、両補強層117A,117Bが貼り合わされている。これにより、高分子電解質膜111、触媒層113,114及びガス拡散層115,116を含めた膜電極接合体11の機械的強度が向上する。なお、本発明の膜電極接合体にあっては補強層117A又は補強層117Bの少なくとも一方を備えれば機械的強度の向上の目的は達成できるが、補強層117A,117B、ガス拡散層115,116及び高分子電解質膜111との貼り合わせは、基本的に異種材料の貼り合わせであることから、動作温度に応じて反りが生じる可能性がある、したがって、本例のように補強層117A,117Bの両方を設けることが最も好ましい。
【0043】
本例の防潤層116A,116Bの外縁は、
図1及び
図6に示すように高分子電解質膜111の端部を覆わないが、本発明に係る防潤層は本例の構造に限定されず、
図11に示すように、防潤層116A,116Bの外縁を高分子電解質膜111の外縁より大きく形成してもよい。このとき、補強層117A,117Bの外縁と同じ大きさにしてもよいし、これより小さくしてもよい。
【0044】
次に本例の膜電極接合体11の製造方法について説明する。なお、以下に説明する製造方法は単なる一例であって、本発明に係る膜電極接合体を何ら限定するものではない。
【0045】
図8は、ホットプレス機5を用いて本例の膜電極接合体11のうち高分子電解質膜111の両主面に防潤層116A,116Bを積層する工程を説明するための分解断面図である。ホットプレス機5は、位置が固定された第1熱盤51と、当該第1熱盤51に対して加圧シリンダ55によって上下移動する第2熱盤52とを備え、第1熱盤51及び第2熱盤52はそれぞれ熱源に接続されて所望の温度に加熱されるように構成されている。
【0046】
本例の高分子電解質膜111及び防潤層116A,116Bは、治具53にセットされたのちこの治具53がホットプレス機5にセットされる。治具53は、四隅に位置決め固定用ピン54が設けられ、一方、高分子電解質膜111、防潤層116A,116Bの四隅にも、
図3及び
図4に示すように位置決め固定用ピン54のそれぞれに対応した位置に位置決め固定用孔111h,116hが形成されている。
【0047】
ホットプレス機5の治具53に対しては、高分子電解質膜111及び防潤層116A,116Bを各層の積層順にセットする。すなわち、防潤層116Bの4つの位置決め固定用孔116hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置し、次いで高分子電解質膜111の4つの位置決め固定用孔111hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置し、最後に防潤層116Bの4つの位置決め固定用孔116hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置する。
【0048】
以上のようにして高分子電解質膜111及び防潤層116A,116Bを治具53にセットしたら、これをホットプレス機5にセットし、第1熱盤51及び第2熱盤52を所定温度に加熱したのち加圧シリンダ55を駆動して第2熱盤52を下降し、所定圧を所定時間だけ印加する。これにより、防潤層116A,116Bに形成された接着剤が反応して、高分子電解質膜111の両主面の外縁部に防潤層116A,116Bが強固に接着することになる。
【0049】
次に、
図8に示すホットプレスにより形成された、両主面の外縁部に防潤層116A,116Bが積層された高分子電解質膜111の中央の両主面にアノード触媒層112及びカソード触媒層113をスクリーン印刷法により形成する。
図9は、図示しないスクリーン印刷装置にセットされる治具6を示す断面図であり、この治具6には、防潤層116A,116Bが積層された高分子電解質膜111を位置決めして固定するための枠体面61が形成されている。この位置決め固定用枠対面61に防潤層116A,116Bが積層された高分子電解質膜111の外縁を揃えて位置決めすることで、スクリーン印刷装置の基準位置との位置精度が向上する。なお、高分子電解質膜111の位置決め法は枠体面61を用いるほか、高分子電解質膜111に形成された位置決め固定用孔111h及び防潤層116A,116Bに形成された位置決め固定用孔116hを用いてもよい。
【0050】
次に、この治具6をスクリーン印刷装置にセットし、当該分野において公知のスクリーン印刷法によりアノード触媒層112を構成するペーストを高分子電解質膜111の中央に印刷し、乾燥させる。これにより、高分子電解質膜111の所定位置にアノード触媒層112が形成されることになる。そして、高分子電解質膜111を裏返し、同様にして他方の面にカソード触媒層113を構成するペーストをスクリーン印刷法により印刷し、乾燥させる。これにより、高分子電解質膜111の両主面の所定位置にアノード触媒層112及びカソード触媒層113が形成される。こうしたアノード触媒層112及びカソード触媒層113のペーストには水分が含まれ、高分子電解質膜111はこうした水分によって膨張・収縮する特性を有するが、これら触媒層112,113を形成する前に防潤層116A,116Bが積層されて機械的強度が高くなっているので、このような膨張・収縮を抑制することができ、構成部材の位置ずれによる発電面積の減少を抑制することができる。
【0051】
図10は、ホットプレス機5を用いて、両主面に防潤層116A,116Bが積層され、アノード触媒層112及びカソード触媒層113が形成された高分子電解質膜111に、ガス拡散層114,115及び補強層117A,117Bを積層する工程を説明するための分解断面図である。ホットプレス機5の構成は
図8に示すものと同じであるためその説明は省略する。
【0052】
ホットプレス機5の治具53に対して、膜電極接合体11を構成する各層の積層順にセットする。すなわち、補強層117Bの4つの位置決め固定用孔117hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置し、次いで補強層117Bの内縁の開口部を位置決め基準にしてカソードガス拡散層115を補強層117Bの上に載置する。
【0053】
後述するアノードガス拡散層114の場合も同じであるが、位置決め固定用ピン54と位置決め固定用孔111h,116h,117hとの位置合わせを用いないで、補強層117Bの内縁の開口部を位置決め基準にしてカソードガス拡散層115を補強層117Bの上に載置するには、固定カメラによって、治具53に載置された補強層117Bと、次にセットしようとしているカソードガス拡散層115を撮影し、補強層117Bの開口部の画像位置に基づいてカソードガス拡散層115の画像位置を画像解析しながらロボットなどを制御し、所定位置になるようにカソードガス拡散層115を補強層117Bの上に載置すればよい。
【0054】
次いで、両主面に防潤層116A,116Bが積層され、アノード触媒層112及びカソード触媒層113が設けられた高分子電解質膜111の4つの位置決め固定用孔111hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置する。次いで、アノード触媒層112を位置決め基準にしてアノードガス拡散層114をアノード触媒層112の上に載置する。このセットは固定カメラを用いた画像解析により行うことができる。次いで、補強層117Aの4つの位置決め固定用孔117hを治具53の4つの位置決め固定用ピン54に挿入しながら治具53に載置する。
【0055】
以上のようにして膜電極接合体11を構成する各層を治具53にセットしたら、これをホットプレス機5にセットし、第1熱盤51及び第2熱盤52を所定温度に加熱したのち加圧シリンダ55を駆動して第2熱盤52を下降し、所定圧を所定時間だけ印加する。これにより、補強層117A,117Bに形成された接着剤が反応して両補強層116A,116B,117A,117Bが強固に接着することになる。またこれにより、両主面にアノード触媒層112及びカソード触媒層113が設けられた高分子電解質膜111とガス拡散層114,115も強固に接着されることになる。
【0056】
以下、本発明をさらに具体化した実施例と、当該実施例に対する比較例を挙げて本発明を説明する。ただし、以下の実施例の数値や材質などの諸条件は本発明の単なる一例であって本発明を何ら限定するものではない。
【0057】
《実施例1》
高分子電解質膜111として、縦200mm、横200mm、厚さ125μmのパーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜(米国DuPont社製のNafion(商品名,登録商標))を用い、
アノード触媒層112として、縦142mm、横124mm、厚さ40μmの白金・ルテニウム触媒(田中貴金属社製TEC66E50,白金・ルテニウム担持量50重量%)を用い、
カソード触媒113として、縦142mm、横124mm、厚さ20μmの白金触媒(田中貴金属社製TEC10E70TPM,白金担持量70重量%)を用い、
アノードガス拡散層114及びカソードガス拡散層115として、縦146mm、横128mm、厚さ235μmの黒鉛繊維不織布(MFCテクノロジー社製カーボンファイバペーパSIGRACET GDL25BC)を用い、
防潤層116A,116Bとして、外縁の縦196mm、外縁の横196mm、内縁の縦144mm、内縁の横126mm、厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製テオネックス)を用い
補強層117A,117Bとして、外縁の縦210mm、外縁の横210mm、内縁の縦138mm、内縁の横120mm、厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製テオネックス)を用いた。
【0058】
まず高分子電解質膜111の両主面の外縁部に、
図8に示すように防潤層116A,116Bを積層し、次いで
図9に示すように、高分子電解質膜111の両主面にアノード触媒層112及びカソード触媒層113をスクリーン印刷法により印刷し、乾燥させた。そして、
図10に示すように補強層117B、カソードガス拡散層115、防潤層116A,116B及び触媒層112,113が形成された高分子電解質膜111、アノードガス拡散層114、補強層117Aの順で積層し、ホットプレス機5を用いて、温度135℃、圧力5MPaで5分間の加熱加圧処理を行った。
【0059】
こうして得られた膜電極接合体11を用いて燃料電池1を組み立て、水に12時間浸したのち、これを分解して膜電極接合体11を目視にて観察したところ、ガス拡散層114,115の剥離及び補強層117A,117Bと高分子電解質膜111の間の剥離は観察されなかった。
【0060】
また、他の組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定した。この結果、92mW/cm
2であった。次いで、動作試験を終えた燃料電池を分解し、膜電極接合体11を目視にて観察したところ、ガス拡散層114,115の剥離及び補強層117A,117Bと高分子電解質膜111の間の剥離は観察されなかった。そして、分解した燃料電池を再び組み立て、組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定した。この結果、90mW/cm
2であった。
【0061】
《比較例1》
実施例1の比較例として、実施例1の防潤層116A,116Bを省略したこと以外は実施例1と同じ条件で膜電極接合体11を作製し、同じ評価を行った。この結果、水に12時間浸した燃料電池を分解して膜電極接合体11を目視にて観察したところ、ガス拡散層114,115の剥離及び補強層117A,117Bと高分子電解質膜111の間の剥離が観察された。
【0062】
また、他の組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定したところ、89mW/cm
2であった。次いで、動作試験を終えた比較例1の燃料電池を分解し、膜電極接合体11を目視にて観察したところ、ガス拡散層114,115の剥離及び補強層117A,117Bと高分子電解質膜111の間の剥離が観察された。そして、分解した燃料電池を再び組み立て、組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定したところ、42mW/cm
2であった。
【0063】
《考察1》
実施例1及び比較例1の結果から、防潤層116A,116Bを省略した比較例1は、水分の浸入が実施例1に比べて著しく、初回の組立時の動作試験における出力密度はさほど差はないが、分解後に再組立てした後の動作試験では、実施例1の90mW/cm
2に比べて42mW/cm
2と著しく低い。これはガス拡散層114,115の剥離による反応性の低下と、一部の燃料がガス拡散層から触媒層を介さずに直接高分子電解質膜に侵入したこと、また高分子電解質膜と補強層とが剥離して燃料リークが生じたことが原因であると推察される。これに対して実施例1の膜電極接合体11については、再組立てしても出力密度はさほど低下しなかった。
【0064】
《実施例2〜7》
実施例1の防潤層116A,116Bの外縁(縦196mm,横196mm)の長さを表1のとおりに設定した以外は実施例1と同じ条件で膜電極接合体11を作製し、得られた膜電極接合体11を用いて燃料電池1を組み立て、組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定した。この結果を表1の初回出力密度として示す。
【0065】
次いで、動作試験を終えた燃料電池を一旦分解し、分解した燃料電池を再び組み立て、組み立てられた燃料電池にメタノールと空気を供給し、電圧を0.4Vに固定して動作試験を行い、単電池の出力密度を測定した。この結果を表1の2回目の出力密度として示す。
【0067】
《考察2》
実施例2〜7の結果から、防潤層116A,116Bの外縁の大きさは、実施例3〜7の膜電極接合体11が、実施例2の膜電極接合体11に比べて、出力密度の変動が極めて小さく良好であった。すなわち、防潤層116A,116Bの外縁全周の長さが、ガス拡散層114,115の外縁全周の長さに対して1.03倍以上である場合に、再組立てを行っても出力密度の変動が極めて小さいことが確認された。