【実施例】
【0047】
(試験例)
本発明者らは、ヒト癌細胞株およびヒト正常組織のパネルを用いてジーンチップ解析により、がんに高発現する遺伝子を網羅的に解析した結果、PEPP2遺伝子が、正常組織の精巣と、急性前骨髄球性白血病(APL)および慢性骨髄性白血病(CML)で高発現していることを見出した(図示せず)。
【0048】
この結果を踏まえ、種々の正常組織、固形腫瘍、造血器腫瘍細胞について、RT−PCR法により、PEPP2遺伝子の発現量を評価することにした。手順は次の通りである。
図1に示される正常な各組織及び各種がん細胞株からIsogen(ニッポンジーン,東京,日本)を用いてRNAを抽出した。具体的には、5.0×10
6個の細胞を、PBSを用いて250G、5分間の条件で遠心分離し洗浄した。その後、上清を取り除いた沈殿物にIsogen 1mLを加え5分間室温に静置した。次に、クロロホルムを0.2m 加え15秒間撹拌し、室温で3分間静置した。その後、12000G,15分,4℃で遠心し、水相を分離した後、イソプロパノールを0.5mL加え10分間室温に静置し、12000Gで10分間、4℃で遠心した。上清を取り除いた沈殿物に70%エタノールを1mL加えて撹拌し、7500G,5分間,4℃で遠心し、エタノールを捨て沈殿物を風乾した。風乾後、TE bufferを10μL加えて混和して溶解し、トータルRNAストックとした。これを使用するまで、ストックは−80℃で保存した。
【0049】
なお、
図1に示される各がん細胞株のうち、ヒト多発性骨髄腫KMS11、KMS21は川崎医科大学衛生学 大槻剛巳教授より供与を受けた。HL60、U937は慶應義塾大学薬学部病態生理学講座 服部豊教授より供与を受けた。ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562,KU812及びヒト急性骨髄性白血病細胞株THP−1、PL21は、HS研究資源バンク(泉南市, 大阪)から購入した。HLA−A24:02遺伝子をHygromycin遺伝子と共に導入したC1RA−24は慶應義塾大学医学部先端医科学研究所細胞情報部門 河上裕教授より供与を受けた。また、急性前骨髄球性白血病細胞株NB4は、慶應義塾大学医学部血液内科 中島秀明准教授より供与を受けた。
【0050】
上記のトータルRNA 2μgを用いてRT−PCR法を行い、cDNAを作成した。この際、用いたプライマーの配列は、下のとおりである。
【0051】
遺伝子:GAPDHの逆転写に用いたプライマー
F−primer:5’−TGAACGGGAAGCTCACTGG−3’
R−primer:5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA−3’
【0052】
遺伝子:PEPP2
F−primer:5’−GGCAAGAAGCATGAATGTGA−3’
R−primer:5’−GGCTGTGGTCCCAGAAGTAA−3’
【0053】
逆転写反応は、下記の組成、条件で行った。トータルRNA 2μgに、DEPC水とランダムプライマーを1μL加えて全量5μLとし、70℃で5分間,その後4℃で5分間置き、ランダムプライマーを加えた。DEPC水 6.5μL, GoScript 5 ×reaction buffer 4μL, MgCl
2(25mM) 2μL, PCR Nucleotide mix 1μL, RNasin(40U/μL)0.5μL, GoScriptReverse Transcriptase(Promega,Wisconsin,USA)1μLを加え、25℃で5分間(アニーリング)、42℃で60分間(伸長反応)、70℃で15分間(逆転写酵素の失活)の順に、逆転写反応を行い、4℃でcDNA検体を保存した。その後、cDNA1μLをテンプレートとして、PCR反応を行った。
【0054】
作成したcDNAについて、PEPP2、及び内因性コントロールとしてハウスキーピング遺伝子のGAPDHの発現を、PCR法で確認した。具体的には、上記cDNAを2.5mMのdNTPs, 10μMのプライマー及び0.625UのTakara Taq polymerase (Takara Bio,滋賀,日本)を含む25μLのPCR反応液を用い、PEPP2遺伝子については94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間を1サイクルとして35サイクルのPCRを行い、GAPDH遺伝子については、94℃で1分間,58℃で2分間,72℃で2分間を1サイクルとし、25サイクルのPCRを行った。このPCR反応により、PEPP2遺伝子においてはエクソン3及びエクソン4を含む191bpの断片が増幅され、GAPDH遺伝子においては、エクソン8及びエクソン9を含む304bpの断片が増幅された。この結果を
図1に示す。
【0055】
図1に示されるように、PEPP2は、正常組織では精巣のみに強発現、脳組織にごくわずかな発現があり、一方、癌細胞株では急性前骨髄球性白血病(APL)および慢性骨髄性白血病(CML)に強発現を認めた。なお、脳腫瘍、膀胱癌細胞株に弱い発現は認められた。
【0056】
次に、
図1で強発現が確認されたK562(CML)及びNB4株(APL)、並びに対照として健常人2名の血液細胞を用い、4×10
5/mLの細胞液を、CYTOSPIN4(Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA )を用いて350rpm,5分間でスライドガラスに固定した。4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、リン酸緩衝生理食塩水に10% Goat Serum(Invitrogen)を1/10希釈で作成したもので5分間洗浄した。0.5% triton X−100(商標) (SIGMA Life Science )で20分間細胞膜を破壊し、上記同様の洗浄をした。10% Goat Serum で30分間ブロッキングした後、1/300希釈したMono Anti−PEPP2 antibody produced in mouse (SIGMA ALDRICH)を4℃で一晩反応させた。洗浄した後、10% Goat SerumにAlexa Fluor Goat−Anti−mouse IgG 1/1000希釈し、室温で2時間処理し、洗浄した。消光防止剤(1mM p−フェニレンジアミン,10mM Na
2HPO
4, 90% グリセリン)を滴下し、カバーガラスで封入した。HSオールインワン蛍光顕微鏡BZ−9000(KEYENCE Japan, 大阪、日本)で観察した。この結果を
図2に示す。
【0057】
図2に示されるように、健常人の血液細胞では、いずれにもPEPP2タンパク質の発現が確認されなかった一方、K562及びNB4では、いずれも、PEPP2タンパク質の発現が確認された。なお、DAPIにより示される細胞核でPEPP2タンパク質の蛍光が確認され、このことは、従来知られる転写因子としてのPEPP2の機能とも整合する。
【0058】
次に、複数のAPL患者及びCML患者から骨髄血を採取するとともに、HLA−A24:02陽性の健常人から末梢血及び骨髄を採取し、PEPP2の発現量を定量的RT−PCR法で検出した。なお、これらの検体は、書面によるインフォームドコンセントを得て、使用したものである。
【0059】
手順としては、前述の要領でcDNAを作成し、PEPP2、及び内因性コントロールとしてハウスキーピング遺伝子のGAPDHの発現をCFX 96/384 リアルタイムPCRシステム(BIO RAD, Hercules, CA, USA)を使い、確認した。プライマー、プローブは、Primer Express 3.0(Informer Technologies , Incorporated)を使用して設計し、次の配列を有するものである。
【0060】
遺伝子:GAPDH
F−primer:5’−GACCTGACCTGCCGTCTAGAAA −3’
R−primer:5’−CCTGCTTCACCACCTTCTTGA −3’
Probe :6 ACCTGCCAAATATGATGAC BHQ−2
※ 6 ⇒シークエンスコード 6 − FAM
【0061】
遺伝子:PEPP2
F−primer:5’− GCAGTGCAGATTTGGTTTGAGA −3’
R−primer:5’− TGCCATTAATGCCCTCTGATG −3’
Probe : 6 TAGAAGAGCCAAATGGAGG BHQ−2
【0062】
定量的RT−PCR反応は、上記cDNAをSsoFast probes supermix(BIO−RAD)10μM、プライマー及び Taqman probe(SIGMA)を含む20μLのPCR反応液を用いて、GAPDH遺伝子については、95℃で5秒間,57℃で10秒間を1サイクル、PEPP2遺伝子については95℃で5秒間、55.1℃で10秒間、を1サイクルとして、共に40サイクルのPCRを行った。
この反応により、GAPDH遺伝子においてはエクソン8を含む断片が増幅され、PEPP2遺伝子においてはエクソン3及びとエクソン4を含む断片が増幅された。この結果を
図3に示す。
【0063】
図3に示されるように、PEPP2の発現は、健常人の末梢血及び骨髄では弱い又はなかったのに対し、APL及びCML患者の骨髄では、それぞれ89%、70%という高割合で発現が確認された。このことは、PEPP2が白血病治療の標的として有用であることを示唆する。
【0064】
次に、白血病細胞群を、フローサイトメトリーによるCD38及びCD34の陽陰性に基づき、白血病幹細胞(CD34+CD38−)とそれ以外の細胞(CD34−)とに分画し、それぞれの画分におけるPEPP2の発現量を定量的RT−PCR法で測定した。この結果を
図4に示す。なお、
図4の縦軸は、検量線の作成に用いたK562細胞の発現を1としたときの相対値である。
【0065】
このフローサイトメトリーは、次の手順で行った。つまり、PBSと0.5%FBSで作製した溶液をFACS溶液として細胞を懸濁させ、1×10
7cells/mLに調製した。この細胞浮遊液に抗ヒトCD34抗体および抗ヒトCD38抗体(Miltenyl Biotec, California, USA)を加え、4℃で30分反応させた。PBSを加えて4℃、1300rpmで10分間遠心後、上清を吸引した後、FACS溶液に再懸濁させた。細胞懸濁液をフィルターに通し、セルソーター(MoFlo, Beckman Coulter, California, USA)により細胞を分取した。
【0066】
図4に示されるように、PEPP2は、白血病幹細胞及びそれ以外の白血病細胞の双方で発現していたが、特に白血病幹細胞において強発現していた。これにより、PEPP2を標的とする免疫療法は、白血病幹細胞を効果的に攻撃することができるため、放射線療法又は化学療法後の白血病患者に実施されると好ましいことが示唆された。
【0067】
図3のとおり、PEPP2の発現は、APL及びCML患者の骨髄では高割合で確認されたが、中には、強くない場合もあった。そこで、脱DNAメチル化剤として知られる5−アザ−2’−デオキシシチジンを白血病細胞に与えることで、PEPP2の発現が亢進されるか否か、確認を行った。具体的には、HL60(APL)を5.0×10
5cells/well、健常人末梢血単核球を3.0×10
6cells/wellとなるように調整し、6穴プレートにまいた。5−アザ−2’−デオキシシチジン(SIGMA−Aldrich, Missouri, USA)は、がん細胞株においてはRPMI−1640 medium (SIGMA−Aldrich, Missouri, USA)を用いて、健常人末梢血単核球はAIM−V medium (GIBCO,California,USA)で濃度を200nMに調整し、24時間ごとに3日間連続で添加した。その後、細胞を回収し、前記した要領で発現量解析(HL60について
図5A〜B、健常人細胞について
図6)及び、蛍光免疫染色(
図5C〜D)を行った。なお、
図5Dは、撮像機器により検出された各細胞の輝度を定量化した平均値を示すグラフである。また、
図5Dの縦軸は、1細胞あたりの平均輝度(Arvitary unit intensity)である。
図5B、
図6の縦軸は、GAPDH遺伝子発現量で補正したPEPP2遺伝子の相対的な発現量である。
【0068】
図5に示されるように、5−アザ−2’−デオキシシチジンの使用により、非使用時に比べ、APL細胞におけるPEPP2の発現量が著明に増加し、タンパク質量も増加することが分かった。他方、
図6に示されるように、健常人の細胞におけるPEPP2の発現量は、5−アザ−2’−デオキシシチジンの使用にかかわらず、変化しないことが分かった。これにより、脱DNAメチル化剤を併用すると、白血病のPEPP2の発現量が増すため、PEPP2エピトープを標的とする免疫療法が、一層効果的になることが示唆された。
【0069】
<実施例> エピトープ配列の選抜
PEPP2の全アミノ酸配列から、BIMAS(http://www-bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind)及びSYFPATHI(http://syfpeithi.bmi-heidelberg.com)の2つのコンピュータアルゴリズムを用いて、HLA−A24:02に結合すると予測されるペプチドを24種類抽出した(表1)。
【0070】
【表1】
【0071】
C1RA−24細胞をAIM−V medium (GIBCO,California,USA)で洗浄し、最終濃度1.0×10
7cells/20mLとして24時間培養した。Peptide1〜24(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を50mg/mLになるようにDimethyl Sulfoxide(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)で調整し、C1RA−24細胞を洗浄後24穴プレートに1.0×10
6cells/mLでまき、さらにβ2ミクログロブリン(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)1を5μL、Peptide1〜24、EBV Peptide(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を1μL添加し24時間培養した。PBS50mLあたり1gのBovine Serum Albumin(Amersham International,Amersham UK)を混合し、PBS中2%BSAとした。細胞をPBS中2%BSAで洗浄し、Isotype Control抗体(Beckman coulter ,California ,USA)またはAnti−HLAA−24抗体(MBL, Nagoya, Japan)を2μL添加し、30分間氷上で反応させた。再び洗浄し、PBS中2%BSAでとき、FACSCalibur cytometer(BD Biosciences ,California, USA)を用いて解析を行った。ペプチドとして、表1に示す24ペプチドを用いた。この結果を
図7(A)に示す。なお、
図7の縦軸は、平均蛍光強度(Mean Fluorescence Intensity)であり、ここでは抗HLA−A24抗体を標識しているFITC色素の強度を示す。
【0072】
C1RA−24細胞をAIM−Vmedium(GIBCO,California,USA)で洗浄し、最終濃度1.0×10
7cells/20mLとして24時間培養した。Peptide1〜24(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を50mg/mLになるようにDimethyl Sulfoxide(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)で調整し、C1RA−24細胞を洗浄後24穴プレートに1.0×10
6cells/mLでまき、さらにβ2ミクログロブリン(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を5μL、Peptide1〜24、EBV Peptide(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を1μL添加し、24時間培養した。PBS中2%BSAで洗浄し、Brefeldin A(Sigma−Aldrich, Missouri, USA)を5μL添加し、4時間培養した。4時間後、PBS中2%BSAで洗浄し、Isotype Control抗体(Beckman coulter ,California ,USA)またはAnti−HLAA−24抗体(MBL, Nagoya, Japan)を2μL添加し、30分氷上で反応させた。再び洗浄し、PBS中2%BSAでとき、FACSCalibur cytometer(BD Biosciences, California, USA)を用いて解析を行った。この結果を
図7(B)に示す。
【0073】
図7(A)〜(B)より、Pep6、Pep8、Pep23の3つのペプチドが、HLA−A24:02との結合性に優れることが分かった。そこで、これら3つのペプチドを候補物質として、更なる評価を行うこととした。
【0074】
ペプチド刺激を行ったCTLの標的細胞に対する反応性を評価するため、ELISPOT法を行いIFN−γ産生細胞数を評価した。具体的な手順は次の通りである。
【0075】
プレートのコーティング
Day1 に96wellのMultiScreen HTSプレート (MILIPORE, Massachusetts, USA)上に35%エタノールを15μL/wellで加え、1分間インキュベート後、超純水200μL/wellで5回洗浄した。その後、Coating antibody「Monoclonal antibody 1−D1K」(MABTECH, Nacka, Sweden)とPBSとを150μL:11mLの比で混合した溶液を100μL/wellで加え、4℃で遮光し一晩静置した。
【0076】
標的細胞の調製
Day2に標的細胞をPBSで2回遠心洗浄後、必要細胞数を血球計算盤で計測した。AIM−V medium 1mL中で、コントロールとしてのDMSO 1μLまたは、ペプチド(5μg/mL)を1μL加え、37℃、2時間で反応させた。その後、PBSで遠心洗浄し、AIM−V mediumで調節した。
【0077】
プレートのブロッキング
Day2にコーティングしたプレートをPBS 200μL/wellで5回洗浄し、AIM−V mediumを100μL/well加えた後、遮光して1時間後室温に放置した。
【0078】
CTLの調製
次にCTLをPBSで遠心洗浄し、必要細胞数に調節した。その後、上記プレートにCTLを100μL/wellでまき、その上に上記の方法で調製した標的細胞を100μL/wellで加えて、5% CO
2インキュベーター中で24時間培養した。
【0079】
発色
Day3にプレートから細胞を取り除き、PBSで5回洗浄し、PBSで1000倍に希釈したDetection antibody「Biotinylated monoclonal antibody 7−B6−1」(MABTECH, Nacka, Sweden)を100μL/wellで加え、室温で遮光し2時間反応させた。
その後、PBS 200μL/wellでプレートを5回洗浄し、PBSで1000倍に希釈したStreptavidin−Alkaline Phosphatase (MABTECH, Nacka, Sweden)を100μL/wellで加え、室温で遮光し1時間反応させた後、PBS 200μL/wellで5回洗浄し、AP Conjugate Subtrate Kit(BIO RAD Hercules, CA, USA)を用いて作成した溶液0.45μmのフィルターにかけ、100μL/wellで加え発色させた。発色後、超純水200μL/wellを加えて、遮光して乾燥させた後、スポットを測定した。
【0080】
測定解析
スポットの解析には、Immunospot version 5(Cellular Technology Limited, Ohio, USA)を使用した。スポット数の統計解析では、Student t検定を行い、統計学的有意差をP<0.05とした。この結果を
図8に示す。
【0081】
図8A〜Cに示されるように、3種のペプチドのうちPep6(PEPP2−A24−271)のみが、DMSOや、ネガティコントロールであるHIVペプチドと比較し、有意にT細胞によるIFN−γ産生を誘導することが分かった。これにより、Pep6を最も有望な候補物質であると判断し、更なる評価試験を行うことにした。
【0082】
CTLの細胞傷害活性を
51Cr細胞傷害性試験にて評価した。標的細胞を30%のFBS(Hyclone, Utah, USA)を含むIMDM medium (SIGMA−Aldrich, Missouri, USA)中で100μCiの
51Crにて37℃で1時間標識した。細胞を2%のFBSを含むIMDM medium、1500rpm、5分間の条件で洗浄後、10%のAB血清(LONZA, Basel, Switzerland)を含むIMDM mediumに浮遊させた96穴プレート上に、細胞2.5×10
3cells/50μLでまき、10μg/mLのペプチド液を50μg/wellでまき、室温にて1時間反応させた。その後、PEPP2特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を種々の割合で加え、37℃インキュベーター内で4時間共培養し、上清を回収した後、Naシンチレーションカウンターでβ線を測定した。標的細胞及びCTLの比は、Effector/Target比=1,3,10,30,100で求めた。つまり、測定したβ線から以下の式を用いて細胞傷害活性を算出した。この結果を
図9に示す。
<細胞傷害活性の算出式>
%Cytotoxicity=[experimental
51Cr release(cpm)−spontaneous
51Cr release (cpm)]/maximum
51Cr release(cpm)−spontaneous
51Cr release(cpm) ×100(%)
【0083】
図9に示されるように、CTLについて、Pep6(PEPP2−A24−271)でパルスしたCIR−A24細胞を、DMSOや、ネガティコントロールであるHIVペプチドでパルスしたCIR−A24細胞と比較し、有意に高い細胞傷害活性を示すことが分かった。
【0084】
次に、Pep6(PEPP2−A24−271)の濃度を、0.005μg、0.05μg、0.5μg、5μg、50μg/μLに設定し、それぞれの場合における細胞傷害活性を算出した。この結果を
図10に示す。
【0085】
図10に示されるように、細胞傷害活性は、Pep6(PEPP2−A24−271)の量に依存的に変化した。また、
図10の量/%Cytotoxicityの推移は、従来のがん抗原ペプチドと同等であったことから、白血病治療におけるPep6の用量も、従来のがん抗原ペプチド薬と同等の用量になることが推察された。
【0086】
次に、HLA−A24:02及びPEPP2のそれぞれが陽性又は陰性である各種がん細胞株、及び健常人の単核球を用意し、
図9の要領で、Pep6(PEPP2−A24−271)で誘導したCTLによる細胞傷害活性を算出した。この結果を
図11に示す。
【0087】
図11に示されるように、Pep6(PEPP2−A24−271)で誘導したCTLは、HLA−A24:02及びPEPP2の双方が陽性であるKMS21に対してのみ、細胞傷害活性を呈し、健常人単核球、及びHLA−A24:02又はPEPP2が陰性であるがん細胞株に対しては、強い細胞傷害活性を呈しなかった。これにより、Pep6は、HLA−A24:02及びPEPP2の双方が陽性である白血病細胞に特異的に細胞障害活性を誘発することができ、副作用が小さいことが示唆された。なお、用いた健常人単核球は、PEPP2陽性ではあったものの、その発現が極めて弱かったため、Pep6に基づく細胞傷害活性が呈されなかったと推測される。