【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0035】
実施例1
本実施例では、以下のようにしてタブレット形状の試料を作製した。
【0036】
まず、非晶質無機酸化物として、日本フリット株式会社製VQ0028の低融点ガラス粉末(基準焼成温度:520℃、屈伏点:470℃)を用意し、ボールミルで6時間粉砕した後、92μmメッシュの篩によって分級を行い、非晶質無機酸化物粉末を得た。
【0037】
次に、放熱材料として、(株)高純度化学研究所のαアルミナ粉末(平均粒子D
50:20μm)を所定量秤量した。
【0038】
上記の非晶質無機酸化物および放熱材料を、これらの合計量に対する放熱材料の含有率(体積%)が表1の含有率となるように混合し、乳鉢で30分間混合した。混合した粉末を直径10mmφの金型に入れてプレスし、直径10mmφ、厚み5mm前後のタブレット形状の試料を作製した。得られた試料を電気炉内に入れて、450℃1時間焼成を行った。
【0039】
焼成後の試料について、以下の測定および評価を行なった。
【0040】
(割れの有無)
焼成後の試料表面を目視で観察し、割れの有無を評価した。本実施例では、長さ0.1mm以上の亀裂があるが、その形状が保持されている場合を「割れ有り」と評価した。
【0041】
(欠けの有無)
焼成後の試料表面を目視で観察し、欠けの有無を評価した。本実施例では、タブレットの角部分が取れてしまい、その形状が保てなくなっている場合を「欠け有り」と評価した。
【0042】
(熱伝導率の測定)
焼成後の試料について、アルバック理工(株)製の熱定数測定装置TC−7000を用いて、レーザーフラッシュ法にて測定した。本実施例では、上記熱伝導率が1.0W/m・K以上のものを合格とした。
【0043】
(体積空孔率の測定)
(1)上記試料が放熱材料を含まない場合(表1のNo.1)
上記No.1の試料を、φ10mm、5tのサイズに切断したタブレット体を作製し、その表面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で断面の観察を行って空孔を観察し、試料中の体積空孔率を算出した。
【0044】
(2)上記試料が放熱材料を含む場合(表1のNo.2〜10)
この場合は、以下のようにして体積空孔率を測定した。
【0045】
まず、非晶質無機酸化物材料の密度をD1、放熱材料の密度をD2とする。これらを所定の重量混合比(%)、すなわち、非晶質無機酸化物材料をA%:放熱材料を(100−A)%で混合して、タブレット体を作製する。
【0046】
次に、上記のようにして作製したタブレット体の重量Mを測定する。理想的なタブレット体であって、そのタブレット体の重量がM(g)となる場合の原料重量比を算出すると、非晶質材料無機酸化物の重量=(A×M)/100、放熱材料の重量=(1−A)×M/100である。各材料の理想体積は、非晶質材料無機酸化物の理想体積=(A×M)/100/D1、放熱材料の理想体積=(1−A)×M/100/D2となるため、全体の理想体積は、
Vr=(A×M)/100/D1+(1−A)×M/100/D2
となる。
【0047】
次に、実際のタブレット体の体積Veを測定して、上述した理想体積Vrとの比較を行い、下式に基づいて、体積空孔率を算出した。
体積空孔率=[(Ve−Vr)/Vr]×100
【0048】
本実施例では、体積空孔率は、放熱材料の含有率を制御することによって調整した。
【0049】
(耐熱性)
本実施例では、はんだに対する耐熱性を評価した。具体的には、はんだごて(太陽電気産業製のX1000)を300℃に加熱し、これを上記試料に1分間押し付けて、試料の溶融の有無や、変色の有無を調べた。本実施例では、いずれの試料も、溶融や変色は見られず、耐熱性は良好であった。
【0050】
これらの結果を表1に併記する。参考のため、試料中に占める放熱材料の含有率(体積%)と熱伝導率との関係を
図1に示す。また、試料中に占める放熱材料の含有率(体積%)と体積空孔率との関係を
図2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
まず、No.3〜8は本発明の要件を満たす例であり、熱伝導率、体積空孔率、および耐熱性の全てが良好であった。また、表面の割れや欠けも見られなかった。これらのうち、試料中に占める放熱材料の含有率が40〜65体積%と高い例は、熱伝導率が2.5W/m・Kを超えており、熱伝導性に極めて優れている。
【0053】
これに対し、No.1は放熱材料を含まない例であり、熱伝導率が低下した。また、試料の表面に0.1mm以上の亀裂が生じており、割れが発生した。
【0054】
No.2は、試料中に占める放熱材料の含有率が少ない例であり、体積空孔率が小さく、熱伝導率も低くなった。また、表面に割れが発生した。
【0055】
No.9は、試料中に占める放熱材料の含有率が多い例であり、試料中の体積空孔率が大きくなり、試料表面に欠けが発生した。
【0056】
No.10は、試料中に占める放熱材料の含有率が多い例であり、体積空孔率が大きく、熱伝導率も低くなった。また、表面に、割れおよび欠けが発生した。
【0057】
実施例2
本実施例では、表2に示すように、試料中に占める放熱材料の含有率を一定(20体積%)とし、放熱材料の平均粒子径D
50(μm)を変化させたときの特性を評価した。
【0058】
具体的には、前述した実施例1において、平均粒子径D
50の異なる酸化アルミニウム粉末として、(株)高純度化学研究所の酸化アルミニウム粉末(平均粒径0.8μm、5μm、20μm)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして各試料を作製し、体積空孔率、熱伝導率、並びに、割れおよび欠けの有無を調べた。本実施例では、放熱材料の平均粒子径を変化させることによって体積空孔率を調整した。
【0059】
これらの結果を表2に併記する。
【0060】
【表2】
【0061】
No.2、3は本発明の要件を満たす例であり、熱伝導率、体積空孔率、および耐熱性の全てが良好であった。また、表面の割れや欠けも見られなかった。
【0062】
これに対し、No.1は、平均粒子径が小さい放熱材料に、溶融した非晶質材料が充分に接触しなかったため、うまく焼成できず、表面に割れが発生した。
【0063】
実施例3
本実施例では、表3に示すように、試料中に占める放熱材料の含有率および平均円相当径粒子径D
50を一定とし、非晶質無機酸化物の焼成温度を変化させたときの特性を評価した。
【0064】
具体的には、前述した実施例1において、焼成温度の異なる非晶質無機酸化物として、関谷理化(株)製のリン酸塩系ガラスフリット(ガラス転移点:470℃、530℃、570℃、630℃)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして各試料を作製し、体積空孔率、熱伝導率、並びに、割れおよび欠けの有無を調べた。上述したように焼成温度はガラス転移点よりも高くなるため、No.3、4は、本発明で規定する「焼成温度550℃以下」を超える比較例である。また、No.1、2は、本発明で規定する「焼成温度550℃以下」を満足する本発明例である。
【0065】
本実施例では、非晶質無機酸化物材料のガラス転移点を変えることによって体積空孔率を調整した。
【0066】
これらの結果を表3に併記する。
【0067】
【表3】
【0068】
No.1、2は本発明の要件を満たす例であり、熱伝導率、体積空孔率、および耐熱性の全てが良好であった。また、表面の割れや欠けも見られなかった。
【0069】
これに対し、No.3は、焼成温度が高い非晶質無機酸化物を用いた例であり、熱伝導率が高くなり、表面に割れおよび欠けが発生した。また、充分に非晶質材料が軟化しなかったため、放熱材料を包み込むことが出来ず、体積空孔率も大きくなった。
【0070】
No.4も上記No.3と同様、焼成温度が高い非晶質無機酸化物を用いた例であり、表面に割れおよび欠けが発生した。なお、No.4では、非晶質材料が溶融せず、粉状のままのため、全く焼成できず、体積空孔率及び熱伝導率は測定しなかった(表3中、「−」と記載)。
【0071】
実施例4
本実施例では、金属基板の両面に本発明の複合材料を接合した複合体の表面性状を観察した。
【0072】
具体的には、10mm×10mm×1mmの純Al板の上下に、表1のNo.5の試料(片面あたり、5mmずつ)を有する積層体をスプレー法で作製した後、500℃で再度焼成を行って、Al板と接合させた。このようにして得られた複合体の表面性状について、上記実施例1と同様にして割れおよび欠けを測定した。その結果、新たな割れや欠けは、全く認められなかった。
【0073】
上記結果より、本発明の複合材料を用いれば、アルミニウムのような低融点金属基板に直接形成することが可能であることがわかった。