(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明による電子写真感光体の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
本実施形態における電子写真感光体は、基体と、基体上に設けられた感光層とを備える。電子写真感光体において、感光層は、積層型感光層又は単層型感光層のいずれであってもよい。感光層は、ビフェニル誘導体、及びシリカ粒子を含有する。
【0013】
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態における積層型電子写真感光体10、及び単層型電子写真感光体20を詳細に説明する。
【0014】
≪積層型電子写真感光体10≫
図1は、本実施形態における積層型電子写真感光体10の構造を示す概略断面図である。
【0015】
図1(a)に示すように、積層型電子写真感光体10は、基体11と、感光層12とを備える。感光層12は、電荷発生層13と電荷輸送層14とを含む。
積層型電子写真感光体10は、塗布等によって、電荷発生層13と電荷輸送層14とを基体11上に積層させることによって作製することができる。電荷発生層13は、電荷発生剤を含有し、電荷輸送層14は、正孔輸送剤、シリカ粒子、ビフェニル誘導体、及びバインダー樹脂を含有する。なお、電荷発生層13は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、電荷輸送層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0016】
積層型電子写真感光体10において、一般に、電荷輸送層14の膜厚は、電荷発生層13の膜厚と比べて薄い。積層型電子写真感光体10では、電荷輸送層14が最表面にあるため、長期間使用しても、電荷発生層13が、磨耗したり、破損したりすることを抑制することができる。
【0017】
(基体)
基体11としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。基体11としては、例えば、金属(例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、又は真鍮)から形成された基体、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、又はヨウ化アルミニウム、アルマイト、酸化スズ、又は酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体が挙げられる。
【0018】
すなわち、基体11としては、その全体が導電性を有するか、又は少なくとも基体11の表面が導電性を有していればよい。また、基体11は、使用に際して、十分な機械的強度を有することが好ましい。
【0019】
また、基体11の形状は、基体11が用いられる画像形成装置の構造に合わせて、シート状であってもよく、ドラム状であってもよい。
【0020】
(中間層)
積層型電子写真感光体10において、
図1(b)に示すように、基体11上に、所定の結着樹脂を含有する中間層15が設けられてもよい。中間層15は、基体11と電荷発生層13との間に設けられてもよく、電荷発生層13と電荷輸送層14との間に設けられてもよい。
【0021】
積層型電子写真感光体10は、中間層15を備えることにより、基体11及び感光層12の密着性を向上させることができる。また、中間層15内に所定の微粉末を添加することにより、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制すると共に、カブリや黒点の原因となる非露光時における基体11から感光層12への電荷注入を抑制することができる。
【0022】
中間層15に添加する微粉末としては、光散乱性、及び分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、又はリトポン)、体質顔料としての無機顔料(例えば、アルミナ、炭酸カルシウム、又は硫酸バリウム)、フッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、又はスチレン樹脂粒子が挙げられる。
【0023】
なお、中間層15の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0024】
以上のように、積層型電子写真感光体10が中間層15を備えることで、基体11側からの電荷注入が抑制され、部分的な絶縁破壊を防止する効果を有する。
【0025】
(電荷発生層)
積層型電子写真感光体10において、電荷発生層13は、電荷発生剤を含む。電荷発生剤は、電子写真感光体用の電荷発生剤であれば、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H
2Pc)、Y型チタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。
【0026】
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学系の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター、又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料(例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H
2Pc)、又はY型チタニルフタロシアニン(Y−TiOPc))が好適に用いられる。なお、フタロシアニン系顔料の結晶形状については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
【0027】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。
【0028】
電荷発生層用ベース樹脂は、電荷発生層用の樹脂であれば、特に限定されない。電荷発生層用ベース樹脂の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、又はウレタン−アクリレート樹脂が挙げられる。電荷発生層用ベース樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好適に使用される。電荷発生層用ベース樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0029】
通常、電荷発生層及び電荷輸送層が形成されている。そのため、電荷輸送層を形成する際の塗布液に用いられる溶剤に溶解しないように、積層型電子写真感光体においては、電荷発生層用ベース樹脂は、バインダー樹脂とは異なる樹脂であることが好ましい。
【0030】
電荷発生剤の含有量は、電荷発生層13に含有されるベース樹脂100質量部に対して5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以下500質量部以上であることがより好ましい。また、電荷発生層13の膜厚は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0031】
(電荷輸送層)
電荷輸送層14において、ビフェニル誘導体、正孔輸送剤、シリカ粒子、バインダー樹脂、及び電子アクセプター化合物が用いられる。
【0032】
電荷輸送層14において用いられるビフェニル誘導体としては、一般式(1)〜一般式(8)で表される「ADD−1」〜「ADD−8」の化合物又はその誘導体であることが好ましい。
【0041】
ビフェニル誘導体において、バインダー樹脂の機能を効果的に発揮することができる。すなわち、ビフェニル誘導体を用いると、バインダー樹脂と選択的に相溶することにより、電子写真感光体の優れた耐摩耗性や電気特性を保持しつつ、電子写真感光体の優れた耐クラック性を発揮することができる。
【0042】
ビフェニル誘導体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0043】
正孔輸送剤は、スチリルトリアリールアミン構造を有する化合物(以下、スチリルトリアリールアミン誘導体と称する。)を含むことが好ましい。
【0044】
スチリルトリアリールアミン誘導体において、アリールアミン基が存在することから、電気特性、特に、残留電位の抑制に効果的に寄与することができる。このような効果が得られる理由としては、下記の様に推測できる。
【0045】
スチリルトリアリールアミン誘導体において、アリールアミン基が存在することから、イオン化ポテンシャルを低下させることもできる。これにより、スチリルトリアリールアミン誘導体と電荷発生剤との間における電荷授受のエネルギーギャップが小さくなり、電荷輸送効率を効果的に向上させることができる。特に、電荷発生層と電荷輸送層とが含まれている積層型電子写真感光体において、電荷輸送層に含有される正孔輸送剤として、スチリルトリアリールアミン誘導体を使用すると、これらの層界面における電荷の移動を効果的に向上させることができる。従って、スチリルトリアリールアミン誘導体において、アリールアミン基が存在することにより、電子写真感光体の優れた電気特性を実現することができる。
【0046】
そして、スチリルトリアリールアミン誘導体は、アリールアミン基が存在することから、溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0047】
スチリルトリアリールアミン誘導体を含む正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層14に含まれるバインダー樹脂100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下であることが好ましく、30質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
スチリルトリアリールアミン誘導体を含む正孔輸送剤の含有量をこのような範囲にすることにより、電荷輸送層14中におけるスチリルトリアリールアミン誘導体の分散性をより向上させて、更に、電子写真感光体は優れた電気特性を得ることができる。スチリルトリアリールアミン誘導体を含む正孔輸送剤の含有量が30質量部未満であると、電子写真感光体は十分な電気特性を得ることが困難となることがある。一方、スチリルトリアリールアミン誘導体を含む正孔輸送剤の含有量が60質量部を超えると、電荷輸送層14中でのスチリルトリアリールアミン誘導体の分散性が低下して、電子写真感光体の電荷輸送効率が低下することがある。
【0049】
以下に、スチリルトリアリールアミン誘導体を含む正孔輸送剤の具体例を示す。具体例としては、一般式(9)〜一般式(12)で表される正孔輸送剤が挙げられる。
【0050】
【化9】
一般式(9)において、R
1〜R
7はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又は炭素数1〜8のフェニル基であり、又は、R
3〜R
7のうち隣接したいずれか二つは、炭素数4〜6のアルキル環若しくはベンゼン環を形成する。dは、0〜5の整数である。
【0051】
【化10】
一般式(10)中、R
8〜R
15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のフェニル基であり、又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり、eは、0〜5の整数であり、fは、0〜4の整数であり、nは、0又は1の整数である。
【0052】
【化11】
一般式(11)中、R
16〜R
22はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のフェニル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基であり、gは、0〜4の整数であり、hは、0〜5の整数である。
【0053】
【化12】
一般式(12)中、Ar
1は、アリール基、又は共役ニ重結合を有する複素環基であり、Ar
2は、アリール基であり、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフェノキシ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基からなる群より選択される1以上の基に置換されてもよい。
【0054】
また、電荷輸送層14は、スチリルトリアリールアミン誘導体とは異なる正孔輸送剤をさらに含有してもよい。
【0055】
正孔輸送剤として代表的な含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、スチリルトリアリールアミン系化合物(スチリルトリアリールアミン誘導体を除く)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、又はトリアゾール系化合物が挙げられる。なお、正孔輸送剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
上述したように、スチリルトリアリールアミン誘導体とは異なる正孔輸送剤をさらに含有する場合、この正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
【0057】
本実施形態の積層型電子写真感光体10において、積層型感光層12の電荷輸送層14はシリカ粒子を含有する。シリカ粒子と、他の粒子(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモン若しくはタンタルをドープした酸化スズ、又は酸化ジルコニウム)とを比較すると、シリカ粒子は、感光層の耐摩耗性を向上させることができる。更に、シリカ粒子は、容易に表面処理されるとともに、製造コストに優れ、粒子の調製が容易である。なお、シリカ粒子は、シリカ微粒子であることが好ましい。
【0058】
シリカ微粒子の平均一次粒子径は、7nm以上50nm以下であることが好ましい。シリカ微粒子の粒子径が7nm未満であると、電子写真感光体の耐摩耗性に劣ったり感光層表面の異物が発生したりする場合がある。一方、シリカ微粒子の粒子径が50nmを超えると、バインダー樹脂中のシリカ微粒子の分散性が低下する場合がある。
【0059】
積層型電子写真感光体10において、シリカ微粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0060】
シリカ微粒子は、電子写真感光体の耐摩耗性及び耐クラック性を向上させるために、表面処理剤で表面処理される。シリカ微粒子の表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、N−メチル−ヘキサメチルジシラザン、N−エチル−ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチル−N−プロピルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、又はポリジメチルシロキサンが挙げられる。シリカ微粒子表面の水酸基との反応性が良好であるために、シリカ微粒子の表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザンを用いることが特に好ましい。表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザンを用いると、シリカ微粒子表面の水酸基との反応性が良好であるため、シリカ微粒子表面の水酸基が少なくなる。その結果、水分(湿度)による感光体の電気特性の低下を抑制することができる。
【0061】
さらに、表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザンを用いることにより、シリカ微粒子表面から表面処理剤の遊離を抑制することができる。このため、遊離された表面処理剤が電荷のトラップとなることによる感度の繰り返し特性の低下を抑制することができる。また、シリカ微粒子及びビフェニル誘導体が、電荷輸送層14に含まれることにより、電子写真感光体の耐摩耗性及び電気特性を向上させることができる。
【0062】
電荷輸送層14に含まれるバインダー樹脂としては、公知のポリカーボネート樹脂が挙げられる。更に、電荷輸送層14に含まれるバインダー樹脂としては、一般式(13)〜一般式(15)で表される「Resin−1」〜「Resin−3」が挙げられる。
【0066】
電荷輸送層14において用いられるバインダー樹脂とは異なる樹脂を用いてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂(一般式(13)〜一般式(15)の骨格を有するポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体樹脂、アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、又はポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、又はメラミン樹脂)、又は光硬化性樹脂(例えば、エポキシアクリレート樹脂、又はウレタン−アクリレート樹脂)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0067】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、40000以上であることが好ましく、40000以上60000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が低すぎると、バインダー樹脂の耐摩耗性を高めることができず、電荷輸送層が摩耗しやすくなる。また、バインダー樹脂の粘度平均分子量が高すぎると、非ハロゲン系極性及び無極性混合溶剤に溶解しにくくなる。その結果、電荷輸送層用塗布液を調製しにくくなる等、好適な電荷輸送層を形成することが困難になる。
【0068】
電荷輸送層14は、正孔輸送剤に加えて電子アクセプター化合物を用いてもよい。電子アクセプター化合物としては、例えば、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。これらの電子アクセプター化合物は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0069】
上述した電子アクセプター化合物を含有する場合、電子アクセプター化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0070】
電荷輸送層14は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、チオエーテル系化合物、又はホスファイト系化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール系化合物又はヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0071】
電荷輸送層14中の酸化防止剤の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。酸化防止剤の添加量がこのような範囲内であると、電子写真感光体が酸化されることによる電子写真感光体の電気特性の低下を抑制できる。
【0072】
電荷輸送層14の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0073】
[積層型電子写真感光体の製造方法]
例えば、以下のような手順で、積層型電子写真感光体10を製造することができる。まず、溶剤に、電荷発生剤、及びベース樹脂等を混合して、電荷発生層用塗布液を調製する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、又はローラー塗布法のような塗布法を用いて導電性基材(例えば、アルミニウム素管)上に塗布する。その後、熱風乾燥して、所定の膜厚の電荷発生層13を形成することができる。
【0074】
塗布液を調製するための溶剤として、種々の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族系炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族系炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、又は1,4−ジオキサン)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸メチル、又は酢酸エチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
次に、上述した溶剤にビフェニル誘導体、正孔輸送剤、バインダー樹脂、シリカ微粒子、及び電子アクセプター化合物を分散させて電荷輸送層用塗布液を調製する。次に、予め形成された電荷発生層13上に電荷輸送層用塗布液を塗布し、乾燥させる。なお、電荷輸送層用塗布液の作製方法、塗布方法、及び乾燥方法については、電荷発生層13の電荷発生層用塗布液の作製方法、塗布方法、及び乾燥方法と同様に行うことができる。
【0076】
また、シリカ微粒子は、公知の方法で分散装置を用いて電荷輸送層14中に分散させることができる。このような分散装置としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、又は超音波分散装置が挙げられる。これらの分散装置の中でも、超音波分散装置を用いると、シリカ微粒子を良好に分散させることができる。
【0077】
≪単層型電子写真感光体20≫
図2は、本実施形態における単層型電子写真感光体20の構造を示す概略断面図である。例えば、
図2(a)に示すように、本発明の単層型電子写真感光体20は、基体21と、単一層である感光層22とを備える。感光層22は、基体21の上に形成されている。
【0078】
単層型電子写真感光体20において、
図2(b)に示すように、基体21と感光層22との間に、中間層23が設けられてもよい。
【0079】
基体21及び感光層22(電荷発生剤、電子アクセプター化合物、正孔輸送剤、バインダー樹脂、ビフェニル誘導体、及びシリカ微粒子)として、基体11及び感光層12に含まれる材料を用いることができる。
【0080】
また、単層型電子写真感光体20において、電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、ビフェニル誘導体、電子アクセプター化合物、及びシリカ微粒子の各含有量は、特に限定されない。具体的には、例えば、電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上40質量部以下であることが好ましい。正孔輸送剤としてのスチリルトリアリールアミン誘導体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、30質量部以上60質量部以下であることが好ましい。ビフェニル誘導体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。電子アクセプター化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であることが好ましい。シリカ微粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0081】
感光層22の厚さは、感光層22として十分に機能することができれば、特に限定されない。具体的には、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0082】
[単層型電子写真感光体の製造方法]
単層型電子写真感光体20は、例えば、以下のように製造することができる。溶剤に、電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、ビフェニル誘導体、及びシリカ微粒子等を混合して、感光層用塗布液を調製する。このようにして得られた感光層用塗布液を、塗布法を用いて導電性基体上に塗布する。その後、熱風乾燥して、所定の膜厚の感光層22を形成することができる。なお、感光層用塗布液の作製方法、塗布方法、及び乾燥方法については、積層型電子写真感光体10の電荷発生層13の電荷発生層用塗布液の作製方法、塗布方法、及び乾燥方法と同様に行うことができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0084】
<感光体A−1の作製方法>
はじめに、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製、「SMT−A」、数平均一次粒子径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナ及びシリカで表面処理した後、ビーズミルを用いて、湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理したものを準備した。次いで、酸化チタン2質量部と、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610四次元共重合ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アラミンCM8000」)1質量部とを、メタノール10質量部、ブタノール1質量部、及びトルエン1質量部を含む溶剤に対して添加した。次いで、これらをビーズミルを用いて5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
【0085】
得られた中間層用塗布液を目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、直径30mm、長さ246mmのドラム状のアルミニウム基体(支持基体)の表面に中間層用塗布液をディップコート法により塗布した。続いて、中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、基体上に膜厚2μmの中間層を形成した。
【0086】
Cu−Kα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に1つのメインピークを有する化学式(16)で表されるチタニルフタロシアニン1.5質量部と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)1質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部及びテトラヒドロフラン40質量部を含む溶剤に対して添加した。次いで、これらをビーズミルを用いて2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を調製した。次いで、得られたろ過液を、上述のようにして形成された中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0087】
【化16】
【0088】
正孔輸送剤としての化学式(17)で表されるCTM−1を42質量部と、添加剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバジャパン株式会社製「イルガノックス1010」)2質量部と、バインダー樹脂としての化学式(18)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−1、粘度平均分子量51000)100質量部と、ビフェニル誘導体としての化学式(19)で表されるADD−1 5質量部と、ヘキサメチレンジシラザンで表面処理された平均一次粒子径12nmのシリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「RX200」)5質量部とを、テトラヒドロフラン350質量部及びトルエン350質量部を含む溶剤に対して添加した。これを、循環型超音波分散装置を用いて、12時間混合し、各成分を溶剤中に分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様の操作を行って、電荷発生層上に塗布した。その後、120℃で40分間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。その結果、感光体A−1(積層型電子写真感光体)を作製した。
【0089】
【化17】
【0090】
【化18】
【0091】
【化19】
【0092】
(感光体A−2の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(20)で表されるCTM−2に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−2を作製した。
【0093】
【化20】
【0094】
(感光体A−3の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(21)で表されるCTM−3に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−3を作製した。
【0095】
【化21】
【0096】
(感光体A−4の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(22)で表されるCTM−4に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−4を作製した。
【0097】
【化22】
【0098】
(感光体A−5の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(23)で表されるCTM−5に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−5を作製した。
【0099】
【化23】
【0100】
(感光体A−6の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(24)で表されるCTM−6に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−6を作製した。
【0101】
【化24】
【0102】
(感光体A−7の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(25)で表されるCTM−7に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−7を作製した。
【0103】
【化25】
【0104】
(感光体A−8の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(26)で表されるCTM−8に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−8を作製した。
【0105】
【化26】
【0106】
(感光体A−9の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(27)で表されるCTM−9に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−9を作製した。
【0107】
【化27】
【0108】
(感光体A−10の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(28)で表されるCTM−10に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−10を作製した。
【0109】
【化28】
【0110】
(感光体A−11の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(29)で表されるCTM−11に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−11を作製した。
【0111】
【化29】
【0112】
(感光体A−12の作製方法)
正孔輸送剤としてCTM−1を化学式(30)で表されるCTM−12に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−12を作製した。
【0113】
【化30】
【0114】
(感光体A−13の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(31)で表されるADD−2に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−13を作製した。
【0115】
【化31】
【0116】
(感光体A−14の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(32)で表されるADD−3に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−14を作製した。
【0117】
【化32】
【0118】
(感光体A−15の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(33)で表されるADD−4に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−15を作製した。
【0119】
【化33】
【0120】
(感光体A−16の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(34)で表されるADD−5に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−16を作製した。
【0121】
【化34】
【0122】
(感光体A−17の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(35)で表されるADD−6に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−17を作製した。
【0123】
【化35】
【0124】
(感光体A−18の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(36)で表されるADD−7に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−18を作製した。
【0125】
【化36】
【0126】
(感光体A−19の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(37)で表されるADD−8に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−19を作製した。
【0127】
【化37】
【0128】
(感光体A−20の作製方法)
バインダー樹脂としてResin−1を化学式(38)で表されるResin−2(粘度平均分子量50500)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−20を作製した。
【0129】
【化38】
【0130】
(感光体A−21の作製方法)
バインダー樹脂としてResin−1を化学式(39)で表されるResin−3(粘度平均分子量50000)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−21を作製した。
【0131】
【化39】
【0132】
(感光体A−22の作製方法)
バインダー樹脂としてResin−1の粘度平均分子量を51000から40000に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−22を作製した。
【0133】
(感光体A−23の作製方法)
バインダー樹脂としてResin−1の粘度平均分子量を51000から32500に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−23を作製した。
【0134】
(感光体A−24の作製方法)
シリカ微粒子の種類をRX200からRX300(平均1次粒子径7nm)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−24を作製した。
【0135】
(感光体A−25の作製方法)
シリカ微粒子の種類をRX200からNAX50(平均1次粒子径50nm)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−25を作製した。
【0136】
(感光体A−26の作製方法)
CTM−1の添加量を42質量部から50質量部に代え、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ微粒子(RX200)からジメチルジクロロシランで表面処理されたシリカ微粒子(R974)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−26を作製した。
【0137】
(感光体A−27の作製方法)
CTM−1の添加量を42質量部から50質量部に代え、表面処理されたシリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカ微粒子(RX200)からポリジメチルシロキサンで処理されたシリカ微粒子(RY200)に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−27を作製した。
【0138】
(感光体A−28の作製方法)
シリカ微粒子の添加量を5質量部から0.5質量部に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−28を作製した。
【0139】
(感光体A−29の作製方法)
シリカ微粒子の添加量を5質量部から2質量部に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−29を作製した。
【0140】
(感光体A−30の作製方法)
シリカ微粒子の添加量を5質量部から10質量部に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−30を作製した。
【0141】
(感光体A−31の作製方法)
シリカ微粒子の添加量を5質量部から15質量部に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体A−31を作製した。
【0142】
(感光体B−1の作製方法)
ビフェニル誘導体及びシリカ微粒子を用いなかったこと以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−1を作製した。
【0143】
(感光体B−2の作製方法)
シリカ微粒子を用いなかったこと以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−2を作製した。
【0144】
(感光体B−3の作製方法)
ビフェニル誘導体を用いなかったこと以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−3を作製した。
【0145】
(感光体B−4の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(40)で表されるADD−9に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−4を作製した。
【0146】
【化40】
【0147】
(感光体B−5の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(41)で表されるADD−10に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−5を作製した。
【0148】
【化41】
【0149】
(感光体B−6の作製方法)
ビフェニル誘導体としてADD−1を化学式(42)で表されるADD−11に代えた以外は、感光体A−1と同様の操作を行って、感光体B−6を作製した。
【0150】
【化42】
【0151】
表1は、感光体A−1〜A−31及び感光体B−1〜B−6の電荷輸送層に含有される各材料を示す。
【0152】
【表1】
【0153】
<電子写真感光体の性能評価>
(1)電気特性評価
感光体A−1〜A−31及び感光体B−1〜B−6のうちの何れかを、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、回転数を31rpmとし、−800Vになるように帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:1.0μJ/cm
2)をハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出し、積層型電子写真感光体の表面に照射した。単色光の照射後、50msecが経過した後の表面電位を測定し、この表面電位を残留電位(V
L)とした。測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHとした。V
Lが−120V以上であると、各感光体の電気特性は良好であり、V
Lが−100V以上であると、各感光体の電気特性は特に良好であった。
【0154】
(2)耐クラック性評価
感光体A−1〜A−31及び感光体B−1〜B−6のうちの何れかの表面における10箇所に、油脂(オレイン酸トリグリセリド)を付着させて、2日間放置した。測定環境は、温度23℃及び湿度50%RHとした。その後、光学顕微鏡を用いて観察し、クラックの発生具合を確認した。下記基準に従って、各感光体の耐クラック性を評価した。
非常に良い(◎):クラック発生箇所が0箇所である。
良い(○):クラック発生箇所が1箇所以上3箇所以下である。
普通(△):クラック発生箇所が4箇所以上5箇所以下である。
悪い(×):クラック発生箇所が6箇所以上である。
【0155】
(3)耐摩耗性評価
感光体A−1〜A−31及び感光体B−1〜B−6のうちの何れかの作製にて調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径:78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ:0.3mm)に塗布した。これを、120℃で40分間乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層が形成された摩耗評価試験用のシートを作製した。
【0156】
このポリプロピレンシートから、電荷輸送層を剥離し、ウィールS−36(テーバー社製)に貼り付け、サンプルを作製した。作製したサンプルをロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)にセットし、摩耗輪CS−10(テーバー社製)を用いて、荷重500gfかつ回転速度60rpmの条件で1000回転させ、耐摩耗性評価試験を実施した。耐摩耗性評価試験前後のサンプルの質量変化である摩耗減量を測定し、この摩耗減量に基づいて、各感光体の耐摩耗性を評価した。摩耗減量が6.0mgを超えると、各感光体の耐摩耗性が不十分であったが、摩耗減量が6.0mg以下であると、各感光体の耐摩耗性が良好であった。
【0157】
(4)液ライフ後(製造後時間経過した塗布液を用いた)感光体の耐摩耗性評価
電荷輸送層用塗布液の液ライフを加速するために、ロールミルを用いて電荷輸送層用塗布液を循環した。塗布液作成30日後の電荷輸送層用塗布液をドラム化して、液ライフ後の電荷輸送層用塗布液を調製した。液ライフ後の電荷輸送層用塗布液を用いて、液ライフ前の摩耗評価試験用のシートと同様の操作を行って感光体A−2〜A−31及び感光体B−1〜B−6の液ライフ後の摩耗評価試験用のシートを作製した。液ライフ後の摩耗評価試験用シートを用いて、上述の液ライフ前の耐摩耗性評価と同様に評価した。測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHとした。摩耗減量が6.5mg以上であると、各感光体の液ライフ後の耐摩耗性が不十分であったが、摩耗減量が6.5mg未満であると、各感光体の液ライフ後の耐摩耗性が良好であった。表2に各感光体の液ライフ後の耐摩耗性の評価結果を示す。
【0158】
表2は、感光体A−1〜A−31及び感光体B−1〜B−6の電気特性評価、耐クラック性評価、液ライフ前の耐摩耗性評価、及び液ライフ後の耐摩耗性評価の結果を示す。
【0159】
【表2】
【0160】
本発明に係る電子写真感光体においては、電気特性評価における残留電位が低く、更に耐摩耗試験において液ライフ前及び液ライフ後の摩耗減量が少なかった。従って、本発明に係る電子写真感光体は、優れた電気的特性を維持しつつ、耐摩耗性に優れることが明らかである。