(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記平滑コンデンサへ流入する電流を指令する値である電流指令値に、前記DCリンク電圧に応じて求められる0以上1以下の係数を乗算することにより、前記AC−DC変換回路の出力電力を抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
前記制御装置は、前記DCリンク電圧を指令する値である電圧指令値に、前記DCリンク電圧に応じて求められる0以上1以下の係数を乗算することにより、前記AC−DC変換回路の出力電力を抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、家庭用電源や商用電源等の交流電源から入力される交流電力を直流電力へ変換して出力するものであり、二次電池への電力の供給に用いられる。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置は、AC−DC変換回路100と、AC−DC変換回路100の出力端に並列接続される平滑コンデンサ150と、制御装置300とにより構成される。AC−DC変換回路100の入力端には交流電源400が接続され、AC−DC変換回路100の出力端には、DC−DC変換回路200の入力端が接続される。一方、DC−DC変換回路200の出力端は、二次電池500に接続される。
【0014】
AC−DC変換回路100は、ダイオードブリッジ回路10と、第1平滑リアクトル11と、ハーフブリッジ回路12とにより構成されている。交流電源400は、AC−DC変換回路100の入力端を経て、ダイオードブリッジ回路10に接続されている。
【0015】
ダイオードブリッジ回路10は、4個のダイオードD1〜D4を備えている。ダイオードD1のカソード及びダイオードD3のカソードは、第1配線15に接続されている。ダイオードD1のアノードは、交流電源400の第1端及びダイオードD2のカソードに接続されており、ダイオードD3のアノードは、交流電源400の第2端及びダイオードD4のカソードに接続されている。ダイオードD2のアノード及びダイオードD4のアノードは、第2配線16に接続されている。そして、第1配線15及び第2配線16により、ダイオードブリッジ回路10と、ハーフブリッジ回路12が接続されている。なお、ダイオードブリッジ回路10とハーフブリッジ回路12の間の第1配線15には、第1平滑リアクトル11が設けられている。
【0016】
ハーフブリッジ回路12は、ダイオードD5とMOSFETである開閉素子Q1とを備えている。ダイオードD5のカソードは、AC−DC変換回路100の高圧側出力端に接続されており、ダイオードD5のアノードは、第1配線15及び開閉素子Q1のドレイン端子に接続されている。一方、開閉素子Q1のソース端子は、第2配線16に接続されている。そして、第2配線16は、AC−DC変換回路100の低圧側出力端に接続されている。なお、開閉素子Q1は、逆方向に並列接続された寄生ダイオードを備えている。また、ダイオードD5は、順方向へ電流を流し、逆方向への電流を遮断するため、順方向電流が流れる際にONとなり、逆方向電流が流れる際にOFFとなるスイッチング素子と見なすことができる。
【0017】
DC−DC変換回路200は、ブリッジ回路20と、第1コイル21aと第2コイル21bとにより構成されるトランス21と、ダイオードブリッジ回路22と、第2平滑リアクトル23とを備えている。
【0018】
ブリッジ回路20は、MOSFETである開閉素子Q2〜Q5を備えている。開閉素子Q2及び開閉素子Q4は、高圧側である上アームに設けられており、開閉素子Q3及び開閉素子Q5は、低圧側である下アームに設けられている。開閉素子Q2のドレイン端子は高圧側配線24に接続されており、ソース端子は開閉素子Q3のドレイン端子及び第1コイル21aの一端に接続されている。開閉素子Q4のドレイン端子は高圧側配線24に接続されており、ソース端子は開閉素子Q5のドレイン端子及び第1コイル21aの他端に接続されている。開閉素子Q3のソース端子及び開閉素子Q5のソース端子は、共に低圧側配線25に接続されている。高圧側配線24及び低圧側配線25は、それぞれ、AC−DC変換回路100の高圧側出力端及び低圧側出力端に接続されている。なお、開閉素子Q2〜Q5は、それぞれ、逆方向に並列接続された寄生ダイオードを備えている。
【0019】
ダイオードブリッジ回路22は、ダイオードD6〜D9を備えている。ダイオードD6及びダイオードD8は、高圧側である上アームに設けられており、ダイオードD7及びダイオードD9は、低圧側である下アームに設けられている。ダイオードD6のカソードは高圧側配線26に接続されており、アノードはダイオードD7のカソード及び第2コイル21bの一端に接続されている。ダイオードD8のカソードは高圧側配線26に接続されており、アノードはダイオードD9のカソード及び第2コイル21bの他端に接続されている。ダイオードD7のアノード及びダイオードD9のアノードは、共に低圧側配線27に接続されている。高圧側配線26は、第2平滑リアクトル23を介し、出力端を経て二次電池500の正極に接続されており、低圧側配線27は、出力端を経て二次電池500の負極に接続されている。
【0020】
本実施形態に係る電力変換装置は、第1電圧検出器31と、入力電流検出手段として機能する電流検出器32と、DCリンク電圧検出手段として機能する第2電圧検出器33とを備えている。
【0021】
第1電圧検出器31は、AC−DC変換回路100の入力端に並列接続されており、交流電源400から入力される交流電圧である入力電圧Vacを検出する。電流検出器32は、ダイオードブリッジ回路10とハーフブリッジ回路12との間の第2配線16に設けられており、ダイオードブリッジ回路10からハーフブリッジ回路12を経て、平滑コンデンサ150へ流入する電流値である入力電流iLを検出する。第2電圧検出器33は、平滑コンデンサ150に並列接続されており、AC−DC変換回路100から出力され、平滑コンデンサ150に印加される電圧であるDCリンク電圧Vcを検出する。
【0022】
制御装置300は、DCリンク電圧制御部34と、係数算出部35とを備えている。制御装置300には、計測された入力電圧Vac、入力電流iL、DCリンク電圧Vcが入力される。また、DCリンク電圧Vcを、平滑コンデンサ150の耐圧値よりも低い所定の電圧値に維持するためのDCリンク電圧指令値Vc*が、入力、若しくは、制御装置300が備えるメモリから読み出される。係数算出部35は、DCリンク電圧Vcを用いて、DCリンク電圧Vcの制御である過電圧垂下制御に用いる係数kを算出し、DCリンク電圧制御部34に入力する。DCリンク電圧制御部34は、入力電圧Vac、入力電流iL、DCリンク電圧Vc、DCリンク電圧指令値Vc*、係数kを用いて演算を行ってPWM信号を生成し、開閉素子Q1にPWM信号を送信する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る電力変換装置において、制御装置300が実行する制御の制御ブロック図である。
【0024】
まず、DCリンク電圧制御部34は、DCリンク電圧指令値Vc*からDCリンク電圧Vcを減算し、PI制御器に入力することにより電流指令最大値IL*を得る。一方、係数算出部35は、入力されたDCリンク電圧Vcに基づいて、0以上1以下の係数kを算出し、算出された係数kをDCリンク電圧制御部34へ出力する。そして、DCリンク電圧制御部34において、電流指令最大値IL*に係数kを乗算することにより過電圧垂下制御を行い、補正電流指令最大値IL*’を得る。
【0025】
また、DCリンク電圧制御部34は、入力電圧Vacの位相を検出して絶対値処理を行うことにより、位相絶対値|sinθ|を得る。そして、補正電流指令最大値IL*’と位相絶対値|sinθ|とを乗算することで、電流指令値|iL*’|を得る。
【0026】
次に、入力された入力電流iLに絶対値処理を行い入力電流絶対値|iL|を得て、電流指令値|iL*’|と入力電流絶対値|iL|との偏差をとり、入力電流偏差diLを得る。得られた入力電流偏差diLをPI制御器に入力して入力電圧指令値|Vin*|を得ることにより、DCリンク電圧Vcのフィードバック制御を、入力電流iLのフィードバック制御をマイナーループ制御として備える電圧フィードバック制御とする。そして、PI制御器から出力された入力電圧指令値|Vin*|と電源電圧絶対値|Vac|との偏差を取ってDCリンク電圧Vcで除算することにより、必要なduty比を得る。そして、得られたduty比に基づいてPWM信号を生成することにより、開閉素子Q1へON/OFF信号を出力する。
【0027】
ここで、過電圧垂下制御に用いる係数kについて説明する。係数kは、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1以下の場合には1である。DCリンク電圧Vcが第1所定値V1から第2所定値V2へと上昇するのに伴い、係数kを1から0へと直線的に単調減少させる。そして、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2以上の場合には、係数kを0とする。すなわち、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2以上の場合には電流指令値|iL*’|は0となり、AC−DC変換回路100の出力電力が制御範囲の最小値となる。なお、第1所定値V1は、交流電源400が定常状態である場合のDCリンク電圧Vcの値にリプル電圧のピーク値を加算した値よりも、大きい値と設定されている。一方、第2所定値V2は、平滑コンデンサ150の耐圧よりも小さい値と設定されている。
【0028】
図3は、DC−DC変換回路200の出力端に接続される二次電池500が取り替えられ、DC−DC変換回路200の出力が半減した場合に、本実施形態に係る制御を行った場合の入力電圧Vac、補正電流指令最大値IL*’、交流入力電流Iac、DC−DCコンバータ出力電力Pout、DCリンク電圧Vcを示している。一方、
図4は、係数算出部35に係る制御を行わなかった場合の入力電圧Vac、電流指令最大値IL*、交流入力電流Iac、DC−DCコンバータ出力電力Pout、DCリンク電圧Vcを示している。なお、
図3において、比較のために電流指令最大値IL*も示している。
【0029】
DC−DCコンバータの出力が低下することにより、DCリンク電圧Vcの上昇が開始する。そして、
図3において、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1以上となれば、過電圧垂下制御が行われ、補正電流指令最大値IL*’は、過電圧垂下制御が行われない場合の電流指令最大値IL*よりも小さくなる。この制御により、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2以上となることが抑制される。
【0030】
一方、
図4では、過電圧垂下制御が行われないため、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1以上である場合において、電流指令最大値IL*の減少幅は小さくなる。したがって、AC−DC変換回路100の出力電力は抑制しきれず、それに伴い、DCリンク電圧Vcは、第2所定値V2以上となる。
【0031】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、以下の効果を奏する。
【0032】
・交流電源400から入力される電圧が上昇した場合や、接続される電気負荷がより軽い負荷へと変化した場合等において、DCリンク電圧Vcが上昇方向へ変位したとしても、DCリンク電圧Vcに基づいてAC−DC変換回路100の出力電圧を抑制しているため、DCリンク電圧Vcを第2所定値V2よりも小さい値へ収束させることができる。したがって、平滑コンデンサ150の耐圧は、第2所定値V2よりも大きい値に対する耐圧とすればよく、交流電源400のから入力される電圧が上昇した場合や、出力端に接続される電気負荷がより軽い負荷へと変化した場合の、DCリンク電圧Vcの上昇に対応する耐圧とする必要が生じない。ゆえに、平滑コンデンサ150の容量を低減することができる。
【0033】
・リプル電圧を考慮せずに第1所定値V1を定めた場合、交流電源400が定常状態であっても、リプル電圧の影響によりDCリンク電圧Vcが上昇し、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1よりも大きくなる場合がある。この場合には、交流電源400が定常状態であるにも係わらずAC−DC変換回路100の出力を抑制する制御が行われるため、AC−DC変換回路100による電力の供給効率が低下する。上記構成により、交流電源400が定常状態である場合には、リプル電圧の影響が生じたとしても、AC−DC変換回路100の出力を抑制する制御は行われないため、AC−DC変換回路100の電力の供給効率をより高めることができる。
【0034】
・係数kを連続的に変化させることにより、補正電流指令最大値IL*’を連続的に変化させることができる。これにより、DCリンク電圧Vcが上昇方向へ変化した場合には、補正電流指令最大値IL*’が減少し、DCリンク電圧Vcが低下方向へ変化した場合には、補正電流指令最大値IL*’が増加することとなる。したがって、DCリンク電圧Vcを補正電流指令最大値IL*’に対応した値へと収束させることができ、DCリンク電圧Vcの発振を防ぐことができる。
【0035】
<第2実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、回路構成は第1実施形態に係る電力変換装置と共通しており、第1実施形態とは、DCリンク電圧制御部34が行う制御が一部異なっている。
【0036】
図5は、本実施形態に係る電力変換装置において、制御装置300が実行する制御の制御ブロック図である。
【0037】
まず、DCリンク電圧制御部34は、DCリンク電圧指令値Vc*からDCリンク電圧Vcを減算し、PI制御器に入力することにより電流指令最大値IL*を得る。一方、係数算出部35は、入力されたDCリンク電圧Vcに基づいて、0以上1以下の係数kを算出し、算出された係数kをDCリンク電圧制御部34へ出力する。そして、DCリンク電圧制御部34において、電流指令最大値IL*に係数kを乗算して過電圧垂下制御を行い、補正電流指令最大値IL*’を得る。
【0038】
また、DCリンク電圧制御部34は、入力電圧Vacの位相を検出して絶対値処理を行うことにより、位相絶対値|sinθ|を得る。そして、補正電流指令最大値IL*’と位相絶対値|sinθ|とを乗算することで、電流指令値|iL*’|を得る。次に、入力された入力電流iLに絶対値処理を行い入力電流絶対値|iL|を得て、電流指令値|iL*’|と入力電流絶対値|iL|との偏差をとり、入力電流偏差diLを得る。そして、入力電流偏差diLをピーク電流制御器に入力することにより必要なduty比を得て、得られたduty比に基づいてPWM信号を生成することにより、開閉素子Q1へON/OFF信号を出力する。
【0039】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に準ずる効果を奏する。
【0040】
<第3実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、回路構成は第1実施形態に係る電力変換装置と共通しており、第1実施形態とは、DCリンク電圧制御部34が行う制御が一部異なっている。
【0041】
図6は、本実施形態に係る電力変換装置において、制御装置300が実行する制御の制御ブロック図である。
【0042】
まず、DCリンク電圧制御部34は、DCリンク電圧指令値Vc*からDCリンク電圧Vcを減算し、PI制御器に入力することにより電流指令最大値IL*を得て、得られた電流指令最大値IL*をリミッタに入力する。リミッタは、電流指令最大値IL*が、所定の上限値以下であり、且つ、所定の下限値以上であるかを判定する。そして、電流指令最大値IL*が所定の上限値以上であれば、電流指令最大値IL*を所定の上限値へと変更し、所定の下限値以下であれば、電流指令最大値IL*を所定の下限値へと変更する。一方、係数算出部35は、入力されたDCリンク電圧Vcに基づいて、0以上1以下の係数kを算出し、算出された係数kをDCリンク電圧制御部34へ出力する。そして、DCリンク電圧制御部34において、電流指令最大値IL*に係数kを乗算して過電圧垂下制御を行い、補正電流指令最大値IL*’を得る。
【0043】
また、DCリンク電圧制御部34は、入力電圧Vacの位相を検出して絶対値処理を行うことにより、位相絶対値|sinθ|を得る。そして、補正電流指令最大値IL*’と位相絶対値|sinθ|とを乗算することで、電流指令値|iL*’|を得る。次に、入力された入力電流iLに絶対値処理を行い入力電流絶対値|iL|を得て、電流指令値|iL*’|と入力電流絶対値|iL|との偏差をとり、入力電流偏差diLを得る。そして、入力電流偏差diLをピーク電流制御器に入力することにより必要なduty比を得て、得られたduty比に基づいてPWM信号を生成することにより、開閉素子Q1へON/OFF信号を出力する。
【0044】
なお、本実施形態では、電流指令最大値IL*をリミッタに入力し、リミッタを経た電流指令最大値IL*に対して係数kを乗算しているが、電流指令最大値IL*に係数kを乗算して補正電流指令最大値IL*’を得た後に、補正電流指令最大値IL*をリミッタへ入力するものとしてもよい。
【0045】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に準ずる効果を奏する。
【0046】
<第4実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に係る電力変換装置に対して、係数算出部35により係数kを求める処理が異なっている。
【0047】
図7は、本実施形態において、係数算出部35が係数kを算出する際に用いる、DCリンク電圧Vcと係数kの関係を示すグラフである。
【0048】
DCリンク電圧Vcが第1所定値V1未満の場合には、係数kは1である。DCリンク電圧Vcが、第1所定値V1から第2所定値V2へと上昇するのに伴い、係数kを、1から、1よりも小さく0よりも大きい値であるk2へと直線的に減少させる。そして、DCリンク電圧Vcが第2所定値以上の場合には、係数kを0とする。
【0049】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0050】
・係数kを1から0まで連続的に減少させた場合、係数kが0に近い値の場合、補正電流指令最大値IL*’の値が小さくなる。したがって、AC−DC変換回路100は、微小電流の出力にも対応可能なものとする必要が生ずる。本実施形態では、係数kを1からk1まで連続的に変化させているため、補正電流指令最大値IL*’は、0よりも大きく、k1×IL*よりも小さい値とならない。したがって、AC−DC変換回路100は微小電流の出力に対応する必要が生じないため、微小電流の出力に対応するための部員等を省略することができる。
【0051】
<第5実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に係る電力変換装置に対して、係数算出部35により係数kを求める処理が異なっている。
【0052】
図8は、本実施形態において、係数算出部35が係数kを算出する際に用いる、DCリンク電圧Vcと係数kの関係を示すグラフである。
【0053】
DCリンク電圧Vcが第1所定値V1未満の場合には、係数kは1である。DCリンク電圧Vcが、第1所定値V1から第2所定値V2へと上昇するのに伴い、係数kを、指数関数的に、又は、2次以上の多項式的に単調減少させる。すなわち、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kの減少量が大きくなっている。そして、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2以上の場合には、係数kを0とする。
【0054】
なお、係数kは、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、その減少量が大きくなればよいため、如何なる関数に基づいて係数kを算出するかは任意に設定することができる。また、上記第4実施形態と同様に、1よりも小さく0よりも大きい値であるk1を設け、DCリンク電圧Vcが、第1所定値V1から第2所定値V2へと上昇するのに伴い、係数kを、1からk1まで指数関数的に、又は、2次以上の多項式的に減少させるものとしてもよい。
【0055】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0056】
・平滑コンデンサ150として用いられるセラミックコンデンサ等は、印加される電圧が上昇するに伴い静電容量が低下する直流バイアス特性を有している。ここで、係数kを指数関数的に、又は、2次以上の多項式的に減少させると、係数kを直線的に変化させる場合と比べて、DCリンク電圧Vcが上昇した場合の出力電力の抑制量を大きくすることができる。したがって、平滑コンデンサ150が直流バイアス特性を持つものである場合に、係数kの変化により、静電容量の低下に伴う耐圧の低下を保障することができる。
【0057】
<第6実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に係る電力変換装置に対して、係数算出部35により係数kを求める処理が異なっている。
【0058】
図9は、本実施形態において、係数算出部35が係数kを算出する際に用いる、DCリンク電圧Vcと係数kの関係を示すグラフである。本実施形態では、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kを段階的に変化させている。
【0059】
DCリンク電圧Vcが第1所定値V1未満の場合には、係数kは1である。DCリンク電圧Vcが、第1所定値V1以上であり、且つ、第1所定値V1よりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVα未満の場合には、係数kを1よりも小さく0よりも大きい値であるk2とする。DCリンク電圧Vcが、Vα以上でありVαよりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVβ未満の場合には、係数kをk2よりも小さく0よりも大きい値であるk3とする。DCリンク電圧Vcが、Vβ以上でありVβよりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVγ未満の場合には、係数kをk3よりも小さく0よりも大きい値であるk4とする。DCリンク電圧Vcが、Vγ以上であり第2所定値未満の場合には、係数kをk4よりも小さく0よりも大きい値であるk5とする。そして、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2以上の場合には、係数kを0とする。
【0060】
なお、第1所定値V1から第2所定値V2にかけて、係数kを何段階で変化させるかは任意に設定可能である。各段階での係数kの変化幅、及び、DCリンク電圧Vcの幅は、同一でもよく、異なっていてもよい。また、DCリンク電圧Vcが上昇した場合の出力電力の抑制量を大きくするために、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kの変化幅を大きくしてもよい。
【0061】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0062】
・係数kを所定の関数に基づいて求める場合には、演算処理や、マッピング処理を行う必要があり、制御装置300の演算量が増加する。本実施形態に係る電力変換装置では、演算処理を減少させたりマッピング処理を省いたりすることができるため、制御装置300の処理負荷を低下させることができ、それに伴い、制御装置300が備えるメモリをより容量の小さなものとすることもできる。
【0063】
・DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kの減少幅を大きくすれば、第5実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に準ずる効果を奏するものとすることができる。
【0064】
<第7実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、上記各実施形態に係る電力変換装置に対して、係数算出部35により係数kを求める処理が異なっている。
【0065】
図10は、本実施形態において、係数算出部35が係数kを算出する際に用いる、DCリンク電圧Vcと係数kの関係を示すグラフである。本実施形態は、第6実施形態と同様に、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kを段階的に変化させるとともに、段階的に減少する場合と段階的に増加する場合との間にヒステリシスを設けている。
【0066】
DCリンク電圧Vcが第1所定値V1未満の場合には、係数kは1である。DCリンク電圧Vcが、第1所定値V1から、第1所定値V1よりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVα’へ上昇する場合には、係数kを1とする。DCリンク電圧Vcが、Vα’から、Vα’よりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVβ’へ上昇する場合には、係数kを1よりも小さく0よりも大きい値であるk2とする。DCリンク電圧Vcが、Vβ’から、Vβ’よりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVγ’へ上昇する場合には、係数kをk2よりも小さく0より大きい値であるk3とする。DCリンク電圧Vcが、Vγ’から、Vγ’よりも大きく第2所定値V2よりも小さい値であるVΔ’へ上昇する場合には、係数kをk3よりも小さく0よりも大きい値であるk4とする。DCリンク電圧Vcが、VΔ’から、第2所定値V2へ上昇する場合には、係数kをk4よりも小さく0よりも大きい値であるk5とする。そして、DCリンク電圧Vcが第2所定値V2よりも大きい場合には、係数kを0とする。
【0067】
一方、DCリンク電圧Vcが、第2所定値V2からVΔ’へ低下する場合には、係数kを0とする。DCリンク電圧Vcが、VΔ’からVγ’へ低下する場合には、係数kをk5とする。DCリンク電圧Vcが、Vγ’からVβ’へ低下する場合には、係数kをk4とする。DCリンク電圧Vcが、Vβ’からVα’へ低下する場合には、係数kをk3とする。DCリンク電圧Vcが、Vα’から第1所定値V1へ低下する場合には、係数kをk2とする。そして、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1よりも小さい場合には、係数kを1とする。
【0068】
なお、本実施形態においても、第6実施形態と同様に、第1所定値V1から第2所定値V2にかけて、係数kを何段階で変化させるかは任意に設定可能である。各段階での係数kの変化幅、及び、DCリンク電圧Vcの幅は、同一でもよく、異なっていてもよい。また、DCリンク電圧Vcが上昇した場合の出力電力の抑制量を大きくするために、DCリンク電圧Vcの上昇に伴い、係数kの変化幅を大きくしてもよい。
【0069】
本実施形態は、上記構成により、第6実施形態に係る電力変換装置が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0070】
・係数kを段階的に増減させる場合、DCリンク電圧Vcのわずかな変化に対して、係数kの段階的な増減が繰り返されてしまい、それに伴い、出力電力が変動するおそれがある。係数kを、段階的に減少する場合と段階的に増加する場合との間にヒステリシスを有するものとすることにより、係数kの段階的な増減の繰り返しを防ぐことができ、それにより、出力電力の変動を抑制することができる。
【0071】
<第8実施形態>
本実施形態に係る電力変換装置は、回路構成は第1実施形態に係る電力変換装置と共通しており、第1実施形態とは、DCリンク電圧制御部34が行う制御、及び、係数算出部35が行う係数kの算出方法が異なっている。
【0072】
図11は、本実施形態に係る電力変換装置において、制御装置300が実行する制御の制御ブロック図である。
【0073】
まず、係数算出部35が、入力されたDCリンク電圧Vcに基づいて、0よりも大きく1以下である係数kを算出し、算出された係数kをDCリンク電圧制御部34へ出力する。DCリンク電圧制御部34は、DCリンク電圧指令値Vc*に係数kを乗算することにより過電圧垂下制御を行い、補正DCリンク電圧指令値Vc*’を得る。そして、得られた補正DCリンク電圧指令値Vc*’からDCリンク電圧Vcを減算し、PI制御器に入力することにより補正電流指令最大値IL*’を得る。
【0074】
また、DCリンク電圧制御部34は、入力電圧Vacの位相を検出して絶対値処理を行うことにより、位相絶対値|sinθ|を得る。そして、補正電流指令最大値IL*’と位相絶対値|sinθ|とを乗算することで、電流指令値|iL*’|を得る。次に、入力された入力電流iLに絶対値処理を行い入力電流絶対値|iL|を得て、電流指令値|iL*’|と入力電流絶対値|iL|との偏差をとり、入力電流偏差diLを得る。得られた入力電流偏差diLをPI制御器に入力し、その出力である入力電圧指令値|Vin*|と電源電圧絶対値|Vac|との偏差を取ってDCリンク電圧Vcで除算することにより、必要なduty比を得る。そして、得られたduty比に基づいてPWM信号を生成することにより、開閉素子Q1へON/OFF信号を出力する。
【0075】
ここで、過電圧垂下制御に用いる係数kについて説明する。係数kは、DCリンク電圧Vcが第1所定値V1以下の場合には1である。DCリンク電圧Vcが第1所定値V1から第2所定値V2へと上昇するのに伴い、係数kを、1から、0よりも大きく1よりも小さい値であるk6へと直線的に減少させる。そして、DCリンク電圧Vcが0以上の場合には、係数kを0とする。なお、係数kは、指数関数的に、又は、2次以上の多項式的に単調減少させてもよく、段階的に変化させてもよい。
【0076】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置に準ずる効果を奏する。
【0077】
<第9実施形態>
図12は、本実施形態に係る電力変換回路の回路図を示している。本実施形態に係る電力変換装置は、第1実施形態に係る電力変換装置に対して、AC−DC変換回路100の構成が異なっている。
【0078】
AC−DC変換回路100は、第1リアクトル13aと第2リアクトル13bとにより構成される平滑リアクトル13と、ブリッジ回路14を備えている。交流電源400は、AC−DC変換回路100の入力端子を経て、第1リアクトル13a及び第2リアクトル13bに接続される。
【0079】
ブリッジ回路14は、ダイオードD5a、ダイオードD5b、MOSFETである開閉素子Q1a及び開閉素子Q1bを備えている。ダイオードD5a及びダイオードD5bは、高圧側である上アームに設けられており、開閉素子Q1a及び開閉素子Q1bは、低圧側である下アームに設けられている。ダイオードD5aのカソードは高圧側配線15Aに接続されており、アノードは開閉素子Q1aのドレイン端子及び第1リアクトル13aに接続されている。ダイオードD5bのカソードは高圧側配線15Aに接続されており、アノードは開閉素子Q1bのドレイン端子及び第2リアクトル13bに接続されている。そして、開閉素子Q1aのソース端子及び開閉素子Q1bのソース端子は、共に低圧側配線16Aに接続されている。高圧側配線15A、低圧側配線16Aは、それぞれ、AC−DC変換回路100の高圧側出力端、低圧側出力端に接続されている。
【0080】
第1電圧検出器31は、第1実施形態に係る電力変換装置と同様に、AC−DC変換回路100の入力端に並列接続されており、交流電源400から入力される交流電圧である入力電圧Vacを検出する。電流検出器32は、平滑リアクトル13とブリッジ回路14との間に設けられており、平滑リアクトル13からブリッジ回路14を経て、平滑コンデンサ150へ流入する電流値である入力電流iLを検出する。第2電圧検出器33は、平滑コンデンサ150に並列接続されており、AC−DC変換回路100から出力され、平滑コンデンサ150に印加される電圧であるDCリンク電圧Vcを検出する。
【0081】
なお、本実施形態に係る電力変換装置において、上記各実施形態と同様の制御が行われるものの、DCリンク電圧制御部34は、開閉素子Q1a及び開閉素子Q1bのON/OFF制御を行う。
【0082】
本実施形態に係る電力変換装置は、上記構成により、第1実施形態に係る電力変換装置に準ずる効果を奏する。
【0083】
<変形例>
・上記各実施形態において、AC−DC変換回路100の出力端にDC−DC変換回路200が接続されるものとしたが、直流電力の入力を要する電気負荷であるならば、DC−DC変換回路200以外の電気負荷が接続されるものとしてもよい。その場合には、AC−DC変換回路100から出力される直流電力により電気負荷が駆動されるものとすればよい。また、AC−DC変換回路100の出力端にDC−DC変換回路200が接続される場合においても、DC−DC変換回路200の出力端に接続されるものは二次電池500に限られることはなく、二次電池500以外の、直流電力の入力を要する電気負荷が接続されてもよい。
【0084】
・上記各実施形態において、第2所定値V2を平滑コンデンサ150の耐圧よりも小さい値に設定するものとしたが、第2所定値V2の設定方法はこれに限られない。DC−DC変換回路200などの電気機器には、機器を過電圧から保護するために、機器の駆動を停止する過電圧保護停止機能を備えるのが一般的である。そして、過電圧保護停止機能の動作開始を判定するための閾値を設け、入力される電圧が閾値以上であるかを監視し、入力される電圧が閾値以上であれば、過電圧保護機能により、機器の動作を停止する。
【0085】
ここで、第2所定値V2が閾値よりも大きい場合には、出力電力を抑制する制御が行われたとしても、DCリンク電圧Vcが閾値以上となり得るため、DC−DC変換回路200が過電圧保護停止機能により停止する場合がある。そこで、第2所定値V2を閾値よりも小さい値に設定する。こうすることにより、DCリンク電圧Vcが閾値以上となることを防ぐことができるため、それに伴い、DC−DC変換回路200へ入力される電圧も、閾値以上となることを防ぐことができる。したがって、電力変換装置が過電圧保護機能を有するDC−DC変換回路200へ電力を供給する場合において、過電圧保護機能の動作を抑制することができる。なお、AC−DC変換回路100の出力端に、DC−DC変換回路200以外の電気負荷が接続されるものとした場合においては、第2所定値V2を、接続される電気負荷の、過電圧保護停止機能を動作させる閾値よりも小さい値に設定すればよい。