(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー担持体に対向して前記ハウジングに回転可能に支持され、周面に前記トナーおよびキャリアからなる現像剤を担持し、前記トナー担持体に前記トナーを供給する現像剤担持体と、
略水平方向に沿って前記現像剤担持体の前記周面に対向して配置され、前記現像剤担持体上の前記現像剤の層厚を規制する層厚規制部材と、
前記現像剤担持体の軸方向の前記一端側に固定され、前記駆動部および前記第2斜歯ギアに連結され、前記現像剤担持体に前記回転駆動力を伝達する入力ギアと、
を有し、
前記第2斜歯ギアは、前記入力ギアを介して前記駆動部に連結され、
前記駆動部から前記入力ギアに回転駆動力が入力されると、前記トナー担持体および前記現像剤担持体が同期して回転され、
前記現像動作時に、前記駆動部が正方向に回転されると、前記現像剤担持体は前記層厚規制部材に対向する領域を下方から上方に向かって回転し、前記駆動部が逆方向に回転されると、前記現像剤担持体は前記層厚規制部材に対向する領域を上方から下方に向かって回転することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、本発明は、電子写真方式を採用した画像形成装置、例えばコピー機、プリンター、ファクシミリ、これらの機能を備える複合機等に適用することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構造を示す正面断面図である。画像形成装置1は、装置本体11に、画像形成部12、定着装置13、給紙部14、用紙排出部15、および原稿読取部16等を備えて構成されている。
【0020】
装置本体11は、下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された上部本体112と、この上部本体112と下部本体111との間に介設された連結部113とを備えている。連結部113は、下部本体111と上部本体112との間に用紙排出部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部および後部から立設され、平面視でL字状を呈している。上部本体112は、連結部113の上端部に支持されている。
【0021】
下部本体111には、画像形成部12、定着装置13および給紙部14が内装されているとともに、上部本体112には原稿読取部16とが装着されている。
【0022】
画像形成部12は、給紙部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成する画像形成動作を実行する。画像形成部12は、上流側から下流側へ向けて水平に順次配設された、イエロー色のトナーを用いるイエロー用ユニット12Y、マゼンタ色のトナーを用いるマゼンタ用ユニット12M、シアン色のトナーを用いるシアン用ユニット12Cおよびブラック色のトナーを用いるブラック用ユニット12Bkと、駆動ローラー125A等の複数のローラー間に画像形成における副走査方向へ無端走行可能に張架された中間転写ベルト125と、中間転写ベルト125の外周面に当接する二次転写ローラー196と、ベルトクリーニング装置198と、を備えている。
【0023】
画像形成部12の各色のユニットは、感光体ドラム121(像担持体)と、感光体ドラム121へトナー(現像剤)を供給する現像装置122と、トナーを収容するトナーカートリッジ(不図示)と、帯電装置123と、ドラムクリーニング装置127と、をそれぞれ一体的に備えている。また、隣接する現像装置122の下方には、それぞれの感光体ドラム121を露光するための露光装置124が水平に配置されている。
【0024】
感光体ドラム121は、円筒形状からなり、軸回りに回転される。感光体ドラム121は、その周面に静電潜像が形成されるとともに、前記静電潜像がトナーによって顕在化されるトナー像を担持する。本実施形態では、感光体ドラム121は、公知の有機(OPC)感光体であり、後記の現像ローラー83と同様の浸漬法によって表面に電荷発生層、電荷輸送層などが形成されている。
【0025】
現像装置122は、矢印の方向へ回転する感光体ドラム121の周面の静電潜像にトナーを供給して当該トナーを積層させ、感光体ドラム121の周面に前記画像データに応じたトナー像を形成する。各現像装置122には、前記トナーカートリッジからトナーが適宜補給される。
【0026】
帯電装置123は、各感光体ドラム121の直下位置にそれぞれ設けられている。帯電装置123は、各感光体ドラム121の周面を一様に帯電させる。
【0027】
露光装置124は、各帯電装置123の下方位置に設けられている。露光装置124は、コンピューター等から入力された画像データや原稿読取部16が取得した画像データに基づく各色に対応したレーザー光を、帯電後の感光体ドラム121の周面に照射し、各感光体ドラム121の周面に静電潜像を形成する。なお、露光装置124は、感光体ドラム121上に、所定の潜像電位を形成するため、予め設定された露光光量に応じて、前記レーザー光を照射する。ドラムクリーニング装置127は、各感光体ドラム121の左方位置に設けられ、感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去してクリーニングする。
【0028】
中間転写ベルト125は、無端のベルトであって、基層、弾性層、及びコート層から成る積層構造を有する導電性の軟質ベルトである。中間転写ベルト125は、画像形成部12の上方において、略水平方向に配置された複数の張架ローラーに掛け回されている。張架ローラーは、定着装置13の近傍に配置され中間転写ベルト125を回転駆動する駆動ローラー125Aと、駆動ローラー125Aに対して水平方向に所定間隔を置いて配設され従動回転する従動ローラー125Eと、を含む。中間転写ベルト125は、駆動ローラー125Aに回転駆動力が与えられることにより、
図1において時計方向に周回駆動される。
【0029】
二次転写ローラー196には、二次転写バイアス印加部(不図示)が電気的に接続されている。二次転写ローラー196と駆動ローラー125Aとの間に印加される転写バイアスによって、中間転写ベルト125上に形成されたトナー画像は、下方の搬送ローラー対192から搬送された用紙Pに転写される。ベルトクリーニング装置198は、従動ローラー125Eに対して中間転写ベルト125を介して対向配置される。
【0030】
定着装置13は、内部に加熱源であるハロゲンランプなどの通電発熱体を備えた加熱ローラー132と、加熱ローラー132に対向配置された加圧ローラー134と、を備えている。定着装置13は、画像形成部12で転写された用紙P上のトナー像に対し、用紙Pが加熱ローラー132と加圧ローラー134との間の定着ニップ部を通過する間に加熱ローラー132から熱を与えて定着処理を施す。定着処理の完了したカラー印刷済みの用紙Pは、定着装置13の上部から延設された排紙搬送路194を通って装置本体11の頂部に設けられた排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0031】
給紙部14は、装置本体11の
図1における右側壁に開閉自在に設けられた手差しトレイ141と、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された給紙カセット142とを備えている。給紙カセット142は、複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1を収容する。給紙カセット142の上方には、ピックアップローラー143が設けられ、ピックアップローラー143は、給紙カセット142に収容された用紙束P1の最上位の用紙Pを用紙搬送路190へ向けて繰り出す。手差しトレイ141は、下部本体111の右面の下方位置に設けられた、用紙Pを1枚ずつ手差し操作で画像形成部12へ向けて給紙するためのトレイである。
【0032】
画像形成部12の左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路190が形成されている。用紙搬送路190には、適所に搬送ローラー対192が設けられ、搬送ローラー対192は、給紙部14から繰り出された用紙Pを、二次転写ローラー196を有する二次転写ニップ部へ向けて搬送する。
【0033】
用紙排出部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。用紙排出部15は、下部本体111の上面に形成された排紙トレイ151を備える。排紙トレイ151は、画像形成部12でトナー像が形成された用紙Pが、定着装置13で定着処理が施された後に排出されるトレイである。
【0034】
原稿読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を走査して読み取る走査機構163とを備えている。走査機構163は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを用いて原稿の画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。また、装置本体11は、この画像データから作像画像を生成する画像処理部(不図示)を有する。
【0035】
<現像装置の構成>
続いて、現像装置122について詳細に説明する。
図2は、現像装置122の内部構造を概略的に示す上下および左右方向の断面図である。
図3は、本実施形態に係る感光体ドラム121および現像ローラー83の軸方向の長さの関係を示す模式図(A)、および、現像ローラー83の端部の膜厚の様子を示す模式的な断面図(B)である。
図4は、現像ローラー83の軸方向の膜厚の分布を示すグラフ(A)、(B)である。本実施形態における現像装置122には、現像ローラー83および磁気ローラー82を備えるタッチダウン現像方式が採用されている。現像装置122は、該現像装置122の内部空間を画定する現像ハウジング80(ハウジング)を含む。この現像ハウジング80には、所定の極性に帯電する非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を貯留する現像剤貯留部81が備えられている。また、現像ハウジング80の内部には、現像剤貯留部81の上方に配置された磁気ローラー82(現像剤担持体)と、磁気ローラー82の斜め上方位置で磁気ローラー82に対向配置された現像ローラー83(トナー担持体)と、磁気ローラー82に対向配置された現像剤規制ブレード84(層厚規制部材)とが配設されている。また、現像装置122は、駆動部962と、現像バイアス印加部88とを備える(
図2)。
【0036】
図2を参照して、現像剤貯留部81は、現像装置122の長手方向に延びる2つの隣り合う第1現像剤貯留室81a、第2現像剤貯留室81bを含む。第2現像剤貯留室81bは、磁気ローラー82に対向して配置されている。第1現像剤貯留室81a、第2現像剤貯留室81bは、現像ハウジング80に一体に形成され長手方向に延びる仕切り板801によって互いに仕切られているが、長手方向(軸方向)における両端部において一対の連通部(不図示)によって互いに連通されている。第1現像剤貯留室81aおよび第2現像剤貯留室81bには、軸回りに回転することにより現像剤を攪拌及び搬送する第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86がそれぞれ収容されている。第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86は、駆動部962により回転駆動されるが、その回転方向が互いに逆方向に設定されている。これにより現像剤は、第1現像剤貯留室81aおよび第2現像剤貯留室81b間を、攪拌されつつ循環搬送される。この攪拌により、トナーとキャリアとが混合され、トナーが例えばプラスに帯電される。
【0037】
磁気ローラー82は、現像装置122の長手方向に沿って、現像ローラー83に対向するように現像ハウジング80に回転可能に支持されている。磁気ローラー82は、
図2では時計方向に回転駆動される。磁気ローラー82の内部には、固定式の所謂磁石ロール(固定磁石、図示せず)が配置されている。磁石ロールは複数の磁極を有しており、本実施形態では汲上極821、規制極822及び主極823を有する。汲上極821は現像剤貯留部81に対向し、規制極822は現像剤規制ブレード84に対向し、主極823は現像ローラー83に対向している。
【0038】
磁気ローラー82は、汲上極821の磁力によって現像剤貯留部81から現像剤をその周面82A上に磁気的に汲み上げる(受け取る)。磁気ローラー82は、周面82A上に、汲み上げられた現像剤を磁気的に現像剤層(磁気ブラシ層)として担持する。そして、磁気ローラー82は、現像ローラー83にトナーを供給する。磁気ローラー82の回転に伴って、前記現像剤は現像剤規制ブレード84に向けて搬送される。
【0039】
現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の回転方向から見て現像ローラー83よりも上流側において磁気ローラー82の周面82Aに対向して配置される。本実施形態では、現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82に向かってやや先上がりに、略水平方向に沿って延設されている。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aに磁気的に付着した現像剤の層厚を規制する。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aとの間で所定の寸法の規制ギャップGを形成する。これにより、周面82A上には所定厚さの均一な現像剤層が形成される。
【0040】
現像ローラー83は、現像装置122の長手方向に沿って、且つ、磁気ローラー82に対して平行に延びるように配設されており、
図2では時計方向に回転駆動される。現像ローラー83は、感光体ドラム121に対向して配置される。現像ローラー83は、円筒形状からなり、軸回りに回転可能に現像ハウジング80に支持されている。現像ローラー83は、磁気ローラー82の周面82A上に保持された現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層からトナーを受け取ってトナー層を担持する周面83Aを有する。現像動作が行なわれる現像時には、現像ローラー83は、前記トナー層のトナーを感光体ドラム121の周面に供給する。本実施形態では、現像ローラー83は、円筒状のスリーブ830(基材)と、スリーブ830の表面に形成された樹脂コート(表面層)と、を備えるローラーである(
図3(B))。現像ローラー83の周面83Aと磁気ローラー82の周面82Aとの間には、所定の寸法の隙間S(
図2)が形成されている。隙間Sは例えば0.3mmに設定されている。現像ローラー83は、現像ハウジング80に形成された開口を通して感光体ドラム121に臨むように配置され、周面83Aと感光体ドラム121の周面との間にも所定の寸法の隙間が形成されている。本実施形態では、前記隙間は0.12mmに設定されている。
【0041】
現像バイアス印加部88は、現像動作時に、磁気ローラー82および現像ローラー83に直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。感光体ドラム121と現像ローラー83との間、また、現像ローラー83と磁気ローラー82との間には、高い交流電圧が印加される。特に、磁気ローラー82から現像ローラー83にトナーが供給され、更に、現像ローラー83から感光体ドラム121にトナーが供給されるため、公知の一成分および二成分現像装置と比較して、トナーの移動のために、現像ローラー83には高い交流電圧が印加される。
【0042】
図3(A)を参照して、本実施形態では、感光体ドラム121の軸方向の長さが、現像ローラー83の軸方向の長さよりも大きく設定されている。このため、現像ローラー83の軸方向の両端部は、感光体ドラム121の軸方向の両端部よりも内側の領域Lにおいて感光体ドラム121に対向する。なお、現像ローラー83の軸方向の両端部には不図示のトラッキングローラーが固定されている。トラッキングローラーは、感光体ドラム121の両端部に当接することで、現像ローラー83と感光体ドラム121との間のギャップを規制する。また、現像ハウジング80は、感光体ドラム121に向かって不図示の付勢ばねで付勢されている。この結果、現像ローラー83と感光体ドラム121との間のギャップがより安定して維持される。
【0043】
図3(B)を参照して、現像ローラー83のスリーブ830は、アルミニウムからなる。現像ローラー83のコート層83Cは、以下の浸漬法によって形成される。まず、スリーブ830の外周面にアルマイト処理が施され、厚さ10μmのアルマイト層(酸化層)が形成される。アルミニウムからなるスリーブ830の上に酸化層が形成されることで、コート層83Cの基材に対する付着力が増大される。この結果、コート層83Cの剥離が抑制される。その後、スリーブ830の表面、すなわち、アルマイト層の表面が120℃で10分以上熱処理される。この熱処理は、コート層83Cの乾燥工程においてクラックが生じることを抑止するため、予めスリーブ830にクラックを意図的に生じさせるために行われる。前記熱処理の時間は予め定められており、例えば、前記乾燥工程に要する時間以上に定められている。前記熱処理は、常に一定の温度で一定の時間だけ行われる。これにより、前記熱処理が行われる全てのスリーブ830に対して概ね定量のクラックが生じる。前記熱処理の後にアルマイト層上にコート層83Cを形成する処理が行われる。具体的には、結着樹脂としてのアルコール可溶性のナイロン樹脂、導電剤として酸化チタン、および分散媒体としてのメタノール800(重量部)が、直径1.0mmのジルコニアビーズとともにボールミルで約48時間混合され混合液が準備される。その混合液にアルマイト処理されたスリーブ830を所定時間浸漬させた後に引き上げ、130℃の高温環境の下で10分間乾燥させる。なお、スリーブ830は、円筒形状の軸方向が鉛直方向に沿うように、混合液の中に浸漬され、引き上げられる。この結果、厚み2μm〜11μmのコート層83Cがコーティングされたスリーブ830が製作される。このように、コート層83Cがコーティングされる前に、予め熱処理によってアルマイト層にクラックが生成される。このため、コート層83Cに含有されている導電剤が、コート層83Cの乾燥時にコート層83Cの内部に発生する対流の影響で偏在することが防止される。この結果、導電材が均一に分散したコート層83Cを形成することが可能になる。
【0044】
一方、上記のような浸漬法によってコート層83Cが形成される場合、スリーブ830の表面に付着した混合液は、引き上げ時の重力の影響によって下方に垂れ下がりやすい。このため、浸漬時に下端側に位置するスリーブ830の表面には、軸方向の中央部と比較して部分的に厚いコート層83Cが形成される。特に、スリーブ830の下端部には、部分的に、コート層83Cの厚さが増した溜り部83C1が形成されやすい。また、浸漬時に上端側に位置するスリーブ830の表面には、軸方向の中央部と比較して部分的に薄いコート層83Cである薄層部83C2(
図8参照)が形成される。
【0045】
図4(A)は、スリーブ830に形成されたコート層83Cの浸漬時の下端側の膜厚の分布を示している。一方、
図4(B)は、スリーブ830に形成されたコート層83Cの浸漬時の上端側の膜厚の分布を示している。いずれも、横軸は、スリーブ830の端部からの距離を示し、縦軸は、軸方向におけるそれぞれの位置に応じた膜厚を、コート層83Cの平均膜厚に対する差分として示している。
図4(A)、(B)に示すように、コート層83Cのうち上端部の薄い部分の長さは、下端部の厚い部分の長さよりも長い。また、コート層83Cの上端部の最大膜厚減少分(3μm)は、下端部の最大膜厚上昇分(3.5μm)に近似した値となっている。
【0046】
図5は、本実施形態に係る現像装置122において、現像ローラー83が正回転される様子を示した模式的な背面図(A)、および、現像ローラー83が逆回転される様子を示した模式的な背面図(B)である。また、
図6は、現像装置122において、現像ローラー83が正回転される様子を示した模式的な側面図である。
【0047】
現像ローラー83、磁気ローラー82、第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86は、駆動部962によって同期して回転駆動される。
図5および
図6に示すように、現像ローラー83の後端部には、ローラーギア83G(駆動伝達部、第1斜歯ギア)が固定されている。ローラーギア83Gは、現像ローラー83に回転駆動力を伝達する。本実施形態では、ローラーギア83Gは、軸方向に対して所定の角度をもって傾斜したギア歯を備える斜歯ギアである。
【0048】
磁気ローラー82の後端部には、入力ギア82Gが固定されている。入力ギア82Gは、磁気ローラー82に回転駆動力を伝達する。更に、入力ギア82Gとローラーギア83Gとの間には、アイドルギア80G(第2斜歯ギア)が連結されている。アイドルギア80Gは、ローラーギア83Gと噛み合うように現像ハウジング80に回転可能に支持され、ローラーギア83Gに回転駆動力を伝達する。
【0049】
駆動部962は、回転駆動力を発生するモーターであり、現像装置122の各ローラーを回転させる回転駆動力を発生する。駆動部962は、不図示の制御部によって正逆回転可能とされる。本実施形態では、駆動伝達経路において入力ギア82Gが最も上流側に配置される。すなわち、現像装置122が画像形成装置1に装着されると、入力ギア82Gが駆動部962に連結される。また、入力ギア82Gには、不図示のスクリューギアが連結されている。入力ギア82Gが回転されると、前記スクリューギアを介して第2スクリューフィーダー86および第1スクリューフィーダー85が回転する。なお、アイドルギア80Gは、入力ギア82Gを介して駆動部962に連結されている。
【0050】
図5(A)を参照して、現像ローラー83によって感光体ドラム121上の静電潜像が現像される現像動作時には、不図示の制御部によって駆動部962が正方向に回転される。この時、入力ギア82Gが
図5(A)において矢印に示すように反時計回りに回転される。同時に、磁気ローラー82も反時計回りに回転される。この際、
図2では、磁気ローラー82は、現像剤規制ブレード84に対向する領域を下方から上方に向かって回転する。
図5(A)に戻って、入力ギア82Gの回転に伴って、アイドルギア80Gが時計回りに回転する(
図6の矢印D61)と、アイドルギア80Gとローラーギア83Gとの噛み合いによって、ローラーギア83Gが
図5(A)において反時計回りに回転される(
図6の矢印D62)。この結果、現像ローラー83が矢印に示すように反時計回り(第1回転方向)に回転される(
図6の矢印D63)。そして、現像バイアス印加部88(
図2)によって印加された現像バイアスによって、現像ローラー83から感光体ドラム121にトナーが供給される。なお、本実施形態では、現像ローラー83が
図5(A)に示す第1回転方向に回転されると、ローラーギア83Gとアイドルギア80Gとの噛み合いによって、感光体ドラム121に向かう押圧力が現像ローラー83に付与される(
図5(A)の矢印DA)。また、ローラーギア83Gとアイドルギア80Gとの噛み合いによって、現像ローラー83には、
図6の矢印D64で示すようなスラスト力が付与される。この際、スラスト力は、ローラーギア83Gが固定される現像ローラー83の後端側からローラーギア83Gとは反対の前端側に向かって付与される。
【0051】
一方、不図示の制御部は、現像動作時とは異なる時に、駆動部962を逆回転させる。本実施形態では、
図2に示すように、現像動作時に現像剤規制ブレード84の上面部にトナーが堆積する場合がある(トナー溜りTP)。堆積したトナーの電荷は不安定なため、これらのトナーが誤って現像ローラー83に供給された場合には色点などの画像欠陥が生じてしまう。このため、制御部は、画像形成動作が終了した際などに、現像装置122の逆回転動作を実行する。
【0052】
詳しくは、
図5(B)を参照して、現像装置122の逆回転動作時には、不図示の制御部によって駆動部962が逆方向に回転される。この時、入力ギア82Gが
図5(B)において矢印に示すように時計回りに回転される。同時に、磁気ローラー82も時計回りに回転される。この際、
図2では、磁気ローラー82は、現像剤規制ブレード84に対向する領域を上方から下方に向かって回転する。このため、現像剤規制ブレード84上に堆積したトナーが磁気ローラー82上の磁気ブラシによって回収され、色点などの画質欠陥が防止される。
図5(B)に戻って、入力ギア82Gの回転に伴って、アイドルギア80Gが反時計回りに回転すると、アイドルギア80Gとローラーギア83Gとの噛み合いによって、ローラーギア83Gが時計回りに回転される。この結果、現像ローラー83が矢印に示すように時計回り(第1回転方向とは反対の第2回転方向)に回転される。なお、本実施形態では、現像ローラー83が
図5(B)に示す第2回転方向に回転されると、ローラーギア83Gとアイドルギア80Gとの噛み合いによって、感光体ドラム121とは逆方向に向かう押圧力が現像ローラー83に付与される(
図5(B)の矢印DB)。
【0053】
現像装置122は、更にトナーシール89(シール部材)を備える。
図7は、本実施形態に係る現像装置122のトナーシール89の配置を示す模式的な断面図である。
図8は、現像装置122のトナーシール89の配置を示す模式的な上面図である。トナーシール89は、現像ハウジング80の前後方向の両端部に一対配置されるスポンジ材である。トナーシール89は、前側シール89Fと後側シール89Rとからなる(
図8)。一対のトナーシール89は、現像ローラー83の周面(コート層83C)のうち軸方向の両端部に当接するように配置され、現像ハウジング80から現像剤が漏れることを防止する。
図7に示すように、トナーシール89は、感光体ドラム121とは反対側で現像ローラー83に当接する円弧形状からなる。より詳しくは、現像ハウジング80は、支持部80U(
図7、
図8)を備える。支持部80Uは、現像ローラー83の両端部に対向して、現像ハウジング80に形成された一対の円弧状の壁部である。そして、トナーシール89は、支持部80Uと現像ローラー83との間に介在するように、支持部80Uに接着固定されている。
【0054】
図8では、現像ローラー83上のコート層83Cの分布が誇張して図示されている。前述のように、本実施形態では、現像ローラー83の軸方向が鉛直方向に沿うように、スリーブ830が所定の浸漬槽に浸漬される浸漬法によってコート層83Cが形成される。そして、現像ローラー83の浸漬時の下端側(溜り部83C1)が、ローラーギア83Gとは反対の前端側となるように、現像ローラー83が現像ハウジング80に装着されている。
【0055】
現像ローラー83の後端側では、入力ギア82Gからローラーギア83Gに回転駆動力が伝達される際に、両者のギア歯の噛み合いによって、現像ローラー83が感光体ドラム121側に向かって押圧される。このため、現像ローラー83の後端側部分と感光体ドラム121との間のギャップは、前述のトラッキングローラーによって、安定して維持される。一方、現像ローラー83の前端側では、上記のような入力ギア82Gとローラーギア83Gとの噛み合いによる押圧力が強く付与されないため、現像ローラー83の位置が安定しにくい。特に、現像ローラー83には、所定の公差範囲において外周触れや偏芯が存在するため、これらの影響によって、現像ローラー83のコート層83Cがトナーシール89Fに強く摺擦し、摩耗しやすくなる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、現像ローラー83の浸漬時の下端側(溜り部83C1)が、現像装置122の前端側に配置されている。このため、現像ローラー83の回転に伴って、コート層83Cの溜り部83C1が前側シール89Fと強く摺擦した場合であっても、コート層83Cが消失することが防止される。この結果、スリーブ830(
図3(B))が露出し、現像ローラー83と感光体ドラム121との間でリークが生じることが防止される。
【0057】
更に、前述のように、現像装置122の逆回転動作時には、感光体ドラム121とは反対側、すなわち、トナーシール89に向かう方向の押圧力が現像ローラー83に付与される(
図5(B)の矢印DB)。この際、現像ローラー83の前端側では、コート層83Cがより強く前側シール89Fと摺擦する。このような場合であっても、本実施形態では、上記のように、トナーシール89Fに対向して現像ローラー83の溜り部83C1が配置されている。このため、現像装置122の現像動作と逆回転動作とが繰り返される場合でも、コート層83Cの前端側が消失することが防止される。
【0058】
また、
図6の矢印D64で示すように、アイドルギア80Gとローラーギア83Gとの噛み合いによって、現像ローラー83には前方向に向かうスラスト力が付与される。この場合、コート層83Cの溜り部83C1が前側シール89Fに当接している。このため、現像ローラー83のスラスト移動に伴って、前側シール89Fよりも前方に現像剤がこぼれる出すことが防止される。
【0059】
以上、本発明の実施形態に係る現像装置122および画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0060】
(1)上記の実施形態では、画像形成装置1としてフルカラー機を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像形成装置1は、白黒画像を印刷するモノクロ機であってもよい。
【0061】
(2)上記の実施形態では、現像装置122において現像動作に加え、逆回転動作が実行される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。現像装置122において現像動作だけが実行される場合であっても、現像ローラー83の偏芯回転に伴う、コート層83Cの摩耗および消失が防止される。
【実施例】
【0062】
次に、現像装置122における現像ローラー83の好ましい態様について、実施例をもとに説明する。なお、以後の各実施例は、下記の実験条件にて行った。
<実験条件について>
・プリント速度:30枚/分
・感光体ドラム121:OPCドラム
・感光体ドラム121の周速度:180mm/sec
・現像ローラー83:直径20mmのスリーブ830にアルマイト表面処理+ナイロン樹脂コート(平均厚さ5μm)
・現像ローラー83の周速度:感光体ドラム121に対して周速比1.5(ウィズ回転)
・磁気ローラー82の周速度:現像ローラー83に対して周速比1.1(カウンター回転)
・感光体ドラム121と現像ローラー83とのギャップ:0.12mm
・磁気ローラー82と現像ローラー83とのギャップ:0.3mm
・感光体ドラム31の表面電位:+430V(背景部)、+100V(画像部)
・現像ローラー83に印加される現像バイアス:交流電圧の周波数3.7kHz、Duty27%、Vpp1500V、直流電圧190V
・磁気ローラー82に印加される現像バイアス:交流電圧の周波数3.7kHz、Duty73%、Vpp650V、直流電圧490V
・トナーの平均粒径:6.8μm(正帯電性)
・トナーシール89:軸方向幅10mm、周方向長さ20mm、厚さ1mmのスポンジシール
・トナーシール89の圧縮量:現像ローラー83の正回転時における溜り部83C1による圧縮量は0.4mm、現像ローラー83の逆回転時における溜り部83C1による圧縮量は0.7mm
・現像装置122の逆回転動作条件:印刷枚数100枚につき1回実施。現像動作時の2分の1の回転速度で各ローラーを1秒間反回転させる。
【0063】
表1では、実施例として、上記の実施形態のように、現像ローラー83の浸漬時の下端側が現像装置122の前端側(ローラーギア83Gとは反対側)に配置された結果が示されている。表2では、比較例として、現像ローラー83の浸漬時の下端側が現像装置122の後端側(ローラーギア83G側)に配置された結果が示されている。表1および表2では、それぞれの現像ローラーのコート層の膜厚の推移が示される。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1に示すように、実施例では、ローラーギア83Gとは反対の反駆動側に現像ローラー83の浸漬時の下端側(初期膜厚10μm)が配置されることによって、500K枚の印刷終了時点で、コート層83Cの膜厚が2μmを下回っていない。この結果、安定した画像が維持された。一方、表2に示すように、比較例では、ローラーギア83Gとは反対の反駆動側に現像ローラー83の浸漬時の上端側(初期膜厚5μm)が配置されることによって、コート層83Cが薄層化し、300K枚においてコート層が消失する結果となった。そして、以降の印刷においてリークによる画像欠陥が生じる結果となった。