(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような現像方式では、軸方向の位置に応じて現像ローラー上に担持される現像剤の帯電量が変化し、画像濃度にむらが生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、現像剤担持体の軸方向に沿って画像濃度の変動が抑制された現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る現像装置は、ハウジングと、円筒形状からなり、前記ハウジングに軸回りに回転可能に支持され、周面に現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に対向して前記ハウジングに配置され、前記現像剤が前記現像剤担持体の軸方向の一端側から他端側に向かう第1搬送方向に搬送される第1搬送部と、前記軸方向の両端部において前記第1搬送部に連通され、前記第1搬送方向とは逆の第2搬送方向に前記現像剤が搬送される第2搬送部とを含む現像剤収容部と、前記第1搬送部に回転可能に配置され、前記第1搬送方向に前記現像剤を搬送し、かつ、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する搬送部材と、前記現像剤担持体の前記周面に、または、前記周面に対向して配置され、所定の円筒状の基材の表面上に形成された表面層と、を有し、前記基材の軸方向が鉛直方向に沿うように前記基材が所定の浸漬槽に浸漬される浸漬法によって前記表面層が形成され、前記基材の前記浸漬時の下端側が前記ハウジングの前記第1搬送方向上流側に配置され、前記基材の前記浸漬時の上端側が前記ハウジングの前記第1搬送方向下流側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、搬送部材は、現像剤収容部の第1搬送部に回転可能に配置され、第1搬送方向に現像剤を搬送しながら、現像剤担持体に現像剤を供給する。この際、第1搬送方向下流側にいくほど、搬送部材による現像剤の攪拌時間が長くなる。このため、第1搬送方向の上流側の現像剤の帯電量は下流側の現像剤の帯電量よりも低くなりやすい。現像剤の帯電量が低い場合、現像電界への応答性が低いため、現像性能が低下する。この結果、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動しやすくなる。このような場合であっても、上記の構成によれば、基材の浸漬時の下端側がハウジングの第1搬送方向上流側に配置され、基材の浸漬時の上端側がハウジングの第1搬送方向下流側に配置されている。このため、第1搬送方向上流側では、現像剤担持体と現像剤担持体に対向する部材との間隔が狭くなり、現像性能が部分的に調整される。この結果、現像剤担持体の軸方向における画像濃度の変動が抑制される。
【0008】
上記の構成において、前記現像剤はトナーおよびキャリアを含み、円筒形状からなり、表面に静電潜像が形成される像担持体および前記現像剤担持体に対して間隔をおいて配置され、前記ハウジングに軸回りに回転可能に支持され、前記現像剤担持体から周面にトナーを受け取り、当該トナーを担持するトナー担持体と、前記現像剤担持体に所定の間隔をおいて配置され、前記搬送部材から前記現像剤担持体の前記周面上に供給された前記現像剤の層厚を規制する層厚規制部材と、を更に有し、前記基材は、前記トナー担持体の一部であって、前記表面層は、前記トナー担持体の前記周面に形成され、前記現像剤担持体の前記周面に対向して配置されていることが望ましい。
【0009】
本構成によれば、現像剤担持体に対向してトナー担持体が配置される。トナー担持体は、現像剤担持体からトナーを受け取り、像担持体に当該トナーを供給する。そして、トナー担持体の周面には、浸漬法によって表面層が形成されている。第1搬送方向上流側の現像剤担持体上のトナーの帯電量が低い場合、トナー担持体上のトナーの帯電量も低くなる。この結果、第1搬送方向上流側の像担持体上の画像濃度も低くなりやすい。上記の構成によれば、トナー担持体の表面層のうち、第1搬送方向上流側の膜厚が部分的に厚くなる。このため、第1搬送方向上流側では、現像剤担持体とトナー担持体とのギャップ、および、トナー担持体と像担持体との間のギャップが狭くなり、現像性能が増大される。したがって、トナーの帯電量が比較的低い第1搬送方向上流側においても、トナー担持体から像担持体に安定してトナーが供給される。この結果、第1搬送方向に沿って画像濃度に変動が生じることが抑制される。
【0010】
上記の構成において、前記基材は、前記現像剤担持体の一部であって、前記表面層は、前記現像剤担持体の前記周面に形成され、前記現像剤担持体は、表面に静電潜像が形成される像担持体に対して間隔をおいて配置され、前記現像剤は、磁性一成分現像剤であり、前記現像剤担持体に所定の間隔をおいて配置され、前記搬送部材から前記現像剤担持体の前記周面上に供給された前記現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を更に有することが望ましい。
【0011】
本構成によれば、現像剤担持体は、搬送部材から一成分現像剤を受け取り、像担持体に当該現像剤を供給する。そして、現像剤担持体の周面には、浸漬法によって表面層が形成されている。第1搬送部では、第1搬送方向下流側にいくほど、搬送部材による現像剤の攪拌時間が長くなる。この結果、第1搬送方向上流側の現像剤担持体上の現像剤の帯電量が低くなり、第1搬送方向上流側の像担持体上の画像濃度も低くなりやすい。上記の構成によれば、現像剤担持体の表面層のうち、第1搬送方向上流側の膜厚が部分的に厚くなる。このため、第1搬送方向上流側では、現像剤担持体と像担持体との間のギャップが狭くなり、現像性能が増大される。したがって、現像剤の帯電量が比較的低い第1搬送方向上流側においても、現像剤担持体から像担持体に安定して現像剤が供給される。この結果、第1搬送方向に沿って画像濃度に変動が生じることが抑制される。
【0012】
上記の構成において、前記現像剤担持体は、前記基材からなり、回転されるスリーブと、前記スリーブの内部に固定される固定磁石と、を備え、前記固定磁石は、前記スリーブの回転における周方向に沿って隣接して配置された複数の磁極を備え、前記複数の磁極の極性は、前記周方向に沿って異なる極性が交互に配置されるように設定されていることが望ましい。
【0013】
本構成によれば、固定磁石には、周方向に沿って異なる磁極が交互に配置されている。このため、現像剤担持体のスリーブから現像剤が剥がれにくく、第1搬送方向に移動しながらスリーブ上を周回しつづける現像剤が存在しやすい。このような現像剤は、第1搬送方向下流側に進むにつれて、層厚規制部材を複数回通過するため、摩擦帯電によって帯電量が増大される。したがって、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動しやすくなる。このような場合でも、基材の浸漬時の下端側がハウジングの第1搬送方向上流側に配置され、基材の浸漬時の上端側がハウジングの第1搬送方向下流側に配置される。この結果、現像剤担持体と像担持体との間のギャップが部分的に調整され、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動することが抑止される。
【0014】
上記の構成において、前記第1搬送部の前記第1搬送方向下流側端部に配置され、前記現像剤を部分的に滞留させる現像剤滞留部を更に有することが望ましい。
【0015】
本構成によれば、搬送部材の第1搬送方向下流側では現像剤滞留部によって現像剤が部分的に滞留される。このため、現像剤担持体の前記搬送方向下流側部分では、周面に担持される現像剤の嵩が増大しやすい。現像剤担持体からトナー担持体に現像剤が供給される場合、現像剤担持体上に担持された多量の現像剤は、現像剤担持体とトナー担持体との間の隙間を通過しにくく、現像剤の詰まりが生じ、ハウジングから現像剤がこぼれやすくなる。更に、トナー担持体上の表面層が多量の現像剤の磁気ブラシによって研磨され、表面層の寿命が短くなりやすい。一方、搬送部材の第1搬送方向上流側部分では、現像剤が第1搬送方向下流側に速やかに搬送されるため、現像剤が溜まりにくく、現像剤担持体上に担持される現像剤量は相対的に少なくなる。この場合、現像剤担持体上の磁気ブラシが薄層化するため、磁気ブラシの掻き取り力が低下する。この結果、トナー担持体上に担持された古いトナーが現像剤担持体側に戻りにくく、トナー担持体上に画像履歴が発生しやすくなる(ゴースト)。トナー担持体の表面層が浸漬法によって形成されると、浸漬時の下端側の表面層の膜厚は部分的に厚くなり、浸漬時の上端側の表面層の膜厚は部分的に薄くなりやすい。そして、トナー担持体の浸漬時の下端側が第1搬送方向上流側に配置され、トナー担持体の浸漬時の上端側が第1搬送方向下流側に配置される。このため、トナー担持体の第1搬送方向下流側では、部分的に表面層の厚さが薄くなり、周面に担持された多量の現像剤が現像剤担持体とトナー担持体との間をすり抜けやすくなる。この結果、現像剤の詰まりや、ハウジングから現像剤がこぼれることが抑止される。更に、磁気ブラシによる研磨によって表面層が消失することが抑制される。また、トナー担持体の第1搬送方向上流側では、部分的に表面層の厚さが厚くなり、現像剤担持体とトナー担持体との隙間が狭くなる。この結果、現像剤担持体上に担持される現像剤量が相対的に少ない場合でも、磁気ブラシによるトナーの掻き取り力が確保され、トナー担持体上に担持された古いトナーが現像剤担持体側に効率的に回収される。この結果、トナー担持体上の画像履歴が抑制され、ゴーストの発生が抑止される。したがって、搬送部材の第1搬送方向の上流側から下流側にかけて、すなわち、軸方向全体に亘って現像剤担持体からトナー担持体に安定してトナーが供給される。
【0016】
上記の構成において、前記現像剤滞留部によって滞留された現像剤の一部を前記ハウジングから排出する現像剤排出部を有するものでもよい。
【0017】
本構成によれば、現像剤排出部によって現像剤収容部内の現像剤が排出される。このため、新たなキャリアを含む現像剤が補給されることによって、現像剤収容部内を循環する現像剤の寿命を延ばすことができる。一方、搬送部材の下流側端部において現像剤が現像剤滞留部によって滞留される場合でも、トナー担持体の浸漬時の上端側が第1搬送方向下流側に配置されるため、現像剤の詰まり、こぼれ、更に、表面層の薄層化が抑止される。
【0018】
上記の構成において、前記搬送部材は、シャフトと、シャフト回りに配置されたスクリュー羽根とを備え、前記現像剤滞留部は、前記シャフトの前記搬送方向下流側端部において、前記スクリュー羽根とは逆向きに配置された逆スクリュー羽根であることが望ましい。
【0019】
本構成によれば、逆スクリュー羽根によって、搬送部材の第1搬送方向下流側において現像剤を滞留させることができる。
【0020】
上記の構成において、前記トナー担持体の前記表面層は、酸化チタンのみが分散されたアルコール可溶性ナイロンからなることが望ましい。
【0021】
本構成によれば、導電材として酸化チタンのみが分散されているため、表面層の摩耗が低減される。
【0022】
上記の構成において、前記基材は、アルミニウムからなり、表面に形成された酸化層を備え、前記表面層は前記酸化層の表面に形成されていることが望ましい。
【0023】
本構成によれば、アルミニウムからなる基材の上に酸化層が形成されることで、表面層の基材に対する付着力が増大される。この結果、表面層の剥離が抑制される。
【0024】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、上記の何れか1に記載の現像装置と、表面に静電潜像が形成され、前記現像装置から前記現像剤が供給される前記像担持体と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、現像剤担持体の軸方向における画像濃度の変動が抑制された画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、現像剤担持体の軸方向に沿って画像濃度の変動が抑制された現像装置およびこれを備えた画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、本発明は、電子写真方式を採用した画像形成装置、例えばコピー機、プリンター、ファクシミリ、これらの機能を備える複合機等に適用することができる。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構造を示す正面断面図である。画像形成装置1は、装置本体11に、画像形成部12、定着装置13、給紙部14、用紙排出部15、および原稿読取部16等を備えて構成されている。
【0030】
装置本体11は、下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された上部本体112と、この上部本体112と下部本体111との間に介設された連結部113とを備えている。連結部113は、下部本体111と上部本体112との間に用紙排出部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部および後部から立設され、平面視でL字状を呈している。上部本体112は、連結部113の上端部に支持されている。
【0031】
下部本体111には、画像形成部12、定着装置13および給紙部14が内装されているとともに、上部本体112には原稿読取部16とが装着されている。
【0032】
画像形成部12は、給紙部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成する画像形成動作を実行する。画像形成部12は、上流側から下流側へ向けて水平に順次配設された、イエロー色のトナーを用いるイエロー用ユニット12Y、マゼンタ色のトナーを用いるマゼンタ用ユニット12M、シアン色のトナーを用いるシアン用ユニット12Cおよびブラック色のトナーを用いるブラック用ユニット12Bkと、駆動ローラー125A等の複数のローラー間に画像形成における副走査方向へ無端走行可能に張架された中間転写ベルト125と、中間転写ベルト125の外周面に当接する二次転写ローラー196と、ベルトクリーニング装置198と、を備えている。
【0033】
画像形成部12の各色のユニットは、感光体ドラム121(像担持体)と、感光体ドラム121へトナー(現像剤)を供給する現像装置122と、トナーを収容するトナーカートリッジ(不図示)と、帯電装置123と、ドラムクリーニング装置127と、をそれぞれ一体的に備えている。また、隣接する現像装置122の下方には、それぞれの感光体ドラム121を露光するための露光装置124が水平に配置されている。
【0034】
感光体ドラム121は、円筒形状からなり、軸回りに回転される。感光体ドラム121は、その周面に静電潜像が形成されるとともに、前記静電潜像がトナーによって顕在化されるトナー像を担持する。本実施形態では、感光体ドラム121は、公知のアモルファスシリコン(a−Si)感光体である。
【0035】
現像装置122は、矢印の方向へ回転する感光体ドラム121の周面の静電潜像にトナーを供給して当該トナーを積層させ、感光体ドラム121の周面に前記画像データに応じたトナー像を形成する。各現像装置122には、前記トナーカートリッジからトナーが適宜補給される。
【0036】
帯電装置123は、各感光体ドラム121の直下位置にそれぞれ設けられている。帯電装置123は、各感光体ドラム121の周面を一様に帯電させる。
【0037】
露光装置124は、各帯電装置123の下方位置に設けられている。露光装置124は、コンピューター等から入力された画像データや原稿読取部16が取得した画像データに基づく各色に対応したレーザー光を、帯電後の感光体ドラム121の周面に照射し、各感光体ドラム121の周面に静電潜像を形成する。なお、露光装置124は、感光体ドラム121上に、所定の潜像電位を形成するため、予め設定された露光光量に応じて、前記レーザー光を照射する。ドラムクリーニング装置127は、各感光体ドラム121の左方位置に設けられ、感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去してクリーニングする。
【0038】
中間転写ベルト125は、無端のベルトであって、基層、弾性層、及びコート層から成る積層構造を有する導電性の軟質ベルトである。中間転写ベルト125は、画像形成部12の上方において、略水平方向に配置された複数の張架ローラーに掛け回されている。張架ローラーは、定着装置13の近傍に配置され中間転写ベルト125を回転駆動する駆動ローラー125Aと、駆動ローラー125Aに対して水平方向に所定間隔を置いて配設され従動回転する従動ローラー125Eと、を含む。中間転写ベルト125は、駆動ローラー125Aに回転駆動力が与えられることにより、
図1において時計方向に周回駆動される。
【0039】
二次転写ローラー196には、二次転写バイアス印加部(不図示)が電気的に接続されている。二次転写ローラー196と駆動ローラー125Aとの間に印加される転写バイアスによって、中間転写ベルト125上に形成されたトナー画像は、下方の搬送ローラー対192から搬送された用紙Pに転写される。ベルトクリーニング装置198は、従動ローラー125Eに対して中間転写ベルト125を介して対向配置される。
【0040】
定着装置13は、内部に加熱源であるハロゲンランプなどの通電発熱体を備えた加熱ローラー132と、加熱ローラー132に対向配置された加圧ローラー134と、を備えている。定着装置13は、画像形成部12で転写された用紙P上のトナー像に対し、用紙Pが加熱ローラー132と加圧ローラー134との間の定着ニップ部を通過する間に加熱ローラー132から熱を与えて定着処理を施す。定着処理の完了したカラー印刷済みの用紙Pは、定着装置13の上部から延設された排紙搬送路194を通って装置本体11の頂部に設けられた排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0041】
給紙部14は、装置本体11の
図1における右側壁に開閉自在に設けられた手差しトレイ141と、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された給紙カセット142とを備えている。給紙カセット142は、複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1を収容する。給紙カセット142の上方には、ピックアップローラー143が設けられ、ピックアップローラー143は、給紙カセット142に収容された用紙束P1の最上位の用紙Pを用紙搬送路190へ向けて繰り出す。手差しトレイ141は、下部本体111の右面の下方位置に設けられた、用紙Pを1枚ずつ手差し操作で画像形成部12へ向けて給紙するためのトレイである。
【0042】
画像形成部12の左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路190が形成されている。用紙搬送路190には、適所に搬送ローラー対192が設けられ、搬送ローラー対192は、給紙部14から繰り出された用紙Pを、二次転写ローラー196を有する二次転写ニップ部へ向けて搬送する。
【0043】
用紙排出部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。用紙排出部15は、下部本体111の上面に形成された排紙トレイ151を備える。排紙トレイ151は、画像形成部12でトナー像が形成された用紙Pが、定着装置13で定着処理が施された後に排出されるトレイである。
【0044】
原稿読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を走査して読み取る走査機構163とを備えている。走査機構163は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを用いて原稿の画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。また、装置本体11は、この画像データから作像画像を生成する画像処理部(不図示)を有する。
【0045】
<現像装置の構成>
続いて、現像装置122について詳細に説明する。
図2は、現像装置122の内部構造を概略的に示す上下および左右方向の断面図である。
図3は、本実施形態に係る感光体ドラム121および現像ローラー83の軸方向の長さの関係を示す模式図(A)、および、現像ローラー83の端部の膜厚の様子を示す模式的な断面図(B)である。
図4は、現像ローラー83の軸方向の膜厚の分布を示すグラフ(A)、(B)である。
図5は、本実施形態に係る現像装置122および感光体ドラム121の模式的な平面図である。なお、
図5では、説明のために、磁気ローラー82、現像ローラー83および感光体ドラム121を左方にずらして示している。本実施形態における現像装置122には、現像ローラー83および磁気ローラー82を備えるタッチダウン現像方式が採用されている。現像装置122は、該現像装置122の内部空間を画定する現像ハウジング80(ハウジング)を含む。この現像ハウジング80には、所定の極性に帯電する非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む二成分現像剤を貯留する現像剤貯留部81(現像剤収容部)が備えられている。また、現像ハウジング80の内部には、現像剤貯留部81の上方に配置された磁気ローラー82(現像剤担持体)と、磁気ローラー82の斜め上方位置で磁気ローラー82に対向配置された現像ローラー83(トナー担持体)と、磁気ローラー82に対向配置された現像剤規制ブレード84(層厚規制部材)とが配設されている。また、現像装置122は、駆動部962と、現像バイアス印加部88とを備える(
図2)。
【0046】
図2および
図5を参照して、現像剤貯留部81は、現像装置122の長手方向に延びる2つの隣り合う第1現像剤貯留室81a、第2現像剤貯留室81bを含む。第2現像剤貯留室81bは、磁気ローラー82に対向して配置されている。第1現像剤貯留室81a、第2現像剤貯留室81bは、現像ハウジング80に一体に形成され長手方向に延びる仕切り板801によって互いに仕切られているが、長手方向(軸方向)における両端部において第1連通部81c、第2連通部81dによって互いに連通されている。第1現像剤貯留室81aおよび第2現像剤貯留室81bには、軸回りに回転することにより現像剤を攪拌及び搬送する第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86(搬送部材)がそれぞれ収容されている。第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86は、シャフトと、シャフト回りに配置されたスクリュー羽根とを備える。第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86は、駆動部962により回転駆動されるが、その回転方向および現像剤の搬送方向が互いに逆方向に設定されている。これにより現像剤は、第1現像剤貯留室81aおよび第2現像剤貯留室81b間を、
図5の矢印D1(第2搬送方向)、D3、D2(第1搬送方向)およびD4で示すように、攪拌されつつ循環搬送される。この攪拌により、トナーとキャリアとが混合され、トナーが例えばプラスに帯電される。
【0047】
磁気ローラー82は、現像装置122の長手方向に沿って、現像ローラー83に対向するように現像ハウジング80に回転可能に支持されている。磁気ローラー82は、
図2では時計方向に回転駆動される。磁気ローラー82の内部には、固定式の所謂磁石ロール(固定磁石、図示せず)が配置されている。磁石ロールは複数の磁極を有しており、本実施形態では汲上極821、規制極822及び主極823を有する。汲上極821は現像剤貯留部81に対向し、規制極822は現像剤規制ブレード84に対向し、主極823は現像ローラー83に対向している。
【0048】
磁気ローラー82は、汲上極821の磁力によって現像剤貯留部81から現像剤をその周面82A上に磁気的に汲み上げる(受け取る)。磁気ローラー82は、周面82A上に、汲み上げられた現像剤を磁気的に現像剤層(磁気ブラシ層)として担持する。そして、磁気ローラー82は、現像ローラー83にトナーを供給する。磁気ローラー82の回転に伴って、前記現像剤は現像剤規制ブレード84に向けて搬送される。
【0049】
現像剤規制ブレード84は、現像ローラー83と磁気ローラー82とが対向する領域よりも磁気ローラー82の回転方向上流側において、磁気ローラー82に対向して配置される。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aに磁気的に付着した現像剤の層厚を規制する。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aとの間で所定の寸法の規制ギャップGを形成する。これにより、周面82A上には所定厚さの均一な現像剤層が形成される。
【0050】
現像ローラー83は、現像装置122の長手方向に沿って、且つ、磁気ローラー82に対して平行に延びるように配設されており、
図2では時計方向に回転駆動される。現像ローラー83は、感光体ドラム121に対向して配置される。現像ローラー83は、円筒形状からなり、軸回りに回転可能に現像ハウジング80に支持されている。現像ローラー83は、磁気ローラー82の周面82A上に保持された現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層からトナーを受け取ってトナー層を担持する周面83Aを有する。現像動作が行なわれる現像時には、現像ローラー83は、前記トナー層のトナーを感光体ドラム121の周面に供給する。本実施形態では、現像ローラー83は、円筒状のスリーブ830(基材)と、スリーブ830の表面に形成された樹脂コート(ナイロンコート)(表面層)と、を備えるローラーである(
図3(B))。
【0051】
現像ローラー83、磁気ローラー82、第1スクリューフィーダー85および第2スクリューフィーダー86は、駆動部962によって同期して回転駆動される。現像ローラー83の周面83Aと磁気ローラー82の周面82Aとの間には、所定の寸法の隙間S(
図2)が形成されている。隙間Sは例えば0.3mmに設定されている。現像ローラー83は、現像ハウジング80に形成された開口を通して感光体ドラム121に臨むように配置され、周面83Aと感光体ドラム121の周面との間にも所定の寸法の隙間が形成されている。本実施形態では、前記隙間は0.12mmに設定されている。
【0052】
現像バイアス印加部88は、磁気ローラー82および現像ローラー83に、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。感光体ドラム121と現像ローラー83との間、また、現像ローラー83と磁気ローラー82との間には、高い交流電圧が印加される。特に、磁気ローラー82から現像ローラー83にトナーが供給され、更に、現像ローラー83から感光体ドラム121にトナーが供給されるため、公知の一成分および二成分現像装置と比較して、トナーの移動のために、現像ローラー83には高い交流電圧が印加される。
【0053】
図5を参照して、現像装置122は、更に、逆搬送部86A(現像剤滞留部)と、現像剤排出部87とを備える。逆搬送部86Aは、第2現像剤貯留室81bの前端部、すなわち、第2スクリューフィーダー86の搬送方向(第1搬送方向、
図5の矢印D2)下流側端部において、第2スクリューフィーダー86と同軸上に固定されたスクリュー羽根である。ただし、逆搬送部86Aのスクリュー羽根は、第2スクリューフィーダー86のスクリュー羽根とは逆方向に向かって配置されている(逆スクリュー羽根)。逆搬送部86Aは、第2連通部81dの前端側に対向して配置されている。逆搬送部86Aは、第2スクリューフィーダー86と一体回転し、第2スクリューフィーダー86によって搬送された現像剤を逆方向に押し戻し、現像剤を部分的に滞留させる。
【0054】
現像剤排出部87は、逆搬送部86Aよりも前側において第2現像剤貯留室81bに連通している。現像剤排出部87は、内部に空間部を備える円筒状の壁部と、前記空間部で回転する排出スクリュー87Aとを備える。排出スクリュー87Aは、第2スクリューフィーダー86と同軸上に固定されたスクリュー羽根である。排出スクリュー87Aは、第2スクリューフィーダー86のスクリュー羽根と同じ向きに配置されている。逆搬送部86Aによって形成された現像剤の滞留部から、一部の現像剤が逆搬送部86Aを乗り越え現像剤排出部87に流入すると、前記現像剤は現像剤排出部87の排出スクリュー87Aによって後方に搬送された後(
図5の矢印D5)、不図示の排出口から排出される。このように、本実施形態では、現像装置122の内部から現像剤の一部が排出されるトリクル技術が採用される。なお、第2スクリューフィーダー86の搬送方向下流側では、現像ローラー83から消費されたトナーの分だけ現像剤のトナー濃度が低くなる。したがって、キャリア率の高い現像剤を効率的に現像剤排出部87から排出することができる。なお、現像装置122にキャリアを補うために、トナーカートリッジ(不図示)の内部にトナーとともにキャリアが収容されてもよく、他のキャリア補給タンクが備えられてもよい。
【0055】
図3(A)を参照して、本実施形態では、感光体ドラム121の軸方向の長さが、現像ローラー83の軸方向の長さよりも大きく設定されている。このため、現像ローラー83の軸方向の両端部は、感光体ドラム121の軸方向の両端部よりも内側の領域Lにおいて感光体ドラム121に対向する。なお、現像ローラー83の軸方向の両端部には不図示のトラッキングローラーが固定されている。トラッキングローラーは、感光体ドラム121の両端部に当接することで、現像ローラー83と感光体ドラム121との間のギャップを規制する。また、現像ハウジング80は、感光体ドラム121に向かって不図示の付勢ばねで付勢されている。この結果、現像ローラー83と感光体ドラム121との間のギャップがより安定して維持される。
【0056】
図3(B)を参照して、現像ローラー83のスリーブ830は、アルミニウムからなる。現像ローラー83のコート層83Cは、以下の浸漬法によって形成される。まず、スリーブ830の外周面にアルマイト処理が施され、厚さ10μmのアルマイト層(酸化層)が形成される。アルミニウムからなるスリーブ830の上に酸化層が形成されることで、コート層83Cの基材に対する付着力が増大される。この結果、コート層83Cの剥離が抑制される。その後、スリーブ830の表面、すなわち、アルマイト層の表面が120℃で10分以上熱処理される。この熱処理は、コート層83Cの乾燥工程においてクラックが生じることを抑止するため、予めスリーブ830にクラックを意図的に生じさせるために行われる。前記熱処理の時間は予め定められており、例えば、前記乾燥工程に要する時間以上に定められている。前記熱処理は、常に一定の温度で一定の時間だけ行われる。これにより、前記熱処理が行われる全てのスリーブ830に対して概ね定量のクラックが生じる。
【0057】
前記熱処理の後にアルマイト層上にコート層83Cを形成する処理が行われる。具体的には、結着樹脂としてのアルコール可溶性のナイロン樹脂100重量部、顔料、導電剤として酸化チタン50〜125重量部、および分散媒体としてのメタノール800重量部が、直径1.0mmのジルコニアビーズとともにボールミルで約48時間混合され混合液が準備される。その混合液に表面がアルマイト処理された直径12〜20mmのスリーブ830を所定時間浸漬させた後に引き上げ、130℃の高温環境の下で10分間乾燥させる。なお、スリーブ830は、円筒形状の軸方向が鉛直方向に沿うように、混合液の中に浸漬されるとともに、引き上げられる。また、スリーブ830の引き上げ時には、円筒状のポリテトラフルオロエチレン製ブレードによって、表面に付着した混合液が削ぎ落とされる。この結果、厚み2μm〜11μmのコート層83Cがコーティングされたスリーブ830が製作される。このように、コート層83Cがコーティングされる前に、予め熱処理によってアルマイト層にクラックが生成される。このため、コート層83Cに含有されている導電剤が、コート層83Cの乾燥時にコート層83Cの内部に発生する対流の影響で偏在することが防止される。この結果、導電材が均一に分散したコート層83Cを形成することが可能になる。また、コート層83Cには、導電材として酸化チタンのみが分散されているため、コート層83Cがより硬く形成されコート層83Cの摩耗が低減される。
【0058】
一方、上記のような浸漬法によってコート層83Cが形成される場合、スリーブ830の表面に付着した混合液は、引き上げ時の重力の影響によって下方に垂れ下がりやすい。このため、浸漬時に下端側に位置するスリーブ830の表面には、軸方向の中央部と比較して部分的に厚いコート層83Cが形成される。特に、スリーブ830の下端部には、部分的に、コート層83Cの厚さが増した溜り部83C1が形成されやすい。また、浸漬時に上端側に位置するスリーブ830の表面には、軸方向の中央部と比較して部分的に薄いコート層83C(薄層部83C2)が形成される。
【0059】
図4(A)は、スリーブ830に形成されたコート層83Cの下端側の膜厚の分布を示している。一方、
図4(B)は、スリーブ830に形成されたコート層83Cの上端側の膜厚の分布を示している。いずれも、横軸は、スリーブ830の端部からの距離を示し、縦軸は、軸方向におけるそれぞれの位置に応じた膜厚を、コート層83Cの平均膜厚に対する差分として示している。
図4(A)、(B)に示すように、コート層83Cのうち上端部の薄い部分の長さは、下端部の厚い部分の長さよりも長い。また、コート層83Cの上端部の最大膜厚減少分(3μm)は、下端部の最大膜厚上昇分(3.5μm)に近似した値となっている。
【0060】
図5では、現像ローラー83上のコート層83Cの分布が誇張して図示されている。前述のように、本実施形態では、現像ローラー83の軸方向が鉛直方向に沿うように、スリーブ830が所定の浸漬槽に浸漬される浸漬法によってコート層83Cが形成される。そして、現像ローラー83の浸漬時の下端側が第2スクリューフィーダー86の搬送方向(
図5の矢印D2)上流側に配置され、現像ローラー83の浸漬時の上端側が前記搬送方向下流側に配置されるように、現像ローラー83が現像ハウジング80に装着されている。
【0061】
磁気ローラー82に隣接する第2スクリューフィーダー86は、第2現像剤貯留室81bにおいて、軸方向の一端側から他端側に向かう搬送方向(第1搬送方向)に現像剤を搬送しながら、磁気ローラー82に現像剤を供給する。この際、第1搬送方向下流側にいくほど、第2スクリューフィーダー86による現像剤の攪拌時間が長くなる。このため、第1搬送方向の上流側の現像剤の帯電量は下流側の現像剤の帯電量よりも低くなりやすい。第1搬送方向上流側の磁気ローラー82上のトナーの帯電量が低い場合、現像ローラー83上のトナーの帯電量も低くなる。このように、トナーの帯電量が低い場合、現像バイアスが形成する現像電界へのトナーの応答性が低いため、現像性能が低下する。一方、第1搬送方向下流側では、相対的にトナーの帯電量が高いため、現像性能が部分的に増大される。この結果、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動しやすくなる。このような場合であっても、本実施形態では、スリーブ830の浸漬時の下端側が現像ハウジング80の第1搬送方向上流側に配置され、スリーブ830の浸漬時の上端側が現像ハウジング80の第1搬送方向下流側に配置されている。このため、第1搬送方向上流側では、現像ローラー83と感光体ドラム121との間隔が狭くなり、現像性能が部分的に高く調整される。したがって、トナーの帯電量が比較的低い第1搬送方向上流側においても、現像ローラー83から感光体ドラム121に安定してトナーが供給される。一方、第1搬送方向下流側では、現像ローラー83と感光体ドラム121との間隔が広くなり、現像性能が部分的に低く調整される。この結果、トナーの帯電量が第1搬送方向に沿って高くなるように分布する場合でも、現像ローラー83の軸方向における画像濃度の変動が抑制される。
【0062】
更に、本実施形態では、前述のように、第2スクリューフィーダー86の搬送方向下流側では逆搬送部86Aによって現像剤が部分的に滞留している(
図5の領域K)。現像剤貯留部81内を循環する現像剤量が増えた場合、逆搬送部86Aによる現像剤の滞留部は、磁気ローラー82の第1搬送方向下流側端部に隣接する領域まで拡大することがある。この場合、磁気ローラー82の第1搬送方向下流側部分では、周面に担持される現像剤の嵩が増大する(
図5の領域HB)。この結果、現像剤規制ブレード84(
図2)の裏側(下側)の現像剤量が増大し、現像剤規制ブレード84を通過する現像剤量も増加する。そして、磁気ローラー82上に担持された多量の現像剤は、磁気ローラー82と現像ローラー83との間の隙間S(
図2)を通過しにくく、現像剤の詰まりが生じやすくなる。また、磁気ローラー82と現像ローラー83との間で滞留した現像剤は、行き場を失い、軸方向に沿って移動した後、現像ハウジング80からこぼれやすくなる。加えて、現像ローラー83上のコート層83Cが磁気ローラー82上の多量の現像剤の磁気ブラシによって研磨され、コート層83Cの寿命が短くなる。
【0063】
本実施形態では、現像ローラー83の浸漬時の上端側が第2スクリューフィーダー86の搬送方向下流側に配置されている。すなわち、
図5を参照して、コート層83Cの薄層部83C2が、磁気ローラー82の第1搬送方向下流側端部に対向して配置される。このため、磁気ローラー82の第1搬送方向下流側部分では、部分的に磁気ローラー82と現像ローラー83との間の隙間Sが広くなる。この結果、磁気ローラー82の周面に担持された多量の現像剤が磁気ローラー82と現像ローラー83との間をすり抜けやすくなる。したがって、隙間Sにおける現像剤の詰まりや、現像ハウジング80から現像剤がこぼれることが抑止される。更に、隙間Sにおいて磁気ローラー82上の磁気ブラシによるコート層83Cの研磨、薄層化が抑制される。
【0064】
一方、第2スクリューフィーダー86の搬送方向上流側では、第1連通部81cを介して第1現像剤貯留室81aから第2現像剤貯留室81bに現像剤が受け渡される。受け渡された現像剤は、第2スクリューフィーダー86の搬送力によって
図5の矢印D2方向に搬送される。このため、第2現像剤貯留室81bの上流側端部では、現像剤が溜まりにくく、磁気ローラー82上に担持される現像剤量は相対的に少なくなる(
図5の領域HA)。この場合、磁気ローラー82上の磁気ブラシが薄層化するため、磁気ブラシの掻き取り力が低下する。この結果、現像ローラー83上に担持された古いトナーが磁気ローラー82側に戻りにくく、現像ローラー83上に画像履歴が残りやすくなる(現像ゴースト)。
【0065】
本実施形態では、上記のように磁気ローラー82の第1搬送方向上流側で生じる課題を解決するために、現像ローラー83の浸漬時の下端側が第2スクリューフィーダー86の第1搬送方向上流側に配置されている。すなわち、
図5を参照して、コート層83Cの溜り部83C1が、磁気ローラー82の第1搬送方向上流側端部に対向して配置される。このため、磁気ローラー82の第1搬送方向上流側部分では、部分的にコート層83Cの厚さが厚くなり、磁気ローラー82と現像ローラー83との隙間が狭くなる。したがって、磁気ローラー82上に担持される現像剤量が相対的に少ない場合でも、磁気ブラシによるトナーの掻き取り力が確保され、現像ローラー83上に担持された古いトナーが磁気ローラー82側に効率的に回収される。この結果、現像ローラー83上の画像履歴が抑制され、画像上の現像ゴーストの発生が抑止される。以上のように、本実施形態では、現像ローラー83の浸漬時の上下方向の端部の配置が、第2スクリューフィーダー86の搬送方向に応じて適切に設定されているため、第2スクリューフィーダー86の搬送方向の上流側から下流側にかけて、すなわち、軸方向全体に亘って現像ローラー83から磁気ローラー82に安定してトナーが供給される。
【0066】
また、本実施形態では、現像装置122が現像剤排出部87を備える。現像剤貯留部81内の現像剤、特にキャリアが徐々に入れ替えられることで、現像剤の寿命が長く維持される。この結果、長期に亘って安定した画像が形成される。そして、第2スクリューフィーダー86の下流側端部において現像剤が逆搬送部86Aによって滞留される場合でも、現像ローラー83の浸漬時の上端側が第1搬送方向下流側に配置されているため、現像剤の詰まり、こぼれ、更には、コート層83Cの著しい薄層化が抑止される。
【0067】
以上、本発明の各実施形態に係る現像装置122および画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0068】
(1)上記の実施形態では、画像形成装置1としてフルカラー機を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像形成装置1は、白黒画像を印刷するモノクロ機であってもよい。
【0069】
(2)上記の実施形態では、逆搬送部86A(現像剤滞留部)は、現像剤排出部87から現像剤を排出させるために、部分的に現像剤を滞留させる態様にて説明した。本発明はこれに限定されるものではない。第2スクリューフィーダー86の搬送方向下流側端部に、第2スクリューフィーダー86を回転可能に支持する不図示の軸受部が現像ハウジング80に装着される。逆搬送部86Aは、上記の軸受部への現像剤の進入を抑止するために、部分的に現像剤を滞留させるものであってもよい。
【0070】
(3)また、上記の実施形態では、タッチダウン現像方式が適用された現像装置122を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図6は、本発明の変形実施形態に係る現像装置9の断面図である。
図7は、現像装置9の模式的な平面図である。なお、
図7では、後記のコート層931Cの厚さが誇張して示されている。
図8は、現像装置9の現像ローラー931の膜厚の様子を示すグラフである。
【0071】
現像装置9は、現像ハウジング930(ハウジング)と、現像ローラー931(現像剤担持体)と、第1スクリューフィーダー932(搬送部材)と、第2スクリューフィーダー933と、規制ブレード60(層厚規制部材)とを備える。現像装置9には、磁性一成分現像方式が採用されている。
【0072】
現像ハウジング930には、現像剤収容部930Hが備えられている。現像剤収容部930Hには、磁性一成分現像剤が収容されている。また、現像剤収容部930Hは、現像剤が現像ローラー931の軸方向の一端側から他端側に向かう第1搬送方向(
図6の紙面と直交する方向、前から後に向かう方向、
図7の矢印D2方向)に搬送される第1搬送部930Aと、軸方向の両端部において第1搬送部930Aに連通され、第1搬送方向とは逆の第2搬送方向(
図7の矢印D1方向)に現像剤が搬送される第2搬送部930Bとを含む。第1搬送部930Aおよび第2搬送部930Bは、第1連通口930Cおよび第2連通口930Dによって連通されている。第1スクリューフィーダー932および第2スクリューフィーダー933は、
図6の矢印D62、63方向に回転され、それぞれ、現像剤を第1搬送方向(
図7の矢印D2)および第2搬送方向(
図7の矢印D1)に搬送する。特に、第1スクリューフィーダー932は、現像剤を第1搬送方向に搬送しながら、現像ローラー931に現像剤を供給する。現像剤は、第1搬送部930Aおよび第2搬送部930B間を、
図7の矢印D1、D3、D2およびD4で示すように、攪拌されつつ循環搬送される。
【0073】
現像ローラー931は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム921(
図7、像担持体)に対して間隔をおいて配置されている。現像ローラー931は、回転されるスリーブ931Sと、スリーブ931Sの内部に固定配置された磁石931M(固定磁石)とを備える。
図6において、実線MCは、磁石931Mの法線方向の磁力分布を示している。磁石931Mは、S1、N1、S2およびN2極を備える。このように、本変形実施形態では、磁石931Mは、スリーブ931Sの回転における周方向に沿って隣接して配置された複数の磁極を備え、前記複数の磁極の極性は、前記周方向に沿って異なる磁極が交互に配置されるように設定されている。
【0074】
また、現像ローラー931は、
図6の矢印D61方向に回転される。規制ブレード60は、現像ローラー931に所定の間隔をおいて配置され、第1スクリューフィーダー932から現像ローラー931の周面上に供給された現像剤の層厚を規制する。また、磁性トナー(磁性一成分現像剤)は、規制ブレード60と現像ローラー931との間で、摩擦帯電(荷電)される。
【0075】
本変形実施形態では、現像ローラー931のスリーブ931Sが本発明の基材に相当する。そして、スリーブ931Sの表面には、コート層931C(
図7)が形成されている。換言すれば、基材は、現像ローラー931の一部であって、コート層は、現像ローラー931の周面に形成されている。そして、スリーブ931Sの軸方向が鉛直方向に沿うようにスリーブ931Sが所定の浸漬槽に浸漬される浸漬法によってコート層931Cが形成される。なお、コート層931Cは、先の実施形態に係るコート層83Cと同様の工程で形成される。
【0076】
図8を参照して、スリーブ931Sの長手方向(軸方向)において、浸漬時の上端側では、190mmから220mmの位置で部分的にコート層931Cの厚さが薄くなっている(ローラー薄層部931C2、
図7)。一方、スリーブ931Sの長手方向(軸方向)において、浸漬時の下端側では、0mmから20mmの位置で部分的にコート層931Cの厚さが厚くなっている(ローラー厚層部931C1、
図7)。そして、本変形実施形態では、スリーブ931Sの浸漬時の下端側(コート層931Cのローラー厚層部931C1)が現像ハウジング930の第1搬送方向上流側に配置され、スリーブ931Sの浸漬時の上端側(コート層931Cのローラー薄層部931C2)が現像ハウジング930の第1搬送方向下流側に配置されている。
【0077】
現像ローラー931は、第1スクリューフィーダー932から一成分現像剤を受け取り、感光体ドラム921に当該現像剤を供給する。第1搬送部930Aでは、第1搬送方向下流側にいくほど、第1スクリューフィーダー932による現像剤の攪拌時間が長くなる。この結果、第1搬送方向上流側の現像ローラー931上の現像剤の帯電量が相対的に低くなり、第1搬送方向上流側の感光体ドラム921上の画像濃度が低くなりやすい。また、このように現像剤の帯電量が低い領域では、現像剤が飛散しやすく、現像剤かぶりが発生しやすい。このように第1搬送方向に沿って現像剤の帯電量に差が生じやすい条件として、第1スクリューフィーダー932の回転数が100rpm未満の場合、特に、10〜60rpmの場合があげられる。本変形実施形態では、現像ローラー931のコート層931Cのうち、第1搬送方向上流側の膜厚が部分的に厚く設定されている(ローラー厚層部931C1、
図7)。このため、第1搬送方向上流側では、現像ローラー931と感光体ドラム921との間のギャップが狭くなり、現像性能が増大される。したがって、現像剤の帯電量が比較的低い第1搬送方向上流側においても、現像ローラー931から感光体ドラム921に安定して現像剤が供給される。この結果、第1搬送方向に沿って画像濃度に変動が生じることが抑制される。
【0078】
また、本変形実施形態では、上記のように、磁石931Mには、周方向に沿って異なる磁極が交互に配置されている。このため、強い剥離用の磁極が形成された場合と比較して、現像ローラー931のスリーブ931Sから現像剤が剥がれにくく、第1搬送方向に移動しながらスリーブ931S上を周回しつづける現像剤が存在しやすい。このような現像剤は、第1搬送方向下流側に進むにつれて、規制ブレード60を複数回通過するため、摩擦帯電によって帯電量が増大される。したがって、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動しやすくなる。このような場合でも、上記のように、スリーブ931Sの浸漬時の下端側がハウジングの第1搬送方向上流側に配置され、スリーブ931Sの浸漬時の上端側がハウジングの第1搬送方向下流側に配置される。この結果、現像ローラー931と感光体ドラム921との間のギャップが部分的に調整され、第1搬送方向に沿って画像濃度が変動することが抑止される。
【0079】
なお、
図6を参照して、磁石931Mでは、N1極、S1極およびN2極に対応する扇形の磁性部材が配置され、3つの磁極が着磁されることで、S2極がダミー極として形成される場合がある。このような場合であっても、強い剥離用の磁界が形成されないため、上記のように現像剤がスリーブ931S上を周回することがある。したがって、本発明において「周方向に沿って異なる極性の磁極が交互に配置される」とは、着磁後の現像ローラー931における磁極配置を意味している。
【実施例】
【0080】
<評価1>
次に、先の第1の実施形態に係る現像装置122の好ましい態様について、実施例をもとに説明する。なお、以後の各実験は、下記の実験条件にて行った。
<実験条件について>
・現像方式:2成分現像剤タッチダウン現像方式
・プリント速度:55枚/分
・感光体ドラム121:a−Si感光体
・感光体ドラム121の周速度:275mm/sec
・現像ローラー83:アルマイト表面処理+ナイロン樹脂コート
・現像ローラー83の周速度:感光体ドラム121に対して周速比1.6(ウィズ回転)
・磁気ローラー82の周速度:現像ローラー83に対して周速比1.1(カウンター回転)
・感光体ドラム121と現像ローラー83とのギャップ:0.1mm
・磁気ローラー82と現像ローラー83とのギャップ:0.25mm
・感光体ドラム31の表面電位:+230V(背景部)、+20V(画像部)
・現像ローラー83に印加される現像バイアス:交流電圧の周波数4.7kHz、Duty43%、Vpp1700V、直流電圧50V
・磁気ローラー82に印加される現像バイアス:交流電圧の周波数4.7kHz、Duty68%、Vpp700V、直流電圧280V
・トナーの平均粒径:6.8μm(正帯電性)
【0081】
実施例1(表1)では、上記の実施形態のように、現像ローラー83の浸漬時の下端側が第2スクリューフィーダー86の第1搬送方向上流側に配置され、現像ローラー83の浸漬時の上端側が第1搬送方向下流側に配置されるように、現像ローラー83が現像ハウジング80に装着されている。一方、比較例1(表2)では、現像ローラー83の浸漬時の上端側が第2スクリューフィーダー86の第1搬送方向上流側に配置され、現像ローラー83の浸漬時の下端側が第1搬送方向下流側に配置されるように、現像ローラー83が現像ハウジング80に装着されている。実施例および比較例では、それぞれ画像密度3.8%の画像が連続して500K(500×1000)枚印刷される。表1および表2に、それぞれのコート層の膜厚の推移および先端高濃度の画像評価結果が示される。なお、先端高濃度とは、全面ベタ(画像密度100%)画像を印刷した場合に、シートの搬送方向先端側において部分的に画像濃度が高くなる画像欠陥である。特に、磁気ローラー82のうち第2スクリューフィーダー86の搬送方向上流側において、現像ローラー83から磁気ローラー82へのトナーの回収性が悪い場合に、一時的に現像ローラー83上に担持されるトナー量が増大し、画像濃度が高くなる。表1および表2では、先端高濃度が発生しなかった場合を○とし、先端高濃度が発生した場合を×として示している。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1に示すように、実施例1では、現像ローラー83の浸漬時の上端側(初期膜厚4μm)が第2スクリューフィーダー86の第1搬送方向下流側に配置されることによって、現像ローラー83と磁気ローラー82との間を現像剤が通過しやすい。このため、500K枚の印刷終了時点で、コート層83Cの膜厚が3μmを下回っていない。また、実験全体を通じて、先端高濃度が発生せず、安定した画像が維持された。一方、比較例1では、現像ローラー83の浸漬時の下端側(初期膜厚10μm)が第2スクリューフィーダー86の搬送方向下流側に配置されることによって、コート層83Cが薄層化し、500K枚の印刷終了時点で、コート層83Cの膜厚が3μmを下回る結果となった。更に、実験初期から終了時まで、現像ローラー83からのトナーの回収性が悪く、先端高濃度が発生する結果となった。
【0085】
<評価2>
次に、現像装置9の好ましい態様について、実施例をもとに説明する。なお、以後の各実施例は、下記の実験条件にて行った。
<実験条件について>
・現像方式:磁性一成分現像方式(磁性トナー)
・プリント速度:25枚/分
・感光体ドラム921:OPC感光体
・感光体ドラム921の周速度:170mm/sec
・第1スクリューフィーダー932の回転数:57rpm
・現像ローラー931:アルマイト表面処理+ナイロン樹脂コート
・現像ローラー931の周速度:感光体ドラム921に対して周速比1.4(ウィズ回転)
・感光体ドラム921と現像ローラー931とのギャップ:0.25mm
・現像ローラー931上の現像剤搬送量:0.71mg/cm
2
・感光体ドラム921の表面電位:+430V(背景部)、+100V(画像部)
・現像ローラー931に印加される現像バイアス:交流電圧の周波数4.7kHz、Duty43%、Vpp1700V、直流電圧150V
・トナーの平均粒径:6.8μm(正帯電性)
【0086】
実施例2では、先の第2の実施形態に示すように、現像ローラー931のスリーブ931S上に浸漬法(ディッピング法)にて、コート層931Cが形成されている。コート層931Cの厚さは、長手方向(軸方向)の中央部において8μmに設定される。そして、現像ローラー931の浸漬時の上端側が第1スクリューフィーダー932の第1搬送方向下流側に配置され、現像ローラー931の浸漬時の下端側が第1搬送方向上流側に配置される。一方、比較例2では、現像ローラー931のスリーブ931S上にコート層931Cが形成されない、ノンコートスリーブが使用される。実施例2および比較例2ともに、画像密度0.2%の画像が1枚間欠モードで3000枚印刷される。印刷後のそれぞれの評価結果が表3に示される。
【0087】
【表3】
【0088】
表3において、トナーの帯電量の測定には、Trek社のModel210HS−2A q/m Meterが用いられた。また、印刷後の画像濃度(I.D)の測定には、東京電色社製のDensit Meter TC−6DSが用いられた。また、トナーかぶりの評価において、○は目視上で問題ないレベルを示し、×は目視でかぶりが視認されるレベルを示している。
【0089】
実施例2、比較例2のいずれにおいても、第1搬送部930A(
図6)の第1搬送方向上流側のトナーの帯電量(6μc/g)よりも、第1搬送方向下流側のトナーの帯電量(8μc/g)の方が高くなっている。そして、比較例2では、トナーの帯電量に応じて、画像濃度にも大きな差が生じる結果となった。更に、第1搬送方向上流側では、帯電量の低いトナーが感光体ドラム921側に飛散し、トナーかぶりが発生した。
【0090】
一方、実施例2では、トナーの帯電量の差を、感光体ドラム921と現像ローラー931との間のギャップが補うことで、現像性能が調整され、画像濃度の差が低減する結果となった。また、第1搬送方向上流側では、コート層931Cのローラー厚層部931C1(
図7)が、感光体ドラム921の周面に近い位置に配置され、飛散したトナーや感光体ドラム921の周面に付着した不要なトナーが回収されることで、トナーかぶりが抑制される結果となった。