特許第6204317号(P6204317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204317
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G03G15/16 103
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-187668(P2014-187668)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-61832(P2016-61832A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大倉 朋久
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−092277(JP,A)
【文献】 特開昭59−104667(JP,A)
【文献】 特開平09−134081(JP,A)
【文献】 特開2008−096687(JP,A)
【文献】 特開平11−219042(JP,A)
【文献】 特開2003−307941(JP,A)
【文献】 特開平11−338279(JP,A)
【文献】 特開2014−126818(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0311252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
被記録媒体を押圧する押圧部を前記像担持体と共に形成し、前記像担持体上の前記トナー像を前記押圧部を通過する前記被記録媒体に転写する転写部と、
前記転写部に転写電流を供給することによって、転写バイアスを前記転写部に印加する転写バイアス印加部と、
前記押圧部に向けて搬送方向に前記被記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部に接続され、規定の値以上の電圧が印加されたときに導通する素子と、
前記素子に流れるリーク電流の値を測定する電流測定部と、
前記転写電流の値を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記リーク電流の絶対値に基づいて前記転写電流の絶対値を変更
前記リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、前記制御部は、前記像担持体に対して前記押圧部に突入する前記被記録媒体の突入角度が小さくなるように前記突入角度を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記電流測定部は、規定の時間で区切られたリーク電流測定区間ごとに前記リーク電流を測定し、
前記制御部は、前記リーク電流測定区間終了後に前記リーク電流の絶対値に基づいて前記転写電流の絶対値を変更する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、前記制御部は、前記転写電流の絶対値を変更する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記閾値は第1閾値と第2閾値とを含み、
前記リーク電流の絶対値が前記第1閾値以上前記第2閾値未満である場合、前記制御部は、前記転写電流の絶対値を第1変化量だけ変更し、
前記リーク電流の絶対値が前記第2閾値以上である場合、前記制御部は、前記転写電流の絶対値を第2変化量だけ変更する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記リーク電流測定区間の前記リーク電流の絶対値が前記第1閾値未満であり、かつ、前記リーク電流測定区間よりも1つ前のリーク電流測定区間において前記制御部が前記転写電流の絶対値を前記第2変化量だけ小さくなるように制御した場合、
前記リーク電流測定区間の次の区間において前記制御部は、前記転写電流の絶対値を前記第1変化量だけ大きくなるように制御する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、前記制御部は、前記搬送部における前記被記録媒体の搬送速度を、前記押圧部における前記被記録媒体の搬送速度よりも速くする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記被記録媒体を前記押圧部に向けて案内するガイド部材をさらに備え、
前記ガイド部材は、
固定部と、
前記固定部よりも前記搬送方向に対して下流に位置し、前記搬送方向に交差する方向に対して可動である可動部と
を有し、
前記リーク電流の絶対値に基づいて、前記制御部は、前記可動部の位置を変更する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記素子は、バリスタまたはツェナーダイオードである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体は感光体ドラムであり、
前記被記録媒体と前記感光体ドラムとが直接接触する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置が知られている。電子写真方式の画像形成装置は、一般に、帯電、露光、現像、および転写等の各工程を行って用紙に画像を形成する。
【0003】
具体的には、まず、帯電工程において、像担持体である感光体ドラムの外周面(以下「像担持面」という)が第1の極性(例えば、正極)の所定の電位に一様に帯電される。次に、露光工程において、像担持面が露光されて像担持面上に静電潜像が形成される。その後、現像工程において、帯電されたトナーを用いて像担持面上の静電潜像が現像される。これにより、像担持面上にトナー像が形成される。なお、現像方式として反転現像方式が採用される場合は、像担持面が帯電している極性と同じ極性(第1の極性)に帯電されたトナーが用いられる。
【0004】
その後、転写工程において、第1の極性とは逆の第2の極性の転写バイアスが、感光体ドラムに圧接された転写ローラーに供給され、像担持面上に形成されたトナー像が、感光体ドラムと転写ローラーとの間の押圧部(ニップ部)を通過する用紙に転写される。これにより、用紙に画像が形成される。そして、転写工程が行われた後、像担持面がクリーニングおよび除電され、再度帯電工程が開始される。
【0005】
高湿環境において用紙が含水している場合、用紙を介して転写電流が感光体ドラム周辺の用紙搬送部にリークする可能性があった。転写電流のリーク電流を抑制するために、用紙搬送部に抵抗を接続することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−194206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置においては、用紙が含水している場合、転写電流を流すと押圧部の近傍で帯電し、トナーが押圧部の近傍に引き寄せられ画像不良が発生する可能性があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は画像不良の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、転写部と、転写バイアス印加部と、搬送部と、素子と、電流測定部と、制御部とを備える。像担持体は、トナー像を担持する。前記転写部は、被記録媒体を押圧する押圧部を前記像担持体と共に形成する。前記転写部は、前記像担持体上の前記トナー像を前記押圧部を通過する前記被記録媒体に転写する。前記転写バイアス印加部は、前記転写部に転写電流を供給することによって、転写バイアスを前記転写部に印加する。前記搬送部は、前記押圧部に向けて搬送方向に前記被記録媒体を搬送する。前記素子は、前記搬送部に接続される。前記素子は、規定の値以上の電圧が印加されたときに導通する。前記電流測定部は、前記素子に流れるリーク電流の値を測定する。前記制御部は、前記転写電流の値を制御する。前記制御部は、前記リーク電流の絶対値に基づいて前記転写電流の絶対値を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例の構成図である。
図2】実施形態に係る画像形成部およびその周辺の一例の構成図である。
図3】転写電流およびリーク電流値のタイミングチャートである。
図4】(a)および(b)は、実施形態に係る画像形成部およびその周辺の一例の構成図である。
図5】実施形態に係る画像形成装置の他の一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0013】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例の構成図である。
【0014】
画像形成装置100は、例えば複合機(MFP:Multi Function Peripheral)である。画像形成装置100は、スキャナー、複写機、プリンター、およびファクシミリ(FAX)の各機能を有する。画像形成装置100は、被記録媒体の一例である用紙Pに画像を形成する画像形成ユニット1と、原稿の画像を読み取る画像読取ユニット2と、読み取り対象の原稿を搬送する原稿搬送装置3と、ユーザーに画像形成装置100を操作させるための操作パネル4とを備える。
【0015】
画像形成ユニット1は、給紙カセット11と、給紙ローラー12と、搬送ローラー対13と、搬送部の一例であるレジストローラー対30と、画像形成部15と、定着器16と、排出ローラー対17と、排出トレイ18とを備える。給紙ローラー12は、給紙カセット11から用紙Pを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー12によって繰り出された用紙Pは、搬送ローラー対13およびレジストローラー対30によって画像形成部15まで搬送される。
【0016】
画像形成部15は、給紙カセット11から搬送されてきた用紙Pに、画像データに基づく画像を形成する画像形成処理を行う。画像データとしては、例えば、画像読取ユニット2が原稿を読み取って生成した画像データまたは通信ネットワークを介して外部のコンピューターから受信した画像データが用いられる。画像形成部15によって画像が形成された用紙Pは、定着器16まで搬送される。画像形成部15の詳細については、図2を参照して後述する。
【0017】
定着器16は、用紙Pに形成された画像を用紙Pに熱定着させる。定着器16は、発熱体を内蔵する加熱ローラーと、加圧ローラーとを備える。加熱ローラーおよび加圧ローラーは、それらが圧接されることにより、定着ニップ部を形成する。用紙Pが定着ニップ部を通過することで、用紙Pの表面のトナーが溶融および加熱され、トナー像が用紙Pに定着する。トナー像が定着された用紙Pは、排出ローラー対17によって排出トレイ18へ排出される。
【0018】
図2は、実施形態に係る画像形成部15およびその周辺の一例の構成図である。
【0019】
画像形成部15は、感光体ドラム20と、帯電ローラー22と、現像ローラー24と、転写ローラー26(転写部)と、転写バイアス印加部28と、クリーニングブレード29と、制御部50とを有する。
【0020】
感光体ドラム20は、正極に帯電されたトナーにより形成されるトナー像を担持する像担持体である。感光体ドラム20は、略円筒形状を有し、その外周面である像担持面21には、静電潜像およびトナー像が形成される。像担持面21は、例えば、有機感光体により形成される。
【0021】
本実施形態において、感光体ドラム20は、図2中の時計回りに回転される。感光体ドラム20の周囲には、帯電ローラー22、露光装置23、現像ローラー24、転写ローラー26、およびクリーニングブレード29が、感光体ドラム20の回転方向に沿って順に配置される。帯電ローラー22、露光装置23、現像ローラー24、転写ローラー26、およびクリーニングブレード29のそれぞれは、像担持面21上の対向する領域(以下「対向領域」という)に対して所定の処理を行う。感光体ドラム20が回転されることにより、像担持面21上の一領域は、帯電ローラー22、露光装置23、現像ローラー24、転写ローラー26、およびクリーニングブレード29のそれぞれに順次対向する。これにより、像担持面21上の一領域に対して、帯電ローラー22による帯電処理、露光装置23による露光処理、現像ローラー24による現像処理、転写ローラー26による転写処理、およびクリーニングブレード29によるクリーニング処理が順に行われる。
【0022】
帯電ローラー22は、正極の帯電バイアスの供給を受けて対向領域を正極の所定の電位に一様に帯電させる帯電処理を行う。本実施形態において、正極の帯電バイアスは、直流バイアスである。帯電ローラー22は、ハウジングにより回転可能に支持される。帯電ローラー22は、その外周面が例えばゴム材料により形成される。帯電ローラー22は、像担持面21に当接することで、感光体ドラム20に従動しながら回転される。帯電ローラー22に帯電バイアスが供給されることにより、帯電ローラー22の対向領域に帯電バイアスが印加され、帯電ローラー22の対向領域が帯電される。
【0023】
露光装置23は、画像データに基づきレーザー光を出力して対向領域を露光する露光処理を行う。露光装置23の対向領域は、帯電ローラー22によって帯電された像担持面21上の領域、すなわち、露光装置23に対向する前に帯電処理が行われた領域である。像担持面21上の処理対象領域の全体に対して露光処理が行われることで、画像データに応じた静電潜像が処理対象領域に形成される。ここで、処理対象領域は、像担持面21上の領域のうち、画像データが示す画像を用紙Pに形成するために利用される領域である。
【0024】
現像ローラー24は、正極に帯電されたトナーを用いて対向領域の静電潜像を現像する現像処理を行う。現像ローラー24の対向領域は、現像ローラー24に対向する前に露光処理が行われた領域である。処理対象領域の全体に対して現像処理が行われることで、画像データに応じたトナー像が処理対象領域に形成される。本実施形態において、画像形成装置100が採用する現像方式は、反転現像方式である。すなわち、現像ローラー24は、像担持面21が帯電している極性と同じ極性(本実施形態では、正極)に帯電されたトナーを、像担持面21における露光処理によって電荷が除去された部分に供給することにより、像担持面21上にトナー像を形成する。
【0025】
現像ローラー24は、現像ローラー24のハウジングにより回転可能に支持される。現像バイアスが現像ローラー24に供給されることで、帯電したトナーが現像ローラー24から像担持面21へ飛翔し、像担持面21上の静電潜像が現像される。
【0026】
転写ローラー26は、用紙Pを押圧する押圧部Nを感光体ドラム20と共に形成し、負極の転写バイアスの供給を受けて像担持面21上のトナー像を押圧部Nを通過する用紙Pに転写する転写装置である。転写ローラー26が感光体ドラム20に圧接されることにより、転写ローラー26と転写ローラー26の対向領域との間に押圧部Nが形成される。本実施形態では、感光体ドラム20と用紙Pとが直接接触する直接転写方式によって転写が行われる。
【0027】
転写ローラー26は、対向領域のトナー像を用紙Pに転写する転写処理を行う。転写ローラー26の対向領域は、転写ローラー26に対向する前に現像処理が行われた領域である。処理対象領域の全体に対して転写処理が行われることで、画像データに応じたトナー像が用紙Pに転写される。用紙Pが押圧部Nを通過している間およびその前後の所定時間の間、負極の転写バイアスが転写ローラー26に供給される。
【0028】
転写バイアス印加部28は、転写ローラー26に転写電流を供給することによって、転写バイアスを転写ローラー26に印加する。
【0029】
クリーニングブレード29は、対向領域に残留する残留トナーを除去するクリーニング処理を行う。クリーニングブレード29の対向領域は、クリーニングブレード29に対向する前に転写処理が行われた領域である。
【0030】
クリーニングブレード29は、例えばゴム材料により形成される板状の部材である。クリーニングブレード29は、その先端部が像担持面21に当接することにより、像担持面21に残留するトナーを回収する。
【0031】
レジストローラー対30は、第1ローラー31と第2ローラー32とを有する。第1ローラー31は、金属ステンレス(SUS)製である。第2ローラー32には、金属製のシャフトにエチレンプロピレンジエンゴム(EPDMゴム)等の弾性層が配置されている。レジストローラー対30は、押圧部Nに向けて搬送方向Dに用紙Pを搬送する。第2ローラー32は、抵抗44を介して接地されている。抵抗44の抵抗値は、100MΩである。
【0032】
画像形成装置100は、バリスタ40(素子)、電流測定部42およびガイド部材60を備える。
【0033】
バリスタ40は、規定の値以上の電圧(以下「バリスタ電圧」という)が印加されたときに導通する。バリスタ40は、第1ローラー31に接続される。バリスタ電圧は、−200Vである。
【0034】
電流測定部42は、バリスタ40に接続される。バリスタ40は、電流測定部42を介して接地される。電流測定部42は、バリスタ40に流れる電流(以下「リーク電流」という)の値を測定する。
【0035】
制御部50は、転写電流の値を制御する。制御部50は、リーク電流の絶対値に基づいて転写電流の絶対値を変更する。制御部50は、第2ローラー32に接続されている。
【0036】
ガイド部材60は、第1ガイド部材61および第2ガイド部材62を有する。ガイド部材60は、用紙Pを押圧部Nに向けて案内する。
【0037】
一般的に、用紙Pが含水している場合、転写ローラー26に印加された電流は、用紙Pを介して用紙Pと接触している部材へ流れ込む可能性がある。この場合、転写ローラー26に印加された転写バイアスが用紙Pを介してレジストローラー対30に伝わり、レジストローラー対30にバリスタ電圧以上の高電圧が印加される。その結果、バリスタ40が導通しリーク電流が流れる。そして、電流測定部42は、リーク電流の値を測定し、制御部50は、リーク電流の値の絶対値に基づいて転写電流の絶対値を変更する。
【0038】
一方、用紙Pが含水していない場合、転写ローラー26に印加された転写バイアスが用紙Pを介してレジストローラー対30に伝わらないため、レジストローラー対30にバリスタ電圧以上の高電圧が印加されない。その結果、バリスタ40が導通せずリーク電流が流れない。したがって、制御部50は、転写電流の絶対値を変更しない。
【0039】
このように画像形成装置100において、バリスタ40が導通してリーク電流が流れるか否かによって、すなわち用紙Pが含水しているか否かによって、制御部50は、転写電流の値を変更するか否かを決定している。したがって、用紙Pが含水していても、適切な値の転写電流を転写ローラー26に供給することができ、画像不良を抑制することができる。
【0040】
図2および図3を参照して、本発明に係る画像形成装置100の転写電流制御方法を説明する。図3は、転写電流およびリーク電流値のタイミングチャートである。図3において、縦軸は転写バイアス印加部28が転写ローラー26に供給する転写電流および電流測定部42が測定したリーク電流値を示し、横軸は時間を示す。図3は、3枚の用紙Pに画像形成する際のタイミングチャートを示している。時刻t1から時刻t7までの期間に1枚目の用紙Pの画像形成処理が行われ、時刻t8から時刻t13までの期間に2枚目の用紙Pの画像形成処理が行われ、時刻t14から時刻t17までの期間に3枚目の画像形成処理が行われる。時刻t7から時刻t8までの期間および時刻t13から時刻t14までの期間はそれぞれ、1枚目の用紙Pと2枚目の用紙Pとの紙間、2枚目の用紙Pと3枚目の用紙Pとの紙間であり、紙間において転写ローラー26には、プラス側の転写電流が供給されている。
【0041】
T1からT6は、リーク電流測定区間を示す。リーク電流測定区間T1は、時刻t1から時刻t2までの区間であり、リーク電流測定区間T2は、時刻t3から時刻t4までの区間であり、リーク電流測定区間T3は、時刻t5から時刻t6までの区間であり、リーク電流測定区間T4は、時刻t8から時刻t9までの区間であり、リーク電流測定区間T5は、時刻t10から時刻t11までの区間であり、リーク電流測定区間T6は、時刻t14から時刻t15までの区間である。リーク電流測定区間において、電流測定部42はリーク電流を測定する。リーク電流測定区間は、規定の時間で区切られており、リーク電流測定区間の長さは20msである。図が煩雑になることを避けるため省略しているが、時刻t6から時刻t7まで、時刻t12から時刻t13までおよび時刻t16から時刻t17までの期間にもリーク電流測定区間が設けられている。
【0042】
以下、制御部50の転写電流の制御方法を説明する。リーク電流の絶対値が1μA(第1閾値)未満である場合、制御部50はリーク電流測定区間終了後に転写電流の絶対値を変更しない。また、リーク電流の絶対値が1μA(第1閾値)以上であり3μA(第2閾値)未満である場合、制御部50はリーク電流測定区間終了後に転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ小さくする。さらに、リーク電流の絶対値が3μA(第2閾値)以上である場合、制御部50はリーク電流測定区間終了後に転写電流の絶対値を2μA(第2変化量)だけ小さくする。また、リーク電流の絶対値が1μA(第1閾値)未満である場合であり、かつ、1つ前のリーク電流測定区間において制御部50が2μA(第2変化量)だけ小さくするように制御した場合、制御部50はリーク電流測定区間終了後に転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ大きくする。
【0043】
以上、制御部50の転写電流の制御方法を説明した。以下、図3を参照して制御部50の転写電流の制御方法の具体例を説明する。
【0044】
時刻t0において、転写バイアス印加部28は、プラス側の転写電流を転写ローラー26に供給する。
【0045】
時刻t1において、用紙Pの1枚目の画像形成処理が開始されると、制御部50は、転写電流を−20μAに変更する。
【0046】
リーク電流測定区間T1において、電流測定部42はリーク電流を測定する。用紙Pが含水している場合、リーク電流値は比較的高い値を示す。ここでは、リーク電流測定区間T1におけるリーク電流値は−5μAである。
【0047】
時刻t2において、制御部50は、リーク電流値の絶対値に基づいて、転写電流の絶対値を変更する。制御部50は、例えば、リーク電流測定区間T1のリーク電流値の平均値を算出し、リーク電流値の平均値の絶対値に基づいて、転写電流の絶対値を変更する。ここでは、リーク電流値は−5μAであるため、制御部50は、転写電流の絶対値を2μA(第2変化量)だけ小さくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−20μAから−18μAに変更する。
【0048】
リーク電流測定区間T2において、電流測定部42はリーク電流を測定する。時刻t2において、制御部50は、転写電流を−20μAから−18μAに変更しているため、リーク電流測定区間T2のリーク電流値は、リーク電流測定区間T1のリーク電流値と比較して小さくなる。ここでは、リーク電流測定区間T2におけるリーク電流値は−3μAである。
【0049】
時刻t4において、ここでは、リーク電流値は−3μAであるため、制御部50は、転写電流の絶対値を2μA(第2変化量)だけ小さくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−18μAから−16μAに変更する。
【0050】
リーク電流測定区間T3において、電流測定部42はリーク電流を測定する。時刻t4において、制御部50は、転写電流を−18μAから−16μAに変更しているため、リーク電流測定区間T3のリーク電流値は、リーク電流測定区間T2のリーク電流値と比較して小さくなる。ここでは、リーク電流測定区間T3におけるリーク電流値は0μAである。
【0051】
時刻t6において、リーク電流の絶対値が1μA(第1閾値)未満である場合であり、かつ、1つ前のリーク電流測定区間において制御部50が2μA(第2変化量)だけ小さくするように制御しているため、制御部50はリーク電流測定区間終了後に転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ大きくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−16μAから−17μAに変更する。
【0052】
時刻t6から時刻t7までは、リーク電流値が0μAであるため、転写電流は−17μAで一定である。時刻t7において、1枚目の用紙Pの画像形成処理が完了する。
【0053】
次に、時刻t8において、2枚目の用紙Pの画像形成処理が開始されると、制御部50は、転写電流を−20μAに変更する。
【0054】
リーク電流測定区間T4において、電流測定部42はリーク電流を測定する。ここでは、リーク電流測定区間T4におけるリーク電流値は−2μAである。
【0055】
時刻t9において、制御部50は、リーク電流値の絶対値に基づいて、転写電流の絶対値を変更する。ここでは、リーク電流値は−2μAであるため、制御部50は、転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ小さくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−20μAから−19μAに変更する。
【0056】
リーク電流測定区間T5において、電流測定部42はリーク電流を測定する。時刻t9において、制御部50は、転写電流を20μAから19μAに変更しているため、リーク電流測定区間T5のリーク電流値は、リーク電流測定区間T4のリーク電流値と比較して小さくなる。ここでは、リーク電流測定区間T5におけるリーク電流値は−1μAである。
【0057】
時刻t11において、制御部50は、リーク電流値の絶対値に基づいて、転写電流の絶対値を変更する。ここでは、リーク電流値は−1μAであるため、制御部50は、転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ小さくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−19μAから−18μAに変更する。
【0058】
時刻t12から時刻t13までは、リーク電流値が0μAであるため、転写電流は−18μAで一定である。時刻t13において、2枚目の用紙Pの画像形成処理が完了する。
【0059】
次に、時刻t14において、3枚目の用紙Pの画像形成処理が開始されると、制御部50は、転写電流を−20μAに変更する。
【0060】
リーク電流測定区間T6において、電流測定部42はリーク電流を測定する。ここでは、リーク電流測定区間T6におけるリーク電流値は−1μAである。
【0061】
時刻t15において、制御部50は、リーク電流値の絶対値に基づいて、転写電流の絶対値を変更する。ここでは、リーク電流値は−1μAであるため、制御部50は、転写電流の絶対値を1μA(第1変化量)だけ小さくする。すなわち、制御部50は、転写電流を−20μAから−19μAに変更する。
【0062】
時刻t16から時刻t17までは、リーク電流値が0μAであるため、転写電流は−19μAで一定である。時刻t17において、3枚目の用紙Pの画像形成処理が完了する。
【0063】
このように、画像形成装置100において、制御部50は、リーク電流の絶対値に基づいて転写電流の絶対値を変更する。すなわち、制御部50は、用紙Pの含水の度合いに基づいて、転写電流の絶対値を変更する。したがって、用紙Pの含水の度合いに対応して、適切な値の転写電流を転写ローラー26に供給することができ、画像不良を抑制することができる。
【0064】
また、制御部50は、リーク電流測定区間終了後、リーク電流の絶対値に基づいて転写電流の絶対値を変更する。したがって、随時適切な転写電流で画像形成処理を行うことができる。その結果、用紙Pが部分的に含水している場合でも適切な転写電流で画像形成処理を行うことができる。
【0065】
また、リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、制御部50は、転写電流の絶対値を変更する。したがって、用紙Pが含水してリーク電流が大きくなる場合に、制御部50は、転写電流の絶対値を変更する。その結果、適切な値の転写電流を転写ローラー26に供給することができ、画像不良を抑制することができる。
【0066】
また、制御部50は、リーク電流の絶対値が第1閾値以上第2閾値未満である場合、転写電流の絶対値を第1変化量だけ変更し、リーク電流の絶対値が第2閾値以上である場合、制御部50は、転写電流の絶対値を第2変化量だけ変更する。閾値を2つ設けることによって、リーク電流が大幅に流れている場合には、転写電流を大幅に変更し、リーク電流が比較的小さい場合は、転写電流を比較的小さく変更する。その結果、制御部50は、迅速に適切な転写電流に制御することができる。
【0067】
また、リーク電流測定区間においてリーク電流の絶対値が第1閾値未満であり、かつ、リーク電流測定区間よりも1つ前のリーク電流測定区間において制御部50が転写電流の絶対値が第2変化量だけ小さくなるように制御した場合、次のリーク電流測定区間において制御部50は、リーク電流の絶対値が第1変化量だけ大きくなるように制御する。したがって、転写電流を小さくし過ぎることを抑制することができる。その結果、適切な値の転写電流を転写ローラー26に供給することができ、画像不良を抑制することができる。
【0068】
なお、用紙Pが含水している場合、用紙Pと感光体ドラム20との接触面積(以下、単に「接触面積」という)は、用紙Pが含水していない場合の接触面積よりも大きいことが好ましい。
【0069】
リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、制御部50は、感光体ドラム20に対して押圧部Nに突入する用紙Pの突入角度(以下、単に「突入角度」という)が小さくなるように制御部50は制御する。
【0070】
例えば、リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、制御部50は、レジストローラー対30における用紙Pの搬送速度を、押圧部Nにおける用紙Pの搬送速度よりも速くする。具体的には、押圧部Nにおける用紙Pの搬送速度を100mm/秒、レジストローラー対30における用紙Pの搬送速度を101mm/秒にする。このように搬送速度を変化させることによる搬送速度の差によって用紙Pはたわむ。その結果、突入角度は小さくなり、用紙Pをたわませない場合と比べて接触面積が大きくなる。その結果、用紙Pと感光体ドラム20との隙間が減り、トナーが用紙Pの所望の位置に転写され、画像不良を抑制することができる。
【0071】
図4を参照して、本発明に係る画像形成装置100について説明する。図4(a)および図4(b)は、実施形態に係る画像形成部15およびその周辺の一例の構成図である。第1ガイド部材61が固定部63と可動部64とを有している点を除いて、図2を参照して説明した画像形成装置100と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0072】
第1ガイド部材61は、固定部63と、可動部64とを有する。可動部64は、固定部63よりも搬送方向Dに対して下流に位置する。可動部64は、搬送方向Dに交差する方向に対して可動である。本実施形態において可動部64は、図4(a)および図4(b)の上下方向に可動である。可動部64は、短径が12mm、長径が13mmのカムによって位置が規定されている、制御部50は、カムを回転させることによって可動部64の位置を変更することができる。
【0073】
リーク電流の絶対値に基づいて、制御部50は、可動部64の位置を変更する。具体的には、用紙Pが含水していない場合、すなわちリーク電流の絶対値が閾値未満である場合、可動部64は、図4(a)に示す位置に位置する。一方、用紙Pが含水している場合、すなわちリーク電流の絶対値が閾値以上である場合、制御部50は、カムを回転させカムの長径部で可動部64の位置を規定し、可動部64の位置を、図4(b)に示す位置まで変更する(押し上げる)。したがって、用紙Pの搬送経路が変更され、リーク電流の絶対値が閾値以上である場合の用紙Pの突入角度(図4(a)に示す状態)が、リーク電流の絶対値が閾値未満である場合における突入角度(図4(b)に示す状態)よりも小さくなる。その結果、接触面積が大きくなり、用紙Pと感光体ドラム20との隙間が減り、トナーが用紙Pの所望の位置に転写され、画像不良を抑制することができる。
【0074】
図1図4を参照して説明した画像形成装置100は、感光体ドラム20と用紙Pとが直接接触する直接転写方式によってトナー像を用紙Pに転写していたが、画像形成装置100は、感光体ドラム20から中間転写ベルト20aへとトナー像を転写したのち、中間転写ベルト20aから用紙Pにトナー像を転写するようにしてもよい。
【0075】
図5は、実施形態に係る画像形成装置100の他の一例の構成図である。図1を参照して説明した画像形成装置100と重複する部分については説明を省略する。本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラム20から中間転写ベルト20aへとトナー像を転写したのち、中間転写ベルト20aから用紙Pにトナー像を転写する中間転写ベルト方式によってトナー像を用紙Pに転写する。
【0076】
画像形成部15は、中間転写ベルト20a、1次転写ローラー27、駆動ローラー71および押圧ローラー72をさらに有する。画像形成装置100において、像担持体は、感光体ドラム20および中間転写ベルト20aであり、転写部は、転写ローラー26である。駆動ローラー71が回転することによって、中間転写ベルト20aは回転する。
【0077】
まず、感光体ドラム20の像担持面上のトナー像は、1次転写ローラー27によって中間転写ベルト20aへと転写される。その後、中間転写ベルト20aへと転写されたトナー像は、転写ローラー26によって用紙Pに転写される。
【0078】
図1を参照して説明した画像形成装置100と同様に、制御部50は、用紙Pの含水の度合いに基づいて、転写電流の絶対値を変更する。したがって、用紙Pの含水の度合いに対応して、適切な値の転写電流を転写ローラー26に供給することができ、画像不良を抑制することができる。
【0079】
以上、図面(図1図5)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0080】
(1)図1および図2を参照して説明したように、本実施形態では、搬送部30に接続される素子はバリスタであったが、搬送部30に接続される素子はツェナーダイオードであってもよい。
【0081】
(2)図3を参照して説明したように、本実施形態では、リーク電流の絶対値が閾値以上である場合、制御部50は、転写電流の絶対値を小さくするように転写バイアス印加部28を制御していたが、制御部50は、転写電流の絶対値を大きくするように転写バイアス印加部28を制御してもよい。転写時に高い転写バイアスを必要とするシステムにおいては、転写電流の絶対値を大きくすることにより適切に転写を行うことができる。
【0082】
(3)図3を参照して説明したように、本実施形態では、制御部50は、2つの閾値(第1閾値および第2閾値)を用いて、転写電流の制御をしていたが、閾値の数は2つでなくてもよい。例えば、閾値は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0083】
(4)図1および図2を参照して説明したように、本実施形態では、画像形成装置が採用する現像方式は反転現像方式であったが別の方式でもよい。現像方式は、例えば、像担持体をトナーの極性とは異なる極性に帯電させて現像する正規現像方式でもよい。
【符号の説明】
【0084】
20 感光体ドラム(像担持体)
20a 中間転写ベルト(像担持体)
22 帯電ローラー
23 露光装置
24 現像ローラー
26 転写ローラー(転写部)
28 転写バイアス印加部
29 クリーニングブレード
30 レジストローラー対(搬送部)
40 バリスタ(素子)
42 電流測定部
50 制御部
60 ガイド部材
63 固定部
64 可動部
100 画像形成装置
P 用紙(被記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5