特許第6204323号(P6204323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204323
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B41J2/165 303
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-218408(P2014-218408)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-83849(P2016-83849A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】古川 徳昭
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−212863(JP,A)
【文献】 特開2012−040828(JP,A)
【文献】 特開2005−040976(JP,A)
【文献】 特開2007−076294(JP,A)
【文献】 特開平10−119285(JP,A)
【文献】 特開2007−030453(JP,A)
【文献】 米国特許第05612722(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのインク吐出面を清掃するためのワイパーブレードと、
前記ワイパーブレードを前記インク吐出面に押し当てて第1の方向及び前記第1の方向とは逆の第2の方向へ移動させることにより、前記ワイパーブレードに前記インク吐出面上のインクを拭き取らせる制御部と
を備え、
前記ワイパーブレードは、
前記第1の方向に直交する面であって、前記ワイパーブレードが前記第1の方向へ移動する際に前記インク吐出面上のインクを運ぶ第1の運搬面と、
前記第2の方向に直交する面であって、前記ワイパーブレードが前記第2の方向へ移動する際に前記インク吐出面上のインクを運ぶ第2の運搬面と、
前記第1の運搬面から前記第1の方向へ突出する突出部と
を有し、
前記突出部は、前記第1の運搬面に対して所定角度傾斜し前記第1の運搬面に接続される面であって、前記ワイパーブレードの先端から当該面までの距離が前記ワイパーブレードの幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて長くなるように湾曲したインク保持面を有し、
前記ワイパーブレードの幅方向は、前記第1の方向に直交し前記インク吐出面に平行な方向である、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク吐出面上のインクは、前記インク吐出面に付着して増粘した第1のインクと、前記第1のインクを除去するために排出された増粘していない第2のインクとを含み、
前記第1の方向は、前記記録ヘッドの一端から他端へ向かう方向であり、
前記第2の方向は、前記記録ヘッドの他端から一端へ向かう方向であり、
前記インク吐出面の前記他端側には、前記第2のインクが蓄えられるインク溜め部が設けられ、
前記制御部は、
前記ワイパーブレードを前記インク吐出面に押し当てて前記第1の方向へ移動させることにより、前記ワイパーブレードに、前記インク吐出面に排出された前記第2のインクを前記他端まで運搬させて前記インク溜め部上に蓄えさせ、
前記ワイパーブレードを前記インク吐出面に押し当てて前記第2の方向へ移動させることにより、前記ワイパーブレードに、前記インク溜め部に蓄えられた前記第2のインクを前記一端まで運搬させて前記第1のインクを前記インク吐出面から除去させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク溜め部は、前記インク吐出面よりも高い親水性を有する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ワイパーブレードが前記インク吐出面に押し当てられて前記第1の方向へ移動している第1の状態において、
前記インク保持面は、前記インク吐出面に対向し、
前記インク吐出面から前記インク保持面までの距離は、前記ワイパーブレードの幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて長くなる、請求項1〜3のうちのいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ワイパーブレードは、弾性部材からなり、
前記ワイパーブレードは、前記第1の状態において撓んだ状態となる、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドのインク吐出面を清掃するためのワイパーブレードを備えるインクジェット記録装置が知られている。インク吐出面は、インクを吐出するノズルが設けられる面である。当該インクジェット記録装置は、ワイパーブレードをインク吐出面に押し当てた状態で所定の方向へ移動させることで、インク吐出面に付着したインクの拭き取り(以下「ワイピング」という場合がある)を行う。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、先端部にリブ形状部材が設けられたワイパーブレードを備える。特許文献1には、当該インクジェット記録装置によれば、インク吐出面が凹部を有している場合でも、ワイパーブレードの先端部の凹部内への追随性を確保することができ、ワイピング性能を維持することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−71513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録ヘッドから吐出されたインクは、時間の経過に伴ってその揮発成分が蒸発して粘度が増加(増粘)する。記録ヘッドから吐出された後インク吐出面に残留して増粘したインク(以下「残留インク」という)は、ワイパーブレードの移動による物理的な力を加えただけでは除去することが困難である。一方で、増粘したインクは、増粘していないフレッシュなインク(以下「フレッシュインク」という)と混ざり合うことでその粘度が下がるという性質を有する。
【0006】
そこで、インク吐出面に付着した残留インクを綺麗に除去するため、フレッシュインクをインク吐出面に排出してからワイピングを行うという方法が採用される。当該方法によれば、ワイピング前又はワイピング中に残留インクがフレッシュインクと混ざり合うことでその粘度が下げられるので、インクジェット記録装置は、残留インクを綺麗に除去できるようになる。
【0007】
しかし、フレッシュインクを用いたワイピング方法において、例えば、次のような問題がある。すなわち、通常、フレッシュインクは、インク吐出面の一部の領域、具体的にはノズルが設けられている領域に排出される。残留インクが、フレッシュインクが排出された領域から離れた位置に付着している場合において、十分な量のフレッシュインクがその残留インクの付着位置まで運ばれてこないと、その残留インクは、粘度が十分に下がらないために綺麗に除去されないこととなる。
【0008】
従って、インク吐出面の全体を隈なく綺麗に清掃するためには、排出領域に排出されたフレッシュインクをインク吐出面の全体に満遍なく運搬してワイピングを行うことが求められる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレッシュインクをインク吐出面の全体に満遍なく運搬してワイピングを行えるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点に係るインクジェット記録装置は、被記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのインク吐出面を清掃するためのワイパーブレードと、制御部とを備える。前記制御部は、前記ワイパーブレードを前記インク吐出面に押し当てて第1の方向及び前記第1の方向とは逆の第2の方向へ移動させることにより、前記ワイパーブレードに前記インク吐出面上のインクを拭き取らせる。前記ワイパーブレードは、第1の運搬面と、第2の運搬面と、突出部とを有する。前記第1の運搬面は、前記第1の方向に直交する面であって、前記ワイパーブレードが前記第1の方向へ移動する際に前記インク吐出面上のインクを運ぶ。前記第2の運搬面は、前記第2の方向に直交する面であって、前記ワイパーブレードが前記第2の方向へ移動する際に前記インク吐出面上のインクを運ぶ。前記突出部は、前記第1の運搬面から前記第1の方向へ突出し、インク保持面を有する。前記インク保持面は、前記第1の運搬面に対して所定角度傾斜し前記第1の運搬面に接続される面であって、前記ワイパーブレードの先端から当該面までの距離が前記ワイパーブレードの幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて長くなるように湾曲した面である。前記ワイパーブレードの幅方向は、前記第1の方向に直交し前記インク吐出面に平行な方向である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレッシュインクをインク吐出面の全体に満遍なく運搬してワイピングを行えるインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。
図2図2は、実施形態に係るヘッド部の斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る記録ヘッドの構成図である。
図4図4は、実施形態に係るワイパー部の構成図である。
図5図5は、実施形態に係るワイパーブレードの動作を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るワイパーブレードの動作を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るワイパーブレードの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明する構成要素の全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。複数の図を通じて同一の符号は、同一の構成要素を示している。本実施形態において、図中のX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。
【0014】
図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置1の構成図である。
【0015】
インクジェット記録装置1は、トレイ200と、給送ローラー201と、第1搬送ユニット205と、ヘッド部3と、第2搬送ユニット212と、排出ローラー216と、ワイパー部60と、キャップユニット290と、制御部50とを備える。
【0016】
トレイ200は、被記録媒体の一種である用紙Pを収納する。トレイ200は、第1搬送ユニット205よりも用紙Pの搬送方向D0の上流側(図1では右側)に配置される。トレイ200の搬送方向D0の下流端には、給送ローラー201が設けられる。給送ローラー201は、トレイ200に収容された用紙Pを一枚ずつ第1搬送ユニット205へ供給する。
【0017】
第1搬送ユニット205は、給送ローラー201から供給された用紙Pを、第1搬送ベルト208に載置して搬送方向D0(図1では右から左へ向かう方向)へ向けて搬送する。第1搬送ユニット205は、第1駆動ローラー206と、第1従動ローラー207と、第1搬送ベルト208とを備える。第1搬送ベルト208は、第1駆動ローラー206及び第1従動ローラー207に掛け渡される。第1駆動ローラー206が図略のモーターによって回転駆動されることによって、第1搬送ベルト208が回転し、第1搬送ベルト208上に載置された用紙Pが搬送方向D0へ搬送される。
【0018】
ヘッド部3は、第1搬送ユニット205に対向して配置される。ヘッド部3は、第1搬送ユニット205によって搬送される用紙Pに対してインクを吐出して用紙Pに画像を形成する。以下、図2及び図3を参照して、ヘッド部3及びヘッド部3に含まれる記録ヘッド10の構成を説明する。
【0019】
図2は、実施形態に係るヘッド部3の斜視図である。
【0020】
ヘッド部3は、ヘッドハウジング18と、複数種類(本実施形態では4種類)のラインヘッド10Y、10M、10C、10Kとを備える。ラインヘッド10Yは、イエロー色用のラインヘッドである。ラインヘッド10Mは、マゼンタ色用のラインヘッドである。ラインヘッド10Cは、シアン色用のラインヘッドである。ラインヘッド10Kは、ブラック色用のラインヘッドである。
【0021】
複数種類のラインヘッド10Y、10M、10C、10Kは、ヘッドハウジング18に保持される。ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kは、用紙Pの搬送方向D0の上流側から下流側へ向けて、ラインヘッド10K、ラインヘッド10C、ラインヘッド10M、ラインヘッド10Yの順に配置される。本実施形態において、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kは、それぞれ、搬送方向D0に直交する方向(本実施形態ではX軸方向)に沿って千鳥状に配置される3個の記録ヘッド10を含む。ラインヘッド10Yの3つの記録ヘッド10のそれぞれは、イエロー色のインクを吐出する。ラインヘッド10Mの3つの記録ヘッド10のそれぞれは、マゼンタ色のインクを吐出する。ラインヘッド10Cの3つの記録ヘッド10のそれぞれは、シアン色のインクを吐出する。ラインヘッド10Kの3つの記録ヘッド10のそれぞれは、ブラック色のインクを吐出する。
【0022】
図3(a)は、実施形態に係る記録ヘッド10の側面図である。図3(b)は、実施形態に係る記録ヘッド10の底面図である。
【0023】
図3(a)に示すように、記録ヘッド10は、複数のノズル11と、インク流入口13と、インク流出口15とを備える。インク流出口15は、記録ヘッド10の長手方向の一端(図3では右端であり、以下「第1端」という)側に設けられる。インク流入口13は、記録ヘッド10の長手方向の他端(図3では左端であり、以下「第2端」という)側に設けられる。本実施形態において、記録ヘッド10の長手方向は、X軸に沿う方向である。
【0024】
記録ヘッド10における複数のノズル11が設けられる面17が、インク吐出面である。複数のノズル11は、インク吐出面17の長手方向の中央部に配置される。ノズル11は、用紙Pに画像を形成するためにインクを吐出する。また、ノズル11は、パージ処理において、記録ヘッド10内の不要物とともにインクを排出する。画像形成時又はパージ処理時にノズル11によって吐出又は排出されるインクは、図略のインクタンクからインク流入口13を経由して記録ヘッド10内に流入される。インクは、インクタンク内において、その揮発成分の蒸発が防止されている。従って、ノズル11から吐出又は排出されるインクは、フレッシュインクである。
【0025】
インク吐出面17の第2端側には、くの字状に折り曲げられた板状部材40が配置される。板状部材40は、親水部41(インク溜め部)と、撥水部42とを有する。親水部41は、インク吐出面17上に配置される。親水部41は、インク吐出面17より高い親水性を有する。親水部41は、例えば、ステンレスのような金属又は合成樹脂によって形成される。撥水部42は、インク吐出面17に対して斜め上方に傾斜して配置される。撥水部42は、インク吐出面17及び親水部41より高い撥水性を有する。撥水部42は、例えば、フッ素樹脂により形成される。
【0026】
図3(b)に示すように、インク吐出面17には、複数のノズル領域、本実施形態では2つの第1のノズル領域12Aと2つの第2のノズル領域12Bとが設けられる。ノズル領域12A、12Bには、その全域に亘って複数のノズル11が配置される。
【0027】
第1のノズル領域12Aは、インク吐出面17の幅方向(インク吐出面17の長手方向に直交する方向)の一側(図3では下側)とインク吐出面17の幅方向の中央付近とに底を有する台形形状の領域である。第2のノズル領域12Bは、インク吐出面17の幅方向の他側(図3では上側)とインク吐出面17の幅方向の中央付近とに底を有する台形形状の領域である。第1のノズル領域12Aと第2のノズル領域12Bとは、インク吐出面17の長手方向に沿って交互に配置される。このようにノズル領域が配置された場合、インク吐出面17の幅方向の中央付近に配置されるノズル11の数は、インク吐出面17の幅方向の両端側に配置されるノズル11の数よりも若干多くなる。
【0028】
図1に戻り、インクジェット記録装置1の説明を続ける。第2搬送ユニット212は、第1搬送ユニット205よりも用紙Pの搬送方向D0の下流側(図1では左側)に配置される。第2搬送ユニット212は、第2駆動ローラー213と、第2従動ローラー214と、第2搬送ベルト215とを備える。第2搬送ベルト215は、第2駆動ローラー213及び第2従動ローラー214に掛け渡される。第2駆動ローラー213が図略のモーターによって回転駆動されることによって、第2搬送ベルト215が回転し、第2搬送ベルト215上に載置された用紙Pが用紙Pの搬送方向D0へ搬送される。
【0029】
ヘッド部3によって画像が形成された用紙Pは、第2搬送ユニット212へ送られ、用紙Pが第2搬送ユニット212を通過する間に、用紙Pの表面に付着したインクが乾燥される。排出ローラー216は、第2搬送ユニット212によって搬送されてきた用紙Pを、インクジェット記録装置1の外部へ排出する。
【0030】
ワイパー部60及びキャップユニット290は、第2搬送ユニット212の下方に配置される。ワイパー部60は、ワイパーブレード20を用いて、記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクの拭き取り(ワイピング)を行う。キャップユニット290は、記録ヘッド10が一定時間以上利用されない場合に、記録ヘッド10のインク吐出面17に装着される。これにより、記録ヘッド10内のインクの乾燥が防止される。ワイパー部60の構成については、図4を参照して後述する。
【0031】
制御部50は、インクジェット記録装置1全体の動作を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリーとを有する。メモリーには、CPUによって実行される種々のコンピュータープログラムが記憶される。CPUが、メモリーに記憶された各種のコンピュータープログラムを実行することにより、制御部50の機能が実現される。
【0032】
制御部50は、ワイパー部60にインク吐出面17のワイピングを行わせる。具体的には、制御部50は、ワイパーブレード20をインク吐出面17に押し当てて所定の方向へ移動させることにより、ワイパーブレード20にインク吐出面17上のインクを拭き取らせる。なお、制御部50は、ワイパー部60にインク吐出面17のワイピングを行わせる前に、第1搬送ユニット205を下降させる。そして、制御部50は、ワイパー部60を水平移動させてヘッド部3の下方の待機位置(ヘッド部3と下降された第1搬送ユニット205との間の位置)に位置させる。
【0033】
また、制御部50は、記録ヘッド10のインク吐出面17をキャッピングする前に、第1搬送ユニット205を下降させる。その後、制御部50は、キャップユニット290を水平移動させてヘッド部3の下方に位置させる。そして、制御部50は、キャップユニット290を上方へ移動させて記録ヘッド10のインク吐出面17にキャップユニット290を装着させる。
【0034】
図4は、実施形態に係るワイパー部60の構成図である。
【0035】
ワイパー部60は、ワイパーブレード20と、移動機構30とを含む。図4では、説明の便宜上、ワイパーブレード20が1つだけ示されているが、実際には、ワイパー部60は、複数の記録ヘッド10のそれぞれに対応する複数のワイパーブレード20を備える。複数のワイパーブレード20のうちの一のワイパーブレード20は、対応する記録ヘッド10のインク吐出面17のワイピングを行う。ワイパーブレード20の構成については、図7を参照して後述する。
【0036】
移動機構30は、制御部50の指示に応じて、ワイパーブレード20を移動させる。本実施形態において、移動機構30は、第1のワイピング方向D1(第1の方向)、第2のワイピング方向D2(第2の方向)、上昇方向D3、及び下降方向D4へワイパーブレード20を移動させることができる。第1のワイピング方向D1と、第1のワイピング方向D1と逆向きの第2のワイピング方向D2とは、X軸に沿う方向である。上昇方向D3と、上昇方向D3と逆向きの下降方向D4とは、Z軸に沿う方向である。
【0037】
図5及び図6は、実施形態に係るワイパーブレード20の動作を示す図である。
【0038】
本実施形態において、制御部50は、ワイパーブレード20にインク吐出面17のワイピングを行わせる場合、まず、記録ヘッド10にパージ処理を行わせ、インク吐出面17にフレッシュインクNf(第2のインク)を排出させる。そして、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20を上昇方向D3へ移動させ、ワイパーブレード20をインク吐出面17に押し当てた状態とする(図5(a))。ここで、ワイパーブレード20は、インク吐出面17上のフレッシュインクNfが排出された領域FAよりも第1端側の位置(以下「開始位置」という)に押し当てられる。
【0039】
その後、制御部50は、ワイパーブレード20に第1のワイピングを行わせる。具体的には、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20をインク吐出面17に押し当てた状態で開始位置から親水部41まで第1のワイピング方向D1へ移動させる(図5(b))。その後、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20をインク吐出面17に押し当てた状態でワイパーブレード20を領域FAに向けて第2のワイピング方向D2へ移動させ、領域FAの手前で停止させる。これにより、インク吐出面17に排出されたフレッシュインクNfが、第2端まで運搬されて親水部41上に蓄えられる(図5(c))。なお、インク吐出面17に排出されたフレッシュインクNfの全てが第2端まで運搬されるわけではなく、インク吐出面17に排出されたフレッシュインクNfの一部は、ワイパーブレード20の移動による力を受けてワイパーブレード20を伝って下方へ流れ落ちる。
【0040】
その後、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20を下降方向D4へ移動させ、ワイパーブレード20をインク吐出面17から離間させる(図5(d))。そして、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20を撥水部42の直下までワイピング方向D1へ移動させる(図6(e))。
【0041】
そして、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20を上昇方向D3へ移動させ、ワイパーブレード20を撥水部42に押し当てた状態とする(図6(f))。ここで、撥水部42は、フレッシュインクNfが蓄えられた親水部41よりも第2のワイピング方向D2の上流側に設けられている。
【0042】
その後、制御部50は、ワイパーブレード20に第2のワイピングを行わせる。具体的には、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20をインク吐出面17に押し当てた状態で第1端まで第2のワイピング方向D2へ移動させる(図6(g))。これにより、親水部41に蓄えられたフレッシュインクNfが第1端まで運搬されるとともに、残留インクNv(第1のインク)が、運搬されてきたフレッシュインクNfによって粘度が下げられてインク吐出面17から除去される。なお、親水部41に蓄えられたフレッシュインクNfの全てが第1端まで運搬されるわけではなく、親水部41に蓄えられたフレッシュインクNfの一部は、ワイパーブレード20の移動の途中でワイパーブレード20を伝って下方へ流れ落ちる。
【0043】
その後、制御部50は、移動機構30を制御して、ワイパーブレード20を下降方向D4へ移動させ、ワイパーブレード20をインク吐出面17から離間させる(図6(h))。
【0044】
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、まず、第1のワイピングを行って、パージ処理によって排出されたフレッシュインクNfを一旦親水部41に蓄える。その後、インクジェット記録装置1は、第2のワイピングを行って、親水部41に蓄えたフレッシュインクNfを運搬しながらインク吐出面17上のインク(残留インクNv及びフレッシュインクNf)を拭き取る。
【0045】
ここで、上述したように、インク吐出面17の幅方向の中央付近に配置されるノズル11の数は、インク吐出面17の幅方向の両端側に配置されるノズル11の数よりも若干多くなっている。そのため、パージ処理において、インク吐出面17の幅方向の中央付近に排出されるフレッシュインクNfの量(以下「中央付近排出量」という)は、インク吐出面17の幅方向の両端側に配置されるフレッシュインクNfの量(以下「両端側排出量」という)よりも多くなる。
【0046】
従って、単純な平板形状のワイパーブレード20が採用された場合は、第1のワイピングにおいて、親水部41の全体に均一にフレッシュインクNfを蓄えられないという問題が生じ得る。具体的には、親水部41の幅方向(インク吐出面17の長手方向に直交する方向)の両端側に蓄えられるフレッシュインクNfの量が、親水部41の幅方向の中央付近に蓄えられるフレッシュインクNfの量よりも少なくなる。親水部41の全体に均一にフレッシュインクNfが蓄えられないと、インクジェット記録装置1は、第2のワイピングにおいて、フレッシュインクNfをインク吐出面17の全体に満遍なく運搬できず、インク吐出面の全体を隈なく綺麗に清掃できない。そこで、本実施形態に係るワイパーブレード20は、図7に示す形状を有する。
【0047】
図7(a)は、実施形態に係るワイパーブレード20の正面図である。図7(b)は、実施形態に係るワイパーブレード20の側面図である。
【0048】
図7(a)及び図7(b)に示すように、ワイパーブレード20は、平板形状を有し、その先端(インク吐出面17に押し当てられる側の端)20Tは、平坦である。ワイパーブレード20は、例えば、弾性部材、具体的には合成ゴム又は合成樹脂からなる。ワイパーブレード20は、インク吐出面17に押し当てられて移動している状態(以下「ワイピング状態」という)において、撓んだ状態となる。以下、ワイパーブレード20がインク吐出面17に押し当てられて第1のワイピング方向D1へ移動している状態を「第1のワイピング状態」(第1の状態)という。
【0049】
ワイパーブレード20を正面視した場合の前後方向は、X軸に沿う方向である。ワイパーブレード20の前面20A(第1の運搬面)及び後面20B(第2の運搬面)は、それぞれ、第1のワイピング方向D1及び第2のワイピング方向D2に直交する。ワイパーブレード20の前面20Aは、ワイパーブレード20が第1のワイピング方向D1へ移動する際にインク吐出面17上のインクを運ぶ面である。ワイパーブレード20の後面20Bは、ワイパーブレード20が第2のワイピング方向D2へ移動する際にインク吐出面17上のインクを運ぶ面である。
【0050】
本実施形態において、ワイパーブレード20は、前面20Aに、前面20Aから第1のワイピング方向D1へ所定量Tだけ突出する突出部21を有する。突出部21は、ワイパーブレード20に一体に形成される。突出部21は、前面20Aに対して所定角度θ(例えば、45度)傾斜し前面20Aに接続される面(以下「インク保持面」という)22を有する。インク保持面22は、第1のワイピング状態でインク吐出面17に対向する。
【0051】
上記構成により、第1のワイピング状態において、インク保持面22と、インク吐出面17のうちのインク保持面22に対向する領域(以下「対向領域」という)と、前面20Aのうちのインク保持面22と対向領域との間の領域とによって、インク吐出面17上のインク、特にフレッシュインクNfを収容するポケットが形成される。これにより、ワイパーブレード20は、第1のワイピング時に、インク保持面22が設けられない場合に比べて、より多くのフレッシュインクNfを運搬できるようになる。
【0052】
また、本実施形態において、インク保持面22は、ワイパーブレード20の先端20Tからインク保持面22までの距離S1、S2がワイパーブレード20の幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて長くなるように湾曲している。言い換えると、第1の状態で、インク吐出面17からインク保持面22までの距離は、ワイパーブレード20の幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて長い。ここで、ワイパーブレード20の幅方向は、Y軸に沿う方向、すなわち第1のワイピング方向D1に直交しインク吐出面17に平行な方向である。
【0053】
上記構成により、第1のワイピング時におけるワイパーブレード20のフレッシュインクNfの運搬量が、ワイパーブレード20の幅方向の中央部から両端部へ向かうにつれて多くなる。従って、パージ処理において中央付近排出量が両端側排出量よりも多くなる場合でも、上記構成のワイパーブレード20が採用されることで、インクジェット記録装置1は、第1のワイピングにおいて、親水部41の全体に均一にフレッシュインクNfを蓄えることができる。よって、インクジェット記録装置1は、第2のワイピングにおいて、フレッシュインクNfをインク吐出面17の全体に満遍なく運搬でき、インク吐出面の全体を隈なく綺麗に清掃できるようになる。
【0054】
以上、本発明の一つの実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。なお、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は、一例であってこれらに限定されるものではない。
【0055】
例えば、本実施形態では、被記録媒体は、用紙Pであったが、これに限られず、記録ヘッド10によって画像が形成されるその他の媒体、例えば、封筒や布帛であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェット記録装置
10 記録ヘッド
17 インク吐出面
20 ワイパーブレード
20A 前面
20B 後面
20T 先端
21 突出部
22 インク保持面
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7