特許第6204327号(P6204327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204327
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
   G03G15/20 555
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-228161(P2014-228161)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-90938(P2016-90938A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161953
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 敬直
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】榮木 天
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義弘
(72)【発明者】
【氏名】四辻 剛史
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に像を定着させる定着装置であって、
外枠を形成するフレーム部と、
第1の回転軸周りを回転可能となるように前記フレーム部に支持された無端状の定着ベルトと、
前記第1の回転軸と平行な第2の回転軸周りを回転可能となるように前記フレーム部に支持され、前記定着ベルトとの間に前記記録媒体を加圧しつつ通過させるニップ部を形成する加圧ローラーと、
前記定着ベルトの内側に設けられ、前記第1の回転軸と略平行に伸長する長尺な形状を有し、輻射熱を放射して前記定着ベルトを加熱する熱源体と、
前記定着ベルトと前記熱源体との間に設けられ、前記熱源体のうち、前記ニップ部において用紙が通過する通過領域の軸方向外側に位置する非通過領域に対応する部分の全部または一部を覆うカバー部材と、
前記定着ベルトの外周面に臨むように前記フレーム部に取り付けられ、前記定着ベルトの外周面から径方向に所定の距離離れた位置に配置され、前記定着ベルトの温度を検知し、前記定着ベルトの温度が所定の基準温度を超えたときに前記熱源体を停止させる熱源制御器とを備え、
軸方向における前記熱源制御器の取付位置は、前記熱源体において前記カバー部材で覆われていない部分と前記熱源体において前記カバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置に設定されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記熱源制御器は、前記定着ベルトの温度を検知し、前記定着ベルトの温度が所定の基準温度を超えたときに前記熱源体を停止させる制御器本体と、前記制御器本体を収容するケースとを備え、
軸方向における前記熱源制御器の取付位置は、前記熱源体において前記カバー部材で覆われている部分に前記ケースの軸方向一側の部分が対応し、前記熱源体において前記カバー部材で覆われていない部分に前記ケースの軸方向他側の部分が対応するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記熱源制御器はサーモスタットであることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記カバー部材には、前記熱源体から前記定着ベルトへ伝わる輻射熱を調整するための貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の記録媒体に像を定着させる定着装置、およびこのような定着装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置の分野において、無端状の定着ベルトを加圧ローラーと共に回転させるベルト方式の定着装置が普及しつつある(下記の特許文献1参照)。このようなベルト方式の定着装置において、定着ベルトは、金属層および樹脂層を有する薄肉の材料から、回転軸方向に長尺な円筒状に形成されている。また、定着ベルトの内部には、定着ベルトを加熱する熱源体としてハロゲンヒーターが設けられており、ハロゲンヒーターは、軸方向に長尺な形状を有し、定着ベルトとほぼ同じ長さを有している。ベルト方式の定着装置によれば、低熱容量の定着ベルトを用いることにより、従来の熱ローラー方式の定着装置と比較してウォームアップ時間の短縮を図ることができる。
【0003】
一方、定着装置には、ハロゲンヒーター等の熱源体の熱暴走等により、定着ベルトが異常な高温状態となって事故や故障が発生するのを防止するために、サーモスタット等の熱源制御器が設けられている。例えば、熱源制御器は、定着ベルトの外周面から径方向に所定の距離離れた位置に配置され、定着ベルトの温度を検知する。また、熱源制御器の内部には、熱変形により互いに接触、離間する一対の接点が設けられている。また、熱源制御器は、ハロゲンヒーターを稼働させるための電力をハロゲンヒーターに供給する電気経路の途中に接続され、定着ベルトの温度が異常に上昇し、所定の閾値を超えたときには、接点を互いに離間させることで電気経路を切断し、ハロゲンヒーターを強制的に停止させる。また、多くの定着装置において、熱源制御器は、定着ベルトの軸方向中央付近に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−145288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベルト方式の定着装置においては、定着ベルトが低熱容量であるため、熱源体で定着ベルトを加熱したときの昇温が速い。このため、ハロゲンヒーターの熱暴走の兆しが現れてから熱暴走が始まるまでの時間が短い。したがって、ハロゲンヒーターの熱暴走を未然に防ぐためには、熱源制御器により、ハロゲンヒーターの異常な温度上昇を早期に検知してハロゲンヒーターを迅速に強制停止させることが望ましい。このためには、熱源制御器を定着ベルトの外周面により接近した位置に配置することが望ましい。
【0006】
しかしながら、熱源制御器を定着ベルトの外周面に接近させると、熱源制御器が定着ベルトの温度上昇に対して敏感になるため、定着動作時における定着ベルトのばたつきにより熱源制御器と定着ベルトの外周面との間が一時的に狭くなるだけで、熱源制御器がハロゲンヒーターを強制停止させてしまうといった誤動作が生じるおそれがある。
【0007】
また、定着装置においては、熱源制御器とは別に、例えばサーミスタ等の温度センサを設け、この温度センサにより定着ベルトの温度を検知し、この検知結果に基づいてハロゲンヒーターを制御して、定着ベルトの温度を所定の目標温度に維持する制御を行っている。ジャム(紙詰まり)等が発生すると定着ベルトの温度がオーバーシュートし、定着ベルトの温度が目標温度よりも上昇するが、その上昇した温度が制御可能範囲内の温度である限り、その定着ベルトの温度は、ハロゲンヒーターの制御により下げられ、やがて所定の目標温度に戻される。ところが、何らかの事態により定着ベルトの温度が制御可能範囲を超えて異常に上昇することがあり、そうなると、ハロゲンヒーターの制御ができなくなり、ハロゲンヒーターが熱暴走する。ハロゲンヒーターが熱暴走すると定着ベルトの温度はさらに上昇し、事故や故障を引き起こす危険が生じる。熱源制御器は、ハロゲンヒーターの熱暴走を未然に防ぐために、定着ベルトの温度が制御可能範囲を超えて異常に上昇したことを検知してハロゲンヒーターを強制停止させる。ところが、熱源制御器を定着ベルトの外周面に接近させると、ジャム時のオーバーシュートによる定着ベルトの制御可能範囲内の温度上昇により熱源制御器がハロゲンヒーターを強制停止させてしまうといった誤動作が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、熱源制御器により、定着ベルトの異常な温度上昇を早期に検知して熱源体の熱暴走等を迅速に防止することができると共に、定着ベルトのばたつきや定着ベルトの制御可能範囲内の温度上昇により熱源制御器が誤動作することを防止することができる定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の定着装置は、記録媒体に像を定着させる定着装置であって、外枠を形成するフレーム部と、第1の回転軸周りを回転可能となるように前記フレーム部に支持された無端状の定着ベルトと、前記第1の回転軸と平行な第2の回転軸周りを回転可能となるように前記フレーム部に支持され、前記定着ベルトとの間に前記記録媒体を加圧しつつ通過させるニップ部を形成する加圧ローラーと、前記定着ベルトの内側に設けられ、前記第1の回転軸と略平行に伸長する長尺な形状を有し、輻射熱を放射して前記定着ベルトを加熱する熱源体と、前記定着ベルトと前記熱源体との間に設けられ、前記熱源体のうち、前記ニップ部において用紙が通過する通過領域の軸方向外側に位置する非通過領域に対応する部分の全部または一部を覆うカバー部材と、前記定着ベルトの外周面に臨むように前記フレーム部に取り付けられ、前記定着ベルトの外周面から径方向に所定の距離離れた位置に配置され、前記定着ベルトの温度を検知し、前記定着ベルトの温度が所定の基準温度を超えたときに前記熱源体を停止させる熱源制御器とを備え、軸方向における前記熱源制御器の取付位置は、前記熱源体において前記カバー部材で覆われていない部分と前記熱源体において前記カバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置に設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、熱源制御器を、熱源体においてカバー部材で覆われていない部分と熱源体においてカバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置に配置することにより、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値とを熱源制御器に明確に識別させることが可能になる。これにより、熱源制御器を定着ベルトの外周面に接近させて配置することで、熱源制御器により、定着ベルトの異常な温度上昇を早期に検知して熱源体の熱暴走等を迅速に防止することができると共に、定着ベルトのばたつきや定着ベルトの制御可能範囲内の温度上昇により熱源制御器が誤動作することを防止することができる。
【0011】
すなわち、定着装置の動作時において、定着ベルトの温度はその軸方向において異なる。それゆえ、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値も定着ベルトの軸方向において異なり、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値も定着ベルトの軸方向において異なる。また、熱源体を部分的に覆うカバー部材が設けられている等、熱源体から定着ベルトへ放射される輻射熱をその途中で反射または吸収するような構造が存在する場合には、定着ベルトの軸方向位置と定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値との関係と、定着ベルトの軸方向位置と定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値との関係とは互いに異なる。この結果、定着ベルトの軸方向位置によっては、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値との差が大きい場合もあれば、小さい場合もある。熱源体においてカバー部材で覆われていない部分とカバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置においては、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値との差が他の位置と比較して大きい。したがって、熱源制御器を、熱源体においてカバー部材で覆われていない部分とカバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置に配置することにより、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値とを熱源制御器に明確に識別させることができる。それゆえ、熱源制御器を定着ベルトの外周面に接近させることによる熱源制御器の誤動作を防止することができる。
【0012】
また、上述した本発明の定着装置において、前記熱源制御器は、前記定着ベルトの温度を検知し、前記定着ベルトの温度が所定の基準温度を超えたときに前記熱源体を停止させる制御器本体と、前記制御器本体を収容するケースとを備え、軸方向における前記熱源制御器の取付位置は、前記熱源体において前記カバー部材で覆われている部分に前記ケースの軸方向一側の部分が対応し、前記熱源体において前記カバー部材で覆われていない部分に前記ケースの軸方向他側の部分が対応するように設定されていることが望ましい。
【0013】
このように、熱源制御器を、熱源体において前記カバー部材で覆われている部分にケースの軸方向一側の部分が対応し、熱源体においてカバー部材で覆われていない部分にケースの軸方向他側の部分が対応するように配置することにより、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値とを制御器本体に明確に識別させることができる。それゆえ、熱源制御器を定着ベルトの外周面に接近させることによる熱源制御器の誤動作を防止することができる。
【0014】
また、上述した本発明の定着装置において、前記熱源制御器はサーモスタットであることが望ましい。
【0015】
サーモスタットによれば、定着ベルトの異常な温度上昇の検知と、熱源制御器の強制停止を容易に実現することができる。
【0016】
また、上述した本発明の定着装置において、前記カバー部材には、前記熱源体から前記定着ベルトへ伝わる輻射熱を調整するための貫通孔が形成されていることが望ましい。
【0017】
このように貫通孔が形成されたカバー部材により熱源体を部分的に覆った場合、熱源体がカバー部材で覆われていない部分と熱源体がカバー部材で覆われている部分との境界に対応する位置において、定着ベルトの制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルトの異常な温度上昇を示す温度値との差が大きくなる。したがって、軸方向における熱源制御器の位置をこの位置に設定することにより、熱源制御器を定着ベルトの外周面に一層近づけることで、定着ベルトの異常な温度上昇を一層迅速に検知することができ、かつ、熱源制御器の誤動作を防止することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、上述した本発明の定着装置を備えている。
【0019】
本発明によれば、定着装置の熱源体の熱暴走等を迅速に防止でき、かつ定着装置の熱源制御器の誤動作を防止できる画像形成装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱源制御器により、定着ベルトの異常な温度上昇を早期に検知して熱源体の熱暴走等を迅速に防止することができると共に、定着ベルトのばたつきや定着ベルトの制御可能範囲内の温度上昇により熱源制御器が誤動作することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による画像形成装置を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態による定着装置を示す説明図である。
図3図2中の矢示III−III方向から見た本発明の実施形態による定着装置の定着ベルトユニット、加圧ローラーおよびサーモスタットを示す断面図である。
図4】本発明の実施形態による定着ベルトユニットの端部およびサーモスタットを拡大して示す説明図である。
図5】本発明の実施形態によるハロゲンヒーターによる加熱範囲を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態による定着装置におけるカバー部材を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態による定着装置におけるサーモスタットを示す説明図である。
図8】サーモスタットと定着ベルトとの距離と、定着ベルトの温度との関係を示すグラフである。
図9】カバー部材の被覆率とオーバーラップ量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(画像形成装置)
図1は本発明の実施形態による画像形成装置を示している。図1において、本発明の実施形態による画像形成装置1は電子写真方式の画像形成装置であり、例えばプリンターである。画像形成装置1は略箱型の筐体2を備え、筐体2の下部には給紙カセット3が設けられている。給紙カセット3には記録媒体としての用紙が収容される。また、筐体2の上部には排紙トレイ4が設けられている。さらに、筐体2の上部にはトナーコンテナ5を収容する収容部が設けられ、筐体2にはこの収容部を開閉する蓋部6が設けられている。
【0024】
筐体2内には、給紙カセット3に収容された用紙を排紙トレイ4に向けて搬送する搬送経路7が形成されている。搬送経路7の上流側には給紙ローラー8が設けられ、その下流側には搬送ローラー9が設けられている。搬送ローラー9の下流側には画像形成部10が設けられている。画像形成部10は、感光体ドラム11、帯電器12、現像器13、転写ローラー14およびクリーニング装置15を有している。また、画像形成部10の上方には露光器16が設けられている。また、搬送経路7において、画像形成部10の下流側には、本発明の実施形態による定着装置21が設けられている。定着装置21は、後述するように、定着ベルト25、加圧ローラー32、および定着ベルト25を加熱する熱源体としてのハロゲンヒーター28等を備えている。また、定着装置21の下流側には搬送ローラー18が設けられ、搬送ローラー18の下流側であって排紙トレイ4の近傍には排紙ローラー19が設けられている。
【0025】
また、図示しないが、画像形成装置1には、半導体記憶素子を有し、例えばパーソナルコンピュータ等の外部装置から受け取った画像データを一時的に記憶する記憶部と、演算処理装置を有し、露光器16、画像形成部10、定着装置21等を制御する制御部と、画像形成装置1を稼働させるための電力の供給を制御する電源回路とが設けられている。
【0026】
このような構成を有する画像形成装置1の印刷動作は次の通りである。すなわち、用紙に印刷すべき画像のデータが画像形成装置1に入力されると、帯電器12により感光体ドラム11の表面が帯電され、画像データに対応したレーザー光Lが露光器16から感光体ドラム11へ照射され、感光体ドラム11の表面に静電潜像が形成される。さらに、現像器13により静電潜像に対応したトナー像が感光体ドラム11の表面に形成される。一方、給紙カセット3に収容された用紙が給紙ローラー8および搬送ローラー9により搬送され、感光体ドラム11と転写ローラー14との間を通過する。このとき、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が用紙の表面に転写される。トナー像が転写された後、感光体ドラム11の表面に残留したトナーはクリーニング装置15により回収される。続いて、トナー像が転写された用紙は、定着装置21の定着ベルト25と加圧ローラー32との間を通過する。このとき、ハロゲンヒーター28により加熱された定着ベルト25の熱により、トナー像が溶融して用紙に定着される。トナー像が定着された用紙は、搬送ローラー18および排紙ローラー19により搬送され、排紙トレイ4に排出される。
【0027】
(定着装置)
図2図1中の矢示II−II方向から見た定着装置21を示している。図3図2中の矢示III−III方向から見た定着ベルトユニット23および加圧ローラー32等の断面を示している。図4図2中の定着ベルトユニット23の一方の端部を示している。図2において、定着装置21は、その外枠を構成する、例えば金属板により形成されたフレーム部22を備えており、フレーム部22の内側には、定着ベルトユニット23と加圧ローラー32とが取り付けられている。定着ベルトユニット23には、ステー24、定着ベルト25、一対の取付部材26、一対の規制リング27、ハロゲンヒーター28、ニップ形成部材29、一対のカバー部材41等が設けられている。なお、ニップ形成部材29およびカバー部材41は、図3および図4に示し、図2においては図示を省略している。
【0028】
定着ベルトユニット23には、図2に示すように、用紙の搬送方向に対して直交する方向に伸長する回転軸A−Aが設定されている。ステー24は、回転軸A−Aに平行な方向(軸方向)に伸長する長尺な棒状または筒状の部材であり、定着ベルトユニット23の骨格を構成する。
【0029】
定着ベルト25はステー24の周囲に設けられている。定着ベルト25は無端状のベルトであり、軸方向に長い筒状に形成されている。また、定着ベルト25は薄肉であり、可撓性を有している。定着ベルト25は、基材層を離型層で被覆することにより形成されている。基材層は、例えばステンレス鋼等の金属またはポリイミド等の樹脂等により形成され、離型層は、例えばペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などの樹脂により形成されている。定着ベルト25は回転軸A−Aの周りを回転することができる。なお、定着ベルト25の基材層および離型層からなる構造については図示を省略している。
【0030】
取付部材26は、ステー24をフレーム部22の内側に不動に固定し、定着ベルト25をフレーム部22に対して回転可能に支持し、また、ハロゲンヒーター28およびニップ形成部材29等をフレーム部22に不動に固定する部材である。取付部材26は定着ベルト25の両端側にそれぞれ設けられている。例えば、各取付部材26にはステー24の端部を固定するためのステー取付孔(図示せず)が形成されている。ステー24は、その各端部に形成された係合部を取付部材26の当該ステー取付孔に係合することにより、取付部材26に固定されている。
【0031】
また、各取付部材26には、図4に示すように、その軸方向中央に向いた面から軸方向中央に向けて突出する円弧状の突条部26Aが形成されている。定着ベルト25の各端部は、突条部26Aの外周側に装着されている。定着ベルト25は、図2に示すように、その両端部が一対の取付部材26に狭持されることにより、その軸方向の移動が規制されている。一方、定着ベルト25の各端部は取付部材26の突条部26Aの外周面上を移動することができる。これにより、定着ベルト25は回転軸A−Aを中心に回転することができる。
【0032】
規制リング27は、図2に示すように、定着ベルト25の両端側にそれぞれ設けられている。規制リング27は、図4に示すように、環状の部材であり、定着ベルト25の端部と取付部材26との間に位置し、取付部材26の突条部26Aに回転可能に取り付けられている。規制リング27は、定着ベルト25の回転時の蛇行を抑制して定着ベルト25の回転を安定させる機能を有している。
【0033】
ハロゲンヒーター28は、輻射熱を放射して定着ベルト25を加熱する熱源体であり、図2に示すように、定着ベルト25の内側に設けられている。ハロゲンヒーター28は、回転軸A−Aと略平行に伸長する長尺な形状を有し、定着ベルト25の軸方向における長さとほぼ同じ長さを有している。また、ハロゲンヒーター28は、図4に示すように、輻射熱を放射するバルブ部28Aと、バルブ部28Aの両端側にそれぞれ設けられた封止部28Bとを備えている。ハロゲンヒーター28はその両端部が取付部材26にそれぞれ固定されている。
【0034】
また、ハロゲンヒーター28は、図3に示すように、定着ベルト25の内側において、ステー24と定着ベルト25との間に位置し、また、回転軸A−Aよりも上方に位置している。この結果、ハロゲンヒーター28は、回転軸A−Aを中心とした定着ベルト25の回転軌道のうち、その上部の領域に最も接近している。それゆえ、ハロゲンヒーター28はこの領域を通過する定着ベルト25の各部分を主に加熱する。なお、印刷動作中、定着ベルト25は回転軸A−Aの周りを回転し続けるので、定着ベルト25はその全周に亘ってハロゲンヒーター28により加熱されることとなる。ここで、図5は定着ベルト25の回転軌道Tにおいてハロゲンヒーター28により加熱される領域(加熱領域)Rを示している。すなわち、図5においてハッチングを付した部分が加熱領域Rである。
【0035】
ニップ形成部材29は、図3に示すように、定着ベルト25の内側に設けられ、ステー24の下方であって、加圧ローラー32と対向する位置に配置されている。ニップ形成部材29は、軸方向に伸長する長尺な部材であり、定着ベルト25の軸方向長さとほぼ同じ長さを有している。また、ニップ形成部材29は、液晶ポリマー(LCP)等の耐熱性樹脂により形成され、ステー24または各取付部材26に固定されている。ニップ形成部材29は、定着ベルト25を間に挟んで加圧ローラー32と互いに押し合い、定着ベルト25と加圧ローラー32との間にニップ部31を形成する。
【0036】
カバー部材41は、図4に示すように、ハロゲンヒーター28の端側を覆う部材である。図4は、ハロゲンヒーター28の一方の端側を覆うカバー部材41のみを示しているが、定着ベルトユニット23には、一対のカバー部材41が設けられ、これら一対のカバー部材41はハロゲンヒーター28の両端側をそれぞれ覆っている。これら一対のカバー部材41は、左右対称であり、同等の構成を有するので、以下、図4に示す一方のカバー部材41についてのみ説明する。
【0037】
カバー部材41は、図4に示すように、定着ベルト25の内側に配置され、ハロゲンヒーター28の端部の外周側を覆っている。この結果、定着ベルト25の端部とハロゲンヒーター28の端部との間にはカバー部材41が介在している。また、カバー部材41は、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分を覆っている。すなわち、カバー部材41が覆っているハロゲンヒーター28の端部とは、最小非通紙領域に対応する部分である。定着ベルト25と加圧ローラー32との間に形成されたニップ部31において、幅寸法(定着ベルト25の軸方向の長さに対応する長さ寸法)が最大の用紙が通過する領域を「最大通紙領域」といい、ニップ部において最大通紙領域の軸方向外側において最大通紙領域と隣接する領域を「最小非通紙領域」という。カバー部材41は、この最小非通紙領域に対応する領域に配置され、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分を覆っている。
【0038】
ここで、図6は定着ベルトユニット23に取り付けられる前の状態のカバー部材41を示している。図6に示すように、カバー部材41は、例えばステンレス鋼等の金属板を、略コ字状に折り曲げることにより形成され、上側の上板部41Aおよびその両側の横板部41Bを備えている。図3に示すように、上板部41Aはハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分を上方から覆い、各横板部41Bはハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分を側方から覆っている。また、カバー部材41は、例えばビス42を用いて、ステー24に固定されている。
【0039】
また、図4に示すように、カバー部材41において、定着ベルト25の軸方向中央に近い側の端部は、最大通過領域と最小非通過領域との境界と略一致する位置に配置されている。また、カバー部材41において、定着ベルト25の軸方向中央から遠い側の端部は、ハロゲンヒーター28の軸方向末端部と略一致する位置に配置されている。すなわち、カバー部材41は、最大通過領域と最小非通過領域との境界と略一致する位置からハロゲンヒーター28の末端部までの間において、ハロゲンヒーター28を覆っている。
【0040】
また、カバー部材41の上板部41Aには複数の貫通孔43が形成されている。これら貫通孔43は、ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を調整する機能を有している。図6に示すカバー部材41においては、各貫通孔43の形状は軸方向に延びるスリット状であり、貫通孔43の個数は5つである。しかし、これは一例にすぎない。貫通孔43の形状、大きさおよび個数は、ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を調整するために適宜変更することができる。
【0041】
ここで、図6に示すカバー部材41において頂点P1、P2、P3およびP4に囲まれた部分が上板部41Aの範囲である。このような範囲を有する上板部41Aの表面において、貫通孔43が形成されていない部分を被覆面といい、上板部41Aの表面全体の面積に対する被覆面の割合を、カバー部材41の被覆率という。上板部41Aに形成する貫通孔43の個数を増やし、または各貫通孔43の大きさを大きくすると、カバー部材41の被覆率が小さくなる。逆に、上板部41Aに形成する貫通孔43の個数を減らし、または各貫通孔43の大きさを小さくすると、カバー部材41の被覆率が大きくなる。ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を増加させる場合には、カバー部材41の被覆率を小さくする。一方、ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を減少させる場合には、カバー部材41の被覆率を大きくする。
【0042】
本実施形態による定着装置21においては、長時間の連続印刷時に、定着ベルト25において最小非通紙領域に対応する部分の過昇温を防止することと、長時間の連続印刷時に、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分の表面温度がその限界温度を超えないようにすることの2つの要請に応じるために、カバー部材41の被覆率が設定されている。なお、定着ベルト25において最小非通紙領域に対応する部分が長時間の連続印刷時に温度が上昇するのは、ニップ部31において最小非通紙領域では用紙が通過しないため、定着ベルト23の熱が用紙に吸収されることがないからである。
【0043】
長時間の連続印刷時に、定着ベルト25において最小非通紙領域に対応する部分の過昇温を防止するためには、カバー部材41の被覆率を大きくし、ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を減少させることが望ましい。一方、長時間の連続印刷時に、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分の表面温度がその限界温度を超えないようにするためには、カバー部材41の被覆率を小さくし、ハロゲンヒーター28から定着ベルト25へ伝わる輻射熱を増加させる(ハロゲンヒーター28から放射される輻射熱がカバー部材41に反射する量を減らす)ことが望ましい。定着装置21におけるカバー部材41の被覆率は、これらの要請に同時に応じることができるように適切な比率に設定されている。
【0044】
定着ベルトユニット23には、以上説明した部品ないし部材に加え、ハロゲンヒーター28から放射される輻射熱を加熱領域Rに向けて反射する反射部材等が設けられているが、これについては図示および説明を省略する。
【0045】
一方、定着装置21において、加圧ローラー32は、図2に示すように、定着ベルト25の下方において定着ベルト25と隣接している。加圧ローラー32は、軸方向に長尺な円柱状のローラであり、図3に示すように、芯材33と、その周囲に設けられた弾性層34と、弾性層34の外周面を被覆する離型層(図示せず)とを備えている。また、加圧ローラー32の両端部はフレーム部22に回転可能に取り付けられている。加圧ローラー32は、図2に示すように、動力伝達機構35を介してモーター(図示せず)に接続されており、モーターの駆動により、回転軸A−Aと平行な回転軸B−B周りを回転する。加圧ローラー32の外周面は、定着ベルト25を介してニップ形成部材29に押し付けられており、これにより、加圧ローラー32と定着ベルト25との間には、用紙を加圧しつつ通過させるニップ部31が形成されている。また、加圧ローラー32の外周面が定着ベルト25を介してニップ形成部材29に押し付けられているため、モーターの駆動により加圧ローラー32が回転すると、定着ベルト25が回転する。
【0046】
また、定着装置21には、図2に示すように、例えば2つの温度センサー36、37が設けられている。一方の温度センサ36は、定着ベルト25の軸方向中央部に配置され、他方の温度センサー37は定着ベルト25の軸方向端側に配置されている。各温度センサ36、37は例えばサーミスタを備えている。また、各温度センサ36、37は、サーミスタが配置された先端側が定着ベルト25の外周面に接触し、基端側がフレーム部22に固定されている。これら温度センサ36、37は、定着ベルト25の軸方向中央部および端側の温度をそれぞれ検知し、これらの検知結果を示す検知信号を制御部へ出力する。制御部は、定着ベルト25の温度を例えば所定の目標温度に維持するように、温度センサ36、37から出力された検知信号に基づいてハロゲンヒーター28を制御する。
【0047】
また、定着装置21のフレーム部22には熱源制御器としてのサーモスタット38が設けられている。上述した温度センサ36、37は正常稼働時にハロゲンヒーター28を制御して定着ベルト25の温度制御を行うための手段であるのに対し、サーモスタット38は、定着ベルト25の温度が異常に上昇したときに、ハロゲンヒーター28を強制的に消灯(停止)させ、ハロゲンヒーター28の熱暴走等による事故や定着装置21等の損傷、故障を防ぐための手段である。
【0048】
ここで、図7はサーモスタット38の構成を模式的に示している。図7に示すように、サーモスタット38は、外殻を形成するケース51を備えている。ケース51は例えば有底、有蓋の略円筒状に形成され、例えば6mmないし30mm程度(本実施形態においては例えば10mm程度)の径寸法Fを有している。ケース51の外側には一対の固定部52が設けられ、サーモスタット38は、これら固定部52を介してを定着装置21のフレーム部22に取り付けられている。
【0049】
ケース51内には、熱により例えば湾曲変形するバイメタル53と、バイメタル53の変形に伴って図7において上下方向に移動する可動部材54と、可動部材54の移動により動く接点55と、接点55と向かい合うように配置された不動の接点56とが設けられている。また、図7においてケース51の上部には一対の端子57、58が設けられている。端子57には接点55が接続され、端子58には接点56が接続されている。サーモスタット38の周囲の温度が所定の閾値G以下のときには、バイメタル53が湾曲変形せず、可動部材54が下方に移動し、接点55と接点56とが互いに接触する。これにより端子57と端子58とが接続される。一方、サーモスタット38の周囲の温度が所定の閾値Gを超えたときには、バイメタル53が湾曲変形し、可動部材54が上方に移動し、接点55と接点56とが互いに離れる。これにより、端子57と端子58とが切断される。サーモスタット38は、ハロゲンヒーター28を稼働させるための電力をハロゲンヒーター28に供給する電気経路の途中に接続されている。定着ベルト25の温度が上記閾値G以下のときには接点55、56を互いに接触させることで電気経路を接続する。これにより、ハロゲンヒーター28は稼働することができる。一方、定着ベルト25の温度が異常に上昇し、上記閾値Gを超えたときには、接点55、56を互いに離間させることで電気経路を切断する。これにより、ハロゲンヒーター28は強制的に停止させられる。
【0050】
サーモスタット38は、図3に示すように、定着ベルト25の近傍であって、図5に示す加熱領域Rに対向する位置に配置されている。また、サーモスタット38は、図4に示すように、定着ベルト25の外周面と径方向において所定の距離E離れた位置(接触はしていないが、かなり接近した位置)に配置されている。
【0051】
また、サーモスタット38は、図4に示すように、ハロゲンヒーター28においてカバー部材41で覆われていない部分とカバー部材41で覆われている部分との境界Cに対応する位置に配置されている。すなわち、軸方向におけるサーモスタット38の取付位置は、ハロゲンヒーター28においてカバー部材41で覆われている部分とケース51の軸方向一側(図4中の左側)の部分とが対応し、ハロゲンヒーター28においてカバー部材41で覆われていない部分とケース51の軸方向他側(図4中の右側)の部分とが対応するように設定されている。より具体的には、ハロゲンヒーター28のケース51において、カバー部材41と対応している(重なり合っている)部分の軸方向の長さを「オーバーラップ量」というとすると、図4に示すように、オーバーラップ量Dが、0mmよりも大きく、かつケース51の径寸法F(図7参照)よりも小さい値、例えば5mmに設定されている。なお、本実施形態において、境界Cの位置は最大通紙領域と最小非通紙領域との境界に一致する。
【0052】
軸方向におけるサーモスタット38の取付位置を境界Cに対応する位置に設定することにより、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値とをサーモスタット38に明確に識別させることが可能になる。これにより、サーモスタット38を定着ベルト25の外周面に従来よりも接近させて配置しても、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値とをサーモスタット38に正確に識別させることができる。したがって、定着ベルト25の温度が、定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値を超えたときに限り、サーモスタット38によりハロゲンヒーター28を強制停止させることができ、定着ベルト25のばたつきや定着ベルト25の制御可能範囲内の温度上昇によりサーモスタット38が誤動作することを防止することができる。そして、サーモスタット38を定着ベルト25の外周面に従来よりも接近させて配置することで、サーモスタット38により、定着ベルト25の異常な温度上昇を早期に検知することができ、ハロゲンヒーター28の熱暴走等を迅速に防止することができる。
【0053】
定着ベルト25の制御可能な温度範囲とは、温度センサ36、37および上記制御部によりハロゲンヒーター28を制御し、定着ベルト25の温度を上記所定の目標温度に戻すことができる温度範囲を意味する。例えば、ジャム(紙詰まり)により定着ベルト25の温度がオーバーシュートすると、定着ベルト25の温度が目標温度よりも高くなり、制御可能な温度範囲の上限値に近くなることがあるが、定着ベルト25の温度が、制御可能な温度範囲の上限値を超えない限り、制御部によるハロゲンヒーター28の制御によって定着ベルト25の温度を目標温度に戻すことができる。一方、定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値とは、ハロゲンヒーター28の熱暴走等を未然に防ぐために設定された温度値である。この温度値は、上述した制御可能な温度範囲の上限値よりも高い。サーモスタット38には、この定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値が、上述した閾値Gとして設定されている。
【0054】
ここで、図8に示す3つのグラフにおいて、実線で示す特性線は、サーモスタット38と定着ベルト25の外周面との距離E(図4参照)と、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値との関係を示している。また、これら3つのグラフにおいて二点鎖線で示す特性線は、サーモスタット38と定着ベルト25の外周面との距離Eと、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値との関係を示している。また、(1)のグラフはカバー部材41の被覆率が40%で、かつオーバーラップ量D(図4参照)が0mmの場合の各関係を示し、(2)のグラフはカバー部材41の被覆率が40%で、かつオーバーラップ量Dが5mmの場合の各関係を示し、(3)のグラフはカバー部材41の被覆率が40%で、かつオーバーラップ量Dが15mmの場合の各関係を示している。
【0055】
(1)のグラフからわかる通り、オーバーラップ量Dが0mmの場合、すなわち、サーモスタット38とカバー部材41とが重なり合っていない場合には、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値とが互いに接近している。例えば、サーモスタット38と定着ベルト25の外周面との距離Eを0.4mmに設定した場合には、異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差Hが小さい。一方、(2)のグラフからわかる通り、オーバーラップ量Dが5mmの場合、すなわち、図4に示す程度にサーモスタット38とカバー部材41とが重なり合っている場合には、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値とが互いに大きく離れている。例えば、サーモスタット38と定着ベルト25の外周面との距離Eを0.4mmに設定した場合には、異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差Hが大きい。他方、(3)のグラフからわかる通り、オーバーラップ量Dが15mmの場合、すなわち、サーモスタット38がカバー部材41と完全に重なり合っている場合には、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値とが互いに極めて接近している。例えば、サーモスタット38と定着ベルト25の外周面との距離Eを0.4mmに設定した場合には、異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差Hが極めて小さい。図8から、カバー部材41の被覆率が40%の場合には、オーバーラップ量Dが5mmである場合に、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなることがわかる。したがって、オーバーラップ量Dを5mmに設定することで、定着ベルト25の制御可能な温度範囲の上限値と、定着ベルト25の異常な温度上昇を示す温度値とをサーモスタット38に明確に識別させることができる。
【0056】
一方、本実施形態の定着装置21では、上述したように、カバー部材41に貫通孔43を形成し、貫通孔43の形状、大きさまたは個数の設定によりカバー部材41の被覆率を設定している。そして、このカバー部材41の被覆率は、長時間の連続印刷時に、定着ベルト25において最小非通紙領域に対応する部分の過昇温を防止することと、長時間の連続印刷時に、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分の表面温度がその限界温度を超えないようにすることの2つの要請に応じるために設定されている。ところが、カバー部材41の被覆率を小さくすることにより、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなる領域を、境界C(図4参照)の位置に形成することができることが判明した。そして、カバー部材41の被覆率を変化させることで、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなるオーバーラップ量Dの値が変化することが判明した。ここで、図9は、カバー部材41の被覆率と、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなるオーバーラップ量Dとの関係を示している。図9から、カバー部材41の被覆率を変化させることにより、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなるオーバーラップ量Dの値が変化することがわかる。したがって、上述した2つの要請を充足する範囲でカバー部材41の被覆率をある程度小さくすることで、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値との差が大きくなる領域を境界Cの位置に形成することができる。また、このようにして設定されたカバー部材41の被覆率に応じて、例えば図9に示す関係に基づきオーバーラップ量Dを設定することで、定着ベルト25の異常な上昇を示す温度値と制御可能な温度範囲の上限値とをサーモスタット38に明確に識別させることができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、定着ベルト25の温度が異常に上昇したときにハロゲンヒーター28を強制停止させる熱源制御器としてサーモスタット38を例にあげたが、本発明はこれに限らない。熱源制御器として、熱を検知して電力供給を遮断する他の装置を適用することができる。
【0058】
また、上述した実施形態では、ハロゲンヒーター28において最小非通紙領域に対応する部分をカバー部材41で覆う場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。ハロゲンヒーター28をカバー部材41で覆う領域を、最小非通紙領域の一部としてもよいし、最小非通紙領域よりも広い領域としてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、境界C(図4参照)を、最大通過領域と最小非通過領域との境界と一致する位置に設定する場合を例にあげたが、一致させなくてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、カバー部材41に形成する貫通孔43の形状はスリット状に限らず、例えば円形等でもよく、貫通孔41の大きさまたは個数は、設定すべき被覆率に応じて、適宜変更することができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、熱源体としてハロゲンヒーター28を例にあげたが、熱源体はこれに限らず、例えばセラミックヒーター等の他の熱源体でもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例にあげたが、本発明はこれに限らず、複写機、ファクシミリ、複合機等にも適用することができる。
【0063】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う定着装置および画像形成装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置
21 定着装置
22 フレーム部
23 定着ベルトユニット
24 ステー
25 定着ベルト
26 取付部材
26A 突条部
27 規制リング
28 ハロゲンヒーター(熱源体)
29 ニップ形成部材
31 ニップ部
32 加圧ローラー
35 動力伝達機構
36、37 温度センサ
38 サーモスタット(熱源制御部)
41 カバー部材
41A 上板部
41B 横板部
43 貫通孔
51 ケース
53 バイメタル53
54 可動部材54
55、56 接点55、56
57、58 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9