【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプリゼンティド・バイ・ザ・セクレタリー・フォー・ザ・デパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービシズ
【文献】
Tetsuya Hirata et al.,Zscan4 transiently reactivates early embryonic genes during the generation of induced pluripotent stem cells,SCIENTIFIC REPORTS,2012年 1月 4日,No.208, Vol.2,1-11ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)配列番号19のヌクレオチド2465〜4936と少なくとも95%同一である核酸配列で、その核酸分子はZscan4−ERT2融合タンパク質をコードする;又は(ii)配列番号20のヌクレオチド2479〜4731と少なくとも95%同一である核酸配列で、その核酸分子はZscan4−ERT2融合タンパク質をコードする、を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【発明を実施するための形態】
【0022】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸及びアミノ酸配列は、37CFR1.822で定義されるようなヌクレオチド塩基の標準的な文字の略語、及びアミノ酸の3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖への任意の参照によって含まれるものとして理解される。添付の配列表においては以下の通りである:
配列番号1及び2は、ヒトZSCAN4のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号3及び4は、マウスZscan4aのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号5及び6は、マウスZscan4bのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号7及び8は、マウスZscan4cのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号9及び10は、マウスZscan4dのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:11及び12は、マウスZscan4eのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号:13及び14は、マウスZscan4fのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列である。
配列番号15〜18は、Zscan4とH2AのqRT−PCR分析に使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
配列番号19は、プラスミドpPyCAGmZscan4c−ERT2のヌクレオチド配列である。
配列番号20は、プラスミドpPyCAG−hZscan4ERT2のヌクレオチド配列である。
配列番号21は、ヒトERT2のアミノ酸配列である。
配列番号22は、マウスZscan4c−ERT2融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号23は、ヒトZSCAN4−ERT2融合タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号24は、プラスミドpCAG−Zscan4−ΔCのヌクレオチド配列である。
配列番号25は、マウスZscan4c−ΔC(4つ全てのジンクフィンガードメインを欠損している)のアミノ酸配列である。
【0023】
発明の詳細な説明
I.省略形
a.a. アミノ酸
cDNA 相補デオキシリボ核酸
Em エメラルド
ES 胚性幹
hCg ヒト絨毛性ゴナドトロピン
ICM 内部細胞塊
LIF 白血病抑制因子
MEF マウス胎児線維芽細胞
ORF オープンリーディングフレーム
PFA パラホルムアルデヒド
qPCR 定量的ポリメラーゼ連鎖反応
qRT−PCR 定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
shRNA 短ヘアピンリボ核酸
Tmx タモキシフェン
【0024】
II. 用語及び方法
特記しない限り、技術用語は、慣例的用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Oxford University Press出版のBenjamin Lewin, Genes V(1994)(ISBN 0−19−854287−9);Blackwell Science Ltd.出版のKendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology(1994)(ISBN 0−632−02182−9);及びVCH Publishers, Inc.出版のRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference(1995)(ISBN 1−56081−569−8)に見出され得る。本開示の様々な態様の概説を容易にするため、特定の用語の以下の説明を提供する。
【0025】
投与:被験体に薬剤(例えば、ES細胞又はES細胞集団)を任意の有効な経路によって提供すること又は与えること。例示的な投与経路としては、注入(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内又は動脈内)が挙げられるがこれに限定されない。
【0026】
薬剤:任意のタンパク質、核酸分子、化合物、細胞、小分子、有機化合物、無機化合物又は関心対象のその他の分子。接触させる:直接的な物理的結合に置くこと;固体と液体の両方の形態を含む。本明細書において使用するとき、「接触させる」は、「暴露する」と交換可能に使用される。いくつかの場合において、「接触させる」は、細胞に核酸分子をトランスフェクトすることなどのトランスフェクトすることを含む。
【0027】
縮重改変体:遺伝コードの結果として縮重である配列を示す、Zscan4ポリペプチドなどのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。20個の天然アミノ酸が存在、その大部分は、1を超えるコドンによって特定される。したがって、ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列が変化しない限り、全ての縮重ヌクレオチド配列が含まれる。
【0028】
分化:細胞が特定の型の細胞(例えば、筋細胞、皮膚細胞等)へと発生するプロセスを指す。胚性幹細胞の分化とは、特定の細胞系統に向けた細胞の発生を指す。細胞は、より分化するにつれて、細胞は、潜在力、又は複数の異なる細胞型になる能力を失う。
【0029】
胚性幹(ES)細胞:発生中の胚盤胞の内部細胞塊から単離された多能性細胞。ES細胞は、哺乳動物などの任意の生物に由来し得る。一実施形態において、ES細胞は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒト以外の霊長類及びヒトから作製される。ヒト及びマウスに由来するES細胞が例示的である。ES細胞は、多能性細胞であり、このことは、それらが、体内に存在する細胞の全て(骨細胞、筋肉細胞、脳細胞など)を生じ得ることを意味する。マウスES細胞を作製するための方法は、例えば、米国特許第5,670,372号に認め得る。ヒトES細胞を作製するための方法は、例えば、米国特許第6,090,622号、PCT公開番号WO00/70021及びPCT公開番号WO00/27995に見られ得る。いくつかのヒトES細胞系が、当該技術分野で公知であり、公的に入手可能である。例えば、National Institutes of Health(NIH)Human Embryonic Stem Cell Registryは、開発されたいくつかのヒトES細胞系のリストを提供している(リストは、NIH Office of Extramural Researchのウェブサイトhttp://grants.nih.gov/stem
cells/registry/current.htmにてオンラインで閲覧できる)。
【0030】
カプセル化:本明細書において使用するとき、ナノ粒子に「カプセル化」された分子とは、ナノ粒子内に含まれているか、もしくはナノ粒子の表面に付着されているか、又はそれらの組み合わせである、分子(例えば、Zscan4−ERT2融合タンパク質)を指す。
【0031】
ERT2:生理的濃度で天然リガンド(17P−エストラジオール)に結合しないが、ナノモル濃度のタモキシフェン又はその代謝物4−ヒドロキシ−タモキシフェン(40HT)に非常に感受性であるヒトエストロゲン受容体の変異したリガンド結合ドメインを含むタンパク質(Feil et al.,Biochem Biophys Res Commun 237(3):752−757,1997)。ERT2の例示的なアミノ酸配列は、配列番号21として本明細書に記載され、対応するコード配列は、配列番号19のヌクレオチド3989〜4936として本明細書に記載されている。
【0032】
ES細胞治療:ES細胞を被験体に投与することを含む治療。特定の例において、ES細胞は、Zscan4
+ES細胞である。
【0033】
(Zscan4の)機能的断片又は改変体:開示されたZscan4ポリヌクレオチド及びポリペプチド(例えば、配列番号1〜14として記載されているもの)は、Zscan4の生物学的活性を保持するZscan4の機能的断片及び改変体を含む。Zscan4の機能的断片及び/又は改変体は、一般に、配列番号1〜14に記載されるZscan4配列の1つと少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列同一性を含む。全体未満の配列を配列同一性について比較されているとき、断片は、典型的には、断片の長さにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、例えば、少なくとも85%、90%、95%又は99%配列同一性を有することができる。
【0034】
融合タンパク質:核酸配列の発現によって生じたタンパク質は、2種(異種)のタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列から遺伝子操作された。融合タンパク質を作成するために、核酸配列は、同一のリーディングフレームになければならず、内部の終止コドンを含まなければならない。本明細書におけるいくつかの実施形態において、融合タンパク質はZscan4−ERT2融合タンパク質である。いくつかの例において、融合タンパク質は、2つの異なるタンパク質間にリンカーを含む。
【0035】
ゲノム安定性:細胞がDNAを正確に複製し、DNA複製機構の完全性を維持する能力。安定なゲノムを有するES細胞は、一般に、細胞老化に抗し、クライシス又は形質転換を起こすことなく250回を超す倍加により増殖し得て、低変異頻度及び低頻度の染色体異常を有し(例えば、胎児性癌腫細胞と比べて)、ゲノム完全性を維持する。長いテロメアは、細胞老化に対する緩衝を提供すると考えられており、一般に、ゲノム安定性及び全体的な細胞の健康状態を示すと考えられている。染色体の安定性(例えば、変異がほとんどないこと、染色体再配列や染色体数の変化がないこと)もまた、ゲノム安定性に関連する。ゲノム安定性の喪失は、癌、神経障害及び早期老化に関連する。ゲノム不安定性の徴候としては、変異率の上昇、甚だしい染色体再配列、染色体数の変化、及びテロメアの短縮が挙げられる。
【0036】
異種:異種ポリペプチド又はポリヌクレオチドとは、異なる供給源又は種に由来するポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。例えば、ヒトES細胞において発現するマウスZscan4ペプチドは、そのES細胞にとって異種である。
【0037】
宿主細胞:ベクターが伝搬され得る及びそのDNAが発現され得る細胞。この用語はまた、被験体の宿主細胞の任意の子孫も含む。複製中に起きる変異が存在し得るので、全ての子孫が親細胞と同一でない可能性があることが理解される。しかしながら、「宿主細胞」という用語が使用されるとき、そのような子孫は含まれる。
【0038】
人工多能性幹(iPS)細胞:ある特定の遺伝子の「強制的な」発現を誘導することによって、非多能性細胞、代表的には成体の体細胞から人工的に得られるあるタイプの多能性幹細胞。iPS細胞は、哺乳動物などの任意の生物に由来し得る。一実施形態において、iPS細胞は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒト以外の霊長類及びヒトから作製される。ヒト及びマウスに由来するiPS細胞が例示的である。
【0039】
iPS細胞は、多くの点(例えば、ある特定の幹細胞遺伝子及びタンパク質の発現、クロマチンのメチル化パターン、倍加時間、胚様体形成、奇形腫形成、生存可能なキメラの形成、ならびに分化能(potency)及び分化能力(differentiability))においてES細胞と似ている。iPS細胞を作製するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、iPS細胞は、代表的には、成体の線維芽細胞などの非多能性細胞への、ある特定の幹細胞関連遺伝子(例えば、Oct−3/4(Pouf51)及びSox2)のトランスフェクションによって得られる。トランスフェクションは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス又はアデノウイルス)によって達成され得る。例えば、細胞は、レトロウイルス系を用いてOct3/4、Sox2、Klf4及びc−Mycでトランスフェクトされ得るか、又はレンチウイルス系を用いてOCT4、SOX2、NANOG及びLIN28でトランスフェクトされ得る。3〜4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞が、多能性幹細胞と形態学的に及び生化学的に類似し始め、そして代表的には、形態学的選択、倍加時間、又はレポーター遺伝子及び抗生物質選択によって単離される。一つの例において、成体ヒト細胞からのiPSは、Yuら(Science 318(5854):1224,2007)又はTakahashiら(Cell 131(5):861−72,2007)の方法によって作製される。
【0040】
単離された:単離された核酸は、他の核酸配列、及びその核酸が天然に存在している生物の細胞、即ち、他の染色体及び染色体外のDNA及びRNAから実質的に分離又は精製されている。従って、「単離された」という用語には、標準的な核酸精製法により精製された核酸が包含される。その用語には、宿主細胞における組み換え発現により調製された核酸も、化学的に合成された核酸も包含される。同様に、「単離された」タンパク質は、そのタンパク質が天然に存在している生物の細胞の他のタンパク質から実質的に分離又は精製されており、宿主細胞における組み換え発現により調製されたタンパク質も、化学的に合成されたタンパク質も包含する。同様に、「単離された」細胞は、他の細胞型とは区別され、実質的に分離されている。
【0041】
リンカー:2つの核酸分子又は2つのペプチド(例えば、融合タンパク質)間などの2つの分子間のスペーサーとして機能する1以上のヌクレオチド又はアミノ酸。いくつかの例において、リンカーは、1〜100アミノ酸、例えば1〜50又は5〜10アミノ酸である。
【0042】
ナノ粒子:直径が約1000ナノメートル(nm)未満の粒子。本明細書に提供される方法とともに使用するための例示的なナノ粒子は、生体適合性及び生分解性ポリマー材料で作製される。いくつかの態様において、ナノ粒子は、PLGAナノ粒子である。本明細書において使用するとき、「ポリマーナノ粒子」は、特定の物質(単数又は複数)の反復サブユニットで構成されているナノ粒子である。「ポリ(乳酸)ナノ粒子」は、反復された乳酸サブユニットを有するナノ粒子である。同様に、「ポリ(グリコール酸)ナノ粒子」は、反復されたグリコール酸サブユニットを有するナノ粒子である。
【0043】
非ヒト動物:ヒト以外の全ての動物を含む。非ヒト動物には、非ヒト霊長類、ブタ、ウシ、及び家禽などの家畜、イヌ、ネコ、ウマ、ハムスターなどの競技動物もしくはペット、マウスなどのげっ歯動物、又はライオン、トラ、もしくはクマなどの動物園動物が含まれるが、これらに限定はされない。一例において、非ヒト動物は、トランスジェニックのマウス、ウシ、ヒツジ、又はヤギなどのトランスジェニック動物である。非限定的な一つの具体例において、トランスジェニック非ヒト動物はマウスである。
【0044】
作動可能に連結された:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、その第一の核酸配列はその第二の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、そのプロモーターはそのコード配列と作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結された核酸配列は、連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0045】
医薬として許容され得る担体:有用な薬学的に許容され得る担体は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin著,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第15版(1975)には、Zscan4タンパク質(融合タンパク質を含む)、Zscan4核酸分子又は本明細書に開示される細胞の薬学的送達に適した組成物及び製剤が記載されている。
【0046】
一般に、担体の性質は、利用される特定の投与モードに依存する。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的かつ生理学的に許容される液体を媒体として含んでいる注入可能な液体を含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、又はカプセル剤)の場合、従来の非毒性の固形担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。 生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、湿潤剤又は乳化剤、保存剤、及びpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートのような微量の非毒性の補助物質を含有することができる。
【0047】
多能的/多能性:「多能性」細胞は、生殖細胞を含む、生物の細胞系統(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)の全てを形成することができるが、完全な生物を自律的に形成することはできない細胞である。本明細書で使用するとき、多能性を高める又は持続することは、幹細胞の多能的能力又は多能性の持続時間を増加させることをいう。
【0048】
ポリペプチド:単量体がアミド結合を通して接合されているアミノ酸残基である重合体。アミノ酸がアルファ−アミノ酸である場合、L−光学異性体又はD−光学異性体のいずれかが使用され得るが、L−異性体が好ましい。本明細書において使用するとき、「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、任意のアミノ酸配列を包含し、糖タンパク質などの修飾された配列を含むものとする。「ポリペプチド」という用語には、特に、天然に存在するタンパク質、及び組み換え又は合成により作製されたものも内含されるものとする。
【0049】
「ポリペプチド断片」という用語は、少なくとも1つの有用なエピトープを示すポリペプチドの部分をさす。「ポリペプチドの機能的断片」という用語は、Zscan4などのポリペプチドの活性を保持しているポリペプチドの断片全てをさす。生物学的に機能的な断片は、例えば、抗体分子に結合することができるエピトープのような小さいポリペプチド断片から、細胞内の表現型変化の特徴的な誘導又はプログラミングに関与することができる、例えば、細胞の増殖又は分化に影響することができる大きなポリペプチドまで、様々なサイズであり得る。「エピトープ」とは、抗原との接触に応答して生成した免疫グロブリンに結合することができるポリペプチドの領域である。従って、Zscan4又はZscan4の保存的改変体の生物学的活性を含有している、より小さいペプチドは、有用なものとして含まれる。
【0050】
本明細書において使用されるとき、「実質的に精製されたポリペプチド」という用語は、それが天然に関連している他のタンパク質、脂質、炭水化物、又はその他の材料が実質的に除去されているポリペプチドを指す。一実施形態において、ポリペプチドは、それが天然に関連している他のタンパク質、脂質、炭水化物、又はその他の材料が少なくとも50%、例えば、少なくとも80%除去されている。別の実施形態において、ポリペプチドは、それが天然に関連している他のタンパク質、脂質、炭水化物、又はその他の材料が少なくとも90%除去されている。さらに別の実施形態において、ポリペプチドは、それが天然に関連している他のタンパク質、脂質、炭水化物、又はその他の材料が少なくとも95%除去されている。
【0051】
保存的置換は、あるアミノ酸をサイズ、疎水性等が類似している別のアミノ酸に交換する。保存的置換の例は、以下に示される:
【0053】
保存的であっても保存的でなくても、アミノ酸変化をもたらすcDNA配列の改変は、コードされたタンパク質の機能的及び免疫学的な同一性を保存するために、最小限に抑えられるべきである。従って、いくつかの非限定的な例において、Zscan4ポリペプチド(Zscan4−ERT2などのZscan4融合タンパク質)又は本明細書に開示されたその他のポリペプチドは、高々2個、高々5個、高々10個、高々20個、又は高々50個の保存的置換を含む。タンパク質の免疫学的同一性は、それが抗体により認識されるか否かを決定することにより査定され得て;そのような抗体により認識される改変体は、免疫学的に保存されている。cDNA配列改変体は、好ましくは、20個以下、好ましくは10個以下のアミノ酸置換をコードされたポリペプチドへ導入する。改変体のアミノ酸配列は、天然のアミノ酸配列(例えば、天然のZscan4配列又はZscan4−ERT2配列、例えば配列番号22又は23)と、例えば、少なくとも80%、90%、又はさらには95%もしくは98%同一であり得る。
【0054】
プロモーター:核酸の転写を指向する核酸調節配列。プロモーターは、必要な核酸配列を転写開始部位付近に含む。プロモーターには、必要に応じて、遠位のエンハンサーエレメント又はリプレッサーエレメントも含まれる。「構成的プロモーター」は、継続的に活性であり、かつ外部のシグナル又は分子による調節を受けないプロモーターである。対照的に、「誘導性プロモーター」の活性は、外部のシグナル又は分子(例えば、転写因子)によって調節される。
【0055】
組換え:組換え核酸又はポリペプチドは、天然に発生していない配列を有するか、又は配列2つの他に分離したセグメントの人工的な組み合わせによって作られる配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成によって、又は核酸の単離されたセグメントの人為的操作によって、例えば、遺伝子工学技術によって達成される。
【0056】
配列同一性/類似性:2つ以上の核酸配列間又は2つ以上のアミノ酸配列間の同一性/類似性は、それらの配列間の同一性又は類似性に関して表される。配列同一性は、同一性のパーセンテージに関して測定され得る;このパーセンテージが高いほど、配列がより同一である。配列類似性は、類似性のパーセンテージ(保存的アミノ酸置換を考慮に入れたもの)に関して測定され得る;このパーセンテージが高いほど、配列がより類似である。核酸配列又はアミノ酸配列のホモログ又はオルソログは、標準的な方法を用いてアラインメントされるとき、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。この相同性は、オルソロガスなタンパク質又はcDNAがより密接な関係のある種に由来するとき(例えば、ヒト配列とマウス配列)、より遠縁の種(例えば、ヒト配列とC.elegans配列)と比べて、より顕著である。
【0057】
比較するための配列のアラインメント方法は、当該技術分野で周知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが:Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins&Sharp,Gene,73:237−44,1988;Higgins&Sharp,CABIOS 5:151−3,1989;Corpetら、Nuc.Acids Res.16:10881−90,1988;Huangら、Computer Appls.in the Biosciences 8,155−65,1992;及びPearsonら、Meth.Mol.Bio.24:307−31,1994に記載されている。Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990には、配列のアラインメント方法及び相同性の計算に関する詳細な考慮すべき事柄が示されている。
【0058】
NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990)は、National Center for Biological Information(NCBI,National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,MD 20894)をはじめとしたいくつかの供給源から入手可能であり、また、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxに関連して使用するために、インターネット上で利用可能である。追加情報は、NCBIウェブサイトに見出し得る。
【0059】
幹細胞:変更のない娘細胞を生じる独特の能力(自己複製;細胞分裂によって、親細胞と同一の少なくとも1つの娘細胞がもたらされること)及び特殊化された細胞型を生じる独特の能力(潜在力)を有する細胞。幹細胞としては、ES細胞、EG細胞、GS細胞、MAPC、maGSC、USSC及び成体幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、幹細胞は、1つより多い所与の細胞型の完全に分化した機能的な細胞を生じ得る。インビボにおける幹細胞の役割は、動物の通常の生存中に破壊される細胞を交換することである。一般に、幹細胞は、無制限に分裂することができる。幹細胞は、分裂後、幹細胞として残留する場合もあり、前駆細胞になる場合もあり、最終分化へ進む場合もある。前駆細胞は、少なくとも1つの所与の細胞型の完全に分化した機能的な細胞を生じ得る細胞である。一般に、前駆細胞は、分裂することができる。前駆細胞は、分裂後、前駆細胞のままであり得るか、又は最終分化へ進むこともある。
【0060】
被験体:生存している多細胞脊椎動物生物、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含むカテゴリ。
【0061】
部分集団:集団の同定可能な一部。本明細書において使用するとき、Zscan4を発現しているES細胞の「部分集団」は、Zscan4を発現していると同定された所与の集団内のES細胞の一部である。
【0062】
テロメア:染色体の複製及び安定性に関わる特殊化された構造である、真核生物の染色体の末端をさす。テロメアは、特定の配向の短いDNA配列の多くの反復からなる。テロメアの機能には、染色体の末端が接合されないように染色体の末端を保護すること、及び染色体のもっとも末端の複製を可能にすること(テロメラーゼによって)が含まれる。染色体の末端におけるテロメアDNAの反復の数は、加齢に伴って減少する。
【0063】
トランスフェクトする又はトランスフェクション:核酸を細胞又は組織に導入するプロセスをさす。トランスフェクションは、いくつかの方法(例えば、リポソーム媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション及び注入であるがこれらに限定されない)のうちのいずれか1つによって達成され得る。
【0064】
ベクター:宿主細胞に導入されることにより、形質転換された宿主細胞をもたらす核酸分子。ベクターは、複製起点(DNA合成の開始に関与するDNA配列)などの、宿主細胞内でそのベクターが複製することを可能にする核酸配列を含み得る。例えば、発現ベクターは、挿入された遺伝子(単数又は複数)の転写及び翻訳を可能にするのに必要な制御配列を含む。ベクターは、1つ以上の選択マーカー遺伝子及び当該技術分野で公知のその他の遺伝エレメントも含み得る。ベクターとしては、例えば、ウイルスベクター及びプラスミドベクターが挙げられる。
【0065】
Zscan4:以前に2細胞特異的発現及びES細胞特異的発現(PCT公開WO2008/118957)を示すとして同定され、テロメア伸長及びゲノム安定性を促進するもの(Zalzman et al.,Nature 464(7290):858−863,2010)として示されている遺伝子群を指す。本開示の文脈において、「Zscan4」は、ヒトZSCAN4及びマウスZscan4の両方を含む。マウスでは、用語「Zscan4」は、3つの偽遺伝子(Zscan4−psl、Zscan4−ps2及びZscan4−ps3)及び6つの発現遺伝子(Zscan4a、Zscan4b、Zscan4c、Zscan4d、Zscan4e及びZscan4f)を含む遺伝子の集合体を指す。6つのパラログのうち、Zscan4c、Zscan4d、及びZscan4fのオープンリーディングフレームは、SCANドメインと同様にすべての4つのジンクフィンガードメインをコードし、これは、転写因子としてのそれらの潜在的な役割を果たすことを示唆する。Zscan4は、Zscan4ポリペプチド、及びZscan4ポリペプチドをコードするZscan4ポリヌクレオチドを指す。例示的な配列は、本明細書に提供されている(配列番号1〜14参照)。
【0066】
Zscan4−ΔC:本開示の文脈において、「Zscan4−ΔC」は、少なくとも一つのジンクフィンガードメインのC末端欠失を有する任意のマウス又はヒトZscan4タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、少なくとも2つ、例えば3つの又は4つ全てのジンクフィンガードメインの欠失を含む。配列番号2及び配列番号8は、それぞれ、ヒトZSCAN4及びマウスZscan4cのアミノ酸配列を提供し、N−末端のSCANドメインとC末端のジンクフィンガー(C2H2型)ドメインを描く。さらに、ヒトZSCAN4及びマウスZscan4cの各ドメインのヌクレオチド及びアミノ酸領域を以下に列挙する。
【0068】
Zscan4−ERT2:Zscan4アミノ酸配列とERT2アミノ酸配列から構成される融合タンパク質。「Zscan4−ERT2」はまた、Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸配列を指すことができる。Zscan4の例示的なアミノ酸配列(配列番号2、8、10及び14を含む)及びERT2(配列番号21)は本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Zscan4配列は、既知のZscan4配列(例えば、配列番号2、8、10又は14)の機能的断片又は改変体であり、及び/又はERT2配列は、既知のERT2配列(例えば、配列番号21)の機能的断片又は改変体である。Zscan4又はERT2の任意の断片又は改変体は、その断片又は改変体が活性を保持する限り、意図される。いくつかの例において、Zscan4−ERT2融合タンパク質は、Zscan4とERT2の間にリンカー(又はスペーサー)を含む。リンカーは、当該技術分野において周知であり、適切なリンカーは、当業者によって選択することができる。特定の例において、リンカーは、ヌクレオチド配列GCTAGCによってコードされる。
【0069】
他に説明されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語が、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明白に示さない限り、複数の対象を含む。同様に、「又は」という単語は、文脈がそうでないことを明白に示さない限り、「及び」を含むものとする。従って、「A又はBを含む」とは、A、又はB、又はA及びBを含むことを意味する。核酸又はポリペプチドについて与えられた全ての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ及び全ての分子量又は分子量値が、近似であり、説明のために提供されていることが、さらに理解されるべきである。本明細書に記載されたものと類似しているか又は等価である方法及び材料が、本発明の実施又は試行において使用され得るが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書中に言及された全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考資料が、参照により完全に組み入れられる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が適用される。さらに、材料、方法、及び例は、例示的なものであり、限定するためのものではない。
【0070】
III.いくつかの実施形態の概要
幹細胞の多能性を調べるための判断基準は、細胞が、動物の生体全体に寄与することができるかどうかを確認することである。本明細書においては、マウスES細胞におけるZscan4活性化の頻度が増加するだけでなく、長期的な細胞培養においてそれらの発生能を維持することも開示される。潜在力が増大するにつれて、さらに動物全体が、予想外に高い成功率で4N胚盤胞に注入された単一のES細胞から製造することができる。Zscan4活性化された細胞は、2細胞段階のマウス胚で発現される遺伝子も発現するが、ES細胞の一過性のZscan4活性化状態は、ES細胞の高い潜在力に関連付けられていない。理論に束縛されるものではないが、これらの知見は、ES細胞が、通常の状態よりも頻繁に一過性のZscan4活性化状態を経由することによって、より高い潜在力を取得することを示している。まとめると、これらの結果は、Zscan4の頻繁な活性化は、多能性幹細胞を若返らせることができることを示す。
【0071】
特に本明細書に開示されているのは、Zscan4−ERT2の構成的存在が、その通常の活性化剤であるタモキシフェンの存在下でさえ、ES細胞における内因性Zscan4活性化の頻度を高めることができ、結果として、ES細胞の発生能を増大させるという知見である。加速されたZscan4活性化サイクルで培養されたES細胞は、キメラマウスと単一のES細胞からの全マウスの効率的な生成への高い貢献度によって証明される、改善されたキメラ化と潜在力を示した。さらに、本明細書に開示されているは、C末端で切断されたZscan4(ジンクフィンガードメインを欠損している)の発現が、Zscan4
+細胞数を増加させ、Zscan4−ERT2と同様の効果を有するという所見である。
【0072】
従って、本明細書では、Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする単離された核酸分子が提供される。特定の例では、Zscan4はマウスZscan4c又はヒトZSCAN4である。さらに、Zscan4−ERT2コード配列を含むベクター、このようなベクターを含む細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞又は他の幹細胞)、及びZscan4−ERT2をコードする核酸分子又はベクターを含む組成物が提供される。さらに、組換えZscan4−ERT2融合タンパク質、Zscan4−ERT2融合タンパク質を含む細胞、及びZscan4−ERT2融合タンパク質を含む組成物が提供される。
【0073】
さらに、本明細書では、Zscan4ΔCタンパク質(少なくとも1つのジンクフィンガードメインの欠失を有するZscan4タンパク質)をコードする単離された核酸分子が提供される。特定の例では、Zscan4は、マウスZscan4c又はヒトZSCAN4である。さらに、Zscan4−ΔCコード配列を含むベクター、このようなベクターを含む細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞又は他の幹細胞)、及びZscan4−ΔCをコードする核酸分子又はベクターを含む組成物が提供される。さらに、組換えZscan4−ΔCタンパク質、Zscan4−ΔCタンパク質を含む細胞、及びZscan4−ΔCタンパク質を含む組成物が提供される。
【0074】
また、Zscan4−ERT2又はZscan4−ΔC核酸分子及びタンパク質を使用する方法が本明細書に提供される。例えば、Zscan4−ERT2核酸分子又は融合タンパク質と幹細胞又は幹細胞集団を接触させることにより、幹細胞又は幹細胞集団の多能性を高める又は持続する方法が本明細書に開示されている。他の例では、Zscan4−ΔC核酸分子又はタンパク質と幹細胞又は幹細胞集団を接触させることにより、幹細胞又は幹細胞集団の多能性を高める又は持続する方法が提供される。同様に、幹細胞集団におけるZscan4陽性幹細胞の頻度を増加させる方法、並びにゲノム安定性を促進させ及び/又は幹細胞又は幹細胞集団におけるテロメア長を増加させる方法が提供される。
【0075】
A.Zscan4−ERT2を含む組成物、ベクター及び細胞
本明細書は、融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供し、ここで、融合タンパク質は、ERT2タンパク質に融合したZscan4タンパク質を含むERT2は、ヒトエストロゲン受容体のリガンド結合ドメインの突然変異型である。ERT2は、生理学的濃度ではその天然のリガンド(17P−エストラジオール)を結合しないが、タモキシフェン又はその代謝物4−ヒドロキシ(40HT)のナノモル濃度に非常に感受性である。
【0076】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子は、ヒトZSCAN4、マウスZscan4c、マウスZscan4d若しくはマウスZscan4f、又はその機能的断片若しくは改変体を含む。Zscan4の機能性断片及び改変体は、例えば、幹細胞の多能性を増大させ、ゲノム安定性を促進し、又はテロメアの長さを増加させる能力などのZscan4の1つ以上の生物学的活性を保持している任意のZscan4断片又は改変体を含む。
【0077】
様々なZscan4ポリヌクレオチドについての典型的な核酸配列は、当該技術分野において知られ(例えば、PCT公開番号WO2008/118957)、本明細書に記載され、例えば、配列番号1(ヒトZSCAN4)、配列番号7(マウスZscan4c)、配列番号9(マウスZscan4d)及び配列番号13(マウスZscan4f)などが挙げられる。当業者は、これらの配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有し、Zscan4活性を保持する配列が企図され、本明細書で提供される組成物及び方法において使用することができることを承認するであろう。
【0078】
他の種由来のZscan4核酸配列もまた公に利用可能であり、例えば、イヌZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
541370及びXM
848557);ウシZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
001789250);及びウマZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
001493944)を含む。上記で列挙されたGenBankアクセッション番号の各々は、2011年2月22日にGenBankデータベースに見られるものとして、参照により本明細書に援用される。
【0079】
Zscan4ポリヌクレオチドの断片及び改変体は、分子技術を用いて当業者によって容易に調製することができる。一実施形態では、Zscan4核酸配列の断片は、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1500、又は少なくとも2000のZscan4ポリヌクレオチドの連続した核酸を含む。さらなる実施形態では、Zscan4の断片は、限定されないが、例えば、多能性を高めること、ゲノム安定性を増大させること、及び/又はテロメア長を増加させることなどの、対象とする細胞において発現し場合のZscan4の機能を付与する断片である。本明細書において意図されたZscan4核酸配列は、遺伝コードの結果として縮重している配列を含む。20種の天然アミノ酸が存在し、その大部分は、1を超えるコドンによって特定される。したがって、ヌクレオチド配列によりコードされるZscan4ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、すべての縮重ヌクレオチド配列が含まれる。
【0080】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子のZscan4核酸配列部分は、配列番号1、7、9又は13に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%である97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの実施形態では、Zscan4核酸配列は、配列番号1、7、9又は13に記載される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Zscan4核酸配列は、配列番号1、7、9又は13に記載の核酸配列からなる。
【0081】
いくつかの例において、Zscan4−ERT2融合タンパク質のZscan4部分は、マウスZscan4cを含む。したがって、特定の実施例では、Zscan4核酸配列は、配列番号7に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。他の例では、Zscan4は、ヒトZSCAN4を含む。特定の例において、Zscan4核酸配列は、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。
【0082】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質のERT2部分をコードする核酸配列は、配列番号19のヌクレオチド3989〜4936に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%と少なくとも99%同一である。いくつかの例では、ERT2をコードする核酸配列は、配列番号19のヌクレオチド3989〜4936を含む又はそれからなる。
【0083】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子は、Zscan4とERT2のコード配列の間にリンカー配列を含む。リンカーは当該技術分野において周知であり、適切なリンカーの選択は、当業者の能力の範囲内である。いくつかの例では、リンカーは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50、又は少なくとも100個のアミノ酸、例えば2〜50個又は2〜10個のアミノ酸である。本明細書に開示されている特定の例において、リンカーは、核酸配列GCTAGC(配列番号19のヌクレオチド3983〜3988)を含む。
【0084】
Zscan4−ERT2核酸分子がマウスZscan4cをコードするいくつかの実施形態において、核酸分子は、配列番号19のヌクレオチド2465〜4936に対して、少なくとも少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である配列を含む。特定の例において、核酸分子は含み、又は配列番号19のヌクレオチド2465〜4936の配列を含む又はそれからなる。
【0085】
Zscan4−ERT2核酸分子がヒトZSCAN4をコードする他の実施形態において、核酸分子は、配列番号20のヌクレオチド2479〜4731と少なくとも少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一の配列を含む。特定の例において、核酸分子は、配列番号20のヌクレオチド2479〜4731の配列を含む又はそれからなる。また、本明細書に開示されているZscan4−ERT2をコードする核酸分子を含むベクターが提供される。任意の適した発現ベクター、例えば、発現(プラスミド)ベクター(例えば、pPyCAG−BstXI−IP)、又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又はレトロウイルスベクター)が意図される。多数の発現ベクター及びウイルスベクターは、当該技術分野において知られ、適切なベクターの選択は当業者の能力の範囲内に十分にある。
【0086】
いくつかの実施形態において、ベクターは、配列番号19又は配列番号20に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの例では、ベクターは、配列番号19又は配列番号20に対して、少なくとも95%同一である核酸配列を含む。特定の非限定的な実施形態では、ベクターの核酸配列は、配列番号19又は配列番号20を含む又はそれからなる。
【0087】
さらに、本明細書に記載されるようなZscan4−ERT2核酸分子又はベクターを含む単離された細胞が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、細胞は幹細胞である。特定の例において、幹細胞は、ES細胞又はiPS細胞である。幹細胞の起源は、任意の適切な種に由来することができる。いくつかの例において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト又は非ヒト霊長類の幹細胞である。
【0088】
また、Zscan4ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子又はベクターを含む組成物が本明細書において提供される。組成物は、さらに、医薬として許容される担体又は希釈剤などの担体又は希釈剤を含んでもよい。本明細書に開示されている核酸分子及びベクターによってコードされるZscan4−ERT2融合タンパク質がさらに提供される。
【0089】
また、本明細書は、組換えZscan4−ERT2融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、組換えZscan4−ERT2融合タンパク質は、ヒトZSCAN4、マウスZscan4c、マウスZscan4d若しくはマウスZscan4f、又はその機能的断片若しくは変改変体を含む。Zscan4の機能性断片及び改変体は、例えば、幹細胞の多能性を増大させ、ゲノム安定性を促進し、又はテロメア長を増加させる能力として、Zscan4の1つ以上の生物学的活性を保持しているZscan4の任意の断片又は改変体を含む。
【0090】
様々なZscan4タンパク質についての例示的なアミノ酸配列は、当該技術分野において知られ(例えば、PCT出願公開WO2008/118957)、本明細書に開示され、例えば、配列番号2(ヒトZSCAN4)、配列番号8(マウスZscan4c)、配列番号10(マウスZscan4d)及び配列番号14(マウスZscan4f)が挙げられる。当業者は、これらの配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列が意図され、本明細書に提供される方法において使用され得ることを承認する。
【0091】
他種由来のZscan4アミノ酸配列もまた公に利用可能であり、例えば、イヌZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
541370及びXM
853650);ウシZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
001789302);及びウマZSCAN4(GenBankアクセッション番号XM
001493994)を含む。上記で列挙されたGenBankアクセッション番号の各々は、2011年2月22日にGenBankデータベースに見られるものとして、参照により本明細書に援用される。
【0092】
Zscan4タンパク質の断片及び改変体は、分子技術を用いて当業者によって容易に調製することができる。一実施形態では、Zscan4タンパク質の断片は、Zscan4ポリペプチドの少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、又は少なくとも500の連続アミノ酸を含む。さらなる実施形態では、Zscan4の断片は、限定されないが、多能性を高めること、ゲノム安定性を増大させること、又はテロメア長を増加させることなどのZscan4の機能を付与する断片である。
【0093】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質のZscan4タンパク質部分は、配列番号2、8、10又は14に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は配列番号99%同一であるアミノ酸を含む。さらなる実施形態では、Zscan4タンパク質は、配列番号2、8、10又は14の保存的改変体であり、そのため、配列番号2、8、10又は14において、50未満の保存アミノ酸置換基、例えば、2未満、5未満、10未満、20未満、又は50未満の保存アミノ酸置換基を含む。別の実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質のZscan4ペプチド部分は、配列番号2、8、10又は14に記載のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるアミノ酸配列を有する。
【0094】
Zscan4−ERT2融合タンパク質のいくつかの実施形態では、Zscan4は、マウスZscan4cを含む。いくつかの例では、Zscan4cアミノ酸配列は、配列番号8のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。
【0095】
Zscan4−ERT2融合タンパク質の他の実施形態では、Zscan4部分は、ヒトZSCAN4を含む。いくつかの例では、ZSCAN4アミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。
【0096】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質のERT2部分のアミノ酸配列は、配列番号21に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの例において、ERT2のアミノ酸配列は、配列番号21を含む又はそれからなる。
【0097】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ERT2融合タンパク質は、Zscan4とERT2配列の間にリンカーを含む。リンカーは当該技術分野において周知であり、適切なリンカーの選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。本明細書に開示された特定の例では、リンカーは、アミノ酸配列のAla−Serを含む。
【0098】
Zscan4−ERT2融合タンパク質がマウスZscan4cを含むいくつかの実施形態では、融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号22に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。特定の例において、Zscan4ERT2融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番22のアミノ酸配列を含み又はそれからなる。
【0099】
Zscan4−ERT2融合タンパク質がヒトZSCAN4を含む他の実施形態では、融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号23に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。特定の例において、Zscan4−ERT2融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号23のアミノ酸配列を含み又はそれからからなる。
【0100】
さらに、本明細書においては、本明細書に開示されているZscan4−ERT2融合タンパク質を含む単離された細胞が提供される。いくつかの実施形態において、細胞は幹細胞である。特定の例において、幹細胞はES細胞又はiPS細胞である。幹細胞の起源は、任意の適切な種に由来することができる。いくつかの例において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト又は非ヒト霊長類幹細胞である。
【0101】
Zscan4−ERT2融合タンパク質を含む組成物もまた、本明細書において提供される。組成物は、さらに、担体又は希釈剤、例えば、医薬として許容される担体又は希釈剤、例えば生理食塩水を含んでもよい。
【0102】
B.Zscan4−ΔCを含む組成物、ベクター及び細胞
また、本明細書では、C−末端が切断されたZscan4タンパク質(Zscan4−ΔCと呼ばれる)をコードする単離された核酸分子が提供される。C−末端切断型Zscan4は、少なくとも1つのジンクフィンガードメインの欠失を含む。したがって、いくつかの実施形態において、Zscan4−ΔCタンパク質は、1つ、2つ、3つ又は4つのジンクフィンガードメインの欠失を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸分子は、C末端切断型ヒトZSCAN4、マウスZscan4c、マウスZscan4d又はマウスZscan4fを含む。特定の実施例では、Zscan4−ΔCタンパク質は、4つすべてのジンクフィンガードメインの欠失を有するヒトZSCAN4又はマウスZscan4cのいずれかである。一つの非限定的な例では、Zscan4−ΔCタンパク質は、配列番号25のアミノ酸配列を含み、及び/又は配列番号24のヌクレオチド2465〜3649によってコードされる。
【0104】
本明細書で意図されたZscan4−ΔC核酸配列は、遺伝コードの結果として縮重している配列を含む。20種の天然アミノ酸が存在し、その大部分は、1より多くのコドンによって特定される。したがって、ヌクレオチド配列によってコードされるZscan4−ΔCポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、すべての縮重ヌクレオチド配列が含まれる。
【0105】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔC核酸配列は、配列番号24のヌクレオチド2465〜3649に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔC核酸配列は、配列番号24のヌクレオチド2465〜3649として記載される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔC核酸配列は、配列番号24のヌクレオチド2465〜3649として記載される核酸配列からなる。
【0106】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔC核酸分子は、ヒトZscan4−ΔC核酸分子である。特定の実施例では、ヒトZscan4−ΔC核酸分子は、配列番号1の少なくともヌクレオチド1630〜1950、ヌクレオチド1714〜1950、ヌクレオチド1798〜1950又はヌクレオチド1882〜1950の欠失を含む。いくつかの実施形態では、ヒトZscan4−ΔC核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド1〜1629、ヌクレオチド1〜1713、ヌクレオチド1〜1797又はヌクレオチド1〜1881に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。いくつかの例では、ヒトZscan4−ΔC核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド1〜1629、ヌクレオチド1〜1713、ヌクレオチド1〜1797又はヌクレオチド1〜1881を含む又はそれからなる。
【0107】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔC核酸分子は、マウスZscan4ΔC核酸分子である。特定の例では、マウスZscan4−ΔC核酸分子は、配列番号7の少なくともヌクレオチド1383〜1709、ヌクレオチド1470〜1709、ヌクレオチド1554〜1709又はヌクレオチド1638〜1709の欠失を含む。いくつかの実施形態では、マウスZscan4−ΔC核酸分子は、配列番号7のヌクレオチド1〜1382、ヌクレオチド1〜1469、ヌクレオチド1〜1553又はヌクレオチド1〜1637に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である。
【0108】
いくつかの例では、マウスZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号7のヌクレオチド1〜1382、ヌクレオチド1〜1469、ヌクレオチド1〜1553、又はヌクレオチド1〜1637を含む又はそれからなる。また、本明細書において開示されているZscan4−ΔCをコードする核酸分子を含むベクターが提供される。任意の適した発現ベクター、例えば発現(プラスミド)ベクター(例えば、pPyCAG−BstXI−IP)、又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又はレトロウイルスベクター)が企図される。多数の発現ベクター及びウイルスベクターは、当該技術分野で知られ、適切なベクターの選択は、当業者の能力の範囲内に十分にある。
【0109】
いくつかの実施形態において、ベクターは、配列番号24に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの例において、ベクターは、配列番号24に対して、少なくとも95%同一である核酸配列を含む。特定の非制限的な実施形態では、ベクターの核酸配列は、配列番号24を含む又はそれからなる。
【0110】
さらに、本明細書には、本明細書に記載されるZscan4−ΔC核酸分子又はベクターを含む単離された細胞が提供される。いくつかの実施形態において、細胞は幹細胞である。特定の例において、幹細胞は、ES細胞又はiPS細胞である。幹細胞の起源は、任意の適切な種に由来することができる。いくつかの例において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト又は非ヒト霊長類幹細胞である。
【0111】
Zscan4ΔCタンパク質をコードする核酸分子又はベクターを含む組成物はまた、本明細書で提供される。組成物は、さらに、医薬として許容される担体又は希釈剤などの担体又は希釈剤を含んでもよい。
【0112】
本明細書に記載の核酸分子及びベクターによってコードされるZscan4−ΔCタンパク質がさらに提供される。
【0113】
また、組換えZscan4−ΔCタンパク質もまた本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、組換えZscan4−ΔCタンパク質は、C末端切断型ヒトZSCAN4、マウスZscan4c、マウスZscan4d又はマウスZscan4fを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、配列番号25に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、配列番号25の保存的改変対であり、例えば、それは、配列番号25において、50未満の保存的アミノ酸置換、例えば2未満、5未満、10未満、20未満又は50未満の保存的アミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む又はそれからなるアミノ酸配列を有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、ヒトZscan4−ΔCタンパク質である。特定の例では、ヒトZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号2の少なくともアミノ酸312〜418、アミノ酸340〜418、アミノ酸368〜390、又はアミノ酸396〜418の欠失を含む。いくつかの実施形態では、ヒトZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号2のアミノ酸1〜311、アミノ酸1〜339、アミノ酸1〜367、又はアミノ酸1〜395に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの例において、ヒトZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号2のアミノ酸1〜311、アミノ酸1〜339、アミノ酸1〜367、又はアミノ酸1〜395のアミノ酸を含む又はそれからなる。
【0116】
いくつかの実施形態では、Zscan4−ΔCタンパク質は、マウスZscan4−ΔCタンパク質である。特定の例では、マウスZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号8の少なくともアミノ酸395〜503個、アミノ酸424〜503、アミノ酸452〜503、又はアミノ酸480〜503の欠失を含む。いくつかの実施形態では、マウスZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号8のアミノ酸1〜394、アミノ酸1〜423、アミノ酸1〜451、又はアミノ酸1〜479に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。いくつかの例では、マウスZscan4−ΔCタンパク質は、配列番号8のアミノ酸1〜394、アミノ酸1〜423、アミノ酸1〜451、又はアミノ酸1〜479を含む又はそれからなる。
【0117】
さらに、本明細書に開示されているZscan4−ΔCタンパク質を含む単離された細胞が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、細胞は幹細胞である。特定の例において、幹細胞はES細胞又はiPS細胞である。幹細胞の起源は、任意の適切な種に由来することができる。いくつかの例において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト又は非ヒト霊長類幹細胞である。
【0118】
また、Zscan4−ΔCタンパク質を含む組成物は、本明細書において提供される。組成物は、さらに、担体又は希釈剤、例えば医薬として許容される担体又は希釈剤、例えば生理食塩水を含んでもよい。
【0119】
C.幹細胞におけるZscan4の再発活性化及びその使用方法
本明細書には、Zscan4の再発活性化が幹細胞の多能性を高めるという所見が開示されている。特に、ES細胞でZscan4活性化の頻度を増加させることは、長期培養中に発生能を高め、維持することが本明細書に開示されている。以下の実施例に記載の結果は、ES細胞は、通常の状態よりも頻繁に、一過性Zscan4活性化状態を経由することによって、より高い潜在力を獲得することを示している。
【0120】
従って、本明細書においては、幹細胞又は幹細胞集団におけるZscan4の頻繁な活性化を誘導することによって、幹細胞又は幹細胞集団の多能性を高める又は維持する方法が提供される。Zscan4の頻繁な活性化を誘導することによって、幹細胞集団におけるZscan4陽性細胞の頻度を増加させる方法も提供される。さらに、幹細胞又は幹細胞集団におけるZscan4の再発活性化を促進することによって、幹細胞又は幹細胞集団において、ゲノム安定性を促進する、若しくはテロメア長を増加させる、又はその両方を施す方法が提供される。
【0121】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、本方法は、幹細胞又は幹細胞集団を(i)Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子又はその組成物、(ii)Zscan4−ERT2融合タンパク質をコードするベクター又はその組成物、又は(iii)Zscan4−ERT2融合タンパク質又はその組成物と接触させることを含む。
【0122】
本明細書に開示される方法の他の実施形態において、本方法は、幹細胞又は幹細胞集団を(i)Zscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸分子又はその組成物、(ii)Zscan4−ΔCタンパク質をコードするベクター又はその組成物、又は(iii)Zscan4−ΔCタンパク質又はその組成物と接触させることを含む。
【0123】
他の実施形態では、幹細胞又は幹細胞集団は、Zscan4の頻繁な活性化を促進する作用因子と接触させる。薬剤は、例えば、任意の核酸分子、ポリペプチド、小分子、又は細胞内のZscan4の再発活性化をもたらす他の化合物であってもよい。
【0124】
いくつかの例において、幹細胞は、ES細胞又はiPS細胞である。方法は、任意の種の幹細胞、例えば、マウス、ラット、ヒト又は非ヒト霊長類幹細胞に適用され得る。
【0125】
1.幹細胞の多能性を高めること又は持続すること
本明細書では、幹細胞又は幹細胞集団の多能性を高める又は持続する方法が提供される。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示されるZscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子又はベクターと幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されるZscan4−ERT融合タンパク質と幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。
【0126】
さらに他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されるZscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸分子又はベクターで幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されるZscan4−ΔCタンパク質で幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。
【0127】
細胞に核酸分子を送達させる方法は、当該技術分野において周知である。いくつかの例では、幹細胞を核酸分子又はベクターで「接触させること」は、トランスフェクション(例えば、リポソーム媒介トランスフェクション)、エレクトロポレーション、注射又は細胞に核酸分子を導入させるための任意の他の適切な技術を含む。
【0128】
細胞にタンパク質を送達させるための方法もまた、当該技術分野で周知である。いくつかの例において、Zscan4−ERT2融合タンパク質又はZscan4−ΔCタンパク質は、細胞への送達を助けるためにナノ粒子によってカプセル化される。開示された方法で使用するのに適したナノ粒子は、当該技術分野において知られ、以下に簡単に説明される。
【0129】
本明細書に記載される方法とともに使用するためのナノ粒子は、任意のタイプの生体適合性ナノ粒子、例えば、生分解性ナノ粒子、例えば、ポリマーナノ粒子(ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルケン、ポリビニルエーテル類およびセルロースエーテルナノ粒子が挙げられるがこれらに限定されない)であり得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、生体適合性かつ生分解性の材料で作製される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子には、ポリ(乳酸)もしくはポリ(グリコール酸)、またはポリ(乳酸)とポリ(グリコール酸)の両方を含むナノ粒子が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、ナノ粒子は、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)ナノ粒子である。
【0130】
他の生分解性のポリマー材料(例えば、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリグリコリド(PGA))が、本明細書に記載される組方法とともに使用するために意図される。さらなる有用なナノ粒子としては、生分解性ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子(Vauthierら、Adv.Drug Del.Rev.55:519−48,2003)が挙げられる。
【0131】
様々なタイプの生分解性および生体適合性のナノ粒子、そのようなナノ粒子(PLGAナノ粒子を含む)を作製する方法、ならびに種々の合成化合物、タンパク質および核酸をカプセル化する方法は、当該技術分野において十分に報告されている(例えば、米国特許出願公開番号2007/0148074;米国特許出願公開番号20070092575;米国特許出願公開番号2006/0246139;米国特許第5,753,234号;米国特許第7,081,489号;およびPCT国際公開番号WO2006/052285を参照のこと)。
【0132】
細胞の多能性を評価する方法は、当該技術分野で知られている。以下の実施例2は、ES細胞の潜在力を評価するために使用され得る例示的な方法を記載する。一例では、ES細胞は、マウスの胚盤胞に注入され、子宮に移され、ES細胞の潜在力の程度は毛色に基づいて仔イヌのキメラ化率によって決定される。別の例では、4Nの相補アッセイが行われる。このアッセイでは、ES細胞を4倍体(4N)胚盤胞に注入される。ES細胞の潜在力は、生きた胚を生成するES細胞の能力によって決定される。
【0133】
いくつかの例では、幹細胞又は幹細胞集団の多能性は、増加したZscan4活性化頻度の不存在下で(例えば、Zscan4−ERT2融合タンパク質の発現がない場合において)の幹細胞又は幹細胞集団の多能性と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%増加している70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%増加させる。
【0134】
また、本明細書には、Zscan4を一過性に過剰発現させることによって、幹細胞又は幹細胞集団の発生能を増加させる方法が提供される。一実施形態では、過剰発現されたZscan4は、マウスZscan4cである。
【0135】
さらに、本明細書には、Zscan4タンパク質をコードする単離された核酸分子又はZscan4タンパク質をコードする核酸分子を含むベクターで幹細胞又は幹細胞集団を接触させることによって、幹細胞又は幹細胞集団の多能性を高める又は持続する方法が提供される。ベクターを用いる実施形態において、ベクターは誘導性プロモーターを含む。
【0136】
2.集団におけるZscan4
+細胞の頻度を増加させる
また、本明細書では、幹細胞集団におけるZscan4陽性細胞の頻度を増加させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書で開示されているZscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子又はベクターで幹細胞集団を接触させることを含む。
【0137】
他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ERT融合タンパク質で幹細胞集団を接触させることを含む。さらに他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸分子又はベクターで幹細胞集団を接触させることを含む。他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ΔCタンパク質と幹細胞集団を接触させることを含む。
【0138】
Zscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCをコードする核酸分子、Zscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCタンパク質を幹細胞に送達させるための方法は、当該技術分野において知られ、上記に記載されている。
【0139】
細胞集団においてZscan4
+細胞を検出する方法は、日常的であり、従前に(例えば、PCT公開番号WO2008/118957、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。例えば、Zscan4(これは市販されている又は標準的な手順に従って製造することができる)に特異的な抗体は、Zscan4
+細胞を検出するための免疫学に基づくアッセイで使用することができる。例えば、蛍光活性化細胞選別は、集団においてZscan4
+の細胞を検出及び定量するために使用することができる。別の例として、Zscan4レポーター構築物は、Zscan4の発現を検出するために使用することができる(例えば、PCT公開番号WO2008/118957に記載されているpZscan4−エメラルドベクターなど)。
【0140】
特定の例においては、集団におけるZscan4
+細胞の頻度の増加は、少なくとも5%増加し、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%である、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、又は少なくとも100%である。増加は、例えば、Zscan4−ERT2核酸若しくは融合タンパク質、又はZscan4−ΔC核酸若しくはタンパク質と接触させていない(したがって、Zscan4の頻繁な活性化を受けていない)細胞集団に相対的である。
【0141】
3.ゲノムの安定性を促進し、テロメア長を増加させる
幹細胞又は幹細胞集団において、ゲノム安定性を促進し、又はテロメア長を促進する方法、又はその両方がさらに提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書で開示されたZscan4−ERT2融合タンパク質をコードする核酸分子又はベクターで幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ERT融合タンパク質を幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。
【0142】
さらに他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸分子又はベクターで幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。他の実施形態において、本方法は、本明細書に開示されたZscan4−ΔCタンパク質で幹細胞又は幹細胞集団を接触させることを含む。
【0143】
Zscan4−ERT2又はZscan4−ΔCをコードする核酸分子、及びZscan4−ERT2又はZscan4−ΔCタンパク質を幹細胞に送達させる方法は、当該技術分野において知られ、上述されている。
【0144】
特定の例において、ゲノム安定性は、幹細胞において、例えば、Zscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCタンパク質又はZscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCタンパク質をコードする核酸と接触されていない幹細胞と比較して(又はZscan4−ERT2の頻繁な活性化を受けていない幹細胞において期待される値又は値の範囲と比較して)、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%高められる。ゲノム安定性およびテロメア長を測定する方法は、当該技術分野において日常的なものであり、本開示は、特定の方法に限定されない。本明細書に提供される特定の例は、例示的なものである。
【0145】
いくつかの例において、幹細胞におけるES細胞におけるゲノム安定性は、細胞増殖を検出することによって測定される。ゲノム安定性は、例えば、対照細胞(例えば、Zscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCタンパク質又は核酸と接触されていない幹細胞)と比較して、増加される。例えば、ES細胞の増殖は、培養でES細胞を増殖させ、各継代後にそれらの細胞の倍加時間を測定することによって検出され得る。一つの例において、ゲノム安定性は、継代8代目又はそれ以前の継代においてクライシス(例えば、細胞死)が起きない場合に、高められている。
【0146】
いくつかの例において、ES細胞又はiPS細胞などの幹細胞のゲノム安定性は、核型解析を行うことによって測定される。ゲノム安定性は、核型の異常(例えば、染色体の融合および断片化)の存在が、例えば、Zscan4の頻繁な活性化を受けていない細胞と比べて、減少しているかまたはさらには存在しない場合に、高められている。例えば、核型解析は、分裂中期での停止を誘導し、次いで、分裂中期の染色体スプレッドを調製することによって、幹細胞において行われ得る。
【0147】
いくつかの例において、幹細胞におけるゲノム安定性は、テロメア姉妹染色分体交換(T−SCE)を測定することによって測定される。ゲノム安定性は、T−SCEの存在が、対照(例えば、Zscan4の頻繁な活性化を受けていない幹細胞)と比べて、増加している場合に、高められている。例えば、T−SCEは、テロメア染色体配向FISH(CO−FISH)を使用することによって、幹細胞において測定され得る。
【0148】
いくつかの例において、幹細胞におけるゲノム安定性は、姉妹染色分体交換(SCE)を測定することによって測定される。ゲノム安定性は、SCEの存在が、対照、例えば、Zscan4の頻繁な活性化を受けていない幹細胞と比べて、減少している場合に、高められている。例えば、SCEは、分裂中期スプレッドにおいてSCEを検出することによって、幹細胞において測定され得る。
【0149】
いくつかの例において、テロメア長は、幹細胞において測定される。テロメア長は、テロメアの長さが、例えば、Zscan4の頻繁な活性化を受けていない対照細胞(例えば、Zscan4−ERT2若しくはZscan4−ΔCタンパク質又は核酸と接触されていない細胞)におけるテロメア長と比べて長い場合に、幹細胞において長くなっている。例えば、テロメア長は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、定量的FISH(Q−FISH)またはテロメアqPCRによって、幹細胞において検出され得る。
【0150】
以下の実施例は、ある特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、記載された特定の特徴又は実施態様に本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0151】
実施例1:材料と方法
この実施例は、実施例2に記載の研究に使用される実験手順を記載する。
【0152】
ES細胞培養
129S6/SvEvTac由来のMC1 ES細胞とC57BL/6J由来のEC2 ES細胞(Olson et al,Cancer Res 63:6602−6606,2003)は、ジョンズホプキンス大学医学部のトランスジェニック・コア研究所(Baltimore,MD)から購入した。F1ハイブリッド菌株(C57BL/6×129/Sv)由来のV6.5 ES細胞(Eggan et al,Proc Natl Acad Sci USA 98:6209−6214,2001)は、Thermo Scientific Open Biosystemから購入した。全てのES細胞株は、TA1 ES細胞株(下記参照)を除き、37℃、5%CO
2にて、以前(Zalzman et al,Nature 464:858−863,2010)に記載の完全にES培地:DMEM(Gibco)、15%FBS(Atlanta Biologicals)、1000U/ml白血病抑制因子(LIF)(ESGRO,Chemicon)、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸(NEAA)、2mMのGlutaMAX(商標)、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、及びペニシリン/ストレプトマイシン(50U/50μg/ml)中で培養された。上述したように、TA1 ES細胞株を培養した。全ての細胞株について、培地は毎日交換し、細胞を2〜3日毎に日常的に継代した。
【0153】
TA1 ES細胞株の誘導
C57BL/6J雌(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)と129S6/SvEvTacオス(Taconic)は、自然に交配させ、2細胞期胚を回収し、次に、KSOM培地中で3日間、37℃、5%CO
2にて培養させた得られた胚盤胞は、マイトマイシンC(Sigma)で処理されたマウス胚線維芽フィーダー細胞(MEF)に移され、15%FBSを15%KSR(Invitrogen)で置換し、50nMのPD98059(MEK1阻害剤)を添加した後、完全なES培地(上記)中で7日間培養された。内部細胞塊(ICM)をピッキングし、ACCUTASE(商標)(Millipore)でそれらを解離させた後、それらを新鮮なフィーダー細胞上に播種し、さらに7日間同じ条件で培養した。新たに誘導されたES細胞株は、直接、4N−相補性(下記参照)によってその発生能について試験された。
【0154】
pCAG−Zscan4−ERT2ベクター構築
遺伝子は、第7染色体の約850kb領域上にクラスター化された6つのパラログ遺伝子と3つ偽遺伝子からなる、総称Zscan4と呼ばれる(Falco et al.,Dev Biol 307:539−550,2007)。Zscan4a〜Zscan4fとして命名された6つのパラログのうち、Zscan4c、Zscan4d、及びZscan4fのオープンリーディングフレーム(ORF)は互いに非常に類似し、SCANドメインと4つのジンクフィンガードメインをコードする(Falco et al.,Dev Biol 307:539550,2007)。pCAG−Zscan4−ERT2プラスミドを構築するために、マウスZscan4c遺伝子(Falco et al.,Dev Biol 307:539−550,2007)の全ORF(506a.a.)をERT2(Feil et al,Proc Natl Acad Sci USA 93:10887−10890,1996)と融合させ、pPyCAG−BstXI−IP(Niwa et al.,Gene 108:193−199,1991)のXhoI/NotI部位にクローニングした。得られたプラスミドベクターは、強力なCAGプロモーター下で、Zscan4c−ERT2融合タンパク質−IRES−ピューロマイシン耐性タンパク質を発現する。
【0155】
ZEとZERT2 ES細胞クローンの生成
6ウェルプレートにおいてES細胞を増殖させた。ZE ES細胞クローンについて、懸濁液中の5×10
5ES細胞は、製造業者のプロトコールに従って、EFFECTENE(商標)(QIAGEN)を用いて、1μgの線状化されたpZscan4−エメラルドベクター(Zalzman et al.,Nature 464:858−863,2010)でトランスフェクトされ、100mmディッシュに播種された。8日間の5μg/mlブラストサイジンによる選択後、得られたES細胞コロニーをピックアップし、増殖させ、さらなる分析のために凍結した。ZERT2 ES細胞クローンについて、懸濁液中の5×10
5ES細胞は、製造業者のプロトコールに従って、EFFECTENE(商標)(QIAGEN)を用いて、線状化されたpCAG−Zscan4−ERT2ベクターと0.5μgのPL452(PGKプロモーター−Neo)でコトランスフェクションされ(Liu et al.,Genome Res 13:476−484,2003)、100mmディッシュに播種された。8日間のG418による選択後、得られたES細胞コロニーをピックアップし、増殖させ、さらなる分析のために凍結した。
【0156】
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)
RNAは、生物学的に3点測定において、TRIZOL(商標)(Invitrogen)によって細胞から単離された。1μgの総RNAは、製造業者のプロトコールに従って、Superscript(商標)III(Invitrogen)により逆転写された。反応あたり100ngのオリゴdTプライマー(Promega)を使用した。qPCRについて、SYBR(商標)グリーンマスターミックス(Applied Biosystems)を製造業者のプロトコールに従って使用した。25μlの総反応体積を有する96ウェルの光学プレートを用い、10ngのcDNAをウェルあたりに使用した。プレートは、7300又は7500システム(Applied Biosystems)上で実行された。誘導倍率は、正規としてH2Aを用いて、AACt法(Livak et al,Methods 25:402−408,2001)によって計算された。
【0157】
マウス着床前胚におけるRNA単離、cDNA調製及びqPCR分析
4〜6週齢のB6D2F1雌マウスは、5IUのPMSG(Sigma)と5IUのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)(Sigma)を用いて過剰排卵された。qRT−PCR実験のための卵や胚は、それぞれ、MII(未受精卵卵母細胞)、1細胞、初期及び後期の2細胞、4細胞、8細胞、桑実胚と胚盤胞の胚について、hCG注射の20、23、30、43、55、66、80及び102時間後に回収された。10個の同期化された卵や胚の3セットを液体窒素中に保存し、cDNA調製鋳型のために凍結/融解ステップによって機械的に破裂させた。オリゴdTプライマー及びSuperscript(商標)III逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者の指示に従って使用した。分析は、ABI7300ファーストリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)上で行われた。データは、AACt法(Livak et al,Methods 25:402−408,2001)を用いるChuk(Falco et al,Reprod Biomed Online 13:394−403,2006)によって正規化された。
【0158】
RNAインサイチュハイブリダイゼーション
全量インサイチュハイブリダイゼーションは、従前(Carter et al,Gene Expr Patterns 8:181−198,2008)に記載のように行われた。簡潔には、3点測定のES細胞は、3日間増殖させ、4℃で一晩、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定された。プロテイナーゼKで消化した後、細胞を62℃にて、一晩、1μg/mlジゴキシゲニン標識リボプローブでハイブリダイズさせた。次に、細胞を洗浄し、ブロッキングし、アルカリホスファターゼをコンジュゲートした抗ジゴキシゲニン抗体とともにインキュベートし、30分間又は一晩、NBT/BCIP検出緩衝液中でインキュベートした。
【0159】
二重蛍光RNAインサイチュハイブリダイゼーション
ジゴキシゲニン(DIG)標識RNAプローブ及びビオチン(BIO)標識RNAプローブを、RNA Labeling Mix(Roche)を用いて、PCR産物の鋳型から転写した。エタノール沈殿させたプローブを水に再懸濁し、2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)においてRNA 6000 Nano Assayによって定量した。細胞(10
5細胞/ウェル)をガラスチャンバースライドに播き、3日間培養し、PFAで固定し、0.5%TritonX−100で透過処理した。細胞を洗浄し、ハイブリダイゼーション溶液中、60℃において12時間にわたって1μg/mlのDIGプローブ及びBIOプローブとともにインキュベートした。プローブをマウス抗DIG抗体及びヒツジ抗BIO抗体によって検出し、フルオロフォアをコンジュゲートした二次抗体によって可視化した。核をDAPI(青色)で染色した。
【0160】
マイクロアレイ分析
DNAマイクロアレイ分析は、報告されているように(Aiba et al.,DNA Res.16:73−80,2009)行った。簡潔には、ユニバーサルマウス参照RNA(Stratagene)をCy5色素で標識し、Cy3標識試料と混合し、NIA Mouse 44K Microarray v2.2(Carterら、Genome Biol.6:R61,2005)(Agilent Technologiesによる製造、#014117)におけるハイブリダイゼーションのために使用した。各遺伝子特徴の強度をFeature Extraction 9.5.1.1ソフトウェア(Agilent Technologies)を用いて、スキャンされたマイクロアレイ画像から抽出した。ANOVA及び他の分析を行うために開発されたアプリケーション(NIA Array Analysisソフトウェア;lgsun.grc.nia.nih.gov/ANOVA/を参照のこと)(Sharov et al.,Bioinformatics 21:2548−2549,2005)を使用することによって、マイクロアレイデータの分析を行った。全てのDNAマイクロアレイデータは、NCBI Gene Expression Omnibus(GEO,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)に寄託されており、GEO Seriesアクセッション番号(GSE#15604)及びNIA Array Analysisソフトウェアウェブサイト(オンラインlgsun.grc.nia.nih.gov/ANOVA/)(Sharov et al.,Bioinformatics 21:2548−2549,2005)を介してアクセス可能である。GEOの校閲リンクについては、下記の通りである:www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?token=fhaxtmiueykigvm&acc=GSE26278。
【0161】
2N又は4倍体(4N)胚盤胞へのES細胞の注入
CD1雌(Charles River、8〜12週齢)は、hCG(Sigma)投与による48時間後、PMSG(Sigma)により過剰排卵のために使用された。hCG投与後、雌を同系統の雄と交配させ、2細胞胚を卵管のフラッシングによって回収した。回収された胚を37℃で3日間、5%CO
2にてKSOM(Millipore)培地において培養した。回収された2細胞胚を直接0.3Mマンニトール溶液中に移し、電気融合チャンバー内で交流(AC)パルスによって自動的に整列させた。その後、140V/mmの2つの直流(DC)のパルスを40μs間、LF101電気細胞融合発生装置を用いて適用した。1つの割球を有する融合した胚(4N)は、培養60分にて回収され、それらは胚盤胞期に達するまでKSOM培地中で培養が続けられた。単一のES細胞又は10〜15個のES細胞は、それらの発生能を評価するために2N又は4Nの胚盤胞に注入され、次にE2.5レシピエント雌に移された。ES細胞に対するTmxの効果を研究するために、ES細胞は、注射前の2〜3日間、200nMのTmxの存在下で培養された。
【0162】
実施例2:Zscan4の頻繁な活性化による多能性幹細胞の若返り
この実施例は、マウスES細胞のZscan4活性化の頻度を増加させることが、長期的な細胞培養での発生能を増加させるだけでなく、維持もするという知見を記載する。
【0163】
一過性Zscan4
+状態と2細胞状態の胚の間の共通性
ES細胞のZscan4
+状態を特徴付けるための最初のステップとして、全体的な遺伝子発現プロフィールは、Zscan4
+とES細胞のZscan4
+の間で比較された。先の研究においては、レポーター細胞株、pZscan4−エメラルド細胞(以下「MCIZE」と呼ぶ)を確立し、ここでは、Zscan4c−プロモーター駆動のリポーター緑色蛍光タンパク質GFP−エメラルド(Em)が、内因性Zscan4の発現を再現した(Zalzman,et al.,Nature 464:858−863,2010)。FACSソートされたEm
+及びEm
−細胞のDNAマイクロアレイ分析を行った。Em
+細胞は、たった161個の示差的に発現された遺伝子を有するEm
−細胞と、非常に類似した発現プロフィールを示した(
図5;PCT出願公開WO2008/118957及びFalco et al,Dev Biol 307:539−550,2007も参照)。多能性関連マーカーは、Em細胞と比較してEm細胞では変わらなかったが、TcstvlとTcstv3(2細胞特異的転写産物改変体1と3)遺伝子(Struwe及びSolter,GenBankアクセッションAF067057.1;Zhang et al.,Nucleic Acids Res 34:4780−4790,2006)は、最も非常に上方制御された遺伝子に含まれた(
図5)。RNA全量インサイチュハイブリダイゼーションは、リスト中の7つの他の遺伝子について「Zscan4様」発現を示した(Tcstvl/3、Eifla、Pifl、AF067063、EG668777、RP23−149D11.5、BC061212、及びEG627488;PCT公開WO2008/118957を参照されたい。参照により本明細書に援用される)。
【0164】
さらに、二重標識蛍光RNAインサイチュハイブリダイゼーションは、これらの遺伝子とZscan4の共発現を確認した。Zscan4は2細胞胚マーカーであるため(Falco et al.,Dev Biol 307:539−550,2007)、6つの遺伝子は、着床前胚における付加的な遺伝子発現情報に基づくリスト(Ko et al,Development 127:1737−1749,2000;Sharov et al.,PLoS Biol 1:E74,2003)から選択され、qRT −PCRによってそれらの発現プロフィールを調べた。試験した全ての6つの遺伝子は、2細胞期胚において高い発現ピークを示した:2つの遺伝子はZscan4として後期2細胞状態で最大ピークを示し、一方、他の4つは、Zscan4として早期2細胞状態でそれらの最大ピークを示した(参照により本明細書中に援用されるPCT公開WO2008/118957参照)。全量インサイチュハイブリダイゼーションによる約250個の転写因子遺伝子の大規模スクリーニングがたった2つの他の遺伝子(Rhox9及びWhsc2)を同定し、「Zscan4様」発現パターンを有するという事実(Carter et al.,Gene Exp r Patterns 8:181−198,2008)を考慮して、ES細胞におけるZscan4様発現パターンを有する2細胞遺伝子の発見の高い発生率は、初期段階の肺における遺伝子の発現プログラムのいくつかがES細胞のZscan4段階において再活性化される。
【0165】
一過性Zscan4
+状態はより高い発生能と関連付けられない
ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊(ICM)中の細胞と同等であると考えられる(Nichols and Smith,Development 138:3−8,2011;Yoshikawa et al.,Gene Expr Patterns 6:213−224,2006)。Zscan4
+状態と2細胞胚の間の共通性は、標準的な細胞培養条件において、ES細胞は、2細胞様の細胞の約5%とICM様の細胞の約95%の混合集団であることを示唆する。核移植(クローニング)によって、2細胞核はICM核よりも高い発生能を有するため(Tsunoda et al.,Development 107:407−411,1989;Kono et al.,J Reprod Fertil 93:165−172,1991)、Zscan4
+状態は、通常のES細胞集団のうち高い潜在的な真の幹細胞を表す可能性がある。
【0166】
この概念を試験するために、V6.5 ZE細胞(クローン#17)を生成し、それらの発生能は、FLハイブリッド株(C57BL/6×129/SV)由来のV6.5 ES細胞にpZscan4−エメラルドベクターをトランスフェクトすることにより評価した。これは、発生能を試験するために広範囲に使用されている(Eggan et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:6209−6214,2001;Wang and Jaenisch, Dev Biol 275:192−201,2004)。細胞選別又は長期UV曝露によって引き起こされる細胞損傷を避けるために、Em
+又はEm
−細胞をピペッティングにより手動で分離し、単一のES細胞は2N胚盤胞に注入され、その後の胚発生を観察した。コート色に基づいて、Em
−ES細胞は、相対的に高い割合(31%)でキメラマウスの組織に貢献することができたのに対し、Em
+ES細胞は貢献しなかった(0%)ことがわかった。結果は、予想に反して、Zscan4
+細胞はZscan4
−細胞と比較して高い発生能に関連付けられていないことを示している。
【0167】
Zscan4−ERT2はTmxの不存在において内因性Zscan4
+細胞の頻度を増加させる
Zscan4の断続的及び一過性の活性化は、ES細胞培養の長期的な維持のために必要とされる(Zalzman et al.,Nature464:858−863、2010)。したがって、Zscan4のより頻繁な活性化は、さらに、それらの発生能を含むES細胞の品質を改善すると仮定された。Zscan4の一過性の発現を模倣するシステムが求められていた。この目的のために、ERT2、タモキシフェン(Tmx)誘導システムを選択した(Feil et al.,Proc Natl Acad Sci USA 93:10887−10890,1996)。このシステムは、Tmxの不存在下でトランス遺伝子をオフにしておき、Tmxの存在下で随意にそれをオンにすることができる(Feil et al.,Proc Natl Acad Sci USA 93:10887−10890,1996)。第一に、プラスミド構築物のpCAG−Zscan4−ERT2を作製し、そこでは、ERT2ドメインと融合されたZscan4cオープンリーディングフレーム(ORF)は、強力なユビキタスなプロモーターCAGによって駆動することができる(Niwa et al.,Gene 108:193−199,1991)(
図1A)。
【0168】
pCAG−Zscan4−ERT2プラスミドをMC1−ZE3細胞にトランスフェクトした場合、ES細胞におけるZscan4−ERT2の構成的発現は、Tmx
−条件においてさえ、Em
+細胞の分画を増加させた(
図1B)。培養培地へのTmxの添加によって、Em<
+>細胞の分画をさらに増加させたが、ES細胞(Em<
+>細胞とEm<−>細胞の両方)をより平坦なものにし、典型的な多能性ESコロニー形態学からの逸脱であるES細胞コロニーの平坦化をもたらした。結果は、さらに、5つの独立したクローンについて定量的アッセイによって確認された:Tmxの不存在下でさえZscan4−ERTの構成的発現は、フローサイトメトリー分析により、Em
+細胞の3倍増加をもたらし(
図1C)、qRT−PCR分析により、5倍増加をもたらした(
図1D);培地へのTmxの添加は、さらに、それぞれ2倍及び1.2倍の増加を引き起こした(
図1C〜1D)。
【0169】
さらに、この予想外の結果を調べるために、pCAG−Zscan4−ERT2プラスミドをV6.5 ES細胞にトランスフェクションし(Eggan et al,Proc Natl Acad Sci USA 98:6209−6214,2001)、V6.5 ZERT2と命名された複数の細胞クローンを単離した。Zscan4 ORFのqRT−PCR分析に基づいて、クローン#18は、最高Zscan4発現レベルについて選択され、クローン#7と#10は、第二と第三の発現レベルについて選択され、クローン#2は、バックグラウンドZscan4レベルで選択された(
図6A)。PCRによる遺伝子型に基づいて、クローン#2は、pCAG−Zscan4ERT2プラスミドのいずれのコピーも有しておらず、したがって、対照(V6.5#2)として使用された。予想通り、Tmx
+条件は、ES細胞の増殖を鈍化し(
図6B)、ES細胞を平坦化した(
図6C)。Tmxは、Tmx
+条件で10継代後、培地から除去された場合、細胞増殖及び形態学は正常に戻り(
図6B〜6C)、これはV6.5 ZERT2細胞に対するTmxの効果は可逆的であることを示唆した。
【0170】
Zscan4
+細胞の頻度がTmx状態でさえ増加するかどうかを調べるために、全量インサイチュハイブリダイゼーションが、内因性及び外因性コピーのZscan4を検出する全長Zscan4cプローブ、ならびに内因性Zscan4のみを検出する3’−UTR Zscan4cプローブを用いて行われた。結果は、対照細胞(V6.5とV6.5#2)におけるZscan4<
+>細胞の通常レベルと比較して、Tmxの不存在下でのV6.5 ZERT2 ES細胞クローン(#7、#10、及び#18)におけるZscan4
+細胞数の約3倍増加を示した(
図1E)。DNAマイクロアレイによる全体的な遺伝子発現プロフィールのさらなる比較は、Zscan4の発現が、Tmx
−条件でさえ、V6.5 ZERT2#18ES細胞において3.6倍に上方制御されたことを確認した(
図7及び8)。同様に、Falcoら(Dev Biol 307:539−550,2007)において同定された他の主要なZscan4関連遺伝子、例えば、Tcstvl、Tcstv3、Tmem92、RP23−149D11.5、及びBC061212はまた、Tmx
−条件において、V6.5 ZERT2 #18ES細胞において上方制御された(
図1F、
図7、
図8)。Tmxの添加は、ほんのわずかにZscan4及びZscan4関連遺伝子の発現を増加させたが、Zscan4と無関係な遺伝子の発現を有意に増加させた(
図1G、
図7、
図9)。まとめると、Tmxを用いないで構成的に発現するZscan4−ERT2の使用は予期しないものであったが、内因性Zscan4
+細胞の数を増加させることによって、天然に存在するZscan4効果を高めるための魅力的な戦略となった。
【0171】
C末端を欠損しているZscan4タンパク質(Zscan4c−ΔC)はZscan4
+細胞数を増加させる
上述の結果に基づくと、ERT2の効果は、タンパク質のC末端でZscan4ジンクフィンガードメインの機能をブロックしたことによるものと仮定された。従って、C末端が切断されたZscan4がZscan4の再発活性化を誘導するZscan4−ERT2と同様の効果を有するか否かを評価するために、C末端切断型(4つすべてのジンクフィンガードメインを欠損している)又はN末端切断型(SCANドメインを欠損している)Zscan4のいずれかをコードするベクターを構築した。
図2Aは、Zscan4c、Zscan4c−ERT2、Zscan4c−ΔC、及びZscan4c−ΔNタンパク質の構造の概略を示す。Zscan4c−ΔCのアミノ酸配列は、配列番号25として本明細書に記載されている。
【0172】
突然変異したZscan4c遺伝子を強力かつ構成的なCAGプロモーター下に置いた。pCAG−Zscan4−ΔCベクターの配列は配列番号24として本明細書に記載されている。各ベクターは、MC1−ZE16 ES細胞(MC1−ZE3の姉妹クローン)にトランスフェクトされた。複数の独立したクローンを単離した:Zscan4c−ΔCについて、ZDC−MC1−ZE16#3、#4、#20;Zscan4c−ΔNについて、ZDN−MC1−ZE16#5、#8、#15。蛍光顕微鏡観察は、それぞれの細胞クローンについて行われた。ZDC−MC1−ZE16#3、#4、#20及びZDN−MC1−ZE16 #5、#8、#15の画像は、
図2B〜2Gに示されている。結果は、Zscan4c−ΔCの発現がZscan4
+細胞数を増加させ、一方、Zscan4c−ΔNの発現がZscan4
+細胞数を頒価させないことを明らかに示す。結果は、Zscan4c−ΔCがZscan4−ERT2(Tmx−条件)と同様に機能することを示す。
【0173】
Zscan4−ERT2はTmxの不存在下でES細胞の発生能を増大及び維持した
ES細胞の発生能に対してZscan4−ERT2の効果を評価するために、種々のES細胞をマウス胚盤胞に注入し、子宮に移し、それらを発生させた。ES細胞能力の程度は、コート色に基づいて、イヌにおけるキメラの割合によって評価された:高い(>70%キメラ化)、中等度(40%〜70%)、低い(<40%)、及びアルビノ(0%)(
図3A)。
【0174】
その初期の継代(p15)におけるV6.5親ES細胞株は、FlハイブリッドES細胞株のための基準範囲内にある、18%高い、29%中等度、及び41%低いキメラ化を示した。ES細胞の発生能は、一般に、複数回の継代及び/又はプラスミドトランスフェクション/薬物選択後に低くなることが知られている。予期した通り、V6.5親ES細胞株と比較して、対照V6.5 #2 ES細胞株は、Zscan4−ERT2を担持しないが、トランスフェクション及び薬剤選択後に生成され、僅かに低い全体的な潜在力を示し、複数回の継代中(p21、p23、及びp30)にさらに減少した(
図3B)。これとは対照的に、V6.5 ZERT2#18 ES細胞は、親V6.5と対照V6.5#2ES細胞よりも非常に高い発生能を示した:継代19での73%高い、27%中等度の適度なキメラ化(
図3B)。さらに驚くべきことは、潜在力のこのような高いレベルは、長期の時間と継代について維持された:例えば、継代30でされ、V6.5 ZERT2#18ES細胞由来の40%を超えるイヌは、「高い」キメラ化を示し、一方、対照V6.5 #2ES細胞由来のイヌは「高い」キメラ化を示さなかった(
図3B)。異なる遺伝的背景及びトランス遺伝子の他の5つのES細胞株が試験され、新たに単離されたES細胞(TA1)からの非常に初期の継代株を含む。潜在力について、これらのES細胞株は、V6.5 ZERT2 #18細胞株に近づくことができなかった(
図3B)。
【0175】
興味深いことには、2〜3日間のTmxへの暴露は、Tmx
−状態と比較して、V6.5 #2とV6.5 ZERT2#18ES細胞の両方の潜在力を低下させたが、V6.5 ZERT2#18ES細胞は、依然として、V6.5#2ES細胞よりも高い潜在力を示し(
図3B)。これらの結果は、全体的な発現プロファイリングによってなされた観察と一致しているようである(
図1F):Tmx
+条件は、V6.5 ZERT2#18ES細胞において天然に生じるZscan4
+(すなわち、Em
+)と無関係な遺伝子発現を増加させた。
【0176】
4N相補アッセイによってES細胞の発生能を試験すること
発生能についての最終試験は、単独で4倍体(4N)胚盤胞に注射されたES細胞が、全マウスになっている(Nagy et al.,Development 110:815−821,1990)かどうかを確認することであるが広く認識されている。期間終了時に生存していた15〜25%のイヌを達成している、従前(Eggan et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:6209−6214,2001)に報告されている初期継代V6.5 ES細胞と比較して、継代18のV6.5 ES細胞だけが、2%の生存胚を生成した(
図4A)。対照的に、継代19のV6.5 ZERT2 #18ES細胞は、非常に高い成功率を示し、43%が生存胚であった(
図4A及び4C)。同様に、他の2つの独立したクローン(V6.5 ZERT2 #7;V6.5 ZERT2 #10)は、10〜15個のES細胞が4Nの胚盤胞に注入した場合、高い成功率の生存胚の生成を示した(
図4A)。
【0177】
高い成功率のV6.5 ZERT2#18細胞と考えられる最良のES細胞とを比較するために、新たに単離されたES細胞は、同じ遺伝的背景を有する胚盤胞−C57BL/6J×129S6/SvEvTacのFlハイブリッドから樹立さ、現在入手可能な最良の条件で培養された(Wong et al.,Methods Enzymol 476:265−283,2010)(
図10及び
図11)。20個の胚盤胞のうち、19個は、インビトロで増殖物を形成し、そのうちの13個は、さらに7日間培養を継続し、ES細胞コロニーを形成させた。これは、新たに樹立されたES細胞株をもたらした(
図10)。最先の継代(p13)の13個のES細胞株のうち6個のクローンは、4N胚盤胞に10〜15個のES細胞を注入することによって、それらの潜在力を試験した。1つのES株は「TA1」と命名され、E13.5で生存胚生成の最高効率(60%)を示した(
図4A及び
図11)。全体的に、4N相補アッセイによって得られたこれらの結果は、より高い継代数のV6.5 ZERT2#18ES細胞の発生能が、新たに単離された初期継代のES細胞に匹敵することを示している。
【0178】
Zscan4−ERT2がF1ハイブリッドES細胞株にのみ影響を及ぼすという可能性を排除するために、MC2 ZERT2 #6ES細胞は、MC2 ES細胞株(C57BL/6J)(Olson et al.,Cancer Res 63:6602−6606,2003)にZscan4−ERT2プラスミドをトランスフェクトすることによって生成させた。報告されたC57BL/6J由来のES細胞の低い潜在力(Brook et al.,Proc Natl Acad Sci USA 94:5709−5712,1997;Eggan et al,Proc Natl Acad Sci USA 98:6209−6214,2001)と一致して、継代17のMC2 ES細胞と継代12〜13の遺伝的に修飾されたMC2 ES細胞は、いずれの生存胚を生じさせなかった(
図4A)。これとは対照的に、Zscan4−ERT2の構成的発現を伴う10回を超える継代で培養されたMC2 ZERT2 #6ES細胞は、首尾よく6%の生存胚の生産を達成した(
図4A)。したがって、結果は、Zscan4−ERT2構築物が、多能性幹細胞の発育能を高めるための普遍的なツールとして使用され得ることを示唆している。
【0179】
V6.5 ZERT2 #18細胞の異常に高い発生能は、単一のES細胞の潜在力のさらなる検討を促した。単一のES細胞でさえ生きたイヌを形成することができることを以前に示されたが、成功率は非常に低い(1匹のマウス/192個の注射された胚盤胞:0.5%)(Wang and Jaenisch,Dev Biol 275:192−201,2004)。同じ細胞株が先の研究のために使用されたという事実(Wang and Jaenisch,Dev Biol 275:192−201,2004)から予測されるように、4N胚盤胞への継代18の単一の親V6.5 ES細胞の注入は1個の生存胚(1%)を生じさせた(
図4B)。さらに、単一の対照V6.5 #2ES細胞は、77個の4倍体胚盤胞にそれらを注入後、いずれの生存胚を生じさせなかった(
図4B)。これとは対照的に、単一のV6.5 ZERT2 #18細胞を受け入れた44個の4倍体胚盤胞のうち、3個(7%)は完全な胚になり、そのうち2個(5%)は、解剖の時点で生存していた。V6.5 ZERT2 #18ES細胞についてこの異常に高いレベルの潜在力は、4%の生存胚をともなう初期継代のTA1 ES細胞に確かに匹敵していた(
図4B)。
【0180】
検討
本明細書では、Zscan4−ERT2の構成的存在は、通常の活性化因子TMXなしに、内因性Zscan4活性化の頻度を増加させることができ、結果としてES細胞の発生能の増加をもたらすことが開示されている。加速されたZscan4活性化サイクルにおいて培養されたES細胞は、改善されたキメラ化と潜在力を示し、これらは、キメラマウス及び単一のES細胞からの全マウスの効率的な生成における高い寄与によって実証される。
【0181】
Zscan4の頻繁な活性化は、ES細胞の発生能をどのように増大させ、持続させるのか?従前に、ES細胞の不死性は、Zscan4の間欠的な活性化によって維持されることが示された(Zalzman et al.,Nature 464:858−863,2010)。Zscan4のshRNA媒介性連続抑制は、複数回の細胞継代後にES細胞を培養危機に被るようにする(Zalzman et al.,Nature 464:858−863,2010)。したがって、通常の増殖条件においてでさえ、ES細胞は、徐々にそれらの潜在力を喪失し、それは、Zscan4の一過性活性化によって急速に回復されることが考えられる(Zalzman et al.,Nature 464:858−863,2010)。テロメア姉妹染色分体交換による急速テロメア伸長(Zalzman et al.,Nature 464:858−863,2010)を含む劇的な変化がZscan4
+状態におけるES細胞において発生しているという考えと一致して、Zscan4
+細胞(本明細書に記載の実験におけるEm
+細胞))は、胚盤胞に注入された場合、キメラ動物を生成しなかった。標準的なES細胞において、一過性Zscan4活性化の間隔は理想よりも長い場合がある;従って、ES細胞は、着実に、Zscan4の偶発的な活性化にも関わらずに、それらの平均潜在力を喪失する(
図4E、上段パネル)。Zscan4−ERT2の存在によるZscan4のより頻繁な活性化は維持され、又はES細胞の潜在力を高めさえする可能性がある(
図4E、下段パネル)。
【0182】
ERT2融合タンパク質は、通常、それらの活性化のためにTmxを必要とするため、TmxなしでZscan4−ERT2による内因性Zscan4の活性化は予想外であった。これはZscan4機能の部分的ブロッキングに関連し得て、それは、ERT2ドメインが4つのジンクフィンガー(C2H2)ドメイン近傍でZscan4のC末端に融合され、一方、SCANドメインはN末端に位置している(Falco et al.,Dev Biol 307:539−550,2007)ためであることが推測される。Zscan4がES細胞において構成的に活性でないはずであるという事実を考慮すると、Zscan4−ERT2機能の予想外の発見は、内因性Zscan4発現の断続的な活性化を増加させる理想的な手段を提供する。メカニズムに関係なしに、ES細胞におけるZscan4−ERT2の存在は、長期培養中のES細胞の潜在力に対して有益な効果を有する。
【0183】
本開示の原理が適用されてもよい多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態は、本開示の単なる例であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識すべきである。むしろ、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。本出願人は、これらの請求の範囲及び精神に含まれるすべてを請求する。
【0184】
実施例3:Zscan4c単独の過剰発現はES細胞を活性化させ得る
Zscan4自体(すなわち、未修飾のZscan4タンパク質)の一過性の過剰発現が、ES細胞の発生能を増加させ得るかどうかを試験するために、本出願人は、PB−tetZsan4c−IRES−ベータ−ジオベクターを作製し、そこでは、Zscan4c ORFの発現は、Dox誘導性tetOプロモーターによって駆動される(
図12)。また、ベクターは、ベータ−ジオ、G418耐性遺伝子を含み、その結果、Dox誘導性Zscan4cベクターを含むES細胞だけが、G418の存在下で選択することができる。このpiggyBacベクターは、PB−CAG−rtTAベクター(teOプロモーターのDox消失性に必要なDoxトランス活性化因子)とPcyL43トランスポザーゼベクター(ゲノムにpiggyBacベクターの統合を促進する酵素)でトランスフェクトされた。トランスフェクション後、細胞を6日間、G418及びDox+の存在下で培養し、次に、実質的にDoxの不存在下で培養した。これらの細胞は、V6.5 tetZscan4 ESCと命名された。対照として、親V6.5 ES細胞を用いた。 Zscan4の発現は、培地中にDoxを添加することによって、一過性に増加させた(青色ボックスで示される;
図12)。
【0185】
これらの細胞を培養し、3日ごとに継代した。特定の継代では、これらの細胞は、これらの細胞がE13.5で生存マウス胚を形成することができるかどうかを確認するために、4倍体(4N)胚盤胞に注入された。注入された胚盤胞数のうちの生存胚のパーセント分画は、ES細胞の発生能を表す(
図12のy軸)。
【0186】
予期されたように、対照V6.5 ES細胞は、初期継代(継代12)で最大の発生能を示し(3%)、複数回の継代で徐々に減少した(
図12)。継代24では、対照V6.5 ES細胞は完全にそれらの潜在力を喪失した。対照的に、V6.5 tetZscan4c ES細胞は、3%(継代12)から9%(継代18)の一過性のZscan4過剰発現後、発生能の増加を示した。細胞がそれらの発生能を喪失し始めたとき、本出願人らは、培養培地にDoxを添加し、一過性にZscan4を過剰発現させた。
図12に示すように、Zscan4の一過性過剰発現は、ES細胞の発育能を増加させることができた。その後、本発明者は、時折Zscan4を過剰発現させることによって、ES細胞は、長期の細胞培養(最大37回の継代まで試験された)後でされ、それらの発生能を維持することができることを示すことができた。
【0187】
これらのデータは、Zscan4単独の一過性過剰発現が、ES細胞において、発生能を増加する(すなわち、若返らせる)ができることを明らかに実証した。