(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの堆積構造を形成するために、少なくとも1種類の前駆体組成物を少なくとも1つの基板上に堆積させる工程であって、該前駆体組成物が、少なくとも1種類の第1の金属を含む少なくとも1種類の第1の金属錯体と、該第1の金属錯体とは異なりかつ該第1の金属とは異なる少なくとも1種類の第2の金属を含む、少なくとも1種類の第2の金属錯体とを含む、少なくとも2種類の金属錯体を含む、工程、および
該第1の金属および該第2の金属が処理構造中で該第1の金属および該第2の金属の元素形態を形成するように該堆積構造を処理する工程
を含む、方法であって、
該少なくとも1種類の第1の金属錯体が、少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミン配位子を含む銀錯体であり、該少なくとも1種類の第2の金属錯体が、少なくとも1つの硫黄含有配位子および少なくとも1つのカルボキシレート配位子を含む金錯体である、方法。
前記前駆体組成物について、全金属含有量に対する前記第1の金属の原子パーセントが20%〜80%であり、前記第2の金属の原子パーセントが20%〜80%である、請求項1記載の方法。
第1の金属と、該第1の金属用の、少なくとも1つの第1の配位子および該第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子とを含む、少なくとも1種類の第1の金属錯体;
該第1の金属錯体とは異なり、かつ第2の金属と、該第2の金属用の、少なくとも1つの第1の配位子および該第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子とを含む、少なくとも1種類の第2の金属錯体;および
少なくとも1種類の溶媒
を含む、組成物であって、
該少なくとも1種類の第1の金属錯体が、少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミン配位子を含む銀錯体であり、該少なくとも1種類の第2の金属錯体が、少なくとも1つの硫黄含有配位子および少なくとも1つのカルボキシレート配位子を含む金錯体である、組成物。
少なくとも1種類の第1の金属錯体および少なくとも1種類の第1の溶媒を含む少なくとも1種類の第1の前駆体組成物と、該第1の金属錯体とは異なる少なくとも1種類の第2の金属錯体および少なくとも1種類の第2の溶媒を含む少なくとも1種類の第2の前駆体組成物とを組み合わせる工程であって、該第1および第2の前駆体組成物、該第1および第2の溶媒、ならびに該第1および第2の金属錯体の配位子の量が、均一組成物を形成するように選択される、工程
を含み、
該少なくとも1種類の第1の金属錯体が、少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミン配位子を含む銀錯体であり、該少なくとも1種類の第2の金属錯体が、少なくとも1つの硫黄含有配位子および少なくとも1つのカルボキシレート配位子を含む金錯体である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
序論
2011年5月4日出願の優先権米国仮出願第61/482,571号はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
2010年11月8日出願の米国特許出願第12/941,932号(譲受人: カーネギーメロン大学;「Metal Ink Compositions, Conductive Patterns, Methods, and Devices」)、および米国特許出願第61/603,852号(「Self-Reducing Metal Complex Inks Soluble In Polar Protic Solvents」)は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。これは、前駆体組成物、金属錯体、堆積、金属への変換の説明、図面、実施例、および特許請求の範囲を含む。
【0040】
さらに、カーネギーメロン大学に提出された2010年4月26日付の「Solution-Processable Materials for Printed Electronics」と題するAnna JavierによるPhD論文も、「Solution-Processable Metal-Organic Complexes for Printable Metals」と題する第5章を含めて、参照により組み入れられる。
【0041】
微細加工、印刷、インクジェット印刷、電極、およびエレクトロニクスは、例えばMadou, Fundamentals of Microfabrication, The Science of Miniaturization, 2
nd Ed., 2002に記載されている。
【0042】
有機化学の方法および構造は例えばMarch's Advanced Organic Chemistry, 6
th Ed., 2007に記載されている。
【0043】
金属、金属合金および金属固溶体は当技術分野において公知である。例えばShackelford, Introduction to Materials Science for Engineers, 4th Ed., 1996; Metals Handbook, 9th Ed., Vol. 2, American Society for Metals, Metals Park, Ohio, 1979を参照。例としては、炭素および低合金鋼、高合金鋼、鋳鉄、ならびに急速凝固合金鉄を含む、合金鉄が挙げられる。他の例としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金、ニッケル合金、亜鉛合金、鉛合金および他の合金を含む、非鉄合金がある。
【0044】
インクおよび合金は例えばGinleyの米国特許出願公開第2010/0163810号; Kodasの米国特許第6,951,666号; Liの米国特許第7,270,694号; Kodasの米国特許第7,553,512号; およびCastilloの米国特許出願公開第2009/0188556号に記されている。
【0045】
以下でさらに詳細に説明する一態様は、少なくとも1つの堆積構造を形成するために、少なくとも1種類の前駆体組成物を少なくとも1つの基板上に堆積させる工程であって、該前駆体組成物が、少なくとも1種類の第1の金属を含む少なくとも1種類の第1の金属錯体と、該第1の金属錯体とは異なりかつ該第1の金属とは異なる少なくとも1種類の第2の金属を含む、少なくとも1種類の第2の金属錯体とを含む、少なくとも2種類の金属錯体を含む、工程、該第1の金属および該第2の金属が処理構造中で該第1の金属および該第2の金属の元素形態を形成するように該堆積構造を処理する工程を含む、方法を提供する。場合によっては、少なくとも第2の金属を含むナノ多孔質材料とするために、第1の金属の少なくとも一部を除去することができる。
【0046】
前駆体組成物
前駆体組成物は、インクと呼ばれることもあり、基板上に堆積されるように適合している。前駆体組成物は周囲温度で液体でありうる。さらに、元素金属構造を形成するために、堆積後にそれを処理することができる。ここで該金属は、例えば(I)価または(II)価の状態からゼロ価の元素状態に還元され、それにより、この主金属とゼロ価の元素状態の少なくとも1種類の他の主金属との混合物を形成する。
【0047】
前駆体組成物は、少なくとも1種類の第1の金属錯体と、該第1の金属錯体とは異なる少なくとも1種類の第2の金属錯体とを含みうる。第3の金属錯体または第4の金属錯体などをさらなる金属錯体と共に含んでもよく、各金属錯体は他の錯体とは異なる。
【0048】
一態様では、第1および第2の金属錯体は、前駆体組成物中で一緒に混合される際に互いに反応しない。
【0049】
前駆体組成物は、トルエンなどの直鎖状、分岐状または芳香族の炭化水素溶媒を含む少なくとも1種類の溶媒をさらに含みうる。別の態様では、溶媒は、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなどを含む)、グリコール、アミンまたはPEG(エチレングリコールおよびプロピレングリコールを含む)などの極性プロトン性溶媒である。さらなる態様では、溶媒系は溶媒の混合物を含む。前駆体組成物は、界面活性剤、分散剤、結合剤および粘度調整剤を例えば含む添加剤を含んでもよい。
【0051】
前駆体組成物は均一組成物でありうる。
【0052】
前駆体組成物は、混合時に相分離しない組成物でありうる。
【0053】
組成物を均一性および相分離について、周囲条件下で肉眼で検査することができる。さらに、均一性および相分離を肉眼と光学顕微鏡法および/または光散乱のような機器を用いる方法とによる目視検査によって測定することができる。
【0054】
さらに、主要な焦点は、所望の結果を実現するためにナノ粒子よりもむしろ分子化合物を使用するということである。したがって、前駆体組成物は金属ナノ粒子を実質的に含まないかまたは全く含まないことがある。一態様では、前駆体組成物は金属ナノ粒子を0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または0.001重量%未満のレベルで含む。SEMおよびTEM、紫外可視を含む分光法、プラズモン共鳴などを例えば含む当技術分野において公知の方法を使用して、粒子の組成を検査することができる。ナノ粒子は例えば1nm〜500nm、または1nm〜100nmの直径を有しうる。また、金属錯体を含む組成物はフレークを含まないことがある。
【0055】
一態様では、前駆体組成物はポリマーを含まない。一態様では、前駆体組成物は界面活性剤を含まない。一態様では、組成物は金属錯体および溶媒のみを含む。
【0056】
一態様では、前駆体組成物は少なくとも1種類の溶媒をさらに含む。溶媒は例えば、芳香族炭化水素を含む炭化水素でありうる。溶媒は例えば、水、アルコール、グリコール、アミンまたはPEGなどの極性プロトン性溶媒でありうる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。
【0057】
一態様では、金属錯体はさらなる溶媒なしで使用される。
【0058】
一態様では、組成物は水を含まないかまたは実質的に含まない。例えば、水の量は1重量%未満でありうるか、あるいは、水の量は0.1重量%未満または0.01重量%未満でありうる。
【0059】
一態様では、組成物は酸素化溶媒を含まないかまたは実質的に含まない。例えば、酸素化溶媒の量は1重量%未満でありうる。あるいは、酸素化溶媒の量は0.1重量%未満または0.01重量%未満でありうる。酸素化溶媒としては例えば水、メタノール、エタノール、第一級、第二級および第三級アルコールを含むアルコール、エチレングリコールを含むグリコール、ポリエーテル、アルデヒドなどが挙げられる。
【0060】
一態様では、前駆体組成物は、堆積工程用のインクジェット印刷における使用に適合した粘度を有する。一般に、粘度は堆積方法に適合させることができる。
【0061】
一態様では、25℃で測定される粘度は例えば約500cps以下、または約250cps以下、または約100cps以下でありうる。別の態様では約1,000cps以上でありうる。一態様では、前駆体組成物は約1cps〜約20cps、または約1cps〜約10cpsの粘度を有する。
【0062】
金属錯体
第1および第2の金属錯体を含む金属錯体は、2種類以上の錯体の均一な混合物の錯体であり得、これは金属合金膜の前駆体である。金属有機化合物および遷移金属化合物、金属錯体、金属、ならびに配位子は、例えばLukehart, Fundamental Transition Metal Organometallic Chemistry, Brooks/Cole, 1985; Cotton and Wilkinson, Advanced Inorganic Chemistry: A Comprehensive Text, 4
th Ed., John Wiley, 2000に記載されている。
【0063】
本発明の金属錯体の一態様は、実施例を含む米国特許出願第12/941,932号および米国特許出願第61/603,852号に記載されている。金属錯体はホモレプチックまたはヘテロレプチックでありうる。金属錯体は単核、複核、三核およびそれ以上でありうる。金属錯体は共有結合錯体でありうる。金属錯体は金属-炭素形式結合を含まないことがある。金属錯体は25℃で易溶性でありうる。
【0064】
第1の金属錯体は少なくとも1種類の第1の金属を含みうるものであり、第2の金属錯体は少なくとも1種類の第2の金属を含みうるものであり、第3の金属錯体は少なくとも1種類の第3の金属を含みうる。以下同様。
【0065】
金属錯体は、例えば芳香族炭化水素を含む炭化水素などの非極性溶媒または低極性溶媒中での可溶性を含む可溶性を示しうる。溶解性を試験するための芳香族炭化水素溶媒としては例えばベンゼンおよびトルエン、ならびにキシレンおよびキシレン混合物が挙げられる。ポリアルキル芳香族化合物を使用することができる。さらに、金属錯体は例えば水、アルコール、グリコール、アミンまたはPEGなどの極性プロトン性溶媒に可溶性でありうる。
【0066】
金属錯体は不斉であることがあり、これにより金属錯体の混合物の溶解性および良好な均一性を促進することができる。不斉分子は当技術分野において公知である。例えばCotton, Chemical Applications of Group Theory, 3
rd Ed.ならびに米国特許第7,001,526号、第5,585,457号、第4,619,970号および第4,410,538号を参照。不斉分子は、恒等作用素Eのみに対するC1対称性を示しうる。
【0067】
金属および遷移金属は当技術分野において公知である。例としてはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuおよびHgが挙げられる。特に、銀、金および銅を含む貨幣金属を使用することができる。金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよび銀を含む貴金属を使用することができる。他の好ましい態様では、白金、ニッケル、コバルトおよびパラジウムを使用することができる。さらに、鉛、鉄、スズ、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、亜鉛およびアルミニウムを使用することができる。当技術分野において公知の他の金属および元素を使用することができる。
【0068】
一態様では、第1の金属錯体は銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウムまたはロジウムの錯体である。一態様では、第1の金属錯体は銀錯体である。
【0069】
一態様では、第2の金属錯体は銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウムまたはロジウムの錯体である。一態様では、第2の金属錯体は金錯体である。
【0070】
一態様では、前駆体組成物は、第1および第2の金属錯体とは異なりかつ第1および第2の金属とは異なる少なくとも1種類の第3の金属を含む、少なくとも1種類の第3の金属錯体をさらに含む。第3の金属は例えば銅、白金およびイリジウムでありうる。一態様では、特に、第3の金属は銅である。
【0071】
一態様では、前駆体組成物について、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約1%〜約99%であり、第2の金属の原子パーセントは約1%〜約99%である。一態様では、前駆体組成物について、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約10%〜約90%であり、第2の金属の原子パーセントは約10%〜約90%である。別の態様では、前駆体組成物について、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約20%〜約80%であり、第2の金属の原子パーセントは約20%〜約80%である。
【0072】
前駆体組成物の全量に対する、第1の金属錯体および第2の金属錯体の全量を例えば含む金属錯体の全量は、約500mg/mL以下、または約250mg/mL以下、または約200mg/mL以下、または約150mg/mL以下、または約100mg/mL以下である。下限量は例えば約1mg/mL以上、または約10mg/mL以上でありうる。これらの上限および下限の態様によって、約1mg/mL〜約500mg/mLを例えば含む範囲を設定することができる。1つの特定の範囲は約60mg/mL〜約200mg/mLである。
【0073】
一態様では、第1の金属錯体および第2の金属錯体はそれぞれ金属中心を1個だけ含む。
【0074】
一態様では、第1の金属錯体の第1の金属および第2の金属錯体の第2の金属はそれぞれ酸化状態(I)または(II)である。
【0075】
金属錯体は、2つ以上の配位子またはちょうど2つの配位子を含む、複数の配位子を含みうる。例えば、互いに異なる第1の配位子および第2の配位子が存在しうる。第1の配位子はσ電子供与、または供与結合を与えることができる。第1の配位子はアニオンでもカチオンでもなく中性状態でありうる。第1の配位子の例としてはアミン、酸素含有配位子および硫黄含有配位子が挙げられ、これらは酸素化エーテル、および環状チオエーテルを含むチオエーテルを含む。非対称アミンまたは対称アミンを使用することができる。アミンは例えば少なくとも2個の第一級または第二級アミン基を含みうる。単座配位子を使用することができる。多座配位子を使用することができる。アルキルアミノ配位子を使用することができる。
【0076】
第2の配位子は第1の配位子と異なってよく、金属錯体を加熱する際に揮発しうる。例えば、いくつかの態様では、それは二酸化炭素およびプロペンなどの揮発性小有機分子を放出しうる。第2の配位子は、アニオン性電荷を有しかつ中性錯体を与えることができる最小数の原子を有するキレート剤でありうる。第2の配位子はアニオン性でありうる。例えば、第2の配位子は、カルボキシレート、例えば低分子アルキル基を含むカルボキシレートでありうる。アルキル基における炭素原子数は、例えば、10個以下、または8個以下、または5個以下の炭素原子を有する。第2の配位子の分子量は例えば約1,000g/mol以下、または約250g/mol以下、または約150g/mol以下でありうる。
【0077】
第1および第2の配位子、ならびに任意の他の配位子は、不斉錯体を与えるように選択することができる。
【0078】
一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子を含む。一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのアミノ配位子を含む。一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミノ配位子を含む。
【0079】
一態様では、第2の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子を含む。一態様では、第2の金属錯体は少なくとも1つの中性硫黄含有配位子を含む。一態様では、第2の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つの中性硫黄含有配位子を含む。
【0080】
金属錯体の具体例としては以下が挙げられる。
【0081】
以下でさらに説明するように、元素金属合金が形成されるように錯体を処理することができる。所望であれば、合金中の1種類または複数種類の金属を除去することができる。
【0082】
二元合金を形成するための金属の二元組み合わせの例としてはAg-Au、Pt-Rh、Au-Cu、Zn-Cu、Pt-Cu、Ni-Al、Cu-Al、Pt-NiおよびPt-Irが挙げられる。
【0083】
1種類の金属を所望であれば除去することができ、第1の金属および第2の金属の選択を、1種類(第1の金属)が除去可能なように適合させることができる。例えば、アルミニウムを第1の金属としてニッケル-アルミニウム合金から除去して多孔質ニッケルを得ることができ、または銅-アルミニウム合金から除去して多孔質銅を得ることができる。第3の金属またはさらなる金属が存在する場合、除去されるかまたは金属の除去時に残留するように適合させることができる。
【0084】
三元金属組み合わせおよび合金の例としては例えばFe-Ni-Cr、Co-Cr-Fe、Co-Cr-Ni、Co-Cr-W、Co-Fe-Mo、Co-Fe-Ni、Co-Fe-WおよびCo-Mo-Niが挙げられる。
【0085】
四元金属組み合わせおよび合金は当技術分野において公知であり、調製可能である。
【0086】
合金の組み合わせ配列を調製することができる。合金中の金属の濃度は変動させることができ、前駆体組成物中の金属(または金属錯体)の濃度によって制御することができる。例えば、多層構造が、層ごとに変動する金属の勾配濃度を伴って調製されうる、勾配態様を実施することができる。加熱時に、金属は拡散を開始して、金属の界面から変動した金属の傾斜機能合金を生じさせる。
【0087】
均一前駆体組成物のための選択
一態様は、第1の金属と、該第1の金属用の、少なくとも1つの第1の配位子および該第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子とを含む、少なくとも1種類の第1の金属錯体;該第1の金属錯体とは異なり、かつ第2の金属と、該第2の金属用の、少なくとも1つの第1の配位子および該第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子とを含む、少なくとも1種類の第2の金属錯体;少なくとも1種類の溶媒を含む、組成物であって、(i) 該第1の金属錯体の量および該第2の金属錯体の量の選択、(ii) 該第1および第2の金属用の該第1の配位子の選択および該第2の配位子の選択、ならびに(iii) 該溶媒の選択が、均一組成物を与えるように適合されている、組成物を提供する。
【0088】
一態様では、例えば、第1の金属錯体は銀、金、銅、白金、イリジウム、ニッケルまたはロジウムの錯体である。特に、第1の金属錯体は銀錯体でありうる。
【0089】
一態様では、第2の金属錯体は銀、金、銅、白金、イリジウム、ニッケルまたはロジウムの錯体である。特定の態様では、第2の金属錯体は金錯体である。
【0090】
さらなる態様では、第1の金属錯体は銀錯体でありかつ第2の金属錯体は金錯体であるか、あるいは該第1の金属錯体は白金錯体でありかつ該第2の金属錯体は金錯体であるか、あるいは該第1の金属錯体は白金錯体でありかつ該第2の金属錯体はイリジウム錯体であるか、あるいは該第1の金属錯体は白金錯体でありかつ該第2の金属錯体はロジウム錯体である。例えば、一態様では、第1の金属錯体は銀錯体でありかつ第2の金属錯体は金錯体である。
【0091】
一態様では、第1の金属錯体の第1の配位子はカルボキシレートである。別の態様では、第2の金属錯体の第1の配位子はカルボキシレートである。一態様では、2種類の錯体の2つの第1の配位子は同一である。
【0092】
一態様では、第1の金属錯体および第2の金属錯体はそれぞれ不斉錯体である。
【0093】
一態様では、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約10%〜約90%であり、第2の金属の原子パーセントは約10%〜約90%である。別の態様では、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約20%〜約80%であり、第2の金属の原子パーセントは約20%〜約80%である。
【0094】
一態様では、溶媒は炭化水素、または芳香族炭化水素、または置換芳香族炭化水素である。別の態様では、溶媒は、水、アルコール、グリコール、アミンまたはPEGなどの極性プロトン性溶媒である。
【0095】
一態様では、第1および第2の金属錯体は少なくとも25重量%の金属、または少なくとも50重量%の金属、または少なくとも70重量%の金属を含む。
【0096】
一態様では、組成物の全量に対する第1の錯体および第2の錯体の量は約500mg/mL以下または約250mg/mL以下である。
【0097】
一態様では、組成物は、インクジェット印刷における使用に適合した粘度を有する。例えば、前駆体組成物は約1cps〜約20cpsの粘度を有しうる。
【0098】
一態様では、第1の金属錯体および第2の金属錯体はそれぞれ金属中心を1個だけ含む。
【0099】
別の態様では、第1の金属錯体の第1の金属および第2の金属錯体の第2の金属はそれぞれ酸化状態(I)または(II)である。
【0100】
一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのアルキルカルボキシレート配位子を含む。一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのアミノ配位子を含む。一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミノ配位子を含む。
【0101】
別の態様では、第2の金属錯体は少なくとも1つのアルキルカルボキシレート配位子を含む。さらに、第2の金属錯体は少なくとも1つの硫黄含有配位子を含みうる。さらに、第2の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つの硫黄含有配位子を含みうる。
【0102】
一態様では、第1の金属錯体は銀錯体であり、第2の金属錯体は金錯体である。
【0103】
一態様では、前駆体組成物は金属ナノ粒子を全く含まない。
【0104】
一態様では、第1の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのアミン配位子を含み、第2の金属錯体は少なくとも1つのカルボキシレート配位子および少なくとも1つのチオエーテル配位子を含む。アミン配位子は多座でありうる。
【0105】
一態様では、第1の金属錯体および第2の金属錯体はそれぞれ、各錯体について同一であるカルボキシレート配位子を含む。
【0106】
一態様では、第1の金属錯体および第2の金属錯体はそれぞれ、8個以下の炭素原子を有するカルボキシレート配位子を含む。
【0107】
一態様では、溶媒は炭化水素であり、組成物の全量に対する第1の錯体および第2の錯体の量は約500mg/mL以下である。
【0108】
一態様では、第1の金属錯体は銀錯体であり、第2の金属錯体は金錯体であり、組成物の全量に対する該第1の錯体および該第2の錯体の量は約500mg/mL以下である。
【0109】
一態様では、第1の金属錯体は銀錯体であり、第2の金属錯体は金錯体であり、組成物の全量に対する該第1の錯体および該第2の錯体の量は約500mg/mL以下であり、該組成物はインクジェット印刷における使用に適合した粘度を有する。
【0110】
一態様では、第1の金属錯体は銀錯体であり、第2の金属錯体は金錯体であり、前駆体組成物は金属ナノ粒子を実質的に含まず、該第1の金属錯体の第1の金属および該第2の金属錯体の第2の金属はそれぞれ酸化状態(I)または(II)である。
【0111】
一態様では、全金属含有量に対する第1の金属の原子パーセントは約20%〜約80%であり、第2の金属の原子パーセントは約20%〜約80%であり、溶媒は炭化水素であり、第1および第2の金属錯体は少なくとも50重量%の金属を含む。
【0112】
前駆体組成物の別の態様
別の態様では、酸化状態(I)または(II)の少なくとも1種類の第1の金属と、少なくとも1つの第1の配位子がアミンであり少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートアニオンである少なくとも2つの配位子とを含む、中性錯体である、少なくとも1種類の第1の金属錯体;酸化状態(I)または(II)の少なくとも1種類の第2の金属と、少なくとも1つの第1の配位子が硫黄化合物であり少なくとも1つの第2の配位子が該第1の金属錯体の該カルボキシレートアニオンである少なくとも2つの配位子とを含む、中性錯体である、該第1の金属錯体とは異なる少なくとも1種類の第2の金属錯体; および少なくとも1種類の有機溶媒を含む、前駆体組成物であって、全金属含有量に対する該第1の金属の原子パーセントが約20%〜約80%であり、該第2の金属の原子パーセントが約20%〜約80%である、前駆体組成物が提供される。
【0113】
金属錯体および前駆体組成物を作製する方法
金属錯体は種々の方法によって作製することができ、それらの多くは米国特許出願第12/941,932号および米国特許出願第61/603,852号に記載されており、参照により本明細書に組み入れられる。前駆体組成物は、第1の金属を含有する金属錯体と第2の金属を含有する金属錯体とを組み合わせて混合物を得ることによって作製することができる。一例では、1種類または複数種類の金属錯体と結合した有機配位子の周辺を改変および/または装飾することによって、金属錯体組成物の溶解性または均一性を調整することができる。
【0114】
一態様では、混合物は目視時に分離を示さない。一態様では、混合物は均一溶液である。一態様では、混合物は溶媒を含有する。
【0115】
一態様は、少なくとも1種類の第1の金属錯体および少なくとも1種類の第1の溶媒を含む少なくとも1種類の第1の前駆体組成物と、該第1の金属錯体とは異なる少なくとも1種類の第2の金属錯体および少なくとも1種類の第2の溶媒を含む少なくとも1種類の第2の前駆体組成物とを組み合わせる工程であって、該第1および第2の前駆体組成物、該第1および第2の溶媒、ならびに該第1および第2の金属錯体の配位子の量が、均一組成物を形成するように選択される工程を含む、方法を提供する。
【0116】
堆積
直接法および間接法を含む当技術分野で公知の方法を使用してインクを堆積させることができる。例えば、Direct-Write Technologies for Rapid Prototyping Applications (Ed. A. Pique and D. Chrisey), 2002を参照。堆積のための方法は、例えば、スピンコーティング、ピペッティング、インクジェット印刷、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング、リソグラフィーまたはオフセット印刷、グラビア、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ドロップキャスティング、スロットダイ、ロールツーロール、吹付、マイクロコンタクト印刷、およびスタンピングを含む。インク調合物および基板を堆積方法に適合させることができる。前掲書Direct Write Technologiesも参照、例えば第7章はインクジェット印刷を記載している。接触および非接触堆積を使用することができる。一態様では、スパッタリングを使用しない。スパッタリングに関連する照準線問題、高真空および高支出を回避することができる。液体堆積を使用することができる。
【0117】
一態様では、堆積工程はドロップキャスティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ロールツーロール、スロットダイ、グラビアおよびマイクロコンタクトプリンティングを含む。スピンコーティングでは、rpmは例えば500rpm〜10,000rpm、または700rpm〜5,000rpmでありうる。
【0118】
一態様では、堆積工程はインクジェット印刷を含む。一態様では、堆積工程は真空下で行われない。一態様では、堆積工程はスパッタリングを含まない。一態様では、堆積工程は電気化学堆積法を含まない。
【0119】
一態様では、堆積工程は基板上の同一位置に対して少なくとも2回行われる。同一の前駆体組成物を複数層中で使用してもよく、層ごとに異なる前駆体組成物を使用してもよい。
【0120】
インクの粘度を堆積方法に適合させることができる。例えば、粘度をインクジェット印刷に適合させることができる。粘度は例えば約500Cps以下でありうる。あるいは、粘度は例えば1,000Cps以上でありうる。
【0121】
インク中の溶解固形分の濃度を適合させることもできる。インク中の溶解固形分の濃度は例えば約500mg/mLまたはそれ未満、または約250mg/mLまたはそれ未満、または約100mg/mLまたはそれ未満、または約150mg/mLまたはそれ未満、または約100mg/mLまたはそれ未満でありうる。下限量は例えば約1mg/mL以上、または約10mg/mL以上であり得る。約1mg/mL〜約500mg/mLを例えば含むこれらの上限および下限の態様によって範囲を設定することができる。さらに、インクの湿潤性を適合させることができる。
【0122】
特定の堆積方法における使用のために、所望であれば、例えば界面活性剤、分散剤および/または結合剤などの添加剤を使用して1つまたは複数のインク特性を制御することができる。一態様では、添加剤を使用しない。一態様では、界面活性剤を使用しない。
【0123】
ノズルを使用して前駆体を堆積させることができ、ノズル直径は例えば100ミクロン未満、または50ミクロン未満でありうる。微粒子の非存在はノズルの目詰まりの防止に役立ちうる。
【0124】
堆積においては、溶媒を除去することができ、金属前駆体を金属に変換するための初期工程を開始することができる。
【0125】
複数の堆積工程を行うことができ、多層を形成することができる。
【0126】
一態様では、堆積構造は膜であってもよく、例えば直線状または曲線状であれ、線であってもよい。別の態様では、堆積構造はドット、スポット、円、または頂点を共有する(vertex-shared)多角形もしくは多角形様構造である。
【0127】
基板
多種多様な固体材料を金属インクの堆積に供することができる。ポリマー、プラスチック、金属、セラミック、ガラス、シリコン、半導体、絶縁体および他の固体を使用することができる。有機および無機基板を使用することができる。高温ポリマーを使用することができる。ポリエステル型またはポリイミド型の基板を使用することができる。紙基板を使用することができる。プリント回路基板を使用することができる。本明細書に記載の用途に使用される基板を使用することができる。
【0128】
基板の他の例としては三次元基板、織物、ガーゼ、多孔質基板、および多孔質抗菌基板を含む抗菌基板が挙げられる。
【0129】
基板は、導電性または半導電性構造を含む電極および他の構造を含みうる。
【0130】
一態様では、基板は可撓性基板または剛性基板である。一態様では、基板はポリマー基板である。一態様では、基板はガラスまたは半導体材料である。
【0131】
処理または変換工程
金属錯体を含むインクおよび組成物を堆積させて、処理するか、反応させるか、またはそれ以外の方式で変換して、膜および線を含む金属構造とすることができる。レーザー光を含む熱および/または光を使用することができる。全波長域(full spectrum of wavelength)を含む、様々な放射線を用いることができる。電子線、X線、および/または深紫外線法を用いることができる。金属膜の周囲の雰囲気を制御することができる。例えば、酸素を包含させるかまたは除外することができる。揮発性副生成物を排除することができる。
【0132】
加熱温度は金属の融点よりも低くてもよい。
【0133】
加熱温度は熱分解プロファイルの測定の使用によって決定することができる。
【0134】
一態様では、処理工程は加熱工程または放射線曝露工程である。
【0135】
一態様では、処理工程は300℃未満での加熱工程である。一態様では、処理工程は250℃未満での加熱工程である。一態様では、処理工程は200℃未満での加熱工程である。一態様では、処理工程は150℃未満での加熱工程である。
【0136】
一態様では、処理構造中の2種類の元素金属は合金の形態である。
【0137】
一態様では、処理構造中の2種類の元素金属は固溶体の形態である。一態様では、処理構造中の2種類の元素金属は固溶体の形態ではない。
【0138】
一態様では、前駆体組成物中および処理堆積物中の金属の原子比は実質的に同一である。別の態様では、前駆体組成物中および処理堆積物中の金属の原子比は互いに対して10パーセントの範囲内である。別の態様では、前駆体組成物中および処理堆積物中の金属の原子比は互いに対して5パーセントの範囲内である。別の態様では、前駆体組成物中および処理堆積物中の金属の原子比は互いに対して1パーセントの範囲内である。
【0139】
処理される構造:堆積および処理後の金属線
金属構造、例えば線および膜は凝集性かつ連続的でありうる。連続的な金属化が、粒子間の良好な結合性、および低い表面粗さと共に観察されうる。
【0140】
金属は合金を形成しうる。金属は固溶体を形成しうる。一態様では、エレクトラム様の合金が調製されうる。
【0141】
線幅は例えば1ミクロン〜500ミクロン、または5ミクロン〜300ミクロンでありうる。ナノスケールパターン形成方法を使用する場合、線幅は1ミクロン未満でありうる。
【0142】
線厚は例えば約1ミクロン以下、または約500 nm以下、または約300 nm以下、または約100 nm以下でありうる。
【0143】
ドットまたは円を作製することもできる。曲線構造を作製することができる。さらに、頂点を共有する多角形または多角形様構造、例えば頂点を共有する多面体を作製することもできる。
【0144】
一態様では、相当量の金属粒子、微粒子またはナノ粒子の形成なしで、インク調合物を金属線および金属膜に変換することができる。
【0145】
スパッタリングのような他の方法によって調製される金属および線の特性を有する金属線および金属膜を調製することができる。
【0146】
金属線および金属膜は例えば少なくとも90重量%が金属、または少なくとも95重量%が金属、または少なくとも98重量%が金属でありうる。
【0147】
AFM測定によれば、金属線および金属膜は相対的に平滑(<10 nm)でありうる。
【0148】
金属線および金属膜を使用して、電極または他の導電性構造などの構造を接合することができる。
【0149】
金属は、自然金属の仕事関数と実質的に同一の仕事関数、または、合金の場合には、金属の混合物を反映する仕事関数を有しうる。例えば、差は25%以下、または10%以下でありうる。
【0150】
線および格子を形成することができる。多層および多成分金属特徴を調製することができる。
【0151】
金-銀合金などのいくつかの合金は、いずれかの純金属単独での場合に比べて優れた輸送性および優れた基板に対する合金接着性を与えることができる。
【0152】
一態様では、金属構造は、国際公開公報第2004/020064号(Erlebacher)に記載の金属箔に比べてサイズが異なる。
【0153】
脱合金化、金属の除去
金属錯体およびそれらを使用する方法は、1種類の金属が他の金属から分離可能になるように選択することができる。脱合金化は、化学エッチングまたは電気化学的方法などの方法によって行うことができる。脱合金化は例えば国際公開公報第2004/020064号(Erlebacher)に記載されている。米国特許第4,977,038号(Sieradzki)も参照。
【0154】
脱合金化は、金属構造が基板上に配設される際に行うことができる。
【0155】
一態様では、除去工程は任意ではなく、実行される。
【0156】
一態様では、除去工程は化学的除去である。一態様では、除去工程は電気化学的除去ではない。
【0157】
多孔質金属材料を得るために、金属線を例えば選択的にエッチングして反応堆積物から第1の金属の一部または全部を除去することができる。2種類以上の元素金属の混合物から1種類の元素金属の一部または全部を除去するための方法は当技術分野において公知である。エッチングでは、エッチング温度は例えば約20℃〜約50℃でありうる。超音波処理のような方法を行って除去を強化することができる。
【0158】
エッチングは、無機酸または有機酸を含む酸の使用によって行うことができる。硝酸、硫酸または塩酸を例えば含む鉱酸を使用することができる。過塩素酸を使用することができる。単一の酸、または例えば王水を含む酸混合物を使用することができる。酸によって行われる場合のエッチングでは、酸の濃度は例えば3M以下または1M以下でありうる。
【0159】
別の態様では、塩化チオニルを使用することができる。
【0160】
一態様では、第1の金属を酸性水溶液との接触によって選択的に除去する。
【0161】
エッチング/脱合金化は、得られるナノ多孔質材料のインピーダンスの変化を引き起こしうる。結果として、ナノ多孔質材料は、インビボでの筋応答の刺激を例えば含む様々な生物学的用途に関して独自の電気的性質を示しうる。
【0162】
一態様では、エッチング/脱合金化によって、グルコースセンサを作製するために好適な金ナノ多孔質材料が得られる。
【0163】
ナノ多孔質材料
一態様では、ナノ多孔質材料は約100nm以下、または約50nm以下、または約25nm以下の平均孔径を有する。多孔度および他の性質は、SEMおよびBETを例えば含む当技術分野において公知の方法によって測定することができる。さらに、ナノ多孔質材料をナノインデンテーション法によって特性評価することができる。
【0164】
他の加工工程
一態様では、除去される銀などの第1の金属の少なくとも一部分は回収される。例えば、材料の少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%を回収することができる。
【0165】
一態様では、ナノ多孔質材料は化学吸着工程にさらに供される。例えば、化合物または材料を金属に化学吸着させることができる。例えば、チオールまたはジスルフィドなどの硫黄化合物を金などの第2の金属に化学吸着させることができる。例えば、受容体、リガンド、抗体、抗原、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む1つまたは複数の生体分子をナノ多孔質材料に直接的または間接的に化学吸着させることができる。中間層を金属と関心対象の生体分子との間で使用することができる。得られるナノ多孔質材料は、細胞培養、薬物送達、および抗原-抗体相互作用、受容体-リガンド相互作用またはDNA-DNA相互作用を例えば経由する試料からの1つまたは複数の分析物の検出を例えば含む様々な生物学的用途に使用することができる。
【0166】
一態様では、ナノ多孔質材料はさらに化学修飾される。例えば、結合時の光学的性質の吸収変化を通じた分析物の検出のために、材料を発光団で修飾することができる。
【0167】
一態様では、ナノ多孔質材料は金属プラズモン周波数モニタリングプロセスにおいてさらに使用される。
【0168】
準安定合金の態様
準安定合金を調製することができる。新たな形態への非熱力学的経路を用意することができる。言い換えれば、準安定相を形成することができる。一例は、水素吸蔵用の5倍対称性を有する準結晶である。
【0169】
用途
処理構造、および除去工程または脱合金化工程に供された処理構造の両方に、さらなる用途を見出すことができる。
【0170】
本明細書に記載の態様の1つの用途としては光学素子製作が挙げられる。そのような用途の例としては透明導電体または導波管が挙げられる。
【0171】
本明細書に記載の態様の1つの用途としては電子素子製作が挙げられる。そのような用途の例としては、有機光起電力素子およびエレクトロルミネッセンス素子を含む有機電子素子、電極、ならびに相互接続子が挙げられる。
【0172】
本明細書に記載の態様の1つの用途としては不均一系触媒作用が挙げられる。そのような用途の例としては水素化および酸化が挙げられる。
【0173】
本明細書に記載の態様の別の用途としては生体分析物検出が挙げられる。そのような用途の例としてはSERSが挙げられる。
【0174】
本明細書に記載の態様の別の用途としては構造材料としての用途が挙げられる。
【0175】
本明細書に記載の態様の別の用途としては、所望の輸送性を有する材料が挙げられる。例としては電極が挙げられる。
【0176】
本明細書に記載の態様の別の用途としてはITO代替材料としての用途が挙げられる。材料は導電性および透明でありうる。
【0177】
本明細書に記載の態様の別の用途としては、ガス拡散膜を含む燃料電池中での用途が挙げられる。
【0178】
本明細書に記載の態様の別の用途としては磁性材料としての用途が挙げられる。一例では、磁性材料は、ニッケルを含む金属合金である。
【0179】
本明細書に記載の態様の別の用途では、多孔質材料を他の材料の枠組みとして使用することができる。
【0180】
本明細書に記載の態様の別の用途では、生体分子と結合した多孔質金属材料を、試料から1種類または複数種類の分析物を検出するために使用することができる。
【0181】
本明細書に記載の態様の別の用途では、多孔質金属材料を、その独自の電気的性質が理由で、インビボで筋応答を刺激するために使用することができる。
【0182】
本明細書に記載の態様の別の用途では、多孔質金材料を、グルコースセンサを例えば含むセンサとして使用することができる。
【0183】
本明細書に記載の方法によって調製される材料を含む素子を調製することができる。
【0184】
さらなる選択される好ましい態様
一態様では、第1および第2の金属は銀、金、銅または白金であり、前駆体組成物は少なくとも1種類の溶媒をさらに含む。
【0185】
一態様では、第1および第2の金属は銀または金であり、前駆体組成物は少なくとも1種類の炭化水素溶媒をさらに含む。
【0186】
一態様では、第1および第2の金属は銀または金であり、前駆体組成物は少なくとも1種類の溶媒をさらに含み、堆積工程はインクジェット印刷を含み、処理工程は250℃未満の温度での加熱工程であり、任意の除去工程は化学エッチングによって行われる。
【実施例】
【0187】
機器構成および方法: SEM/EDX分析をPhilips XL-30 SEM上で行った。粉末X線回折分析を、Rigaku PXRD機械を使用して行った。インクジェット印刷をDimatixプリンタ上で行った。いくつかの実施例では、NMRを使用して構造を確認した。スピンコーティングをSCS G3P-8スピンコーターの使用によって行った。ドロップキャスティングをガラスまたはシリコン上でのピペットの使用によって行った。
【0188】
材料の供給源にはAldrich、Amresco、Fisher、STREMおよびVWRが含まれた。
【0189】
材料の精製: いくつかの実施例では、材料を濾過し、揮発物を減圧除去した。いくつかの実施例では、溶媒を水素化カルシウム上で蒸発させた。
【0190】
実施例1.
銀成分: (N-プロピルエチレンジアミンイソ酪酸銀)
イソ酪酸銀(米国特許出願第12/941,932号に記載のように調製)0.67g(3.4mmol)を集め、N
2下で攪拌した。これにN-プロピルエチレンジアミン4.2ml(34mmol)をガラスシリンジ経由で加えた。10分後、窒素下にて室温ですべての固体を溶解させて透明な均一溶液を得た。2時間後、過剰のN-プロピルエチレンジアミンを減圧除去して黄色の潮解性ワックス状固体を得た。100mg/mLトルエン溶液を作製し、0.45μmシリンジフィルターを通じて濾過してインク生成物を得た。
【0191】
実施例2. 金成分(テトラヒドロチオフェンイソ酪酸金)
テトラヒドロチオフェン塩化金(米国特許出願第12/941,932号に記載のように調製)1.88g(5.87mmol)をイソ酪酸銀(上記のように調製)1.37g(7.03mmol)に加え、トルエン30mL中で攪拌して白色懸濁液を形成した。この混合物を周囲条件(室温での大気)下で終夜攪拌して、灰色固体を伴う不均一黄色溶液を得た。固体を0.45μmシリンジフィルターによって除去し、揮発物を減圧除去して粘稠褐色油状物を得た。この油状物を100mg/mLトルエン溶液に希釈し、再度シリンジ濾過することで、インクを作製した。
【0192】
反応を以下に示す。
【0193】
実施例3. 前駆体組成物
濾過後、銀インクおよび金インクを室温で、所望の最終膜の金属化学量論組成と等しい容積比で混合した。肉眼による目視によって決定されたように、得られた組成物は均一混合物であった。スピンコーティングを行うと共に、スピン膜のEDXを行った。
【0194】
実施例4. 金属合金膜
ヘキサン/アセトン/IPAで洗浄され、オゾン処理されたリンドープシリコン上で、50:50金インク:銀インク(原子比)から作製した膜をスピンキャスティングした。膜を800、1500および5,000rpmでスピンさせ、250℃に20分間加熱した。
【0195】
実施例5: エッチング
実施例4において調製した800rpm膜および5,000rpm膜をそれぞれ3M HNO
3に終夜浸し、10分間超音波処理した。膜はエッチング後の増大した光透過性を示し、剥離が可能であった。
【0196】
実施例6: エッチング前の膜の分析
図1は、一態様を示し、インク金属化後の様々な金:銀比を示す。
【0197】
図2は、一態様を示し、60% Agおよび40% Au(原子比)のインクジェット印刷合金線のSEX/EDX(比較的低倍率)を示す。スペクトル処理: 省略ピークなし。処理オプション: 全元素を分析(正規化)。反復数 = 2。
【0198】
図3は、一態様を示し、60% Agおよび40% Au(原子比)のインクジェット印刷合金線のSEM/EDX(
図2に比べて高倍率)を示す。スペクトル処理: 省略ピークなし。処理オプション: 全元素を分析(正規化)。反復数 = 2。
【0199】
図4は、一態様を示し、20% Agおよび80% Au(原子比)のインクジェット印刷合金線のSEM/EDXを示す。スペクトル処理: 省略ピークなし。処理オプション: 全元素を分析(正規化)。反復数 = 2。
【0200】
図5A、
図5Bおよび
図5Cは、一態様を示し、原子比50% Agおよび50% Au(5C)、ならびに個々の金属Ag(5A)および金(5B)を含有するインクから得られる金属合金膜のPXRDによる構造特性評価を示す。銀および金は面心立方構造(FCC)で結晶化し、ほぼ同一の格子定数を有し、したがってこれらの金属の回折パターンは銀および金の結晶性膜の形成を裏付ける。
【0201】
図6Aおよび
図6Bは、一態様を示し、Auの、Agの、ならびに原子比50% Agおよび50% Auを含有するインクから得られる合金膜の回折オーバーレイを示す。オーバーレイプロットは、銀ピークと金ピークとの間の区域への合金ピークの移動を示す。合金が単一のピークおよびそのわずかに移動した位置を示すという事実は、AgおよびAu原子がFCC格子の周りにランダムに位置決めされた固溶体化学合金を示している。
図6Aは、
図6Bに比べて広いピークの範囲を示す。
図6Bにおけるより高い角度によってより良好な分解能が得られる。金トレースは赤色であり、銀トレースは青色であり、合金トレースは緑色である。
【0202】
実施例7: エッチング後の膜の分析
エッチング後、基板からの剥離がどれだけ生じたかについての測定を含め、膜を詳細に調べた。