【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、インクジェット装置用の均質化インクを得るための方法は、
インクジェットをそれぞれ均一な大きさのインク粒子に分割し、
少なくともいくつかのインク粒子に電荷を供給し、
インク粒子を偏向機器で導き、
所定量で偏向されたインク粒子を均質化粒子キャッチャーで収集し、
均質化粒子キャッチャーで収集されたインク粒子を印刷で使用する。
【0011】
好ましくは、各インク粒子は同一の電荷を有する。「各インク粒子」という語は、インクジェット装置用の均質化インクを得るために使用されるインク粒子のみを意味する。位相調整(phasing)で必要なインク粒子は、本発明に係る方法でわずかに帯電されるものであって、これを意味するものではない。下記の説明の通り、均質化インクを取得するために印刷及び位相調整に必要のないインク粒子を使用できるように、本発明に係る方法をCIJ印刷処理に組み合わせることができる。従って、「各インク粒子」という語は、これら最後に指定されたインク粒子(these last-named ink droplets)のみに関するものである。
【0012】
好ましくは、均質化粒子を得るために使用されるインク粒子の飛行距離は、CIJ印刷の場合よりも大きい。好ましくは、飛行距離は、50mmよりも長く、より好ましくは、70mmよりも長い。飛行経路が長くなり、かつ、偏向が大きくなるほど、均質化粒子キャッチャーで収集された均質化粒子の粒径画分が狭くなり、かつ、取得インクがより均質化される。
【0013】
好ましくは、均質化粒子キャッチャーで収集されたインク粒子は、中間容器に貯留される。
【0014】
インク粒子の非均質性がはっきりとした効果を有するために、好ましくは、インク粒子は、CIJ印刷よりも強く偏向される。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る装置は、
インクジェットを生成するための機器と、
超音波振動子及びノズルを備え、インクジェットをそれぞれ均一な大きさのインク粒子に分割するためのノズル部と、
少なくともいくつかのインク粒子に電荷を供給する電荷トンネルと、
それぞれ帯電されたインク粒子を偏向するための偏向機器と、
インク粒子の偏向されない飛行経路から所定距離離れて配置された均質化粒子キャッチャーと、を備える。
【0016】
好ましくは、偏向機器は、インク粒子を偏向するために、静電界又は静磁界を生成する。
【0017】
好ましくは、この装置は、均質化粒子キャッチャーで収集されたインク粒子を貯留するための中間容器を備える。
【0018】
この装置は、均質化インクを取得するため、及び、均質化インクを使って面を印刷するための双方に使用できる。そのため、この装置は、印刷面を有する基板を保持及び案内するための機器と、印刷に必要のない偏向されないインク粒子を収集するように配置された粒子キャッチャーと、を備える。
【0019】
好ましくは、印刷面を有する基板を保持及び案内するための機器、及び、均質化粒子キャッチャーは、偏向されないインク粒子用の粒子キャッチャーの反対側に配置される。特に、印刷面を有する基板を保持及び案内するための機器は、偏向されないインク粒子用の粒子キャッチャーの上方に配置され、さらに、均質化粒子キャッチャーは、偏向されないインク粒子用の粒子キャッチャーの下方に配置される。
【0020】
本発明に係る均質化装置は、実質的に、従来のインクジェットプリントヘッドと同じ構成を備えており、一つだけの均質化粒子キャッチャーが、偏向されない飛行経路の外側に設けられており、その結果、所定量だけ偏向されたこれらインク粒子だけが収集される。このインクジェットプリントヘッドは、多偏向CIJ印刷(multi-deflection CIJ printing)又は二元CIJ印刷(binary CIJ printing)用とすることができる。多偏向CIJ印刷では、一連の個々のインク粒子が、単一のノズル開口部を有するプリントヘッド手段によって生成され、印刷面に衝突するインク粒子の位置が、偏向の程度によって制御され、粒子の電荷によって制御される。二元CIJ印刷では、多数、例えば192又は256のノズル開口部を有するプリントヘッドによって、多数のインクジェット、即ち、一連のインク粒子が生成され、そして、印刷面に衝突するインク粒子の位置が、プリントヘッドの所定のノズル開口部の位置によって決定され、文字を印刷するか、空白を印刷するかに応じて、全てのインク粒子が、電荷を受けないか、同一の電荷を受けるかする。
【0021】
本発明に係る方法では、先ず、所定の粘性度及び伝導率を有する未処理のインクを準備する。このインクから、インクジェットを生成し、超音波振動子及びノズルによって、それぞれ均一な大きさのインク粒子に分割する。電荷装置を介して、インクジェットに電荷を与え、その結果、インクジェットから分離した各粒子は電荷を有する。偏向機器は、帯電された粒子を元の飛行経路から偏向して、インク粒子を均質化粒子キャッチャーへ案内する。均質化粒子キャッチャーの位置に対応して偏向された粒子だけが、均質化粒子キャッチャーで受け取られ、中間容器へ運ばれる。インクが不均質又は不純であることによって、所定値と異なって偏向した粒子は、均質化粒子キャッチャーに衝突せず、さらに、中間容器に運ばれないので、その結果、インクの均質化成分と不均質化成分とを効果的に分離できる。最適に形成され、不均質又は不純でない粒子だけが、中間容器に収集される。粒子に分解されたインクは、高い直線性及び繰り返し精度を有しているので、非常に鮮明な活字書体を得ることができる。
【0022】
均質化粒子キャッチャーで受け取られなかったインク粒子は、偏向プレートに衝突して、垂れて、分離収集容器に収集される。好ましくは、偏向プレートは、粒子の飛行方向において、均質化粒子キャッチャーと反対に配置される。収集容器に収集されたインクは、リサイクルされて、再度、均質化装置に送ることができる。
【0023】
実際には、連続するインク粒子は、静電界によって、及び、特にスリップストリーム効果によって、互いの飛行経路に影響を与えるという問題がある。たとえ粒子が同一の電荷/質量比を有していても、後ろのインク粒子は、前のインク粒子のスリップストリームによって、より強く偏向される。後ろの粒子は、スリップストリームによってより高速になり、先の粒子を追い越すことができる。特に均質化処理の初期において、これらは乱す作用(disruptive effect)がある。その後、バランスがとられて、同一の電荷/質量比を有する全てのインク粒子が、同一の経路に偏向される。CIJ印刷処理のように、温度変化、圧力変化、及び、同様の運転パラメーターを補完し、かつ、位相調整を行うために、本発明に係る均質化処理は、数秒の短い間隔で調整される。各調整の後に、均質化処理が再スタートし、そして、再度、バランスがとられるまで、待機する必要がある。頻繁な中断が原因であり、特に、均質化処理を再スタートするときに生じるスリップストリーム効果が乱れ作用を奏する。
【0024】
インク粒子の相互作用を補償するために様々な方法がある。最も簡単な解決方法は、インク粒子の安定した飛行経路、即ち、電荷による初期の乱れ、及び、スリップストリーム効果が減少するときに、インク粒子が衝突する場所に、均質化粒子キャッチャーを配置することである。この解決方法の欠点は、始めの約5〜8粒子が、整合性に関係なく、均質化粒子キャッチャーに衝突せず、さらに、始めに必要以上のインクが処分されるというように、生産性が減少することである。この場合、始めに処分されたインク粒子を収集して、再度、均質化装置に供給することが好ましい。
【0025】
さらに、各インク粒子の電荷は、実験的に決定され、そして、飛行するインク粒子の数に応じて制御される。インク粒子の飛行経路が安定するまで、インク粒子の電荷は連続的に減少する。この方法では、インク粒子は喪失しないが、追加的な非線形制御が必要となり、それによって、装置の運転及びメンテナンスがさらに高価になる。
【0026】
さらに別のものでは、非常に高く帯電されたインク粒子と、帯電されないか、わずかに帯電されたインク粒子と、を交互に生成する。非常に高く帯電されたインク粒子間の距離は、互いに干渉しないほど、非常に大きい。非常に高く帯電されたインク粒子間の距離を大きくするために、3番目、4番目などのインク粒子ごとに非常に高く帯電することもできる。この方法では、生産性は、同様に非常に減少するが、非常に高く、かつ、最も安定した分離効果を得ることができる。そして、わずかに帯電された粒子を位相調整に使用することができる。
【0027】
さらに、インク粒子を異なる分極の電荷で負荷することもできる。インク粒子は、(図の配置における)上方及び下方に偏向されるので、その結果、連続するインク粒子の飛行経路の相互作用は生じない。しかし、反対に分極されたインク粒子を受け取るための別の均質化粒子キャッチャーを設けなければならない。
【0028】
インク粒子の飛行経路の相互作用を避けるための各方法を、最適化のために、それぞれ組み合わせることができる。
【0029】
帯電されたインク粒子は、電荷/質量比に従って偏向される。電荷/質量比は、均質化粒子キャッチャーの位置、インク圧、帯電電圧、偏向電圧、さらに、電荷トンネルから均質粒子キャッチャーまでの距離によって、設定できる。均質化装置の分離効果は、電荷トンネルと均質化粒子キャッチャーとの間の距離、さらに、偏向場の強さによって、決定できる。
【0030】
インク粒子に加わる電荷は、排出ノズルと離脱点(break-off point)との間におけるインクの伝導率によって決まる。この領域におけるインクの伝導率が変化すると、インク粒子は異なって帯電される。離脱点の位置は、インクの速度又は圧力、かつ、ノズルの駆動電圧によって決まる。インクの不均質化によって生じる粘性度及び表面張力が局所的に変化すると、離脱点の長さが変化し、そして、関係するインク粒子の電荷が変化する。
【0031】
偏向場を、一以上の高圧電極によって生じる静電界とすることができる。しかし、インク粒子の偏向を、磁界によっても実現できる。
【0032】
インクの長期的な安定性によって、インク製造の段階で、又は、印刷の直前で、均質化処理を行うことができる。インクが長期的な安定性を有していると、インク製造の間に均質化を行い、最終インク製品を使用者に提供できるという利点がある。
【0033】
さらに、使用者のインク装置における均質化装置によってインクを製造でき、そして、インクを均質化粒子キャッチャーから中間容器へ運び、そこから、プリントヘッドで印刷用のインクを汲み上げる。この構成におけるインクは、「要求に応じて」("on demand")、即ち、プリントヘッドがインクを必要とするときだけ、製造されるので、所定のリードタイム(lead time)を必要とし、その間に均質化装置が必要なインクを製造する。
【0034】
プリントヘッドを印刷装置及び均質化装置の双方として使用することもできる。そのために、プリントヘッドは、従来の粒子キャッチャーに加えて、均質化処理を行うための均質化粒子キャッチャーを必要とする。休止期間中、プリントヘッドは、第1の容器から未処理のインクを汲み上げ、このインクの均質化を行い、そして、ろ過されたインクを中間容器に導く。印刷のために、プリントヘッドは、ろ過又は均質化されたインクを中間容器から汲み上げる。この組み合わせた実施形態の利点は、同一のプリントヘッドを、印刷とインクの均質化との双方に使用できることである。既に均質化処理されたインクを、プリントヘッドによって、所定の電荷/質量比のインク粒子に形成することができ、次の印刷処理で、再度、均一のインク粒子に分解することもできる。この実施形態では、負に帯電された粒子が、印刷に使用され、かつ、必要に応じて、従来の粒子キャッチャーに衝突する一方、正に帯電された粒子が、均質化に使用され、かつ、均質化粒子キャッチャー又は偏向プレートに衝突するように、粒子を交互に反対に帯電させることができる。
【0035】
一般的に、均質化装置のノズル部は、インクジェット装置の書き込みヘッドのものと同一の構成である。均質化装置のノズルの直径は、書き込みヘッドで使用されるノズルの直径と同一か小さく、そして、均質化装置の動作周波数は、書き込みヘッドの動作周波数と同一か大きくなっている。この方法において、均質化されたインクが、確実に、インクジェット装置の書き込みヘッド内で均質化インク粒子を形成し、その結果、より鮮明な活字書体となる。
【0036】
本発明では、使用するインクの均質化を向上することによって、高品質の活字書体を得ることができるという利点がある。さらに、インクを広い調整範囲で容易に使用できる。
【0037】
さらに、染料インクよりも低く均質化された顔料インクを有するのものであっても、CIJ印刷に最も適した安定インク組成を得ることができる。どの顔料でも顔料インク用に使用できる。好ましくは、TiO
2顔料が用いられる。一般的に、CIJ装置用の顔料の直径は、0.5〜2μmである。通常、インク粒子の大きさは、50〜120μmである。従って、一般的なろ過がされていない顔料インクは、ガウス分布液に対応する。即ち、インクに溶解した顔料の粒度分布は、ほぼガウス分布に対応する。顔料の大きさが、各インク粒子の化学的及び物理的特性に影響を及ぼすので、本発明に係る均質化装置によって、ガウス分布の顔料から選ぶことができ、そのバンド幅と共に、その電荷/重量比が正確に予め決定される。
【0038】
インクに漂う粒子は、塊になりがちである。このような塊は、粒子の形成を妨げ、活字書体を劣化する。インクは、印刷処理の前に本発明に係る均一化処理を通過するので、確実に、印刷用のインクを均一な大きさの粒子に形成し、さらに、均質化処理と印刷処理との間が短い時間なので、インク中に乱れた塊が全く生じない。
【0039】
好ましくは、均質化装置は、均質化粒子キャッチャーの位置及び電荷トンネルの制御に関係なく、使用されるインクのプリントヘッドと構成的に実質同一である。この方法によって、印刷処理の間に、周囲条件の下で最適な粒子を確実に形成できる。