特許第6204469号(P6204469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204469還元および/または酸化された生成物流を発生させるためのオゾン分解操作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204469
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】還元および/または酸化された生成物流を発生させるためのオゾン分解操作
(51)【国際特許分類】
   C07C 27/00 20060101AFI20170914BHJP
   C07C 51/16 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 45/40 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 55/18 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 69/34 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 67/313 20060101ALI20170914BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170914BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20170914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C07C27/00 350
   C07C51/16
   C07C45/40
   C07C47/02
   C07C55/18
   C07C69/34
   C07C67/313
   H01M8/10
   H01M8/04 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-523292(P2015-523292)
(86)(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公表番号】特表2015-529647(P2015-529647A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】US2013051357
(87)【国際公開番号】WO2014015290
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/784,376
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/673,411
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514237758
【氏名又は名称】ピー2 サイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フォーリー
(72)【発明者】
【氏名】ヨンファ ヤン
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0276165(US,A1)
【文献】 特開昭55−089241(JP,A)
【文献】 ALLISON MAGGIOLO,Ozonization of Fatty Acids and Their Derivatives,THE JOURNAL OF THE AMERICAN OIL CHEMISTS' SOCIETY,1963年,Vol. 40,161-164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 27/00
C07C 45/40
C07C 47/02
C07C 51/16
C07C 55/18
C07C 67/313
C07C 69/34
H01M 8/04
H01M 8/10
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸または脂肪酸エステルを含む出発材料をオゾンと反応させてオゾン化された生成物流を形成すること;
このオゾン化された生成物流を一部還元して、直鎖アルキルアルデヒドを含む一部還元された生成物流を形成すること;
この一部還元された生成物流の少なくとも一部を酸化して、二酸と酸エステルの少なくとも1つを含む酸化された生成物流を形成すること;及び
二酸と酸エステルの少なくとも1種と直鎖アルキルアルデヒドとの組み合わせを含む生成物流を得ること
を含む、オゾン分解方法。
【請求項2】
(a)酸素と水素を用意すること、ここで前記酸素は電気的に処理されてオゾンを生成し、前記オゾンは、オゾン反応装置の中での脂肪酸または脂肪酸エステルのオゾン分解に用いる;
(b)脂肪酸または脂肪酸エステルを前記オゾン反応装置に入れること、ここでその反応装置の中で脂肪酸または脂肪酸エステルが前記オゾンを吸収することで、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、エステル、酸から選択される1種類以上の化合物を含有するオゾン化された生成物流を含む混合物を形成する;
(c)i.そのオゾン化された生成物流を水素化反応装置に入れてそのオゾン化された生成物流の一部を還元することで、一部が還元された生成物を生成させ、この一部が還元された生成物を水と接触させることで、直鎖アルキルアルデヒドを含む有機相を含む2を含む混合物を形成し;
ii.前記有機相を分画して、残った有機相から直鎖アルキルアルデヒドを分離し;
iii.工程(ii)での分画の後に残った前記有機相を酸化反応装置に入れてその残った有機相を酸化して、二酸または酸-エステルを含む酸化された生成物を生成させることにより、
前記オゾン化された生成物流から、前記直鎖アルキルアルデヒドを含む前記一部が還元された生成物と、前記二酸または酸-エステルを含む前記酸化された生成物とを生成させること
を含み、前記オゾン化された生成物流から、前記直鎖アルキルアルデヒドと、前記二酸とを生成させる方法。
【請求項3】
素を前記水素化反応装置に連続的に流し、オゾン化された生成物流を含む前記混合物の一部を還元する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機相の前記分画化を蒸留またはイオン交換によって実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
記残った有機相画分が、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含み、この方法が、そのオキソ-酸またはオキソ-エステルを蒸留する操作をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
さらに蒸留した前記オキソ-酸またはオキソ-エステルを前記酸化反応装置に入れて前記二酸または酸-エステルを生成させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記二酸または酸-エステルを含む前記酸素化された生成物のさらなる蒸留、または沈殿、または抽出により、純粋な二酸または酸-エステルを生成させる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記オゾン反応装置と前記酸化反応装置の一方または両方からの未使用の酸素をすべて、オゾン、水、電気、またはこれらの組み合わせを発生させるための燃料としてリサイクルする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化反応装置からの未使用の水素をすべて工程(a)にリサイクルし、または水、電気、またはこれらの組み合わせを発生させるための燃料として使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
酸化または還元を容易にするための触媒をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が金属触媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪酸または脂肪酸エステルを前記オゾン反応装置に導入して、ノナン酸と、水と、これらの混合物から選択した溶媒の中に入れる、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素をリサイクルし、揮発性成分が実質的に除去された有機媒体を通過させる、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素を、揮発性の軽い有機材料のない反応装置、または不揮発性の重い有機材料からなる反応装置を通過させた後にリサイクルする、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸素と前記水素を水と電気から生成させる、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
燃料電池と水素燃焼ガスタービンからなるグループから選択した電源で前記電気を発生させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記燃料電池を、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、プロトン交換膜(PEM)燃料電池からなるグループから選択する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オゾンを生成させるための電気分解装置をさらに備えていて、その電気分解装置がPEM加水分解電気分解装置である、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、2012年7月19日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第61/673,411号と2013年3月14日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第61/784,376号の恩恵と優先権を主張する。これら出願それぞれの内容は、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれている。
【0002】
この明細書に開示した実施態様は、1つの連続プロセス中に還元的オゾン分解プロセスと酸化的オゾン分解プロセスの両方を含む統合されたプロセスが関係するオゾン分解プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
オゾン分解は、非常に原子効率のよい酸化的変換であり、オゾン分子からの3個の酸素原子のうちの2個が生成物に組み込まれる。オゾンは生成が容易でオレフィンの酸化的開裂の効率がよいため、多彩な用途(例えば化学製品の製造、水の殺菌)で使用されている。
【0004】
オゾン分解は、化学製品の製造に用いるときには、生成物を分離する前に、反応混合物の中に存在する過酸化物および/またはオゾン化物を破壊する第2の工程を必要とする。酸化的オゾン分解の場合には、酸素(O2)の存在下で過酸化物をさらに加熱して酸化し、カルボン酸生成物を含む生成物を生成させる。還元的オゾン分解の場合には、水素(H2)を用いた還元条件下で過酸化物とオゾン化物を分解し、主要生成物としてカルボニルおよび/またはアルコールを得る。
【0005】
あらゆるオゾン分解プロセスは、オゾンを発生させるのに電気と酸素を必要としており、還元的オゾン分解の場合には、水素も使用することができる。歴史的には、工業用酸素の製造は、主に空気の蒸留またはゼオライト処理によってなされてきた。その一方でH2は、天然ガスの改質で製造されてきた。Cooke, S.J.、「工業用ガス」、『工業用の化学とバイオテクノロジーに関するケントとリーゲルのハンドブック』、第11版、第27章、1215ページ(2007年);Hiller, H.、「ガス製造:はじめに」、『工業用化学に関するウルマンの百科事典』、第16巻、403ページ(2012年)を参照のこと。しかしより最近になり、プロトン交換膜(PEM)を用いた水(H2O)の電気分解も酸素と水素を発生させる一般的な方法になってきた。水の電気分解では酸素1モルごとに水素が2モル発生するため、還元的オゾン分解プロセスのための出発材料を得るのに非常に好都合である。というのも、両方のガスがそのようなプロセスでは必要とされるからである。
【0006】
酸素の供給源が何であれ、オゾン分解プロセスのためのオゾンを発生させるには酸素を電気で処理せねばならない。その後、そのオゾンは、酸素流の中の0.1〜20%混合物としてオゾン反応装置へと運ばれる。オゾン分解反応の間はオゾンだけが消費されるため、酸素は、廃棄するか、リサイクルするか、別の目的に使用する必要がある。酸素の製造にはコストがかかるため、好ましい選択肢は、連続的なオゾン生成のためにコロナ放電技術を用いて酸素をリサイクルすることであった。Vezzu, G.他、IEEE Transactions on Plasma Science、第37巻、第6号、890〜896ページ(2009年)参照。
【0007】
この方法は比較的効率がよいとはいえ、リサイクルされる酸素流の有機汚染物を原因とした爆発に伴う災害がある。そこでこのリスクを管理するため、多数の凝縮器および/または沈殿装置および/またはフィルタが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
災害を減らすことに加え、オゾンを発生させる際の電気のコストも大きな出費であるため、オゾン発生プロセスのためのクリーンかつ効率的な電源があると望ましかろう。燃料電池と水素燃焼ガスタービンの両方が、そのような解決法を提供する。燃料電池とガスタービンは、水素と酸素を用いて電気を発生させることができ、反応生成物は水と熱である。燃料電池では周囲の空気からの酸素を使用できるが、燃料電池は、高純度の酸素と水素の存在下において最適の効率で作動する。Buchi, F.N.他、「自動車のH2/ O2 PE燃料電池システム」、第3回欧州PEFC、セッションB09(2005年7月7日木曜日)を参照のこと。現在のオゾン分解プロセスの欠点は、本発明によって解決される。この明細書に開示する本発明では、オゾン分解プロセスを調節することで、電気分解プロセスで発生する過剰な酸素と水素を用いて燃料電池またはガスタービンを効率的に作動させることができるため、単一経路システムでオゾンを発生させる場合に必要な正味の電気が大きく相殺される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水素化および/または酸化されたオゾン化生成物を生成させるためにオゾン分解を実施することに関する。本発明は、特に、1つの連続プロセス中に還元的オゾン分解プロセスと酸化的オゾン分解プロセスの両方を統合することにより、直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)と、二酸(例えばアゼライン酸)または酸-エステル(例えばアゼライン酸モノメチル)とを生成させるためのオゾン分解プロセスに関する。本発明は、ガス(例えば水素と酸素)を安全および/または効率的に取り扱う方法にも関する。一実施態様では、電気分解を利用してオゾン分解プロセスのためのガスを発生させることで、コロナ放電を通じて酸素をリサイクルする必要性を最少にする。そのような一実施態様では、オゾン分解プロセスの終わりに燃料電池またはガスタービンを通じて水素および/または酸素を再利用することができる。別の一実施態様では、水素および/または酸素を、これらのガスが役立つ他の任意の操作で使用することができる。
【0010】
一実施態様では、本発明により、任意の供給源からの酸素と水素を用いるオゾン分解プロセスが提供される。このプロセスでは、酸素は、オゾンを発生させるための試薬として使用でき、オゾンはその後、オゾン反応装置の中で脂肪酸および/または脂肪酸エステルのオゾン分解に使用することができる。一実施態様では、酸素および/または水素は、電気的手段によって、または他の任意の加水分解手段によって発生する。別の実施態様では、酸素および/または水素は、他の任意の手段、例えば空気の蒸留または天然ガスの再生によって発生する。
【0011】
この明細書に記載した1つの方法では、脂肪酸および/または脂肪酸エステルをオゾン反応装置に入れると、その中で脂肪酸および/または脂肪酸エステルがオゾンを吸収してオゾン化された生成物流を形成する。本発明のいくつかの要素によれば、オゾン化された生成物流は、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、酸、エステルや、これらの任意の組み合わせを含んでいる(含まれるのは、ここに例示したものに限定されない)。本発明によれば、オゾン化された生成物流を用い、水素化された生成物(例えば直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)および/または酸化された生成物または酸素化された生成物(例えば二酸または酸-エステル))を生成させることができる。
【0012】
一実施態様では、本発明により、オゾン反応装置を用いるオゾン分解プロセスが提供されるが、それだけに限定されない。例えばオゾン反応装置は、バッチ反応装置、連続撹拌タンク反応装置、ループ反応装置、プラグ流型反応装置、固定床型反応装置のいずれかである。一実施態様では、バッチ反応装置、連続撹拌タンク反応装置、ループ反応装置のいずれかが、オゾン分解工程で用いられる。一実施態様では、プラグ流型反応装置または固定床型反応装置が、水素化工程で用いられる。
【0013】
本発明の実施態様によれば、オゾン化された生成物流は、その一部を水素化反応装置の中で還元することができ、水素化された生成物(例えば直鎖アルキルアルデヒド)が生成する。一実施態様では、アルデヒド類を含むその混合物は、水素化反応装置を去るときに二相層(一方の相は有機相)を形成する。次に、有機相を蒸留またはイオン交換によって分画して2つ以上の画分にすることができる。そのとき画分の1つは、直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)を含んでいる可能性がある。
【0014】
次に、直鎖アルキルアルデヒドを含まない有機相画分を酸化反応装置の中で酸化して酸化生成物(例えば二酸または酸-エステル)を生成させることができる。一実施態様では、この(例えば「残った」)有機相画分はオキソ-酸またはオキソ-エステルを含んでおり、それを最初に蒸留し、次いで酸化反応装置の中で酸化する。一実施態様では、蒸留されたオキソ-酸の酸化によって二酸が生成する。
【0015】
別の一実施態様では、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含む有機相画分を最初に酸化反応装置の中で酸化した後、蒸留および/または沈殿および/または抽出によって二酸またはエステル(例えば酸-エステルとジエステル)を生成させる。一実施態様では、生成した二酸は、純度が少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%のいずれかである。
【0016】
本発明により、水素ガスを水素化反応装置に流し、オゾン分解反応装置の中で脂肪酸の反応から生成したオゾン化された生成物流の一部を還元する。一実施態様では、水素を水素化反応装置に連続的に流す。
【0017】
一実施態様では、酸素を酸化反応装置に流して残った有機相画分(さらに蒸留した有機相画分、またはそれ以上蒸留していない有機相画分)を酸化し、二酸または酸-エステルを生成させる。オゾン反応装置と酸化反応装置の一方またはその両方からの未使用の酸素または過剰な酸素はすべて、オゾン、水、電気、またはこれらの任意の組み合わせを発生させるための燃料としてリサイクルすることができる。
【0018】
本発明のいくつかの実施態様では、水素化反応装置からの未使用の水素はすべて、例えば水と電気の一方または両方を発生させるための燃料としてリサイクルすることができる。
【0019】
一実施態様では、オゾン分解プロセスは、オゾン化された生成物流を容易に酸化する触媒を含むことができる。一実施態様では、触媒として金属触媒が可能である。
【0020】
本発明により、装置(例えば燃料電池または水素燃焼ガスタービン)の中で電気を発生させることができる。一実施態様によれば、燃料電池として、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、プロトン交換膜(PEM)燃料電池のいずれかが可能である。
【0021】
いくつかの実施態様では、本発明により、オゾンを発生させるための電気分解装置が提供される。電気分解装置として、PEM加水分解電気分解装置が可能である。
【0022】
別の一実施態様では、本発明のオゾン分解プロセスは、酸化的プロセスと還元的プロセスの両方を含むことができる。いくつかの実施態様では、オゾン分解プロセスで用いる酸素と水素は、水と電気から発生させることができる。
【0023】
本発明により、酸化的オゾン分解プロセスも提供される。このプロセスでは、オゾンを発生させるための試薬として酸素を用いることができる。次に、発生したオゾンを用い、オゾン反応装置の中で脂肪酸からオゾン化された生成物流を生成させることができる。脂肪酸をオゾン反応装置の中に入れると、その中で脂肪酸が酸素流および/またはオゾン流からのオゾンを吸収し、オゾン化された生成物流を形成することができる。このオゾン化された生成物流は、オゾン化物、および/または過酸化物、および/またはアルデヒド、および/または酸、および/またはエステルを含んでいる可能性がある。次に、このオゾン化された生成物流を酸化反応装置に入れると、その中では酸素を連続的に流してオゾン化された生成物流を酸化することができる。
【0024】
本発明の一実施態様では、酸化反応装置の中を流れる酸素は、オゾン化物の同時熱分解とオゾン化された生成物(例えばアルデヒド)の酸化のための酸化環境を作り出すことができる。
【0025】
本発明により、オゾンの生成中および/またはオゾン化された生成物流の酸化中に残った酸素をすべて用いて水および/または電気を発生させることもできる。いくつかの実施態様では、本発明により、酸素をリサイクルして水および/または電気を発生させるとき、オゾン反応装置に酸素をまったくリサイクルせず、オゾン分解プロセスで実質的にすべての酸素、またはすべての酸素を用いるようにできる。
【0026】
別の一実施態様では、酸化的オゾン分解プロセスにおいてオゾンの生成とオゾン化された生成物流の酸化の一方または両方で使用されなかったすべての酸素を、蒸留塔を通過させた後にオゾン反応装置にリサイクルすることができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施態様の酸化的オゾン分解ブロセスでは、オゾン化された生成物流の酸化は、酸化を容易にする触媒を含んでいる。本発明の一実施態様によれば、触媒として金属触媒が可能である。
【0028】
いくつかの実施態様では、酸化的オゾン分解で用いる電気は、装置(例えば燃料電池、水素燃焼ガスタービン)を用いて発生させることができる。
【0029】
本発明の一実施態様では、酸化的オゾン分解の間、脂肪酸をオゾン反応装置に導入し、ノナン酸、グリセロール、水、またはこれらの任意の組み合わせから選択した溶媒の中に入れることができる。
【0030】
本発明の一実施態様により、酸素、水素、オゾンを単一の工程で発生させることができる。オゾンの生成に用いる酸素は、有機媒体を通過させてリサイクルすることができる。なおその有機媒体は、揮発性成分が実質的に除去されている。別の実施態様では、オゾンの生成に用いる酸素、またはオゾン化された生成物流の酸化に用いる酸素は、揮発性の軽い有機材料が存在しない反応装置、または不揮発性の重い有機材料だけからなる反応装置を通過させた後にリサイクルすることができる。
【0031】
一実施態様では、本発明により、酸化的オゾン分解プロセスを統合した還元的オゾン分解プロセスが提供される。このプロセスでは、オゾンを生成させるための試薬として酸素を使用でき、オゾン反応装置の中でそのオゾンを用いて脂肪酸からオゾン化された生成物流を発生させることができる。この実施態様では、脂肪酸をオゾン反応装置の中に入れると、その中で脂肪酸が酸素流および/またはオゾン流からのオゾンを吸収し、オゾン化された生成物流を形成することができる。次に、オゾン化された生成物流を連続的に水素化反応装置に移して水素化する。この水素化反応装置では、水素流がオゾン化された生成物流を還元し、アルデヒドが豊富な生成物を生成させることができる。その後、還元されたオゾン化された生成物流を蒸留し、アルデヒドが豊富な生成物(例えば直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール))を生成させることと、二酸および/または酸-エステルを生成させることができる。
【0032】
還元的オゾン分解プロセスの一実施態様では、還元工程で残った未使用の水素はすべて、水と電気を発生させるのに用いたり、水素を使用するか必要とする他の任意の操作(例えば下流処理)で使用したり、他の水素化操作で使用したりする。電気は、本発明の還元的オゾン分解プロセスの一実施態様では、燃料電池や水素燃焼ガスタービンといった電源で発生させることができる。
【0033】
本発明により、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解を含むオゾン分解プロセスも提供される。一実施態様では、還元的オゾン分解は、酸化的オゾン分解の前に起こる。一実施態様では、本発明の方法は、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解の前にオゾンを発生させる操作をさらに含んでいる。一実施態様では、発生したオゾンを脂肪酸と反応させてオゾン化された生成物を生成させる。
【0034】
一実施態様では、本発明のプロセスは、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解の前に脂肪酸とオゾンと反応させてオゾン化された生成物を生成させる操作をさらに含んでいる。一実施態様では、脂肪酸とオゾンの反応は、溶媒(例えばノナン酸、グリセロール、水、またはこれらの組み合わせ)を含んでいる。
【0035】
一実施態様では、オゾン化された生成物は、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、酸のいずれかを含んでいる。
【0036】
一実施態様では、オゾン化された生成物を還元的オゾン分解プロセスで還元する。一実施態様では、還元された生成物はアルデヒドを含んでいる。一実施態様では、還元的オゾン分解は、触媒(例えば金属触媒)を含んでいる。一実施態様では、還元的オゾン分解は、水素ガスを含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の水素ガスをすべてリサイクルする。
【0037】
一実施態様では、還元された生成物は二相液体層を形成する。一実施態様では、本発明のプロセスは、二相液体層から有機相を分離する操作をさらに含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、有機相を精製(例えば蒸留とイオン交換)してアルデヒドを得る操作をさらに含んでいる。一実施態様では、アルデヒドは直鎖アルデヒドである。
【0038】
一実施態様では、オゾン化された生成物を酸化的オゾン分解プロセスで酸化する。一実施態様では、酸化された生成物は二酸を含んでいる。一実施態様では、酸化的オゾン分解プロセスは、触媒(例えば金属触媒)を含んでいる。一実施態様では、酸化的オゾン分解プロセスは、酸素を含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の酸素をすべてリサイクルする。
【0039】
本発明により、1)脂肪酸をオゾンと反応させてオゾン化された生成物を生成させ;2)そのオゾン化された生成物を還元的オゾン分解で還元して還元された生成物を生成させ;3)その還元された生成物からアルデヒドを分離し;4)その還元された生成物を酸化して酸化された生成物を生成させ;5)その酸化された生成物から二酸または酸-エステルを分離する操作を含むオゾン分解プロセスも提供される。一実施態様では、本発明のプロセスは、工程1)の前にオゾンを発生させる操作をさらに含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の水素ガスをすべてリサイクルする。別の一実施態様では、工程4)は酸素を含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の酸素をすべてリサイクルする。
【0040】
本発明により、この明細書に記載したハイブリッド式オゾン分解プロセスによって調製した、一部が還元された生成物および/または酸素化された生成物も提供される。一実施態様では、本発明の方法によって生成される生成物は、直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸である。
【0041】
特に断わらない限り、この明細書で用いるあらゆる技術用語と科学用語は、本発明が関係する分野の当業者が一般に理解している意味を持つ。この明細書では、文脈に明示されている場合は別にして、単数形に複数形も含まれる。本発明を実施または試験するにあたって、この明細書に記載した方法および材料と同様または同等の方法および材料を使用できるが、適切な方法と材料を以下に記述する。それに加え、材料、方法、実施例は単なる例示であり、本発明がそれに限定されることはない。
【0042】
本発明の他の特徴と利点は、詳細な説明と請求項から明らかになろう。
【0043】
本発明を理解し、それが実際にどのようにして実行されるかを示すため、添付の図面を参照しながら、非限定的な例によって実施態様をこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】オレイン酸のハイブリッド式オゾン分解によって二酸と直鎖アルキルアルデヒドを生成させる代表的なスキームを示す。オレイン酸は単なる一例として用いた。
図2】還元的オゾン分解プロセスと酸化的オゾン分解プロセスのハイブリッドを通じたガス流の代表的なスキームを示す。この図にI〜IVで示した実線の矢印と、反応装置CとDから出て行く実線の矢印は、有機反応物質と生成物の流れを表わす。
図3】いくつかのハイブリッド式オゾン分解実験で用いる藻類脂肪酸メチルエステルに関するフレームイオン化検出装置のガスクロマトグラフィ(GC FID)のトレースを示す。表示されている表は、遊離脂肪酸の組成を示している。
図4】実施例3に記載した還元後の有機相のGC FIDトレースを示す。ノナナールのピークが約6.4分の位置、内基準が約12.8分の位置、ノナン酸が約14.1分の位置にあることに注意されたい。
図5】実施例3に記載した藻類脂肪酸のハイブリッド式オゾン分解から回収した蒸留液のGC FIDトレースを示す。積分から、約6.4分の位置にあるピークで表わされるノナナールが97%超であることが示唆される。
図6】実施例3に記載した、蒸留と、メチルエステルとジメチルアセタールの誘導体化の後に回収された重い残留物のGC FIDトレースを示す。左から右に、ノナノールジメチルアセタール(5.364分)、ノナン酸メチルエステル(5.608分)、アゼルアルデヒド(すなわち9-オキソノナン酸)メチルエステル(9.996分)、アゼルアルデヒドメチルエステルジメチルアセタール(10.214分)、アゼライン酸ジメチルエステル(10.508分)、パルミチン酸メチルエステル(10.982分)ステアリン酸(13.087分)である。
図7】メチルエステルの誘導体化の後にハイブリッド式オゾン分解プロセスから得られたアゼライン酸のGC FIDトレースを示す。積分から、ノナナールが97%超であることが示唆される。
図8図5に示したノナナールの1H NMRを示す。CDCl3を溶媒として用いた。
図9図7に示したアゼライン酸の1H NMRを示す。CDCl3を溶媒として用いた。
図10】メチルエステルの誘導体化の後にハイブリッド式オゾン分解プロセスから得られたブラシル酸モノメチルのGC FIDトレースを示す。積分から、ブラシル酸モノメチルが96.5%であることが示唆される。
図11図10に示したブラシル酸モノメチルの1H NMRを示す。CDCl3を溶媒として用いた。
【発明を実施するための形態】
【0045】
この明細書に記載した材料、物品、方法は、開示した主題の具体的な特徴に関する以下の詳細な説明と、この明細書に含まれる実施例を参照すれば、より簡単に理解できよう。本発明の材料、物品、装置、方法を開示して説明する前に、以下に記載する特徴が具体的な方法や具体的な試薬に限定されることはなく、変更が可能であることを理解すべきである。また、この明細書で用いる専門用語は特定の特徴を説明することだけを目的としていて、本発明を制限する意図はないことも理解すべきである。
【0046】
また、この明細書全体を通じ、特許文献や学術論文を含むさまざまな刊行物を参照する。これら刊行物の開示内容全体が、参考としてこの明細書に組み込まれている。それは、開示されている事項が関係する先行技術をより十分に説明するためである。また、開示されているそれら参考文献は、それら参考文献に含まれていてこの明細書で参照する文章において議論している材料に関し、参考としてこの明細書に個別かつ具体的に組み込まれている。
【0047】
以下の段落に本発明を記載するが、それは単なる一例としてであり、本発明が明示的に開示されている事項に限定されることはない。本発明の実施態様および/またはその改良がなされた時点で利用できた本分野に固有の方法またはよく確立されている方法はすべて、この明細書に元々組み込まれている。
【0048】
ハイブリッド式オゾン分解
【0049】
先行技術で知られている方法とは異なり、本発明では、特に直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)と、二酸(例えばアゼライン酸)または酸-エステル(例えばアゼライン酸モノメチル)を製造するため、還元的オゾン分解プロセスと酸化的オゾン分解プロセスの両方を1つの連続プロセスの中に統合したオゾン分解プロセスを記載する。本発明のオゾン分解プロセスをハイブリッド式オゾン分解プロセスと呼ぶ。
【0050】
この明細書に記載するハイブリッド式オゾン分解プロセスを用いると、不飽和脂肪酸および/または脂肪酸エステルのオゾン分解から二酸(および/または酸-エステル)と直鎖アルキルアルデヒドを生成させることができる。
【0051】
それとは対照的に、以前のオゾン分解プロセスでは限定された生成物のセットしか得られず、酸生成物および/またはエステル生成物(すなわち酸化的オゾン分解)が得られるか、アルデヒド生成物および/またはアルコール生成物(すなわち還元的オゾン分解)で得られるかのいずれかであった。例えば酸化的オゾン分解プロセスは、アメリカ合衆国特許第2,813,113号とアメリカ合衆国特許出願第2012/0245375号に記載されており、水性条件下での脂肪酸の還元的オゾン分解プロセスは、アメリカ合衆国特許第3.504,038号に記載されている。関連する他のプロセスは、1)アメリカ合衆国特許出願公開第2005/0010069 A1号(アルコール処理条件を利用して樹脂を形成する);2)WO 2010/078498 A1(グリセロールなどのアルコールを利用して樹脂のためのポリオールを生成させる);3)WO 2012/168770 A1(オゾンを用いて興味深い医薬製剤を製造する);4)WO 2010/011134とアメリカ合衆国特許第7,825,277号(マイクロ反応装置を用いた一般的なオゾン分解が記載されている);5)アメリカ合衆国特許第5,543,565号(焼結管を用いてアゼルアルデヒドの酸化を促進する方法が記載されている)に記載されている。
【0052】
本発明の一実施態様では、この明細書に記載した方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約45%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約60%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約70%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約80%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約90%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約95%を超える。一実施態様では、本発明の方法によって製造される直鎖アルデヒド、および/またはオキソ-酸、および/またはオキソ-エステル、および/または酸-エステル、および/または二酸は、純度が約99%を超える。
【0053】
本発明のハイブリッド式オゾン分解プロセスは、脂肪酸および/または脂肪酸エステルの還元工程と酸化工程の両方を含んでおり、両方の工程が同じ統合プロセスで実施されて、アルデヒドおよび/またはアルコールのほか、酸とエステルが得られる。図1を参照のこと。この方法では、オゾン反応装置の中で、脂肪酸および/または脂肪酸エステルを、ノナン酸、グリセロール、水、またはこれらの任意の組み合わせから選択した溶媒の中に入れると、脂肪酸および/または脂肪酸エステルが酸素流および/またはオゾン流からのオゾンを吸収することで、オゾン化された生成物の混合物すなわち生成物流(例えばオゾン化物、および/または過酸化物、および/または酸、および/またはエステル、および/またはアルデヒド)を形成することができる。次に、水素を水素化反応装置に流すことでオゾン反応装置の中で形成されたオゾン化された生成物流を一部還元してアルデヒド混合物を生成させる。水素化反応装置の中で生成したこのアルデヒド混合物の1つの画分を蒸留して取り出した後、酸化反応装置の中で酸素を用いてアルデヒド混合物の第2の画分(例えば「残留画分」)を酸化して酸を生成させる。この「ハイブリッド式オゾン分解」法を利用すると、脂肪酸および/または脂肪酸エステルのオゾン分解を通じて最適な生成物(例えば直鎖アルキルアルデヒド、二酸、エステル(すなわち酸-エステルまたはジエステル))を生成させることができる。
【0054】
ハイブリッド式オゾン分解プロセスは、一不飽和脂肪酸の含有量が多い油と脂肪酸混合物を変換するときに特に有利である可能性がある。これら混合物は、オレイン酸サフラワー油、ヒマワリ油、カノラ油のほか、目的に合わせて鎖の長さ、飽和レベル、官能基の付加を制御した藻類油を多く含んでいる可能性がある。一不飽和は、脂肪酸の鎖のさまざまな位置で起こって二酸と直鎖アルデヒドの好ましい混合物を生じさせる可能性がある。二酸と酸-エステルは、例えば、ポリマー、潤滑剤、化粧品、医薬品、農薬などで用いることができる。直鎖アルキルアルデヒドは、例えば、香料やフレグランスに直接用いることや、香料、フレグランス、ゲルベアルコール、可塑剤、界面活性剤や、他のさまざまな特殊化学品などの前駆体として使用できる。
【0055】
本発明により、酸素と水素を用いるオゾン分解プロセスが提供される。このオゾン分解プロセスでは、酸素をオゾン発生のための試薬として用いることができ、その後オゾンは、オゾン反応装置の中で脂肪酸のオゾン分解に使用することができる。本発明のオゾン分解プロセスでは、電気的手段または他の任意の加水分解手段によって水から発生した酸素と水素や、他の手段によって発生した酸素と水素を用いることができる。その中には、空気の蒸留からの酸素と水素、または天然ガスの改質から得られる酸素と水素も含まれる。脂肪酸をオゾン反応装置に入れると、その中で脂肪酸がオゾンを吸収してオゾン化された生成物流を形成する。本発明のいくつかの要素によれば、オゾン化された生成物流は、非限定的な例として、過酸化物、アルデヒド、酸、エステル、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいる可能性がある。本発明では、オゾン化された生成物流を用いて直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)と二酸を生成させる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、オゾン化された生成物流は、水素化反応装置の中で一部が還元されてアルデヒドを生成させることができる。アルデヒドを含む混合物は、水素化反応装置を去るときに二相層を形成する可能性がある(そのうちの1つの相は有機相である)。次に、有機相を2つ以上の画分に分画することができる。本発明のいくつかの実施態様によれば、画分の1つは、直鎖アルキルアルデヒド(例えばヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール(があるが、ここに記載した例に限定されない))を含んでいる可能性がある。別の有機相画分は、オキソ-酸および/またはオキソ-エステル(例えば12-オキソドデカン酸、11-オキソウンデカン酸、10-オキソデカン酸、9-オキソノナン酸、8-オキソオクタン酸、7-オキソヘプタン酸、6-オキソヘキサン酸や、これらに対応するエステル(があるが、ここに記載した例に限定されない))を含んでいる可能性がある。この明細書に記載したハイブリッド式オゾン分解の一実施態様では、オキソ-酸を含む画分を酸化して二酸を形成する。
【0057】
したがって本発明は、この明細書に記載したハイブリッド式オゾン分解プロセスによって製造した一部が還元された生成物にも関する。一実施態様では、本発明は、以下の方法によって製造されるオキソ-酸またはオキソ-エステルに関する。この方法は、(a)酸素と水素を用意し、その酸素は、オゾンを生成させるための試薬として用い、そのオゾンは、オゾン反応装置の中での脂肪酸または脂肪酸エステルのオゾン分解に用い;(b)脂肪酸または脂肪酸エステルをオゾン反応装置に入れると、その中で脂肪酸または脂肪酸エステルがオゾンを吸収することで、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、エステル、酸から選択した1種類以上の化合物を含有するオゾン化された生成物流を含む混合物を形成し;(c)(i)そのオゾン化された生成物流を水素化反応装置に入れてそのオゾン化された生成物流の一部を還元することで、大半がアルデヒドである一部が還元された複数の生成物を生成させ、そのアルデヒドは、水素化反応装置を去るとき、水の存在下で、有機相を含む2つの層を形成し;(ii)その有機相を分画して、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含む残った有機相から直鎖アルキルアルデヒドを分離し;(iii)工程(ii)での分画の後に残った有機相からそのオキソ-酸またはオキソ-エステルを分離することにより、直鎖アルキルアルデヒドと、オキソ-酸またはオキソ-エステルとを含む一部が還元された複数の生成物を生成させることで、純粋な形態のオキソ-酸またはオキソ-エステルを生成させる操作を含んでいる。いくつかの実施態様では、工程(iii)の分離は蒸留によってなされる。いくつかの実施態様では、分離されたオキソ-酸またはオキソ-エステルの少なくとも一部が酸化反応装置に供給されて、二酸または酸-エステルを含む酸素化された生成物が生じる。別の実施態様では、分離されたオキソ-酸またはオキソ-エステルを酸化せずに二酸または酸-エステルを生成させる。
【0058】
一実施態様では、水素化反応装置を去る混合物は水の存在下で二相であり、コアレッサおよび/または相分離装置を用いて水相から有機相を分離することができる。本発明によれば、コアレッサとして、PALLのPHASESEP(登録商標)A/Sシリーズの液体/液体コアレッサ、PALLのPHASESEP(登録商標)コアレッサ、PALLのPHASESEP(登録商標)FR1シリーズの液体/液体コアレッサが可能だが、これらに限定されない。本発明によれば、相分離装置として、遠心分離装置(例えばRousselet Robatel遠心分離式液体/液体分離装置)が可能だが、それに限定されない。
【0059】
一実施態様では、有機相画分はオキソ-酸またはオキソ-エステルを含んでおり、それを最初に蒸留し、次いで酸化反応装置の中で酸化する。蒸留されたオキソ-酸生成物またはオキソ-エステル生成物の酸化によって二酸または酸-エステルが生じる。
【0060】
別の一実施態様では、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含む有機相画分が水素化反応装置を去ると、最初に酸化反応装置の中で酸化された後、蒸留および/または沈殿および/または抽出によって純粋な二酸または酸-エステルになる。
【0061】
本発明によれば、二酸または酸エステルは、2通りの方法の一方で製造することができる。一実施態様では、オキソ-酸またはオキソ-エステルを生成物の混合物から蒸留によって取り出した後、「純粋な」オキソ-酸またはオキソ-エステルを酸化して純粋な二酸または酸-エステルを得ることができる。別の一実施態様では、オキソ-酸またはオキソ-エステルを「純粋でない」生成物流の中で酸化した後、二酸または酸-エステルの蒸留および/または沈殿および/または抽出によってあとから分離することができる。
【0062】
オゾン化物、および/または過酸化物、および/または酸、および/またはエステル、アルデヒドの混合物を反応装置に連続的に移すとき、触媒を用いて酸化反応装置での酸化および/または水素化反応装置での水素化を容易にすることができる。一実施態様では、触媒は金属触媒である。触媒として任意の金属が可能であり、例えばMn(マンガン)があるが、それに限定されない。本発明の方法に適した他の触媒は、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)や、オゾン分解での使用に適していて市場で入手できる触媒である。
【0063】
本発明の一実施態様では、次に、オゾン分解中の画分の1つに含まれるオキソ-酸またはオキソ-エステルを酸化し、対応する二酸または酸-エステルにする。そのとき、酸素ガスを存在させるとともに、Mn(マンガン)、Os(オスミウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、または酸化での使用に適していて市場で入手できる任意の触媒、またはこれらの任意の組み合わせを含むオプションとしての触媒(例はこれらに限定されない)を存在させる。
【0064】
オレフィンのオゾン分解を適度な高温で実施することにより、最初に形成される分子オゾン化物を転位させてオゾン化物にすることができる。そのオゾン化物は、その後多彩な生成物に変換することができる。理論に囚われることを望んでいないとはいえ、現在のところ、この転位のメカニズムには、アルデヒドと不安定な酸化カルボニルへの解離が含まれていて、その両者が再結合してオゾン化物を形成すると考えられている。
【0065】
一実施態様では、脂肪酸のハイブリッド式オゾン分解を実施して酸および/またはアルデヒドを生成させる。一実施態様では、水に完全に混合したエマルジョンとしての脂肪酸をオゾン反応装置に通す。一実施態様では、水素化反応装置を去るこの混合物が水の存在下で二相である場合、コアレッサおよび/または相分離装置を用いて水相から望む有機相を分離する。一実施態様では、有機相を蒸留またはイオン交換によって分画し、アルデヒドを含む画分を得る。一実施態様では、分画後に残った有機相を酸化反応装置に入れて酸化することで、二酸および/または酸-エステルを含む酸素化された生成物が生成する。一実施態様では、有機混合物の残部をさらに蒸留し、オキソ-酸またはオキソ-エステルの高純度画分を生成させる。一実施態様では、オキソ-酸を酸化反応装置の中で酸化する。例えばオキソ-酸またはオキソ-エステルの全体を酸化反応装置の中で酸化し、酸化後に蒸留および/または沈殿および/または抽出によって二酸または酸-エステルを高純度で回収する。一実施態様では、過剰な酸素および/または水素は、回収して別の用途で用いること、またはリサイクルすること、または廃棄することが可能である。
【0066】
一実施態様では、脂肪酸に対してハイブリッド式オゾン分解を実施し、オゾン化された生成物流の一部を水素化反応装置の中で水素化してアルデヒドを生成させる。一実施態様では、アルデヒドは、蒸留装置または蒸留塔の中で蒸留して取り出す。一実施態様では、残ったオゾン化された生成物流を酸化反応装置の中で酸化して酸を生成させる。一実施態様では、過剰な酸素と過剰な水素を燃料電池に供給して電気および/または水を発生させる。過剰な酸素は例えばオゾン反応装置にリサイクルすることができる。
【0067】
本発明により、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解を含むオゾン分解プロセスも提供される。一実施態様では、還元的オゾン分解は、酸化的オゾン分解の前に起こる。一実施態様では、本発明のプロセスは、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解の前にオゾンを生成させる操作をさらに含んでいる。一実施態様では、生成したオゾンを脂肪酸と反応させてオゾン化された生成物を生成させる。
【0068】
本発明の方法で用いるオゾンは、公知の任意の方法で生成させることができる。オゾンは、例えばこの明細書に記載したさまざまな方法で生成させることができる。
【0069】
一実施態様では、本発明のプロセスは、還元的オゾン分解と酸化的オゾン分解の前に脂肪酸をオゾンと反応させてオゾン化された生成物を生成させる操作をさらに含んでいる。一実施態様では、脂肪酸とオゾンの間の反応は、溶媒(例えばノナン酸、グリセロール、水、またはこれらの組み合わせ)を含んでいる。
【0070】
脂肪酸は、長い脂環式炭化水素鎖を有するカルボン酸である。脂環式炭化水素鎖は、飽和していても不飽和でもよく、少なくとも3個の炭素原子を含むことができる。脂環式炭化水素鎖は、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個か、それ以上の個数の炭素原子を含むことができる。
【0071】
脂肪酸とオゾンを反応させるための溶媒として、この反応を行なわせるのに適した任意の溶媒が可能である。例えば溶媒は水性でも非水性でもよい。例えば溶媒として酸またはアルコールが可能である。例えば酸としてカルボン酸(例えばRC(O)OH)が可能である。例えばカルボン酸はノナン酸である。例えばアルコールはポリオール(すなわち2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物)である。例えばポリオールはグリセロールである。例えば溶媒として水が可能である。
【0072】
一実施態様では、オゾン化された生成物は、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、酸(例えばカルボン酸)のいずれかを含んでいる。さらに別の一実施態様では、オゾン化された生成物は、追加の生成物(例えばエステル)を含んでいてもよい。
【0073】
一実施態様では、オゾン化された生成物を還元的オゾン分解プロセスで還元する。一実施態様では、還元された生成物はアルデヒドを含んでいる。一実施態様では、還元的オゾン分解プロセスは触媒(例えば金属触媒)を含んでいる。一実施態様では、還元的オゾン分解プロセスは水素ガスを含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の水素をすべてリサイクルする。
【0074】
触媒として、還元的オゾン分解を実施するのに適した公知の任意の触媒が可能である。例えば触媒は、この明細書に記載した触媒から選択される。
【0075】
還元的オゾン分解プロセスで消費されない水素ガスは、リサイクルすること、および/または再使用することができる。例えば未使用の水素ガスは、この明細書に記載したように、水と電気の一方または両方を発生させるのに使用できる。
【0076】
一実施態様では、還元された生成物は二相液体層を形成する。一実施態様では、本発明のプロセスは、二相液体層の有機相を分離する操作をさらに含んでいる。別の一実施態様では、本発明のプロセスは、有機相を精製(例えば蒸留、イオン交換)してアルデヒドを得る操作をさらに含んでいる。一実施態様では、アルデヒドは直鎖アルデヒドである。
【0077】
還元的オゾン分解の後の生成物は、アルデヒド(例えばアルキルアルデヒド)を含んでいる。例えばアルキルアルデヒドは直鎖アルキルアルデヒド(例えばノナナール)である。例えばアルデヒドは、純度が少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれかである。還元的オゾン分解の後の生成物は、オキソ-酸またはオキソ-エステルも含んでいる可能性がある。例えばオキソ-酸またはオキソ-エステルは、9-オキソノナン酸または9-オキソノナン酸メチルエステルである。例えばオキソ-酸またはオキソ-エステルは、純度が少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれかである。
【0078】
一実施態様では、オゾン化された生成物を酸化的オゾン分解プロセスで酸化する。一実施態様では、オゾン化された生成物は、二酸または酸-エステルを含んでいる。一実施態様では、酸化的オゾン分解は触媒(例えば金属触媒)を含んでいる。一実施態様では、酸化的オゾン分解は酸素を含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の酸素をすべてリサイクルする。
【0079】
一実施態様では、オゾン化された生成物の還元的オゾン分解の後に酸化的オゾン分解を実施する。例えば還元された生成物によって形成される二相液体層の有機相に酸化的オゾン分解を実施する。
【0080】
触媒として、酸化的オゾン分解を実施するのに適した公知の任意の触媒が可能である。例えば触媒は、この明細書に記載した触媒から選択される。
【0081】
酸化的オゾン分解の後の生成物は、二酸および/または酸-エステルを含んでいる。例えば二酸または酸-エステルは、アゼライン酸またはアゼライン酸モノメチルである。例えば二酸は、純度が少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれかである。
【0082】
酸化的オゾン分解で消費されない酸素は、リサイクルすること、および/または再利用することができる。例えば未使用の酸素は、この明細書に記載したように、水、オゾン、電気、またはこれらの組み合わせを発生させるのに使用できる。
【0083】
本発明により、1)脂肪酸をオゾンと反応させてオゾン化された生成物を生成させる工程と;2)そのオゾン化された生成物を還元的オゾン分解のもとで還元して還元された生成物を生成させる工程と;3)その還元された生成物からアルデヒドを分離する工程と;4)その還元された生成物を酸化して酸化された生成物を生成させる工程を含むオゾン分解プロセスも提供される。一実施態様では、本発明のプロセスは、工程1)の前にオゾンを発生させる操作をさらに含んでいる。一実施態様では、工程2)は水素ガスを含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の水素をすべてリサイクルする。別の一実施態様では、工程4)は酸素を含んでいる。さらに別の一実施態様では、未使用の酸素をすべてリサイクルする。
【0084】
本発明のハイブリッド式オゾン分解の一例を図1に示すが、例がこの明細書に示したものに限定されることはない。図1のスキームに示してあるように、ω-9オレイン酸が反応装置(A)を通過できるようにし、その反応装置にガス状のオゾンと酸素を導入してω-9オレイン酸と反応させることができる。オレイン酸は、脂肪酸上の不飽和な部位でオゾンと反応して、オゾン化物と過酸化物とアルデヒドの混合物のほか、副生成物として少量の酸および/またはエステルを形成することができる。次に、オゾン化されたオレイン酸混合物が水素化反応装置(B)を通過できるようにし、その水素化反応装置において、過酸化物とオゾン化物を水素と適切な触媒の存在下で還元することができる。そのような触媒の例として、PdまたはPtが挙げられるが、触媒はこの明細書に開示したものに限定されない。水素化プロセスでは、大半がアルデヒド生成物だが副生成物として少量のカルボン酸および/またはエステルが含まれる溶液を生成させることができる。一実施態様では、約70%を超えるアルデヒドと、約30%未満のカルボン酸および/またはエステルが生成する。別の一実施態様では、約80%を超えるルデヒドと、約20%未満のカルボン酸および/またはエステルが生成する。別の一実施態様では、約90%を超えるアルデヒドと、約10%未満のカルボン酸および/またはエステルが生成する。
【0085】
本発明の一実施態様では、脂肪酸(すなわち図1に示したω-9オレイン酸)を、水に完全に混合したエマルジョンとして、オゾン反応装置を通過させることができる。一実施態様では、エマルジョン全体がオゾン分解反応装置と水素化反応装置を通過するようにできる。
【0086】
次に、有機相を好ましくは蒸留によって(場合によってはイオン交換または他の任意の手段によって)分画し、望む直鎖アルキルアルデヒド(例えば図1のノナナール)を含む画分を得ることができる。次に、有機混合物の残部をさらに蒸留して酸(例えば9-オキソノナン酸)の高純度画分を生成させた後、それを図1に示した酸化反応装置(C)の中で酸化することができる。高純度画分を酸化反応装置(C)の中で酸化し、蒸留および/または沈殿および/または抽出による酸化の後に二酸を高純度で回収することもできる。
【0087】
一実施態様では、9-オキソノナン酸は純度が約45%を超える可能性がある。一実施態様では、9-オキソノナン酸は純度が約60%を超える可能性がある。
【0088】
本発明の実施態様のためのオゾンは、市場にある任意の技術または市場にない任意の技術を利用して酸素から生成させることができる。そのような技術には、コロナ放電装置、水電気分解装置、水電気分解装置とコロナ放電装置の組み合わせが含まれる。オゾン生成に用いる酸素は、妥当な任意の供給源(例えば空気、蒸留した空気、水の電気分解)からのものが可能である。このプロセスのための水素は、市場に従来からある任意の手段(例えば天然ガスの改質、水の電気分解(こちらのほうが好ましい))によって生成させることができる。ガスをこのプロセスに導入できるが、完全には消費されない可能性があるため、回収して別の用途で用いることや、このプロセスにリサイクルすることや、廃棄することができる。オゾン反応装置の中に存在する可能性のある酸素は、酸化反応装置の中で使用できる。あるいは異なる酸素供給源を使用することができる。
【0089】
本発明の一実施態様では、ハイブリッド式オゾン分解中の水素化反応装置からの未使用の水素または過剰な水素はすべて、水および/または電気を発生させるのに使用できる。
【0090】
別の一実施態様では、酸化反応装置の中の過剰な酸素も、水および/または電気を発生させるのに使用できる。その場合、酸素がオゾン反応装置にリサイクルされることはなく、実質的にすべての酸素を使用することができる。あるいは酸化反応装置からの未使用の酸素は、蒸留塔を通過させた後にオゾン反応装置にリサイクルすることができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施態様では、燃料電池またはガスタービンを用いて電気を発生させることができる。その後その電気は、オゾン分解プロセスにおいて電気分解で酸素と水素を発生させるのに使用できる。
【0092】
オゾン分解プロセスは連続的に実施することができる。その場合、脂肪酸をこのプロセスの最初に何時間かかけて連続的に供給し、同様にして何時間かかけて対応する速度で連続的に最初の反応装置からその後の下流のプロセスへと移行させる。一実施態様では、反応装置に入って来る脂肪酸とガスの入力流と、反応装置から出て行くガスとオゾン分解生成物の出力流は、中断のない連続的なものにすることができる。別の一実施態様では、流れを中断することができる。その中断は、1回だけの中断でも、多数回の中断でもよい。いくつかの実施態様では、1回だけの中断または多数回の中断を、計画的に実施すること、またはランダムに実施することができる。
【0093】
オゾン分解の一般的な方法
【0094】
本発明のオゾン分解は、実質的に大気圧条件下で実施することができる。この文脈では、実質的に大気圧条件とは、1〜約3バールの圧力、または空気が水素化反応装置の中に侵入するのを阻止するために業界で一般的な圧力を意味するものと理解する。オゾン分解生成物の還元は、実質的に大気圧条件下で実施することができる。別の一実施態様では、水素化を50バールまでの圧力下で実施することで、水素化の割合が増大する。
【0095】
一実施態様では、本発明のオゾン分解プロセスにいかなる圧力も必要としなくてもよいが、水素化の割合の増加しない可能性がある。
【0096】
オゾン化物を形成した後に酸化して2つのカルボン酸基を形成することは、炭素-炭素二重結合を含む化合物に適用できる。一実施態様では、このプロセスは、約8個〜約30個の炭素原子と1つ以上の二重結合を含む化合物でカルボキシル基を形成するのに役立つ可能性がある。脂肪酸(例えばカルボン酸)、そのニトリル、アミド、エステルなどやアルケン化合物をこのプロセスのための供給源として使用できる。
【0097】
本発明のオゾン分解プロセスは、オゾン分解に基づく他の化学品製造技術に組み込むことができる。本発明のオゾン分解を含めることのできる技術には、油化学品(例えば脂肪酸またはその立体異性体やそのエステル、ワックスエステル、長鎖アルケノン)のオゾン分解が含まれるが、例がこれだけに限定されることはない。例えば脂環式化合物は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、ペトロセレン酸、バクセン酸、リシノレイン酸、サピエン酸と、これらの立体異性体、これらのエステルから選択される。
【0098】
本発明の方法は、脂肪または油に基づく多彩な用途(例えばポリマーの用途のための専用品、潤滑剤のための生物分解性鉱物油代用品、家庭品産業と個人ケア産業のための界面活性剤や乳化剤)のための非常に多彩な生成物を製造するシステムで使用することや、そのようなシステムに組み込むことができる。例えばオレイン酸のオゾン分解によってアゼライン酸を生成させ、それを用いてポリアミド(例えばナイロン6.9、ナイロン6.6.9)またはポリウレタン(例えばラミネーション用接着剤)を製造することができる。
【0099】
本発明によれば、オゾン反応装置として、本発明の方法に組み込むのに適していて市場で入手できる適切な任意の反応装置が可能である。例えばO-CUBE(登録商標)(Thales Nano社)オゾン分解システムを本発明に組み込むこと、および/または本発明で使用するため必要に応じて改変することができる。O-CUBE(登録商標)は、内蔵式のオゾン反応装置から生成するオゾンと組み合わせることのできる脂肪酸の連続流により、室温〜-25℃の温度で作動する。次に、形成されたオゾン化物を冷却下でただちに酸化的クエンチ試薬または還元的クエンチ試薬と混合し、必要な生成物を生成させる。生成物は反応装置から数分のうちに流出する(例えば迅速な分析のため)。オゾンの生成をオフにして他の低温反応を行なわせることができる。本発明のオゾン分解は、約20〜約500kgのバッチサイズという大スケールの工業的生産に拡大することができる。
【0100】
燃料電池は、本発明によれば、燃料からの化学エネルギーを酸素またはそれ以外の酸化剤との化学反応を通じて電気に変換する装置である。水素は燃料になることができるが、炭化水素(例えば天然ガスや、メタノールなどのアルコール)も使用できる。本発明の燃料電池は、作動させるのに燃料と酸素の安定供給源を必要とするという点でバッテリーと異なっているが、入力が供給される限り、連続的に電気を発生させることができる。
【0101】
多くのタイプの燃料電池を本発明で使用することが考えられる。燃料電池は、陰極(マイナス側)と、陽極(プラス側)と、電荷が燃料電池の2つの極の間を移動することを可能にする電解質とからなる。電子は外部回路を通って陰極から陽極に引き付けられて直流の電気を発生させる。燃料電池のタイプごとの主な違いは電解質であるため、燃料電池は、使用する電解質のタイプによって分類できる。燃料電池はサイズがさまざまである。個々の燃料電池は、発生させることのできる電気が非常にわずかである(約0.7ボルト)ため、燃料電池を直列回路または並列回路に「積み重ねること」、または配置することで電圧と電流の出力を増大させ、用途に応じた必要な電力が得られるようにする。燃料電池は、電気に加え、水と、熱と、燃料供給源に応じて非常に少量の二酸化窒素およびそれ以外の放出物とを発生させることができる。燃料電池のエネルギー効率は40〜60%が可能だが、本発明のように廃熱を捕獲して使用するとともに水素と酸素をリサイクルする場合には、85%またはそれ以上にすることができる。
【0102】
本発明は、電気を発生させるためのガスタービンを含むことができる。ガスタービンは、燃焼タービンとしても知られており、内燃機関の一種である。タービンは、下流のタービンにカップルした上流の回転圧縮機と、その両者の間の燃焼室を備えることができる。エネルギーを燃焼装置の中のガス流に与え、その中で燃料を空気と混合して点火することができる。燃焼装置の高圧環境では、燃料の燃焼によって温度を上昇させることができる。燃焼の生成物は強制的にタービン区画に入れられる。タービン区画では、高速かつ大量のガス流がノズルを通ってタービンのブレードに向けられてタービンを回転させる。それが圧縮機にパワーを与えるとともに、いくつかのタービンでは、力学的出力装置を駆動する。タービンまで到達するエネルギーは、排気ガスの温度と圧力の低下から生じる。さまざまなタイプのガスタービンを本発明では使用でき、例として、航空転用型ガスタービン、補助パワーユニット(APU)、発電用工業ガスタービン、圧縮空気エネルギー貯蔵装置、マイクロタービン、ミニチュアガスタービンや、本発明のようなオゾン分解プロセスで用いるのに適した他の同様のタービンが挙げられる。
【0103】
一般的な定義
【0104】
この明細書と請求項では、多数の用語に言及する。それらの用語は、以下の意味を有するものと定義する。例えば、特に断わらない限り、温度はすべて摂氏(℃)で表わす。
【0105】
以下の実施例は、本発明の方法、物品、材料の例示であり、本発明がそれらに限定されることはない。ここに開示した方法において通常遭遇するさまざまな条件やパラメータを別のものに適切に変更したり改変したりした場合、それが当業者にとって明らかであれば、この明細書の実施態様の精神と範囲に含まれる。
【0106】
この明細書では、単数形の「1つの」と「その」には、文脈から明確にそうでないことがわかる場合を除き、複数形が含まれる。したがって例えば「1種類の脂肪酸」には1種類だけの脂肪酸だけでなく、2種類以上の異なる脂肪酸の組み合わせまたは混合物も含まれ、「1種類の誘導体」には、1種類だけの誘導体と2種類以上の誘導体が含まれ、他の例も同様である。
【0107】
この明細書では、「例えば」、「など」、「含む」は、より一般的な主題をさらに明確にする例を紹介することを意味する。これらの例は、開示内容の理解を助けることだけを目的として提示してあり、いかなる意味でも本発明を制限することを意味しない。さらに、この明細書では、「可能性がある」、「オプションの」、「場合によっては」、「場合によっては可能性がある」は、その後に記載されている状況が起こる可能性があること、または起こらない可能性があることを意味しているため、この記述には、その状況が起こる場合とその状況が起こらない場合が含まれる。例えば「場合によっては存在する」という表現は、ある物が存在している可能性があるか、存在していない可能性があることを意味するため、この記述には、その物が存在している場合と、その物が存在していない場合が含まれる。
【0108】
この明細書では、「オゾン化された生成物流」と「オゾン化された生成物」は同じ意味で使用し、文脈に応じて単数形または複数形を意味することができる。
【実施例】
【0109】
実施例1
ハイブリッド式オゾン分解
【0110】
例えばオレイン酸のハイブリッド式オゾン分解は、アゼライン酸とノナナールを生成させるために実行する。オレイン酸のハイブリッド式オゾン分解の代表的な生成物流を図1に示す。図1に示してあるように、ω-9オレイン酸を、水の中に完全に混合したエマルジョンとして、オゾン反応装置を通過させる。水素化反応装置を去る混合物が水の存在下で二相である場合には、コアレッサおよび/または相分離装置を用いて望む有機相を水相から分離する。次に、有機相を蒸留またはイオン交換によって分画し、望む直鎖アルキルアルデヒドを含む画分を得る。次に、有機混合物の残部をさらに蒸留して9-オキソノナン酸の高純度画分を生成させた後、それを酸化反応装置(C)の中で酸化させ、すなわち全量を取り出して酸化反応装置(C)の中で酸化させ、蒸留および/または沈殿および/または抽出による酸化の後に二酸を高純度で回収する。過剰な酸素および/または水素は、他の用途のために回収すること、またはリサイクルすること、または廃棄することができる。図1を参照のこと。
【0111】
実施例2
ハイブリッド式オゾン分解 - 水素と酸素のリサイクル
【0112】
図2のスキームに従ってハイブリッド式オゾン分解を実行することができる。ガス流が還元的オゾン分解プロセスと酸化的オゾン分解プロセスのハイブリッドを通過する図2のスキームでは、I〜IVで示した実線の矢印と、反応装置CとDから出て行く実線の矢印は、有機反応物質と生成物の流れを表わしている。この方法では、脂肪酸をオゾン反応装置(B)に添加し、その中でオレイン酸または任意の植物油脂肪酸(単なる一例)のオゾン分解を開始させることができる。次に、水素化反応装置(A)の中で、オゾン化された生成物流の一部を水素化してアルデヒドを生成させる。次に、アルデヒドを蒸留装置または蒸留塔(C)の中で蒸留して取り出す。次に、残ったオゾン化された生成物流を酸化反応装置(D)の中で酸化して酸を生成させる。次に、(Dからの)過剰な酸素と(Aからの)過剰な水素を燃料電池に供給して電気および/または水を発生させる。場合によっては、過剰な酸素をオゾン反応装置にリサイクルする。ハイブリッド式オゾン分解のスキームを図2に示してある。
【0113】
実施例3
藻類に由来する脂肪酸のハイブリッド式オゾン分解
【0114】
藻類に由来する脂肪酸を出発材料として用いた。AOACの公式な方法969.33「油と脂肪の中の脂肪酸。AOACの公式な分析法」第17版、AOAC、アーリントン、ヴァージニア州、アメリカ合衆国(2000年)に記載されているメチルエステル誘導体化技術を利用してこの脂肪酸の組成を求めた後、GC FID分析を実施した。その結果を図3に示す。ピークの積分により、出発材料の脂肪酸は約84%がオレイン酸であることがわかった。
【0115】
オゾン分解
【0116】
2リットルのバッチ反応装置の中で、藻類に由来する300gの脂肪酸を300gの水に添加し、初期温度20℃にて800rpmで撹拌した。次にオゾンをこの混合物の中に6.5リットル/分の割合で散布し、100分間かけてオゾンの濃度を75g/m3にした。反応中に温度が上昇したが、50℃を超えることはなかった。100分後、N2を散布して反応混合物からO2とO3をパージした。
【0117】
還元
【0118】
次に、藻類由来のオゾン化された脂肪酸の水性混合物を高圧容器に移して0.25重量%のパラジウムブラックを装填し、70℃のH2が350psiの状態にした。この反応混合物を80分間にわたって激しく撹拌した後、反応物を周囲圧力にして濾過することにより触媒を除去した。そのとき反応混合物は相変わらず40℃超、すなわち約60℃であった。有機相と水相が容易に分離したため、有機相を分離して約280gの有機材料を得た。主に容器間で移すときの損失が原因で、理論値よりもわずかに少ない量が得られた。この材料のGC FIDトレースを図4に見ることができる。このトレースですべての分子が十分に揮発性であるわけではない(特にステアリン酸)ことに注意されたい。しかし較正曲線を組み合わせて用いると、有機相は約25%のノナナールと約7.7%のノナン酸であると推定される。
【0119】
分離
【0120】
次に、短経路ワイプトフィルム(wiped film)蒸発装置(Incon ICL-04)を用いて有機材料を分画した。有機材料(280g)を蒸留室に一滴ずつ添加した。その状態を、減圧された0.8〜1.0バールの圧力で維持した。蒸留面を50℃に維持する一方で、凝縮器の温度は0℃に維持し、コールドトラップはドライアイスで冷たい状態に維持した。蒸留液(69g)を回収したところ、GC FIDによって97%超がノナナールであることがわかった(図5)。重い残留物(190g)も回収したが、室温まで冷却すると白色の固体になった。揮発性材料の残部はドライアイストラップに回収した。
【0121】
酸化
【0122】
分離によって得られた白色の重い残留物の一部を、AOACの公式な方法969.33「油と脂肪の中の脂肪酸。AOACの公式な分析法」第17版、AOAC、アーリントン、ヴァージニア州、アメリカ合衆国(2000年)に記載されているメチルエステル誘導体化技術を利用して分析した。唯一の変更点は、アルカリを省略したことである。アルカリは、サンプルに存在するアルデヒド材料を分解すると考えられるからである。改変したこの方法を利用し、アルデヒドの大半(すべてではない)を対応するジメチルアセタールに変換した。これらメチルエステル/アセタール誘導体のGC FID分析から、この材料は、約42%がアゼルアルデヒド(すなわち9-オキソノナン酸)、約8%がアゼライン酸であり、残部の多くはノナン酸(約6.8%)、パルミチン酸(14%)、ステアリン酸(24.55%)であることが示唆された。この結果を図6に見ることができる。アゼルアルデヒドは、9.996分(アゼルアルデヒドメチルエステルに対応)と10.214分(アゼルアルデヒドメチルエステルジメチルアセタールに対応)の位置にあるピークで表わされることに注意されたい。
【0123】
分離工程からの白くて重い残留物61.2gを104.8mgのMn(OAc)2とともに丸底フラスコに装填し、75℃まで加熱した。次に、粗いフリットを用いてO2をこの混合物に3時間にわたって散布した。100mlのH2Oをこの混合物に添加してフラスコの側壁からあらゆる固形物を除去し、散布をさらに2時間継続した。次に有機相を高温(50℃超、すなわち約70℃)のH2Oを用いて抽出した。そのとき、2回は150mlのH2Oを用い、2回は100mlのH2Oを用いた。次に、水性画分を高温のヘプタンを用いて2回抽出した(それぞれ100mlのヘプタン)。次に、水相を放置して室温まで冷却した。冷却後、白色の結晶が水層に形成されたため、それを濾過して回収した。高真空下で乾燥させると、18.5gの白色の結晶が得られた。次に、分析サンプルを、AOACの公式な方法969.33「油と脂肪の中の脂肪酸。AOACの公式な分析法」第17版、AOAC、アーリントン、ヴァージニア州、アメリカ合衆国(2000年)を上記のように改変した方法を用いてメチルエステルとして誘導体化した後、GC FIDを利用して分析した。その結果を図7に見ることができる。積分から、材料は97%超がアゼライン酸であることが示唆された。いくらかのアゼライン酸が有機相の中に相変わらず残っていたが、追加の高温水性抽出でそれを回収することができた。ヘプタン抽出はオプションの工程と見なすべきであり、その結果として回収されるアゼライン酸の純度がわずかに向上する。
【0124】
実施例4
メチルカノレートのハイブリッド式オゾン分解と9-オキソノナン酸メチルの単離
【0125】
植物油を脂肪酸メチルエステルに変換するため、メチルカノレート(カノラ油脂肪酸メチルエステルとしても知られる)を公知の手続きに従って調製した。GC分析によれば、この材料の組成は以下の通りである:オレイン酸メチル(57.36%)、パルミチン酸メチル(4.17%)、リノール酸メチル(20.27%)、リノレン酸メチル(8.2%)、ステアリン酸メチル(1.83%)。
【0126】
オゾン分解
【0127】
メチルカノレート(300g)を600gのH2Oに添加し、激しく撹拌しながら20℃まで冷却した。オゾンを7リットル/分の流速で合計110分間にわたってこの系に導入し、最大濃度を100g/cm3にした。GC FIDから、出発材料の95%超が消費されたことがわかった。次に、反応混合物をN2でパージし、それ以上精製せずにそのままに取り出した。
【0128】
還元
【0129】
酸化されたメチルカノレートの水性混合物を0.25%のPdブラック(メチルカノレートの重量%)と組み合わせ、圧力350psiのH2環境下に置き、過酸化物の滴定から過酸化物が存在していないことがわかるまで75℃に加熱した。次にこの混合物から熱と圧力を除去し、濾過してPdを回収した。得られた混合物は二相であり、抽出漏斗の中で急速に相分離した。頂部の有機相(淡い黄色の液体;293g)を分離してそのまま取り出した。(注:酢酸エチルを用いた水相の抽出後、有機材料をさらに5g回収してそれを取り置いた。)
【0130】
分離
【0131】
次に、短経路ワイプトフィルム蒸発システム(Pope Scientific社の2インチワイプトフィルム蒸留器)を用いて有機材料を分画した。293gの液体を供給装置に装填し、1.0〜1.1ミリバールの圧力に維持したカラムに一滴ずつ供給した。そのときジャケットの温度を50℃、凝縮器の温度を-10℃にし、ドライアイス/アセトントラップを用いた。100.3gの軽いアルデヒド材料を蒸発によって除去した。この材料は、大半がノナナールとヘキサナールで構成されていた。得られた重い残留物(179g)をワイプトフィルム蒸発装置で再び蒸留した。そのとき圧力を0.2〜0.3ミリバール、ジャケットの温度を50℃、凝縮器の温度を-10℃にし、ドライアイス/アセトントラップを用いた。蒸留液から46gの9-オキソノナン酸メチルが80%超の純度で単離された。この材料は、実施例3に記載したように酸化のために使用すること、または別の用途で使用することができる。
【0132】
実施例5
酸-エステルであるブラシル酸モノメチルの酸化と結晶化
【0133】
前の実施例に記載したのと同様の以下の手続きに従い、500gのメチル(GC FIDによると89%)をオゾン分解し、還元し、蒸留して軽いアルキルアルデヒド(ほぼすべてがノナノール)の大半を除去すると、主にノナン酸と、13-オキソトリデカン産メチルエステルと、ブラシル酸モノメチルを含む380gの重い残留物が得られた。この材料をそのまま、以下に説明する酸化と結晶化に使用した。
【0134】
酸化
【0135】
重い残留物(380g)に380mgのMn(OAc)2を添加し、O2を散布するとともに撹拌しながら100℃まで加熱した。溶液が濃い茶色になったとき、放置し、すべての13-オキソトリデカン酸メチルエステルが対応する酸-エステルであるブラシル酸モノメチルになったことがGCからわかるまで160分間にわたって反応させた。次に、この材料をヘプタン(基質の3倍の重量)の中に取り込み、90℃まで加熱した。冷却すると結晶が形成されたため、それを濾過した。次に、これらの結晶を熱いヘプタンから再結晶化させると、60gのブラシル酸モノメチルが白色の結晶性固形物として得られた。この材料のGC FIDを図10に、1H NMRを図11に示す。この材料の残部をこのようにして連続的に結晶化させると、追加のブラシル酸モノメチルを単離することができる。
【0136】
等価物
【0137】
本発明は、その精神または本質的な特徴を逸脱することなく、別の具体的な形態で実現することができる。したがって上記の実施態様は、あらゆる点で、この明細書に記載した本発明を制限するのではなく、例示であると見なされる。したがって本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の請求項によって示され、その請求項と同等な意味と範囲に含まれるあらゆる変更は、その中に包含されるものとする。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[22]に記載する。
[1]
脂肪酸または脂肪酸エステルの還元的オゾン分解工程と酸化的オゾン分解工程の両方を利用して、直鎖アルキルアルデヒドと、二酸または酸-エステルとを生成させるオゾン分解方法であって、前記還元的オゾン分解工程と前記酸化的オゾン分解工程が1つの連続プロセスの中に統合されている方法。
[2]
(a)酸素と水素を用意すること、ここで前記酸素は、オゾンを生成させるための試薬として用い、前記オゾンは、オゾン反応装置の中での脂肪酸または脂肪酸エステルのオゾン分解に用いる;
(b)脂肪酸を前記オゾン反応装置に入れること、ここでその反応装置の中で脂肪酸または脂肪酸エステルが前記オゾンを吸収することで、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、エステル、酸から選択される1種類以上の化合物を含有するオゾン化された生成物流を含む混合物を形成する;
(c)i.そのオゾン化された生成物流を水素化反応装置に入れてそのオゾン化された生成物流の一部を還元することで、大半が直鎖アルデヒドである一部が還元された生成物を生成させ、そのアルデヒドは、水素化反応装置を去るとき、水の存在下で、有機相を含む2つの層を形成し;
j.前記有機相を分画して、残った有機相から直鎖アルキルアルデヒドを分離し;
k.工程(j)での分画の後に残った前記有機相を酸化反応装置に入れてその残った有機相を酸化して、二酸または酸-エステルを含む酸化された生成物を生成させることにより、
前記オゾン化された生成物流から、前記直鎖アルキルアルデヒドを含む前記一部が還元された生成物と、前記二酸または酸-エステルを含む前記酸化された生成物とを生成させること
を含み、前記オゾン化された生成物流から、前記直鎖アルキルアルデヒドと、前記二酸または酸-エステルとを生成させる方法。
[3]
前記水素を前記水素化反応装置に連続的に流し、オゾン化された生成物流を含む前記混合物の一部を還元する、項目2に記載の方法。
[4]
有機相の前記分画化を蒸留またはイオン交換によって実施する、項目2に記載の方法。
[5]
項目2に記載の方法において、前記残った有機相画分が、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含み、この方法が、そのオキソ-酸またはオキソ-エステルを蒸留する操作をさらに含む、方法。
[6]
さらに蒸留した前記オキソ-酸またはオキソ-エステルを前記酸化反応装置に入れて前記二酸または酸-エステルを生成させる、項目5に記載の方法。
[7]
前記二酸または酸-エステルを含む前記酸素化された生成物のさらなる蒸留、または沈殿、または抽出により、純粋な二酸または酸-エステルを生成させる、項目2に記載の方法。
[8]
前記オゾン反応装置と前記酸化反応装置の一方または両方からの未使用の酸素をすべて、オゾン、水、電気、またはこれらの組み合わせを発生させるための燃料としてリサイクルする、項目2に記載の方法。
[9]
前記水素化反応装置からの未使用の水素をすべてリサイクルし、他の水素化操作に使用するか、水、電気、またはこれらの組み合わせを発生させるための燃料として使用する、項目2に記載の方法。
[10]
酸化または還元を容易にするための触媒をさらに含む、項目2に記載の方法。
[11]
前記触媒が金属触媒である、項目10に記載の方法。
[12]
前記脂肪酸または脂肪酸エステルを前記オゾン反応装置に導入して、ノナン酸と、水と、これらの混合物から選択した溶媒の中に入れる、項目2に記載の方法。
[13]
前記酸素、前記水素、前記オゾンを単一の工程で生成させる、項目2に記載の方法。
[14]
前記酸素をリサイクルし、揮発性成分が実質的に除去された有機媒体を通過させる、項目2に記載の方法。
[15]
前記酸素を、揮発性の軽い有機材料のない反応装置、または不揮発性の重い有機材料からなる反応装置を通過させた後にリサイクルする、項目2に記載の方法。
[16]
前記酸化工程(工程k)または前記還元工程(工程i)が欠けている、項目2に記載の方法。
[17]
前記酸素と前記水素を水と電気から生成させる、項目2に記載の方法。
[18]
燃料電池と水素燃焼ガスタービンからなるグループから選択した電源で前記電気を発生させる、項目17に記載の方法。
[19]
前記燃料電池を、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、プロトン交換膜(PEM)燃料電池からなるグループから選択する、項目18に記載の方法。
[20]
前記オゾンを生成させるための電気分解装置をさらに備えていて、その電気分解装置がPEM加水分解電気分解装置である、項目2に記載の方法。
[21]
(a)酸素と水素を用意すること、ここで前記酸素は、オゾンを生成させるための試薬として用い、前記オゾンは、オゾン反応装置の中での脂肪酸または脂肪酸エステルのオゾン分解に用いる;
(b)脂肪酸または脂肪酸エステルを前記オゾン反応装置に入れること、ここでその反応装置の中で脂肪酸または脂肪酸エステルが前記オゾンを吸収することで、オゾン化物、過酸化物、アルデヒド、エステル、酸から選択した1種類以上の化合物を含有するオゾン化された生成物流を含む混合物を形成する;
(c)
(i)前記オゾン化された生成物流を水素化反応装置に入れてそのオゾン化された生成物流の一部を還元することで、大半が直鎖アルデヒドである一部が還元された複数の生成物を生成させ、そのアルデヒドは、水素化反応装置を去るとき、水の存在下で、有機相を含む2つの層を形成し;
(ii)前記有機相を分画して、オキソ-酸またはオキソ-エステルを含む残った有機相から直鎖アルキルアルデヒドを分離し;
(iii)工程(ii)での分画の後に残った前記有機相から前記オキソ-酸またはオキソ-エステルを分離すること、
により、直鎖アルキルアルデヒドと、オキソ-酸またはオキソ-エステルとを含む一部が還元された生成物を生成させること、
を含む、前記オキソ-酸またはオキソ-エステルを生成させる方法によって製造されるオキソ-酸またはオキソ-エステル。
[22]
前記分離工程(iii)を蒸留によって実施する、項目21記載のオキソ-酸またはオキソ-エステル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11