特許第6204470号(P6204470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204470特定の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類のアルカリ金属塩の多段階製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204470
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】特定の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類のアルカリ金属塩の多段階製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/68 20060101AFI20170914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C07D307/68
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-524751(P2015-524751)
(86)(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公表番号】特表2015-528813(P2015-528813A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013065904
(87)【国際公開番号】WO2014019982
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】12178859.0
(32)【優先日】2012年8月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】モラデイ,バヘト・アーメト
(72)【発明者】
【氏名】フンケ,クリステイアン
(72)【発明者】
【氏名】フアリダ,タラネー
(72)【発明者】
【氏名】シユナツテラー,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ローゼレン,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ブレーメ,フオルカー
(72)【発明者】
【氏名】リンカー,シユテフアニー
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500513(JP,A)
【文献】 特開2000−204061(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/117015(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/018180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/68
C07C 67/10
C07C 69/38
C07C 69/67
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩:
【化1】


の製造方法であって、
次の段階:
段階(i):下記一般式(II)のマロン酸エステル:
【化2】


をアルコール性アルカリ金属水酸化物溶液と反応させて、下記式(III)の相当するマロン酸エステルモノアルカリ金属塩:
【化3】


を得る段階;
段階(ii):段階(i)からの式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩を下記式(IV)のクロロ酢酸エステル:
【化4】


と、少なくとも一つの相間移動触媒の存在下に反応させて、下記式(V)の化合物:
【化5】


を得る段階、ここで、前記相間移動触媒は有機アンモニウム塩またはホスホニウム塩である;
段階(iii):下記一般式(VI)のアルカリ金属アルコキシド:
【化6】


を加えることで、閉環反応で式(V)の化合物を反応させることにより、式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩を得る段階
[上記の一般式(I)から(VI)中、
、RおよびRはそれぞれ独立にC−C12−アルキルであり;
MおよびM′はそれぞれ独立に、相当する酸化状態でのアルカリ金属である。]を有する方法。
【請求項2】
段階(i)を芳香族炭化水素の存在下に行うか、段階(i)における反応中またはその反応後に、前記反応混合物に芳香族炭化水素を加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(i)における前記反応を水の存在下に行う請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
段階(i)における反応の完了時に、アルコールおよび適宜に水を少なくとも部分的に反応混合物から除去し、次に式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩が芳香族炭化水素中の懸濁液として存在する、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
、RおよびRが各場合でメチルまたはエチルであり;
MおよびM′が各場合で、相当する酸化状態でのナトリウムまたはカリウムである、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(i)で使用される前記アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液が、メタノール性もしくはエタノール性水酸化カリウム溶液またはメタノール性もしくはエタノール性水酸化ナトリウム溶液であり、それは使用される水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの量に基づいて30重量%以下の溶液として用いられる請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階(i)からの前記芳香族炭化水素がキシレンもしくはトルエンであり、反応混合物中に存在する水およびアルコールを蒸留によって反応混合物から除去する、請求項から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記芳香族炭化水素がトルエンであり、反応混合物中に存在するアルコールおよび存在する水を共沸蒸留によって除去する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
段階(i)における反応混合物中に存在する水を、キシレン添加とそれに続く共沸蒸留によって除去するが、反応混合物中に存在するアルコールを最初に蒸留によって除去する請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マロン酸エステルから出発し、中間体の単離を必要としない、特定の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類のアルカリ金属塩の多段階製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類、相当する互変異体またはそれらのアルカリ金属塩の製造、ならびに生理活性化合物の合成における成分としてのそれらの使用は公知である(WO2011/018180、WO2009/036899、J. Chem. Soc.、Perkin Trans. 1, 1985, pp.1567−1576、Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft (1911), 44, 1759−1765)。しかしながら、公知の方法には、下記に記載のような欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/018180
【特許文献2】WO2009/036899
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Chem. Soc.、Perkin Trans. 1, 1985, pp.1567−1576
【非特許文献2】Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft (1911), 44, 1759−1765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WO−A−2012/117015には、4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類のナトリウム塩またはカリウム塩の製造方法が開示されている。しかしながら、WO−A−2012/117015による方法は、相間移動触媒の存在下では行われない。さらに、段階(ii)における方法は、高価な成分クロロ酢酸エチルを用いて水相の共沸を行う。クロロ酢酸エチルの部分加水分解では、反応物および廃棄のコストが高い。
【0006】
WO2011/018180には、マロン酸エステルから出発するヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルの製造が記載されている。後者を、塩基の存在下にハロアセチルクロライド化合物と反応させる(反応図式1参照)。水を加えた後、所望の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルが得られる。塩基は、マロン酸エステルの脱保護ができるように選択し、その結果としてマロン酸エステルのエノレートが形成され、次にそれをハロアセチルクロライド化合物によってアセチル化する。好適な塩基は特別には、一般式M(OR(MはNa、K、Mg2+であり、bは1または2であり、Rはメチルまたはエチルである。)のアルコキシドである。ナトリウムメトキシドが好ましいものと記載されている。閉環が完了したら、所望の生成物が、副生成物として形成される無機塩(例えば、塩基としてナトリウムアルコキシドが用いられる場合はNaCl)とともに得られる。
【0007】
反応図式1
【化1】
【0008】
式(P−I′)および(P−I)の化合物の水溶解性が非常に高いことから、反応混合物からの無機塩の除去は、特にそれがNaClである場合、非常に高レベルの技術的複雑さによって初めて達成可能である。式(P−I′)および(P−I)の化合物は比較的高温ではCOを放出しながら分解することから、蒸留は不可能である。従って、無機塩は除去されない。代わりに、それは次の反応に持ち越され、式(P−I′)および/または(P−I)の化合物のさらなる反応が完了した後にやっと除去することができる。
【0009】
WO2009/036899には、4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類の塩の合成が記載されており、それはマロン酸エステルカリウム塩から進行し、4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルの相当する塩は、クロロ酢酸エステルおよびアルコキシド塩基、例えばナトリウムメトキシドを用いて製造される(反応図式2参照)。この反応は、後に持ち越されるべき無機塩を生じない。しかしながら、それらの除去によって、段階1で溶媒として用いられる極性溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMA)が完全に除去されるとは限らない。DMFおよびDMAはいずれも、再生するには毒性があり、しかも高価であり、除去および再利用が非常に困難である。さらなる欠点は、高価なマロン酸エステルのモノカリウム塩の使用である。
【0010】
反応図式2
【化2】
【0011】
上記反応の段階1はエステル化であり、塩化カリウムが副生成物として得られ、それは次に、水洗によって反応混合物から除去される。段階2では、閉環による所望の化合物(Q−II)の生成が行われ、その際にエステル交換が生じることで、生成物が式(Q−II)および(Q−II′)の化合物の混合物として得られる可能性がある。式(Q−IV)の化合物は固体であり、市販されているか、公知の方法によって製造することができる(J. Am. Chem. Soc. 1944, Nr. 66, p. 1286、EP−A−950653、WO2008/150487参照)。
【0012】
WO2009/036899に引用の方法による生成物の製造は、その方法が固体で存在する高価な式(Q−IV)のマロン酸エステルカリウム塩から進行することから、工業的に不利である。工業的製造の場合、原料としての固体の使用は基本的に望ましくなく、それは固体の技術的取り扱いが困難であり、より多くの場合で、溶媒の変更が行われ、それにより全体として反応実施の技術的複雑さがかなり大きくなるためである。
【0013】
4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類の塩の公知の製造方法から出発すると、目的は、これらをいかに簡単かつコスト効果高く製造できるようにして、その方法が所望の化合物の工業的製造にも使用可能となるようにすることにある。
【0014】
困難な中間体の単離および溶媒の交換を必要としない、簡単な原料から進行する方法を見出すことが特に望ましいものと考えられる。簡単でコスト効果の高い方法とは、例えば、原料がコスト効果の高いものであり、および/または発癌活性、突然変異誘発活性および生殖毒性活性(CMR活性)を持たず、当該方法は必要とする工程段階が少なく、「ワンポット反応」(すなわち、中間体の単離が必要ない)として実施され、および/または4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類の所望のナトリウム塩またはカリウム塩が十分高い収率および純度で得られることから、大きな財政支出なく実行される方法を意味するものと理解される。例えば必要なエネルギーが少なく、および/または選択的な、すなわち副生成物の生成がごく低量である、資源保存的方法を提供することも有利である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
複雑な単離および/または中間体の精製を必要とせず、溶媒を交換する必要がない、一般式(I)の特定の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類のアルカリ金属塩、特にナトリウム塩またはカリウム塩の製造方法が見出された。さらに、先行技術とは対照的に、生殖毒性溶媒が必要ない。そこで、本発明による方法は、特に簡単で資源保存的であり、実施のコスト効果が高い。同時に、使用される原料は安価である。その方法は、連続的に、またはバッチ式で行うことができる。
【0016】
ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類は互変異体として、すなわち2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類の形態で存在することもできることが知られている。従って、本明細書においてヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステル類についての言及は、相当する互変異体も含む。
【0017】
そこで本発明は、下記に記載の式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩の製造方法を提供する。
【化3】
【0018】
式中、
Mはアルカリ金属、好ましくはナトリウムまたはカリウムであり、残基Rは下記の意味を有し、前記で記載の式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩は下記の互変異型で存在し得る。
【化4】
【0019】
従って本願は、式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩、特にはナトリウム塩またはカリウム塩の製造方法であって、次の段階:
段階(i):下記一般式(II)のマロン酸エステル:
【化5】
【0020】
をアルコール性(好ましくはメタノール性もしくはエタノール性)で水を含んでいても良いアルカリ金属水酸化物溶液、特には水酸化ナトリウムもしくはカリウム溶液と反応させて、下記式(III)の相当するマロン酸エステルモノアルカリ金属塩:
【化6】
【0021】
を得る段階[適宜に好ましくは溶媒としての芳香族炭化水素化合物(芳香族炭化水素)の存在下に(変法[i−B])または溶媒を用いずに、その後適宜に芳香族炭化水素化合物(変法[i−A])を反応混合物に加え、好ましくは反応混合物中に存在するアルコールおよび適宜に水を除去し、そうして式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩がアルコールおよび適宜に水の除去後に懸濁液として芳香族炭化水素中に存在し、開始から存在するか反応後に加えられた芳香族炭化水素が水除去のための共沸剤として働き得る。];
段階(ii):段階(i)からの式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩を式(IV)のクロロ酢酸エステル:
【化7】
【0022】
と、少なくとも一つの相間移動触媒の存在下に反応させて、式(V)の化合物:
【化8】
【0023】
を得る段階[当該相間移動触媒は有機アンモニウムまたはホスホニウム塩である。];
段階(iii):一般式(VI)のアルカリ金属アルコキシド:
【化9】
【0024】
を加えることで、式(V)の化合物を閉環反応で反応させて、結果的に式(I)の4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−カルボン酸エステルのアルカリ金属塩が製造される段階
【化10】
【0025】
を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記一般式(I)から(VI)において、
、RおよびRはそれぞれ独立にC−C12−アルキルであり;好ましくはR、RおよびRは互いに独立にC−C−アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
MおよびM′はそれぞれ独立に、相当する酸化状態で、アルカリ金属、好ましくはナトリウムもしくはカリウムである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)から(VI)における残基(置換基)R、RおよびRは同一である。特に好ましい実施形態では、一般式(I)から(VI)におけるR、RおよびRは同一であり、メチルまたはエチルである。
【0028】
通常、式(I)の生成物における残基Rは、式(II)の使用されるエステル由来のものである。さらに、置換基Rが式(IV)の使用されるクロロ酢酸エステル、式(VI)のアルコキシドまたは反応に存在するアルコールに由来することも可能である。従って、式(I)の得られた生成物は、置換基Rにおいて互いに異なる複数の生成物の混合物であることができる。R、RおよびRが異なる場合、例えば、式(I)の3種類の生成物は、それに応じて、相当する置換基としてそれぞれR、RまたはRを有して生じることができる。
【0029】
本発明によれば、RおよびRは好ましくは、同一の残基(例えば、メチルまたはエチル)である。RおよびRが異なる場合、段階(iii)における閉環反応によって、式(I)および(I′)の化合物が生じ得る(反応図式3参照)。
【0030】
にも同じことが当てはまり、Rも好ましくはRおよびRと同一であるべきである。すなわち特に好ましくは、R、RおよびRは同一である。
【0031】
反応図式3:
【化11】
【0032】
アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液は、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムもしくはカリウムが、1以上のアルコール、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールに溶けている溶液を意味するものと理解される。これらの溶液は水を含むことができる。
【0033】
驚くべきことに、10から15重量%以下の水を含む工業用水酸化カリウムであっても、アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液の製造に用いることが可能であることが認められた。次に、適切な量の水がアルコール性水酸化カリウム溶液中に存在する。本発明者らは、アルカリ金属水酸化物を溶かすのに必要な一定量の水が反応混合物中に存在する場合、段階(i)では有利であることを見出した。乾燥カリウムメトキシドのメタノール溶液(KM32)の使用は、水を加えなければならないのであまり好ましくない。本発明による反応において、使用されるべき好ましいアルコール性アルカリ金属水酸化物溶液は約15から20%強度メタノール性水酸化カリウム溶液または約10%強度メタノール性水酸化ナトリウム溶液である。工業的方法の場合、好ましくはアルコール性溶液の製造には工業用水酸化カリウムを用いる。アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液の水含有量は、溶液の重量基準で好ましくは0.01から10重量%、特に好ましくは0.05から5重量%、特に好ましくは0.1から2重量%である。
【0034】
水酸化ナトリウム(99%)のアルコール(例えば、メタノール)中溶液を用いる場合、反応混合物はごく少量の水を含む。水酸化カリウム溶液と比較して、所望の量の水酸化ナトリウムを溶かすのに多量のアルコール(例えば、メタノール)を用いなければならない。所望の量の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを溶かすのに必要な加えるべきアルコールの量は、当業者による簡単な実験によって発見することができる。アルコールのこの量は変動し得る。
【0035】
アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液は、使用されるアルカリ金属水酸化物の量に基づいて、溶液30重量%以下、好ましくは溶液約10%から約20重量%が存在するように調節する。
【0036】
段階(i)における反応の完了後、式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩をそれ以上精製せずに反応させる。しかしながら、その前に、反応混合物中に存在するアルコールおよび適宜に水は、好ましくは最初に反応混合物から除去する。これは例えば、共沸剤を用いる共沸蒸留によって行うことができる。これに関しては、芳香族溶媒は好ましくは、反応後に反応混合物に対して共沸剤として加える。共沸剤は反応開始時に反応混合物中にすでに存在していても良いか、または反応後にのみ加えることができる。公知の共沸剤は、芳香族炭化水素、特にはトルエンまたはキシレンである。反応終了まで共沸剤を加えない場合、好ましくはキシレンを共沸剤として用いる。
【0037】
段階(i)で存在しても良い水の脱離は、明らかに、水分離器を用いることで行うこともできる。共沸蒸留は行わなくとも良い。
【0038】
段階(i)後の蒸留では、芳香族炭化水素化合物の全量を除去せずに、反応容器(リアクター)中での式(III)の固体のマロン酸エステルアルカリ金属塩の沈殿を回避することが有利である。
【0039】
式(III)のマロン酸エステルアルカリ金属塩(例えば、マロン酸エステルナトリウム塩およびカリウム塩)は芳香族炭化水素に不溶であることから、マロン酸エステルアルカリ金属塩の芳香族炭化水素中懸濁液が得られる。この懸濁液は、それ以上処理せずに本発明による方法の段階(ii)で直接用いることができる。好ましくは式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩は純粋な物質として単離する必要が全くないことから、段階(i)における反応の構成は、公知の方法と比較して極めて有利である。式(III)のマロン酸エステルモノアルカリ金属塩の技術的に複雑かつコストを要する単離および次に乾燥を回避することができる。
【0040】
段階(i)の一つの変法[i−A]では、段階(i)における反応は溶媒なしで行う。すなわちその反応は、専らアルコール性アルカリ金属水酸化物溶液を介して導入された水を含むことができるアルコール中で行われる。所望に応じて、段階(i)での反応混合物に同一もしくは別のアルコール(好ましくはメタノールおよび/またはエタノール)をさらに加えることができる。反応混合物中に存在するアルコールの量は、反応混合物が段階(i)での反応時に容易に撹拌できる状態のままとなるように量る。効率上の理由から、1種類のアルコールのみが段階(i−A)での反応に存在する。すなわち、アルコール性アルカリ金属水酸化物溶液を製造するのにも用いられるアルコールである。変法[i−A]で使用されるアルコールは、下記に記載のように反応終了後に回収することができ、段階(i)で使用されるアルコール性アルカリ金属水酸化物溶液を調製するのに再度用いることができる。そのため、変法[i−A]を特に資源保存的に行うことができる。
【0041】
段階(i)の変法[i−A]における反応が完了し、反応混合物中に存在するアルコールをほぼ完全に除去した後、反応混合物中に存在しても良い水はここで共沸的に除去しなければならない。そのために、芳香族炭化水素化合物を共沸剤として反応混合物を加える。そのような共沸剤は例えば、トルエンおよびキシレンであるが、変法[i−A]ではキシレンが好ましく使用される。これは、キシレンが、まだ存在していても良いアルコール、特にはメタノールと共沸体を形成せず、従ってあまり困難なく再使用可能であり、段階(i)で再度使うことができるためである。
【0042】
反応完了および芳香族炭化水素化合物の添加後に、一定量の芳香族炭化水素化合物がなお反応容器中に残るよう注意しながら、全く水が存在しなくなるまで反応混合物を蒸留する。芳香族炭化水素化合物の割合は、好ましくは、式(III)のマロン酸エステルのモノアルカリ金属塩に関して少なくとも50重量%であるべきである。
【0043】
段階(i)の別の変法[i−B]において、芳香族炭化水素は反応中、反応混合物にすでに存在しており、反応の開始時は溶媒として働き、反応完了後は共沸剤として働く。変法[i−B]において、トルエンが好ましく使用される。この場合の利点は、段階(i)で必要なアルコールの割合を低下させることができるという点、および反応混合物中に存在するアルコールおよび水は同時に(共沸的に)蒸留されるという点である。
【0044】
本発明による方法では、段階(i)で開始時に存在するか後で加えられる芳香族炭化水素化合物が段階(ii)で溶媒として働くことから、段階(i)と(ii)との間で溶媒交換はない。公知の方法と比較して、これは、当該方法をワンポット反応として開発できるという利点を有する。従って、コストを削減することができ、その方法は資源保存的である。
【0045】
段階(ii)で使用されるクロロ酢酸エステルが液体であることから、すでに存在する芳香族炭化水素に加えて、段階(ii)で別の溶媒を加える必要は厳密にはない。
【0046】
段階(ii)で用いることができる相間移動触媒(PTC)は当業者には公知である。好ましくは、1種類のみの相間移動触媒を用いる。しかしながら、2種類以上の異なる相間移動触媒も用いることができる。本発明に従って使用される特に好適な相間移動触媒は有機アンモニウムまたはホスホニウム塩であり、特にはテトラアルキルアンモニウム塩、ベンジルトリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩、ベンジルトリアルキルホスホニウム塩およびそれらの混合物である。
【0047】
本発明による方法では、有機アンモニウム塩、特にはテトラアルキルアンモニウム塩およびベンジルトリアルキルアンモニウム塩が好ましく用いられる。そのような塩は、例えば塩化もしくは臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化もしくは臭化トリ−n−ブチルメチルアンモニウム、硫酸水素トリ−n−ブチルメチルアンモニウム、塩化もしくは臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化もしくは臭化トリオクチルメチルアンモニウム、および硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウムである。
【0048】
特に好ましくは、段階(ii)で市販の塩化もしくは臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムおよびやはり市販の塩化トリオクチルメチルアンモニウムを用いる。
【0049】
相間移動触媒は触媒量で用い、通常の実験により当業者が決定することができる。
【0050】
しかしながら、段階(ii)で使用される相間移動触媒の量が式(III)のモノアルカリ金属塩に対して約0.01から約30mol%の範囲であることが有利である。好ましくはその量は、式(III)のモノアルカリ金属塩に対して約0.05から約5の範囲、特に好ましくは約0.1から約3mol%の範囲である。
【0051】
段階(ii)は温和な反応条件下で行うことができる。これは、生成する副生成物のレベルが相対的に低く、反応混合物は容易に後処理することができ、それによって所望の標的生成物の収率が高くなるという利点を有する。
【0052】
相間移動触媒を用いることで、ワンポット手順で、実質的に溶媒交換せずに本発明による反応を実施することが可能となる。
【0053】
本発明による方法の段階(ii)の構成の一つの利点は、式(III)の化合物との新鮮な反応を行うためにさらなる処理を行わずに、未反応の式(IV)のクロロ酢酸エステルが使用可能であるという点でもあり、それは所望の場合に連続法における主要な利点である。
【0054】
段階(ii)で得られる式(V)の化合物も、段階(iii)でのさらなる単離を行わずに用いることができるような純度で得られる。
【0055】
しかしながら、段階(iii)でさらなる反応を行う前に、式(V)の化合物を含む反応混合物からアルカリ金属塩を除去することが好ましい。これは、先行技術による全ての方法を用いて可能である。反応混合物の濾過および水洗を行って、段階(ii)で生成したアルカリ金属塩、特には塩化ナトリウムもしくは塩化カリウムを除去することが好ましい。必要である場合、水洗のために存在する水を、段階(i)に記載のように共沸的に除去することができる。
【0056】
段階(iii)での閉環反応には、あらゆるアルカリ金属アルコキシドを用いることができ、特にナトリウムまたはカリウムアルコキシドである。次に、溶媒、好ましくはアルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)を、好ましくは段階(iii)で加える。技術的および経済的理由のため、有利には市販されている、ナトリウムまたはカリウムアルコキシドの相当するアルコール中溶液(例えば、メタノールに溶かしたナトリウムメトキシド)を用いることが好ましい。さらなる溶媒添加は行わないで済ますことができる。
【0057】
本発明によれば、ナトリウムまたはカリウムアルコキシドは、好ましくはすでにメタノールまたはエタノールに溶解させたナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシド(例えば、メタノールに溶かしたナトリウムメトキシドまたはエタノールに溶かしたナトリウムエトキシド)である。
【0058】
WO−A−2009/036899に記載の方法とは対照的に、本発明による方法は、反応容器またはリアクター中で行うことができる。従って、中間体化合物は反応全体にわたり反応容器またはリアクター中に残る。さらに、複雑な溶媒交換がない。
【0059】
段階(i)、(ii)および(iii)の反応は、標準圧(約1013mbar)で行うことができる。減圧下または高圧(加圧)下で反応行うことも可能である。
【0060】
段階(i)、(ii)および(iii)の反応は、使用される物質に応じて好適な温度で進行する。好適な温度は、通常の実験によって容易に決定することができる。
【0061】
例えば、段階(i)は、約−30℃から約50℃、好ましくは約0℃から約30℃の範囲の温度で実施することができる。その反応は特に好ましくは、約20℃から約30℃の範囲の温度で行う。段階(i)は好ましくは、約20℃から約30℃の範囲の温度および標準圧、すなわち約1013mbarで行う。
【0062】
段階(ii)は、例えば約20℃から約200℃、好ましくは約40℃から約150℃の範囲の温度で行うことができる。その反応は特に好ましくは、約60℃から約80℃の範囲の温度で行う。段階(ii)は好ましくは、約60℃から約80℃の範囲の温度および標準圧、すなわち約1013mbarで行う。
【0063】
段階(iii)は、例えば約20℃から約120℃、好ましくは約20℃から約100℃の範囲の温度で行うことができる。その反応は特に好ましくは、約20℃から約80℃の範囲の温度で行う。段階(iii)は好ましくは、約20℃から約80℃の範囲の温度および標準圧、すなわち約1013mbarで行う。
【0064】
本発明による方法では、式(II)の化合物のアルコール性アルカリ金属水酸化物溶液中で使用されるアルカリ金属水酸化物に対するモル比は、若干変動させることができる。アルカリ金属水酸化物のマロン酸エステルに対するモル比は、好ましくは0.5:1から1.5:1、特に好ましくは0.9:1から1.1:1、特別に好ましくは1:1でなければならない。マロン酸エステルに比例してより多量のアルカリ金属水酸化物を用いることで、好ましくないジ塩の生成が増える。これによって、次の段階でも、副生成物の増加および最終的に収率低下を生じる。
【0065】
対照的に、式(III)の化合物の式(IV)の化合物に対するモル比、または式(V)の化合物の式(VI)のアルカリ金属アルコキシドに対するモル比は、広い範囲で変動可能である。反応物の別のものに対するモル比には、特に制限はない。
【0066】
段階(ii)では、式(IV)の化合物の式(III)の化合物に対するモル比が5から1の範囲、特に2から1の範囲である場合に有利である。本発明によれば、そのモル比は好ましくは、1から1.5の範囲である。
【0067】
段階(iii)では、式(VI)のアルカリ金属アルコキシドの式(V)の化合物に対するモル比が0.5から10の範囲、特には1から5の範囲である場合に有利である。本発明によれば、そのモル比は好ましくは、1から1.5の範囲である。
【0068】
別段の断りがない限り、「アルキル」という用語は、分岐または未分岐の炭化水素を含む。残基RからRの定義におけるアルキル残基は、本発明によれば、C−C12−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルキルまたはC−C−アルキルである。相間移動触媒の定義におけるアルキル残基は、本発明によれば、C−C18−アルキル、C−C12−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルキルまたはC−C−アルキルである。本発明に従って使用可能なそのようなアルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシルおよびn−ドデシルである。
【0069】
本発明は下記の実施例によってさらに明らかになり、それら実施例は本発明を限定する形で解釈すべきではない。
【0070】
製造例1(本発明)
ナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オレートおよびナトリウム4−(エトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オレートの製造
段階(i):マロン酸ジメチル2kg(14.83mol、98%)を溶媒なしで20℃で入れ、これにKOH967.85g(14.83mol、86%)(メタノール4.89kgに溶かしたもの)を1時間かけて加える。混合物を20℃で1時間撹拌し、次にメタノールを減圧下に内部温度約35℃で減圧下に留去する。残留物を40から56℃でキシレン約4kgと減圧下に共沸させることで脱水して、メタノールおよび水残留物を除去する。残ったキシレン懸濁液を次の段階で直接反応させる。
【0071】
段階(ii):塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム123.7g(0.44mol)およびクロロ酢酸メチル1.95kg(17.8mol)を段階(i)からの懸濁液に加えた後、得られた反応混合物を加熱して60℃とし、次にこの温度で5時間撹拌する。キシレンおよびクロロ酢酸メチルを約60℃で留去し、キシレン約1kgおよび水3.7kgを加えた後、有機相を約45℃で除去し、キシレンおよび水残留物を減圧下に留去する。
【0072】
段階(iii):段階(ii)からの残留物に、30%強度ナトリウムメトキシドのメタノール中溶液2.67kg(14.84mol)を加える。懸濁液を加熱して65℃として2時間経過させ、冷却して10℃とし、この温度で1時間撹拌し、濾過する。残留物を置換洗浄液としてのメタノール594gで洗浄し、真空乾燥する。ナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オレート2.159kg(HPLC純度97.51%)が得られる。使用されるマロン酸ジメチルに基づいて、これは単離収率79%に相当する。
【0073】
H−NMR(DO、298K)δ:3.73s(3H)、4.42s(2H)。
【0074】
製造例2−12
段階(ii):
市販のマロン酸カリウムメチル11.95g(75.7mmol)を各種溶媒/溶媒混合物(温度および表1による触媒添加に関して変化させた。)71.25gに溶解/懸濁させる。
【0075】
次にクロロ酢酸メチル8.23g(75.0mol)を加え、得られた混合物を室温で撹拌する。
【0076】
表1(実験2から6(非発明)、実験7から12(本発明))
【表1】
【0077】
TBAB:テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(相間移動触媒)
PEG500:平均分子量500g/molを有するポリエチレングリコール
結果:製造例2から12の実験結果から、下記のことがわかる。
【0078】
1.極性DMFを非極性トルエンで置き換えることができ、その場合、相間移動触媒(ここではTBAB)を加えることが必要である(実験2から8参照)。
【0079】
2.相間移動触媒添加の下限は、好ましくは約0.1mol%である。
【0080】
3.昇温が有利である。
【0081】
4.先行技術(WO−A−2009/036899)による方法との比較:実験2および4はWO−A−2009/036899の方法に従って行う。実験2では極性溶媒DMFを用い、実験4では非極性溶媒トルエンを用いる。実験4(WO−A−2009/036899による)と実施例8(本発明)の比較から、極性から非極性への溶媒の交換では、使用しなければ生成物への変換が起こらないことから、相間移動触媒の使用が必要であることがわかる。極性溶媒を用いる実験2(WO−A−2009/036899による)と実施例8(本発明)の比較から、本発明による2相法での反応では、WO−A−2009/036899による方法での変換率に匹敵する変換率を達成可能であることがわかる。しかしながら、本発明による方法は2相性であるため、生成物の分離および単離は、極性溶媒を用いるWO−A−2009/036899による1相法と比較して実施がかなり簡単である。
【0082】
製造例13(トルエン使用)(本発明)
段階(i):最初にメタノール4150gをリアクターに入れ、固体水酸化カリウム1858g(29mol;86%)を高撹拌および冷却しながら徐々に加えて、30%強度のKOHのメタノール中溶液を得る。これをマロン酸ジメチル3839g(29mol)のトルエン(5700g)中溶液に加え、高撹拌しながら1時間かけて加える。次に、反応混合物を室温で2から4時間撹拌する。追加のトルエン5700gを加え、底部濾液にメタノールが認められなくなるまでメタノールを留去する(GCピーク面積<0.1%)。
【0083】
段階(ii):テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)96g(0.3mol)を、段階(i)からのマロン酸カリウムメチルのトルエン中懸濁液に加え、加熱して65℃とする。クロロ酢酸メチル2655g(24.5mol)を加え、反応混合物を65℃で少なくとも6時間撹拌する。反応完了後、混合物を冷却し、水6540gで抽出する。トルエン相を蒸留して、約半量のトルエンを留去し、水を除去する。
【0084】
段階(iii):トルエン溶液を60℃とし、NM30溶液(ナトリウムメトキシド)5010gで処理する。添加完了後、反応混合物を約60℃でさらに4時間撹拌する。反応混合物を≦5℃で少なくとも2時間冷却する。沈殿生成物を濾過し、各回メタノール1500gで2回洗浄し、乾燥させる。
【0085】
収率:74.6%(純度(HPLC):94.5%)。
【0086】
製造例14(キシレン使用)(本発明)
トルエンに代えてキシレンを用いる以外、製造例13での合成と同様にして合成を行う。
【0087】
収率:57.7%(純度(HPLC):95.8%)。