特許第6204480号(P6204480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204480
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】乗物用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20170914BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20170914BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B60N2/22
   B60N2/14
   B60N2/44
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-536592(P2015-536592)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2014073873
(87)【国際公開番号】WO2015037600
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-187610(P2013-187610)
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 慎二
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−261522(JP,A)
【文献】 特開2008−174182(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0046253(US,A1)
【文献】 米国特許第6122912(US,A)
【文献】 特開2010−179900(JP,A)
【文献】 特開2010−179901(JP,A)
【文献】 特開2008−179214(JP,A)
【文献】 特開2010−184560(JP,A)
【文献】 特開2008−49837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックを含むシートと、少なくとも前記シートの一部の向きを変えることが可能なアクチュエータと、当該アクチュエータを制御する制御装置とを備える乗物用シート装置であって、
前記制御装置は、
横加速度を取得する横加速度取得手段と、
操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、
前記横加速度取得手段が取得した横加速度と、前記操舵速度取得手段が取得した操舵速度とに基づいて前記アクチュエータを制御して、少なくとも前記シートの一部の向きを変えるシート姿勢制御を実行する姿勢制御手段とを備え、
前記姿勢制御手段は、
前記横加速度の大きさが第1加速度閾値より大きくなった場合に、前記シート姿勢制御を実行するとともに、
前記操舵速度の大きさが操舵速度閾値より大きく、かつ、前記横加速度の大きさが前記第1加速度閾値よりも小さく前記操舵速度の向きとは左右逆向きの第2加速度閾値より大きくなった場合にも、前記シート姿勢制御を実行するように構成されたことを特徴とする乗物用シート装置。
【請求項2】
前記第2加速度閾値は、前記第1加速度閾値の半分より小さいことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート装置。
【請求項3】
前記操舵速度閾値は、100〜150deg/sであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート装置。
【請求項4】
前記姿勢制御手段は、前記シート姿勢制御中において、横加速度の大きさがリセット閾値よりも小さくなった場合に、前記シート姿勢制御を終了するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項5】
前記第2加速度閾値の大きさは、前記リセット閾値の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート装置。
【請求項6】
前記操舵速度閾値は、ユーザの操作により可変とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記操舵速度閾値を記憶する不揮発性記憶装置を備えることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート装置。
【請求項8】
前記シートバックは、乗員の背中が当たる中央部と、当該中央部の左右両側に配置されて前記中央部よりも前側に張り出した側部とを有し、
前記アクチュエータは、前記中央部を動かすように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項9】
前記シートバックは、乗員の背中が当たる中央部と、当該中央部の左右両側に配置されて前記中央部よりも前側に張り出した側部とを有し、
前記アクチュエータは、前記側部を動かすように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、前記シートバックの全体を動かすように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記シートの全体を動かすように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項12】
前記シートバックは、シートバックフレームと、シートバックパッドとを有し、
前記シートバックパッドの後方で前記シートバックフレームに支持され、乗員からの後退移動荷重が前記シートバックに作用すると後退移動可能に構成された受圧部材をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記受圧部材を動かすように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項13】
前記横加速度取得手段は、乗物の速度と、操舵角とに基づいて、横加速度を計算により取得するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項14】
前記横加速度取得手段は、横加速度GCを
R=(1+AV)/(L/φ)
GC=V/R
A:車両固有の定数であるスタビリティファクタ
L:車両のホールベース
φ:操舵角
R:旋回半径
により計算することを特徴とする請求項13に記載の乗物用シート装置。
【請求項15】
前記横加速度取得手段は、横加速度センサから横加速度の値を取得するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【請求項16】
前記横加速度取得手段は、車両が備える電子制御ユニットから横加速度の値を取得するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の乗物用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物の旋回状態に応じて少なくともシートバックの一部の向きを変更可能な乗物用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物が旋回したときに、旋回方向と逆側に発生する横加速度により乗員のホールド性が低下しないように、シートバックの背板部分を旋回方向に向けて向きを変更するように構成された車両用のシート装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明では、車両に掛かる横加速度を計算により取得し、横加速度が所定の閾値を超えた場合に、シートバックの背板部分の向きを変更するように制御している(以下、本明細書において「シート姿勢制御」という。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−049357号公報
【発明の概要】
【0004】
しかし、右に切っていたステアリングを左に切るような切返し操舵をする場合など、ステアリングの急操舵をした場合には横加速度が急激に増大するため、特許文献1のように、横加速度が所定の閾値を超えたことを条件としてシート姿勢制御の駆動動作を開始していたのでは、シート姿勢制御の駆動動作の完了が遅く、乗員の十分なホールド性を達成できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、急操舵をした場合であっても、乗員の良好なホールドを実現することができる乗物用シート装置を提供することを目的とする。
【0006】
前記した目的を達成するための本発明は、シートクッションおよびシートバックを含むシートと、少なくとも前記シートの一部の向きを変えることが可能なアクチュエータと、アクチュエータを制御する制御装置とを備える乗物用シート装置であって、前記制御装置は、横加速度を取得する横加速度取得手段と、操舵速度を取得する操舵速度取得手段と、前記横加速度取得手段が取得した横加速度と、前記操舵速度取得手段が取得した操舵速度とに基づいて前記アクチュエータを制御して、少なくとも前記シートの一部の向きを変えるシート姿勢制御を実行する姿勢制御手段とを備える。そして、前記姿勢制御手段は、前記横加速度の大きさが第1加速度閾値より大きくなった場合に、前記シート姿勢制御を実行するとともに、切返し操舵による前記横加速度の増大を予測した場合にも、前記シート姿勢制御を実行するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
一般に、乗物のステアリングを素速く操舵すると、その後、高い確率でステアリングの操舵方向、つまり、旋回方向と逆に大きな横加速度が発生する。そこで、前記操舵速度に基づいて切返し操舵による前記横加速度の増大を予測した場合にも、前記シート姿勢制御を実行することで、早いタイミングでシート姿勢制御の駆動動作を開始することができ、乗員の良好なホールド性を実現することができる。
【0008】
前記した装置において、前記姿勢制御手段は、前記操舵速度の大きさが操舵速度閾値より大きく、かつ、前記横加速度の大きさが前記第1加速度閾値よりも小さく前記操舵速度の向きとは左右逆向きの第2加速度閾値より大きくなった場合に、前記シート姿勢制御を実行するように構成することができる。
【0009】
操舵速度の大きさが操舵速度閾値より大きく、さらに、横加速度の大きさが、第1加速度閾値よりも小さく操舵速度の向きとは左右逆向きの第2加速度閾値よりも大きくなった場合には、切返し操舵による横加速度の増大が予測できる。そこで、この場合にシート姿勢制御の駆動動作を開始することで、横加速度の大きさが第1加速度閾値より大きくなる前にシート姿勢制御の駆動動作を開始することができるので、乗員の良好なホールドを実現することができる。
【0010】
前記した装置において、前記第2加速度閾値は、前記第1加速度閾値の半分より小さくすることができる。このようにすることで、適切なタイミングでシート姿勢制御を開始して、良好なホールド性を実現することができる。
【0011】
また、前記操舵速度閾値は、100〜150deg/sとすることが望ましい。このようにすることで、適切なタイミングでシート姿勢制御を開始して、良好なホールド性を実現することができる。
【0012】
そして、前記姿勢制御手段は、前記シート姿勢制御中において、横加速度の大きさがリセット閾値よりも小さくなった場合に、前記シート姿勢制御を終了するように構成することができる。
【0013】
さらに、前記第2加速度閾値の大きさは、前記リセット閾値の大きさよりも小さくしておくと、適切なタイミングでシート姿勢制御を開始して、良好なホールド性を実現することができる。
【0014】
また、前記操舵速度閾値は、ユーザの操作により可変とされていることが望ましい。このような構成によれば、ユーザの好みに応じて操舵速度閾値を変更して、ユーザの好みのシートのホールド感を実現することができる。また、この場合には、前記制御装置は、前記操舵速度閾値を記憶する不揮発性記憶装置を備えることで、ユーザの設定を保持することができる。
【0015】
また、前記した装置において、前記シートバックは、乗員の背中が当たる中央部と、当該中央部の左右両側に配置されて前記中央部よりも前側に張り出した側部とを有していてもよい。この場合、前記アクチュエータは、前記中央部を動かすように設けられていてもよいし、前記側部を動かすように設けられていてもよい。
また、前記した装置において、前記アクチュエータは、前記シートバックの全体を動かすように設けられていてもよいし、前記シートの全体を動かすように設けられていてもよい。
【0016】
前記した装置において、前記シートバックは、シートバックフレームと、シートバックパッドとを有し、前記シートバックパッドの後方で前記シートバックフレームに支持され、乗員からの後退移動荷重が前記シートバックに作用すると後退移動可能に構成された受圧部材をさらに備えることができる。この場合、前記アクチュエータは、前記受圧部材を動かすように設けてもよい。
【0017】
前記横加速度取得手段は、乗物の速度と、操舵角とに基づいて、横加速度を計算により取得するように構成することが望ましい。
【0018】
横加速度を横加速度センサにより取得した場合には、乗物の傾斜や路面の轍などにより横加速度の値が過敏に変化しやすいが、このように、乗物の速度と操舵角とに基づいて計算により取得した横加速度を用いることで、簡単な構成で横加速度の過敏な変化を抑制して安定した制御を行うことができる。
【0019】
そして、この場合には、前記横加速度取得手段は、横加速度GCを
R=(1+AV)/(L/φ)
GC=V/R
A:車両固有の定数であるスタビリティファクタ
L:車両のホールベース
φ:操舵角
R:旋回半径
により計算することができる。
【0020】
前記した装置において、前記横加速度取得手段は、横加速度センサから横加速度の値を取得するように構成してもよいし、車両が備える電子制御ユニットから横加速度の値を取得するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る乗物用シート装置としての車両用シート装置の斜視図である。
図2】車両用シート装置に内蔵されるシートフレームの斜視図である。
図3】姿勢制御機構の拡大斜視図である。
図4】姿勢制御機構の動作を示す平面図であり、(a)は通常時、(b)は右旋回時、(c)は左旋回時を示す。
図5】制御装置の構成を説明するブロック図である。
図6】シート姿勢制御の初期の処理を示すフローチャートである。
図7】右旋回中のシート姿勢制御の駆動動作の開始の判定および実行の処理を示すフローチャートである。
図8】左旋回中のシート姿勢制御の駆動動作の開始の判定および実行の処理を示すフローチャートである。
図9】車両走行時の操舵速度、横加速度および制御フラグを示すタイミングチャートである。
図10】第1変形例に係るシート装置の分解斜視図である。
図11】第2変形例に係るシート装置の分解斜視図である。
図12】第3変形例に係るシート装置の制御装置のブロック図である。
図13】第4変形例に係るシート装置の制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、乗物用シート装置の一例としての車両用シートの機械的構成を説明した後、姿勢制御機構の制御のための構成を説明することとする。
【0023】
<車両用シートの機械的構成>
図1に示すように、車両用シート装置1は、自動車の運転席に使用されるシート装置であり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを含むシートSを主に備えている。シートバックS2は、乗員の背中が当たる中央部S21とシートバックS2の中央部S21の左右両側に配置されて中央部S21よりも前側に張り出した側部S22とを有している。なお、車両用シート装置1は、運転席に限らず、助手席または後部座席など、任意のシート位置に設置することができる。
【0024】
シートクッションS1およびシートバックS2には、図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とから主に構成されている。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、ウレタンフォームなどのクッション材からなるシートクッションパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成され、シートバックS2は、シートバックフレームF2に、クッション材からなるシートバックパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成されている。
【0025】
シートバックフレームF2は、その下部がシートクッションフレームF1の後部にリクライニング機構RLを介して回動自在に連結されている。これにより、シートバックS2は、シートクッションS1に対し前後に傾動可能となっている。
なお、本明細書において、前後、左右および上下は、リクライニング機構RLによってシートバックS2が倒されていない状態の車両用シート装置1に着座した乗員を基準とする。
【0026】
シートバックフレームF2は、上部フレーム10と、左右のサイドフレーム20と、下部フレーム30とを主に有して構成され、上部フレーム10、左右のサイドフレーム20および下部フレーム30が溶接などによって一体に結合された枠状に形成されている。そして、この枠状のシートバックフレームF2の内側には、乗員の背中を支持する受圧部材40と、受圧部材40の向きを左右に変えるための姿勢制御機構50が配置されている。
【0027】
受圧部材40は、樹脂などからなる弾性変形可能な板状の部材であり、左右のサイドフレーム20の間でシートバックパッドの後方に配置されている。詳しくは、受圧部材40は、シートバックパッドを介して乗員の背中を支持する受圧部40Aと、受圧部40Aの上部における左右両端から左右方向外側および前方に延出した支持部41とを有している。受圧部40Aは、シートバックS2の中央部S21の後ろに位置し、支持部41は、側部S22の後ろに位置している。支持部41は、上体上部を側方から支持するように機能する。
そして、受圧部材40は、その後側に配置された上部連結ワイヤW1および下部連結ワイヤW2と係合してこれらにより支持されている。上部連結ワイヤW1は、その両端部が姿勢制御機構50に係合して支持され、下部連結ワイヤW2は、その両端部がサイドフレーム20の左右内側に設けられた揺動機構21に係合して支持されている。このようにして、受圧部材40は、乗員からの後退移動荷重がシートバックに作用すると後退移動可能に構成されている。
【0028】
姿勢制御機構50は、受圧部材40の左右両側に配置され、制御装置100(図5参照)により制御されることで受圧部材40の左側部または右側部を前に押して移動させて受圧部材40の向きを左右に変えることができるように構成されている。
【0029】
図3に示すように、姿勢制御機構50は、主に、アクチュエータ51と、保持ブラケット52と、第1リンク部材53と、第2リンク部材54と、付勢部材としてのトーションバネ55とを備えて構成されている。
【0030】
アクチュエータ51は、第1リンク部材53および第2リンク部材54を回動させるための駆動源であり、正転および逆転が可能なステッピングモータ51Aと、ギヤボックス51Bと、出力軸51Cとを備え、出力軸51Cが上下方向に沿うように配置されている。アクチュエータ51は、保持ブラケット52によりサイドフレーム20に固定されている。そして、ステッピングモータ51Aからの駆動力がギヤボックス51Bで減速されて出力軸51Cに伝達されることで、出力軸51Cが回動するようになっている。
【0031】
第1リンク部材53は、長尺状に形成される板状部材であり、その一端部がアクチュエータ51の出力軸51Cに固定されることで、他端部が出力軸51Cを中心に前後方向に揺動可能となっている。第1リンク部材53の上面には、第2リンク部材54の揺動範囲を規定する2つの規制壁58が突出して設けられている。
【0032】
第2リンク部材54は、第1リンク部材53に回動可能に連結されている。第2リンク部材54の先端部には、前記した上部連結ワイヤW1の先端が回動可能に係合する連結孔54Bが形成されている。
【0033】
トーションバネ55は、一端が第1リンク部材53に係合し、他端が第2リンク部材54に係合しており、これにより、第1リンク部材53に対し第2リンク部材54を上から見て時計回りに付勢している。
【0034】
なお、ここでの説明では、図3に示した右側の姿勢制御機構50について説明したが、左側の姿勢制御機構50は、右側の姿勢制御機構50と左右対称に構成されている。
【0035】
受圧部材40は、図4(a)に示すように、通常時は、左右の姿勢制御機構50が作動せずに受圧部材40が後方に位置している。そして、図4(b)に示すように、右旋回時には、後述する制御装置100による制御によって、左側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aが正転し、第1リンク部材53が前方に回動して、受圧部材40が右に向けられるようになっている。一方、図4(c)に示すように、左旋回時には、制御装置100による制御によって、右側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aが正転し、第1リンク部材53が前方に回動して、受圧部材40が左に向けられるようになっている。なお、図4(b)の状態から図4(a)の状態に戻す場合には、左側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aを逆転させ、図4(c)の状態から図4(a)の状態に戻す場合には、右側の姿勢制御機構50のステッピングモータ51Aを逆転させる。このように、姿勢制御機構50は、受圧部材40を動かすことによってシートバックS2の中央部S21および側部S22を動かすようになっている。
【0036】
<姿勢制御機構の制御のための構成>
図5に示すように、制御装置100は、アクチュエータ51を駆動して受圧部材40の左右の向きを制御するため、横加速度取得手段110と、操舵速度取得手段120と、姿勢制御手段130と、閾値設定手段140と、記憶装置190とを備えている。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、記憶装置190に予め記憶されているプログラムを読み出して実行することで、これらの各手段を実現している。
【0037】
横加速度取得手段110は、車両にかかる横加速度を取得する手段であり、本実施形態においては、車輪速センサ91から取得した車輪速度と、操舵角センサ92から取得した操舵角とに基づいて横加速度GCを計算により算出する。具体的には、横加速度GCは、車輪速度から公知の方法により車体速度Vを決定し、車両固有の定数であるスタビリティファクタA、車両のホールベースL、操舵角φ、旋回半径Rを用いて、以下の式により計算することができる。
R=(1+AV)/(L/φ)
GC=V/R
【0038】
操舵速度取得手段120は、操舵速度を取得する手段であり、操舵角センサ92から取得した操舵角を微分する(例えば、今回値と前回値の差をとる)ことにより操舵速度SVを計算する。
【0039】
なお、本実施形態において、操舵角φおよび操舵速度SVは、ステアリングの操舵の角度および速度とするが、定数を変更すれば、車輪の操舵の角度および速度で計算してもよい。また、横加速度GCおよび操舵速度SVは、右を正、左を負とする。
【0040】
姿勢制御手段130は、横加速度取得手段110が取得した横加速度GCと、操舵速度取得手段120が取得した操舵速度SVとに基づいてアクチュエータ51を制御して、受圧部材40の向きを旋回方向に向けるシート姿勢制御を実行する手段である。姿勢制御手段130は、横加速度GCの大きさ(絶対値)が第1加速度閾値GCth1より大きくなった場合に、シート姿勢制御を実行するとともに、操舵速度SVの大きさ(絶対値)が操舵速度閾値SVthより大きく、かつ、横加速度GCの大きさが第1加速度閾値GCth1よりも小さく操舵速度SVの向きとは左右逆向きの第2加速度閾値GCth2よりも大きくなった場合にも、シート姿勢制御を実行するように構成される。すなわち、姿勢制御手段130は、切返し操舵による横加速度GCの増大を予測した場合にも、シート姿勢制御を実行するように構成されている。各閾値は、車両の特性に応じて走行試験により決定することができるが、操舵速度閾値SVthは、通常の乗用車であれば、例えば、100〜150deg/s程度に設定するとよい。また、第2加速度閾値GCth2は、第1加速度閾値GCth1の半分より小さいことが望ましい。これにより、適切なタイミングでシート姿勢制御を開始して、良好なホールド性を実現することができる。
【0041】
なお、ここで、第1加速度閾値GCth1自体は、正の値とし、右旋回時のように横加速度GCを負で扱う場合においては、横加速度GCの大きさが第1加速度閾値GCth1より大きいということをGC<−GCth1と表すこととし、第2加速度閾値GCth2および操舵速度閾値SVthなど、他の閾値についても同様に表す。
【0042】
また、姿勢制御手段130は、シート姿勢制御中において、横加速度GCの大きさがリセット閾値Rthよりも小さくなった場合には、アクチュエータ51を逆転させてシート姿勢制御を終了する。ここで、第2加速度閾値GCth2の大きさはリセット閾値Rthの大きさよりも小さい。このように第2加速度閾値GCth2を設定することで、適切なタイミングでシート姿勢制御を開始して、良好なホールド性を実現することができる。
【0043】
閾値設定手段140は、車両の操作パネル93から入力を受け、操舵速度閾値SVthを記憶装置190に書き込んで設定する手段である。すなわち、ユーザが操作パネル93を操作して操舵速度閾値SVthの大きさを大、中、小などから選択することで、操舵速度閾値SVthを変更して、好みのホールド感を設定することができるようになっている。
【0044】
記憶装置190は、RAMなどの揮発性記憶装置およびEEPROMなどの不揮発性記憶装置を含み、各センサから取得した値や、各手段が計算した値、閾値などの設定値を記憶する装置である。
【0045】
以上のように構成された制御装置100の、シート姿勢制御の駆動動作の開始の判定および実行の処理の一例を図6から図8を参照して説明する。なお、図6から図8のフローチャートは、スタートからエンドまでの処理が繰り返し行われる。また、制御フラグFLは、シート姿勢制御を行っていない通常時が0であり、受圧部材40を左に向けているとき(左旋回時)は2であり、右に向けているとき(右旋回時)は1であるとする。制御フラグFLの初期値は0である。
【0046】
図6に示すように、制御装置100は、車輪速センサ91および操舵角センサ92から値を取得し(S101)、横加速度取得手段110は、車輪速度と操舵角から横加速度GCを計算する(S102)。また、操舵速度取得手段120は、操舵角から操舵速度SVを計算する(S103)。そして、姿勢制御手段130は、旋回方向に応じてシート姿勢制御の開始の判定および実行(S200)を行う。具体的には、右旋回中であれば、図7の処理を行い、左旋回中であれば、図8の処理を行う。
【0047】
右旋回中の場合、図7に示すように、姿勢制御手段130は、横加速度GCが、負の第1加速度閾値GCth1より小さいか(横加速度GCの大きさがGCth1より大きいか)判定し、小さければ、(S111,Yes)、左のアクチュエータ51を正転させて(S115)、受圧部材40を右へ向け、制御フラグFLを1にする(S116)。
【0048】
一方、ステップS111で、横加速度GCが、負の第1加速度閾値GCth1より小さくない場合であっても(S111,No)、操舵速度SVが操舵速度閾値SVthより大きく(S112,Yes)、かつ、横加速度GCが操舵速度SVの向きとは左右逆向きの、つまり、負の第2加速度閾値GCth2よりも小さい(横加速度GCの大きさが第2加速度閾値GCth2よりも大きい)場合(S113,Yes)には、左のアクチュエータ51を正転させて(S115)、受圧部材40を右へ向け、制御フラグFLを1にする(S116)。ステップS112またはステップS113でNoと判定された場合、および、シート姿勢制御を開始した場合には、ステップS131へ進む。
【0049】
そして、姿勢制御手段130は、制御フラグFLが1の場合(S131,Yes)、つまり、受圧部材40を右に向けている場合には、横加速度GCが、負のリセット閾値Rthより大きいか(横加速度GCの大きさが、リセット閾値Rthより小さいか)判定し、大きければ(S132,Yes)、左のアクチュエータ51を逆転させて(S133)、受圧部材40を通常状態に戻し、制御フラグFLを0にする(S134)。一方、制御フラグFLが1でない場合(S131,No)および横加速度GCが、負のリセット閾値Rthより大きくない場合(S132,No)、制御フラグFLを変更することなく処理を終了する。
【0050】
左旋回中の場合、図8に示すように、姿勢制御手段130は、横加速度GCが、第1加速度閾値GCth1より大きいか判定し、大きければ(S121,Yes)、右のアクチュエータ51を正転させて(S125)、受圧部材40を左へ向け、制御フラグFLを2にする(S126)。
【0051】
一方、ステップS121で、横加速度GCが第1加速度閾値GCth1より大きくない場合であっても(S121,No)、操舵速度SVが負の操舵速度閾値SVthより小さく(操舵速度SVの大きさが操舵速度閾値SVthより大きく、)(S122,Yes)、かつ、横加速度GCが操舵速度SVの向きとは左右逆向きの、つまり、正の第2加速度閾値GCth2よりも大きい場合(S123,Yes)には、右のアクチュエータ51を正転させて(S125)、受圧部材40を左へ向け、制御フラグFLを2にする(S126)。ステップS122またはステップS123でNoと判定された場合、および、シート姿勢制御を開始した場合には、ステップS141へ進む。
【0052】
そして、姿勢制御手段130は、制御フラグFLが2の場合(S141)、横加速度GCが、リセット閾値Rthより小さいか判定し、小さければ(S142,Yes)、右のアクチュエータ51を逆転させて(S143)、受圧部材40を通常状態に戻し、制御フラグFLを0にする(S144)。一方、制御フラグFLが2でない場合(S141,No)および横加速度GCが、負のリセット閾値Rthより大きくない場合(S142,No)、制御フラグFLを変更することなく処理を終了する。
【0053】
このような処理によると、例えば、車両用シート装置1は、図9のように動作する。図9は、車両が周回コースを1周したときの操舵速度SV、横加速度GCおよび制御フラグFLの変化を示したものである。
【0054】
図9に示すように、時刻t0でストレートコースをスタートし、時刻t1の少し前から長い高速左カーブに入ると、操舵速度SVに変化は少ないが、右向きの横加速度GCが大きくなって第1加速度閾値GCth1より大きくなったとき(時刻t1)に、受圧部材40を左に向ける。そして、時刻t2において横加速度GCがリセット閾値Rthより小さくなると、受圧部材40を元に戻す。
【0055】
時刻t2を過ぎた辺りが右カーブの開始であるため、運転者は、それより少し前、つまり、左カーブが終わり始めるころからステアリングを戻して右に切り返す。このため、時刻t2付近で、操舵速度SVがSVthを超える。そして、この操舵速度SVが操舵速度閾値SVthを超えた状態で、さらに、横加速度GCが負の第2加速度閾値GCth2より小さくなると(時刻t3)、受圧部材40を右に向ける。
【0056】
次に、時刻t5において横加速度GCが負のリセット閾値Rthより大きくなると、受圧部材40を元に戻す。そして、時刻t5を過ぎた辺りが左カーブの開始であるため、運転者は、それより少し前、つまり、右カーブが終わり始めるころからステアリングを戻して左に切り返す。このため、時刻t5付近で、操舵速度SVが負の操舵速度閾値SVthを負側に超える。そして、この操舵速度SVが負のSVthを超えた状態で、さらに、横加速度GCが第2加速度閾値GCth2より大きくなると(時刻t6)、受圧部材40を左に向ける。
【0057】
同様にして、時刻t7〜t8にかけて、および、時刻t9〜t10にかけては、それぞれ左から右の切返し操舵、および、右から左の切返し操舵が行われるので、受圧部材40は、時刻t7に元に戻され、時刻t8に右に向けられ、時刻t9に元に戻され、時刻t10に左に向けられる。
【0058】
そして、最後に、左カーブからストレートに入ると、ステアリングを戻すために、操舵速度SVは右向きに大きくなるが、横加速度GCは左向きに大きくはならない。そのため、時刻t11において、受圧部材40が元に戻るが、その後、右向きに向けられることはない。
【0059】
ここで、従来であれば、横加速度GCが所定の加速度(第1加速度閾値GCth1に相当)を超えた場合に初めてシート姿勢制御の駆動動作を開始していたため、例えば、最初の切返し操舵においては、時刻t4においてシート姿勢制御の駆動動作を開始していたのであるが、本実施形態においては、切返し操舵でなされる速い操舵速度SVに基づいて、その後大きな横加速度GCが発生することを予測し、時刻t3でシート姿勢制御の駆動動作を開始することができる。そのため、図9に符号Dで示した時間だけ、従来よりも早くシート姿勢制御の駆動動作を開始することができ、乗員を良好にホールドすることができる。
【0060】
また、操舵速度SVだけではなく、横加速度GCが操舵速度SVとは左右逆の第2加速度閾値GCth2を超えることをシート姿勢制御の条件としているので、図9のt11付近で示したように、カーブからストレートに入る場合に、操舵速度SVが一時的に大きくなったとしても、シート姿勢制御に入ることはない。
【0061】
以上のように、本実施形態の車両用シート装置1によれば、切返し操舵をした場合など、急操舵をした場合に、早いタイミングでシート姿勢制御の駆動動作を開始し、乗員の良好なホールドを実現することができる。
【0062】
また、車両用シート装置1は、ユーザの操作により操舵速度閾値SVthを可変とされているので、ユーザの好みのホールド感を実現することができる。
【0063】
さらに、車両用シート装置1において、横加速度取得手段110は、車輪速度と操舵角とに基づいて横加速度を計算により取得するため、簡単な構成で横加速度の過敏な変化を抑制して安定した制御を行うことができる。
【0064】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
【0065】
例えば、前記実施形態においては、図1に示すシートバックS2における乗員の背中が当たる中央部S21の後ろに配置された受圧部材40の向きを左右に変えることで乗員のホールド感を高める構成としていたが、シートバックS2の側部S22の向きのみを左右に変えることで乗員のホールド感を高める構成としてもよい。
【0066】
また、図10に示す第1変形例のように、シートバックS2の全体をアクチュエータ51により動かすように構成してもよい。例えば、シートバックS2の下端に下方に延びる回転軸61を設け、シートクッションS1に、回転軸61を回転可能に支持する支持部62を設け、シートバックS2をシートクッションS1に対して左右に揺動可能に設ける。そして、シートクッションS1の後部の左右両側に姿勢制御機構50(アクチュエータ51)を設けてシートバックS2の適宜な箇所を左右の姿勢制御機構50で前方に押すことで、シートバックS2の全体を動かすことができる。このような構成によっても、乗員の良好なホールド性を実現することができる。
【0067】
また、図11に示す第2変形例のように、シートSの全体をアクチュエータ51により動かすように構成してもよい。例えば、シートSの下に、シートSを支持する台座71を設け、台座71に回転テーブル72を設ける。そして、回転テーブル72にシートSを固定する。さらに、台座71の後部の左右両側に姿勢制御機構50(アクチュエータ51)を設けてシートクッションS1の適宜な箇所を左右の姿勢制御機構50で前方に押すことで、シートSの全体を動かすことができる。このような構成によっても、乗員の良好なホールド性を実現することができる。
【0068】
前記実施形態においては、横加速度を、車輪速度と操舵角とに基づいて計算により取得していたが、図12に示す第3変形例のように、横加速度センサ94から取得してもよい。また、横加速度や操舵速度は、車両が備える電子制御ユニットが提供可能である場合には、図13に示す第4変形例のように、電子制御ユニット(ECU)95に問い合わせて取得してもよい。
【0069】
前記実施形態においては、操舵速度と横加速度に基づいて切返し操舵による横加速度の増大を予測していたが、横加速度によらず、操舵速度に基づいて切返し操舵による横加速度を予測するように構成してもよい。
【0070】
前記実施形態では、乗物用シート装置として、自動車で使用される車両用シート装置1を例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート装置、例えば、スノーモービル、船舶、航空機などで使用されるシートに適用することもできる。
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