(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記担体が、セッコウ、排煙脱硫中に形成される硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム又は硫酸バリウムデンプン、天然デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、砂、シリカ、アルミノケイ酸、粘度物質、ゼオライト、炭酸カルシウム、ポリスチレンビーズ及び/又はポリアクリレートビーズのうち1つ以上から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状湿潤及び疎水化添加剤。
前記添加剤が、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エトキシル化脂肪族アルコール及びこれらの混合物の1つ以上から選択される水溶性又は水分散性結合剤材料を、脂肪酸及び脂肪酸エステル及びその他フィルム形成ポリマーと共に追加的に含む顆粒を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状湿潤及び疎水化添加剤。
前記顆粒が、総組成物は常に100重量%からなるという条件に基づき、総重量100%に基づいて、顆粒状組成物の総重量に基づいて5〜80重量%の担体と、顆粒状組成物の総重量に基づいて3〜45重量%の結合剤と、顆粒状組成物の総重量に基づいて5〜90%のジシロキサンと、を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状湿潤及び疎水化添加剤。
亜鉛、鉄、銅、バリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム及びアンモニアのうち、1つ以上のパルミチン酸塩、ステアリン酸塩、又はオレイン酸塩、シラン又はシロキサン疎水性粉末から選択される、1つ以上の疎水化材料を追加的に含む、請求項10に記載のセメント系材料ドライミックス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態では、Zは、2〜6個(2個及び6個を含む)の炭素原子の直鎖又は分枝鎖二価炭化水素ラジカルであり、更に、R
8は、OH、H、1〜6個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、及びアセチルからなる群から選択されるが、最も好ましくはOHであり、下付き文字a≧0、b≧0、及びc=0であり、ただし、a+b≧1である。
【0015】
更なる選択肢では、Zは、2〜6個(2個及び6個を含む)の炭素原子の直鎖又は分枝鎖二価炭化水素ラジカルであり、R
8は、OH、H、1〜6個の炭素原子の一価炭化水素ラジカル、及びアセチルからなる群から選択されるが、最も好ましくはOHであり、下付き文字a>1、下付き文字b≧0であり、下付き文字c=0である。あるいは、aは≧3で、b及びcは両方ともゼロである。更なる選択肢では、a及びbは両方とも≧3でa≧bであり、cはゼロである。
【0016】
一実施形態では、R
1及び/又はR
3は、例えば1つ以上のC−F結合を有することによって置換基を含んでよい1〜4個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカル、任意に置換されたアリール基、及びアリール基を含有する4〜9個の炭素の炭化水素基からなる群から選択され、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、例えば1つ以上のC−F結合を有することによって置換基を含んでよい1〜4個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカル、典型的には、メチル又はエチル基からなる群から選択される。あるいは、R
1及び/又はR
3は任意に置換されたアリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、例えば1つ以上のC−F結合を有することによって置換基を含んでよい1〜4個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカル、典型的には、メチル又はエチル基からなる群から選択される。
【0017】
一選択肢では、R
2は、7〜102個の炭素からなる直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基、又は任意に置換されたアリール基から選択される。
【0018】
具体的に好ましいジシロキサンとして、以下の組成のジシロキサンが挙げられる。
【化3】
式1a
式1b
式中、式1a及び1bのそれぞれの場合において、R
1、R
4及びR
5は上述のものであり、yは2〜7の整数であり、あるいは、yは2〜5の整数であり、xは5〜10の整数であり、あるいは、xは6、7又は8である。アリール基の両方又は片方は任意に置換されてよく、式1bでは、当然ながら、R
2は、1〜6個の炭素からなる分枝鎖又は直鎖炭化水素基である。例として
【化4】
式2a
式2b
式中、R
1、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基から選択される。
【化5】
式3
式中、R
1、R
3、R
4、R
5、x及びyは上述のものであり、例えば以下のものである。
【化6】
式4
式中、R
1、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基から選択される。
【化7】
式5
式中、y、R
1、R
3、R
4及びR
5は、上述のものであり、zは5〜15の整数であり、あるいはzは8〜12の整数であり、vは2〜10の整数であり、あるいは、vは2〜6の整数である。例として
【化8】
式6
式中、R
1、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基から選択される。
【化9】
式7
式中、R
1、R
3、R
4及びR
5は、上述のものであり、yは2〜7の整数であり、あるいは、yは2〜5の整数であり、xは5〜10の整数であり、あるいは、xは6、7又は8である。例として
【化10】
式8
式中、R
1、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基から選択される。
【0019】
本明細書に記載のジシロキサンは、組成物中で界面活性剤として、及び/又は湿潤材料として使用できるが、高pH環境で加水分解反応によって分解する。上記が加水分解されると放出される疎水化剤は、例として以下のものである。
【化11】
【0020】
したがって、式1a及び2aの場合、加水分解後の疎水化分子は以下のものであり、
【化12】
【0021】
式1b及び2bの場合、加水分解後の疎水化分子は以下のものであり、
【化13】
【0022】
したがって、式3、4、5及び6の場合、加水分解後の疎水化分子は以下のものであり、
【化14】
【0023】
式7及び8の場合、加水分解後の疎水化分子は以下のものである。
【化15】
【0024】
それぞれの場合において、R
1及びR
3は上述のものである。
【0025】
担体粒子は、上記のように、別の必須成分である。担体粒子は、1つ以上の好適な水溶性、非水溶性、又は水分散性粒子を含む。好ましい担体粒子として、セッコウ、排煙脱硫中に形成される硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム若しくは硫酸バリウムデンプン、天然デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、砂、シリカ、アルミノケイ酸、粘度物質、ゼオライト、炭酸カルシウム、ポリスチレンビーズ及びポリアクリレートビーズ、又はこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい担体粒子は、セッコウ及び/又はゼオライトである。
【0026】
担体粒子は、1〜100μm、最も好ましくは1〜50μmの直径を有してよい。例えば、セッコウ系組成物で有益な役割を果たす材料の使用が好ましい一方で、水溶性担体粒子は、たとえそれ自体がかかる組成物中で活性材料でなくても、興味深い効果を有することがわかっている。更に、顆粒が、好ましくは1.4mmの最大直径を有することが好ましい。
【0027】
粒子状湿潤及び疎水化添加剤が粉末形態である場合では、典型的には、存在するたった2種類の成分は、かかるジシロキサンとかかる担体であり、ジシロキサンは、担体上又は担体内に吸収されている。任意の好適なプロセス、例えば噴霧乾燥、噴霧冷却、二軸押出、プリル化、ミクロカプセル化、高剪断造粒、流動化造粒を経て、ジシロキサンを担体内に吸収できる。ジシロキサンは、総組成物の1重量%〜50重量%、あるいは、1〜40重量%の量で存在し、追加の任意添加剤が存在しないかぎり、残りの重量は担体で占められ、存在する総量は組成物の100重量%であり、すなわち、上記の場合、2成分組成物において、担体は組成物の50〜99重量%、又はあるいは、組成物の60〜99重量%の量で存在する。
【0028】
粒子状湿潤及び疎水化添加剤が顆粒状物質の形態である場合では、以下に記載されるように、好適な造粒法、例えば欧州特許第0811584号及び同第496510号に記載されるものによって、添加剤を調製しなくてはならない。
【0029】
粒子状湿潤及び疎水化添加剤が顆粒状物質の形態のとき、1つ以上の追加成分が必要とされ得る。例えば、顆粒状物質は、担体及びジシロキサンを顆粒に結合するため、結合剤を含有してもよい。任意の好適な結合剤が利用できるが、存在する場合、水溶性又は水分散性結合剤材料が好ましい。これらは、例えば、室温、すなわち20〜25℃において、ろう様の高粘稠性又は均質な稠度を有し、25〜150℃の融点を有する材料であってよい。好適な水溶性又は水分散性結合剤材料の例として、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エトキシル化脂肪族アルコール、並びに、脂肪酸及び脂肪酸エステルとこれらの混合物、並びに、その他フィルム形成ポリマーが挙げられる。結合剤材料が実際に水溶性であることが好ましい。好ましい結合剤は、ポリビニルアルコール及び/若しくはエトキシル化脂肪族アルコール系ワックス、又は、エトキシル化脂肪族アルコールワックス/C
16〜20脂肪酸混合物である。
【0030】
粒子状湿潤及び疎水化添加剤は、好ましくは、顆粒状形態のとき、総重量100%に基づいて、総重量100%に基づいて5〜80重量%の担体と、3〜45重量%の結合剤と、5〜90%のジシロキサンと、あるいは、3成分組成物のときは総組成物が100%という考えのもと、5〜80重量%のジシロキサン(すなわち、顆粒が上記3成分からだけで製造され、担体の重量%が80%の場合、結合剤+ジシロキサンの総重量%が組成物の総重量の20%である)と、を含む。また、ジシロキサン及び結合剤を合わせて、担体の総重量の25〜45重量%を構成することも好ましい。また、担体対結合剤及びジシロキサンの合計の重量比は、3/2〜4/1の範囲内であること、並びに、結合剤対ジシロキサン成分の重量比が最大2/1であるが、好ましくは約3/2であることも好ましい。
【0031】
湿潤及び疎水化添加剤は、好ましくは顆粒状であり、造粒プロセスによって調製されていることを意味する。造粒プロセスにおいて、ジシロキサン及び水溶性又は水分散性結合剤は、液状で担体上に付着され、このように自由流動性固体粉末が形成される。造粒法は、欧州特許第0811584号などの様々な特許明細書で説明されている。欧州特許第0811584号に記載される造粒プロセスのうち任意のものを利用して、本発明による疎水化添加剤を調製してよい。
【0032】
疎水化添加剤が製造される造粒プロセスは、必要に応じて、ジシロキサン及び/又は結合剤を、別々に又は混合して加熱して、例えば流動性スラリーとして液体材料をもたらし、その後、担体が存在する場合、例えば流動床内で担体上に付着させ、それにより、例えば冷却によって、又は、溶媒の蒸発によって混加物のジシロキサン及び結合剤を担体粒子上で凝固させ、自由流動性粉末を形成する工程を含む。かかる添加剤の造粒方法は、多くの公報、例えば英国特許第1407997号、欧州特許第0210721号、及び欧州特許第0496510号に記載されている。
【0033】
造粒プロセスは、ジシロキサン及び結合剤が液相中で接触し、ジシロキサン及び結合剤の混合物が担体上に付着するのを確実にする。結合剤及びジシロキサン成分の混合物を、例えば、材料を単純に混ぜ合わせることによって、又は、安定化剤若しくは溶媒などの補助剤の存在下で混合させることによって、予め調製することが可能である。粉末製造の従来法、例えば造粒及び流動床コーティング法(両方とも、本明細書で用いるとき造粒の定義に含まれる)は、特に都合がよい。例えば、液状の結合剤(例えば、必要に応じて材料を加熱することによって得られる)、及び液状のオルガノポリシロキサン(必要であれば、少量の溶媒を混合することによる)は、塔内に入れられ、ジシロキサン及び結合剤の混合物上に担体粒子、例えば天然デンプンを付着させることによって、疎水化添加剤の形成を可能にできる。
【0034】
更なる方法では、ジシロキサン及び結合剤が流動床上に同時に噴霧される。噴霧すると、ジシロキサン及び結合剤を含む小さい液滴が形成される。結合剤が液状になるとき、この液滴は通常加熱される。その後、床上に進むときに液滴は冷却される。このように、これらは凝固して超微粒子状の粒子状疎水化添加剤を形成し、次に担体粒子上に付着する。ジシロキサン及び結合剤を、噴霧に先立って、又は、例えば別々のノズルから材料を噴霧することにより、両材料の噴霧された液滴を接触させることによって、混合してよい。次に、液状の両材料を含む液滴の凝固を、例えば、対向する冷気流を使用して、液滴の温度をより迅速に下げることによって促進してよい。あるいは、存在する全ての溶媒の蒸発を促す対向気流の使用によって、凝固を促進してよい。凝固促進の別の方法は、当業者には明らかであろう。完全な凝固は、担体上に付着される混合に先立って、好ましくは起こらない。その後、超微粒子状の粒子状湿潤及び疎水化添加剤を塔の底部で回収する。
【0035】
更なる方法では、ジシロキサン及び結合剤は、担体を含むドラムミキサー内に同時に噴霧される。噴霧すると、ジシロキサン及び結合剤を含む小さい液滴が形成される。担体粒子と接触すると、液滴は部分的に冷却される。混合終了後、部分的に冷却された粒子を流動床に移し、そこで周囲空気によって冷却を完了する。その後、粒子状湿潤及び疎水化添加剤の超微粒子状粒子を、流動床から直接回収する。任意に、粒子をふるい分けによって更に選別し、サイズが小さい又は大きいいかなる物質も実質的に含まない、疎水化添加剤の粒子を生成してよい。有用である典型的な装置は、Eirich(登録商標)パン型造粒機、Schugi(登録商標)ミキサー、Paxeson−Kelly(登録商標)二心ブレンダー、Lodige(登録商標)すき刃ミキサー、又は多くの種類の流動床装置のうちの1つ、例えばAeromatic(登録商標)流動床造粒機である。
【0036】
別の造粒プロセスでは、結合剤の水溶液又は乳濁液中に、ジシロキサンを乳化、又は少なくとも分散する。得られた乳濁液を、例えば噴霧によって、例えば流動床内で担体上に液状で付着させ、水の蒸発によって混加物のジシロキサン及び結合剤を担体上で凝固させ、自由流動性粉末を形成する。
【0037】
造粒後、使用した方法に関わらず、続いて粒子状湿潤及び疎水化添加剤を流動床から回収する。
【0038】
造粒に有用であり得る典型的な装置として、Eirich(登録商標)パン型造粒機、Schugi(登録商標)ミキサー、Paxeson−Kelly(登録商標)二心ブレンダー、Lodige(登録商標)すき刃ミキサー、Lodige(登録商標)連続的リングレイヤーミキサー、又は多くの種類の流動床装置のうちの1つ、例えばAeromatic(登録商標)流動床造粒機が挙げられる。任意に、粒子をふるい分けによって更に選別し、サイズが小さい又は大きいいかなる物質も実質的に含まない、疎水化添加剤の粒子を生成してよい。
【0039】
上記粒子状湿潤及び疎水化添加剤は、上述のように追加的に粉末上に吸着される、又は顆粒に粒状化される、好適な形態の追加成分を含んでよい。追加成分として、例えば、トリシロキサン系湿潤剤、粘度調整剤、顔料、着色剤、防腐剤、ゲル化剤、pH調整剤、緩衝剤、速硬剤、遅硬剤、空気連行剤、並びに充填剤、例えばシリカ及び二酸化チタンを挙げてよい。しかしながら、かかる追加の任意成分は、添加剤の総重量の5重量%を超えて含まれないことが好ましい。
【0040】
任意の好適なトリシロキサン系湿潤剤、例えば次の一般式を有するポリオキシアルキレントリシロキサンを添加剤として利用できる。
【化16】
式中、各R
6は、独立して、1〜4個の炭素原子を有する炭化水素であり、R
7は、以下のものである。
Z−(OC
2H
4)
d(OC
3H
6)
e(OC
4H
8)
fR
8
式中、Z及びR
8は、上述のものであり、dは1〜30であり、e及びfは、独立して、0〜10である。かかるトリシロキサンの市販例は、Dow Corning CorporationのSylgard B 309である。
【0041】
典型的には、粒子状湿潤及び疎水化添加剤を、粉末の乾燥粒子形態で、又は顆粒状形態でドライミックス中に混入する。次に、粒子状湿潤及び疎水化添加剤をセメント質粉末材料中に混合すると、安定な乾燥組成物が形成され、これはその形態で容易に保管又は輸送することができる。
【0042】
本発明によるセメント系材料中に存在する粒子状湿潤及び疎水化添加剤の量は、総セメント質組成物中に0.01〜5重量%の担体が存在する、すなわち、典型的には、典型的な顆粒の全重量は、約50%の担体及び約50%の結合剤/ジシロキサンであるから、約0.02〜10重量%の顆粒が存在するようにする。あるいは、担体成分の量は、存在するセメントの0.05〜5重量%であり、更なる選択肢では、0.05〜1.0重量%である。セメント系材料中に存在するジシロキサンの最大量は、存在するセメントの重量に基づき約2重量%であることが好ましく、最も好ましくは、セメント系材料の重量に基づき0.5〜1重量%である。
【0043】
典型的には、セメント系材料は、追加的に1つ以上の疎水化材料を含み、かかる好適なシリコーン系疎水化(hydrophing)材料及び/又はシラン系疎水化材料、並びに、例えば、アンモニア、アルカリ金属、アルカリ土類金属、若しくは遷移金属のパルミチン酸塩、ステアリン酸塩、若しくはオレイン酸塩、又はこれらの混合物は、亜鉛、鉄、銅、バリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、及びアンモニアの、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、又はオレイン酸塩から選択されてよく、好ましくは、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、オレイン酸ナトリウム、及びオレイン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛から選択される。最も好ましくは、塩は、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムである。固まったセメント系材料中に残留するアルカリ金属カチオンが、内部でエフロレッセンスを引き起こすことが知られていることから、最も好ましくないステアリン酸金属は、ステアリン酸アルカリ金属である。
【0044】
ステアリン酸の意味とは、全アニオンがステアリン酸アニオンである100%ステアリン酸塩から、どちらかといえば実質的にステアリン酸及びパルミチン酸の塩の混合物である市販のステアリン酸までの、任意のものであると理解されるであろう。
【0045】
上述のセメント系材料中に存在するかかる疎水化材料の量は、水がセメント質ドライミックスに混入された時点で作り出される最終製品の疎水性の必要性によって決定される。典型的には、セメント系材料は、セメント系材料の0.01〜5重量%の疎水化材料をも含む。あるいは、疎水化材料成分の量は、存在するセメントの0.05〜5重量%であり、又は更なる選択肢では、0.05〜1.0重量%である。
【0046】
本発明の第2の態様によるセメント系材料も、更なる任意成分を含む。これら更なる任意成分として、砂、充填剤、並びにセメント系材料中に従来から見出されるその他材料、例えば石灰、骨材、速硬剤、空気連行剤、顔料、遅硬剤、及びポゾラン材を挙げてよい。好ましくは、セメント系材料は、セメント、コンクリート、モルタル、又はグラウトなどである。
【0047】
水がドライミックス中に混入されると、上述のジシロキサンは、最初は湿潤剤として機能するが、セメント系材料の環境が塩基性であるため、本明細書に記載する顆粒状粒子を含むセメント質組成物内に水が混入されると開始される加水分解反応によって、徐々に分解する。しかしながら、本開示によると、得られる分解産物の少なくとも一部は疎水性であり、そのため、湿潤剤の一部として機能した後、その分解に続いて、セメント質混合物の疎水化という好ましい硬化を有する。
【0048】
それぞれの場合において、上記疎水性分解産物は、水の添加前にセメント系材料中の顆粒状添加剤に存在したジシロキサンが、分解後にわずかに存在することによって、得られるコンクリート又は類似材料の疎水性を改善する。
【0049】
本発明の第3の態様では、セメント系材料中に本発明の第1の態様による疎水化添加剤を混合することによる、セメント系材料に疎水性を付与するプロセスが提供される。混合は、機械的手段、又は当該技術分野において既知の任意の他の適当な方法によって実施されてよい。
【0050】
本発明の組成物の使用:
ドライミックス中での使用に加えて、本発明の顆粒は、使用前に溶媒、例えば水が添加されるドライミックスとして保管されるコーティング、特に疎水化コーティング中で利用できる。
【0051】
典型的には、コーティング配合物は、乳化、構成成分の相溶化、レベリング、流動、及び表面欠陥の削減の目的で、湿潤剤、つまり界面活性剤を必要とする。加えて、これらの添加剤は、硬化した、つまり乾燥したフィルムにおいて、改善された摩耗耐性、ブロッキング防止性、親水特性、及び疎水特性などの改善をもたらし得る。コーティング配合物は、溶媒性コーティング、水性コーティング、及び粉末コーティングとして存在し得る。
【0052】
コーティング組成物は、建築用コーティング、自動車用コーティング及びコイルコーティングなどのOEM製品コーティング、産業保全用コーティング及び船舶用コーティングなどの特殊用途コーティングとして利用することができる。その他可能性のある用途として、家庭用ケア、パルプ及び紙分野での応用、並びに繊維での利用が挙げられる。
【実施例】
【0053】
ここで、本発明を詳細に説明する多くの実施例を以下に示すが、これらは本発明の範囲を制限すると解釈されない。実施例中の全ての部及び百分率は重量ベースであり、全ての測定値は、それとは異なると記載されないかぎり、室温(典型的には、20℃±1〜2℃)で得られたものである。
【0054】
一連のサンプルを下記のように調製した。
【0055】
粉末状オルガノ変性シロキサン1
19.6gの次の式を有するジフェニルジシロキサンを
【化17】
(式中、R
1、R
4及びR
5はそれぞれメチル基である)、60.3gの水性ポリビニルアルコール溶液(固形分20%を含む)中で、ローター/ステーターミキサー(Ultraturrax)を用いて3分間混合し、乳濁液を形成した。使用したポリビニルアルコールは、Hoppler粘度計を用いて固形分4%のとき3.5mPa.sの粘度と、88%の加水分解率(調製中に88%のポリビニルアセテート基がアルコール基に加水分解される)を有する、KurarayのMowiol(登録商標)4/88とした。39.8gの得られたクリーム状乳濁液を、100.1gの粒径が2〜5μmであるゼオライト(INEOSのDOUCIL(登録商標)4A)に注ぎ、その全てを家庭用キッチンフードミキサーに入れて、総混合時間である15〜30秒間、最大混合速度で攪拌し、顆粒状粉末を得た。顆粒状粉末を、NiroのStrea−1cc流動床中で15分間乾燥し、ふるい分けして、直径0.5mmを超える粒子を全て除去した。得られた顆粒状粉末を、以降、粉末状オルガノ変性シロキサン1と称する。
【0056】
粉末状オルガノ変性シロキサン2
20gの次の式のジシロキサンを、
【化18】
60gの水性ポリビニルアルコール溶液(固形分20%)(KurarayのMowiol(登録商標)4/88)中で、ローター/ステーターミキサー(Ultraturrax)を用いて3分間混合し、乳濁液を形成した。39.8gの得られたクリーム状乳濁液を、家庭用キッチンフードミキサー中の、101gの粒径が約2〜5μmであるゼオライト(INEOSのDOUCIL 4A)に注ぎ、最大混合速度で15〜30秒間攪拌し、顆粒状粉末を得た。顆粒状粉末を、NiroのStrea−1cc流動床中で15分間乾燥し、ふるい分けして、直径0.5mmを超える粒子を全て除去した。得られた顆粒状粉末を、以降、粉末状オルガノ変性シロキサン2と称する。
【0057】
粉末状オルガノ変性シロキサン3
19.9gの次の式のn−オクチルジシロキサンを、
【化19】
60gの水性ポリビニルアルコール溶液(固形分20%)(KurarayのMowiol(登録商標)4/88)中で、ローター/ステーターミキサー(Ultraturrax)を用いて3分間混合し、乳濁液を形成した。39.8gの得られたクリーム状乳濁液を、家庭用キッチンフードミキサー中の、101gの粒径が約2〜5μmであるゼオライト(INEOSのDOUCIL 4A)に注ぎ、最大混合速度で15〜30秒間攪拌し、顆粒状粉末を得た。顆粒状粉末を、NiroのStrea−1cc流動床中で15分間乾燥し、ふるい分けして、直径0.5mmを超える粒子を全て除去した。得られた顆粒状粉末を、以降、粉末状オルガノ変性シロキサン3と称する。
【0058】
比較粉末状オルガノ変性シロキサン1
19.9gの1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(プロピル(ポリ(EO))アセテート)トリシロキサンを、60.2gの水性ポリビニルアルコール溶液(固形分20%)(KurarayのMowiol(登録商標)4/88)中で、ローター/ステーターミキサー(Ultraturrax)を用いて3分間混合した。40.3gの得られたクリーム状乳濁液を、家庭用キッチンフードミキサー中の、104.3gの粒径が約2〜5μmであるゼオライト(INEOSのDOUCIL 4A)に注ぎ、最大混合速度で15〜30秒間攪拌し、顆粒状粉末を得た。顆粒状粉末を、NiroのStrea−1cc流動床中で15分間乾燥し、ふるい分けして、直径0.5mmを超える粒子を全て除去した。得られた顆粒状粉末を、以降、比較粉末状オルガノ変性シロキサン1と称する。
【0059】
比較粉末状オルガノ変性シロキサン2
ガラス毛管法(ASTM D445−11a 透明及び不透明な液体の動粘度に対する標準的試験方法)を用いて、25℃において41mm
2/s(41cSt)の粘度を有する、19.6gのトリメチルシロキシ末端ジメチル,メチル(プロピル(ポリ(EO)(PO))ヒドロキシ)シロキサンを、60.2gの水性ポリビニルアルコール溶液(固形分20%)(KurarayのMowiol(登録商標)4/88)中で、ローター/ステーターミキサー(Ultraturrax)を用いて3分間混合し、乳濁液を形成した。41.3gの得られたクリーム状乳濁液を、家庭用キッチンフードミキサー中の、100.6gの粒径が約2〜5μmであるゼオライト(INEOSのDOUCIL 4A)に注ぎ、最大混合速度で15〜30秒間攪拌し、顆粒状粉末を得た。顆粒状粉末を、NiroのStrea−1cc流動床中で15分間乾燥し、ふるい分けして、直径0.5mmを超える粒子を全て除去した。得られた顆粒状粉末を、以降、比較粉末状オルガノ変性シロキサン2と称する。
【0060】
粉末状オルガノ変性シロキサン1、2及び3及び比較粉末状オルガノ変性シロキサン1をそれぞれ一定量含む標準組成物を同一のプロセスで調製し、以下の表1で実施例1、2、3及び比較例1と称し、これらの動的湿潤の結果を湿潤剤を含まない対照材料と比較する。試験のために、各シロキサンを以下に記載する方法(実施例1の調製)によって調製したが、それぞれの場合における違いは、サンプル1を、それぞれの代替粉末状オルガノ変性シロキサン又は比較粉末状オルガノ変性シロキサン1と置き換えたことのみとした。
【0061】
実施例1の調製:
0.52gの粉末状オルガノ変性ポリシロキサン1を、5リットルのステンレス鋼製の2ハンドル混合ボウルと、1.5リットルのステンレス鋼製ブレンダー有する、Krupsミキサー(KA940モデル)内に、以下のものと共に投入した。
・390gの、最大2mmのグラニュロメトリーを有する乾燥した砂;130gのセメント(CEM II 32.5N)
・1.3gのステアリン酸亜鉛次に、粉末を、60秒間、レベル2の速度で均一にブレンドする。
【0062】
得られた実施例及び比較例を、次の動的湿潤試験法を用いて比較した。
【0063】
粉末を均一化した後、レベル2の速度で65gの水をボウル内に投入した。水がドライミックスを完全に湿潤させるのに要した時間を測定し、以降、動的湿潤時間と称する。動的湿潤時間を、定めた量の砂、セメント、及びステアリン酸亜鉛のみを含む対照ドライミックスの対照動的湿潤時間と比較する(対照動的湿潤時間より短い動的湿潤時間は優れた湿潤性を引き起こし、したがって使い勝手が良い)。結果は、3回の測定の平均値から求める。
【0064】
【表1】
【0065】
これらの結果は、水がドライミックスを湿潤させるのに要する時間が著しく短いため、実施例1、2及び3が、対照及び比較例よりも良好であることを示す。
【0066】
静的湿潤試験に対して、上で調製された粉末状オルガノ変性シロキサン及び比較粉末状オルガノ変性シロキサンをそれぞれ一定量含む標準組成物を、表2aに示すシロキサンを以下のように使用して、同一のプロセスで調製した。
【0067】
【表2-a】
【0068】
実施例4:
54gの、0〜2mmのグラニュロメトリーを有する乾燥した砂、及び18gのセメント(CEM II 32.5N)からなるドライミックスを、閉鎖容器内で調製する。その後、0.18gのステアリン酸亜鉛及び0.072gの粉末状オルガノ変性シロキサン1を、閉鎖容器内に投入した。続いて、ドライミックスを60秒間ブレンドした。
【0069】
実施例5及び6、並びに比較例2及び3の調製は、粉末状オルガノ変性シロキサン1をそれぞれの粉末状オルガノ変性シロキサンに置き換えた以外は、実施例4の調製と同じとした。対照の場合は、シロキサンを添加しないことのみが異なっている。
【0070】
対照:
54gの、0〜2mmのグラニュロメトリーを有する乾燥した砂、及び18gのセメント(CEM II 32.5N)からなるドライミックスを、閉鎖容器内で調製する。その後、0.18gのステアリン酸亜鉛を閉鎖容器内に投入する。続いて、ドライミックスを60秒間ブレンドする。
【0071】
静的湿潤試験は以下のように実施した。
同じ重量の各実施例及び比較例を、別々のプレート上に置いた。それぞれのドライミックス上に、5滴の水をゆっくりと落とした。水滴がドライミックスを完全に湿潤させる時間を、Hanhartストップウォッチを用いて測定し、以降、静的湿潤時間と称する。
【0072】
静的湿潤時間を、定めた量の砂、セメント、及びステアリン酸亜鉛のみを含む対照ドライミックスの静的湿潤時間と比較する(対照静的湿潤時間より短い静的湿潤時間は優れた湿潤性を引き起こし、したがって使い勝手が良い)。結果は、5回の測定の平均値から求め、以下の表2bでは静的湿潤時間をSWTと記載する。
【0073】
【表2-b】
【0074】
平均液滴浸透時間が、対照ドライミックスの500秒超から、変性ドライミックスの300秒未満まで減少したことから、ステアリン酸Znのみをドライミックス中に使用した対照と比較して、全てのその他実施例は使い勝手が良好である。
【0075】
液滴浸透時間及びビーズ化試験の手順
上で調製された粉末状オルガノ変性シロキサン及び比較粉末状オルガノ変性シロキサンをそれぞれ一定量含む標準組成物の液滴浸透時間及びビーズ化を測定するため、実施例及び比較例を、以下の表3aに示すシロキサンを以下のように使用して、同一のプロセスで調製した。
【0076】
【表3-a】
【0077】
実施例7
108gの、0〜2mmのグラニュロメトリーの乾燥した砂、36gのセメント(CEM II 32.5N)、0.36gのステアリン酸亜鉛、及び0.144gの粉末状オルガノ変性シロキサン1を、1分間乾式ブレンドする。続いて、19gの混合水を加える。続いて、得られたスラリーを、予め作製した60×60×20mmの試験片型内に注ぐ。この型を振動台に3分間置き、その後、相対湿度100%の密閉容器内に入れる。24時間後、試験モルタルブロックを型から外し、温度25℃、相対湿度100%のチャンバ内で、7日間硬化させる。硬化7日後、モルタルブロックを、50℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0078】
実施例8、9、並びに比較例4及び5の調製物は、実施例7の調製での粉末状オルガノ変性シロキサン1の使用を、それぞれのシロキサンに置き換えた以外は、同じ方法で調製した。
【0079】
対照2a、2b及び2c
108gの、0〜2mmのグラニュロメトリーの乾燥した砂、36gのセメント(CEM II 32.5N)、0.36gのステアリン酸亜鉛を、1分間乾式ブレンドする。続いて、19gの混合水を加える。続いて、得られたスラリーを、予め作製した60×60×20mmの試験片型内に注ぐ。この型を振動台に3分間置き、その後、相対湿度100%の密閉容器内に入れる。24時間後、試験モルタルブロックを型から外し、温度25℃、相対湿度100%のチャンバ内で、7日間硬化させる。硬化7日後、モルタルブロックを、50℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0080】
対照3a
108gの、0〜2mmのグラニュロメトリーの乾燥した砂、36gのセメント(CEM II 32.5N)、0.36gのステアリン酸亜鉛を、1分間乾式ブレンドする。続いて、19gの混合水を加える。続いて、得られたスラリーを、予め作製した60×60×20mmの試験片型内に注ぐ。この型を振動台に3分間置き、その後、相対湿度100%の密閉容器内に入れる。24時間後、試験モルタルブロックを型から外し、温度25℃、相対湿度100%のチャンバ内で、7日間硬化させる。硬化7日後、モルタルブロックを、50℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0081】
対照3b
108gの、0〜2mmのグラニュロメトリーの乾燥した砂、36gのセメント(CEM II 32.5N)、0.504gのステアリン酸亜鉛を、1分間乾式ブレンドする。続いて、19gの混合水を加える。続いて、得られたスラリーを、予め作製した60×60×20mmの試験片型内に注ぐ。この型を振動台に3分間置き、その後、相対湿度100%の密閉容器内に入れる。24時間後、試験モルタルブロックを型から外し、温度25℃、相対湿度100%のチャンバ内で、7日間硬化させる。硬化7日後、モルタルブロックを、50℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0082】
液滴浸透時間及びビーズ化試験の手順
ピペットを用いて、変性モルタル表面上に水滴をそっと付着させる。水滴がモルタル表面に完全に吸収するのに要する時間を記録し(本明細書では液滴浸透時間と称する)、5回の独立した実験の平均値を計算する。
【0083】
ビーズ化効果は、モルタルブロックの表面上に付着された水滴の広がりと形状との間の定性的比較であり、0(モルタルブロックの表面を完全に湿潤させる液滴、すなわち、平らな液滴が得られる)から5(モルタルブロックの表面上で完全に球形の液滴を形成する液滴)までのランク式を用いて評価する。
【0084】
【表3-b】
【0085】
結果は、対照例2a、2b及び2cのビーズ化効果は非常に低く、値はゼロであり、液滴浸透時間(DET)が1〜2分であったことを示し、モルタルブロックの疎水化処理がなされていないことを示す。ステアリン酸で変性された対照例3a及び3bに関する結果は、ビーズ化効果値が1であり、DETが6〜8分であったことから、わずかな疎水性を示す。また、ステアリン酸及び標準的シリコーン超湿潤剤で変成された比較例4a、4b、5a及び5bは、シリコーン界面活性剤が、モルタルブロック全体にステアリン酸をより均一に分布するのを助けることから、対照よりも高い疎水性を呈する。しかしながら、実施例7、8a、8b、9a、9b及び9cは、ビーズ化効果値が3〜4であり、DETが平均すると25分を超えることから、平均して更に良好な疎水性を呈する(すなわち、モルタルブロック上での極めて良好な適用)。実施例により、新たなジシロキサンは、最初はモルタルブロックに親水性効果をもたらし、分解後は意外にも、モルタルブロックに高度な疎水性をもたらすことが示される。