(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレキシブル回路のうちの少なくともいくつかは、それらを通って延びる開口を備え、そのような開口は前記フレキシブル回路の可撓性を高めるように構成されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のバルーンアセンブリ。
前記フレキシブル回路のうちの少なくともいくつかは、テクスチャ付きバルーン対向面を含む前記フレキシブル回路の層内に少なくとも部分的に配置された熱感知装置を備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のバルーンアセンブリ。
前記フレキシブル回路のうちの少なくともいくつかは、前記テクスチャ付きバルーン対向面を含む層の上方に導電層を備え、前記導電層の少なくとも一部は前記熱感知装置に電気的に接続されている、請求項12に記載のバルーンアセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、多くの場合、治療効果を得るために目標組織を治療するための発電および制御装置に関する。いくつかの実施形態において、前記目標組織は、腎動脈および関連する腎神経を含む、神経を含むか、または神経に近接した組織である。他の実施形態において、前記目標組織は、動脈疾患に見られるような病変組織をさらに有し得る内腔組織である。
【0015】
本発明のさらに別の例示的な実施形態において、有用な生物学的反応を得るために、神経組織に対して、目標線量のエネルギーを送達する能力が用いられ得る。例えば、慢性的疼痛、泌尿器機能不全、高血圧症および幅広い種類の他の持続的症状は、神経組織の働きによって影響を受けることが知られている。例えば、腎動脈に近接した過剰な神経活動を無効にすることにより、薬剤に応答しないことがある慢性高血圧が改善または排除されることが知られている。神経組織は再生特性を自然には有さないことも知られている。従って、神経組織の伝導経路を途絶させることによって、過剰な神経活動に対して有用に影響を与えることが可能である。神経伝達経路を途絶させる場合に、近隣の神経または器官組織への損傷しないようにすることは特に有益である。エネルギー線量を指示および制御する能力は神経組織の治療に好適である。加熱のエネルギー線量においても、アブレーションのエネルギー線量においても、本願に記載し開示するエネルギー送達の精密な制御は、神経組織に向けられる。さらに、エネルギーの局部施用(directed application)は、典型的なアブレーションプローブを用いるときに必要とされるように厳密に接触させる必要なく、神経を目標とするのに十分である。例えば、偏心的な加熱は、アブレーションを引き起こすことなく、かつ、内腔組織の穿孔を必要とすることなく、神経組織を変性させるために十分に高い温度で適用される。しかしながら、本発明のエネルギー送達表面を、アブレーションプローブと同様に、組織を貫通し、アブレーティングエネルギーを電力制御および発生装置によって制御されている厳密なエネルギー線量で送達するように構成することも望ましい場合もある。
【0016】
いくつかの実施形態において、除神経治療の有効性は、1つ以上の治療パラメータを特定の患者に合わせるため、または付加的な治療の必要性を識別するために、治療の前、最中および/または後の測定によって評価される。例えば、除神経システムは、治療が目標組織または近接組織において神経活動の低下をもたらしたか、またはもたらしているかを評価するための機能を備えてもよく、これは治療パラメータを調整するため、または付加的な治療の必要性を示すためにフィードバックを提供する。
【0017】
本開示は血管系における本技術の使用に焦点を当てているが、本技術はまた他の内腔組織にも有用であろう。本発明は用いられ得る他の解剖学的構造は、食道、口腔、鼻咽頭腔、耳管および鼓室、脳の洞、動脈系、静脈系、心臓、喉頭、気管、気管支、胃、十二指腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、射精管、精管、尿道、子宮腔、膣管および子宮頚管である。
【0018】
システム概要
図1Aは、身体通路内において治療を実施するためのシステム100を示している。システム100は制御ユニット110を備える。制御ユニット110はカテーテル装置120にRFエネルギーを送達するためのRF発生装置を備えることができる。本願において開示する実施形態とともに使用可能である例示的な制御ユニットおよび関連するエネルギー送達方法は、「Power Generating and Control Apparatus for the Treatment of Tissue」と題された本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第13/066,347号に開示されている。前記特許文献は、参照によって本願に援用される。本願において開示する実施形態とともに使用可能であるさらなる例は、「Tuned RF Energy for Selective Treatment of Atheroma and Other Target Tissues and/or Structures」と題された本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,742,795号、「Selectable Eccentric Remodeling and/or Ablation of Atherosclerotic Material」と題された米国特許第7,291,146号、および「System for Inducing Desirable Temperature Effects on Body Tissue」と題された米国特許公開第2008/0188912号に開示されている。前記特許文献の全開示は参照によって本願に援用される。いくつかの実施形態において、特に単極エネルギー送達を用いるいくつかの実施形態では、前記システムは接地/共通電極も備え、前記接地/共通電極は、カテーテル装置もしくは制御ユニット100に電気的に接続された独立したパッドに関連付けられ得るか、または他の場合にはシステム100に関連付けられ得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、制御ユニット110は、治療を制御または記録するために、処理装置を備えるか、または他の場合には処理装置に接続される。前記処理装置は、典型的には、多くの場合、本願に記載する1つ以上の実施形態および方法のうちの一部またはすべてを実現するための機械可読プログラム命令またはコードを実行する1つ以上のプログラマブル処理装置ユニットを含む、コンピュータハードウェアおよび/またはソフトウェアを含む。前記コードは、多くの場合、メモリ(任意で、読出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリなど)のような有形媒体、および/または記録媒体(例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、CD、DVD、不揮発性固体メモリカードなど)において具体化されるであろう。前記コードおよび/または関連データおよび信号はまた、ネットワーク接続(例えば無線ネットワーク、イーサネット(登録商標)、インターネット、イントラネットなど)を介して、前記処理装置に、または前記処理装置から、送信されてもよい。また前記コードのうちの一部またはすべては、1つ以上のバスを介して、カテーテルシステムの構成要素間において、および前記処理装置内において、送信されてもよい。前記処理装置には、多くの場合、適当な標準または専用の通信カード、コネクタ、ケーブル等が含まれる。前記処理装置は、多くの場合、ソフトウェアコードによって処理装置をプログラミングすることにより、本願に少なくとも一部が記載される計算工程および信号送信工程を実施するように構成される。前記ソフトウェアコードは、単一のプログラム、一連の独立したサブルーチンまたは関連するプログラムなどとして記述される。前記処理装置は、標準または専用のデジタルおよび/またはアナログ信号処理ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを含んでもよく、好ましくは、患者の治療中に本願に記載する計算を実施するために十分な処理能力を有する。前記処理装置は、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレットコンピュータ、専用処理装置またはそれらの組み合わせを任意で含む。現代のコンピュータシステムに関連した標準または専用の入力装置(例えばマウス、キーボード、タッチスクリーン、ジョイスティックなど)および出力装置(例えばプリンタ、スピーカ、表示装置など)も含まれていてもよい。また複数の処理ユニット(または別個のコンピュータ)を有する処理装置が広範な集中型または分散型データ処理アーキテクチャにおいて用いられてもよい。
【0020】
最も好ましい実施形態において、システム100のための制御ソフトウェアは、システムの使い易さ、柔軟性、および信頼性をさらに高めるためにクライアントサーバースキーマを用いてもよい。「クライアント」とはシステム制御論理であり、「サーバ」とは制御ハードウェアである。通信マネージャは、加入しているクライアントおよびサーバにシステム状態の変化を送る。クライアントは、現在のシステム状態がどのようであるか、および状態の特定の変化に基づいて、どのコマンドまたは決定を実行するかを「知る」。サーバは、クライアントコマンドに基づいてシステム機能を実施する。前記通信マネージャは集中型情報マネージャであるので、新たなシステムハードウェアは、好ましくは先の既存のクライアントサーバーの関係に対する変化を必要とせず、よって新たなシステムハードウェアおよびその関連する制御論理は、単にその通信マネージャを介して管理される情報に対する付加的な「加入者」になり得る。この制御スキーマは、好ましくは、固定されたベースルーチンを有する堅牢な中央オペレーティングプログラムを有するという利点を提供し、好ましくは、前記システムによって動作するように設計された新たな回路部品を動作させるために、ベースルーチンに対する変更が必要ないことがある。
【0021】
拡張可能装置および電極アセンブリ
図1Aに戻ると、カテーテル装置120は、コンプライアントバルーン、ノンコンプライアントバルーンまたはセミコンプライアントバルーンである拡張可能装置130を備える。拡張可能装置130は、制御ユニット110に電気的に結合された複数の電極アセンブリを備える。そのような電極アセンブリは、単極または双極となるように電気的に構成することができ、さらに熱感知能力を有する。
【0022】
図1Bに示すように、電極アセンブリは、複数の円柱状の治療ゾーンA〜Dに従って、ここでは拡張状態で示されている拡張可能装置130上に配列される。その一部がさらに後述される他の実施形態では、前記治療システムの拡張可能装置130または他の構成要素は、治療ゾーンには存在しないか、または他の場合には治療エネルギーを送達するためには用いられないか、もしくは構成されていない付加的な電極アセンブリを備えていてもよい。
【0023】
治療ゾーンA〜Dおよび関連する電極アセンブリ140a〜140dを
図1Bの拡張可能装置130の「展開した」描写である
図1Cにさらに示す。いくつかの実施形態において、前記拡張可能装置は、4mmの直径と、2つの電極アセンブリ140a,140bを有したバルーンである。他の実施形態において、前記拡張可能装置は、5mmの直径と、3つの電極アセンブリ140a〜140cとを有したバルーンである。いくつかの実施形態において、前記拡張可能装置は、
図1Bに示すように、6mm、7mmまたは8mmの直径と、4つの電極アセンブリ140a〜140dとを有したバルーンである。
図1Dには2つの電極アセンブリ140a,140bを有した4mmのバルーンが示されており、
図1Eには3つの電極アセンブリ140a〜140cを有する5mmのバルーンが示されている。これらの形態のいずれについても、前記拡張可能装置は、約18mm〜約25mmのさらに好ましい範囲を含む、約10mm〜約100mmの作用長(working length)を有し得、これは
図1Bおよび
図1Cに示したすべての治療ゾーンA〜Dのおよその長手方向範囲である。電極アセンブリ140a〜140dは接着剤を用いてバルーンに取り付けられ得る。
【0024】
図1Fは、単極電極のアレイ190を備えた拡張可能装置の実施形態を概略的に示している(しかし、
図1B〜
図1Eおよび他の図に示した電極アレイも単極形態で用いられてもよい)。いくつかの場合において、拡張可能装置上の単極電極190の1つは、他の電極に対して共通電極または接地電極として機能するように構成されていてもよい。これに代わって、前記拡張可能装置上の別個の、または異なって形成および構成された電極(
図1F中に破線で示されたリング電極192のような)、または他の拡張可能装置上に位置するか(例えば
図1F中の参照番号194)、または他の場合にはカテーテルに関連付けられた電極が共通電極として構成されてもよい。さらに別の場合には、共通電極として機能するように接地パッドが患者の皮膚に固定されてもよい。
図1Fには明示的に示されていないが、前記単極電極は、本願に記載する他の実施形態と同様に、それぞれ近接して配置されてもよいし、または温度感知装置上に配置されてもよい。
【0025】
a.重複および非重複治療ゾーン
図1Bに戻ると、治療ゾーンA〜Dは長手軸線L−Lに沿って互いに長手方向に隣り合っており、電極アセンブリによって印加されるエネルギーが重複しない治療をもたらすように構成される。長手方向に隣接した双極電極アセンブリ140a〜140dによって適用される治療は、長手軸線L−Lに沿って周方向において不連続である。例えば、
図1Cを参照すると、治療ゾーンAに形成される損傷部は、好ましくは、いくつかの実施形態において、治療ゾーンBに形成される損傷部との、周囲における(この視野ではL−Lに対して側方方向の)重複を最小限にする。
【0026】
しかしながら、他の実施形態において、
図1Cに示す電極アセンブリのような電極アセンブリによって印加されるエネルギーは、少なくともある程度は、長手方向において、周方向において、および/または他の形で、重複してもよい。
図31および
図32は、電極3102,3104がどのように通電されて、重複した治療ゾーンを形成し得るのかの非限定的な例を概略的に示している。
図31および
図32には具体的に示していないが、電極3102,3104はそれぞれ双極電極対であってもよく(または単一の単極電極であってもよく)、それらの電極が互いから長手方向および周方向に偏倚されるように(例えば
図1Cにおけるように)、カテーテルバルーンまたは他の拡張可能装置の外面上に配置され得る。
図31に示すように、電極3102,3104の各々は、目標温度ゾーン(その外側境界は「TT」と標識されている)と熱プルーム(その外側境界は「TP」と標識けされている)とを含む治療ゾーンに関連付けられる(または電極と付着した(in apposition with)組織内にそのような治療ゾーンを形成するように構成されてもよい)。いくつかの実施形態において、前記目標温度ゾーンは、所望の目標処理温度もしくはそれ以上であるか、または所望の目標温度範囲内にある組織の領域を表わす。いくつかの実施形態において、前記熱プルームは、必ずしも目標温度または目標温度範囲内にはないが、前記熱プルームの外側の未治療のゾーンに対して温度の上昇を示す組織の領域を表わしている。
【0027】
電極/電極対の間の治療ゾーンが重複するか否かは、電極の幾何学的形状、電極配置密度、電極の配置、接地/共通電極の配置および幾何学的形状(単極の実施形態において)、エネルギー発生装置の出力設定、出力電圧、出力電力、デューティサイクル、出力周波数、組織特性、組織タイプなどを含むが、これらに限定されない多種多様な要因によって影響される。
【0028】
図31では、治療ゾーンの熱プルームは重複しているが、目標温度ゾーンは重複していない。
図32では、目標温度ゾーンおよび熱プルームの双方が重複している。いくつかの実施形態において、治療ゾーンの重複は、装置の周囲、および/または身体通路を包囲する組織の周囲において、実質的に連続的に延びていてもよい。他の実施形態では、治療ゾーンに重複が存在するが、その重複は周囲において実質的に連続しておらず、治療ゾーンに有意な不連続部が存在する。
【0029】
バルーンに搭載された電極のアレイを用いた少なくともいくつかの電気外科システムは、隣接する電極パッドの間に重複する治療ゾーンを形成することができ、少なくとも一部の場合において、身体通路の周囲において効率的にほぼ連続した治療ゾーンを形成することが実験的に判明している。1つの実験では、米国特許公開第2008/0188912号(この参照により余すところなく援用される)において、特に
図9C(本願では
図33として再現)に示され記載されているものに類似したカテーテルおよび拡張可能バルーンを用いて、治療ゾーンが周囲にほぼ連続して効果的に延在するように、隣接する電極対の間に重複する治療ゾーンを生成した。
図33に示すように、拡張可能バルーン20はバルーンの周囲に配置された双極電極対34のいくつかの長手方向に延びる列を備え得る。例えば
図1Cに示した電極アレイとは異なり、
図33に示す電極アレイは拡張可能バルーン20上において対称的に配列されている。
【0030】
図33のものに類似したカテーテルに基づいたバルーン電極アレイを用いた1つの実験において、無線周波数レジメンの様々な電力および継続時間(約60°C〜約75°Cで約5秒間〜約120秒間)で治療されたか、または未治療のままにされたかのいずれかである14本の腎血管の局所反応を、28±1日目および84日目に評価した。加えて、合計7匹の動物からの腎臓を光顕微鏡検査法によって評価した。
【0031】
腎臓および腎動脈を下に位置する筋肉とともにそのまま外植し、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定した。次に、固定した組織を、組織病理学的処理および評価に供した。各血管を、組織がなくなるまで、約3〜4mmごとに切り取り、処理し、パラフィン中に埋設して、5ミクロンで2回切断し、ヘマトキシリンおよびエオジン(H+E)およびエラスチントリクローム(ET)で染色した。腎臓は3段階(頭方、中心、および尾方)で切り取り、処理し、パラフィン中に埋設して、切断し、H+Eで染色した。結果として生じたスライドをすべて光顕微鏡検査法によって調査した。
【0032】
無線周波数レジメンの様々な電力および継続時間で治療されたか、または未治療のままである6つの急性の動脈(acute arteries)からの段階的切片(step section)の評価、および扶養される腎臓の評価は、中膜および血管周囲組織における凝固壊死および膠原質のヒアリン化を特徴とする急性熱変化を示した。
図34は、6対の電極によって75°Cプロトコルで10秒間にわたって治療した左腎動脈(Aと標識)および周囲組織の断面を示している。
図34において、周囲の熱損傷は、いくつかの神経分枝(矢頭によって示したような)、神経節(短い矢印)および隣接したリンパ節(LN)の一部への損傷を含む、点線の境界内において観測された。
図35は、6対の電極によって75°Cプロトコルで5秒間にわたって治療された右腎動脈および周囲組織の断面を示している。
図35では、周囲の損傷は、点線の境界内において観測され、(矢頭によって示したような)いくつかの神経分枝を含んでいる。
図34および
図35を参照すると、熱損傷は、左動脈と右動脈の中膜とにおいて治療された最も中央のセグメントでは周状であった。腎臓は治療に関連する変化を示さなかった。周囲の治療は、外因性の腎神経支配における損傷の到達および形成において有効であり、半径方向の到達範囲は最大深さ10mmであった。有意な再狭窄反応を引き起こす可能性がある程度のバルーン治療に起因する顕著な処置による損傷(procedural injury)は最小限であった。
【0033】
図36および
図37は、治療後27日における
図34の左腎動脈の付加的な断面を示している。
図38は75°CのRF治療の別の代表的な低倍率画像である。
図38の治療ゾーンは、残留した壊死中膜、および初期の平滑筋細胞増殖、繊維増殖および炎症性浸潤(例えばブラケット)による外膜の肥厚によって明らかである。
図38はまた、(破線によって示したように)隣接した外膜への治療ゾーンの伸展を示している。
【0034】
図39〜
図41はさらに、いくつかの実施形態において、治療ゾーンがRFエネルギー治療の間にどのように重複し得るかを示している。
図39〜
図41は、30秒の治療の経過中に感熱性ゲル(thermo−sensitive gel)で充填したシリンダ中に配置されたベシックス V2カテーテルを示している。
図39は、治療開始直後の感熱ゲルを示しており、ゲル中の四角いパッチは局所的な電極の加熱を示している。
図40に示したように、治療が進むにつれ、ゲル中のパッチは熱伝導によって大きさが増大し、接触しそうになる。
図41は、パッチの実質的な重複を示す、30秒の治療の完了時におけるゲルを示している。
【0035】
b.電極アセンブリ構造
図1C戻ると、各電極パッドアセンブリは、先端側電極パッド150a〜150d、中間尾部160a〜160d、基端側電極パッド170a〜170d、および基端側尾部180b,180d(電極パッドアセンブリ140b,140cについては図示せず)である4つの主要要素を備える。電極アセンブリ140a〜140dの細部構造について、
図2A〜
図2Cを参照しながら示し、記載する。
【0036】
図2Aは、
図1Cでは電極アセンブリ140として識別されている電極アセンブリ200の上面図を示している。電極アセンブリ200は複数の層を有するフレキシブル回路として構成されている。そのような層は連続していてもよいし、または不連続、すなわち、別々の部分から構成されていてもよい。
図2Bおよび
図2Cに示すように、絶縁体の基層202は電極アセンブリ200のための基礎を提供する。基層202はポリイミドのような可撓性ポリマーから構成することができる。いくつかの実施形態において、基層202は約0.5ミル(0.0127mm)の厚さを有する。複数の個別のトレースから構成された導電層204は、基層202の上面上に積層されている。導電層204は、例えば電着した銅の層である。いくつかの実施形態において、導電層204は約0.018mmの厚さを有する。絶縁層206は、導電層204が基層202と絶縁層206との間において流体に対して密封される(fluidly sealed)ように、導電層204の上部に不連続に、または連続的に積層されている。基層202と同様に、絶縁層206はポリイミドのような可撓性ポリマーから構成することができる。いくつかの実施形態において、絶縁層206は約0.5ミル(0.0127mm)の厚さを有する。他の実施形態において、絶縁層206は、PTFEまたはシリコーンのような完全なまたは部分的なポリマーコーティングである。
【0037】
図2Aに示す電極アセンブリ200は先端側電極パッド208を備える。この領域において、基層202は矩形形状を形成する。示したように、電極アセンブリ200はさらなる可撓性を提供するために複数の開口を備えてもよく、前記アセンブリのパッドおよび他の部分は、丸みを帯びているか、または曲線状の角部、移行部および他の部分を備えてもよい。いくつかの場合において、前記開口および丸みを帯びた/曲線状の形状構成は、手技中に複数の部位が治療される場合に必要とされるように、拡張可能装置が繰り返し拡縮される(保護シースからの展開および保護シース内への引き込みも必然的に伴う)ときに場合により起こるような、前記アセンブリのその拡張可能装置からの剥離に対する耐性を高める。
【0038】
先端側電極パッド208は、基層202の上面に積層された複数の個別のトレースを備える。これらのトレースは、接地トレース210、活性電極トレース212およびセンサトレース214を含む。接地トレース210は、センサ接地パッド218から側方に偏倚した細長い電極支持部216を備える。センサ接地パッド218は接地トレース210の細長い支持部216に電気的に接続され、先端側電極パッド208上で中心に位置する。ブリッジ220は、センサ接地パッド218の最も先端側の部分を接地トレース210の細長い電極支持部216の先端側部分に接続する。ブリッジ220は、該ブリッジがセンサ接地パッド218に向かうにつれて、幅が先細りになっている。いくつかの実施形態において、ブリッジ220は、所望の程度の可撓性を可能にするために比較的均一で細い幅を有している。細長い電極支持部216は、その基端部において幅が先細りになっているが、これは必須ではない。いくつかの実施形態において、細長い電極支持部216は、所望の程度の可撓性を可能にするために、その基端側部分においてはるかに細いトレースに急激に移行する。一般に、くびれ(necking)が示されているトレースの湾曲は、バルーン回復力およびより鋭い輪郭を示す引っ掛かり(snagging)の可能性を低減するために最適化される。前記トレースの形状および位置はまた、配備および使用中の歪みを防止するために、全体として電極アセンブリ200に寸法安定性を提供するように最適化される。
【0039】
図2Aの接地トレース210および活性電極トレース212は、同様の構造を共有する。活性電極トレース212も細長い電極支持部216を備える。
図2Bは、先端側電極パッド208の部分断面A−Aを示している。電極222は絶縁層206の一部の上に積層されて示されており、絶縁層206は、電極222が(導電層204の)接地トレース210の細長い電極支持部216に接続されることを可能にするために複数の通路(例えば穴)有する。
【0040】
図2Aに示すように、接地電極トレース210および活性電極トレース212は複数の電極を備える。各電極トレースに対して3つの電極222が備えられているが、より多数または少数の電極を用いることができる。加えて、各電極222は、他の装置および/または組織に引っ掛かる傾向を低減するために丸みを付けた角部を有し得る。電極222およびそれらに関連したトレースの上記の説明は、双極電極アセンブリの状況において記述されているが、当業者には同一の電極アセンブリが単極モードにおいても同様に機能することが分かるであろう。例えば、1つの非限定的な例として、活性電極トレース212,242に関連する電極を単極電極として用いてもよく、それらの電極の通電中には接地トレース210は接続を絶たれる。
【0041】
電極222間の長手方向の間隔を含む、複数の電極当たり4mmのおよその長手方向長さを有する腎性高血圧症適応のための好ましい実施形態が、狭窄反応(stenoic response)を防止しながら、最適な損傷部サイズおよび深さに関して、有効な組織リモデリングの結果を提供することが実験的に判定された。示した形態は、最終装置における可撓性およびプロファイルを最適化するために電極対の数を最小限にしようとするとともに、熱侵入の深さと、治療ゾーンに付随する組織への熱的損傷の回避とのバランスをとることよって得られた。しかしながら、電極サイズおよび配置の幾何学的配列は所望の治療効果に従って変化し得るので、示した形態は必要要件ではない。
【0042】
33匹のヨークシャ種ブタをベシックス バスキュラー(Vessix Vascular)の腎除神経高周波(RF)バルーンカテーテルによる腎除神経(RDN)に供した。ベシックス バスキュラーの電極設計による想定される腎除神経(Putative renal denervation)を、一連の設定(電極の長さ、温度および継続時間の関数)によって行い、ベッシクスの16mm外周の電極と、偏倚デザインを有する2mmおよび4mmの電極との間で、処置後7日目および28日目における安全性を比較した。腎動脈の組織切片(histologic section)を検査し、7日目および28日目における損傷、炎症、線維増多および石化を含むが、それらに限定されない組織の反応を評価した。
【0043】
ベシックス バスキュラーのRDN RFバルーンカテーテルによる腎動脈の治療は、動脈壁および隣接する外膜において一連の変化を生じた。これは、動脈/外膜の反応の、急性「傷害(injurious)」期から、慢性「反応/修復」期への進行を表す。腎動脈内の治療された領域は、動脈壁におけるこれらの変化の存在、および隣接する外膜組織内へのその拡大(「治療ゾーン」とみなされる)により明らかであった。
【0044】
7日目において、すべての電極は、長さ、治療温度または継続時間にかかわらず、一次傷害反応(primarily injurious response)を伴った。しかしながら、2mmおよび4mmの電極はまた、治療の継続時間にかかわらず、16mmのRF治療の7日目には観察されなかった初期の反応/修復反応を伴った。16mmの電極によって影響を受けた動脈周囲の全体的な範囲は、治療の継続時間にかかわらず、影響が典型的には最小限から軽度/中程度であった(それぞれ約25%未満から約25%以下〜75%の周囲が影響を受けた)より短い電極(2mmおよび4mm)と比較して、温度にかかわらず増大した(それぞれ軽度/中程度がマークされ、周囲の約75%超から100%に及んだ)。
【0045】
28日目には、時点にかかわらず、より短い4mmの電極を除くすべての治療群において高頻度の最小限の内膜新生が観察された。軽度/中程度の内膜新生は、治療群にかかわらず、28日目にのみに稀に観察されたが、16mmの電極は、より短い2mmおよび4mmの電極と比べて、軽度/中程度の内膜新生の発生における軽度で匹敵する増大を伴った。
【0046】
内皮細胞の剥離(すなわち喪失)は、任意の介入装置の通過に対する一般的な後遺症であり、ベシックス バスキュラー RDN RFバルーンカテーテルによる治療に対して予期される後遺症でもある。血栓形成を予防する上で内皮が重要であるため、剥離した領域におけるその回復を監視した。したがって、内腔表面の再内皮化の大きさ/範囲を、影響を受けた動脈のほぼ周囲に対して解明した。
【0047】
7日目において、2mmおよび4mmの電極は、完全な内皮化を有する動脈切片をそうでないものより多く有し、完全な内皮化は、2mmおよび4mmの電極のすべての動脈切片に存在した。16mmの電極によって治療した動脈切片では、線量にかかわらず、7日目において完全な内皮化を有することは観察されなかった。
【0048】
7日目において、炎症は、治療にかかわらず全体として典型的には最小限であったが、双方の16mmの電極は、線量にかかわらず、2mmおよび4mmの電極に比べて、炎症が全体的に増大した。2mmおよび4mmの電極では軽度/中程度の炎症性湿潤はほとんど観察されなかったが、16mmの電極では共通して頻繁にみられた。
【0049】
図2Aの実施形態では、各電極222は約1.14mm×0.38mmであり、電極222間に約0.31mmの隙間を有する。接地トレース210および活性電極トレース212の電極222は、約1.85mmだけ側方に離間されている。
図2Bに示した実施形態のようないくつかの実施形態において、電極222は、導電層204から約0.038mmの厚さを有する金のパッドであり、絶縁層206の上に0.025mm突出している。他のそのような好適な材料の使用を制限するわけではないが、金は非常に生体適合性であり、放射線不透過性であり、かつ電気伝導性および熱伝導性であるため、金は良好な電極材料である。他の実施形態では、導電層204の電極の厚さは、約0.030mm〜約0.051mmにわたり得る。そのような厚さにおいて、電極222の相対的な剛性は、例えば銅の導電層204と比較して、高くなり得る。このため、単一の電極とは対照的に、複数の電極を用いることによって可撓性を増大することができる。他の実施形態では、前記電極は、電極222について、0.5mm×0.2mmほど小さくてもよいし、または2.2mm×0.6mmほど大きくてもよい。
【0050】
良好な組織との接触を提供するために十分な高さを維持しながら、良好な可撓性を得るために絶縁層206の上方の金の厚さのバランスをとることは設計の最適化のために考慮すべき重要な事柄であるが、これはバルーンの展開または収縮中に引っ掛かり(snag)得る表面高さを回避するという目的と相殺される。これらの課題は、バルーンの圧力のような特定の処置の他の要素に従って変化する。多くの実施形態に関して、絶縁層206の上方に約0.025mm突出する電極は、10気圧(1013kPa)未満2気圧(203kPa)程度の低さのバルーン膨張圧力において良好な組織との接触を有するであろうことが判明している。これらの圧力は、血管形成術用バルーンの典型的な膨張圧力よりかなり低い。
【0051】
センサトレース214は先端側電極パッド208の中央に位置し、センサ接地パッド218に対面するセンサ電源パッド224を備える。これらのパッドは、
図2Cに示す部分断面図に示されているように、熱電対(例えばT型の構成:銅/コンスタンタン)またはサーミスタのような熱感知装置226の電源および接地極に接続することができる。
【0052】
熱感知装置226は基端側がセンサ電源パッド224に接続され、先端側がセンサ接地パッド218に接続されている。全体的な厚さを低減するのを助けるために、熱感知装置226は基層202内の開口内に配置される。いくつかの実施形態では、熱感知装置226は、著しく薄く、業界基準の約3分の2である0.1mmの厚さを有するサーミスタである。図示したように、熱感知装置226は、先端側電極パッド208の組織に接触していない側面上に位置する。したがって、熱感知装置226は、カテーテル120のような最終装置に組み込まれる場合に、電極構造とバルーンとの間に捕捉される。これは、サーミスタのような表面に実装される電気部品が典型的には鋭利な縁部および角部を有し、それらが組織に引っ掛かってバルーンの展開および/または後退時に問題を生じる可能性があるため、有利である。この配置はまた、はんだは通常は生体適合性ではないため、はんだ付けされた接続部が血液と接触しないようにする。さらに、前記熱感知装置は、その配置により、組織および電極222を表す温度を測定することができる。従来技術における設計は、典型的には、2つのアプローチ、すなわち組織に接触するか、または電極に接触するか、のうちの一方をとる。ここでは、これらの従来のアプローチはいずれも用いられない。
【0053】
組み合わせられた基層202、導電層204および絶縁層206は、矩形の先端側電極パッド208から、中間尾部228に向かって横幅が減少する。ここで、導電層204は、先端側電極パッドの接地トレース210、活性電極トレース212およびセンサトレース214とそれぞれ同一の広がりを有するトレースである、中間接地ライン230、中間活性電極ライン232および中間センサライン234を備えるように形成されている。
【0054】
組み合わせられた基層202、導電層204および絶縁層206は、中間尾部228から横幅が増大して、基端側電極パッド236を形成する。基端側電極パッド236は、先端側電極パッド208と同様に構成され、種々の相違は存在し得るが、本質的には同一である電極の幾何学的形状および熱感知装置の配列を有する。しかしながら、図示したように、基端側電極パッド236は、先端側電極パッド208から、中間接地ライン230に沿って延びる中心軸G−Gに対して、側方に偏倚されている。中間活性電極ライン232および中間センサライン234は、中心軸G−Gに対して平行な各軸線上において、基端側電極パッド236と側方に同一の広がりを有する。
【0055】
組み合わせられた基層202、導電層204および絶縁層206は、基端側電極パッド236から、横幅が減少して、基端側尾部238を形成する。基端側尾部238は、基端側接地ライン240、基端側活性電極ライン242、および基端側センサライン244、並びに中間活性電極ライン232および中間センサライン234を備える。基端側尾部238は、1つ以上の副配線ハーネスおよび/またはコネクタへの結合、最終的には制御ユニット110への結合を可能にするためにコネクタ(図示せず)を備える。これらのラインのそれぞれは、中心軸G−Gに対して平行なそれぞれの軸線に沿って延びる。
【0056】
図示したように、電極アセンブリ200は、軸線G−Gに関して先端側電極パッド208および基端側電極パッド236の非対称な配列を有する。さらに、双方の電極パッドの接地電極は、中間接地ライン230および基端側接地ライン240とともに、軸線G−Gに沿って実質的に整列されている。この配列は多くの利点を呈することが分かっている。例えば、同一の接地トレースを本質的に共有することによって、基端側尾部の幅は、各電極パッドが独立した接地ラインを有する場合の幅のように約2倍になるのではなく、中間尾部228の約1.5倍にしかならない。したがって、基端側尾部238は、中間尾部228の2つ分よりも狭小である。
【0057】
さらに、接地トレースを共有するように電極パッドを配列することは、どの電極が互いに相互作用するかを制御することを可能にする。これは、単一の電極アセンブリを見たときには直ちには分からないが、例えば
図1Cに示すように、2つ以上の電極アセンブリ200がバルーンに組み付けられる場合に明らかとなる。種々の電極パッドは、ソリッドステートリレーを用いて、約100マイクロ秒〜約200ミリ秒の範囲にあり、最適な範囲は約10ミリ秒〜約50ミリ秒である起動時間(firing time)で、多重化して起動(fired)および制御することができる。実際には、電極パッドは同時に起動されると思われが、異なる電極アセンブリ200の隣接する電極パッド間の迷走電流は、マイクロバーストでの電極の迅速な起動によって防止される。これは、異なる電極パッドアセンブリ200の隣接する電極パッドが互いに位相をずらして起動されるように行われ得る。したがって、前記電極アセンブリの電極パッドの配列は、10分以下の合計電極起動時間という短い治療時間を可能にし、一部のおおよその治療時間は10秒ほどの短さであり、例示的な実施形態では約30秒である。短い治療時間の利点としては、神経組織がエネルギー治療に供されるときに生じる術後の疼痛を最小限に抑えること、血管閉塞時間の短縮、閉塞の副作用の低減、および内腔組織への入熱が比較的小さいことに起因する血液灌流による側副組織の迅速な冷却が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、共通の接地は、典型的には、負極電極の極(negative electrode pole)からの500kHzの200VACと、(サーミスタの場合には)サーミスタ信号を感知して発生器の制御に用いることができるように、RF回路のフィルタリングを必要とする熱感知装置226からの1V信号とを保持する。いくつかの実施形態では、共通の接地であるために、隣接する電極の対を起動しなくても、隣接する電極対のサーミスタを用いて温度を監視することができる。このことは、先端側電極パッド208および基端側電極パッド236のうちの一方のみを起動しながら、これらの双方に近接する温度を感知する可能性を提供する。
【0059】
図1Cを再び参照すると、各電極アセンブリ140a〜140dの電極パッドの配置はまた、バルーン130上における効率的な配置を可能にする。図示したように、電極アセンブリ140a〜140dは、互いに「組み合って(key)」、バルーン表面積を最大限に使用することを可能にする。これは、部分的には、各中間尾部の長手方向長さを設定することにより、電極パッド同士を離間させることによって行われる。例えば、電極アセンブリ140aの中間尾部の長さは、側方に隣接する電極アセンブリ140bの側方に隣接する基端側電極パッド170bが電極アセンブリ140aの中間尾部160aの隣に組み合うように、その先端側電極パッド150aと基端側電極パッド170aとを隔てる距離に設定される。さらに、電極アセンブリ140aの先端側電極パッド150aは、電極アセンブリ140bの中間尾部160bと電極アセンブリ140dの中間尾部160dとの間に組み合わせられる。したがって、各中間尾部160a〜160dの長さはまた、いずれか1つの電極アセンブリの各電極パッドを隣接しない治療ゾーン内に位置させることも必要とする。
【0060】
バルーン表面積の最大化はまた、部分的には、各電極アセンブリ140a〜140dの双方の電極パッドを側方に偏倚させることによっても可能となる。例えば、各先端側電極パッド150a〜150dの右方向の側方偏倚、および基端側電極パッド170a〜170dの左方向への側方偏倚は、電極パッドのうちのいくつかが互いに側方において重なり合うように、隣接する電極パッドアセンブリが互いに組み合うことを可能にする。例えば、電極アセンブリ140aの先端側電極パッド150aは、電極アセンブリ140bの基端側電極パッド170bと側方において重なり合う。さらに、電極アセンブリ140bの先端側電極パッド150bは、電極アセンブリ140cの基端側電極パッド170cと側方において重なり合う。しかしながら、各中間尾部の長さによって、電極パッドの周方向の重なり(この図では長手方向の重なり)が防止され、よって長手方向L−Lにおける治療ゾーンの不連続性を維持する。
【0061】
電極パッドの配列および幾何学的形状、並びにフレキシブル回路の尾部の配列および幾何学的形状はまた、バルーンを比較的小型の非拡張状態に折り畳むか、または他の場合には収縮させることを容易にし得る。例えば、最大10mmの拡張径を有する実施形態では、非拡張状態にある装置は約1mmほどの小さい直径を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態は、同一の寸法および構成を有する標準的な電極アセンブリを使用する。その場合、電極アセンブリの幾何学的形状は様々なバルーンサイズ間では変わらないままであるが、バルーンの外面上の電極アセンブリの数および相対位置はバルーンの直径および/または長さの関数となる。またバルーンの直径および/または長さに対する電極アセンブリの相対的な配置は、所与のサイズのバルーン上の近隣の電極アセンブリの隣接する電極パッドの周方向および/もしくは軸線方向の重なり合いの所望の程度または回避によって決定され得る。しかしながら、他の実施形態では、バルーン上の電極アセンブリのすべてが必ずしも同一である必要はない。
【0063】
図3A〜
図3Dは、
図1Aのシステム100とともに使用可能な代替の電極パッド構成を示している。
図3Aは、電極アセンブリ200と同様に構成されているが、互いに直接隣接する2つの電極パッド302を有する電極アセンブリ300を示している。
【0064】
図3Bは、電極アセンブリ200と同様に構成されているが、互いに直接隣接する2つの電極パッド306を有する電極パッドアセンブリ304を示している。さらに、電極パッド306は、
図1Cの長手方向軸線L−Lおよび
図2AのG−Gに対して横断方向となるように配列された電極を有する。
【0065】
図3Cは、電極アセンブリ304と同様に構成されているが、3つの互い違いに分離した電極パッド312を有する電極アセンブリ310を示している。
図38の電極アセンブリ304と同様に、電極パッド312は横断方向に配列された電極を特徴とする。
【0066】
図3Dは、電極アセンブリ310と同様に構成されているが、より大きな電極表面積を備えた電極パッド312を有する電極アセンブリ314を示している。
図3Bの電極アセンブリ304と同様に、電極パッド316は横断方向に配列された電極を特徴とする。
【0067】
図4A〜
図4Cは、
図1Aのシステム100とともに使用可能な代替の電極パッドの構成を示している。
図4Aは、電極アセンブリ200と同様に構成されているが、単一の先端側電極パッド402のみを有する電極アセンブリ400を示している。
【0068】
図4Bは、電極アセンブリ400と同様に構成されているが、接地表面積410よりも大きい活性電極408の表面積を有する単一の先端側電極パッド407を有する電極アセンブリ404を示している。
【0069】
図4Cは、電極アセンブリ404と同様に構成されているが、より高い可撓性を可能にするためにかなり穴が多い構造を有する単一の先端側電極パッド414を有する電極アセンブリ412を示している。
【0070】
図5A〜
図5Fは、
図1Aのシステム100とともに使用可能な代替の電極の構成を示している。いくつかの実施形態では、示した電極構成は、
図4A〜
図4Cの構成とともに使用可能である。
図5Aは、電極アセンブリ400と同様に構成されているが、単一の基端側電極パッド502のみを備えるように配列されている電極アセンブリ500を示している。電極アセンブリ500は、バルーンに取り付けるための長尺状の先端側部分504を更に備える。
【0071】
図5Bは、電極アセンブリ500と同様に構成されているが、電極パッド508上に比較的大きな(more comperative)電極表面積を有する電極アセンブリ506を示している。
【0072】
図5Cは、電極アセンブリ500と同様に構成されているが、電極パッド512上に比較的大きな電極表面積と、より多数の電極とを有する電極アセンブリ510を示している。
【0073】
図5Dは、電極アセンブリ510と同様に構成されているが、電極パッド512上に一様でない電極構成を有する電極アセンブリ514を示している。
図5Eは、電極アセンブリ500と同様に構成されているが、電極パッド516上に比較的小さな(less comparative)電極表面積と、より少数の電極518とを有する電極アセンブリ514を示している。電極パッド516は、電極と同じ側面上に取り付けられた2つの熱感知装置520も組み込んでいる。
【0074】
図5Fは、電極アセンブリ514と同様に構成されているが、横断方向に配置された電極524と、単一の熱感知装置526とを有する電極アセンブリ522を示している。
図2〜
図5Fの電極アセンブリは、双極構成または単極構成で用いられる。
図5G〜
図5Iは、単極電極構成の付加的な例を示している。
図5Gでは、温度センサ532の両側に単極電極530の2つの平行アレイが存在する。
図5Gでは、単極電極530の各アレイはそれ自身の個別のトレースを有し、温度センサ532も同様にそれ自身の個別のトレースを有する。しかしながら、他の実施形態では、特定のフレックス回路アセンブリ上の単極電極530のすべてが単一の活性トレースを共有し、温度センサの2つのトレースのうちの一方も同様に共有されてもよいが、他の実施形態では、温度センサの電源および接地トレースは1つ以上の単極トレースから独立していてもよい。
【0075】
図5Hは、単極電極536のすべてが単一のトレースに結合されている、単極電極パッドの別の配列を示している。
図5Iは、単極電極および温度センサの別の代替配列を示している。単極電極パッドは、(
図1Cに示すように)拡張可能装置のまわりに長手方向および周方向に偏倚した配列で配列され、
図3A〜
図5Fに示されているものと同様の幾何学的形状および配列を有する。
【0076】
c.接着を増強するためのテクスチャ付き表面
本願に示し記載するフレキシブル回路は、コンプライアントバルーン、セミコンプライアントバルーンまたはノンコンプライアントバルーンのような拡張可能装置に多種多様の方法で取り付けられるか、または他の場合には関連付けられ得る。いくつかの実施形態において、前記フレキシブル回路はバルーンに接着され得る。そのような実施形態または他の実施形態において、任意で、該回路のバルーンへの接着を高めるために、バルーンおよび/またはフレキシブル回路の一部としてテクスチャ付き表面を備えることが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、レーザーでテクスチャ付けされた表面(laser textured surface)が好ましいことがあるが、他の実施形態は、機械的手段(例えばマイクロブラスティングまたは心なし研削)または他の手段よるなど、他の方法でテクスチャ付けされた表面を用いてもよい。
【0077】
レーザーは、表面モルホロジーにおける変化を得るために材料の特定領域に集束エネルギーを正確に送達する能力を提供する。表面モルホロジーにおける変化は、マクロ幾何学的な表面積は本質的に維持しながら、サブミクロンレベルの表面積を劇的に増大させることができる。これは、小さな幾何学的領域において接着の増強が有用であり得る場合に有利である。
【0078】
レーザー光の材料との相互作用は表面領域中に恒久的な変化をもたらす。エキシマーレーザーのような短波長レーザーは、放電テクスチャリングによってポリマー表面を損なうことがなく、前記レーザーのポリマー表面との最適化された相互作用のために、一部の場合において特に適当である。これは、形成される形状構成の形状および大きさに対して大幅な制御を有し、かつ、生成される大きさの範囲が広い局所的な変更を可能にするためである。
【0079】
様々なテクスチャは、ビーム強度、空間的および時間的プロファイル、フルエンス、波長および処理環境(背景ガスまたは液体)などの処理パラメータの制御により正確に生成され得る。表面形状構成の主要寸法(例えば溶融またはアブレートされる領域の幅)は、一般にビームの形状および大きさによって画定される。表面テクスチャは、レーザーのフルエンスを基材の融点より下または上となるように調整することにより、光熱反応(photothermal reaction)または光化学反応(photo chemical reaction)を通じて誘発される。
【0080】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は一部のバルーンカテーテルに用いられる一般材料である。PETは血管形成術用途に良好な強度および疲労特性を備える。
図51は、テクスチャなしPETバルーンの一例を示している。しかしながら、PETは本質的に低い表面自由エネルギーを有しており、これは不十分な濡れ性および不十分な接着性をもたらす。接着は、PET表面をエキシマーレーザーまたは他のレーザーで改質し、サブミクロンの表面改質を光熱によって誘発することによって改善され得る。レーザーのフルエンスを、融解の閾値を上回るが、アブレーションI気化閾値は下回るように調整することによって、溶融したPETの一時的な貯留の形成が起こり、前記貯留は周囲のバルク材料への即時の熱放散により急速に再凝固する。これは、表面上のサブミクロン小塊を有するPET表面上における「フックおよびループ」型のテクスチャをもたらす。いくつかの実施形態において、テクスチャリング(テクスチャ付け)プロセスは、材料の実際の断面積をその機械的性質を低下させる程度まで除去するのを防止しながら、表面のテクスチャI領域の増大を提供するように構成される。
図52は、サブミクロン小塊が無作為に分散した、そのようなテクスチャ付きバルーン外面の高倍率光学像を示している。
図53は、テクスチャ付きバルーンの外面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。前記PETの表面は、表面改質により、半透明(translucent)から部分的に不透明(semi−opaque)に変化する。
図54は部分的に不透明なテクスチャ付きバルーンを示している。
【0081】
ポリイミド(PI)は、フレキシブル回路用の誘電体基板として一般に用いられている。
図55は、ポリイミド裏材を有するフレキシブル回路の一例を示している。ポリイミドは、その耐化学性、熱安定性および優れた機械的性質で知られている。しかしながら、ポリイミドの不活性、並びに低い表面エネルギーはまた、不十分な濡れ性および不十分な接着性ももたらす。
図56はテクスチャなしのポリイミド表面の高倍率画像である。コンピュータ化されたエキシマーレーザーまたは他のレーザーを用いてフレックス回路上に表面テクスチャを設けてもよく、サーフェーシングおよびサーフェーシングのための基材上の目標領域の位置の良好な寸法管理を有する。ポリイミド上において増大したマイクロ表面積が形成されて、接着剤の濡れ性および接着強度を向上させ得る。
図57は、テクスチャ付きフレックス回路表面の高倍率画像である(この実施形態ではポリイミドはカプトン(登録商標)である)。
【0082】
PET基材およびPI基材の一方または双方に対してレーザーテクスチャリングを用いることにより、2つの材料の接着は著しく改善され得る。これらの材料間の改善した接着は、カテーテルのバルーン表面上にフレックス回路を接着する状況において用いられたときに、使用中の装置の堅牢性を高めることができる。
【0083】
治療方法および制御システム
a.装置の配置
図6は、本開示の1つの非限定的な実施形態に従った治療方法600を実施するために用いられる
図1Aのシステム100を示している。ここで、制御ユニット110は、カテーテル装置に作動可能に接続されて示されており、前記カテーテル装置は、(複数の電極アセンブリを有する)拡張可能装置が、治療が必要とされる身体通路の部分S1に隣接して配置されるように身体通路内に配置されている。部分S1におけるカテーテル装置の配置は、従来の方法に従って、例えば透視下で(under fluoroscopic guidance)ガイドワイヤを通じて実施される。
【0084】
前記拡張可能装置は、部分S1に配置されると、バルーンの場合には、例えば流体を2気圧(203kPa)〜10気圧(1013kPa)に加圧することによって拡張させることができる。これにより、前記拡張可能装置の電極を身体通路と接触させる。
【0085】
いくつかの実施形態において、制御ユニット110は、電極アセンブリにおけるインピーダンスを測定し、電極の身体通路との付着を確認することができる。これらの実施形態のうちの少なくとも一部において、電極のすべてについて付着が感知されなくても治療を進めてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、電極の50%以上について付着が感知されるならば治療を進めてもよく、周方向および/または軸線方向における完全に一様ではない付着を許容し得る。例えば、いくつかの場合、前記カテーテルは、基端側電極のうちの1つ以上が大動脈内に位置して血液に晒されるように配置され、そのような電極について感知されるインピーダンスは、予め指定した範囲(例えば500オーム〜1600オーム等)内に入らないことがあり、均一ではない電極/組織の付着が存在するとしても、それらの治療について組織の付着が存在しないことを示す。その後、制御ユニット110は電極を作動させて、黒四角によって示されるような対応する数の損傷部Lを形成し得る。電極の作動中に、制御ユニットは、電極パッドの熱感知装置を用いて、組織または電極のいずれにも接触しないその熱感知装置の独自の配置により、電極および組織の双方の熱を監視する。このように、治療中、必要に応じて、より多くのまたはより少ない電力を各電極パッドに供給することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、制御ユニット110は、装置のすべての電極に対する付着を判定するために一律の基準を適用し得る。例えば、前記制御ユニットは、電極のすべてに対して抵抗測定値の予め指定した同一の範囲を用いる。しかしながら、すべてではないがいくつかの単極の用途を含む他の場合には、付着を判定するために異なる単極電極に対して異なる基準を適用してもよい。例えば、いくつかの単極の実施形態において、各単極電極は、組織を介して1つ以上の共通/不関電極への個別の電気回路を画定することができ、それらの回路の特性(例えば抵抗)は、単極電極と共通電極との間の距離、それらの間の組織の特性、並びに前記装置および周囲組織の他の幾何学的形状および特性に基づいて大きく変化し得る。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、例えば単極電極と共通電極との間の距離に応じて変化する付着を判定するための基準を適用することが望ましいことがある(例えば2つの電極間の距離が大きくなるほど、良好な付着を判定するのに必要とされるインピーダンス測定値は高くなる)。しかしながら、他の実施形態では、距離および他の幾何学的形状におけるこれらの差異に起因する変動は最小限であるか、または大きなものではなく、一律の基準が適用される。
【0087】
図24A〜
図24Fは、治療の経過中に制御ユニットによって表示される一連のスクリーンショットの1つの非限定的な例を示している。
図24Aでは、前記システムは、ユーザに対してカテーテルを接続するように促している。
図24Bでは、前記システムは、カテーテルが接続されたこと、および接続されたカテーテルに関する他の情報(例えばサイズ/直径)を確認している。
図24Cおよび
図24Dでは、前記システムは、上記で検討したように、電極の付着をチェックし、どの電極が付着しているか、または何本の電極が付着しているかを示し、続行するための許可を求めることができる。
図24Eおよび
図24Fでは、前記システムは、治療中および治療後の双方において、治療の特定のパラメータ(例えば電力、温度、時間、および活性な/作動された電極の数)を表示することができる。上述したパラメータおよび/または他の情報のような治療に関する情報は、前記システムによって捕捉され、メモリに保存される。
【0088】
図6に戻ると、部分S1における所定の治療が完了した後、次に拡張可能装置を収縮させて未治療の部分S2に移動させ、部分S1において適用した治療を繰り返し、同様に部分S3に対しても繰り返し、さらに必要に応じて任意のより多くの部分に対しても繰り返し得る。前記部分は直接隣接して示されているが、一定の距離だけ離れていることができる。
【0089】
場合によっては、
図6に示した方法が好ましい治療法ではないこともあろう。例えば、他の実施形態では、前記治療は通路内の単一の位置のみにおいて実施され、拡張可能装置を通路内の複数の位置に移動させる必要はないであろう。
【0090】
過剰な神経活性の低減に関わる腎性高血圧の例を再び参照すると、前記システムは、神経活性に影響を与えるようにエネルギーを指向させるために、穿孔および焼灼を起こさない方法をもたらすために用いられる。したがって、示した身体通路は、部分S1〜S3において神経組織Nによって囲まれる腎動脈であり得る。前記拡張可能装置上の電極は、影響を受ける神経Nの既知の方向にエネルギーを送達するように給電される。エネルギー浸透の深さは、エネルギー線量、電極タイプ(例えば単極対双極)および電極の幾何学的形状の関数である。「System for Inducing Desirable Temperature Effects on Body Tissue」と題された米国特許出願公開第2008/0188912号は、必ずしもすべてではないが、いくつかの実施形態において考慮され得る電極の幾何学的形状および組織治療ゾーンの体積についてのいくつかの考慮すべき事項を記載している。前記特許文献の全開示は参照により本願に援用される。場合により、カテーテル装置を用いて、本願に開示し記載するように目標を定めた方法で(in a targeted manner)、組織を最初に特徴付け、次にその組織を治療するように、神経組織Nのインピーダンス特性を求めるために経験的分析が用いられる。エネルギーの送達および調節は、累積損傷モデリングもさらに必要とする。
【0091】
b.エネルギー送達
必要とされる特定のリモデリング効果に応じて、前記制御ユニットは、1秒〜180秒にわたって約0.25ワット〜5ワットの平均電力、または約0.25ジュール〜900ジュールで、電極に通電し得る。より高いエネルギー治療は、0.5ワットで90秒間または0.25ワットで180秒間などのように、より低い電力で、かつより長い継続時間で行ってもよい。単極の実施形態では、前記制御ユニットは、電極の構成、および電極と共通接地との間の距離に応じて、最高30ワットで最高5分間にわたって電極に通電する。エネルギーがより局所的な領域を通って進むほど、伝導損失は少なくなるので、距離が短いほど、より短時間により低いエネルギーを提供する。腎除神経において用いるための好ましい実施形態において、治療ゾーンが治療中に約68℃に加熱されるように、約5ワットの治療設定で約30秒間にわたってエネルギーが送達される。上述したように、電力要件は、電極のタイプおよび構成に大きく依存する。一般に、電極の間隔が広いほど、より高い電力が必要とされる。この場合、平均電力は5ワットを上回り、総エネルギーは45ジュールを超える。同様に、より短いかまたはより小さい電極対を用いることにより、平均電力を削減することが必要とされ、総エネルギーは4ジュール未満となる。電力および継続時間は、いくつかの場合において、深刻な損傷を引き起こすのに十分であるよりも低く、特に血管内の病変組織を焼灼するのに十分であるよりも低くなるように較正される。血管内においてアテローム性物質を焼灼する機構は、スレイガー(Slager)らによる「Vaporization of Atherosclerotic Plaque by Spark Erosion」と題された論文、J.of Amer.Cardiol.(1985年6月)、第1382〜6頁、およびシュテファン エム. フライ(Stephen M. Fry)による「Thermal and Disruptive Angioplasty:a Physician’s Guide」、Strategic Business Development,Inc.,(1990年)を含めて、十分に記載されている。前記文献の全開示は参照により本願に援用される。
【0092】
いくつかの実施形態では、患者の腎動脈の一方または双方に適用されるエネルギー治療は、悪影響を有することなく、身体の他の通路において可能であるよりも高いレベルで適用することができる。例えば、身体の末梢動脈および冠状動脈は、特定の熱応答限界を上回る加熱を受けると、有害な長期閉塞反応を受けやすい可能性がある。しかしながら、腎動脈は、悪影響を有することなく、そのような熱応答限界を上回る加熱を受けることができることが分かっている。
【0093】
いくつかの実施形態では、エネルギー治療は、CHFの収縮期型および拡張期型の双方を緩和するために、腎臓における交感神経活性に影響を与えるように、患者の腎動脈の一方または双方に適用される。治療的な熱エネルギーを腎動脈に近接する組織に適用することは、CHFの生物学的プロセスおよび結果として生じる影響を軽減するように交感神経活性を低下させるのに効果的である。最も好ましくは、処置の有効性を最大にしながら、患者が感じる痛みを最小限にする処置を提供するとともに、臨床スタッフに容易な処置を提供するために、迅速な処置(例えば腎臓1つあたり10分以下の治療時間)において制御線量の熱エネルギーの穏やかな印加が用いられる。本発明のバルーンに実装された電極およびエネルギー送達方法は、収縮期および拡張期CHFに伴う慢性高血圧症、またはそれらとは独立した慢性高血圧症に関連する交感神経活性を低下させるためのエネルギーの印加に特によく適する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本願に記載する電極パッドは、目標組織を評価し、次いで選択的に治療し、好ましくは治療した組織のリモデリングによる所望の治療結果を得るために、通電される。例えば、インピーダンス測定値の使用により、組織治療領域を特定するために、組織特性(tissue signature)を用いてもよい。身体通路内で周方向に離間された電極を使用したインピーダンス測定を用いて、組織を分析することができる。隣接する電極対間のインピーダンス測定値は、例えば、電流経路が病変組織を通過する場合と、電流経路が管腔壁の健康な組織を通過する場合とで異なる。したがって、病変組織の両側における電極間のインピーダンス測定値は、損傷部または他のタイプの目標組織を示し、一方、隣接する電極の他の対の間の測定値は健康な組織を示す。インピーダンス測定と併せて、またはインピーダンス測定の代替として、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィなどのような他の特徴付けを用いて、治療されるべき領域を特定してもよい。いくつかの場合、組織特性および/または特性プロファイルは人によって異なるため、治療される組織の基準測定値を得て、好ましくは隣接する組織を区別するのを助けることが望ましい場合がある。加えて、組織特性および/または特性プロファイル曲線を正規化し、異なる組織間の関連する勾配、偏倚などの識別を容易にする。インピーダンス測定は、1つ以上の周波数、理想的には2つの異なる周波数(低および高)において行われる。低周波数測定は、約1kHz〜10kHz、好ましくは約4kHz〜5kHzの範囲において行われ、高周波数測定は、約300kHz〜1MHz、好ましくは約750kHz〜1MHzの範囲において行われる。より低い周波数測定は主にインピーダンスの抵抗成分を表し、組織温度と緊密に相関し、この場合、より高い周波数測定は、インピーダンスの容量成分を表し、細胞組成の破壊および変化と相関する。
【0095】
インピーダンスの抵抗成分と容量成分との間の位相角シフトもまた、インピーダンスの容量変化および抵抗変化の結果として、電流と電圧との間におけるピークの変化に起因して生じる。位相角シフトはまた、RF除神経中に組織の接触および損傷部の形成を評価する手段として監視される。
【0096】
いくつかの実施形態では、身体管腔のリモデリングは、緩やかなまたは標準的な拡張と組み合わせて、穏やかな加熱によって行うことができる。例えば、上部に電極が配置された血管形成術用バルーンカテーテル構造は、任意で標準的な非加熱の血管形成拡張圧力であるか、またはそれより大幅に低い拡張圧力と組み合わせて、拡張前、拡張中および/または拡張後に、血管壁に電位を印加し得る。例えば、10気圧(1013kPa)〜16気圧(1621kPa)のバルーン膨張圧力が特定の病変の標準的な血管形成拡張に適切であり得る場合、本願に記載する(バルーン上のフレキシブル回路電極、バルーン構造上に直接堆積された電極などを通じた)適切な電位と組み合わせた変更された拡張治療は、10気圧(1013kPa)〜16気圧(1621kPa)を用いてもよく、または6気圧(608kPa)以下、場合により1気圧(101kPa)〜2気圧(203kPa)程度の圧力で行われ得る。そのような適度な拡張圧力は、身体管腔、循環系、および末梢血管系の疾患の治療に関して本願に記載される組織の特徴付け(tissue characterization)、調整されたエネルギー(tuned energy)、偏心的な治療(eccentric treatments)、並びに、他の治療の態様のうちの1つ以上の態様と組み合わせられてもよい(または組み合わせられなくてもよい)。
【0097】
多くの実施形態において、身体管腔の拡張前、拡張中および/または拡張後に加えられる穏やかな加熱エネルギーは、合併症を低下させながら、拡張の有効性を増大させる。いくつかの実施形態では、そのようなバルーンによる制御された加熱は、反跳の低減を示すことがあり、植え込みの不都合を有することなく、ステント様の拡張の利点のうちの少なくともいくつかを提供する。前記加熱の利点は、外膜層の加熱を有害反応の閾値未満に制限することによって高められる(かつ/または合併症が抑制される)。多くの場合、そのような内膜および/または中膜の加熱は、約10秒未満、多くの場合、3秒(または更には2秒)未満の加熱時間を用いて提供される。他の場合には、非常に低い出力をより長い継続時間にわたって用いてもよい。回路の駆動電位を目標組織の位相角に適合させることによってエネルギーを目標組織に効率的に結合することにより、所望の加熱効率が高められ、電力曲線の下の領域を効果的に最大にする。位相角の適合は絶対的である必要はなく、特徴付けされた目標組織に対する完全な位相の適合は利益を有するが、代替的なシステムは、典型的な目標組織に実質的に適合するように適切な電位を予め設定し得、実際の位相角には正確には適合しないこともあるが、目標組織内の加熱の局所化は、標準的な出力形態を用いるよりも大幅に良好である。
【0098】
いくつかの実施形態において、単極(ユニポーラ)RFエネルギーの印加が、上記で検討したように、バルーン上の電極のいずれかと、皮膚外部または装置自体の上に配置された帰還電極との間に与えられ得る。単極RFは深い損傷部が必要とされる領域において望ましいことがある。例えば、単極の用途では、各電極対は、一対あたり1つの正極と1つの負極とを有するのではなく、正極性によって給電され得る。いくつかの実施形態において、単極および双極のRFエネルギーの印加の組み合わせを行うことができ、この場合、前記対の電極の極性を変更することによって様々な深さ/サイズの損傷部を選択的に得ることができる。
【0099】
c.目標温度
RFエネルギーの印加は、目標組織および/または側副組織の温度を制限するように制御することができ、例えば、目標組織も側副組織も不可逆的な熱損傷を受けないように目標組織の加熱を制限する。いくつかの実施形態では、表面温度の範囲は約50℃〜約90℃である。穏やかな加熱の場合には、表面温度は約50℃〜約70℃にわたるが、より積極的な加熱の場合には、表面温度は約70℃〜約90℃にわたってもよい。バルク組織の温度が大部分において50℃〜55℃未満を維持するように、側副組織の加熱を約50℃〜約70℃の範囲の表面温度未満に抑制するための加熱を制限することにより、狭窄、熱損傷などを招き得る免疫反応を抑制する。50℃〜70℃の間の比較的穏やかな表面温度は、より大きい血管腔および改善された血流を提供するために、治療に対する組織の治癒反応によって、治療中、治療直後、および/または治療後1時間以上、1日以上、1週間以上、若しくは更には1か月以上の間にタンパク質結合を変性および破壊するのに十分である。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記目標温度は治療中に変更されてもよく、例えば治療時間の関数である。
図7は、30秒間の継続時間と、公称体温から約68℃の最高目標温度までの12秒間の上昇とを有する、治療のための1つの可能な目標温度プロファイルを示している。
図7に示す実施形態では、12秒間の上昇期中の目標温度プロファイルは、二次方程式によって定義され、式中、目標温度(T)は時間(t)の関数である。前記式の係数は、公称体温から68℃までの上昇が、投射物が重力の影響下において進むその弧の最高高さに達する軌道と同様の経路を辿るように設定される。換言すると、その上昇は、温度の上昇における一定の減速(d
2T/dt
2)、並びに、12秒および68℃に達すると温度上昇の直線的に低下する勾配(dT/dt)が存在するように、設定することができる。68℃に近づくにつれて勾配が徐々に減少するそのようなプロファイルは、残りの治療に対する設定目標温度の最小化および/またはアンダーシュートを容易にし得る。いくつかの実施形態において、
図7の目標温度プロファイルは、双極または単極の治療に等しく好適であるが、少なくともいくつかの単極の実施形態では、治療時間が増大する。
【0101】
図8、
図9および
図10は、本開示の種々の実施形態に用いるための付加的な目標温度プロファイルを示している。
図8は、様々な上昇時間および設定目標温度を有するプロファイルを示している(例えば、1つのプロファイルは約3秒の上昇時間および55℃の設定温度を有し、1つのプロファイルは5秒の上昇時間および60℃の設定温度を有し、1つのプロファイルは8秒の上昇および65℃の設定温度を有し、1つのプロファイルは12秒の上昇および70℃の設定温度を有し、1つのプロファイルは17秒の上昇および75℃の設定温度を有する)。
【0102】
図9および
図10は、異なる上昇プロファイルを用いる温度プロファイルを示している。前記図面のうちのいくつかは設定目標温度に比較的積極的に近づき(例えば「急速な上昇」プロファイル)、それらのうちの他のものは、設定目標温度にそれほど積極的ではなく近づく(例えば「緩慢な上昇」プロファイル)。
図10に示す「中間の改善された上昇(medium enhanced rise)」温度プロファイルは、少なくともいくつかの治療プロトコルに最適な結果を提供することが実験的に分かっているが、本開示のすべての実施形態がこの温度プロファイルに限定されるわけではなく、異なる治療および異なる状況では他のプロファイルが有利に用いられる。中間の改善された上昇は、最適化された全治療時間も提供する一方で、より積極的な加熱プロファイルが引き起こし得る有害な微視的熱損傷を防止しながら、目標組織を目標温度に効率的に加温するという点において、好ましい実施形態である。示した目標温度プロファイルのそれぞれについては、二次方程式を具体化するか、または近似する温度上昇が好ましいが、組織を効率的に加熱し、治療時間を最適化し、目標組織への熱損傷を防止する任意の関数または他のプロファイルが用いられてもよい。しかしながら、更に他の実施形態では、必ずしもこれらの目的のすべてを達成する温度プロファイルを用いる必要はない。例えば、少なくともいくつかの実施形態では、治療時間の最適化は必須ではない場合があるが、これに限定されるものではない。
【0103】
ベシックス システムの除神経の実施形態において用いられる目標温度プロファイルの好ましい実施形態を最適化および検証するために、卓上実験および動物実験の双方を行った。以下では、好ましいが、唯一ではないが好ましい実施形態として中間の改善された上昇温度プロファイルの選択を支援する卓上実験(bench top experimentation)および分析を要約する。
【0104】
前記試験は、どの上昇時間アルゴリズムが最適なレベルの有効性および安全性を提供するかを判定するために行った。いくつかの以前の上昇時間アルゴリズムは、単に可能な限り迅速に設定温度まで上昇するだけであったが、これは少なくともいくつかの状況では必ずしも最善策ではないものと思われた。有効性は、3つの無次元パラメータによって定性的に評価した。その目的は、良好な有効性も提供しつつ、目視検査に基づいて、治療ゾーンにおける組織の最小量の炭化、変性および脱水をもたらすアルゴリズムを判定することにあった。
【0105】
体温を模擬するために水浴を37℃にし、該浴内に肝臓試料を入れて、インビボ条件を模擬した。装置の良好な付着は、組織と接触した各双極電極対の電極−組織界面のインピーダンス値を書き留めることによって検証した。良好な付着のベンチマークとして、より高いインピーダンス(500オーム超)を用いた。
【0106】
図9および
図10の温度プロファイルを実行した後、肝臓試料を、各治療部位において、損傷部の表面における長さおよび幅、浸透深さ、並びに損傷部の2mmの深さにおける長さおよび幅について測定した。分析者は、報告バイアスを低減するために、どの治療をどの順番で行ったかを知らないものとした。有意な組織損傷のいかなる所見も記録した。
【0107】
図11および
図12は、浸透深さを他の有効性の尺度に関連付けるために形成した有効性の測定基準を表形式で示している。最初のものは、表面における損傷部の面積の平方根で割った浸透深さである。この測定基準は、表面の損傷部の損傷の深さを、表面の損傷部の面積に無次元形で関連付ける。100%の値は、浸透深さが表面の損傷部の平均サイズに等しかったことを意味する。次の測定基準は、表面における面積で割った2mmにおける面積である。この測定基準は、熱が組織にどれくらい良好に浸透するかを示す。100%の値は、2mmの深さにおける面積と表面の表面積とが同一であることを意味する。最後の測定基準は、浸透深さ×2mmにおける損傷部の幅を表面における面積で割ったものである。この数字は、損傷部の全体の形状についての情報、およびエネルギーが電極から径方向に伝搬する傾向にあるか、または組織を貫通する傾向にあるかについての情報を提供する。100%の値は、損傷部のサイズの断面積が損傷部の表面のサイズに等しかったことを意味する。
【0108】
実験データのすべてを慎重に考察した後、中間の改善された上昇プロファイルが、特定の実施形態に用いるのに最良の温度上昇アルゴリズムであると判定したが、ここでもまた他の目標温度プロファイルが本開示の開示される実施形態とともに適切に用いられてもよい。
【0109】
d.制御アルゴリズム
図13および
図14は、上述し、
図7〜
図10に示したような目標温度プロファイル、または他のプロファイルに基づいて、上述し、
図1〜
図6に示したような電気外科装置または他の装置のエネルギーの印加を制御する方法の1つの実施形態を示している。前記制御方法は、
図1の制御ユニット110の処理機能、および/または上記にさらに詳細に記載した制御ソフトウェアを用いて、または他の方法で、実行され得る。少なくともいくつかの場合において、前記制御方法は、電極のうちのいくつかまたは他の送達部位に単一の出力設定(例えば電圧)で同時に通電する比較的簡単で堅牢な(robust)エネルギー発生器を用いながら、装置の様々な治療部位における温度または他の治療パラメータ(複数の場合もあり)の微調節を提供する。前記エネルギー発生装置はシステムのコスト、サイズおよび複雑さを最小限にし得る。前記制御方法は、目標温度または1つ以上の他の治療パラメータからの逸脱を最小にし得、したがって治療の任意のタイムスライス中のエネルギー発生器に対する要求(例えば電圧要求)の変化を最小にし得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、上述したような目標温度プロファイルに基づいてRFエネルギーまたは他のエネルギーの印加を調節して、不所望に熱の遮断を生じたり、または他の場合には装置/組織界面における熱伝導、熱伝達の純減をもたらしたりし得る高い瞬時電力の印加、および微視的レベルにおける関連する組織のせん断または他の損傷を防止する穏やかな制御された加熱を提供することが望ましい。換言すると、温度のより高い変動と、目標温度に近い温度を再確立するための、結果として生じるエネルギーのより激しい瞬間的印加とを防止することによって、熱伝導性における組織の完全性は、電極/組織界面を越えた目標組織へのエネルギーの穏やかな治療的送達の効果的な伝達の低下をもたらす。
【0111】
当業者には、
図13および
図14の特定の制御方法は既に上述した特定の電気外科装置の状況において例示目的で示されているが、これらの制御方法および同様の方法は他の電気外科装置に有利に適用されることが分かるであろう。
【0112】
全般的に、
図13および
図14の制御方法の実施形態は、様々な治療部位を所定の目標温度に、例えば
図7〜
図10の目標温度プロファイルのうちの1つに、維持しようとするものである。前記制御方法は、この実施形態では、主に、RF発生器の出力電圧を調節し、電極のうちどれが所定のタイムスライスにおいて通電されるかを判定することによって(例えば、そのサイクルに対して特定の電極をオンまたはオフに切り替えることによって)それを行う。
【0113】
発生器の出力設定および電極の切り替えは、測定した温度および以前の所望の出力設定を考慮するフィードバックループによって決定され得る。特定の治療サイクル(例えば治療の25ミリ秒のスライス)の間に、電極のそれぞれは、3つの状態、すなわち、オフ、通電、または測定のうちの1つに特定され得る。いくつかの実施形態では、電極は、それらの電極が特定の基準に合致する場合のみに、通電状態および/または測定状態になり(通電された電極も測定され得る)、デフォルトの電極状態はオフである。通電された電極または測定中の電極として特定された電極は、サイクルの一部またはサイクル全体にわたって、印加電圧を有してもよいし、または温度信号を検出していてもよい。
【0114】
図13および
図14の制御ループの実施形態は、温度の変化を最小にし、よって治療サイクル毎の電圧受容の変化を最小にしながら、可能な限り多くの候補電極を可能な限り目標温度に近づけて維持するように設計されている。
図15は、制御アルゴリズムの1つの実施形態がどのように目標温度を維持するかを示す、電極の4つの治療サイクルに対する例示的な時間/温度プロットを示している。ここで、
図13および
図14の制御ループの実施形態を詳細に説明する。
【0115】
ステップ1300に示すように、各電極を最初はオフに設定する。ステップ1302では、前記電極のうちの1つを、その治療サイクルの主電極として指定する。治療サイクルに対してさらなるサイクルにおいて検討するように(例えば、利用可能な電極のすべてによるサイクル)。どの電極が主電極として指定されるかの判定は、ルックアップテーブルにアクセスするか、または主電極を特定し、かつ治療サイクル毎に主電極の選択を変更するための任意の他の適当な機能を用いることによって行うことができる。
【0116】
ステップ1302において、付加的な電極をその治療サイクル中における通電および/または測定のための候補電極として指定することもできる。指定された付加的な電極は、その治療サイクルの指定された主電極に対して、特定の関係にあること、または特定の関係にないことにより、候補になり得る。
【0117】
例えば、いくつかの双極電極の実施形態では、電気外科装置上の電極のうちのいくつかは、主電極およびそれらの付加的な電極の双方が治療サイクルにおいて同時に通電される場合に、主電極とそれらの他の電極との間に漏電の可能性があるように配置されることがある。これは、関連する熱感知装置による温度測定との干渉、各電極において送達されるエネルギーの量の不正確さ、または他の望ましくない結果を不所望にもたらし得る。例えば、
図1Cに示す実施形態では、電極アセンブリ150cが主電極として指定される場合、電極アセンブリ150cの正極に直ぐ隣接または近接する負極を有する電極アセンブリ150d,170dは、それらの電極アセンブリが指定された主電極に対して漏電を誘発するように(leakage−inducingly)近接しているため、その特定の治療サイクルの測定および/または通電の候補ではないとみなされる。加えて、この実施形態では、電極アセンブリ150cの負極に直ぐ隣接または近接する正極を有する電極アセンブリ150bは、該電極アセンブリも指定された主電極に漏電を誘発するように近接しているため、候補ではないとみなされる。さらに、この特定の実施形態では、電極アセンブリ170bもまた、該電極アセンブリが漏電を誘発するように近接する電極パッド150bと同じ屈曲構造上にあるため、非候補とみなされる。最後に、この特定の実施形態では、電極アセンブリ150a,170aは、それらの電極アセンブリが非候補に隣接しているために、候補とみなされる。
【0118】
別の非限定的な例として、いくつかの単極電極の実施形態では、候補電極は、主電極に関連する電気回路の1つ以上の測定または推定された特性に類似した測定または推定された電気回路特性を有する単極電極である。換言すると、いくつかの単極システムでは、主単極電極によって規定される電気回路(例えば、単極電極、共通電極および患者の組織を通る経路によって規定される回路)に実質的に類似した電気回路を規定する単極電極を同時に通電することのみが望ましいことがある。いくつかの場合において、これは通電中の電流の均一性を促進し得る。他の実施形態では、所定のテーブルまたは他のリストまたは関連性により、現在の主電極に基づいて、どの電極が候補電極であるかを判定する。
【0119】
少なくともいくつかの実施形態では、非候補の電極に関連するスイッチは、非候補の電極をシステムの回路の残部から隔離するために開かれる。この切り換えは、少なくともいくつかの実施形態において、対の間の共通接地がオフへの切り換えによって影響を受けないとすれば、通電に応じられる利用可能な電極対の数を別様に最大にするために、同様にまたは代替的に用いられる。
【0120】
他の実施形態では、前記電気外科装置は、漏電の可能性をなくすか、または他の場合にはそのような漏電を考慮するように構成され、したがって前記装置のすべての電極が治療サイクル中の通電および/または測定の候補であってもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、電極の主電極、候補または非候補のいずいかとしての割り当ては、電極のそれぞれの状態および主電極の指定の順番を特定するシーケンスマトリクスまたはアレイのルックアップテーブルによって決定される。1つの非限定的な実施形態では、主電極の指定は、近接する電極を通って周方向に循環し、次いで先端側電極を通って周方向に循環する(例えば、
図1Cにおいて、順序は170a、170b、170c、170d、150a、150b、150c、150dである)。しかしながら、順番が次のものとの間の距離、順番が次のものの近さ、または分散の均一性を最適化するパターンまたは方法を含む、任意のパターンまたは他の方法を用いることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、付加的な条件が、特定の治療サイクルおよび/または治療の残りに対してオフに設定される特定の電極をもたらし得る。例えば、以下で検討するように、治療の経過中に、4℃程度の温度のオーバーシュートが許容され得る(例えば、そのようなオーバーシュートが通電されない電極を生じたとしても、その電極は必ずしもオフに設定されず、依然として測定に利用可能である)が、少なくともいくつかの実施形態では、8つの連続的な治療サイクルが特定の電極について温度オーバーシュートを測定した場合には、治療は他の点では継続し、また以下で検討する制御ループプロセスを他の点では変更することなく、その電極は治療の残りに対してオフに設定される。
【0123】
ステップ1304では、主電極および他の候補電極のそれぞれの目標電圧が求めされる。この特定の実施形態では、特定の電極に対する目標電圧は、その電極の治療部位に関連付けられた温度誤差と、その電極に対して(必ずしも印加されていないが)計算された最後の目標電圧とに基づいて求められ得る。温度誤差は、治療部位におけるその時点の温度を(例えばその治療部位に近接する電極に関連付けられた熱感知装置を用いて)測定し、測定した温度と、治療のその瞬間に対する目標温度との差を求めることによって計算される。
【0124】
この特定の実施形態は電圧を制御変数として用いて記載されているが、例えば電力と電圧との既知の関係(すなわち、電力=電圧×電流またはインピーダンス)に基づいて、電圧の代わりとして電力を制御変数に用いることができることが当業者には分かるであろう。
【0125】
図14は、電極の目標電圧を求めるためのサブルーチンの1つの実施形態を示している。ステップ1402において、目標からの温度誤差(Te)を、(例えばその電極に関連付けられたサーミスタによって測定される)実際の温度(T)からその時点の目標温度(Tg)を引くことによって計算する。ステップ1404において、ステップ1402で計算した温度誤差が4℃を上回るかを判定する(すなわち、目標温度が68℃である場合、サーミスタによって測定される温度が72℃より高いかを判定する)。前記温度誤差が4℃を上回る場合、サブルーチンは、ステップ1406において、その電極に対して、その治療サイクルについてゼロの目標電圧を割り当てる。温度誤差が4℃を上回らない場合には、サブルーチンはステップ1408に進み、温度誤差が2℃を上回るかを判定する。温度誤差が2℃を上回る場合には、ステップ1410において、サブルーチンは、その電極に対して、その電極に最後に割り当てられた目標電圧の75%(または別のパーセンテージ)の目標電圧を割り当てる。温度誤差が2℃を上回らない場合には、ステップ1412において、サブルーチンは、その電極に対して、以下の式に基づいて目標電圧を割り当てる。
【0126】
【数1】
前記式中、
Vは目標電圧であり、
T
eは目標からの温度誤差であり、
V
Lは最後に割り当てられた電極電圧であり、
K
L、K
PおよびK
lは定数であり、
nは0秒〜t秒の範囲の時間値である。
【0127】
図14の実施形態を含むいくつかの実施形態では、下記の式が用いられる。
【0128】
【数2】
前記式中、
Vは目標電圧であり、
T
eは目標からの温度誤差であり、
V
Lは最後に割り当てられた電極電圧であり、
K
Pは比例制御からの定数であり、
K
lは積分制御からの定数である。
【0129】
いくつかの実施形態では、場合により以前の電圧の使用が目標温度の微調整に焦点を当てた実施形態において計算誤差の原因となることがあるため、以前の治療サイクルからの電圧の平均または電圧を用いるのではなく、目標電圧を求めるために最後に割り当てられた電極電圧のみを用いることが有利である。
【0130】
図13に戻ると、主電極および他の候補電極に関して目標電圧が求められたならば、ステップ1306では、主電極の目標電圧がゼロより大きいかが判定される。ゼロ
以下の場合には、ステップ1308において、その治療サイクルのRF発生器の出力電圧は、他の候補電極に関してステップ1304において求めた最低目標電圧に設定される。ステップ1304において主電極に関して求めた目標電圧がゼロより大きい場合には、ステップ1310において、その治療サイクルのRF発生器の出力電圧は、主電極の目標電圧に設定される。
【0131】
ステップ1312では、ゼロより大きい目標電圧を有する主電極および他の候補電極が通電されるべき電極として特定される。代替的な実施形態では、主電極以外の候補電極のみが、それらの電極に関して求めた目標電圧が設定電圧よりも6V大きい場合に通電される。
【0132】
更に他の実施形態では、主電極以外の候補電極のみが、これらの電極に関して求めた目標電圧が設定電圧よりも1V、5Vまたは10V大きい場合に通電される。
ステップ1314において、通電すべき電極がその時点で68℃より高い温度であるかが判定される。68℃より高い温度であるそれらの電極はオフに切り替えられるか、またはさもなければその治療サイクルでは通電されないようにされ、他の場合には上記基準に合致する電極はステップ1316において設定電圧で通電される。その後、別の治療サイクルが開始し、治療が完了するまで
図13の制御ループが繰り返される。いくつかの実施形態では、各治療サイクルは以前のサイクルおよび次のサイクルと重複しない(例えば、
図13のステップは、次のサイクルのステップが開始する前に完全に実施される)が、他の実施形態では、前記サイクルは少なくともある程度は重複してもよい。
【0133】
図16〜
図23は、装置の8つの電極における実際の温度を目標温度プロファイルに調節するために
図13の制御ループを用いる、腎除神経のためにベシックス システムを使用した治療の、経時的な温度(目標および実際)および目標電圧のチャートである。上述したように、電極のうちの1つのみに対する目標電圧を用いて、各治療サイクルにおいて印加される実際の電圧を設定するため、これらの図にチャートで示す目標電圧は電極に印加される実際の電圧と同一ではないことを理解されたい。
図16〜
図23に示すように、
図13の制御ループは、装置の各電極における実際の温度を目標温度に正確に維持するように機能する。同様に
図16〜
図23に示すように、測定されるインピーダンスは、高周波RFエネルギーに応答した組織内のイオンの移動性の増大を反映して、場合により治療の間に(特に治療の開始時に)低下する。
【0134】
上述した温度制御方法の好ましい実施形態は、腎除神経用ベシックス システムの一部として使用される場合に、ノルエピネフリン(NEPI)濃度の効果的な低減をもたらすことが実験的に分かっている。1つの実験において、腎除神経用ベシックス システムの有効性および安全性を、治療後7日目における腎臓のNEPI濃度レベルの評価を含めて、治療後7日目および28日目の健康な若いヨークシャ豚において評価した。
図25は、この特定の実験の研究デザインを要約した表である。群1および群2の有効性を、7日目の各動物において、未治療の対側の対照腎臓におけるNEPIレベルに対する治療した動脈におけるNEPIレベルのパーセントでの低下として測定した。
図26は、双方の群のNEPIのパーセントでの低下を示している(平均±SDとして)。研究の間わたって、いずれの動物においても、体重、ボディコンディションスコアまたは臨床病理学的パラメータに有意な変化はなかった。全体的に、平均基準血管径(average baseline vessel diameters)は、すべての時点にわたって群の間で同様であった。内腔利得(luminal gain)または損失を計算し(平均解剖前−平均基準径(average pre−necropsy− average baseline diameter))、治療していない動物の血管と比較した場合に、治療した血管に対して同様の内腔利得を示した。腎動脈治療前、RF治療後7日後および28日後の代表的な血管造影画像を
図27〜
図30に示す。穿孔、解離、血栓または塞栓は、血管造影分析によって、急性的にも、慢性的にも検出されなかった。
【0135】
e.神経信号の刺激および監視
上述した実施形態のうちの少なくともいくつかにおいて、または代替的な実施形態において、腎除神経治療方法およびシステムは、神経信号の刺激、および治療した腎動脈に近接する組織における神経信号反応(nerve signal response)の監視を提供することができる。いくつかの場合には、この神経活性の電気記録図は、除神経治療の有効性の評価を提供し、かつ/または、治療を調節するためのフィードバックを提供し得る。少なくともいくつかの実施形態において、そのような電気記録図は、神経活性が存在するか、および/または測定された基準値に対して変移している(例えば低下している)かの評価を提供し、腎動脈に近接する神経組織の存在のマッピングまたは定量を含まない。
【0136】
1つの実施形態において、
図1Cに示した先端側電極パッド150a〜150dおよび基端側電極パッド170a〜170d上の双極電極対のような除神経治療を送達するのに用いられる同じ電極アセンブリはまた、神経信号を刺激し、神経信号反応を監視するようにも構成され得る。例えば、基端側電極パッド150a〜150dのうちの1つの基端側双極電極対のうちの一方を用いて神経信号を刺激してもよく、先端側電極パッド170a〜dのうちの1つの上の先端側双極電極対のうちの1つを用いて神経信号反応を監視してもよい。これに代わって、先端側双極電極を刺激に用い、基端側双極電極を監視に用いてもよい。これらの実施形態または他の実施形態では、刺激および感知は、軸線方向または周方向に隣接する電極対によって実施され得る。
【0137】
図2Aの状況において上述したようなサイズ、間隔、他の幾何学的形状および他の特徴を有する電極222は、神経信号の刺激および監視に十分であり得るが、代替的な実施形態では、前記電極はサイズをさらに縮小されてもよく、かつ/またはより高い信号分解能を提供するために他の特徴が変更されてもよい。神経信号の刺激および(特に)監視との干渉を最小限にするために、本願に記載するシステムおよび装置に対する他の変更もなされてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、システムの回路のレイアウト(RF発生器の内部回路など)、および/または、カテーテル/フレックス回路に関連する配線のペアリング、捩れおよび他の特徴は、回路構成の固有静電容量(inherent capacitance)を低減して、電磁束の低減をもたらすために、最適化される。
【0138】
代替的な実施形態では、神経信号の刺激および/または監視に用いられる電極は、エネルギー治療を送達するのに用いられる電極とは異なっていてもよい。刺激/監視電極は、刺激/監視に最適化された位置、幾何学的形状および他の特徴を有してもよく、かつ、エネルギー送達電極は、エネルギー治療の送達に最適化された位置、幾何学的形状および他の特徴を有し得る。
図42は、(
図10に示した電極と同様の)エネルギー治療を送達するための電極と、神経信号を刺激および監視するための(ここでは拡張可能装置の先端部上および基端部上における周方向のリング電極の形態にある)別個の電極とを備えたカテーテルの例を示している。
図43は、神経信号を刺激および監視するリング電極を担持する別個の基端側拡張可能装置および先端側拡張可能装置を備えたカテーテルの例を示している。
図42および
図43の電極は、それぞれ双極電極もしくは単極電極であるか、または基端側電極リングと先端側電極リングとの間で双極電極を構成してもよい。
図240に示すように、通電するために利用可能な電極領域を特定するためにユーザインタフェース上に電極の概略図が示されてもよく、その概略図はインピーダンスの測定による十分な組織の付着をさらに示す。ユーザインタフェースは電極構成を概略的な形態で示すため、概略的な画像は、前記拡張可能構造上に存在する電極構成のタイプに限定するべきではないことを理解されたい。電極は、リング、双極対、点電極、軸線方向に細長い電極等のうちのいずれか1つ以上である。
【0139】
単極の実施形態において、前記電極は、治療中に刺激するため、および感知するための正極として作用し、一方で、別個の負極は接地として用いられる。前記負極は、拡張可能構造上に、カテーテル本体の1つ以上の地点に、または接地パッドの形態で患者の外部に、位置し得る。単極構成では、エネルギー送達と神経反応の検知との間で大きさの差が比較的大きいために、(以下で更に説明するような)信号処理およびフィルタリングは望ましい選択肢である。
【0140】
図1Aに図示され、記載される制御ユニット110のRF発生器および他の回路を用いて、神経刺激信号を発生させ、かつ、反応を監視するが、他の実施形態では、別個の装置が神経刺激を発生させ、かつ/または反応を監視するためのシステムに関連付けられてもよい。
【0141】
1つの実施形態において、前記神経刺激は、約1秒以下、好ましくは約0.5ミリ秒の期間にわたって、第1電極によって印加される約0.1V〜約5Vの範囲の電圧、好ましくは約0.5Vの電圧であり得、その後、神経組織に衝撃を与えて神経信号を伝搬させ得るパルス幅変調が続く。パルス信号はいかなる形態のものであってもよく、その波形の迅速なオン/オフの性質が、ピーク電圧への上昇またはピーク電圧からの上昇を伴うことなく、神経反応を効率的に刺激するので、矩形波が好ましい形態である。
【0142】
神経活性は、刺激に応答する神経信号の振幅、刺激に応答する神経信号の速度、および/または神経信号の分割振幅(fractionated amplitude)のうちの1つ以上を測定することによって評価される。ここで、分割振幅とは、治療前の基準値と比較した、神経伝達信号に対する純減および変化を指す。治療前の信号は、比較的大きな振幅と、より滑らかな勾配の遷移とを有するものと思われるが、一方、少なくとも何らかの治療を受けた神経からの信号は、治療によって中断された神経伝達を示す、比較的低い振幅と、あまり滑らかではない、急激な、または破断した勾配の遷移とを有するものと思われる。これらの測定値は、第2電極における電圧の変化、および/または刺激と反応との間の計測時間を測定することによって求めることができ、少なくともいくつかの実施形態では、神経信号をバックグラウンドノイズから区別するために、ハイパスフィルタリングおよび/またはローパスフィルタリングを用いてもよい。
【0143】
現在、腎除神経等の介入的なエネルギー送達治療は、解剖学的ランドマークに基づいて実施される。腎除神経の例では、神経の大部分が腎動脈の長さに沿って位置することが知られている。治療後の評価は、NEPIおよび血圧の低下などの二次的影響に基づいており、それらの二次的影響は、典型的には即時的な指標ではなく、神経の生存率を示していない。
【0144】
現在の技術水準では、腎除神経処置中に腎神経の機能的挙動をリアルアイムで直接的に評価するために利用可能な手段は存在しない。この問題に対する解決策は、交流電流または直流電流を用いて、腎動脈内の腎神経の近傍において閾下のまたは低い刺激信号を送達し、腎除神経治療の前および後のそれらの活性を評価することである。
【0145】
高分解能の迅速な神経生存率の測定は、
図1Bおよび
図1Cに示す電極のような複数の局在電極によって行われるが、実施形態はバルーン上の双極フレックス回路電極に限定されない。カテーテルベースの拡張可能構造に取り付けるのに適当である任意の電極構成(単極または双極)が用いられてもよく、リング電極、線形電極または螺旋状電極、点電極などが、バスケット、バルーンまたはカテーテルシステムに用いられる任意の他のそのようなタイプの構造体に取り付けられる。
【0146】
測定技術は、少なくとも1つの電極から神経の経路を通じた電気刺激を用いて、興奮した神経線維に沿って広がる活動電位の発生を引き起こす。次にその活動電位を別の地点において記録する。この技術を用いて、神経インパルスが神経を流れるときの神経インパルスの伝導の適切性を判定し、それによって神経損傷の兆候を検出する。電極間の距離と、電気インパルスが電極間を進むのに掛かる時間とを用いて、インパルス伝達速度(神経伝達速度)を計算する。伝達速度の低下は神経の損傷を示す。
【0147】
腎神経の電気刺激後の反応の速度、振幅および形状は、バルーンカテーテル上の複数の電極によって測定される。異常な所見としては、伝導の遅滞、伝導の遮断、反応の欠如、および/または低い振幅反応が挙げられる。
【0148】
図44および
図45を参照すると、電気信号モルホロジー(electrical signal morphology)は、遅い伝導と相まって分割の程度の変化によって明らかであるような、神経伝達の変化を示す。
図44は、治療前または基準状態における代表的な神経信号4401を示している。
図45は、少なくともいくらかのエネルギー治療を受けた後の代表的な神経信号4501を示している。信号4401と信号4501とを比較すると、神経信号の振幅が低下している一方で、パルス幅は増大していることが明らかである。信号4501の勾配および勾配の変化は、信号4401の勾配および勾配の変化よりも、はるかに滑らかでないことも明らかである。これは、神経が本開示のエネルギー治療に対してどのように反応するかを示している。エネルギーが送達されると、神経伝達特性が低下するか、または排除され、それにより神経信号が低下し、連続的でなくなり、速度がより遅くなる。
【0149】
神経信号測定は、好ましくは、回路の精度および感度を最適化するために、心臓電気信号、刺激信号およびシステムノイズの影響が神経感知回路からフィルタリングされるように、信号フィルタリングを用いて最適化される。信号フィルタリングは、バンドパスフィルタのような手段によって行われ得る。例えば、好ましい値が100Hzである約1Hz〜約500Hzの範囲のローパスフィルタ、および好ましい値が5kHzである約1kHz〜約10kHzの範囲のハイパスフィルタを用いて、回路によって感知および測定されるべき信号の周波数帯域を確立する。測定値は、次に、治療エネルギーの送達を調節するために用いられるエネルギー制御アルゴリズムに適用されるフィードバックとして用いられる。
【0150】
単極の実施形態では、エネルギーは電極の1つ以上の正極から共通接地経路の1つ以上の負極に流れるため、感知は組織のより広い領域からのものである。この概念を
図1Bおよび
図1Cの実施形態に適用すると、好ましい極性は、電極140a〜140dが神経信号測定に用いられる共通接地回路の負極として機能すると同時に、外部パッチ(図示せず)を正極として用いることである。この感知を目的とした、一見したところ逆のエネルギーの印加において、電極140a〜140dは対象の神経組織により近接しており、したがって感知のために負極として機能することによって改善された感知精度を提供し得る。治療のエネルギー送達モード中、外部パッチおよび電極140a〜140dの極性は、電極140a〜140dが正極となり、外部パッチが接地のための負極となるように切り換えられ得る。
【0151】
双極の実施形態では、電極140a〜140dの正極と負極とが直ぐ隣接しており、よって感知される組織量は単極構成におけるよりもはるかに限局されるために、感知は組織の局所的な領域からのものである。双極配列において電極の極がごく近接していることは、極の近接により、本質的により少ない量のエネルギー送達で組織への通電が可能となり、極の間の組織量がより少ないことから、本質的により高度な測定分解能が可能となるため、望ましい実施形態である。さらに、電極構成140a〜140dの構成は、本願に記載したように経路に沿った神経信号の直線的な移動の感知および測定を可能にする基端方向/先端方向の直線的な離間を提供する。
【0152】
神経信号の刺激および測定は、エネルギー治療の前、最中および/または後に行われる。一実施形態では、神経活性を治療前に評価して神経活性の基準レベルを確立し、次に、神経活性の変化の閾値レベルが生じたかを判定するために治療後に再評価する。神経信号の振幅のパーテンテージの低下、信号勾配の分割の程度、神経信号パルスの継続時間の増大、および神経信号パルス間の時間の増大のうちのいずれか1つ以上を用いて、目標組織における除神経が生じたか、または生じている過程にあることを示す組織反応を測定する。換言すると、神経活性の完全な途絶は、除神経治療に対する遅延反応であり得るが、治療の有効性を示すのに十分な神経活性のいくらかの低下が除神経治療の間またはその直後に生じ得る。代替的な実施形態では、効果的な除神経は、所定の刺激に応答して神経信号が検出されないものとして特徴付けられる。
【0153】
神経信号の評価は、同様にまたは代替的に、エネルギー治療中に行われてもよい。例えば、
図13に示す制御アルゴリズムは、各電極起動サイクルの前または後に、刺激された神経活性の時間スケール測定を可能にするように変更されてもよい(そのような測定値はミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒、ピコ秒等のいずれかのオーダーのものである)。これらのサイクル内測定値は、治療前の基準値、以前のサイクルの測定値、または他の基準と比較される。
【0154】
いくつかの実施形態では、神経活性の評価が治療前および治療後に行われるか、各治療サイクル間に周期的に行われるか、または特定数の治療サイクル後に周期的に行われるかにかかわらず、神経活性の評価からのデータを用いて、除神経治療のパラメータを確立または調整し得る。例えば、
図13および
図14によって示す実施形態では、各サイクルの設定電圧は以前の印加電圧と、測定されて平均化された温度誤差との関数であり、一方、治療温度の総時間は、測定された神経活性の関数、または以前に測定されたか、または予め設定された基準値からの測定された神経活性の偏差の関数である。そのようなアルゴリズムでは、神経信号の測定された振幅、神経信号の速度、および/または分割振幅のうちの1つ以上が考慮される。よって、除神経治療において神経活性の大きな低下が初期に測定された場合には、総治療時間を短縮してもよい。逆に、神経信号の評価が神経活性の低下を測定していない場合には、総治療時間を延長してもよい。当然ながら、1つ以上の神経信号の評価からのフィードバックを用いて、除神経治療の付加的または代替的なパラメータを変更してもよい。
【0155】
神経信号の測定は、本願に記載するエネルギー送達および制御方法に直接組み込まれてもよい。候補電極が選択され、制御アルゴリズムに従って通電される際に、神経信号測定の付加的な関数が制御アルゴリズムに組み込まれてもよく、それにより神経反応の付加的な制御因子は、治療前の組織細胞状態を可能な限り最大限に保つために過剰なエネルギーの送達を防止するとともに、エネルギーを送達して治療反応を得る精度を高める。
図13Aに示すように、付加的な制御ループステップ1313を用いて、神経信号低下閾値が満たされているかを評価してもよい。神経信号低下閾値が満たされていない場合には、制御ループは次にループステップ1314に進み、候補電極が温度閾値に達しているかを判定する。ループステップ1313において神経が信号低下閾値に達していると判定された場合には、前記電極は通電されるべき候補電極としての選択から外される。
【0156】
小血管/分岐血管および他の通路の治療
本願に記載するシステムおよび装置は、他のエネルギーに基づく治療システムおよび装置が適さない状況において有利に用いられ得る。例えば、本願に記載するシステムおよび装置の実施形態は、他のカテーテルに基づくエネルギー治療システムを用いた治療には小さすぎる血管および他の通路において用いることができる。いくつかの場合、本願に記載するシステムおよび装置は、4mm未満の直径および/または20mm未満の長さを有する腎動脈または他の血管において用いることができる。血管の捩れ、および治療部位が治療を受けるべきではない領域に近接していることなどの他の要因は、以前の装置を用いた治療には禁忌であるか、または他の場合には適していないことがあるが、本願に記載するシステムおよび装置の少なくともいくつかの実施形態に対してはそうではない。
【0157】
図1Dおよび
図1Eは、3つの電極アセンブリをそれぞれ有する4mmおよび5mmのバルーンを示している。しかしながら、これらの電極アセンブリの先の段落に記載した特定の幾何学的形状および他の特徴は、1mm、2mm若しくは3mmのバルーンまたはそれらの中間サイズのようなより小径のバルーンにおけるそれらの電極アセンブリの使用を容易にする。場合により(例えばいくつかの1mmの実施形態では)、前記バルーンはガイドワイヤ管腔を備えていなくてもよい。
図46は、デュポン(DuPont)(商標)から入手可能な可撓性ポリイミドフィルムであるカプロトン(Kapton)(登録商標)から製造された本体4601と、標準的なバルーン材料から製造された肩部4602とを有するバルーンの一実施形態を示している。いくつかの場合において、
図46のバルーンのカプトロン(登録商標)本体を用いて、バルーン上において用いられるフレキシブル回路アセンブリの独立した層の必要性を排除し得、例えば
図2Bに示す基層202を排除し得、それによりフレキシブル回路アセンブリのプロファイルを低減する。
【0158】
上述したシステムおよび装置の他の特徴もまた、比較的小さい血管におけるそれらの使用を容易にし得る。例えば、エネルギー治療を小径の血管に送達することは、送達されるエネルギーの量および/または治療によって生じる温度上昇の特に精密な制御を必要とする。したがって、特定の電極エネルギー送達の幾何学的配列、制御アルゴリズム、および上述した他の特徴は、本発明のシステムおよび装置をそのような状況において特に適したものにし得る。
【0159】
図47は、大動脈4702から腎臓4703に分岐する典型的な主腎動脈4701を概略的に示している。カテーテルのバルーンおよび電極アセンブリ4704が組織の治療のために拡張されて配置されている本発明の実施形態が示されている。一定のエネルギー線量を印加し、その後、バルーンを収縮させて、取り出すか、または再配置する。
【0160】
図48は、大動脈4803から分岐する主腎動脈4801と副腎動脈(副・腎動脈)4802とを概略的に示しており、それらの双方は腎臓4804まで延びている。副動脈は、直径約1mm〜直径約5mmのサイズにわたり得る。
図48の腎動脈は、インビボにおいて対象毎に変化し得るものの簡単な概略図である。例えば、前記動脈は、直径、長さ、ねじれ、位置および数が変化し得る。さらに、これらの変化は、各動脈および各対象者に関して生じ得る。
図48は、より小さい副動脈における治療のために配置された第1バルーンカテーテルAと、より大きい主腎動脈における治療のために配置された第2バルーンカテーテルBとを示している。
【0161】
実際には、2本の動脈が、完全なバルーンの拡張および動脈内腔の組織との接触を可能にするほど十分に直径が近い場合には、カテーテルAおよびカテーテルBは同じものであることが可能である。カテーテルAおよびカテーテルBを、各動脈の治療可能な長さに応じて、それぞれの動脈の長さに沿って再配置し得ることがさらに可能である。医師が所望するならば、主動脈および副動脈を同時に治療し得ることもさらに可能である。
【0162】
出願人の知る限り、本発明以前には、小さな動脈の過熱によって生じる技術的な限界、より小さい断面を有する内腔領域内で操作するときの空間的制約、および捩れた経路を進むことの難しさのために、副腎動脈の治療は可能ではなかった。本発明の実施形態は、拡張可能なカテーテルに基づいた構造、最も好ましくはバルーン上におけるフレキシブル回路電極を用いるため、「万能サイズの(one size fits all)」装置の制限がなくなる。本発明のバルーンおよび電極アセンブリは、漸進的な範囲の内腔径に対して正確に制御された熱エネルギー線量を容易にするように、漸進的なサイズに形成され、配列される。換言すると、前記バルーンおよび電極アセンブリは、対応するサイズの内腔において最適化された操作のために漸進的なサイズに形成され、配列される。電極の数は組織の過熱を防止するように選択される。バルーンに基づいた拡張可能構造は、可撓性を有する、より小さな未拡張の直径である位置まで進むことができる。拡張したバルーンの大きな表面接触は、単点プローブまたは他のそのような同様の設計の屈曲および/または狭い空間的制約を回避しながら、組織の接触における均一性を可能にする。
【0163】
副腎動脈は、ヒト患者の25%〜30%に存在するが、これらの患者は以前の腎除神経の研究からは除外されていた。REDUCE−HTN臨床試験(ベシックス バスキュラーの臨床研究プロトコルCR012−020の全内容は参照により本願に援用される)において、4人の対象者のサブセットが、バルーン表面上に長手方向および周方向に偏倚したパターンで取り付けられた最大8つの放射線不透過性の金電極を備えた0.014インチ(0.3556mm)のオーバーザワイヤ経皮バルーンカテーテルを含むベシックス腎除神経システム(ベシックス バスキュラー インコーポレイテッド、カリフォルニア州ラグナヒルズ)を用いた主腎動脈および少なくとも1本の副腎動脈の成功裏の治療を受けた。例示的な実施形態において、カテーテルは、約68℃の温度制御された治療線量のRFエネルギーを約30秒にわたって送達する、専用自動化低出力RF双極発生器(proprietary automated low−power RF bipolar generator)に接続される。このコホートの平均基準診察室血圧(office−based blood pressure:OBP)は189/93mmHgであった。各主腎動脈の平均10.5回の除神経に加えて、このコホートを副腎動脈1本あたり平均8回の除神経によって治療した。
【0164】
この研究では、4人の対象者に関して、周術期の合併症は報告されず、処置直後の血管造影は腎動脈の痙攣または任意の他の有害作用を示さなかった。これらの4人の対象者は、処置後2週間で、平均−32/−16mmHg(190/97から167/91、175/92から129/70、192/94から179/91、183/87から138/55)のOBPの低下を有する改善を示した。
【0165】
図49および
図50は、電極アセンブリの前記電極のサブセットを用いてエネルギー送達が選択的に与えられる腎除神経治療の非限定的な例を概略的に示している。
図49は、分枝4902を備えた腎動脈4901を概略的に示している。この例では、バルーンおよび電極アセンブリ4903は、電極のうちの1つ4904が分枝を腎動脈につなぐ口部に近接し、よって血管壁と付着しないように腎動脈内に配置される。いくつかの実施形態において上述したように、本発明によるシステムおよび方法は、血管壁と付着した電極または電極のサブセット(例えば、
図49の電極4905,4906)に選択的に通電するが、血管壁と付着していない電極または電極のサブセット(例えば電極4904)には通電しないように構成され得る。当業者には、
図49の例に加えて、血管の捩れ、血管径の変化、血管壁上の沈着物の有無などを含むが、これらに限定はされない様々な他の要因の結果として、電極アセンブリと血管壁との間の不完全な付着が生じ得ることが分かるであろう。
【0166】
図50Aおよび
図50Bは、電極アセンブリおよびバルーンを用いて腎動脈5001内の2つの位置においてエネルギー治療を実施する、腎除神経治療の非限定的な例を概略的に示している。
図50Aでは、前記バルーンは、電極5002〜5005のすべてが腎動脈5001内に位置し、通電のための潜在的な候補であるように配置されている。
図50Bでは、
図50Aに示した位置においてエネルギー治療を実施した後、バルーンおよび電極アセンブリは、それらの一部は腎動脈5001内に位置したままであり、かつ、それらの一部は大動脈5006内に位置するように、引き出されている。
図50Bに示した配置では、本発明のシステムおよび方法の特定の実施形態は、電極5002,5005(並びに、腎動脈5001内に配置され、かつ/または、腎動脈5001の壁と付着した任意の他の電極)のみを、通電するための潜在的な候補として選択するように構成されており、大動脈5006内の電極は通電するための候補ではないものと特定される。
図50Aおよび
図50Bによって示すように、本発明の特定の実施形態は、少なくとも一部の患者においては神経組織が比較的高度に集中した領域である、大動脈5006を腎動脈5001につなぐ口部に位置するか、またはそれに近接した組織にエネルギーを送達することを容易にし得る。
【0167】
2013年1月25日出願の「METHODS AND APPARATUSES FOR REMODELING TISSUE OF OR ADJACENT TO A BODY PASSAGE」と題された米国特許出願第13/750,879号(代理人整理番号1001.3095102)は参照により本願に援用される。
【0168】
例示的な実施形態について、例として、また理解を明確にするために、多少詳細に説明してきたが、様々な修正、改造および変更が用いられてもよいことが当業者には分かるであろう。