特許第6204492号(P6204492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204492ガラス充填高性能非晶質ポリマー組成物上の金属化および表面コーティング溶液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204492
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ガラス充填高性能非晶質ポリマー組成物上の金属化および表面コーティング溶液
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20170914BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20170914BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170914BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20170914BHJP
   C23C 14/20 20060101ALI20170914BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20170914BHJP
   G11B 33/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B32B27/28
   B32B27/36 102
   B32B27/20 Z
   B32B27/30 A
   B32B15/08 Q
   B32B15/09 Z
   H05K9/00 W
   C23C14/14 D
   C23C14/14 B
   C23C14/20 A
   G11B33/14 503Z
   G11B33/02 305Z
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-549935(P2015-549935)
(86)(22)【出願日】2012年12月31日
(65)【公表番号】特表2016-508896(P2016-508896A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】CN2012088051
(87)【国際公開番号】WO2014101188
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】シェン、リアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヤンガン
(72)【発明者】
【氏名】フェン、ウェイ
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−337078(JP,A)
【文献】 特開平03−041798(JP,A)
【文献】 特開平09−135097(JP,A)
【文献】 特開2004−045883(JP,A)
【文献】 特開2011−073322(JP,A)
【文献】 特開2003−301105(JP,A)
【文献】 特開2001−152014(JP,A)
【文献】 特開2005−175243(JP,A)
【文献】 特公平03−045687(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0004280(US,A1)
【文献】 特許第3774645(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00〜B32B43/00
C23C14/00〜C23C14/58
H05K9/00
G11B33/00〜G11B33/14
C08J7/00〜C08J7/18
B05D1/00〜B05D7/26
C08L1/00〜C08L101/16
C08K3/00〜C08K13/08
C09D1/00〜C09D201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の質量に対して、
(a)35〜85質量%の、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、高熱ポリカーボネートおよびそれらの組み合わせを含む、ガラス転移温度が少なくとも180℃の高熱非晶質ポリマー材料と、
(b)10〜50質量%の、ガラス繊維、ガラスフレーク、扁平ガラス繊維、ガラスビーズおよびこれらの組み合わせから選択された充填剤と、
(c)0〜10質量%の、流動促進剤、熱安定剤、離型剤およびこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物を含む基板と;
前記基板上に配置された第1の層と;
第1の層上に配置された第2の層と、を備える生成物であって、
前記第1の層と第2の層は、Cu、Ni、CrおよびAlから選択された少なくとも1つの金属を含む金属化コーティング、並びにオリゴマーまたはモノマーを含むアクリル部分と、光開始剤と、レベリング剤、賦形剤およびこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つとを含むポリマーコーティングから独立に選択され、前記第1の層は前記第2の層とは異なり、前記生成物の脱イオン水による超音波洗浄5回後の液中パーティクル数は1,500個/cm未満であり、
前記生成物のEMI遮蔽効果は30dB超であ
前記生成物のクロスハッチテープ等級が、ASTM D3359基準の等級3B以上である、
ことを特徴とする生成物。
【請求項2】
前記金属化コーティングは、物理蒸着法(PVD)、すなわち、スパッタリング、真空熱蒸着(VTE)およびこれらの組み合わせから選択された1つで形成されることを特徴とする請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
前記金属化コーティングの厚みは100〜500nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の生成物。
【請求項4】
前記ポリマーコーティングの厚みは5〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の生成物。
【請求項5】
クロスハッチテープ等級が、ASTM D3359基準の等級3B〜等級5Bであり;
EMI遮蔽効果が30dB超であり;
全有機体炭素(TOC)が1000ng/cm未満で示されるように、85℃でのアウトガス検出が低く;
陰イオン濃度が60ng/cm未満で示されるように、全浸出イオンクロマトグラフィ(IC)検出が低く;
脱イオン水による超音波洗浄5回後の液中パーティクル数(LPC)が1,500個/cm未満と低く;
全有機体炭素(TOC)が30ng/cm未満で示されるように、ガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出される不揮発性残留物(NVR)が低く;
ガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出される全炭化水素が2ng/cm未満であり;
ガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出される全Irgafosが2ng/cm未満である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の生成物。
【請求項6】
ハードディスクドライブ筐体の形態であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の生成物。
【請求項7】
曲げ弾性率が8,000MPa超であり;
引張応力が100MPa超であり;
熱変形温度(HDT)が180℃超であり;
ノッチ付衝撃強度が50J/m超である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の生成物。
【請求項8】
請求項1に記載の生成物における基板の表面上に金属化コーティングを製造する方法であって、
組成物の質量に対して、
(a)35〜85質量%の、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、高熱ポリカーボネートおよびそれらの組み合わせを含む、ガラス転移温度が少なくとも180℃の高熱非晶質ポリマー材料と、
(b)10〜50質量%の、ガラス繊維、ガラスフレーク、扁平ガラス繊維、ガラスビーズおよびこれらの組み合わせから選択された充填剤と、
(c)0〜10質量%の、流動促進剤、熱安定剤、離型剤およびこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物を含む基板を提供するステップと;
スパッタリング、真空熱蒸着(VTE)およびこれらの組み合わせから選択された1つの物理蒸着(PVD)ステップによって、Cu、Ni、CrおよびAlから選択された少なくとも1つの金属を含む金属化コーティング前記基板上に提供するステップと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の生成物における基板の表面上に金属化コーティングを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
充填剤を有する高性能(高熱)非晶質ポリマー(Tgが180℃以上)組成物は、良好な機械的特性と高温での優れた寸法安定性を有しており、例えばハードディスクドライブなどの金属置換用途用の成形品の製造に応用できる。そのすべての性能を満たすには、少なくともある量の充填剤が樹脂に導入されなければならない。一方、こうした組成物は、最終部品のアウトガス、浸出イオンクロマトグラフ(IC)、液中パーティクル数(LPC)および不揮発性残留物(NVR)性能特性から明らかとなる優れた清浄特性を要求される。しかしながら、今までの充填剤強化高性能ポリマー部品の成形後の表面は、表面上を流れる充填剤のために非常に粗く、清浄性能が劣っていた。ガラス強化高性能ポリマー系物品上の電磁妨害(EMI)遮蔽効果を達成する金属化法の提供が求められている。
【発明の概要】
【0002】
種々の実施形態では、プラスチック組成物上の被覆効果を提供して部品の清浄性能を向上させ得るスパッタリング法またはPVD(物理蒸着)法を用いて、ナノスケール金属層をプラスチック物品表面上に導入する。一方、成長するHDD市場からの超清浄要件を満たすために、ガラス強化高性能ポリマー部品上にミクロスケールのアクリレートコーティング層を生成する新規のポリマーコーティングプロセスも使用できる。さらに、この金属化法とポリマーコーティング法を組み合わせて、全ての性能を良好に維持しながら、アウトガス、浸出IC、LPCおよびNVRの清浄性能を向上させるガラス充填剤強化高性能非晶質ポリマー上の優れた被覆効果が達成できる。
【0003】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の記述、添付の請求項および添付図を参照することによって一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1(A)】真空熱蒸着(VTE)の原理を示す概略図である。
図1(B)】大量生産用熱蒸着装置の写真である。
図2】直流(DC)ダイオードスパッタリングの原理とプロセスを示す概略図である。
図3】DCマグネトロンスパッタリングの原理とプロセスを示す概略図である。
図4】フローコーティングプロセスのステップを示す概略図である。
図5】クロスハッチテープ試験の標準操作手順(SOP)とASTM基準の要約を示す。
図6】2プローブファラデックスメーター装置とプロセスを示す概略図である。
図7(A)】金属化と、金属層と基板間にアクリレートコーティング層を有するコーティング構造と、を示す概略図である。
図7(B)】金属化と、アクリレートコーティング層と基板間に金属層を有するコーティング構造と、を示す概略図である。 種々の実施形態は、図に示した配置および手段に限定されないことは理解されるべきでる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は部分的には、ガラス転移温度が少なくとも180℃の高熱非晶質ポリマー材料、充填剤および任意に流動促進剤の特定の組み合わせと、あるプロセス条件と、を用いることによって、該高熱非晶質ポリマー材料、該充填剤および該任意の流動促進剤から成る基板と、金属化コーティングまたはポリマーコーティングと、を有する生成物であって、そのアウトガス、浸出イオンクロマトグラフ(IC)、液中パーティクル数(LPC)および不揮発性残留物(NVR)特性で明らかな優れた清浄特性を有する生成物が今や製造できるという観察に基づいている。好都合なことに、本発明の生成物の液中パーティクル数は1,500個/cm未満、EMI遮蔽効果は30dB超であって、基板上の第1のコーティングと、その上に配置された任意の第2のコーティングと、を有する。
【0006】
本発明は、好適な実施形態に関する以下の詳細な記述と、そこに含まれる実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。明示的に示されているか否かに拘わらず、本明細書における数値はすべて、「約」で修飾されているものと見なされる。「約」は一般に、当業者が引用された数値と等価である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と考える数値範囲を指す。多くの場合、「約」は、最も近い有効数字に四捨五入される数を含んでよい。
【0007】
本出願における「上に配置された」は、ある層が別の層または基板に十分に接着しており、生成物のクロスハッチテープ試験がASTM D3359基準の等級3B以上であることを意味する。例えば、生成物が基板とその上に配置された第1の層を含む場合、「上に配置された」は、第1の層が基板に十分に接着しており、生成物のクロスハッチテープ試験がASTM D3359基準の等級3B以上であることを意味する。生成物が、基板と、その上に配置された第1の層と、第1の層上に配置された第2の層と、を含む場合、「上に配置された」は、第2の層が第1の層に十分に接着しており、また、第1の層が基板に十分に接着しており、生成物のクロスハッチテープ試験がASTM D3359基準の等級3B以上であることを意味する。
【0008】
本出願での「液中パーティクル数」は、生成物から調製された液体サンプル中で検出された所定の粒度分布の粒子数を意味する。生成物上の微粒子汚染物質の分析に適した液体サンプルを得るには、水または水と洗浄液で生成物を洗浄する。その後、微粒子含有液体をビーカーに入れ、このサンプルと抽出流体を含むビーカーを超音波浴中に入れる。その後、超音波浴内で、固形物から粒子を抽出する。ある期間経過後(通常は1〜60分)、サンプルを取り出し、流体を抽出して存在する微粒子数を分析する。粒子は、半導体レーザーで液体サンプルを照射し、散乱光を検出することで測定される。散乱光の特性は、粒径に影響を及ぼす。粒径を測定すると、それぞれの径範囲内の粒子数が決定される。測定される粒子径範囲は、使用する検出器に依存する。本発明では、生成物の液中パーティクル数は1,500個/cm未満であり、粒径分布範囲は300nm〜2μmである。
【0009】
本出願での「クロスハッチテープ試験」は、基板とコーティング間または異なるコーティング層間の結合のコーティング接着または強度の、あるいは一部の基板の結合強度を決定する方法である。クロスハッチテープ試験は、十分な力で基板まで確実にカットできるように、約20〜30mm長さにカットして行える。カッター開口幅はコーティング厚に依存する。角度90°での第1のカットと同様の長さのカットによって、基板までのカットが再び確実に行える。柔らかいブラシまたはティッシュでコーティングを少しブラッシングして、コーティングの剥離した薄片やリボンを取り除いた後、ASTM D3359規格に記載の接着試験結果の分類に従って、得られたクロスハッチパターンをチェックする。ASTM D3359に準拠した接着テープを使用後、結果をチェックしてもよい。
【0010】
本発明の生成物によるEMI(電磁妨害)遮蔽効果は、電磁妨害、すなわち、電子動作を妨害し電子デバイスを誤動作させる可能性がある通常の広範な障害源の遮蔽を指す。EMI遮蔽効果は、H−野を発生させ、減衰したH−野を受信アンテナで測定することによって、サンプルの「スクエア抵抗」(Rs)を決定することで測定できる。遮蔽効果(SE)は、式:SE=20log(377/(2×Rs)+1)にRsを代入して算出される。EMI遮蔽効果の特定の決定方法を後述の実施例に記す。
【0011】
種々の実施形態は、高熱非晶質ポリマー材料と、充填剤と、任意に少なくとも1つの添加剤と、を含み得る組成物に関する。
【0012】
該組成物は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内のある量の高熱非晶質ポリマー材料を含んでいてもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、組成物の質量に対して、5、10、15、20、25、30、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、90および95質量%から選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該組成物は、その質量に対して、35〜85質量%の範囲内のある量の高熱非晶質ポリマー材料を含んでいてもよい。
【0013】
該組成物は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内のある量の充填剤を含んでいてもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、組成物の質量に対して、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90および95質量%から選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該組成物は、その質量に対して、10〜50%質量%の範囲内のある量の充填剤を含んでいてもよい。
【0014】
該組成物は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内のある量の少なくとも1つの添加剤を含んでいてもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、組成物の質量に対して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45および50質量%から選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該組成物は、その質量に対して、0〜10質量%の範囲内のある量の少なくとも1つの添加剤を含んでいてもよい。
【0015】
高熱非晶質ポリマー材料のガラス転移温度は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であってもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、150、155、160、165、170、175、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、265、270、275、280、285、290、295および300℃から選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、高熱非晶質ポリマー材料のガラス転移温度は、少なくとも180℃または180〜290℃である。
【0016】
高熱非晶質ポリマー材料としては、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、高熱ポリカーボネート(HHPC)およびこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0017】
充填剤は、ガラス繊維、ガラスフレーク、扁平ガラス繊維、ガラスビーズおよびこれらの組み合わせから選択できる。
【0018】
少なくとも1つの添加剤は、流動促進剤、熱安定剤、離型剤およびこれらの組み合わせであってもよい。流動促進剤としては、ポリアミドおよびまたは液晶ポリマーが挙げられる。流動促進剤は、ポリフタルアミド(PPA)であってもよい。流動促進剤は、芳香族ポリエステルである液晶ポリマーであってもよい。
【0019】
別の実施形態は、基板と、その上に配置された第1の層と、任意の第1の層上に配置された第2の層と、を含み得る生成物に関する。
【0020】
第1の層と第2の層は、金属化コーティングとポリマーコーティングから独立に選択できる。基板は、該実施形態に記載の組成物、すなわち、組成物の質量に対して、35〜85質量%の、ガラス転移温度が少なくとも180℃の高熱非晶質ポリマー材料と;10〜50質量%の、ガラス繊維、ガラスフレーク、扁平ガラス繊維、ガラスビーズおよびこれらの組み合わせから選択された充填剤と;0〜10%質量%の、流動促進剤、熱安定剤、離型剤およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物を含んでいてもよい。
【0021】
金属化コーティングは、物理蒸着(PVD)、例えば、スパッタリング、真空熱蒸着(VTE)およびこれらの組み合わせで形成できる。金属化コーティングは、Cu、Ni、CrおよびAlから構成される群から選択された少なくとも1つの金属を含んでいてもよい。金属化コーティングは、基板の少なくとも1つの表面上に形成できる。金属化コーティングは、基板の反対表面上に形成できる。
【0022】
金属化コーティングの厚みは、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であってもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。下限値およびまたは上限値は、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590および600nmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、金属化コーティングの厚みは100〜500nmであってもよい。
【0023】
ポリマーコーティングは、オリゴマーまたはモノマーを含むアクリル部分と、光開始剤と、レベリング剤、賦形剤およびこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つと、を含んでいてもよい。
【0024】
ポリマーコーティングの厚みは、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であってもよい。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、1、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95および100μmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、ポリマーコーティングの厚みは5〜20μmであってもよい。
【0025】
第1の層は、ポリマーコーティングであってもよく、第2の層は、金属化コーティングであってもよい。第1の層は、金属化コーティングであってもよく、第2の層は、ポリマーコーティングであってもよい。
【0026】
該生成物のクロスハッチテープ試験等級は、ASTM D3359基準の等級5Bという良好なものであり得る。別の実施形態では、該生成物のクロスハッチテープ試験等級は、少なくともASTM D3359基準の等級3Bである。別の実施形態では、該生成物のクロスハッチテープ試験等級は、ASTM D3359基準の等級3B、4Bおよび5Bの範囲内である。
【0027】
該生成物のEMI遮蔽効果は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195および200dBから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物のEMI遮蔽効果は30dB超であり得る。
【0028】
該生成物の85℃でのアウトガス検出は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内の全有機体炭素(TOC)で示されるように、低いものであり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900および2000ng/cmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の85℃でのアウトガス検出は、全有機炭素(TOC)が1000ng/cm未満で示されるように、低いものであり得る。
【0029】
該生成物の全浸出イオンクロマトグラフィ(IC)検出は、陰イオン濃度が下限値およびまたは上限値を有するある範囲で示されるように、低いものであり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95および100ng/cmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の全浸出イオンクロマトグラフィ(IC)検出は、陰イオン濃度が60ng/cm未満で示されるように、低いものであり得る。
【0030】
該生成物の水中パーティクル数は、脱イオン水超音波洗浄5回後で下限値およびまたは上限値を有するある範囲内で示されるように、低いものであり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、0、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950および2000個/cmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の液中パーティクル数(LPC)は、脱イオン水超音波洗浄5回後で1,500個/cm未満と低いものであり得る。
【0031】
該生成物のガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出された不揮発性残留物(NVR)は、全有機体炭素(TOC)が下限値およびまたは上限値を有するある範囲内で示されるように、低いものであり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95および100ng/cmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物のガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出された不揮発性残留物(NVR)は、全有機体炭素(TOC)が30ng/cm未満で示されるように、低いものであり得る。該生成物のガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出された全炭化水素は、2ng/cm未満であり得る。
【0032】
該生成物のガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出された全IRGAFOS(登録商標)は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20ng/cmから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物のガスクロマトグラフィ/質量分光法(GC−MS)で検出された全IRGAFOS(登録商標)は、2ng/cm未満であり得る。
【0033】
一部の実施形態では、該生成物は、ハードディスクドライブ筐体の形態であってもよい。本発明に包含されるハードディスクドライブ筐体は、多種類のハードディスクドライブを包含できるように寸法付けられる。一般に、ハードディスクドライブは、データを読み表面に書き込む、可動のアクチュエータアーム上に配置された磁気ヘッドを有する、磁性材料でコーティングされた1つまたは複数の剛な(「ハードな」)急速回転ディスク(プラッター)から成る。一実施形態では、該ハードディスクドライブ筐体は、ディスクベースと;ディスクベース上に搭載され、少なくとも1つのディスクに接続されて少なくとも1つの回転ディスク表面を形成するスピンドルモータと;ディスクベースに枢動可能に取り付けられて、少なくともアクチュエータアームを通して回転ディスク表面上にスライダーを位置付けるヘッドスタック組立体と;ディスクベースに取り付けられ、ディスクベースに垂直のアクチュエータアームを通して作用する衝撃移動を制限するために留まっている時に、アクチュエータアーム近くに位置付けられる少なくともフィンガーを含むアームリミッタと、を備えるハードディスクドライブ用のものである。ハードディスクドライブ筐体は、射出成形などの任意の適切な方法で製造できる。ハードディスクドライブの寸法は変わってもよい。一実施形態では、筐体の長さは変わってもよい。一実施形態では、ハードディスクドライブの長さは30〜250mmであり、幅は10〜150mmであり、高さは1〜50mmである。
【0034】
一部の実施形態では、該生成物の曲げ弾性率は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、7000、7500、8000、8100、8200、8300、8400、8500、8600、8700、8800、8900、9000、9100、9200、9300、9400、9500、9600、9700、9800、9900、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、20000、21000、22000、23000、24000および25000Mpaから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の曲げ弾性率は8,000MPa超であり得る。
【0035】
該生成物の引張応力は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900および2000Mpaから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の引張応力は100MPa超であり得る。
【0036】
該生成物の熱変形温度(HDT)は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、150、160、170、180、190、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950および1000℃から選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物の熱変形温度(HDT)は180℃超であり得る。
【0037】
該生成物のノッチ付衝撃強度は、下限値およびまたは上限値を有するある範囲内であり得る。該範囲には、下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、10、20、30、40、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950および1000J/mから選択できる。例えば、ある好適な実施形態では、該生成物のノッチ付衝撃強度は50J/m超であり得る。
【0038】
種々の実施形態は、清浄度が向上した充填剤強化高熱ポリマー組成物であって、ガラス転移温度が180℃超の高熱非晶質ポリマーの少なくとも1つ、好適にはポリエーテルイミドと;上記ポリマーとブレンドされた適切な熱可塑性樹脂と;ガラス量が組成物の合計質量に対して10〜60質量%の、ガラス繊維、ガラスフレーク、扁平ガラス繊維およびガラスビーズの内の少なくとも1つの充填剤またはその組み合わせと;量が組成物の合計質量に対して0〜10質量%の、流動促進剤、熱安定剤および離型剤などの他の添加剤と、を含む組成物に関する。
【0039】
種々の実施形態は、厚みが200nm〜500nmの金属層を含む、プラスチック樹脂表面上の金属化プロセスに関する。該金属層は、電磁妨害(EMI)遮蔽機能を実現し、また大量生産を容易にするために、単一の金属層すなわちCu、Ni、CrまたはAl層、あるいは二層の金属層すなわちCr/Ni層を含んでいてもよい。該金属化法は、実験室での、またはプラントにおける大量生産での金属膜調製のために、スパッタリング法と真空熱蒸着(VTE)法を備えていてもよい。種々の実施形態では、該プロセスは、エッチングステップと、金属化チャンバ内でのその場酸素プラズマ処理と、を備えていてもよく、表面上の膜接着性を向上させるためにプラスチックプラークの前処理として採用され得る。
【0040】
他の実施形態は、プラスチック樹脂表面上の表面ポリマーコーティングプロセスに関する。コーティングは、金属化の前または後のいずれかで行える。該コーティングプロセスは、スプレーコーティング、ディップコーティングおよびフローコーティングを含み得る。該コーティングは、UVランプで硬化できるアクリレート混合物であってもよい。該コーティングは主に、アクリレートオリゴマーとモノマー、光開始剤、レベリング剤および賦形剤で製造され得る。コーティング層の厚みは、1μm〜20μmであってもよく、あるいは5μm〜20μmであってもよい。
【0041】
種々の実施形態では、コーティングは、スプレーコーティング、ディップコーティングまたはフローコーティングで、ポリエーテルイミド基板の表面上に導入され得る。コーティング後、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、n−ブタノール、1−メトキシ2−プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテルあるいはこれらの混合物であり得る賦形剤。乾燥条件は、25〜70℃にて1〜30分であってもよい。コーティングはUV系であってもよく、エネルギーが500mJ/cm超のUVランプで硬化させられる。コーティング層の鉛筆硬度は、荷重1000gで2H超であり得る。
【0042】
本発明を以下の具体的な実施例でさらに説明する(特に明記されない限り、部および%はすべて質量部、質量%である)。
[実施例]
【0043】
実施例で使用した材料を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例で使用したコーティング材料を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
(方法と手順)
混合と成形:実施例は、異なる比率の混合充填剤で充填されたポリマーブレンドを含む。ガラス繊維を除く成分はすべて、スーパーフロータ内で3〜5分間乾燥混合した。樹脂は、押出前に150℃×約4時間予備乾燥させた。ガラス繊維は、サイドフィーダを用いて下流で供給した。ブレンドはスロートで添加した。材料は、バレル設定温度340〜360℃、回転数300〜350rpm、処理量50〜60kg/時間とした37mm東芝二軸真空ベント付押出機で混合した。混合後、ペレットを150℃にて4〜6時間乾燥させ、110トンFanuc射出成形機で射出成形した。バレル設定温度340〜360℃、金型温度150℃でASTM棒を成形した。
【0048】
金属化法:成形したプラスチックプラークを超音波洗浄器で純粋洗浄し、120℃にて2時間硬化させた。その後、チャンバ内でプラスチックプラークを酸素プラズマ処理して、物理蒸着(PVD)を行った。PVD法で所望の金属膜を製造した。
【0049】
物理蒸着(PVD)法による金属化法:PVDとしては、真空熱蒸着(VTE)とスパッタリングの2つの真空堆積法が挙げられ、気化した所望の膜材料のプラスチックプラーク上への凝縮により、薄膜を堆積させる。成形したプラスチックプラークを超音波洗浄器で純水洗浄し、120℃にて2時間硬化させた。その後、チャンバ内でプラスチックプラークを酸素プラズマ処理して、金属化を行った。スパッタリング法または真空熱蒸着(VTE)法で、所望の金属膜を製造した。スパッタリングは、温度80〜100℃、時間は真空負荷/除荷時間を含めて1〜3分間で行った。
【0050】
真空熱蒸着(VTE)法によるアルミニウム堆積:Al堆積膜は、「低」減圧下、電気抵抗加熱によって高蒸気圧に加熱される。(a)真空熱蒸着(VTE)の原理と、(b)大量生産用装置を図1(A)と1(B)に示す。図1(A)は、真空熱蒸着(VTE)の原理を示す概略図である。図1(B)は、大量生産用熱蒸着装置の写真である。図1(A)は、熱蒸着チャンバ100を示す。熱蒸着チャンバ100は、その上に塗布された保護コーティングを有する壁101を有していてもよい。チャンバ100のベース部には、源材料102が配置されている。源材料102を加熱してアウトガス103を生じさせ、源材料102から気化した材料104を、チャンバ100のベース部に対向するチャンバ100の頂部に配置された基板105に接触させる。
【0051】
スパッタリング法による銅、Cr/Ni合金、CrおよびNiの堆積:スパッタ堆積は、ソース「ターゲット」から材料を放出させ、それをプラスチックプラークなどの「基板」上に堆積させる物理蒸着(PVD)法である。2つのスパッタリング法がある。最も簡単な形態では、図2に示すようなDCダイオードを用いる。図2は、DCダイオードスパッタリングの原理とプロセスを示す概略図である。図2を参照して、DCダイオードスパッタリングシステム200では、アルゴン201は、陽極202と陰極203間の強い電位差によってイオン化され、これらのイオンは、ターゲット204まで加速される。衝突後、ターゲット原子205が放出されて基板206まで移動し、薄膜207の原子層を形成する。図2に示すように、DCダイオードスパッタリングシステム200は、接地シールド208と、水冷チャネル209と、を備えていてもよい。
【0052】
別のスパッタリング法では、図3に示すようなDCマグネトロンが用いられる。図3は、DCマグネトロンスパッタリングの原理とプロセスを示す概略図である。図3は、マグネトロンスパッタリングシステム300の基本原理を示す。イオン化されたアルゴン301は、ターゲット308に衝突してターゲット原子302を放出させ、これによって基板303上に層を形成する。電子304とアルゴンイオンは、グロー放電305を有するプラズマを形成する。このプラズマは、磁石306により形成された磁界のためにターゲット近くに存在するので、高い効率と品質が得られる。冷却水307を用いて、ターゲット308を冷却してもよい。
【0053】
ダイナミックヘッドスペースアウトガス試験、不揮発性有機残留物試験、イオン残留物試験、液中パーティクル数(LPC)試験、クロスハッチ試験および電磁妨害(EMI)試験を含む種々の清浄度試験方法を用いた。これらの各試験方法について、以下の段落でより詳細に説明する。
【0054】
ダイナミックヘッドスペース(DHS)アウトガス:GC−MSで揮発性残留物(DHS/アウトガス)を測定するために、成形部品を用いて85℃にて3時間の条件で試験片を収集し、ダイナミックヘッドスペースガスクロマトグラフ/質量分析計(DHS−GCMS)で検出した。
【0055】
不揮発性有機残留物:GC−MSで部品上の不揮発性残留物(NVR)を測定するために、溶媒(ヘキサン)抽出からの残留物を分析し、任意のC18−C40炭化水素、Irgafos、酸化Irgafos、およびC14、C16およびC18脂肪酸のセチルエステルを定量する。この方法は、10mlヘキサンに10分間浸漬した部品を試験するステップを備える。溶液8mlを乾燥させて溶媒を除去後、ヘキサン1mLを添加して再度溶液化する。この溶液を再度乾燥させた後、D10−アントラセン−2ppm塩化メチレン標準50μlを添加する。ターゲット材料の全C18−C40炭化水素(炭化水素:炭素と水素だけを含む有機化合物を指す)とTOCを、注入口温度300℃としたガスクロマトグラフ/質量分析計(GC−MS)を用いて測定する。
【0056】
イオン残留物:フッ化物、塩化物、窒化物、臭化物、硝酸塩、ホスフェート、硫酸塩およびアンモニウムイオンを含む全イオン汚染物質と残留物をイオンクロマトグラフィー(IC)で測定する。試験片を、85℃にて1時間の条件下、脱イオン水ですすいだ後、イオンクロマトグラフィで測定した。
【0057】
LPC:部品上の残留粒子を超音波抽出し、液中パーティクルカウンター(LPC)でカウントして、液中パーティクル数を測定する。このシステムを、1つのPMS LPC、2つのCrest Custom 40kHzおよび68kH超音波洗浄器、および1つのクラス100クリーンベンチと組み合わせると、部品表面上の200nm〜2μmの残留粒子を測定できる。この場合、フローコーティングを用いる。金属化層を含むポリエーテルイミド(PEI)プラークと含まない同プラークを可動ホルダー上に固定した。その後、このホルダーをトラックに沿って速度1〜2m/分で移動させた。コーティング液をノズルからPEIプラーク表面上に流した。その後、プラークを40℃にて20分間乾燥させて賦形剤を完全に除去し、UVA強度250mW/cm、UVエネルギー1000mJ/cmの高圧水銀ランプで硬化させた。UV硬化生成物を集めて試験した。図4は、フローコーティングプロセスの詳細なステップを示す。図4は、フローコーティングプロセス400のステップを示す概略図である。図4を参照して、フローコーティングプロセス400は、ブランクを遂次的に移動させられる複数のステーションを備えていてもよい。フローコーティングプロセスは、ブランク検査用の蛍光灯を有する投入エリア401と;賦形剤でブランクをすすげるすすぎエリア402と;すすぎ剤でブランクをすすげる気化エリア403と;移動エリア404と;フローコーティングエリア405と;レベリングエリア406と;1つまたは複数のオーブン407、408、409と;UV硬化ステーション410と;被覆シートを検査する検査ステーション411と;マスキングステーション412と、を備えていてもよい。勿論、他の構成も可能である。
【0058】
クロスハッチテープ試験:クロスハッチテープ試験はASTM D3359に従った。標準作業手順(SOP)とASTM基準を図5に示す。「5B」は最良を意味し、「0B」は最悪を意味する。図5は、クロスハッチテープ試験の標準作業手順(SOP)とASTM基準の要約を示す。図5は、ISO(ASTM)クロスハッチテープ試験値0(5B)、1(4B)、2(3B)、3(2B)、4(1B)および5(0B)それぞれの表面の図と内容を示す。ASTMクロスハッチテープ試験値0(5B)の表面は、以下のように説明される:カット端部が完全にスムーズであり;格子の方形はいずれも剥離していない。ASTMクロスハッチテープ試験値1(4B)の表面は、以下のように説明される:カット交差部において、コーティングの薄片が剥離し;クロスカット面積の有意に5%以下が影響を受けている。ASTMクロスハッチテープ試験値2(3B)の表面は、以下のように説明される:コーティングは、端部に沿って、およびまたはカット交差部で薄片となり;クロスカット面積の有意に5%超〜有意に15%以下が影響を受けている。ASTMクロスハッチテープ試験値3(2B)の表面は、以下のように説明される:コーティングは、大きなリボンにおいて部分的または全面的にカット端部に沿って薄片となり、およびまたは、方形の異なる部分上で部分的または全面的に薄片となり;クロスカット面積の有意に15%超〜有意に35%以下が影響を受けている。ASTMクロスハッチテープ試験値4(1B)の表面は、以下のように説明される:コーティングは、大きなリボンのカット端部に沿って薄片となり、およびまたは一部の方形は、部分的または全面的に剥離し;クロスカット面積の有意に35%超〜有意に65%以下が影響を受けている。ASTMクロスハッチ試験値5(0B)の表面は、以下のように説明される:等級4(1B)でも分類できない任意の度合いの薄片。
【0059】
EMI遮蔽:図6に示す2プローブ法を用いて、H−野を発生させ、減衰したH−野を受信アンテナで測定することによって、サンプルの「スクエア抵抗」(Rs)を決定できる。その後、遮蔽効果(SE)は、Rsを式:SE=20log(377/(2×Rs)+1)に代入して算出できる。図6は、2プローブファラデックスメーター装置600とプロセスを示す概略図である。図6を参照して、2プローブファラデックスメーター装置600は、ソースアンテナ601と受信アンテナ602を有する。サンプル603は、ソースアンテナ601と受信アンテナ602間に配置できる。ソースアンテナは、H−野604を発生させる。受信アンテナ602は、減衰したH−野605を測定できる。サンプル603内に誘導された電流は、サンプル603のスクエア抵抗(Rs)を直接測定できるものである。
【0060】
実施例に従って採用された他の試験はすべて、表3に示すASTMおよびISO規格に基づく。
【0061】
【表3】
【0062】
(実施例1)
この実施例では、異なる比率の混合充填剤で充填された種々のポリマーブレンドを比較した。Neat ULTEM(登録商標)樹脂は、超清浄のポリエーテルイミド(PEI)材料であり、半導体用途において広範に使用されている。標準のチョップドガラス30質量%を360℃で該PEI樹脂と混合し360℃で成形して、ASTM試験用のASTM棒とした。ハードディスクドライブトップカバーも360℃で成形後、清浄度試験のために、二次コーティングと金属化プロセスを行った。その結果を表4に示す。
【0063】
実施例1−1は、従来の30%ガラス繊維(GF)充填のULTEM(登録商標)グレードの基準実施例であり、優れた機械的特性、熱的特性および衝撃特性を示した。アウトガスとイオンは、許容レベル内に制御され得るが、しかしながら、部品表面上に流れたガラス量が多いために、成形部品上で高い不揮発性残留物(NVR)と液中パーティクル数(LPC)が検出された。また、実施例1−1の成形部品は、体積抵抗が高いために、電磁妨害(EMI)遮蔽効果は示さなかった。
【0064】
実施例1−2および1−3では、実施例1−1と同じ材料基板上に金属化とアクリレートコーティングプロセスを行った。
【0065】
実施例1−2は、Cr/Ni金属層とF01コーティング層間の接着が弱く、クロスハッチテープ試験結果が0Bとなった不合格例である。このことから、Cr/Ni金属層は、F01層上に配置してはならないことが分かる。F01アクリレートコーティング処方をプラスチック表面上にフローコーティング後、被覆基板上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングして構造700を有する実施例1−2を構築した。液中パーティクル数(LPC)は1,500個/cm超であり、十分に良好ではなかった。しかしながら、浸出イオンと有機残留物は、アウトガス、炭化水素および酸化防止剤(BASF社から入手可能な、二次酸化防止剤であるIRGAFOS(登録商標)など)を含めて、検出レベルは低かった。ここで、IRGAFOSは、有機基材(プラスチック、合成繊維、エラストマー、接着剤、粘着付与樹脂およびワックス(加工剤として機能)など)および潤滑剤や金属加工油剤(EP/AW添加剤として機能)に使用されるものである。EMI効果も達成された。
【0066】
実施例1−3は発明的実施例であり、アクリレートコーティングとスパッタリングプロセスを用いた30%充填PEI複合材の超清浄性能を示した。
【0067】
図7(A)は、金属化と、金属層702と基板704間にアクリレートコーティング層703を有するコーティング構造700と、を示す概略図である。
【0068】
図7(B)は、金属化と、アクリレートコーティング層703と基板704間に金属層702を有するコーティング構造701と、を示す概略図である。図7(B)を参照する。
【0069】
プラスチック表面上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリング後、金属化基板上にF02アクリレートコーティング処方をフローコーティングして、図7(A)に示す構造700を有する実施例1−3を構築した。アウトガス、浸出イオン、有機残留物の検出レベルは許容範囲であった。F02コーティング層とCr/Ni合金金属層間の接着が優れているため、クロスハッチテープ試験結果は5Bであり、脱イオン水洗浄5回後の液中パーティクル数は、1,000個/cm未満に低減した。また、EMI遮蔽効果も、200nm金属層で33.4dBと達成された。一方、これらの実施例における機械的性能、熱的性能および衝撃性能は、良好にバランスしていた。
【0070】
実施例1−1、1−2および1−3の結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
(実施例2)
実施例2の目的は、30%ガラス繊維充填PEI/LCP複合材の清浄度とEMI性能を評価することであり、また、金属化およびポリマーコーティング後の該複合材の機械的特性、熱的特性および衝撃特性を検証することである。10%液晶ポリマーをガラス繊維充填ULTEM(登録商標)材料に導入する調製法に従って、組成物を調製した。
【0073】
実施例2−1は、30%ガラス繊維(GF)充填PEI/LCP複合材の基準実施例であり、優れた機械的特性、熱的特性および衝撃特性を示した。NVR濃度、LPC濃度は成形部品上で高かったが、アウトガスおよびイオンは、許容レベルに抑制されていた。実施例2−1の成形部品は、体積抵抗が高いために、EMI遮蔽効果を示さなかった。
【0074】
実施例2−2および2−3では、実施例2−1と同じ材料基板上に金属化とアクリレートコーティングプロセスを行った。
【0075】
実施例2−2は、Cr/Ni金属層とF01コーティング層間の接着が弱く、クロスハッチテープ試験結果が0Bとなった不合格例である。このことから、Cr/Niは、F01層上に配置してはならないことが分かる。実施例2−2の調製では、F01アクリレートコーティング処方をプラスチック表面上にフローコーティング後、被覆基板上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングして、図7(A)の構造700に示す構造を得た。さらに、LPCは1,500個/cm超となり、良好ではなかった。浸出イオンおよび有機残留物は、アウトガス、炭化水素およびIRGAFOS(登録商標)を含めて、検出レベルは低かった。EMI効果も達成された。
【0076】
実施例2−3は発明的実施例であり、アクリレートコーティングとスパッタリングプロセスを用いた30%充填PEI/LCP複合材の超清浄性能を示した。プラスチック表面に200nmのNi/Cr合金をスパッタリング後、F02アクリレートコーティング処方を金属化基板上にフローコーティングして、図7(B)の構造701を有する実施例2−3を構築した。アウトガス、浸出イオン、有機残留物の検出レベルは許容範囲であった。F02コーティング層とCr/Ni合金金属層間の接着が優れているために、クロスハッチテープ試験結果は5Bであり、脱イオン水洗浄5回後の液中パーティクル数は、1,500個/cm未満に低減した。また、EMI遮蔽効果も、200nm金属層で33.4dBと達成された。一方、これらの実施例の機械的性能、熱的性能および衝撃性能は、良好にバランスしていた。実施例2−1、2−2および2−3の結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
(実施例3)
実施例3では、流動促進剤の存在下、40質量%ガラス充填ポリエーテルイミド(PEI)と4質量%ポリフタルアミド(PPA)を混合して組成物を調製した。該ガラスは、扁平繊維30質量%とガラスフレーク10質量%を含む。プラスチック部品上にコーティングプロセスとめっきプロセスを行った。異なる金属化法とポリマーコーティング法について、清浄性能とEMI性能を評価した。機械的性能、熱的性能および衝撃性能についても検討した。
【0079】
実施例3−1は、40質量%(この内、30質量%は扁平ガラス、10質量%はガラスフレーク)の充填剤を含む高ガラス量ULTEM(登録商標)等級MD150での基準実施例であり、バランスされた熱的特性、機械的特性および衝撃特性を示した。30%充填ULTEM(登録商標)等級の実施例1−1と比較して、アウトガスおよびイオン濃度は高かったが、LPC、NVRは同等であった。しかしながら、これらも用途仕様を超えている。
【0080】
実施例3−2は不合格例である。スパッタリング法を用いて、プラスチック部品表面上に200nmのCr/Ni合金スパッタリング層を設けた。金属層とプラスチックマトリックス間の接着は非常に良好であり、クロスハッチテープ試験結果は5Bであった。アウトガス、イオン濃度、NVRは、材料層を被覆した効果により、実施例3−1と比較して低減した。一方、LPC結果がわずかに低減したものの、パーティクル数が1,500個/cm未満という要件は達成できなかった。200nm厚みのCr/Ni層によって、遠視野遮蔽値33.4dBという有意なEMI遮蔽効果が得られた。
【0081】
フローコーティング法により、プラスチック表面上にF01処方を用いた5μmのアクリレートポリマーコーティング層を設けた実施例3−3も不合格例である。クロスハッチテープ試験でも、コーティング層とプラスチック部品間の接着は優れていることが示された。アウトガス、イオン、NVRは、5μmのポリマーコーティング被覆により著しく低減した。LPCは724個/cmに低減できた。これは、要件である1,500個/cmを下回るものであった。しかしながら、EMI遮蔽効果は示されなかった。
【0082】
実施例3−1、3−2および3−3の結果を表6に示す。
【0083】
【表6】
【0084】
低LPCとEMI遮蔽効果をバランスさせるためには、プラスチック部品上でめっき層とコーティング層を組み合わせなければならない。実施例3−4および3−5では、図7(A)の構造700に示すように、最初に、プラスチック表面に5μmのF01コーティング層を設け、次に、コーティング層外側に200μmおよび400nmのCr/Ni層をスパッタリングした。
【0085】
要件である清浄性能はすべて、こうした方法で達成でき、その結果は良好なEMI遮蔽効果を示した。コーティング層とスパッタリング金属層間の接着は良好でなく、クロスハッチテープ試験結果は0Bと不合格であった。実施例3−6では、コーティング厚を5μmから15μmに増しても同じ結果が得られた。従って、実施例3−4、3−5および3−6は不合格例である。
【0086】
実施例3−4、3−5および3−6の結果を表7に示す。
【0087】
【表7】
【0088】
実施例3−7および3−8は発明的実施例である。コーティング処方はF01処方に集中し、図7(A)および7(B)に示す構造700および701を構築した。実施例3−7は、スパッタリング層がポリマーコーティング層の外側にある構造700を有する。200nmのCr/Ni合金層は、5μmアクリレートコーティング層上にめっきされたものである。スパッタリング層とアクリレート層間の接着は非常に良好であり、ハッチクロステープ試験結果は5Bであった。実施例3−7のアウトガス、浸出イオン、有機残留物の検出レベルは許容範囲内で低く、LPCも70個/cmと非常に低かった。機械的特性、熱的特性および衝撃特性はすべて、良好に維持された。EMI遮蔽効果も達成された。ポリマーコーティングと金属化ステップの順序を変えて、図7(B)の構造701として実施例3−8を構築したが、アウトガス、浸出イオン、有機残留物およびLPCを含めて、良好な清浄性能も達成された。また、アクリレート層と金属層間の接着も良好であった。すべての性能は、HDD筐体用途に対する仕様内であった。
【0089】
実施例3−8に基づいて、実施例3−9では、アクリレート層の厚みを15μmに増した。同様の結果が得られた。良好な清浄度、接着性、EMI、機械的特性、熱的特性および衝撃特性が得られた。実施例3−9は発明的実施例である。すべての性能は、HDD筐体用途に対する仕様内であった。
【0090】
実施例3−8に基づいて、実施例3−10では、金属層の厚みを400nmに増した。同様の結果が得られた。良好な清浄度、接着性、EMI、機械的特性、熱的特性および衝撃特性が得られた。実施例3−10は発明的実施例である。すべての性能は、HDD筐体用途に対する仕様内であった。
【0091】
実施例3−7、3−8、3−9および3−10の結果を表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
実施例3−11および3−12は発明的実施例である。F01コーティング処方と共のめっき金属源をNi/Cr合金から銅に変えた。クロスハッチテープ試験から、構造700および構造701の両方において、銅とF01コーティング間の接着は、Cr/NiとF01コーティング間のそれより良好であることがわかった。実施例3−11と3−12の結果は両方とも5Bであった。また、清浄度とEMI遮蔽についても良好な結果が得られた。
【0094】
実施例3−11と3−12の結果を表9に示す。
【0095】
【表9】
【0096】
実施例3−13は不合格例である。まず、プラスチック基板上にF01コーティング層をフローコーティングした。アクリレート被覆プラスチック基板上に10nmのCr層をめっきし、その後100nmNi層をめっきした。実施例3−13では、清浄性能と接着性能はすべて達成されたが、100nmNiではEMI遮蔽効果がなく、この実施例は不合格例である。実施例3−14において、Ni層の厚みを200nmに増すと、EMI遮蔽効果が達成されて、清浄性能との良好なバランスが得られた。従って、実施例3−14は発明的実施例である。
【0097】
実施例3−13と3−14の結果を表10に示す。
【0098】
【表10】
【0099】
実施例3−15、3−16および3−17では、S01アクリレートコーティング処方を用いた。実施例3−15は、要件であるEMI遮蔽およびLPC性能要件を満たさなかったので不合格例である。まず、プラスチック基板上にS01コーティング層をフローコーティングした。アクリレート被覆プラスチック基板上に10nmのCr層をめっきし、その後100nmのNiをめっきした。実施例3−15では、清浄性能と接着性能はすべて達成されたが、100nmのNiではEMI遮蔽効果がなく、従ってこの実施例は不合格例である。実施例3−16において、Ni層の厚みを200nmに増すと、EMI遮蔽効果が達成されて、清浄性能との良好なバランスが得られた。従って、実施例3−16は発明的実施例である。
【0100】
フローコーティングとスパッタリングの順序を変えて、図7の構造701として実施例3−17を構築した。実施例3−17では、5μmのS01コーティング層を金属化層の外側に堆積させた。アウトガス、浸出イオンおよびLPCを含めて、優れた清浄性能が得られ、また、良好な接着とEMI遮蔽効果が達成された。従って、実施例3−17は発明的実施例である。
【0101】
実施例3−15、3−16および3−17の結果を表11に示す。
【0102】
【表11】
【0103】
実施例3−18、3−19および3−20では、Alを用いたVTEメッキ法を採用した。実施例3−18では、図7(A)に示す構造700として、VTE法によりF01被覆基板上に200nmのAl層をめっきした。実施例3−18では、このプロセスで良好な清浄性能とEMI性能が得られたが、Al金属層とF01コーティング層間の接着が弱く、クロスハッチテープ試験結果が0Bであったために、不合格であった。従って、実施例3−18は不合格例である。
【0104】
実施例3−18に基づいて、実施例3−19では、アクリレートコーティング処方をF02処方に変更した。その後、同じフローコーティングとVTEプロセスを行って構造700を構築した。F02アクリレート処方層とAl層間の接着は、クロスハッチテープ試験で5Bを示したように良好であった。実施例3−19では、清浄度性能とEMI性能が優れていたために、この実施例は発明的実施例である。
【0105】
実施例3−20は、実施例3−19と比較して、プラスチック基板上に同じF02アクリレートコーティング処方とVTE金属化Al層を設けて構築したが、その順序は変更して構造701とした。アウトガス、浸出イオン、LPCを含むすべての清浄度は、HDD用途に対して期待される結果を示した。良好な接着が得られ、またEMI遮蔽効果も達成された。従って、実施例3−20は発明的実施例である。
【0106】
実施例3−18、3−19および3−20の結果を表12に示す。
【0107】
【表12】
【0108】
(実施例4)
実施例4では、マトリックスポリマーをPEIからPPSUに変更した調製に従って種々の組成物を調製し、プラスチック部品上にコーティングとめっきプロセスを行った。清浄性能とEMI性能を評価した。
【0109】
実施例4−1は、30%ガラス繊維(GF)充填PPSU複合材の基準実施例であり、優れた機械的特性、熱的特性および衝撃特性を示した。NVR濃度、LPC濃度は成形部品上で高かったが、アウトガスおよびイオンは、許容レベルに抑制されていた。実施例4−1の成形部品は、体積抵抗が高いために、電磁妨害(EMI)遮蔽効果を示さなかった。
【0110】
実施例4−1と同じ材料基板上に金属化とアクリレートのコーティングプロセスを行った。プラスチック表面上にF01アクリレートコーティング処方をフローコーティング後、被覆基板上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングして、図7(A)に示す構造700を有する実施例4−2を構築した。プラスチック表面に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングした。その後、金属化基板上にF02アクリレートコーティング処方をフローコーティングして、図7(B)に示す構造701を有する実施例4−3を構築した。
【0111】
実施例4−2は、Cr/Ni金属層とF01コーティング層間の接着が弱く、クロスハッチテープ試験結果が0Bであったために、不合格例である。実施例4−2は、浸出イオンおよび有機残留物は、アウトガス、炭化水素およびIRGAFOS(登録商標)を含めて検出レベルが低かった。EMI効果と低LPCも達成された。
【0112】
実施例4−3は発明的実施例であり、アクリレートコーティングとスパッタリングプロセスによって、30%充填PPSU複合材の超清浄性能を示した。アウトガス、浸出イオン、有機残留物の検出レベルは許容範囲であった。F02コーティング層とCr/Ni合金金属層間の接着が優れているために、クロスハッチテープ試験結果は5Bであり、脱イオン水洗浄5回後の液中パーティクル数は、1,500個/cm未満に低減した。また、EMI遮蔽効果も、200nm金属層で33.4dBと達成された。一方、実施例の機械的性能、熱的性能および衝撃性能は、良好にバランスしていた。
【0113】
実施例4−1、4−2および4−3の結果を表13に示す。
【0114】
【表13】
【0115】
(実施例5)
実施例5では、種々の組成物を調製した。マトリックスポリマーを、35質量%のPEIと35質量%のPPSUを有するPPSUPEI/PPSU混ぜ物から変更し、プラスチック部品上にコーティングとめっきプロセスを行った。清浄性能とEMI性能を、機械的性能、熱的性能および衝撃性能のバランスと共に評価した。
【0116】
実施例5−1は、30%ガラス繊維(GF)充填PPSU/PEI複合材を有する基準実施例であり、優れた機械的特性、熱的特性および衝撃特性を示した。成形部品上のNVR濃度、LPC濃度は高かったが、アウトガスおよびイオンは、許容レベルに抑制されていた。実施例5−1の成形部品は、体積抵抗が高いために、EMI遮蔽効果を示さなかった。
【0117】
実施例5−1と同じ材料基板上に金属化とアクリレートコーティングプロセスを行った。プラスチック表面上にF01アクリレートコーティング処方をフローコーティング後、被覆基板上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングして、図7(A)に示す構造700を有する実施例5−2を構築した。プラスチック表面上に200nmのNi/Cr合金をスパッタリングした。その後、金属化基板上にF02アクリレートコーティング処方をフローコーティングして、図7(B)に示す構造701を有する実施例5−3を構築した。
【0118】
実施例5−2は、Cr/Ni金属層とF01コーティング層間の接着が弱く、クロスハッチテープ試験結果が0Bであったために、不合格例である。しかしながら、実施例5−2は、浸出イオンおよび有機残留物は、アウトガス、炭化水素およびIRGAFOS(登録商標)を含めて、検出レベルが低かった。EMI効果と低LPCも達成された。
【0119】
実施例5−3は発明的実施例であり、アクリレートコーティングとスパッタリングプロセスによって、30%充填PPSU/PEI複合材の超清浄性能を示した。アウトガス、浸出イオン、有機残留物の検出レベルは許容範囲であった。F02コーティング層とCr/Ni合金金属層間の優れた接着により、クロスハッチテープ試験結果は5Bであり、脱イオン水洗浄5回後の液中パーティクル数は、1,500個/cm未満に低減した。また、EMI遮蔽効果も、200nm金属層で33.4dBと達成された。一方、実施例の機械的性能、熱的性能および衝撃性能は、良好にバランスしていた。
【0120】
実施例5−1、5−2および5−3の結果を表14に示す。
【0121】
【表14】
【0122】
好適な実施形態を参照して本発明をかなり詳細に説明したが、他の変形も可能である。従って、添付の請求項の趣旨と範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。
【0123】
読者の注意は、本明細書と同時に提出され、本明細書と共に一般閲覧されているすべての論文および文献に向けられるが、こうした論文および文献すべての内容は、参照により本明細書に援用される。
【0124】
特に明記されない限り、この明細書(添付の請求項、要約および図面を含む)に開示された特徴はすべて、同じ、均等または同様の目的に資する代替となる特徴で置換されてもよい。従って、特に明記されない限り、開示されたそれぞれの特徴は、包括的な一連の均等または同様な特徴のほんの一例である。
【0125】
特定の機能を実行する「手段」または「ステップ」が明示的に記載されていない請求項における要素はいずれも、米国特許法第112条第6段落に記載の「手段」または「ステップ」条項として解釈されるべきではない。特に、本出願の請求項における「ステップ」の使用は、米国特許法第112条第6段落の規定を行使するようには意図されない。
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7(A)】
図7(B)】