(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス抜き孔形成プロセスは、前記ケーシング表面の前記ガス抜き孔を形成する部位を含む領域の一方側表面を拘束パッドで支持し、他方側表面の前記発電要素から遠い側にローラを押し当てて前記押圧力を付与し、前記ローラを前記発電要素側に近い側に向かって転動させつつ、前記押圧力を前記発電要素に接近するに連れて低下させる、請求項1に記載のガス抜き孔形成プロセス。
前記ガス抜き孔形成プロセスは、前記ケーシングの前記発電要素から遠い部分の両表面を一対のローラにより挟んで前記押圧力を付与し、前記一対のローラを前記発電要素側に近い側に向かって転動させつつ、前記押圧力を前記発電要素に接近するに連れて低下させる、請求項1に記載のガス抜き孔形成プロセス。
前記押圧装置は、前記ケーシング表面の前記ガス抜き孔を形成する部位を含む領域の一方側表面を支持する拘束パッドと、前記発電要素から遠い側から前記発電要素に近い側に向かって転動しながら前記ケーシングの他方側表面に押圧力を付与するローラとを備え、当該ローラの前記押圧力を前記発電要素に接近するに連れて低下させる請求項4に記載のガス抜き孔の形成装置。
前記押圧装置は、前記ケーシング両表面から当該ケーシングを挟んで押圧力を付与しながら、前記発電要素から遠い側から前記発電要素に近い側に向かって転動する一対のローラを備え、当該ローラの前記押圧力を前記発電要素に接近するに連れて低下させる、請求項4に記載のガス抜き孔の形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の第1の実施形態による二次電池へのガス抜き孔形成プロセスとガス抜き孔形成装置とを説明する。
【0011】
図面のFIG.1を参照すると、二次電池100は、薄く軽量な外装用フィルムを張り合わせたケーシング1と、ケーシング1に収装された蓄電要素2を備える。
【0012】
薄く軽量な外装用フィルムは、例えば三層構造を有する高分子−金属複合ラミネートフィルムであり、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する。金属層は、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属箔から構成される。高分子樹脂層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテート等の熱溶着性樹脂フィルムから構成される。外装用フィルムは、熱溶着や超音波溶着により容易に接着できるとともに、気密性、水分非透過性に優れたものであることが望ましい。
【0013】
外装用フィルムは、図に示すように、二次電池の蓄電要素2を収容した状態で、周縁3カ所の融着部Aを熱溶着により接合した袋状をなす。この状態で、袋の内部に電解液を注液し、開口部Bを熱溶着により接合することでケーシング1が構成される。開口部Bの熱溶着による接合は、後述する第1封止工程による第1封止部C、第2封止工程及び本封止工程による第2封止部D及び本封止部Eの3段階でそれぞれ実施される。
【0014】
二次電池の蓄電要素2として、リチウムイオン二次電池を例として、その概略を説明する。リチウムイオン二次電池の蓄電要素2は、正極及び負極を、セパレータを介して重畳したものである。即ち、蓄電要素2は、正極活物質層が塗布された集電体からなる正極板と、負極活物質層が塗布された集電体からなる負極板とを、セパレータを介して積層することで、構成される。リチウムイオン二次電池は、非水電池であり製造時に混入した水分と反応することでガスを発生する。また、電解液中に含まれる有機溶媒の蒸発や、電池製造後のコンディショニングにおける電極反応でもガスを発生する。
【0015】
正極板は、例えば、アルミニウム箔よりなる集電体と、集電体のタブ領域を除いた両面領域に形成された正極活物質層とを備える。図には、タブ領域2Aのみが蓄電要素2の外側に引き出された状態で示されている。正極活物質層は、例えば、LiMn2O4等のリチウム−遷移金属複合酸化物からなる正極活物質、導電助剤、及びバインダを含む。
【0016】
負極板は、例えば、銅箔よりなる集電体と、集電体のタブ領域を除いた両面領域に形成された負極活物質層とを備える。図には、タブ領域2Bのみが蓄電要素2の外側に引き出された状態で示されている。負極活物質層は、負極活物質、導電助剤、バインダ等を含む。負極活物質は、例えば、ハードカーボン(難黒鉛化炭素材料)、黒鉛系炭素材料や、リチウム−遷移金属複合酸化物である。
【0017】
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミドから形成される。
【0018】
液体電解質(電解液)は、有機溶媒、支持塩等を含む。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類である。支持塩は、リチウム塩(LiPF6)等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3等の有機酸陰イオン塩である。
【0019】
各蓄電要素2のタブ領域2Aは正極端子3Aに接続される。各蓄電要素2のタブ領域2Bは負極端子3Bに接続される。正極端子3Aと負極端子3Bはケーシング1の融着部Aを貫通してケーシング1の外側に取り出される。
【0020】
FIGS.2A−2Dを参照して、この発明によるガス抜き孔形成方法及びガス抜き孔形成装置を適用する二次電池の製造プロセスを説明する。この二次電池の製造プロセスは、主な工程として封止工程と、コンディショニング工程と、ガス抜き・第2封止工程と、本封止・トリミング工程とを有し、必要に応じてその他の工程を含む。
【0021】
FIG.2Aに示す封止工程は蓄電要素の挿入工程、電解液の注入工程、及び第1封止工程からなる。
【0022】
蓄電要素の挿入工程では、2枚の略矩形形状の外装用フィルムもしくは二つ折りの外装用フィルムの間に、矩形形状の蓄電要素2を配置する。蓄電要素2の正極端子3A及び負極端子3Bは、外装用フィルムの外側に達するように、位置決めされる。FIG.1に示す外装用フィルムの周縁3カ所の融着部Aを熱溶着により接合する。周縁の残りの1辺は開口部Bとして残される。これにより袋状のケーシング1が形成される。
【0023】
電解液注入工程においては、開口部Bを経由してケーシング1の内側に電解液が注入される。電解液の注入方法は、特に限定されない。チューブやノズルを開口部Bに差し込んで電解液を直接注入するか、あるいはケーシング1を電解液に浸漬することでも電解液をケーシング1に注入可能である。
【0024】
第1封止工程においては、電解液を注入するために使用した開口部Bを熱溶着により接合して、第1封止部Cを形成する。第1封止部Cは、FIG.1に示すように、ケーシング1の周縁寄りに設定される。すなわち、蓄電要素2から遠い位置で接合される。ケーシング1の第1封止部Cと蓄電要素2との間のスペースは蓄電要素2に連通しており、このスペースがガス抜き部4として使用される。
【0025】
FIG.2Bに示すコンディショニング工程は、初充電工程と、電池特性を安定化させるためのエージング工程からなる。初充電工程では蓄電要素2から初期ガスが発生する。エージング工程でも、蓄電要素2から更にガスが発生する。二次電池の用途によっては、コンディショニング工程は初充電工程とエージング工程のいずれか一方のみで構成される。
【0026】
初充電工程では、蓄電要素2の電池容量の所定割合、例えば満充電まで充電した場合に得られる電池電圧を、蓄電要素2が発生させるまで、蓄電要素2への充電を行なう。初充電の温度環境として、45℃よりも低いとガスの発生が不十分となり、70℃よりも高いと電池特性が劣化する可能性がある。そのため初充電を行なう温度環境としては45℃から70℃の範囲が好ましい。電池容量の所定割合は、必要に応じて設定される。
【0027】
エージング工程は、蓄電要素2を充電した状態で所定期間保持する工程である。
【0028】
FIG.2Cに示すガス抜き・第2封止工程は、開孔工程と、ガス抜き工程と、第2封止工程からなる。開孔工程は大気圧のドライエア又は不活性ガス等のドライガスの雰囲気中において実施される。ガス抜き工程と第2封止工程は減圧した雰囲気中において実施される。
【0029】
開孔工程では、前述のガス抜き部4に切り込みを入れて、FIG.1に示すようにスリット状のガス抜き孔5を形成する。これによりガス抜き部4は外部と連通する。
【0030】
ガス抜き工程では、雰囲気を減圧状態とすることにより、ケーシング1内の電解液中に溶け込んでいるガスを電解液から分離させ、ガス抜き孔5から外部に排出する。このガス抜き工程は、予め設定した所定時間が経過するまで継続して行なわれる。
【0031】
ガス抜き工程の終了後は第2封止工程が行なわれる。ここでは、引き続き減圧雰囲気の中で、ケーシング1の第1封止部Cよりも蓄電要素2に近接した部位に、熱融着による接合を行ってFIG.1に示す第2封止部Dを形成する。
【0032】
FIG.2Dに示す本封止・トリミング工程では、第2封止工程を経た二次電池を、減圧雰囲気から取り出して、第1封止部 Cと第2封止部Dの間でケーシング1を第2封止部Dより広めに熱溶着により接合する。これによりFIG.1に示す本封止部Eが形成される。次に、ケーシング1の周縁部分の不要な領域を切断するトリミング工程が実施される。さらに、検査工程や充放電などの出荷調整工程が実施され、二次電池が完成する。
【0033】
以上は一般的な二次電池の製造工程であるが、この発明の実施形態を適用する二次電池の製造方法もこのプロセスを踏襲する。
【0034】
次にFIGS.15A−15Cを参照して、一般的な開孔工程を詳しく説明する。
【0035】
FIG.2Cのガス抜き・第2封止工程の中の開孔工程を行なう際は、ガス抜き部4内にガスとともに電解液が残留していることがある。FIG.15Aにおいて、ガス抜き部4が膨らんでいるのはガスによるケーシング1の内圧上昇のためである。この状態でFIG.15Bに示すようにカッタ14でガス抜き部4を切開すると、ガス抜き部4からガスとともに電解液が飛び出して飛散することがある。こうした原因でケーシング1内の電解液の液量が減少すると、電池の寿命に影響しかねない。
【0036】
ケーシング1の外部に飛散した電解液は、FIG.15Cに示すように、ケーシング1の表面に付着する。ケーシング1の表面に電解液が付着すると、新たに拭き取り工程を設ける必要が生じ、生産コストの増加につながる。また、電解液の拭き取り洩れが生じると、複数の二次電池100の側面同士を接着して電池パックとして利用する場合に、接着剤の接着力を低下させる要因となる。
【0037】
この実施形態においては、開孔工程における電解液のケーシング1の外側への飛散を防止するために、FIGS.3と4に示すガス抜き孔形成装置10が使用される。ガス抜き孔形成装置10は、ケーシング1のガス抜き部4の一面を支持する支持部材11と、ガス抜き部4のもう一面に接するローラ13と、ローラ13を揺動自由なアーム15を介して支持する移動体12と、からなる挟持機構を備える。ガス抜き孔形成装置10はまた、ガス抜き部4に切込みを入れてガス抜き孔5を形成するカッタ14を備える。
【0038】
FIG.3を参照すると、支持部材11と移動体12は、ケーシング1のガス抜き部4から離れた待機位置と、互いに接近して、ガス抜き部4を挟み付ける作動位置と、の間で移動可能に構成される。以下の説明では、待機位置から作動位置への移動方向を前進と称し、作動位置から待機位置への移動方向を後退と称する。また、これらの方向と直交する水平方向、すなわち平面図であるFIG.4の横断方向、を横断方向と称する。
【0039】
移動体12はその横断方向の両端に、前後方向に延びてベース部材17に摺動自在に案内される補助シャフト18を一体に備える。また、ベース部材17に固定されたシリンダ19から突出して伸縮作動するロッド19Aの先端に結合する。この構造のもとで、移動体12は、ロッド19Aの伸縮に応じて、補助シャフト18に案内されつつ、待機位置と作動位置との間で移動する。支持部材11も移動体12と同様の図示されない支持構造のもとで、待機位置と作動位置との間で進退方向に移動する。
【0040】
作動位置の支持部材11は、ケーシング1のガス抜き部4の一方の面に接触して、ガス抜き部4を一方向から支持する。支持部材11には、カッタ14の切り刃を貫通させて支持部材11の前面に突出させるための横方向のスリット
からなる貫通孔11Aが形成される。貫通孔11Aは、電解液が付着しても溜まらない程度の幅とする。
【0041】
カッタ14は、待機位置では支持部材11の後方に位置する一方、作動位置の支持部材11の貫通孔11Aを貫通して、刃先を支持部材11の前方へ突出可能に構成される。さらに、貫通孔11Aを貫通したカッタ14は刃先を貫通孔11Aに沿って、横断方向に横移動可能に構成される。カッタ14の厚さは、貫通孔11Aを通過する厚さとする。これにより、ケーシング1のガス抜き部4を支持部材11が支持する範囲内において、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成することができる。
【0042】
ローラ13は、ケーシング1のガス抜き部4の他方の面に接触することでガス抜き部4を支持部材11との間で挟み付ける。ローラ13は、FIG.3に示すように、アーム15の先端に回転自在に支持される。アーム15の基端は軸12Aを介して移動体12に揺動自在に連結する。アーム15の基端面には、基部を移動体12に固定した板ばね16の先端が面接触する。板ばね16は、アーム15の回動位置、すなわちローラ13の上下方向の揺動角度位置が、FIG.3に示す所定の初期位置に弾性的に保持されるように、アーム15にばね荷重を加える。この初期位置では、アーム15は最も上方へ回動した状態となり、ローラ13は移動体12からもっとも前方へ突出した状態となる。
【0043】
初期位置におけるローラ13の上下方向の揺動角度位置が、アーム15の基端側の軸12Aの位置よりも下方に位置するよう、ローラ13はアーム15の中心軸からオフセットした位置に配置される。例えば、FIG.3において、軸12Aを含む水平面に対して、図の下方へ2度ないし3度先端を下方へ
回動した平面上にローラ13が配置される。このようなオフセット位置に支持されたローラ13は、移動体12の作動位置への前進によりケーシング1のガス抜き部4に接触すると下方へ付勢される。そして、アーム15の先端を下方へ回動させつつガス抜き部4をしごきながら下方へ転動する。アーム15の先端が下方へ回動すると、板ばね16のアーム15の基端面への当接状態が、面接触状態から基端面の下方に形成された円弧部への点接触状態へと変化する。その結果軸12Aまわりのモーメントがアーム15に作用し、これがアーム15を初期位置に戻す復元力として作用する。
【0044】
この実施形態は開孔工程を次のように実行する。
【0045】
すなわち、支持部材11、移動体12及びカッタ14が、いずれも待機位置にあるガス抜き孔形成装置10に、FIG.2Bに示すコンディショニング工程を終えた二次電池がセットされる。この状態で、FIG.3に示すように、支持部材11が待機位置から前進して作動位置にセットされる。支持部材11は、ガス抜き部4の一方の面に接触してガス抜き部4を支持する。
【0046】
コンディショニング工程を終えた二次電池のケーシング1は、コンディショ人のグ工程で発生したガスによる内圧上昇のため、ガス抜き部4がFIG.15Aに示すように若干膨らんでいる。また、ガス抜き部4には図に楕円で示すように電解液が残留している。なお、この膨らみ自体は開口作業のプロセスの説明とは直接関係ないので、FIGS.3,5−7のガス抜き孔形成装置の側面図には、膨らみのない状態のガス抜き部4が描かれている。
【0047】
FIG.5を参照すると、支持部材11がガス抜き部4の一方の面を支持した状態で、
ガス抜き孔形成装置10は移動体12を待機位置から作動位置に前進させる。移動体12の前進に伴い、ローラ13がまずガス抜き部4の蓄電要素2から離れた部分に当接する。ローラ13は支持部材11との間でケーシング1の若干膨らんだガス抜き部4を挟持する。
【0048】
FIG.6を参照すると、移動体12がさらに前進すると、アーム15の先端が下方へ
回動し、ローラ13は板ばね16に抗しアーム15を下方へ回動させつつガス抜き部4をしごきながら下方へ転動する。この結果、FIG.6に示すように、先端のローラ13はガス抜き部4の表面に沿って転動しつつ蓄電要素2に向けて図の下方へと移動する。このようにして、ローラ13はケーシング1の若干膨らんだガス抜き部4を蓄電要素2に向かってしごくように作動する。
【0049】
FIG.7を参照すると、ローラ13が最下端に到達すると、ガス抜き部4は支持部材11とローラ13とにより完全に押し潰され、ガス抜き部4内に残留していた電解液は、蓄電要素2内に滴下する。滴下した電解液は、蓄電要素2周辺の電解液と混合することで、ガスと電解液との気液分離が促進される。
【0050】
FIGS.10A−10Cを参照すると、この実施形態において、ローラ13によるガス抜き部4のしごき動作中に、ガス抜き部4に加えられるローラ13の押圧力は、蓄電要素2から離れた部位から蓄電要素2に接近するに連れて低下する。すなわち、移動体12の前進による押付け力Fは軸12Aからアーム15に伝達される段階でアーム15に沿う方向の分力F1とアーム15に直交する方向の分力F2とに分解される。このうち、アーム15に沿う方向の分力F1がローラ13に作用する。ローラ13に分力F1が作用すると、ローラ13は、分力F1を、ガス抜き部4を押圧する方向の押圧力としての分力F1Aとローラ13を下方へ付勢する分力F1Bとに分解し、後者により下方へと移動する。
【0051】
FIG.10Aに示すように、ガス抜き部4のうち蓄電要素2から離れた部位にローラ13が接触する状態では、ローラ13に作用する分力F1の大部分がガス抜き部4への押圧力F1Aとなる。従って、ローラ13は比較的大きな押圧力F1Aでガス抜き部4を下方にむけてしごくことになる。その結果、ガス抜き部4に残留する電解液は混在するガスと共に蓄電要素2に向けて確実に送り出される。
【0052】
FIG.10Bに示すように、ローラ13が蓄電要素2に接近すると、移動体12の前進方向への押圧力Fがアーム15を介してローラ13にもたらす分力F1は、アーム15の平面方向に対する傾斜角度に比例して低下する。このため、ローラ13がガス抜き部4に及ぼす押圧力である分力F1Aもアーム15の平面方向に対する傾斜角度に比例して徐々に低下する。このようにして、ローラ13は蓄電要素2に接近するにつれて分力F1Aを低下させつつガス抜き部4を下方に向けてしごくように移動する。この結果、ガス抜き部4に残留する電解液を混在するガスともに、ケーシング1の蓄電要素2側へと確実に戻すことができる。
【0053】
FIG.10Cに示すように、ローラ13が蓄電要素2にさらに接近すると、移動体12の前進方向への押圧力Fがアーム15を介してローラ13に及ぼす分力F1は、アーム15の平面方向に対する傾斜角度に比例してより一層低下する。このため、ローラ13によるガス抜き部4への押圧力である分力F1Aもアーム15の平面方向に対する傾斜角度に比例してより一層低下する。このようにして、ローラ13は蓄電要素2に近づくにつれて、ガス抜き部4への押圧力である分力F1Aをより一層低下させる。
【0054】
なお、アーム15には板ばね16による初期位置への戻しモーメントも作用している。この戻しモーメントはアーム15を介してローラ13をガス抜き部4に押付けるように作用する。しかしながら、この戻しモーメントは、アーム15に作用する外力、すなわち例えば、移動体12の作動位置への前進時に伴ってローラ13に作用する力と比べて極く小さい。言い換えれば、板ばね16のばね荷重は、移動体12の前進による外力の作用から解放され、フリーになったアーム15を初期位置に回動させることができる程度に設定される。このため、ローラ13のガス抜き部4への押付け力である分力F1Aは、板ばね16による戻しモーメントを考慮することなく、上記のように設定することができる。
【0055】
FIG.11を参照すると、蓄電要素2の近傍においてガス抜き部4にローラ13を強く押し付けると、ガス抜き部4に連なって蓄電要素2を収容しているケーシング1の外装用フィルムに張力を及ぼして、ケーシング1内の蓄電要素2を変形させる可能性がある。一方、この実施形態によれば、蓄電要素2に接近するにつれて、ローラ13がガス抜き部4に及ぼす押圧力である分力F1Aが低下する。このため、ケーシング1の蓄電要素2の収容部分の外装用フィルムに張力を及ぼして、内側の蓄電要素2を変形させる不具合を未然に防止することができる。
【0056】
FIG.8を参照すると、ローラ13がガス抜き部4のしごき動作を完了すると、カッタ14が操作され、カッタ14の刃先が支持部材11の貫通孔11Aを貫通して作動位置へと押出され、刃先がケーシング1のガス抜き部4に切り込みを入れる。次いで、刃先は支持部材11のスリット状の貫通孔11Aに沿って横断方向に移動してガス抜き部4を横断方向に切り裂いて、FIG.9に示すようにガス抜き部4にガス抜き孔5を形成する。ガス抜き孔5を形成した後、カッタ14は支持部材11の後方に後退して待機位置に復帰する。支持部材11と移動体12も待機位置へと戻される。
【0057】
以上のように、ガス抜き部4の外装用フィルムがローラ13と支持部材11により挟持され、下方の蓄電要素2に向けてしごかれるので、ガス抜き部4から電解液を完全に排除することができる。その状態でガス抜き孔5が形成される。したがって、ケーシング1内の蓄電要素2の周囲のガスは、支持部材11と移動体12が待機位置へと後退するのに応じて、FIG.9に示すように、ガス抜き部4押し拡げて、ガス抜き孔5からケーシング1の外側へと排出される。また、ローラ13のしごき動作により、ガス抜き部4から蓄電要素2の周囲に滴下した電解液は、蓄電要素2の周囲の電解液と混ざり合う。したがって、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成する際も、ガス抜き孔5をした後も、ガス抜き孔5から電解液が外部に流出することはない。
【0058】
FIG.12を参照すると、発明者らはガス抜き部4にカッタ14でガス抜き孔5を形成する作業に関して、この実施形態によるガス抜き孔形成装置10を用いる二次電池の製造方法と、この実施形態によるガス抜き孔形成装置10を用いない二次電池の製造方法とで、ケーシング1内の電解液の減少量を比較した。その結果、この実施形態によるガス抜き孔形成装置10を用いない二次電池の製造方法では、ガス抜き孔5の形成と同時に電解液がガス抜き孔5から飛散し、電解液の減少量が比較的多いことが分かった。これに対して、ガス抜き孔形成装置10がガス抜き部4の残留電解液を蓄電要素2側へとしごき落とした後にガス抜き孔5を形成するこの実施形態では、ガス抜き孔5の形成と同時にケーシング1の外側へ飛散する電解液の量が大幅に減少することが確認された。
【0059】
なお、上記の実施形態では、カッタ14によってガス抜き部4のみに切り込みを入れてガス抜き孔5を形成するケースを説明している。しかしながら、切り込みの範囲をガス抜き部4の外側にまで拡げて、ケーシングの1辺を全長に渡って切断することも可能である。
【0060】
以上の説明では、ローラ13が最下端に下降した後にカッタ14がガス抜き部4に切り込みを入れることを想定している。しかし、ローラ13が支持部材11の貫通孔11Aを通過した後であれば、ローラ13がガス抜き部4を蓄電要素2に向かって下方へしごいている最中であっても、カッタ14によるガス抜き孔5の形成を開始することができる。
【0061】
以上の第1実施形態においては、支持部材11とローラ13と移動体12とアーム15が挟持機構を構成する
【0062】
FIG.13を参照して、この発明の第2実施形態による二次電池のガス抜き孔形成プロセスとガス抜き孔形成装置とを説明する。
【0063】
第2の実施形態において、ガス抜き孔形成装置10は、ケーシング1のガス抜き部4の両側にそれぞれ臨んで、一対のローラ13Aと13Bと、ローラ13Aと13Bを揺動支持する一対の移動体12と、ガス抜き部4に切込みを入れてガス抜き孔5を形成するカッタ14と、を備えている。その他の構成は、第1実施形態のガス抜き孔形成装置10と同一である。
【0064】
ガス抜き孔形成装置10は、一対の移動体12を作動位置に移動させて、一対の移動体12によりケーシング1のガス抜き部4を挟持する。つまり、各移動体12のローラ13Aと13Bは、ガス抜き部4の外装用フィルム同士が密着するようにガス抜き部4を
挟持し、ガス抜き部4を蓄電要素2に向かって下向きにしごく。これにより、ガス抜き部4は一対のローラ13Aと13Bに押し潰され、ガス抜き部4内の残留電解液は、蓄電要素2の周囲に滴下する。滴下した電解液は、蓄電要素2周辺の電解液と混合することで、ガスと電解液との分離を促進する。
【0065】
この実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ローラ13Aと13Bによるガス抜き部4のしごき動作において、ガス抜き部4にローラ13Aと13Bが及ぼす押圧力は、ローラ13A,13Bが蓄電要素2に近づくにつれて低下する。言い換えれば、蓄電要素2から離れた部位でケーシング1に接触するローラ13Aと13B比較的大きな押圧力でガス抜き部4を押圧し、ケーシング1のガス抜き部4を下方へ向けてしごくように動作する。したがって、ガス抜き部4に残留する電解液を混在するガスと共に確実に蓄電要素2の周囲に戻すことができる。
【0066】
移動体12の前進方向への押圧力のうちアーム15を介してローラ13Aと13Bに作用する分力は、アーム15の平面方向に対する傾斜が大きくなるにつれて低下する。このため、ローラ13Aと13Bがガス抜き部4に及ぼす押圧力も、アーム15の平面方向に対する傾斜とともに徐々に低下する。従って、ローラ13Aと13Bは蓄電要素2に接近するにつれて、ガス抜き部4に加える押圧力を低下させながらガス抜き部4を蓄電要素2に向かってしごきつつ変位する。この結果、ガス抜き部4に残留する電解液を混在するガスと共に確実に蓄電要素2の周囲に戻すことができる。
【0067】
ローラ13Aと13Bが蓄電要素2にさらに接近すると、移動体12の前進方向への押圧力のうちアーム15を介してローラ13Aと13Bに作用する分力はより一層低下する。このため、ローラ13Aと13Bによるガス抜き部4への押圧力もより一層低下する。蓄電要素2に隣接するガス抜き部4をローラ13Aと13Bが強く押圧すると、ガス抜き部4に連なって蓄電要素2を収容している外装用フィルムが引っ張られ、内側の蓄電要素2を変形させる可能性がある。蓄電要素2の近傍でローラ13Aと13Bの押し付け力がより一層低下すること
はこうした不具合を防止するうえで好ましい。
【0068】
ローラ13Aと13Bによるガス抜き部4のしごき動作の後、カッタ14の刃先が前進し、ケーシング1のガス抜き部4に切り込みを入れる。次いで、刃先が横方向に移動してガス抜き部4を横断方向に切り裂いてガス抜き孔5を形成する。ガス抜き孔5の形成後、カッタ14は待機位置へと後退する。一対の移動体12もそれぞれ待機位置へと後退する。
【0069】
以上のように、この実施形態においても、ガス抜き部4の外装用フィルムをローラ13Aと13Bが挟持しながら変位することで、外装用フィルムが互いに互いに密着し、ガス抜き部4から電解液を確実に排除する。電解液を排除したガス抜き部4にガス抜き孔5が形成される。そのため、一対の移動体12がそれぞれ待機位置へと後退すると、ケーシング1内のガスは、第1の実施形態と同様、ガス抜き部4を押し拡げ、ガス抜き孔5を介してケーシング1の外側に排出される。一方、ガス抜き部4の電解液は、ローラ13Aと13Bのしごき動作により蓄電要素2の周囲の電解液と混じりあう。そのため、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成する際に、電解液がガス抜き部4及びガス抜き孔5を通して外部に排出される現象を抑制することができる。
【0070】
以上の第2の実施形態では、一対の移動体12と、一対のローラ13A,13Bと、一対のアーム15が挟持機構を構成する。
【0071】
FIGS.14A−14Cを参照して、この発明の第3の実施形態を説明する。
【0072】
この実施形態では、ケーシング1のガス抜き部4を傾斜した表面を備える一対の弾性パッド20で挟むことにより、ガス抜き部4に残留する電解液を蓄電要素2の周囲に押し戻す。
【0073】
一対の弾性パッド20はFIG.14Aに示すように、ケーシング1のガス抜き部4の両側にそれぞれ臨んで、対向する表面を傾斜させた、例えば、スポンジ体で構成される。この図は弾性パッド20が、待機位置に保持した状態を示す。弾性パッド20,20は、ケーシング1の周縁で互いに接近し、蓄電要素2に近づくにつれて離間する傾斜面20A,20Aを備える。各弾性パッド20の中央には、カッタ14を貫通させるための横断方向のスリットによる貫通孔20Bが形成される。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0074】
コンディショニング工程によりガスが発生した二次電池のケーシング1は、ガスによる内圧上昇によりガス抜き部4にも電解液が残留した状態となっている。ガス抜き孔形成装置10は、FIG.14Bに示すように、一対の弾性パッド20、20を作動位置に前進させ、ケーシング1のガス抜き部4を挟持する。一対の弾性パッド20,20が前進するにつれて、対向する傾斜面20A,20Aはまず蓄電要素2から離れた位置でガス抜き部4を挟持し、蓄電要素2に向かって挟持範囲を拡大させていく。つまり、一対の弾性パッド20,20によるガス抜き部4のしごき動作が行なわれる。その結果、ガス抜き部4の膨らみが蓄電要素2に向かって順次押し潰され、ガス抜き部4に残留していた電解液が、蓄電要素2の周囲に滴下する。滴下した電解液は、蓄電要素2周辺の電解液と混ざり合うことで、ケーシング1内のガスと電解液との気液分離が促進される。
【0075】
この実施形態においても、一対の弾性パッド20,20がガス抜き部4に及ぼす挟持力は、蓄電要素2に近づくにつれて低下する。このため、蓄電要素2から離れた部位に残留する電解液を強い挟持力のもとでガスとともに確実に蓄電要素2に向けて押し出すことができる。一方、蓄電要素2に近づくに連れて挟持力は低下するので、過大な挟持力によりガス抜き部4に連なって蓄電要素2を収容している外装用フィルムが引っ張られ、内側の蓄電要素2を変形する不具合を防止できる。
【0076】
ガス抜き部4からこのようにして電解液とガスを排除した後、FIG.14Cに示すように、カッタ14の刃先が前進して、ケーシング1のガス抜き部4に切り込みを入れる。次いで、カッタ14の刃先を横断方向に移動してスリット状のガス抜き孔5を形成する。ガス抜き孔5を形成した後、カッタ14は待機位置に後退する。次いで、一対の弾性パッド20,20も待機位置に後退する。
【0077】
この実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、この実施形態によれば、第1及び第2の実施形態と比べてガス抜き孔形成装置10の構成を単純化できる。また、ガス抜き部4を一対の弾性パッド20、20で両面から保持した状態で、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成するので、ガス抜き部4の位置が安定し、ガス抜き孔5の形成が容易になる。
【0078】
以上の第3の実施形態では、一対の弾性パッド20,20が挟持機構を構成する。
【0079】
以上の説明に関して2013年12月11日を出願日とする日本国における特願2013−255845号、の内容をここに引用により合体する。
【0080】
以上、この発明をいくつかの特定の実施形態を通じて説明してきたが、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、クレームの技術範囲でこれらの実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。