特許第6204525号(P6204525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204525
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01L33/48
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-75938(P2016-75938)
(22)【出願日】2016年4月5日
(62)【分割の表示】特願2011-172274(P2011-172274)の分割
【原出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-122868(P2016-122868A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功三郎
(72)【発明者】
【氏名】世古 利裕
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−219324(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/017831(WO,A1)
【文献】 特開2003−003043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に実装された発光素子と、前記発光素子上に配置された、前記発光素子の発する光を透過する樹脂を基材とする樹脂層と、前記樹脂層の上に搭載された板状部材とを有し、
前記板状部材の下面は、前記発光素子の上面より大きく、
前記樹脂層は、前記板状部材と前記発光素子との間に挟まれて前記樹脂層の厚さを定める粒子を含有し、
前記樹脂層は、前記発光素子の底面と前記板状部材の下面とを結び、前記発光素子の側面全体を覆う傾斜面を有し、前記傾斜面は、直線状または内側に凸の曲面であり、
前記傾斜面および前記板状部材の側面に密着するように、反射材料層が配置され、
前記発光素子の側面は、側面全体が前記樹脂層に覆われることにより前記反射材料層から離間し、
前記板状部材は、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下のガラスから構成され、
前記樹脂層に含有される前記粒子は、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量であるアルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料から構成され、
前記反射材料層は、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下の材料から構成される反射性フィラーが樹脂中に分散していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、前記反射材料層の前記反射性フィラーは、酸化チタンまたは酸化亜鉛であり、かつ、光触媒性を示さないことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、前記樹脂層は、蛍光体粒子を含有することを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置において、前記樹脂層に含有される前記粒子を構成する前記アルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料は、無アルカリガラス、または、SiOおよびAlの少なくとも一方を主成分とする純度99.9%以上の材料であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
基板と、該基板上に並べて実装された複数の発光素子と、前記発光素子上に配置された、前記発光素子の発する光を透過する樹脂を基材とする樹脂層と、前記樹脂層の上に搭載された板状部材とを有し、
前記板状部材の下面は、前記複数の発光素子の上面を合わせたものより大きく、
前記樹脂層は、前記板状部材と前記発光素子との間に挟まれて前記樹脂層の厚さを定める粒子を含有し、
前記樹脂層は、前記複数の発光素子の外周側側面下端と前記板状部材の下面とを結び、前記発光素子の外周側側面全体を覆う傾斜面を形成し、前記傾斜面は、直線状または内側に凸の曲面であり、
前記傾斜面および前記板状部材の側面に密着するように、反射材料層が配置され、
前記複数の発光素子の外周側側面は、外周側側面全体が前記樹脂層に覆われることにより前記反射材料層から離間し、
前記板状部材は、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下のガラスから構成され、
前記樹脂層に含有される前記粒子は、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量であるアルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料から構成され、
前記反射材料層は、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下の材料から構成される反射性フィラーが樹脂中に分散していることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置において、前記反射性フィラーは、酸化チタンまたは酸化亜鉛であり、かつ、光触媒性を示さないことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
粒子を含有する未硬化の樹脂を、複数の発光素子および板状部材のいずれかまたは両方の面上に表面張力が保たれる量だけ滴下する工程と、
前記粒子を含有する未硬化の樹脂を介して発光素子と板状部材を重ね合わせ、前記粒子を前記板状部材と前記発光素子との間に挟んで前記未硬化の樹脂の厚さを定めながら、前記粒子を含有する未硬化の樹脂の表面張力によって、前記発光素子の底面と前記板状部材の側面とを結び、前記発光素子の側面全体を覆う傾斜した側面を有する前記未硬化の樹脂層形成した後、前記樹脂層を硬化させる工程と、
前記樹脂層および前記板状部材の側面の周囲に、前記樹脂層および前記板状部材の側面に密着するように、反射性フィラーが分散されている樹脂を充填した後、硬化させることにより反射材料層を形成する工程と、
を有し、
前記板状部材は、アルカリ金属酸化物含有量が前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下のガラスから構成され、
前記樹脂層の傾斜面は、前記発光素子の底面と前記板状部材の下面とを結ぶ直線状または内側に凸の曲面からなる傾斜面を備え、
前記発光素子の側面は、側面全体が前記樹脂層に覆われることにより前記反射材料層から離間し、
前記樹脂層の前記粒子は、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下の材料から構成され、
前記反射性フィラーは、アルカリ金属酸化物含有量が、前記樹脂層のオイルブリードを抑制する量である0.2重量%以下の材料から構成されていることを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの光を波長変換層で変換する発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子からの光の一部を蛍光体で異なる波長の光に変換し、発光素子からの光と混合して出射する発光装置が知られている。このように蛍光体含有層を用いる発光素子の構成としては、特許文献1に記載されているように、カップ内に発光素子を配置し、カップ内を蛍光体含有樹脂で充填する構造や、カップの開口部のみを蛍光体含有樹脂層で覆う構造が知られている。また、発光素子の周囲を蛍光体含有樹脂層で被覆する構造も開示されている。
【0003】
発光装置(光源)からの出射光をレンズやリフレクタ等の光学系で制御する光学装置では、小型な光学系で有効に光を利用するために、発光面積の小さい発光装置(光源)を用いることが望ましい。
【0004】
特許文献2では、発光素子の上面に波長変換層を搭載し、発光素子および波長変換層の側面を反射部材で覆った構造が開示されている。発光素子および波長変換層の側面を反射部材で覆うことにより、発光素子および波長変換層の側面方向に放射しようとする光を側面で反射し、上面から出射させることができるため、正面方向の輝度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−31989号公報
【特許文献2】特開2009−218274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、発光素子をカップや凹部等のキャビティ内に配置し、キャビティの傾斜した内壁面をリフレクタ面として、発光素子の出射光を反射する構造は、上方からの光の外部効率を上げることができるが、発光面は、キャビティの開口部となる。開口の大きさは、キャビティの内壁面の傾きによって決まるが、カップや凹部等のキャビティを所望の内壁面形状に加工できる大きさには限界があり、開口(発光面)の大きさは、必然的に発光素子の上面より大幅に大きくなる。また、発光素子からキャビティの内壁面まで、蛍光体含有樹脂層または封止材料内を光が通過するため、光が減衰するという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載された、発光素子および波長変換層の側面に反射部材が垂直壁になるように配置した構成は、素子または波長変換層の側面から出射される光を反射部材によって反射することで、発光面を小さくし、正面輝度を向上させている。しかし、発光素子の側面で反射部材で反射された光は、発光素子の内部に戻される。発光素子の吸収帯域は、反射光の波長を含むため、側面から出射される横伝播の光の反射や吸収の割合が多くなり、全光束量が落ちてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、発光面積が小さく、かつ、光の取り出し効率の高い発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、以下のような発光装置が提供される。すなわち、基板と、基板上に実装された発光素子と、発光素子上に配置された、発光素子の発する光を透過する樹脂を基材とする樹脂層と、樹脂層の上に搭載された板状部材とを有する。板状部材の下面は、発光素子の上面より大きく、樹脂層は、発光素子の側面の下端と板状部材の側面とを結ぶ傾斜面を形成する。樹脂層および板状部材の側面に密着するように、反射材料層が配置されている。板状部材は、アルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料から構成されている。樹脂層は、粒子を含有し、前記粒子は、アルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料から構成されている。反射材料層は、樹脂中にアルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料から構成される反射性フィラーが分散している。
【0010】
上述のアルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%以下の材料は、無アルカリガラス、または、SiOおよびAlの少なくとも一方を主成分とする純度99.9%以上の材料を用いることができる。
【0011】
上述の樹脂層に、蛍光体粒子を含有させることも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光素子の側面から出射された光を発光素子の内部に戻さず、反射材料層の傾斜面で反射することができるため、光の取り出し効率が向上する。発光面は板状部材の上面であるため、小型化できる。また、樹脂層からのオイルブリードを防止できるため、光学特性の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の発光装置の断面図。
図2】実施形態1の発光装置の反射材料層15の傾斜面130が(a)直線状である場合、(b)外側に凸の曲面である場合、(c)内側に凸の曲面である場合、のそれぞれの断面図。
図3】(a)〜(e)実施形態1の発光装置の製造工程を示す説明図。
図4】(a)および(b)図3(b)の工程において、透明材料13’の塗布位置のバリエーションを示す断面図。
図5】(a)〜(c)図3(b)の工程において、発光素子11の向きを下向きとし、透明材料13’の塗布位置のバリエーションを示す断面図。
図6】(a)〜(c)実施形態2の複数の発光素子を搭載した発光装置の各種形状を示す断面図。
図7】(a)および(b)比較例の複数の発光素子を搭載した発光装置の形状を示す断面図。
図8図6(b)の実施形態と図7(a)および(b)の比較例の発光装置の上面輝度分布を示すグラフ(ただし、発光素子の数は4個である)。
図9】(a)実施形態3の発光装置の断面図、(b)および(c)実施形態3の発光装置を上面から見た場合のスペーサー13bの配置を模式的に示す説明図。
図10】(a)〜(c)実施形態3の発光装置の製造工程を示す説明図。
図11】(a)〜(c)実施形態3の発光装置の樹脂層13の構造のバリエーションを示す断面図。
図12】実施形態4の発光装置の断面図。
図13】(a)〜(c)実施形態5の複数の発光素子を搭載した発光装置の各種形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態の発光装置について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1に、実施形態1の発光装置の断面図を示す。この発光装置は、発光素子11側面に近い位置に、光取り出しのための反射面(傾斜面)130を備えている。
【0016】
具体的には、上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上に、フリップチップタイプの発光素子11が、複数のバンプ12により接合されることにより実装されている。発光素子11の上面には、発光素子11の発する光に対して透明な樹脂層13が搭載され、その上に波長変換機能を有する板状部材14が搭載されている。
【0017】
発光素子11の外側には、枠体16が配置され、発光素子11と枠体16との間の空間は反射材料層15により充填されている。反射材料層15は、非導電性で反射率の高い材料が用いられる。反射材料層15は、発光素子11、樹脂層13および板状部材14の外周側面を覆っている。また、反射材料層15は、バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填している。
【0018】
板状部材14の主平面方向の大きさは、発光素子11よりも若干大きく、反射材料層15と樹脂層13との境界で形成される傾斜面130が、発光素子11および板状部材14の側面方向への出射光を反射する反射面となる。反射材料層15は、板状部材14の側面に接しているため、反射材料層15の開口(発光面)は、板状部材14の面積と等しく、発光面積の小さい光源を提供できる。
【0019】
反射材料層15と樹脂層13との境界の傾斜面130は、図2(a)のように、発光素子11の底面と板状部材14の下面を直線的に結ぶ傾斜面、図2(b)のように外側(枠体16側)に凸の曲面、図2(c)のように内側(発光素子11の中心に向かう側)に凸の曲面に形成可能である。本実施形態では、上面への光の出射効率を向上させるために、図2(a)のように直線的な傾斜面である場合と、図2(c)の内側に凸の曲面である場合が好ましい。特に好ましいのは、図2(c)の内側に凸の曲面であって、その曲率が5以下の場合である。
【0020】
また、傾斜面130の発光素子11側の一端は、必ずしも図2(a)〜(c)のように底面と同じ高さにある必要はなく、少なくとも発光素子11の側面にあればよい。傾斜面130の発光素子11側の一端は、少なくとも発光素子11の上面よりも基板10側にあれば発光素子11側面からの光を反射する傾斜面130となる。また、発光素子11は、基板10にフリップチップ実装されることが好ましい。フリップチップ実装の場合、発光面が発光素子の底面に近い位置にあるため、傾斜面130による反射を最も利用することができるためである。
【0021】
サブマウント基板10として、例えば、Auなどの配線パターンが形成されたAlNセラミックス製の基板を用いる。バンプ12としては、例えばAuバンプを用いる。
【0022】
発光素子11としては、所望の波長光を出射するものを用意する。例えば、青色光を発するものを用いる。
【0023】
板状部材14は、発光素子11からの光を所望の波長光に変換する機能を有し、例えば発光素子11からの光を励起光として所望の波長の蛍光を発する蛍光体を含有する材料により構成する。一例としては、蛍光体を透明樹脂に分散させた層や、蛍光体成分を含有する蛍光ガラスのプレートや、蛍光体原料を焼結して作製した蛍光セラミックスのプレート(例えばYAGプレート)を用いることができる。具体的には例えば、青色光を発する発光素子11の発光により励起されて、黄色蛍光を発する蛍光体(例えばYAG蛍光体等)を含む板状部材14を用いる。これにより、青色光と黄色光が混色された白色光を発する発光装置を提供できる。
【0024】
板状部材14は、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。
【0025】
樹脂層13は、発光素子11の発光および板状部材14による変換後の光に対して透明な材料を用いる。例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂に粒径0.001μm〜50μmのフィラーを添加した樹脂を用いる。
【0026】
フィラーは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。また、光触媒性を示さない材料であることが望ましい。例えば、無アルカリガラスのフィラーや、SiOおよびAlのうちのいずれかまたはこれらの組み合わせによって構成されているフィラーを用いる。無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。SiOおよびAlは、いずれも純度99.9%以上であることが好ましい。また、フィラーの結晶構造は、アモルファスでもよいが、純度を向上させ、アルカリ金属酸化物含有量を低下させるために多結晶や単結晶のものを用いてもよい。
【0027】
このように板状部材14や、樹脂層13のフィラーとして、アルカリ金属酸化物が0.2重量%以下のものを用いることにより、板状部材14やフィラーに含有されるアルカリ金属酸化物に起因して、樹脂層13の基材樹脂(シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等)にオイルブリードが生じるのを防止することができる。すなわち、フィラーに含有されるアルカリ成分により樹脂層13の基材樹脂が一部分解され、低分子化することによりオイル状物質が生じ、これが樹脂層13からにじみ出すオイルブリード現象を防止することができる。これにより、にじみ出たオイルにより樹脂層13と板状部材14の界面に凹凸が生じたり、板状部材14の表面にオイルが這い上がる等して、光学特性を劣化させる現象を防止できる。
【0028】
反射材料層15としては、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛等の反射性のフィラーを分散させた樹脂を用いる。このとき、酸化チタンや酸化亜鉛のフィラーについても、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下で、かつ、光触媒性を示さない構造のフィラーを用いることが望ましい。反射材料層15および樹脂層13の基材樹脂にオイルブリードを生じさせないためである。
【0029】
枠体16は、例えばセラミックリングを用いる。
【0030】
このような構成の発光装置は、図1のように発光素子11から放射される光のうち、上方へ向かって出射される光は、樹脂層13を透過し、板状部材14に入射する。下方に出射される光は、発光素子11の底面で反射材料層15により反射され、上方に向かう。
【0031】
このように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空隙をバンプ12を取り囲むように反射材料層15で充填することにより、発光素子11の下面側に出射される光を、反射材料層15で反射して上方に向けて出射することができる。よって、発光素子11の底面と基板10の上面との間で光が繰り返し反射されて減衰するのを防止できるため、上方への光の取り出し効率を向上させることができる。
【0032】
発光素子11の側面から出射される光は、側面から樹脂層13に入射し、反射材料層15と樹脂層13との境界の傾斜面130によって上方に反射される。これにより発光素子11の側面から出射される光の多くは、発光素子11の内部に戻されないため、発光素子11によって吸収されない。また、発光素子11の側面と反射材料層15までの距離は短いため、樹脂層13による吸収の影響もほとんど受けない。
【0033】
このように発光素子11の出射光は、直接、または傾斜面130で反射されて板状部材14に入射する。板状部材14に入射した光は、一部または全部が所定の波長の光に変換され、板状部材14の上面から出射される。板状部材14の内側から横方向に進行する光は、側面において傾斜面130によって反射され、板状部材14内に戻され、上面から出射される。
【0034】
よって、本実施形態の発光装置の発光面は、板状部材14の上面(反射材料層15の開口)であり、発光面積の小さい小型の発光装置が提供される。また、小径ながら反射材料層15によりキャビティを形成しているため、発光素子11の側面から出射された光の多くは、発光素子11の内部に戻されることなく、樹脂層13を短い距離だけ通過した後、反射材料層15により反射されて上方に向かうため、光の取り出し効率が向上する。
【0035】
また、板状部材14および樹脂層13のフィラーとして、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下のものを用いているため、樹脂層13にオイルブリードが生じにくく、長時間発光や大光量発光の場合も光学特性が劣化しにくい。
【0036】
つぎに、本実施形態の発光装置の製造方法について図3(a)〜(e)を用いて説明する。まず、図3(a)のように、サブマウント基板10の上面の配線パターンに、フリップチップタイプの発光素子11の素子電極をバンプ12を用いて接合し、実装する。図3(b)のように、シリコーン樹脂等の樹脂(未硬化)13’を発光素子11の上面に塗布(滴下)し、発光素子11の上面より若干大きいプレート状の板状部材14を搭載する。これにより、図3(c)のように未硬化の樹脂13’が発光素子の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と板状部材14の下面を接続する傾斜面130が形成される。
【0037】
このとき、樹脂13’の量が少なければ、図2(c)のように発光素子11側に凸の曲面の傾斜面130が形成され、樹脂13’の量を増やすと図2(a)、図3(c)のように直線的な傾斜面130が形成され、さらに樹脂13’の量を増やすと図2(b)のように外側に凸の曲面の傾斜面130が形成される。
【0038】
樹脂13’を所定硬化処理により硬化させ、樹脂層13を形成する。なお、この後の工程で樹脂層13の形状が変わらないのであれば、完全に硬化させず、半硬化となる条件で硬化させても良い。
【0039】
つぎに、図3(d)のように、発光素子11の外側の基板10上面に枠体16を樹脂等で接着する。図3(e)のように、発光素子11、樹脂層13および板状部材14と、枠体16との間に、ディスペンサなどで反射材料(未硬化)を注入する。この際、発光素子11の下部のバンプ12の周囲にも反射材料が十分充填されるように注入する。また、樹脂層13の傾斜面130および板状部材の側面に、反射材料(未硬化)が隙間なく密着するように充填する。これにより、樹脂層13の傾斜面130に沿う形状の反射材料層15を形成することができる。最後に、反射材料を所定の硬化処理により硬化させ、反射材料層15を形成する。以上により、本実施形態の発光装置が製造される。
【0040】
本実施形態では、未硬化の樹脂の表面張力を利用して樹脂層13の傾斜面130を予め形成することにより、樹脂層13の周囲および板状部材の周囲に反射材料層15を充填するだけで、所望の形状の反射材料層15の傾斜面130を形成することができ、かつ、板状部材14の側面に反射材料層15を密着させることができる。これにより、機械加工を必要とせず、小さな開口で所望の形状の傾斜面(キャビティ)を製造することができる。
【0041】
また、この製造方法は、反射材料を充填する際に、発光素子11の底面とサブマウント基板10との間の空間にも反射材料を充填することができる。よって、発光素子11の下部における光の減衰を防止し、発光素子11側面での戻り光を発光素子が吸収することによる減衰を防止することができ、光の取り出し効率を向上させることができる。また、発光面(開口)が小さいため、小型な光学系により少ないロスで光を制御することができる。
【0042】
さらに、塗布する樹脂13’の量を調整することにより、反射材料層15の傾斜面130の形状を変えることができる。
【0043】
なお、上述の製造方法において、図3(b)の工程では、発光素子11の上面に未硬化の樹脂13’を塗布したが、本実施形態の製造方法はこれに限られるものではない。例えば、図4(a)のように、板状部材14の下面に樹脂13’を塗布することも可能であるし、図4(b)のように、発光素子11の上面と板状部材14の下面の両方に樹脂13’を塗布することもできる。また、図5(a)〜(c)のように、サブマウント10に実装された発光素子11を下向きにして、図5(a)のように樹脂13’を発光素子11の下面、図5(b)のように板状部材14の上面、図5(c)のように発光素子11の下面と板状部材14の上面の両方、にそれぞれ塗布する構成とすることも可能である。
【0044】
なお、樹脂層13の傾斜面130は、発光素子11側に凸で、曲率5以下が望ましい。
【0045】
実施形態1では、反射材料層15と樹脂層13の界面の傾斜面130で光を反射する構成であるが、反射材料層15を配置しない構成にすることも可能である。この場合も樹脂層13と空気との界面において光を反射することができるので、実施形態1と同様の光反射の作用が得られる。
【0046】
(実施形態2)
つぎに、実施形態2として、複数の発光素子11を一つのサブマウント基板10に搭載した発光装置について説明する。図6(a),(b),(c)に、実施形態2の発光装置の断面図を示す。
【0047】
複数の発光素子11には一つの板状部材14によって覆われている。複数の発光素子11を取り囲む反射材料層15が配置されている。樹脂層13の側面の傾斜面130は、発光素子11の底面と板状部材14の下面を直線的に結ぶ傾斜面または図6(a)〜(c)のように発光素子11側に凸の曲面であることが好ましい。特に好ましいのは、凸の曲面であって、その曲率が5以下の場合である。
【0048】
樹脂層13は、図6(a),(b)のように複数の発光素子11の間の領域で、表面が板状部材14に向かって凸の曲面である。反射材料層15は、この曲面に沿う凸形状81に充填されている。複数の発光素子11の間の領域の樹脂層13の表面を、板状部材14に向かって凸の曲面形状にすることにより、複数の発光素子11の間の領域で輝度のムラが生じるのを防止することができる。
【0049】
反射材料層15の凸形状81の上部は、図6(a)のように板状部材14に達していてもよいが、図6(b)のように板状部材14まで達していない形状であることが好ましい。
【0050】
凸形状81の側面形状は、傾斜面130と同様に、発光素子11側に凸で、その曲率が5以下であることが好ましい。
【0051】
また、反射材料層15は、各発光素子11の下面とサブマウント基板10の上面との間の間隙を充填していることが好ましい。
【0052】
他の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0053】
図6(a)〜(c)の発光装置の製造方法は、実施形態1の図3(a)〜(e)と同様であるが、図6(a)の構成の場合、各発光素子11上、もしくは、板状部材14の各発光素子11と重ね合わされる各領域上、のいずれかまたは両方に樹脂13’を等量ずつ塗布し、各発光素子11上の樹脂層13の傾斜面130が所望の形状になるように形成する。ただし、図6(b)、(c)のように隣合う発光素子11上部の樹脂層13から隣り合う発光素子11の間の領域で連結している形状の場合には、樹脂13’の総塗布量が所定量となるように、各発光素子11上に塗布する樹脂13’の量を変えてもよい。
【0054】
具体的には、図6(a)のように樹脂13’を形成する場合、樹脂13’を介して発光素子11と板状部材14を重ね合わせた際に、複数の発光素子11の間の領域において、樹脂13’の表面が板状部材14に接し、樹脂13’が傾斜した側面を形成するようにする。図6(b)の場合には、隣り合う発光素子11上の樹脂13’同士が相互に連結し、複数の発光素子11の間の領域において、樹脂13’の表面が板状部材14に向かって凸の曲面を形成するようにする。これにより、隣合う発光素子11の間に、樹脂13’で充填されていない空間を形成することができる。この後、樹脂13’を硬化させる。
【0055】
また、図3(e)の反射材料層15を充填する工程では、図6(a)、(b)のように複数の発光素子11の間に凸形状81に反射材料層15を盛り上げるために、未硬化の反射材料の粘度を調整しておく。
【0056】
実施形態2の発光装置は、複数の発光素子11を搭載した構成でありながら、傾斜面130を発光素子11の近い位置に所望の曲面形状で形成することができるため、上面方向の光の取り出し効率を向上させることができる。また、発光面積は、板状部材14の面積に等しく、小型の発光装置を提供できる。
【0057】
さらに、図6(a),(b)のように、複数の発光素子11の間の領域の樹脂層13の表面を板状部材に向かって凸の曲面にすることにより、複数の発光素子11の間で輝度が低下し、発光面に輝度ムラが生じるのを防止することができる。
【0058】
具体的には、図6(b)の構造の発光装置と、比較例として図7(a)、(b)の構造の発光装置を製造し、上面の輝度分布を測定したところ、図8のような結果が得られた。ただし、図6(b)、図7(a),(b)では、発光素子11は2個であるが、測定に用いた発光装置は、4個の発光素子を一列に並べた構成である。
【0059】
図8から明らかなように、本実施形態の図6(b)の発光装置は、複数の発光素子11の間隙における輝度低下が、図7(a),(b)の発光装置よりも明らかに小さく、輝度むらが低減されていることが分かる。
【0060】
図7(a)のように、傾斜面130を形成せず、発光素子11の周囲を底面まで含めて反射材料層15で充填した構造は、発光素子の中央部では、図6(b)の本実施形態の発光装置と同様の輝度が得られているが、発光素子11の間隙領域において、大きく輝度が低下している。一方、図7(b)のように発光素子11の側面から離れた位置に垂直な端面を有する反射材料層15を形成した場合には、発光素子11の中央部においても、発光素子11の間隙においても輝度が小さい。
【0061】
このように、本実施形態の発光装置は、発光素子の上方の輝度が大きく、かつ、間隙における輝度低下が少なく、輝度むらが小さいことが確認された。
【0062】
上述した実施形態1および2では、板状の板状部材14において、発光素子から出た青色光(短波長)を波長の長い光(蛍光)に変換する例について説明したが、これに限らず、板状部材14において複数の波長に変換できるように、多層構造や複数の波長変換材料を含有する構成を採用することもできる。
【0063】
また、板状部材14が、波長変換を目的とせず、発光素子の波長に対して透明もしくは半透明な光学層であってもよい。更には、板状部材14の表裏面が平坦である場合のみならず、光取り出し構造や、光学レンズとしての構造に加工されていてもよい。
【0064】
実施形態2の構成において、反射材料層15を配置しない構成にすることも可能である。この場合も樹脂層13と空気との界面において光を反射することができるので実施形態2と同様の光反射の作用が得られる。
【0065】
(実施形態3)
図9(a)に、実施形態3の発光装置の断面図を、図9(b)および(c)に上面図を示す。図9(a)のように、上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上に、フリップチップタイプの発光素子11が、複数のバンプ12により接合されることにより実装されている。発光素子11の上面には、波長変換機能を有する樹脂層13が搭載され、樹脂層13の上には透明な板状部材14が搭載されている。
【0066】
樹脂層13の基材には、蛍光体粒子13aが高濃度に分散され、さらにスペーサー13bが分散されている。基材としては、発光素子11の発する光、および、発光素子11の発する光により励起された蛍光体粒子13aが発する蛍光に対して透明な材料を用いられる。基材は、実施形態1と同様に透明樹脂を用いる。例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を用いることができる。スペーサー13bの粒径よりも小さければ、フィラーや色素を基材に分散させることも可能である。
【0067】
樹脂層13に含有されるスペーサー13bは、発光素子11と板状部材14との間に挟まれることにより、発光素子11上面と板状部材14との間隔を定め、これにより樹脂層13の層厚を規定(決定)している。スペーサー13bは、形成すべき樹脂層13の層厚に応じて、所望の粒径を有する粒子状のものであればよく、その形状は、多面体であっても球状であってもよい。例えば、10μm以上100μm以下の粒径のスペーサー13bを好適に用いることができる。このような粒径のスペーサー13bは、発光素子11の発する可視光波長よりも粒径がひと桁以上大きいため、光を散乱させる作用はほとんど生じない。
【0068】
スペーサー13bの上部および下部はそれぞれ、板状部材14および発光素子11と直接接していてもよいし、スペーサー13bと板状部材との間、および、スペーサー13bと発光素子11上面との間に、樹脂層13を構成する基材が挟まれていてもかまわない。硬化前の基材の粘度や、スペーサー13b表面の基材に対する濡れ性によって、スペーサー13bの周囲には基材との親和性が発生し、スペーサー13bと板状部材との間に基材が入り込むためである。ただし、すべてのスペーサー13bに対して同じ条件で基材との親和性が発生するため、スペーサー13bが樹脂層13の厚みを規定する作用を発揮することに変わりはない。
【0069】
スペーサー13bの材質は、高精度に所定の粒径を実現できるものであればガラス等の無機材料であっても樹脂等の有機材料であっても構わない。スペーサー13bは、発光素子11の発する光および蛍光体の蛍光に対して、半透明または透明であることが望ましく、より好ましくは透明なものを用いる。
【0070】
樹脂層13に含有されるスペーサー13bおよびフィラーは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。また、光触媒性を示さないものが好ましい。例えば、無アルカリガラスによって構成されたスペーサー13bやフィラーや、SiOおよびAlのうちのいずれかまたはこれらの組み合わせによって構成されているスペーサーやフィラーを用いる。無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。SiOおよびAlは、いずれも純度99.9%以上であることが好ましい。また、スペーサー13bやフィラーの結晶構造は、アモルファスでもよいが、純度を向上させ、アルカリ金属酸化物含有量を低下させるために多結晶や単結晶のものを用いてもよい。
【0071】
また、スペーサー13bの内部に蛍光体を分散させることも可能である。分散させる蛍光体は、蛍光体粒子13aと同様のものを用いることができる。
【0072】
スペーサー13bは、板状透明部材14を発光素子11の上面に対して平行に支持するために、図9(c)に示すように、発光素子11の上面に最低で3個配置されていることが望ましい。特に、図9(b)の黒丸で示すように発光素子11の四隅に1個ずつ配置されていることが望ましい。
【0073】
スペーサー13bは、粒径が大きいため、粒子間の引力・斥力により相互位置を変化させる作用は生じず、基材および蛍光体粒子13aに混練された時点の分散状態を維持して発光素子11上に展開される。よって、図9(b)の黒丸のように発光素子11上面の四隅近傍に1個ずつ配置するためには、図9(b)のように発光素子11上面を仮想的に正方形の領域に縦横に分割し、隣接する正方形の領域の中心同士の距離でスペーサー13bが分散される密度となる量で、スペーサー13bを基材および蛍光体粒子13aに添加し、混練して分散させる。この混練物を発光素子11上面に塗布や印刷で広げると、確率的に、仮想的な正方形の領域に1つずつスペーサー13bが配置されるため、発光素子11の上面の四隅の正方形の領域にそれぞれ高い確率でスペーサー13bを配置することができる。
【0074】
蛍光体粒子13aは、粒径がスペーサー13bよりも小さいものを用いる。具体的には、スペーサー13bの粒径よりもわずかでも小さければよいが、10%以上小さいものが好ましい。蛍光体粒子13aとしては、発光素子11の発する光により励起され、所望の波長の蛍光を発する蛍光体を用いる。例えば、白色光を発する発光装置を構成する場合、青色光を発する発光素子11を用い、青色光を励起光として黄色蛍光を発する蛍光体(例えばYAG蛍光体)を用いることができる。
【0075】
板状部材14は、平坦な下面を備え、この下面がスペーサー13bにより支持されることにより、発光素子11の上面との間に厚さ一定の樹脂層13が形成できる部材であればよい。板状部材14の平坦な下面は、巨視的に平坦であればよく、微視的には光を拡散・配光等させるための微細な凹凸が形成されていてもよい。凹凸を形成する場合には、スペーサー13bや蛍光体粒子の作用に影響を与えないために、凹凸のサイズは5μm以下であることが好ましい。また、板状部材14の上面側に、光拡散・配光用の凹凸を設けることも可能である。
【0076】
また、板状部材14は、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。また、板状部材14は、光触媒性を示さないものが好ましい。
【0077】
板状部材14の上面は、光取り出し面となるため、光の取り出し効率を向上させるために表面処理を施し加工してもよい。また、板状部材14の上面は必ずしも平面である必要はなく、散乱、集光、配光を目的とした形状、例えば凹凸形状やレンズ形状に加工されていてもよい。
【0078】
ここでは、板状部材14は、発光素子11の発する光、および、蛍光体粒子13aの発する蛍光に対して透明なものを用いるが、所望の光学特性を有するものであっても構わない。例えば、所定の波長をカットする板状フィルターを板状部材14として用いることも可能である。また、発光素子11からの光を所望の波長光に変換する蛍光体成分を含有する蛍光ガラスプレートや、蛍光体原料を焼結して作製した蛍光セラミックスのプレート(例えばYAGプレート)を用いることも可能である。
【0079】
サブマウント基板10としては、例えば、Auなどの配線パターンが形成されたAlNセラミックス製の基板を用いる。バンプ12としては、例えばAuバンプを用いる。
【0080】
本実施形態では、スペーサー13bを配置したことにより、樹脂層13を薄く、かつ、所定の層厚に精度よく形成することができるため、樹脂層13の基材に含有される蛍光体粒子13aの濃度を変換効率が大幅に向上する高濃度にすることができる。例えば、樹脂層13の基材に含有される蛍光体粒子13aの濃度を13重量%〜90重量%、樹脂層13の層厚を200μm〜30μm、膜厚のバラつきを10%以下にすることが可能である。蛍光体粒子13aの濃度は、13重量%以上であればよいが、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
【0081】
このように板状部材14や、樹脂層13のスペーサー13bやフィラーとして、アルカリ金属酸化物が0.2重量%以下のものを用いることにより、板状部材14やフィラーに含有されるアルカリ金属酸化物に起因して、樹脂層13の基材樹脂(シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等)にオイルブリードが生じるのを防止することができる。すなわち、フィラーに含有されるアルカリ成分により樹脂層13の基材樹脂が一部分解され、低分子化することにより生じたオイル状物質が樹脂層13からにじみ出すオイルブリードを防止することができる。これにより、にじみ出たオイルにより樹脂層13と板状部材14の界面に凹凸を生じさせたり、板状部材14の表面にオイルが這い上がる等して、光学特性を劣化させる現象を防止できる。
【0082】
つぎに、本実施形態の発光装置の製造方法について図10(a)〜(c)を用いて説明する。まず、図10(a)のように、サブマウント基板10の上面の配線パターンに、フリップチップタイプの発光素子11の素子電極をバンプ12を用いて接合し、実装する。樹脂層13の未硬化の基材を用意し、蛍光体粒子13aおよびスペーサー13bを予め定めた濃度で添加し、十分に混練することにより、基材中に一様に分散させ、未硬化のペースト13’を得る。このペースト13’を図10(b)のように、発光素子11の上面に所定量塗布(または滴下)し、発光素子11の上面より若干大きい板状部材14を搭載する。板状部材14の自重、もしくは、必要に応じて板状部材14の上面に荷重をかけ、ペースト13’中のスペーサー13bによって板状部材14が発光素子11上面に支持され、発光素子11上面と板状部材14との間隔がスペーサー13bによって定まるようにする。
【0083】
これにより、図10(c)のように未硬化のペースト13’は、スペーサー13bの粒径相当もしくは、スペーサー13bの周囲を覆う基材層の厚さを粒径に加えたものに相当する層厚のペースト13’の層が形成される。このとき、ペースト13’は、発光素子11の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と板状部材14の下面を接続する傾斜面130が形成される。
【0084】
ペースト13’を所定の硬化処理により硬化させ、樹脂層13を形成する。これにより、図9(a)の発光装置が完成する。なお、この後の工程で樹脂層13の形状が変わらないのであれば、完全に硬化させず、半硬化となる条件で硬化させても良い。
【0085】
このような構成の発光装置の各部の作用について説明する。発光素子11から上方に放射された光は、樹脂層13に入射し、一部が蛍光体によって所定の波長の光に変換され、蛍光体によって変換されなかった光と混合されて板状部材14の上面から出射される。発光素子11の側面から出射される光は、樹脂層13に入射し、一部が蛍光体によって所定の波長の光に変換され、波長変換層の傾斜面130から外部に出射されるか、傾斜面130によって上方に反射され、板状部材14の上面から出射される。
【0086】
樹脂層13は、蛍光体粒子13aの濃度を大きくすることができるため、変換効率が大幅に向上することができる。このとき樹脂層13の層厚は、蛍光体粒子13aの濃度に応じた厚さに、スペーサー13bによって高精度に定められているため、厚さが一様であり、しかも、製品間のばらつきも小さい。よって、同一製品内の色ムラが少なく、しかも、製品間の色のばらつきも小さい発光装置を提供できる。
【0087】
なお、上述の実施形態では、樹脂層13の側面が表面張力により傾斜面130を構成する例について説明したが、本発明はこの形状に限定されるものではない。例えば、傾斜面130は、図11(a)のように、内側(発光素子11の中心に向かう側)に凸の曲面であっても、図11(b)のように外側に凸の曲面であっても構わない。また、図11(c)のように表面張力による傾斜面を形成せず、サブマウント基板10の上面まで樹脂層13が達していてもよい。
【0088】
樹脂層13の側面の形状は、製造時の図10(b)の工程で塗布(または滴下)するペースト13’の量により制御することができる。ペースト13’の量が少なければ、図11(a)のように内側に凸の曲面の傾斜面130が形成され、ペースト13’の量を増やすと、図9(a)のように直線状の傾斜面130となり、さらに増やすと図11(b)のように外側に凸の曲面の傾斜面130が形成される。表面張力が生じないほどにペースト13’の量を増やすと、図11(c)のようにサブマウント基板10の上面まで樹脂層13が達する。
【0089】
(実施形態4)
図12に、実施形態4の発光装置の断面図を示す。この発光装置は、光の取り出し効率をさらに向上させるために、実施形態3の図11の発光装置の発光素子11の下面の空隙を反射材料層15によって充填した構成である。また、反射材料層15は、発光素子11、樹脂層13および板状部材14の側面も覆っている。
【0090】
具体的には、発光素子11の外側には、枠体16が配置され、発光素子11と枠体16との間の空間は反射材料層15により充填されている。反射材料層15は、非導電性で反射率の高い材料が用いられる。反射材料層15は、発光素子11、樹脂層13および板状部材14の外周側面を覆っている。反射材料層15は、バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填している。
【0091】
反射材料層15としては、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛等の反射性のフィラーを分散させた樹脂を用いる。このとき、酸化チタンや酸化亜鉛のフィラーについても、アルカリ金属酸化物の含有量が0.2重量%以下で、かつ、光触媒性を示さない構造のフィラーを用いることが望ましい。樹脂にオイルブリードを生じさせないためである。
【0092】
枠体16は、例えばセラミックリングを用いる。
【0093】
このような構成の発光装置は、図12のように発光素子11から放射される光のうち、上方から出射される光は、実施形態3と同様に樹脂層13に入射し、波長変換されて、板状部材14から上方に出射される。
【0094】
発光素子11の下面側に出射される光は、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空隙を充填する反射材料層15により上方に向けて反射される。よって、発光素子11の底面と基板10の上面との間で光が繰り返し反射されて減衰するのを防止できるため、上方への光の取り出し効率を向上させることができる。
【0095】
発光素子11の側面から出射される光は、側面から樹脂層13に入射し、一部が波長変換され、反射材料層15と樹脂層13との境界の傾斜面130によって上方に反射される。これにより、発光素子11の側面から出射される光の多くは、発光素子11の内部に戻されず、上方に向かうため、発光素子11によって吸収されない。よって、横方向伝搬光を上方から効率よく取り出すことができるため、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0096】
また、反射材料層15は、板状部材14の側面に接しているため、反射材料層15の開口(発光面)は、板状部材14の面積と等しく、発光面積の小さい光源を提供できる。
【0097】
反射材料層15と樹脂層13との境界の傾斜面130は、図12では、内側に凸の曲面である例を示しているが、この形状に限らず、図9(a)のように直線的な傾斜面や、図11(b)のように外側(枠体16側)に凸の曲面であってもよい。特に好ましいのは、図12のように傾斜面130が内側に凸の曲面であって、その曲率が5以下の場合である。
【0098】
また、傾斜面130の下端は、必ずしも図12図9(a)、図11(b)のように発光素子11の底面と同じ高さにある必要はなく、少なくとも発光素子11の側面にあればよい。傾斜面130の上端は、少なくとも発光素子11の上面よりも基板10側にあれば発光素子11側面からの光を反射する傾斜面130となる。また、発光素子11は、基板10にフリップチップ実装されることが好ましい。フリップチップ実装の場合、発光面が発光素子の底面に近い位置にあるため、傾斜面130による反射を最も利用することができるためである。
【0099】
なお、実施形態4の発光装置の製造方法は、実施形態3と同様である。
【0100】
(実施形態5)
実施形態5では、複数の発光素子11を一つのサブマウント基板10に搭載した発光装置について説明する。図13(a),(b),(c)に、実施形態5の発光装置の断面図を示す。
【0101】
複数の発光素子11の全体を一つの板状部材14によって覆うようにマウントされている。複数の発光素子11と板状部材14の間隔は、これらの間に挟まるスペーサー13bによって定められている。発光素子11と板状部材14との間には、薄い樹脂層13が形成される。
【0102】
複数の発光素子11をサブマウント基板10へ実装する際の誤差等により、複数の発光素子11の上面の高さが同一ではない場合があり得る。この場合、複数の発光素子11全体に1つの板状部材14をマウントすると、最も上面が高い発光素子11上のスペーサー13bによって板状部材14が支持され、それよりも上面が低い発光素子11上のスペーサー13bは、樹脂層13の層厚決定には寄与せず、スペーサー13bと板状部材14との間には、厚い基材層や蛍光体粒子13aが挟まれる構造になることもあるが、それでも構わない。このような場合、最も上面が高い発光素子11上のスペーサー13bのみがスペーサーとして機能し、上面が低い発光素子11のスペーサー13bはスペーサーとして機能していないが、発光素子11の高さのばらつきが許容される誤差範囲であれば、樹脂層13の層厚のばらつきを所定の範囲内に収めることができるからである。
【0103】
樹脂層13の外周の傾斜面130は、図13(a)〜(c)のように内側に凸の曲面、または、図9(a)のように発光素子11の底面と板状部材14の下面を直線的に結ぶ傾斜面であることが好ましい。また、図11(b)のように外側に凸の曲面にすることも可能である。
【0104】
図13(a),(b)のように複数の発光素子11の間の樹脂層13の側面も傾斜面130を形成していることが好ましい。複数の発光素子11の間の樹脂層13の傾斜面は、図13(b)のように板状部材14まで達していない形状であることが好ましい。図13(a)のように板状部材14に達していても構わない。
【0105】
図13(a)〜(c)の発光装置の製造方法は、実施形態3の図10(a)〜(c)と同様であるが、図13(a)の構成の場合、各発光素子11上、もしくは、板状部材14の各発光素子11と重ね合わされる各領域上、のいずれかまたは両方にペースト13’を等量ずつ塗布し、各発光素子11上の樹脂層13の傾斜面130が所望の形状になるように形成する。ただし、図13(b)、(c)のように隣合う発光素子11上部の樹脂層13が連結している場合には、ペースト13’の総塗布量が所定量となるように、各発光素子11上に塗布するペースト13’の量を変えてもよい。
【0106】
実施形態5の発光装置は、複数の発光素子11を搭載した構成でありながら、上面方向の光の取り出し効率を向上させることができる。さらに、図13(a),(b)のように、複数の発光素子11の間の領域に傾斜面130を形成することにより、複数の発光素子11の間の領域で光を上方に向けて反射できるため、複数の発光素子11の間で輝度が低下し、発光面に輝度ムラが生じるのを防止することができる。
【0107】
なお、実施形態5の図13(a),(b),(c)の構成の外側に、図12のように反射材料層15を配置することも可能である。この場合、図13(a),(b)の構成では、複数の発光素子11の間の領域の傾斜面130にも反射材料層15が接するように充填することが望ましい。
【実施例】
【0108】
<実施例1>
実施例1として、図12の構造の発光装置を製造した。lmm角で厚さ100μmのフリップチップタイプの発光素子11が実装されたサブマウント基板10を用意した。シリコーン樹脂に、蛍光体粒子13aとして粒径15μmのYAG蛍光体を60重量%、および、スペーサー13bとしてシリカガラス(宇部日東化成製、SiOの純度99.9%)の球形ビーズ(平均粒子径40±4μm、CV値±3.5%)を5重量%添加し、十分に混練して均一に分散させ、ペースト13’を得た。
【0109】
発光素子11上面にペースト13’としてペースト13’を約7.0×10−4ml塗布した。その上から厚さ0.1mmで1.2mm角の無アルカリガラス(OA−10G、日本電気硝子(株)製、アルカリ金属酸化物含有量0.1重量%以下)の板状部材14をマウントした。板状部材14の自重により、ペースト13’は発光素子11上面と板ガラスとの間の空間に広がり、板状部材14は、ガラスビーズ(スペーサー13a)によって発光素子11の支持された状態となった。これにより、高濃度に蛍光体粒子13aが含有されたペースト13’(未硬化の樹脂層13)の薄い層が形成された。この層の膜厚は、スペーサー13bを挟んだ板状部材14と発光素子11との間隔によって規定されていた。
【0110】
樹脂層13のシリコーン樹脂を硬化させるために150℃で4時間加熱した。その後、TiOフィラーを分散させたシリコーン樹脂を反射材料としてリング枠体16内に充填し、150℃にて4時間加熱し硬化させ、反射材料層15を形成した。これにより、図12の形状の発光装置を製造した。
【0111】
<実施例2>
実施例2として、スペーサー13bをチタンバリウム系ガラス(GS40S、日本電気硝子(株)、アルカリ金属酸化物含有量0.2重量%未満,TiO,ZnO,BaO,ZrO,CaOおよびSiOを含む)の球形ビーズ(中心粒径41±2μm、粒径ばらつき±3μm)に変更し、板状部材14の材質を無アルカリガラス(AF45、ショット日本(株)製、アルカリ金属酸化物含有量0.2重量%以下)に変更し、他の条件は実施例1と同じにして発光装置を製造した。
【0112】
<実施例3>
実施例3として、スペーサー13bをチタンバリウム系ガラス(GS40S、日本電気硝子(株)、アルカリ金属酸化物含有量0.2重量%未満,TiO,ZnO,BaO,ZrO,CaOおよびSiOを含む)の球形ビーズ(中心粒径41±2μm、粒径ばらつき±3μm)に変更し、他の条件は実施例1と同じにして発光装置を製造した。
【0113】
<比較例1>
比較例1として、スペーサー13bをチタンバリウム系ガラス(GS40S、日本電気硝子(株)、アルカリ金属酸化物含有量0.2重量%未満,TiO,ZnO,BaO,ZrO,CaOおよびSiOを含む)の球形ビーズ(中心粒径41±2μm、粒径ばらつき±3μm)に変更し、板状部材14の材質を低アルカリガラス(D263、ショット日本(株)製、アルカリ金属酸化物含有量0.2重量%より多い、NaO溶出量約20μg/g)に変更し、他の条件は実施例1と同じにして比較例1の発光装置を製造した。
【0114】
<評価>
実施例1、2および3、ならびに、比較例1の発光装置を130℃の恒温環境に配置し、発光素子に電流を供給して点灯させ、発光素子のジャンクション温度が約180℃となる環境とし、100時間後のオイルブリードの発生の有無を目視で確認した。
【0115】
その結果、実施例1、2および3の発光装置は、比較例1の発光装置よりもオイルブリードの発生量が少なかった。アルカリ金属酸化物含有量が0.2重量%より多い低アルカリガラスを板状部材14として用いたため、樹脂層13のシリコーン樹脂が加水分解され、シロキサン結合が切断されて低分子化して、オイルとして溶出したことによると考えられる。
【0116】
また、実施例1の発光装置は、実施例2、3の発光装置よりもオイルブリードの発生量が少なかった。また、実施例2の発光装置と実施例3の発光装置のオイルブリード発生量は、同等であった。この理由は、実施例2,3ではチタンバリウム系ガラスをスペーサー13bとして用いたため、スペーサー13bがTiO,BaO,ZrO,ZnO,CaO,SiOを含み、TiOとZnOの光触媒効果により、樹脂層13のシリコーン樹脂が低分子化され、オイルとして溶出したのに対し、実施例1ではシリカのスペーサー13bを用いたためシリコーン樹脂の溶出が生じなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0117】
10…サブマウント基板、11…発光素子、12…バンプ、13…樹脂層、14…板状部材、15…反射材料層、16…外枠、81…凸形状、130…傾斜面
図1
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図13