(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化学剤は、オゾン、塩素及び塩素化合物、ビグアニド生成物、ハロゲン系化合物、臭素系化合物、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項1記載の方法。
前記化学剤は、インジェクタ、ディフューザ、スプリンクラー、重量ディスペンサ、パイピング、手動添加、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されるディスペンサを使用して投入される、請求項1記載の方法。
希釈効果を可能にするために、前記大きな水域のうちの別の部分からの水を、レクリエーション目的のための前記水域部分に供給することができる、請求項1記載の方法。
水浴者の負荷の汚染物質の希釈効果を可能にするために、前記大きな水域のうちの別の部分からの水を、レクリエーション目的のための前記水域部分に供給することができる、請求項1記載の方法。
【背景技術】
【0002】
世界中の幾つかの研究が、湖、貯水池、ダム及び海のような幾つかの大きな水域において見出された水質が、安全基準及び/又はレクリエーション目的のために要求される水質を満たさない細菌学上の及び物理学上の性質を有することを示している。したがって、レクリエーション目的のためのかかる大きな水域の使用は、人々に健康の脅威を与え、かつ周囲の共同体及び地域に悪影響を与えることがある。
【0003】
水質汚染は、人間の活動による水の化学的、物理学的及び生物学的性質の変化に関係することがある。年来、世界の人口が爆発的に増加してきたため、更なる生活及びレクリエーション空間が必要となり、したがって、天然又は人工の水域が他の目的のために使用される。増加する人口は、大都市の周辺部を占領し、土地及び関連ユーティリティの需要を増大させる。そのうえ、多数の工業が、かかる水域の水質にも影響を与える幾つかの環境の結果を引き起こしてきた。
【0004】
劣悪な水質の一因は、水質汚染である。水は、下水廃棄、工業汚染、水域際の過剰な開発、農業からの流水及び都市化、大気汚染等によって汚染されることがある。これらの例は、水質を、レクリエーション用の水に要求される基準より下に落とすことがある。
【0005】
水質汚染の影響には、その水域の生物、及び、結局、かかる水を直接的又は間接的な目的のために使用することがある人間の健康への影響が含まれる。
【0006】
また、年来、主に、増大した都市及び農業により、大きな水域に流入する養分の量が激増し、微生物の増殖、即ち水域の富栄養化をもたらしている。富栄養状態では、養分の量は、植物プランクトンの代謝速度を増加させ、かくして、生化学的酸素要求量を増加させ、水の溶存酸素レベルを低下させる。その上、暖かい水は溶存酸素を含む低い能力しか有さないため、温度も水の溶存酸素レベルに影響する。したがって、大量の養分と高温のような、酸素を減じる両方の効果の組み合わせは、生物が病気になりやすくなり、寄生虫が付きやすくなり、かつ他の汚染物質に敏感になるといった、生物を弱める結果を招く。全てのかかる問題は、水質にネガティブな影響を引き起こし、長寿命の藻類及び他の微生物の増殖を引き起こし、人々にとって危険なレクリエーション環境を作り出す。また、地球温暖化は、世界中でこの種の問題を増加させる傾向があるであろう。
【0007】
レクリエーション目的のために使用される大きな水域について、多くの研究及び分析が行われてきた。大きな水域は、水浴、水上スキー、ウインドサーフィンボート漕ぎ及び多くの他の活動を含む、広く様々なレクリエーション目的に使用される。しかしながら、かかるレクリエーション目的に使用される幾つかの水域は、水域に適用される特定の微生物学的な衛生条件を満たさない。例えば、EPAの研究が全米の1000を越す湖で行われ、直接接触するレクリエーション目的のためのかかる湖の使用の潜在的なリスクを分析したところ、全湖の30%を超える湖が人間の健康への広範な影響を潜在的に有し、41%を超える湖が、藻毒に曝される高度の又は中程度の可能性を与えることが分かった。また、細菌数及び毒濃度は、開放水域よりも、岸近くの残留の方が大きいことが分かってきた。
【0008】
世界中の多くの国々が、安全且つ衛生的な状態で水浴のような直接接触するレクリエーション目的のために水域を使用するための規制を有し、かかる水域のレクリエーション使用に関して、一般的に二つのタイプの規制がある。第1の規制のタイプは、水泳プールに関し、低い微生物レベルを維持し、かつ新しい水浴者が水泳プールに入るときに、水の汚染をも防止するために、高い不変の塩素バッファ(chlorine buffer)を維持することが本質的に要求される。塩素バッファは、多くの汚染物質の中でも、汚染菌を無毒化し、水浴者によって水泳プールに持ち込まれた細菌を殺菌し、かくして、レクリエーション目的に適した高い水質を維持する。第2の規制のタイプは、多くの大きな水域、中でも、湖、水、潟湖、貯水池又はダムのような、天然又は人工の大きな水域に適用され、レクリエーション用の水について全身を接触させる水浴のための基準として適用される。この規制は、水の希釈力に基づく。水が、許容できる細菌レベルを有し、新しい水浴者が水域に入るとき、汚染物質は水域中で著しい影響を引き起こす濃度とならないように希釈される。したがって、大きな水域では、大きな水の体積の高い希釈力により、また、衛生的な状態を維持する自然の能力のために、殺菌性のバッファは必要ない。
【0009】
湖、海、潟湖又はダムに適用されるような、直接接触レクリエーション水の規制は、かかる水域の安全な使用を可能にする幾つかの基準を満たす水質を要求する。直接接触レクリエーション目的のための大きな水域の適合性を評価するために、最も重要な基準は、水の微生物学的なパラメータである。例えば、レクリエーション用の水に全身を接触させる水浴のためのEPA(Environmental Protection Agency:環境保護局)規制は、淡水に関して、大腸菌が水100ml当たり126CFUを超えてはならず、腸球菌が水100ml当たり33CFUを超えてはならないことを指摘している。別の例として、チリにおける直接接触するレクリエーション用の水のための規制NCh1333は、レクリエーション用の水は、(中でも大腸菌を含む)水100ml当たり1000CFUを越す糞便性大腸菌群を含んではならないと述べている。したがって、かかる大きな水域が直接接触するレクレーション用の水として使用されるときには、厳しい基準が適用される。
【0010】
特定の微生物学的な衛生状態を満たすための、大きな水域全体にわたる大量の化学剤及び消毒薬の撒布は、技術的に、経済的に、かつ環境的に実行できないため、したがって、レクリエーション目的として現在不適切である大きな水域においてかかる要求された特定の微生物学的な条件を得ることは意義ある挑戦である。かくして、水域に提供された特定の微生物学的な状態を満たすように水域全体を処理することは、大抵の場合不可能である。
【0011】
また、ある水域は、直接接触レクリエーション水のための微生物学的な規制を満たすことができ、また、より厳しい規制が水域に適用されるが、そのような水域、特に低塩分濃度水や高温水に存在できる、原生動物、特にアメーバ、のような病原性微生物がいる。したがって、安全な水浴条件を不変的に可能にする、直接接触するレクリエーション用の水についての細菌学的な規制を維持する保証はない。
【0012】
現在、水泳プールに適用される水処理技術は、少なくとも1.5ppmの不変的な塩素バッファを維持するように、又は、少なくとも750mVの不変的なORPを維持するように、化学剤の添加を必要とする。現在の方法は、技術的に、経済的に、かつ環境的に、大きな水域について実現できないため、現在、湖、海、潟湖、貯水池又はダムのような、微生物によって汚染された大きな水域を処理する既知の実用的な方法はない。ORPが、水の消毒パラメータを標準化する第1のアプローチに益々なってきている。微生物の代謝、及びその結果としてそれらが生き延びて繁殖する能力は、それらが生きている生活環境のORP(oxidation Reduction Potential:酸化還元電位)によって左右される。細菌学の観点から、酸化剤は、細胞膜から電子を除去して受け取り(還元−酸化反応)、細胞を不安定にして、速やかな死をもたらす。
【0013】
酸化還元電位(ORP)、即ち、別の化学種から電子を獲得する化学剤の傾向は、別の消毒薬の添加によって制御することができ、消毒薬の添加は、水を処理することを可能にし、レクリエーション目的には安全でない環境を作り出すことがある危険な微生物の殺菌を可能にする。また、水の温度は、その生物学的な性質及び微生物の増殖に重要な役割を演じ、微生物の増殖は、より高い温度で増進する傾向がある。そのうえ、ある微生物が増殖することができるためには、特定の塩分濃度のレベルが必要であり、異なる塩分濃度の生活環境に耐えられないというように、水の塩分濃度も、その生物学的な性質に重要な役割を演じる。例えば、ある病原性の原生動物は、2重量%よりも低い塩分濃度を有する水中でしか成長できず、したがって、より高い塩分濃度では、かかる微生物は成長することも増殖することもできない。
【0014】
水泳プールの水処理技術は、適切な消毒パラメータを維持するために、大量の化学剤の添加を必要とする。大きな水域については、必要となるであろう、重大な環境破壊を引き起こすであろう大量の化学物質のために、現在の水泳プールの消毒技術は、技術的かつ経済的に実現できない。
【0015】
現在、湖、海、潟湖、貯水池又はダムのような大きな水域を消毒し、かかる大きな水域を処理する既知の実用的な方法はない。旧来の消毒技術を利用するならば、適当な処理及び消毒は、技術的、経済的かつ環境的に実現できないであろう。したがって、特定の微生物学的な衛生条件を満たすゾーンを提供するために、大きな水域、好ましくは、大きな水域の限定された部分を処理するための方法を提供し、水域を、安全な方法で、レクリエーション目的のために使用することが望まれる。
【0016】
したがって、劣悪な水質を有する、湖、潟湖、海、又はダムのような、天然又は人工の大きな水域についてのレクリエーション使用に関して未解決の問題がある。水域内でのレクリエーション目的の安全な実施、及び、(現在、世界中の多数の大きな水域においては生じていないが)共同体又は近くの地域に対するあらゆる健康上の脅威を回避することをも可能にするために、かかる大きな水域の微生物学的な性質は、直接接触する水の規制、又は、特定の水域に適用されるより厳しいし規制を満たさなければならない。
【0017】
従来技術
米国特許第6231268号には、誘導された循環によって大きな水域を処理する方法及び装置が開示され、米国特許第6231268号の方法及び装置は、酸素の欠乏、淀んだ領域、凍結、及びその他一様でない状態を回避するために、大きな水域内での水循環を維持することに関する。米国特許第6231268号には、特定の細菌学的な衛生条件を満たすために大きな水域内の一部分の水を処理するための方法は言及も開示されておらず、単に、大きな水域内の循環を維持するための方法が開示されているに過ぎない。米国特許第6231268号の方法は、衛生条件が満たされたゾーンを作り出すために拡散手段により化学物質を添加せず、水域内で循環を維持し、それは水域全体に化学物質を分散させるが、衛生条件が満たされたゾーンを作り出すことはできない。
【0018】
米国特許第6317901号には、淡水又は塩水プールが開示され、そのプールは、天然又は人工水域の上に作り出され、水を通過させかつ汚染物質を通過させない物理的なバリア手段によって、大きな水域中に含まれる汚物又は他の沈殿物による汚染を防止してかかる水域からの水を使用することを可能にするが、大きな水域内に物理的な閉じこめ手段を設置することを必要とする。
【0019】
中国特許第102092824号は、池、湖、都市タンク、及びその他水域のための水循環システムを開示し、その水循環システムは、水底から水面までの流れを作り出すことを可能にし、水域の富栄養化を回避する。中国特許第102092824号には、レクリエーション目的を可能にする衛生条件を満たすゾーンを作り出すために、大きな水域内の一部分の水の微生物学的な特性を制御するための方法は、言及も開示もされていない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。幾つかの実施形態が記載されているが、変更、調整、及び他の適合が可能である。例えば、置換、追加又は変更を、図面に示された要素に対して行ってもよく、ここに記載された本方法は、開示の方法に対して、ステップを置換し、並べ替え、又は追加することによって変更してもよい。したがって、以下の詳細な説明は、開示の範囲に限定されない。システム及び方法は、種々の装置及びステップを「含む」という文言で記載され絵いるが、システム及び方法はまた、他に述べない限り、種々の装置又はステップを「本質的に有する」、又は種々の装置又はステップ「からなる」こともできる。
【0028】
定義
本発明では、以下の用語又は語句は、以下に記載した意味で理解されるべきである。
【0029】
ここに使用するように、水の一般的な種類とそれらに対応する全溶解固形物(Total Dissolved Solids:TDS)濃度(mg/L)は、淡水がTDS≦1500であり、汽水が1500<TDS≦10000であり、塩水が10000<TDS≦30000、であり、海水がTDS>30000である。TDSは、例えば、導電率計を使用して、又は溶媒を蒸発させて残った残留物の質量を計る重量法を適用することによって、測定することができる。
【0030】
ここに使用するように、「衛生条件を満たすゾーン(sanitary-compliant zone)」とは、レクリエーション目的のために設置された、大きな水域のうちの水域部分をいい、レクリエーション目的に使用されるとき、又は必要とされるときに、特定の微生物学的な衛生条件を満たすことが要求される。衛生条件を満たすゾーンは、恒久的に物理的に同じゾーンではなくてもよく、レクリエーション目的のために人々の要求に従って変わり得ることに留意しなければならい。
【0031】
ここに使用するように、「特定の微生物学的な衛生条件」とは、レクリエーション目的を可能にするにために、衛生条件を満たすゾーンないで達成される必要がある微生物学的な性質/条件をいう。かかる条件は、ある特定の微生物を減ずるための特定の地方、州、連邦の規制によって、又は別の所定の特定の条件によって、決定することができる。
【0032】
ここに使用するように、「最小ORPレベル」とは、最も好ましくないゾーンにおいて微生物学的な性質を適切に制御するために、かかるゾーンにおいて許容され得る最小ORPをいう。
【0033】
ここに使用するように、「最小期間」とは、要求された衛生条件を可能にするために、最も好ましくないゾーンで水の最小ORPレベルが維持されなければならない時間の最小量をいう。
【0034】
ここに使用するように、「境界ゾーン」は、衛生条件を満たすゾーンの範囲を定める仮想のゾーンに対応し、物理的なバリアを必要としない。
【0035】
ここに使用するように、「最も好ましくないゾーン」は、特に所定の化学剤を添加した後で、特定した水域部分内で最低ORP値を示すゾーンに相当する。最も好ましくないゾーンは、必ずしもいつもではないが、化学物質ディスペンサから最も離れた、特定した水域部分の境界ゾーンに見出される。
【0036】
ここに使用するように、「ディスペンサ手段」とは、一つ以上の化学剤を水に添加するためのあらゆる手段をいい、注入器(インジェクタ)、散布器(ディフューザ)、スプリンクラー、配管、手動添加、及びこれらの組み合わせ、パイプ、バルブ、及び、処理すべき設定した水域部分内への化学物質の適切な添加を可能にする連結要素からなるグループから選択されるのがよい。
【0037】
ここに使用されるように、水域に添加される「化学剤」とは、水の所望のORPレベルを達成することを可能にするあらゆる化学剤をいう。「有効量の化学剤」は、最も好ましくないゾーンで少なくとも最小期間の間、少なくとも最小ORPレベルを維持するために、水に添加され得る化学物質の最小量に対応する。
【0038】
本発明の方法は、大きな水域の一部分を処理することによって、大きな水域の微生物学的な性質を制御することを可能にし、必要なときに、大きな水域のその一部分は、特定の微生物学的な衛生条件を満たし、かくして、水域全体を処理することの限界及び不可能性を克服する。レクリエーション目的のために使用される領域を広く包含するために、戦略的に配置された衛生条件を満たすゾーンが作り出される。
【0039】
この特定の方法では水域全体を書入りする必要がないから、開示した方法は、より少ない量の化学物質及び低減したエネルギー消費量しか必要としない(水域は、本開示の方法と異なる別の処理を必要としてもよい)。かくして、本発明は、人々が、安全な方法でレクリエーション目的のために大きな水域内のあるゾーンを使用することを可能にし、水域全体を処理することの経済的、技術的及び環境的な限界及び不可能性を克服し、現在、安全及び衛生の問題により使用できない無数の湖、海岸、潟湖、及び多くの水域を使用することをも可能にし、世界中の人々の生活様式を変え得る新奇なレクレーション及び旅行の機会を生む。
【0040】
開示した方法は、湖、海、河口域、貯水池、ダム及び潟湖のような、天然又は人工の大きな水域について実施することができる。開示した方法は、淡水、汽水、塩水及び海水を含む異なるタイプの水で使用することができる。一つの実施形態において、大きな水域のうちの水域部分の微生物学的な性質を制御するための方法は、
a.大きな水域のうちのレクリエーション目的のための水域部分を特定し、ディスペンサ手段を定め、
b.少なくとも最小期間の間、水のかかる性質における少なくとも最小ORPレベルを維持し、前記最小ORPレベル及び前記最小期間は、下記のi〜vによって計算された数値よりも低くなることができず、
i.前記水域部分のうちの最も好ましくないゾーンを決定し、
ii.前記最も好ましくないゾーンでの前記水の塩分濃度を決定し、
iii.前記水の前記塩分濃度に基づいて、前記最小ORP値を決定し、
ここで、
− 0%から1.5%までの前記水の塩分濃度については、前記最小ORPレベルは、550mVであり、
− 1.5%より高く、2.5%までの前記水の塩分濃度については、前記最小ORPレベルは、下記の等式によって計算され、
(最小ORPレベル)=625−50×(前記水の塩分濃度(%)(重郎パーセント))
− 2.5%よりも高い前記水の塩分濃度については、前記最小ORPレベルは、500mVであり、
iv.前記最も好ましくないゾーンにおける前記水の温度を決定し、
v.前記水温に基づいて、前記最小期間を決定し、
ここで、
5℃から35℃の水温については、前記最小期間は、下記の等式によって計算され、
(最小期間(分))=80−2×(前記水の温度(℃))
35℃から45℃までの水温については、前記最小期間は、下記の等式で形成され、
(最小期間(分)=5×(前記水の温度(℃))−165
c.前記最も好ましくないゾーンでの少なくとも前記最小期間の間、少なくとも前記最小ORPレベルを維持するのに有効量の化学剤を投入し、
d.前記最も好ましくないゾーンにおけるORPが前記最小ORPレベルの20%を超えて減少すること回避するために、ステップc.を繰り返す、
こと含む。
【0041】
最も好ましくないゾーンの位置、水の塩分濃度、及び水の温度は、外部条件の結果として、互いに独立に変化する。かくして、開示の方法は、随意に、更なるステップe.即ち、ステップb.、c.及びd.が、再び又は再三再四実施される。
【0042】
安全なレクリエーション目的を可能にすることができる利用しやすいゾーンを提供するために、水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たさなければならないゾーンを決定する戦略的な分析が行われるかもしれない。
【0043】
好ましくは、ディスペンサ手段による、化学剤の投入は、水のORPの効果、水の塩分濃度、及び水の温度を組み合わせるパラメータ決定方法によって制御される。パラメータ決定方法において、随意に、化学物質の拡散、及び水の子爵力を更に考慮してもよい。水の消毒特性(ORP)、水の塩分濃度に依存するある微生物の耐性、温度、及び随意に、広範な調査の結果である、水の希釈力、の組み合わせ効果により、本発明は、水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たすために、水泳プールによって必要とされるものよりも、遙かに少ない化学剤を使用することを可能にする。従来技術においては、水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たす水質を維持するために、現在、大量の消毒剤の添加に関する方法、又は、代わりに水の希釈力に依存する方法の二つの方法がある。本発明は、それらの最高の相乗効果を作るために、両方の効果を組み合わせ、かくして、特定の微生物学的な衛生条件を満たすゾーンのための効果的な適切な方法を提供する。
【0044】
処理すべき水域部分を特定する
処理すべき水域部分の位置は、本発明の工程が衛生条件を満たすゾーンとして指定した後に、レクリエーション目的のために使用するのに最も適当な水の一部分を戦略的に特定することによって決定することができる。この位置は、ユーザが水に入るのに適当であること、推進、水の目的(例えば、水浴、水泳、スキー、ボート、釣り等)、及び水温などを考察することによって決定することができる。例えば、水域がホテルすぐ隣に位置すれば、衛生条件を満たすゾーンは、ユーザが水に入るのに最も適当な、ホテルのすぐ隣の水域部分が適当であろう。これを
図1及び
図2に示し、大きな水域2の縁に位置した衛生条件を満たすゾーン1を示す。別の場合には、衛生条件を満たすゾーンは、水域の中央にあって大きな水域によって囲まれている場合もある。ある場合には、目で見えるロープで仕切られた、又は残りの水から物理的に分離された(例えば、柵で仕切られ、壁で仕切られた)レクリエーション領域に対応する。
【0045】
図1及び
図2を参照すると、ゾーン1は所定の衛生条件を満たしている。論じたように、衛生条件は、地方、州又は連邦の規制又は別の所定の特定の条件によって決定されるのがよい。具体例としてのレクリエーション用の水のための規制は、大腸菌が水100ml当たり126CFUを超えてはならず、腸球菌が水100ml当たり33CFUを超えてはならないと述べている。海水について、EPA規制は、腸球菌が水100ml当たり35CFUを超えてならないと述べている。チリにおいては、直接接触するレクリエーション用の水のための規制NCh1333は、水は、(中でも大腸菌を含む)水100ml当たり1000CFUを越す糞便性大腸菌群を含んではならないと述べている。したがって、かかる大きな水域が直接接触するレクレーション用の水として使用されるときには、厳しい基準が適用される。代わりに、衛生条件又は微生物特性を、ある微生物の濃度を参照することによって決定してもよい。どんな場合にも、衛生条件を満たすゾーン1は、衛生条件を満たし、一方、残りの水域2は、衛生条件を満たすゾーンに適用された特定の衛生条件を満たさない。
【0046】
さらに、衛生条件を満たすゾーンは、化学剤を投入するための一つ以上のディスペンサ3を有し、残りの水域2は、ディスペンサ3を有さなくともよい。
【0047】
衛生条件を満たすゾーンは、境界ゾーン4によって仮想的に境界をつけられている。境界ゾーン4は、物理的なバリアを有してもよいが物理的なバリアを必要としない、仮想的なバリアである。
【0048】
本発明は、種々のゾーン中で、即ち、衛生条件を満たすゾーン、境界ゾーン及び最も好ましくないゾーンで水を循環させる必要がなり。実際、ある実施形態では、水は特に循環されていない。ここに記載した大きな水域については、大きな水域内の水を循環させることは、経済的に、技術的にかつ環境的に実現できないかもしれない。本発明は、水の特定された一部分の水を化学剤で処理して、かかるゾーンに、かかる領域に対する特定の微生物学的な衛生条件を満たさせる。水域において、衛生条件を満たすゾーンから他のゾーンへの化学剤の分散が自然に起こるかもしれないが、本発明には必要ない。したがって、ある実施形態では、水域全体の水循環を維持することは、本発明の方法に対して逆効果となるであろう。
【0049】
レクリエーション目的のために使用されるべき大きな水域内の一部分が特定され又は設定された後に、水のORP、水の塩分濃度、水温、及び随意に化学物質の拡散並びに水の希釈力に基づくパラメータ決定方法によって制御されるディスペンサ手段が、定められる。
【0050】
ディスペンサ手段3は、一つ以上の散布器、注入器、スプリンクラー、重さによるディスペンサ、配管、手動添加、又はこれらの組み合わせから選択されるのがよい。投入装置は、有効量の化学物質を水域内に放出するようになっており、パイプ、バルブ及び連結要素のような、ディスペンサ手段の適切な作動を可能にするのに必要な設備を有してもよい。
【0051】
水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たすゾーンを作り出すために、化学濃度が、水のORP、水の塩分濃度、水温、及び随意に化学物質の拡散、及び更に水の希釈力に基づくパラメータ決定方法に従って適用されなければならない。化学物質は、レクリエーション目的のために使用される水域をカバーするように構成した投入装置3によって好ましくは添加されるのがよい。
【0052】
本発明は、処理すべき水域部分を囲むための物理的なバリアを必要としないが、その代わり、化学濃度が、水域のかかる領域に適用される特定の微生物学的な衛生条件を満たすように水のその部分に適用される。
【0053】
ディスペンサ手段は、水のORP、水の塩分濃度、水温、並びに随意に化学物質の拡散、及び水の希釈力に基づくパラメータ決定方法に基づくパラメータ決定方法によって制御される。ディスペンサ手段は、水域内の適当な拡散条件を可能にし、かつ水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たすことを可能にするために、化学物質を水に添加する。ディスペンサ手段は、衛生条件を満たすゾーンに必要な化学濃度を提供するために、レクリエーション目的の予定された水域部分に関連して戦略的に構成されかつ配置されるのがよい。
【0054】
ディスペンサの数及び位置
一つの実施形態において、ディスペンサは、衛生条件を満たすゾーンの水域をカバーするように配置され又は使用される。化学剤を投入するためのディスペンサの数及び位置は、処理される水の各部分の特定の条件によって決定されるのがよい。ディスペンサの総数は、水域に添加されるべき化学物質流量により計算することができ、かかる化学物質流量は、処理すべき水域中の化学物質の均一な添加を可能にするように、一連のディスペンサに分配されるのがよい。
【0055】
例えば、水域の同じ部分を処理するために、添加されるべき化学物質の有効量がある。有効量は、例えば、水流、及び水域内の化学物質の添加の均一性に影響するかもしれない他の多くの変数のような、幾つかの変数に依存して、好ましくは、幾つかの小流量ディスペンサ、又は、ほんの2,3個の大流量ディスペンサにより、好ましくは添加されるのがよい。
【0056】
ディスペンサは、一般に、処理される水域部分を十分にカバーするように、かかる部分の外辺部に置くことができるが、ディスペンサはまた、化学物質添加の均一性を維持し、かつ水域部分全体の化学物質の拡散を可能にするように、水域部分の固有の要求事項に関連して他の構成を有することができる。
【0057】
ディスペンサの種類
本発明の方法に使用することができるディスペンサの種類は、化学物質添加の要求に応じて変えることができ、希釈器、注入器、重さによるディスペンサ、手動添加、マニホルド、配管、スプリンクラー、ノズル、又はこれらの組み合わせを有してもよい。請求した方法に使用されるディスペンサは、ノズルであり、より好ましくは注入器である。
【0058】
有効量の化学剤の放出
化学剤は、衛生条件を満たすゾーン内の微生物の数を、所定の量を下回るまで減じることによって、衛生条件を満たすゾーンを作り出すために使用される。衛生条件を満たすゾーン内の化学剤の濃度は、一つのディスペンサ並びに全数のディスペンサから投入される化学剤の量によって制御することができる。例えば、一つのディスペンサからより少ない化学剤を投入するが、衛生条件を満たすゾーンにディスペンサの数を増やすことが望ましい。
図2に、多数のディスペンサを使用する例を示す、ここでは、複数のディスペンサ3が、衛生条件を満たすゾーンの周縁部に配置されている。一つの実施形態において、化学剤を投入するためのディスペンサの数及び位置は、衛生条件を満たすゾーン内の水の体積をカバーするように決定される。
【0059】
ディスペンサ3は、散布器、注入器、スプリンクラー、重さによるディスペンサ、配管、手動添加、又はこれらの組み合わせであるのがよい。ディスペンサは、有効量の化学剤を水域に放出する。ディスペンサはまた、パイプ、バルブ及び連結要素のような、ディスペンサを作動させるのに必要なあらゆる設備をも有する。
【0060】
具体例としての化学剤は、オゾン、塩素、塩素化合物、ビグアニド生成物、ハロゲン系化合物、臭素系化合物及びそれらの組み合わせのような、抗菌剤を含む。
【0061】
水のあるORPレベルを達成するために添加される化学物質の総量は、多くの要因の中でも、例えば、pH、気象条件、雨、使用のレベル、有機物負荷、塩分濃度、温度、アルカリ度、消毒薬濃度、及び/又は、金属及び汚染物質の濃度のような、幾つかの変数に依存する。ORPは、水域内に見られるある化学種を酸化し又は還元する傾向の尺度であり、したがって、水に含まれる化学剤の総量を表さない。ORP測定値は、消毒剤の濃度だけでなく、水中におけるその活性度、及び微生物やバクテリアを殺す効力を測定する利点を与える。
【0062】
変数及びその相互作用複雑さのために、水中の化学物質の拡散により、最小期間の間、或る水域部分における最小ORPを維持するための水温、水の塩分濃度及び希釈力に関係し得る、知られていない等式がある。水域に添加すべき化学物質の量を概算するために、込み入ったモデルを構築しなければならない。水域部分が、大きな水域に含まれるから、化学物質が添加されるとき、化学物質は、水域部分中に拡散して、ディスペンサの近くでより高く、かつ最も好ましくないゾーンの近くでより低い化学勾配を作り出す。
【0063】
化学物質の添加が行われると、まず、化学物質が水中の幾つかの他の化合物を酸化するため、水のORPの著しい変化はないことに留意しなければならない。しかし、或る時点で、添加は、ORPを所望のレベルまで上げることを助ける化学物質の残留濃度を生成させることを可能にし、かくして、所望の消毒能力を与える。したがって、化学的な消費は、二つのグループに分かれることに留意しなければならない。
【0064】
− ORPに著しくは影響しない多様な化合物を酸化するのを助ける、添加された化学物質の量。かかる化学的な消費は、原水の水質に完全に依存するので、現場で決定されなければならない。また、かかる濃度は、水質の物理化学的パラメータに基づく込み入ったモデルによって決定することもできる。
【0065】
− 水中の残留濃度を生成し、かくして、水中のORPを上昇させる、添加された化学物質の量。かかる化学濃度は、現場で、又は、水質及び物理化学的な状態又はパラメータに依存する多様な方法により、見積もることができる。
【0066】
前述のものにもかかわらず、本発明を限定することなく、異なるオキシダントについてのオキシダントの適用範囲は、水質により異なる。通常、幾つかのオキシダントの使用範囲は、以下の通りである。
【0068】
出願人は、水中の残留化学物質の量を見積もる幾つかの実施形態を示す。
a.処理すべき水域部分が閉じた水域として振る舞うと仮定して、処理すべき水域部分全体において或るORPを得るために水中に添加しなければならないオキシダントの最小量を推定することができる。例えば、水域部分の全体積において或るORPを達成するために、最小量の化学物質を推定することができる。例えば、もし水域部分が1000m
3の体積を有すれば、その水域部分は閉じた水域と考えられ、水中で550mVのORPを達成するために、次亜塩素酸ナトリウムの0.07ppmの残留濃度を維持しなければならいことを見積もることができる。0.07ppmの残留濃度を得るために、水の要求塩素に見合うように、1.2ppmの次亜塩素酸ナトリウムの第1の用量が添加され、如何なる残量濃度も生じない。その後、0.07ppmの用量が添加されて、所望の残量濃度を得て、550mVの所望のORPレベルを得る。したがって、水に添加される次亜塩素酸ナトリウムの量は、以下のように、水域の次亜塩素酸ナトリウム濃度から計算することができる。
【0069】
第1の用量:
1.2ppm=1.2(ppm 次亜塩素酸ナトリウム/水のリットル)×1000×(m
3×1000リットル/1m
3)
総次亜塩素酸ナトリウム=1200kg
【0070】
残留濃度:
0.07ppm=0.07(ppm 次亜塩素酸ナトリウム/水のリットル)×1000×(m
3×1000リットル/1m
3)
総次亜塩素酸ナトリウム=70kg
【0071】
したがって、水中に0.07ppmの次亜塩素酸ナトリウムの均一な残留濃度を得るためには、総量1270kgの次亜塩素酸ナトリウムを添加すべきであり、かくして、かかるゾーンに550mVのORPを得ることができる。実際には、水域部分は大きな水域内に見出されるため、濃度は均一ではないであろう、そして、前に計算した用量は、流れにより生じた化学物質の拡散のため、かかるORPを得るための最小限として考えることができる。
【0072】
b.水中のpH及び遊離塩素濃度に基づいて、水のORPを計算することを可能にする遊離塩素法を使用することもできる。pHが一定値に維持されているときに、ORPと遊離塩素との間に線形関係がある。かくして、或る量の遊離塩素を達成するのに必要な化学物質の量は、以下のように、ORPレベルにより計算することができる。
【0074】
c.或るORPに達したときに化学物質の添加を止めるために、周期的なモニタリングを伴う化学物質の添加が更に選択可能である。この方法は、試行錯誤の方法であり、ORPを周期的にモニタすることによって化学物質の添加を可能にし、所望のORPに達したときに、化学物質の添加を止めなければならない。
【0075】
d.化学物質の量を決定するために使用する別の方法は、少量の水のサンプルを採り、或るORPレベルを達成するために添加しなければならない化学物質の量を決定するための小規模テストを実行することからなる。この方法は、拡散又は他の変数を考慮しないにもかかわらず、一般に使用され、化学物質の量を見積もることを可能にする。したがって、この方法の結果は、必要な化学物質の最小量として考えられるべきである。
【0076】
或る実施形態では、最も好ましくないゾーンのORPレベルが、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、又は100%だけ減少する前に、更なる化学剤を添加することが望ましい。
【0077】
本発明の或る実施形態では、相当数の人々により、又は、衛生条件を満たすゾーンの消毒特性に影響する多くの流れがある場合、また、安全性又は他の理由により、ORPは、或る期間の間、衛生条件を満たすゾーン内で不変的に維持されるとよい。
【0078】
また、本発明の或る実施形態では、水処理は、衛生条件を満たすゾーンに水浴者がいるときに利用されるだけであり、したがって、処理は、まる一日行う必要も、恒久的に行う必要もない。例えば、水処理を日中だけ行ってもよく、衛生条件を満たすゾーンに水浴者がいないときに、夜間に止めることができる。したがって、衛生条件を満たすゾーンがレクリエーション目的のために有効に使用されるときに、水処理方法が適用される。
【0079】
或る実施形態では、真水、又は大きな水域内の別の部分からの水を供給することによって、衛生条件を満たすゾーン内の水質を改善することが望ましい。これは、例えば、ユーザからの汚染物質の影響を希釈する利益をもたらすかもしれないが、化学物質について好ましくない拡散の影響を生じるかもしれない。消毒成分の最小有効量は、以下の等式によって計算するのがよい(ボイス及びハンブリン、1975年)。
【0081】
上記の等式は、深さZ(m)、横及び縦の距離がそれぞれx(m)及びy(m)の流体における、一定の体積流量Q
i(m
3/s)で、かつ点源でC
i(μM)の濃度で、継続的に放出する点源についての解である。D(cm
2/s)は、水中の特定の化学物質の拡散係数であり、K
0は、第二種の変形ベッセル関数である。U(cm/s)は、x軸の端から端までの水域の均一な流れであり、γ(−)は、時間スケールにおける化学物質の減衰過程である。
【0082】
最も好ましくないゾーン
水域に適用された特定の微生物学的な衛生条件を満たすために、設定した水域部分の最も好ましくないゾーンが決定されるべきである。最も好ましくないゾーンは、特に、設定した水域部分にディスペンサ手段により所定量の化学物質を低下した後に、最も低いORP値を有するものに対応し、最も好ましくないゾーンは、境界ゾーンに、又は、ディスペンサ手段から最も遠くに見出されるかもしれない。化学物質の所定量は、現場で決定することができ、その単なる目的は、処理すべき水域分部内の最低ORP値を有するゾーンを決定することである。
【0083】
水域が5ヘクタールよりも小さい表面積を有すれば、最も好ましくないゾーンは、通常、その水域の中央ゾーンである。
【0084】
パラメータ決定法は、システムの異なる実施状況を考慮するように定められる。水域の絶え間ない測定を実施することは実現できないことに留意すべきであり、かくして、本発明は、絶え間ない測定を必要とすることなく、特定の微生物学的な衛生条件を満たす水質を提供することを可能にする。
【0085】
パラメータ決定法は、特定した水域部分内の、水のORP、水の塩分濃度、水温、及び随意に、化学物質の拡散及び水の拡散力に基づく。水のORP、塩分及び温度は、目視調査のような実験的方法、経験に基づく方法、及び分析方法によって決定することができる。本発明は、これらの変数に関係し、とても広範な研究の後に、水質に関するとても複雑な相互作用を解決した。
【0086】
塩分濃度は、特に、目視調査、水の電気伝導度に基づく塩分計、水の比重に基づく比重計、又は水の屈折率に基づく屈折計のような、実験的又は分析的な方法によって決定することができ、又は、公知かもしれないし、又は、他の情報源からの情報の場合もある。
【0087】
水温は、特に、目視調査、温度計、熱電対、抵抗温度検出器、高温計、又は、赤外線デバイスのような、実験的又は分析的な方法によって決定することができ、又は、公知かもしれないし、又は、他の情報源からの情報の場合もある。
【0088】
水のORPは、水中で回路の両端の電圧を測定するために電極を有するORP計を使用するような、実験的又は分析的な方法によって決定することができる。
【0089】
水のORP、水温、水の塩分濃度、及び希釈力は、予め知ること、又は実験的に決定することができ、したがって、本発明による方法は、これらの変数の知識で水の所定の部分に適用することができる、ことに留意しなければならない。
【0090】
パラメータ決定法は、大きな水域内の設定した水域部分全体に要求される衛生条件を保証するために、少なくとも最小期間の間、最も好ましくないゾーンにおいて少なくとも最小ORPレベルを維持することを含む。
【0091】
最小ORPレベルは、水の塩分濃度に依存することがあり、病原性の原生動物のような或る種の微生物は、最大塩分濃度が2重量%の水域内でしか成長し又は生きることができない。したがって、最小ORPレベルは、水の塩分濃度特性に依存することがあり、或る塩分濃度に関する限り、水は、或る生物が成長して、健康の脅威及び不衛生な状態を引き起こすための生活環境として役に立たないであろう。
【0092】
一方、最小期間も水温に依存することがある。水温は、幾つかの微生物の増殖にとって重要な要素である。低水温の間、微生物は、高水温の間ほど素早く増殖せず、したがって、この効果は、本パラメータ決定方法において考慮される。今まで、変数及びその相互作用の複雑性のために、水中の化学物質の拡散に従って、少なくとも最小期間の間、或る水域部分における少なくとも最小ORPを維持するための、水温、水の塩分濃度、及び希釈力を関連づける方程式は知られていなかった。かかる関係は、広範な研究の成果であり、本発明の方法に使用される最小ORPレベル及び最小期間は、好ましい実施形態では、以下のように定められた数値よりも低くできない。
【0093】
最小ORPレベル
一旦、最も好ましくないゾーンから塩分濃度が分かると、最小ORPレベルを以下の等式によって計算することができる。
i. 0%から1.5%までの水の塩分濃度については、最小ORPレベルは、550mVである。
ii. 1.5%より高く、2.5%までの水の塩分濃度については、最小ORPレベルは、下記の等式によって計算される。
(最小ORPレベル)=625−50×(水の塩分濃度(%)(重郎パーセント)) iii. 2.5%よりも高い水の塩分濃度については、最小ORPレベルは、500mVである。
【0094】
上述のパラメータ決定法は、
図3に示すようにグラフに表される。
【0095】
例えば、水が、1重量%(即ち、10000ppm)の塩分濃度を有すれば、この実施形態により維持されなければならない水の最小ORPは、550mVである。
【0096】
一方、水が、例えば、2重量%(即ち、20000ppm)の塩分濃度を有すれば、この実施形態により維持されなければならない525mVの水の最小ORPは、以下の等式を使用して計算される。
(最小ORP、mV)=625−50*(2)=525mV
【0097】
結局、水の塩分濃度が、2.5重量%より、例えば3重量%よりも高ければ、維持しなければならない最小ORPは500mVである。
【0098】
最小期間
最小期間は、水温によって決定され、最小期間は、以下の等式によって計算す
ることができる。
i. 5℃から35℃の水温については、最小期間は、下記の等式によって計算される。
(最小期間(分))=80−2×(水の温度(℃))
ii. 35℃から45℃までの水温については、最小期間は、下記の等式で形成される。
(最小期間(分)=5×(水の温度(℃))−165
【0099】
どのように最小期間が振る舞うかを示す曲線が、
図4に示されている。
【0100】
例えば、水温が20度ならば、以下の等式により、最小期間は、40分である。
(最小期間、分)=80−2*(20)=40分
【0101】
一方、水温が35℃と45℃との間、例えば、35℃ならば、最小期間は、以下の等式により、35分である。
(最小期間、分)=5*(40)−165=35分
【0102】
上記の実施形態のパラメータ決定法は、5℃と45℃との間の水温についての使用する場合にのみ記載している、というのは、他のあらゆる温度は、レクリエーション目的に適さないからである。
【0103】
パラメータ決定法はまた、最も好ましくないゾーンのORPが、最小ORPレベルより下にならないように、ディスペンサ手段により、化学剤を添加することを含む。
【0104】
衛生条件を満たすゾーンに水浴者がいると、水のORPは、水浴者がいないときよりも急速に減少する。かくして、本パラメータ決定法は、今度は、水の希釈力によって制御される、衛生条件を満たすゾーンにおける水浴者の総計の効果を含めることができる。最小ORPレベルに到達するまでに要する時間は、水浴者による、衛生条件を満たすゾーンの使用及び遭遇した希釈に依存する。したがって、ORPの減少速度は、水中の水浴者の総計、かくして、水の希釈力に依存する。
【0105】
水の塩分濃度、水温、ORP、及び化学物質濃度は、外部要因によって変化し影響されることがある。本発明は、これらの要因の変化を可能にし、水の塩分濃度、水温のモニタリング、及び最小ORP及び化学物質濃度の再計算は必要ない。それにもかかわらず、幾つかの実施形態では、水の塩分濃度及び水温は、遅れて、又は実時間で継続的にモニタすることができ、それに応じて最小ORP、最小期間、及び化学剤濃度を自動的に再計算するコントローラにフィードバックを提供する。幾つかの実施形態では、ディスペンサは、自動フィードバックロープの一部であるのがよく、ディスペンサは、最小ORPの減少に応じて追加の化学剤を自動的に投入する。幾つかの実施形態では、水の塩分濃度及び水温を周期的に測定して、最小ORP、最小期間及び化学物質濃度を再計算することが望ましい。かかる周期的な測定及び再計算は、15分ごと、30分ごと、1時間ごと、2時間ごと、1日に6回、1日に4回、1日に2回、1日に1回、1週間に1回、又は必要時に行うことができる。
【0106】
処理すべき水域部分を囲むのに、本発明は、物理的なバリアを必要としないことに留意しなければならない。むしろ、水域に適用される特定の微生物学的な衛生条件を満たすように、化学物質濃度が水域部分に適用される。
【0107】
ORPレベルが、最も好ましくないゾーンで最小ORP値の20%より以上まで減少する前に、少なくとも最小期間の間、少なくとも最小ORPレベルを維持するように、化学物質の添加を繰り返すのがよい。変形例では、最も好ましくないゾーンの位置、水の塩分濃度、及び水温は、外部要因の結果として、互いに独立に変化してもよい。かくして、本発明の方法は、ステップb.、c.及びd.がもう一回又は繰り返し実行される更なるステップe.を随意に含んでもよい。
【0108】
化学剤は、ディスペンサ手段によって、大きな水域内に設定した水域部分に添加することができ、ディスペンサ手段は、水のORP、水の塩分濃度、水温、化学物質の拡散、及び水の希釈力を組み合わせるパラメータ決定法によって駆動される。
【0109】
化学剤は、オゾン、塩素及び塩素化合物、ビグアニド生成物、ハロゲン系化合物、臭素系化合物、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0110】
水浴者の負荷の汚染物質の希釈効果を可能にするように、淡水、又は大きな水域内の別の部分からの水を、衛生条件を満たすゾーンに供給することによって、衛生条件を満たすゾーンの水質を改善することも可能である。
【0111】
以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲を限定するものではなく、むしろ、或る実施形態の具体例であることを意図するものである。当業者に浮かんでくる、例示された方法のあらゆる変形は、本発明の範囲内に入るものである。
【0112】
実施例
本発明は、チリ国ナビダド(Navidad)のラペル湖(lake Rapel)に適用された。その湖は、8000ヘクタールを超える面積、及び6億9500万立方メートルより以上の淡水を有する。その湖は、レクリエーション目的に普通に使用される。
【0113】
大きな水域内の水域部分は、湖の普通のレクレーション使用に従って設定され、(湖の全面積の約0.0008%に相当する)およそ650m
2をカバーした。その水域部分は、湖の周縁部に配置された。この特定の実験に要求される特定の微生物学的な条件は、EPAによって決められた直接接触レクレーション用の水についての微生物学的な規制に対応する。
【0114】
約20のインジェクタ(注入器)が、湖の北辺に設置された。各インジェクタは、毎時1.8リットルの最大流量を有する。使用した化学剤は、次亜塩素酸ナトリウムであり、インジェクタの流量に比例して希釈された。水中溶解塩素の溶液は、1m
3の容量を有するプラスチックのホッパーに用意された。次亜塩素酸ナトリウム溶液のポンプ輸送が、毎分18リットルの能力を有するイワキ電磁ポンプによって実行された。
【0115】
実験中、設定した水域部分は、1時間あたり平均60人の水浴者を有した。
【0116】
およそ1.5リットルの所定量の次亜塩素酸ナトリウムの10%溶液の放出後、HANA ORP HI 98201 ORP試験装置を使用して、設定した水域部分内の幾つかの場所でORPを測定することによって、最も好ましくないゾーンが決定された。最も好ましくないゾーンは、設定した水域部分の境界ゾーン中央に見つけられた。その水の絵塩分濃度が、HANA HI 931100N 導電性テストで測定された。水の塩分濃度は0.07重量%であることが分かり、温度計による計測時の平均水温は21であった。
【0117】
0%から1.5%までの間の塩分濃度に対する水の最小ORPレベルは550mVであると、最小ORPレベルが決定された。したがって、0.07重量%の塩分濃度を有する水の最小ORPレベルは、550mVであるべきである。
【0118】
5℃から35℃までの間の水温に対する最小期間は以下の等式によって計算されるものであると、最小期間が決定された。
(最小期間、分)=80−2*(水温、℃)
分単位の最小期間=80−2*(21)
最小期間=38分
【0119】
38分間の最小期間の間、最も好ましくないゾーンで少なくとも550mVのORPレベルを維持するために、次亜塩素酸ナトリウムが、インジェクタにより添加された。初めに、1ppmの次亜塩素酸ナトリウムが、水を処理するために添加された。その後、最も好ましくないゾーンで少なくとも550mVのORPレベルを維持することを可能にする0.10ppmの残留濃度を維持するために、次亜塩素酸ナトリウムが添加された。
【0120】
一旦、次亜塩素酸ナトリウムの全量を放出し、最も好ましくないゾーンのORPが測定され、555mVと決定された。その後の測定が60分ごとに実行された。約30分後に、ORPが(決定された最小ORPから約11%)490mVまで減少し、その時点で、新しい次亜塩素酸ナトリウムが投入された。
【0121】
水の希釈力は、衛生条件を満たすゾーン内の1時間当たりの水浴者の平均数に影響され、より低い水浴者密度について、水のORPは、より高い水浴者密度についてよりも、ゆっくりと減少する。また、ORPの減少は、太陽及び他の変数によっても影響される。
【0122】
この実施例は、衛生条件を満たすゾーンが、直接接触するレクリエーション用の水のためのEPAの特定の微生物学的な規制、及びより厳しい規制ですら満たすことを確認し、衛生条件を満たすゾーンを作り出すために、大きな水域全体の処理を回避することによって、設定した水域部分を処理することによって、少量の化学物質を添加することを可能にしたことを確認した。
【0123】
本実施例において添加した化学物質は、水域全体を処理するのに必要な化学物質の量と比較して、少なくとも二桁下がった。6億9500万立方メートルを越す淡水を湛えるラペル湖(Lake Rapel)の水域全体を処理し、そのレクリエーション目的の使用を可能にするためには、水浴者の安全を保証することができる或る量の化学物質を添加しなくてはならない。実施例(水を処理する前に追加の1ppmが添加された、0.10ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム)と同じORPレベルを維持するために添加されなければならない次亜塩素酸ナトリウムの総量は、およそ764.5トンであり、上述の実施例による水域部分の処理に必要な次亜塩素酸ナトリウムの量の100000倍より以上であり、経済的かつ環境的に実現不可能である。