(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る注射器について好適な実施形態(第1〜第6実施形態)を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
先ず本発明に係る注射器の概略について説明する。注射器は、上述したように、薬剤(注射液)を予め充填したプレフィルドシリンジとして構成されている。この注射器は、針を覆う保護装置が取り付けられて提供されることで、薬剤の漏出が防止され、また衛生性や穿刺前の安全性が高められている。
【0019】
注射器は、使用時に、ユーザにより、保護装置から針が露出されて、穿刺対象である患者に対し針の穿刺及び薬剤の投与(注入)が行われる。薬剤の投与後、注射器は、ユーザにより患者から引き離されることで、露出された針を保護装置に自動的に再収容する。これにより注射器は穿刺後の安全性も高められる。なお、注射器のユーザは、医師や看護師等に限らず、患者自身も含まれる。また、注射器は、プレフィルドシリンジに限定されず、製品提供後に薬液を充填する方式でもよい。
【0020】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る注射器10は、
図1及び
図2に示すように、患者に穿刺される針12と、薬剤が貯留される貯留空間16を有する本体部14と、貯留空間16に挿入され本体部14と相対移動可能なプランジャ18とを有する。また、注射器10には、上記のとおり穿刺前後に針12を覆う保護装置20が設けられている。なお、以下では、保護装置20側を注射器10の先端側、プランジャ18側を注射器10の基端側として説明していく。
【0021】
注射器10の針12は、患者があまり痛みを感じない程度に細径な筒状に構成されることが望ましく、その先端部(針先)は、皮下に容易に刺入されるように鋭利に形成されるとよい。針12の内部には、薬剤を先端から吐出可能な導出路12aが形成されている。
【0022】
本体部14は、貯留空間16を内部に有する胴体部22と、胴体部22の先端側に設けられる針保持部24と、胴体部22の基端側に設けられる引掛部26とを有する。各部位は、本体部14の製造時に一体成形される。
【0023】
胴体部22は、円筒状を呈し、貯留空間16の薬剤貯留量に応じて所定の軸方向長さ及び径寸法に形成される。胴体部22は、貯留空間16の側周囲を囲う円筒状の周壁22aと、周壁22aの先端に連なり貯留空間16の底部を構成する端壁22bとを有する。引掛部26は、周壁22aの基端側外周面から外側に向かって突出形成され、プランジャ18の操作時にユーザの指が掛かるように構成されている。また、引掛部26の外縁は、対向する一対の円弧部26aと、対向する一対の直線部26bとからなる。一方、針保持部24は、端壁22bに連結されている。
【0024】
針保持部24は、
図2及び
図3Aに示すように、針12を保持する部位であり、胴体部22の軸心と同軸の軸心を有するように先端方向に突出している。針保持部24の軸心部には、針12の外径に一致する内径を有し、先端部から貯留空間16にわたって貫通形成された保持孔24aが設けられている。針保持部24の突出量は、注射器10の軸方向に沿って針12を確実に保持するための長さと、注射器10の取扱性向上のための短さ(小型化)とを両立可能に設定される。そのため、針保持部24は、比較的短い距離で針12を確実に保持するように、基端側の支持筒部28と、先端側の膨出筒部32とにより構成されている。また、針保持部24の軸方向の長さは、針12の針保持部24より先端側に突出した部分の軸方向の長さより短い。
【0025】
支持筒部28は、本体部14に比べて充分に細く形成され、その内部には保持孔24aが軸方向に沿って設けられている。針12は、この保持孔24aに挿入された状態で、適宜の固定方法により支持筒部28に固着・保持される。針12の固定方法としては、インサート成形、高周波やレーザーによる熱溶着、接着剤による接着等が挙げられる。
【0026】
また、支持筒部28は、その周囲に軸受リブ30を有している。軸受リブ30は、支持筒部28の外周面の周方向に90°間隔で4つ設けられ、支持筒部28の法線方向に突出している。各軸受リブ30は、支持筒部28の軸方向に沿って端壁22bから膨出筒部32にわたって形成され、その厚みは支持筒部28の外径よりも薄く設定されている。また、支持筒部28から法線方向外側に向かう各軸受リブ30の突出高さは、基端から先端に向かって緩やかに低くなるように設定され、最も低い先端が膨出筒部32に連結している。
【0027】
膨出筒部32は、針12を保持すると共に、後述する保護装置20のキャップ46が取付可能となるように2重の筒構造に形成されている。具体的には、中央部において針12を保持する中央支持部34と、中央支持部34の側方を周回する外側包囲部36と、外側包囲部36の基端側においてテーパ状に形成された括れ部38とを有する。
【0028】
中央支持部34は、略円錐形状に形成され、頂部及び軸心部を通るように保持孔24aを有する。外側包囲部36は、中央支持部34との間でキャップ46を挿入可能に離間している。外側包囲部36の先端側は、各軸受リブ30よりも径方向外側に拡がっている。括れ部38は、外側包囲部36の基端側が各軸受リブ30に向かってつぼまり、各軸受リブ30の先端に連なることで形成される。このようにテーパ状に形成された括れ部38は、保護装置20の内筒42を針保持部24の外側回りに回転させる機能を有している。なお、括れ部38は、テーパ状ではなく、外側包囲部36(支持筒部28)と各軸受リブ30(膨出筒部32)の間に、単に段差状に形成されていてもよい。
【0029】
注射器10に取り付けられる保護装置20は、上記の針保持部24と共に、針12の不用意な露出を防ぐ安全機構21を構成している。この保護装置20は、針12を覆う外筒40(外側部材)と、針保持部24に取り付けられる内筒42(内側部材)とを主構成とし、さらにバネ44(付勢部材)とキャップ46(封止部材)を含んで組み立てられる。
【0030】
保護装置20の外筒40は、
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bに示すように、本体部14の胴体部22よりも一回りだけ大径の外形に形成される。具体的には、外筒40の外径は、引掛部26の最大外径よりも小径に設定されている。なお、引掛部26の最大外径とは、胴体部22の軸に垂直な平面上において、胴体部22の軸から引掛部26の外縁までの最大距離を半径とする仮想円の外径であり、第1実施形態では一対の円弧部26aを含む仮想円の外径である。
【0031】
外筒40の内部には、針保持部24に取り付けられた針12や内筒42、又は胴体部22の先端側を収容可能な中空部48が設けられている。中空部48の先端側は、針12の穿刺前の状態で、針保持部24や内筒42を受け入れる空間を有する。このため、外筒40は、針12、本体部14及び内筒42に対し基端方向に移動可能となっている。また、外筒40は、円筒状の側壁50と、側壁50の先端部において径方向内側に突出する上底壁52とにより構成される。
【0032】
側壁50は、中空部48の側周囲を囲い、針12よりも長い軸方向長さを有する。側壁50の基端側には中空部48に連通する基端開口48aが設けられている。側壁50の内径は、胴体部22の外径よりも若干大きい程度に設定され、外筒40の進退移動の円滑性と、保護装置20(外筒40)の小型化とを実現している。また、側壁50の略中間部から先端側には、一対の案内路54が形成されている。
【0033】
一対の案内路54は、中空部48を挟んだ対向位置に設けられ、軸方向に長尺に形成されている。案内路54は、中空部48と外筒40の外部とを連通し、後述する内筒42の突起76を案内する機能を有する。案内路54は、軸方向中間位置54aよりも基端側で二股に分岐し、軸方向中間位置54aよりも先端側で直線状に延びる一連の長孔となっている。
【0034】
具体的には、案内路54は、軸方向中間位置54aから周方向且つ基端方向に斜めに延び、途中位置から基端方向に多少延びる第1路56を有する。第1路56の基端側は、針12の穿刺前に突起76が配置される穿刺前位置56aとなっている。第1路56の傾斜部分を構成する一側辺56bは、案内路54に対して斜めに開くように切り欠かれ、突起76との接触部分(摩擦)が減るように構成されている。
【0035】
また、案内路54は、第1路56の先端部(案内路54の軸方向中間位置54a)に連なり、先端方向に直線状に延びる第2路58を有する。第2路58の先端側は、針12の穿刺時に突起76が移動してくる穿刺時位置58aとなっている。第2路58を構成する一側辺58bも、第1路56の一側辺56bと同様に、斜めに開くように切り欠かれている。
【0036】
さらに、案内路54は、第1路56の先端部(第2路58の基端部:案内路54の軸方向中間位置54a)に連なり、基端方向に直線状に延びる第3路60を有する。第3路60の基端側は、針12の穿刺後に突起76が移動してくる穿刺後位置60aとなっている。第1路56と第3路60は、所定角度(例えば、45°以下)で交わり、その交差部分には側壁50の頂部54bが形成されている。
【0037】
また、第3路60の基端側途中位置には、側壁50をL字に切り欠いた切欠溝62が連なっている。切欠溝62は、側壁50の周方向に若干延び、さらにその周端から先端方向に所定長さ(周方向よりも長く)延びている。この切欠溝62により、第3路60に隣接する側壁50には、弾性的に変位可能なフック部64(規制部63)が形成される。
【0038】
フック部64は、先端において側壁50に連なることで基端側を径方向に変位させる弾性片66と、弾性片66の内側に突出形成された係止凸部68とを備える。弾性片66は、切欠溝62の軸方向長さに応じて、基端側を適度に変位可能な弾性力を有する。係止凸部68は、側面断面視で略直角三角形状に形成され、弾性片66の内面に対し直交方向に突出する基端側の係止面68aと、係止面68aの頂部から弾性片66に向かって傾斜する先端側の傾斜面68bとを有する。係止面68aは、内筒42を引っ掛ける機能を有している。なお、フック部64は、案内路54に隣接する位置に設けられずに、案内路54から離れた位置に設けられていてもよい。例えば、案内路54とは周方向の異なる位置において側壁50をU字状に切り欠いた切欠溝(図示せず)により、フック部64を形成してもよい。
【0039】
一方、外筒40の上底壁52は、側壁50の先端内側を周方向に沿って突出することで、中空部48の内径よりも狭い開口部70を作っている。この開口部70は、中空部48に連通し、穿刺時に針12を露出させ、穿刺前にはキャップ46により封止される。つまり上底壁52は、キャップ46を保持する封止部材保持部53として機能を有する。また、上底壁52の基端面は、バネ44の先端部を受ける座として平坦状に形成されている。なお、封止部材保持部53は、上底壁52に設けるだけでなく、上底壁52よりも基端側の外筒40内等に形成されてもよい。この場合、後述するキャップ46の取付突部84の形成位置を適宜合わせればよく、また封止部材保持部53はバネ44の座を兼ねることもできる。
【0040】
保護装置20の内筒42は、
図3A、
図3B及び
図5Aに示すように、針保持部24の周囲に取り付けられる筒部71と、筒部71の所定位置から径方向外側に突出する突起76とを有する。また筒部71は、針保持部24の側方を囲う基部72と、基部72の先端に形成されたフランジ部74(係合部)とにより構成される。内筒42の軸方向の長さは、案内路54の外筒40の軸と平行な方向の長さ(第2路58と第3路60とを足した長さ)よりも短く、また針保持部24の軸方向の長さよりも短い。これにより、内筒に案内路を設け、外筒に突起を設けた構成と比較して、内筒42の軸方向の長さが短くなり、注射器10全体の小型化が図られる。
【0041】
内筒42の基部72は、円筒状に形成され、その軸心部には、軸方向に貫通し、針保持部24が挿入される取付孔73が設けられている。取付孔73を構成する内周面は、基端側が針保持部24(膨出筒部32)に比べて大径に形成される一方で、先端側には括れ部38に対応する隆起部72a(取付部)が形成されている。隆起部72aは、取付孔73を、基部72の略中間部から先端側に向かって除々に小径とし、括れ部38の外径に略一致する頂部を基点に先端側に向かって除々に大径としている。内筒42は、針保持部24の括れ部38に対し隆起部72aが係合することにより組み付けられる。なお、針保持部24と内筒42の組付は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、隆起部72aを省略し、取付孔73の内径を支持筒部28(外側包囲部36)よりも小さくして内筒42の先端を括れ部38に係合させてもよい。この場合、括れ部38は、テーパ状ではなく、支持筒部28と膨出筒部32の間に形成された単なる段差でもよい。
【0042】
また、基部72の外周面には、先端から基端に向かって所定深さ切り欠いた一対の基部切欠部78が形成されている。一対の基部切欠部78は、基部72の軸心を挟んだ対向位置に設けられる。この基部切欠部78は、針保持部24に内筒42を装着する際に、筒部71の上部同士を互いに離間させて、括れ部38の対向位置に隆起部72aを容易に移動させる。なお、内筒42は、先端から基端まで1つの切欠部により切り欠いた形状(すなわち断面C字形状)に形成されてもよい。この場合、内筒42を針保持部24に装着する際に、先端側からだけでなく、針保持部24の軸に対して垂直な方向から装着することもできる。
【0043】
フランジ部74は、基部72の先端から径方向外側に突出し、基部72の周方向に沿って円弧状に形成されている。フランジ部74は、基部切欠部78によって分かれた基部72の両方に一対で設けられる。一対のフランジ部74は、内筒42において最も径方向外側に突出している。フランジ部74の突出量は、フランジ部74の外周面が外筒40の内周面(側壁50)に近接する程度に設定される。従って、外筒40は、進退時にフランジ部74との摺動抵抗が充分に抑えられつつ、フランジ部74によって進退方向が案内される。また、フランジ部74(筒部71)の外径は、胴体部22の外径以下にすることが好ましい。これにより、外筒40の内周面が胴体部22の外周面に近接する程度に外筒40の形状を設定することができるため、外筒40の大型化が抑えられ、注射器10全体の小型化が図られる。
【0044】
フランジ部74の外周面の所定位置(一対の基部切欠部78の一方側に連なる付近)には、フランジ部74を切り欠いて基部72の外周面を露出させたフランジ切欠部80が一対形成されている。このフランジ切欠部80は、外筒40の後退時にフック部64を通過させる通過許容部81となっている。
【0045】
通過許容部81は、フック部64(係止凸部68)が引っ掛からないための筒部71の許容空間であり、基部72の外方、基部切欠部78、フランジ切欠部80によって構成される(
図9A〜
図9Cも参照)。なお、通過許容部81は、上記構成に限定されず、例えば、突起76が穿刺前位置56aにある状態で、外筒40の係止凸部68が基部切欠部78に重なる位置にある場合、フランジ切欠部80を設けなくてもよい。
【0046】
また、
図5Bに示す変形例のように、内筒42Aの筒部71Aは、フランジ部74を備えず、基部72A自体の外径が上記フランジ部74と同程度に設定されていてもよい。この場合、通過許容部81Aは、基部72Aの外周面を切り欠いた溝部79として形成すればよい。溝部79の形状は、外筒40の軸方向の移動量と内筒42Aの回転量に応じて適宜設定される。また、突起76は、基部72Aの外周面の所定位置から突出する構成であればよい。
【0047】
図5Aに戻り、突起76は、一対のフランジ部74の外周面の所定位置(基部切欠部78に対し周方向に位相が90°ずれる位置)にそれぞれ形成されている。一対の突起76は、外筒40との組付状態で、外筒40の内周面よりも径方向外側に突出し、外筒40の案内路54に挿入される。この突起76は角柱状に形成されている。また、突起76の基端側で内筒42の回転方向と反対側には、内筒42の軸方向に対し基端側に向かって該回転方向に傾斜した傾斜部76a(
図8A参照)が形成されている。
【0048】
なお、突起76の形状は特に限定されるものではなく、円柱状等に形成されていてもよい。また、フランジ部74や突起76は、筒部71の先端側だけでなく、案内路54の形状やフック部64(係止凸部68)の位置等に応じて、筒部71に適宜設けられればよい。この場合、フランジ部74は、フック部64(係止凸部68)に係合する部分にだけ設けられていてもよい。
【0049】
内筒42の先端面は、基部72及びフランジ部74が連なることで構成される。この先端面は、平坦状に形成されており、バネ44の基端部を安定的に受ける座となっている。
【0050】
保護装置20のバネ44は、
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、外筒40の上底壁52の基端面と内筒42の先端面の間に配置される。バネ44は、穿刺前の段階で針12が露出しないように、外筒40の上底壁52を内筒42の先端面から所定間隔離間させる軸方向長さを有する。このバネ44は、外筒40を先端方向に付勢することで、穿刺時に外筒40が後退した際に縮み、穿刺後に弾性復帰することで、外筒40を先端方向に進出させる。
【0051】
また、保護装置20のキャップ46は、ゴム材料等により形成され、穿刺前に外筒40の開口部70に装着される。このキャップ46は、先端側から基端側に向かって、ツマミ部82、取付突部84及び延在筒部86を備える。ツマミ部82は、外筒40からキャップ46を取り外す際にユーザが把持するための部位であり、把持し易いように適宜な突出量及び厚みを有している。
【0052】
取付突部84は、キャップ46の軸方向中間位置において、外筒40の上底壁52に係合可能となるように径方向外側に突出形成される。具体的には、取付突部84は、上底壁52よりも厚い肉厚を有する円盤状に形成され、その側周面には、周方向に沿って取付溝84aが設けられる。外筒40とキャップ46の取付状態では、この取付溝84aに上底壁52(開口部70の口縁)が嵌り込むことで、取付突部84が開口部70を液密に封止する。ゴムから構成される取付突部84は、ツマミ部82から引き抜き力を受けると、外筒40から比較的容易に外れる。
【0053】
延在筒部86は、取付突部84の基端面から基端方向に突出し、その内部には軸方向に沿って所定深さを有する空洞部86aが形成されている。針12は、外筒40とキャップ46の取付状態で、この空洞部86aを通して空洞部86aの先端側に至り、その針先が延在筒部86の肉部分である封止部86cに挿入され、針12の先端が封止されている。これにより、キャップ46は、針先の露出を確実に防ぐと共に薬剤の漏洩も阻止することができる。
【0054】
また、延在筒部86の基端側には、外筒40とキャップ46の取付状態で、中央支持部34と外側包囲部36の隙間に入り込む突出部88が設けられている。突出部88の外径は、延在筒部86の外径よりも小径に形成されており、突出部88は比較的容易に隙間に入り込む。
【0055】
延在筒部86の基端側には、上述した小径の突出部88により外側包囲部36に対向する対向面86bが形成されている。キャップ46は、取付状態において延在筒部86の対向面86bと針保持部24が接触し合うことで、外筒40の不用意な後退を防止する。つまり、外筒40を後退させようとしても、外筒40に取り付けたキャップ46の対向面86bが針保持部24に支持されるので、外筒40とキャップ46の後退が共に規制される。また、突出部88が外側包囲部36の基端(中央支持部34と外側包囲部36の谷部)に嵌ることで、キャップ46は、外筒40の後退を一層確実に規制することができる。
【0056】
キャップ46は、対向面86bと外側包囲部36の先端面が密着し、且つ突出部88の外周面と外側包囲部36の内周面が密着することで、空洞部86aを確実に封止することができる。勿論、上記の密着箇所はいずれか一方のみでもよい。また、突出部88が外側包囲部36の内側に挿入されることで、キャップ46が針保持部24に対してずれることが防止され、密着状態を確実に維持することができる。注射器10は、このキャップ46を取り外すことにより穿刺可能状態となる。
【0057】
図1に戻り、注射器10のプランジャ18は、注射器10がプレフィルドシリンジであることで、使用前まで取り付けられない構成とすることができる。すなわち、貯留空間16に薬剤が充填された注射器10は、貯留空間16の基端側をガスケット18aのみにより封止した状態で適宜な場所に保管可能である。
【0058】
また、注射器10は、プレフィルドシリンジとして薬剤を充填する前の状態、すなわち、ガスケット18a及びプランジャ18が取り付けられていない状態で輸送や保管がなされる。この場合、注射器10は、薬剤を充填するまで、例えば
図6及び
図7に示すような専用の収納容器90に収納される。以下、プレフィルドシリンジとして薬剤を充填する前の注射器10の保管について具体的に説明する。注射器10は、滅菌可能もしくは滅菌された状態で収納容器90に複数本まとめて収納される。注射器10の滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌、放射線もしくは電子線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌を適用することができる。
【0059】
収納容器90は、例えば、容器体92、保持部材94及び蓋部材96により構成される。容器体92は、上面が開口し底壁92aと包囲壁92bによって囲われた内部空間93を有する箱状に形成されている。内部空間93は、複数の注射器10を垂下した状態で収容可能な形状を呈している。すなわち、内部空間93を囲う包囲壁92bは、上下の長さが注射器10の全長よりも長く形成されている。包囲壁92bの上部寄りの所定箇所には、側方(外側)に拡がる段差92cが設けられている。この段差92cには保持部材94が載置される。さらに、包囲壁92bの上部には、側方に突出する側方突部92dが設けられている。この側方突部92dの上面には、ヒートシール用凸部92eが設けられ、このヒートシール用凸部92eによって蓋部材96が固着される。
【0060】
保持部材94は、複数の注射器10を同一高さで保持する部材であり、容器体92の段差92cに対応する平面形状に形成された平板部94aと、平板部94aにマトリクッス状に設けられる突出保持部94bとを有する。突出保持部94bは、平板部94aの上面から上方向に突出し、注射器10の胴体部22を挿入可能な孔部94cを有する。この孔部94cの孔径は、注射器10の引掛部26(一対の円弧部26a間)の幅よりも狭く形成されており、突出保持部94bは、引掛部26を引っ掛けて注射器10を吊り下げた状態とする。
【0061】
容器体92を覆う蓋部材96は、側方突部92dに設けられたヒートシール用凸部92eに、その周縁部が剥離可能にヒートシールされる。蓋部材96は、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌のために菌やウイルス等の微粒子が透過不可能で、水蒸気やエチレンオキサイドガス等の滅菌ガスが透過可能な滅菌ガス流通性を有するものが好適である。蓋部材96の構成材料としては、例えば、合成樹脂製不織布、合成樹脂製多孔質膜等が挙げられる。
【0062】
以上のように構成される収納容器90は、
図7に示すように、注射器10の先端(キャップ46の先端)が容器体92の底壁92aに接触しないように、注射器10を保管する。これにより、収納容器90の内部空間93において水蒸気の滞り等が抑止される。
【0063】
本実施形態に係る注射器10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用及び効果を説明する。
【0064】
プレフィルドシリンジ用注射器として構成される注射器10は、上述したように、薬剤が充填されるまで、収納容器90に収納された状態で輸送・保管することができる。ところで、収納容器90は、注射器10の先端が非接触となるように吊り下げる構成となっていることで、そのサイズが大きくなる傾向がある。このため、第1実施形態に係る注射器10は、保護装置20を備えつつその全長が保護装置20を装着していない注射器と同程度の長さになるように、内筒42を可及的に短く設定している。
【0065】
ここで、保護装置20の軸方向の長さが長くなる要因は、針12の露出量に応じた案内路54を備えなければならないという理由による。つまり、保護装置20は、突起76を案内する案内路54を、外筒40と内筒42のいずれかに有する。そのため、例えば内筒42に案内路54を、外筒40に突起76を設けた構成も考えられるが、このように内筒42に案内路54を設けた場合は、その分だけ内筒42の軸方向長さを長くしなければならない。例えば、内筒42を先端方向に向かって長くすると、これに合わせて針12も長く形成する必要があり、結果的に注射器10の全長が長くなる。また例えば、内筒42を基端方向に向かって長くすると、内筒42は胴体部22の先端部を覆った構成とする必要がある。そのため、内筒42の外径が胴体部22の外径よりも大きくなり、これに合わせて外筒40の外径、すなわち保護装置20の外径も大きくなって、注射器10の大型化を招く。さらにこの場合は、保護装置20の外径が引掛部26の最大外径を超え、収納容器90の保持部材94の孔部94cに注射器10を挿入できなくなる恐れがある。
【0066】
第1実施形態に係る保護装置20は、針12を覆うための長さが元々必要である外筒40に案内路54を設けている。これにより、内筒42は、その軸方向長さを案内路54の軸方向長さよりも短く、且つ、その外径を胴体部22の外径よりも小さく設定することができる。よって、保護装置20は、外筒40及び内筒42を必要最小限の長さ及び外径とする、すなわち小型化を図ることが可能となる。これにより、注射器10は、保護装置20を有していても、その全長を保護装置20が装着されていない注射器と同程度の長さにすることができ、保護装置20の外径も引掛部26の最大外径より小さくなる。よって、この注射器10は、従来から使用している収納容器90をそのまま使い回すことができる。
【0067】
特に、内筒42の軸方向長さは、針保持部24の軸方向長さよりも短く設定するとよい。針保持部24は、針12を保持するために所定長さ必要であり、内筒42は、この針保持部24の周囲のみを囲うことで小型化が一層促進される。なお、第1実施形態に係る内筒42の軸方向長さが、針保持部24の軸方向長さよりも若干短い程度に設定している理由は、内筒42の安定的な回転、及び外筒40との安定的な係合を実現させるためである。この内筒42の軸方向長さは短くてもよく、例えば、括れ部38の周囲を囲うリング状に形成されていてもよい。
【0068】
収納容器90に収納されたプレフィルドシリンジ用の注射器10は、薬剤が充填され、本体部14の貯留空間16がガスケット18aで封止されたプレフィルドシリンジとしてユーザに提供される。プランジャ18が装着されていない状態でプレフィルドシリンジが提供された場合、ユーザは、患者に注射を行う際に、ガスケット18aにプランジャ18(
図1参照)を取り付ける。その後は、キャップ46のツマミ部82を把持して外筒40からキャップ46を取り外して穿刺可能状態とする(
図8A参照)。キャップ46の取外し前までは、このキャップ46によって、本体部14に対する外筒40の後退(基端方向の移動)が規制されている。よって、注射器10は、キャップ46の取外し前(例えば、プランジャ18の取付時等)に、針12の露出を確実に防ぎ、突起76が案内路54の穿刺前位置56aから移動することも阻止する。また、外筒40は、穿刺前位置56aに突起76が配置されていることで、案内路54の縁部が突起76に引っ掛かるので、本体部14に対し進出して本体部14から離脱することも防止される。さらに、キャップ46は、穿刺の直前まで取り付けられていることにより、針12の衛生性を保つこともできる。
【0069】
ユーザは、キャップ46の取外し後、患者の穿刺箇所(腕等)に外筒40の先端部を接触させて簡易に固定し、外筒40に対し本体部14を進出させていく。相対的には、外筒40が本体部14に対して後退する。本体部14の進出により、針保持部24に保持されている針12は、
図8Bに示すように、外筒40の開口部70を介して先端側に露出されていく。この際、バネ44は、弾性変形して軸方向に縮む。
【0070】
内筒42の突起76は、本体部14の進出にともない、穿刺前位置56aから第1路56に沿って先端側に移動していく。このため、針保持部24に回転自在に取り付けられている内筒42は、第1路56の傾斜に応じて周方向に回転する。内筒42は、軸受リブ30により接触面積が低減されて針保持部24に取り付けられているので、軸受リブ30に対しスムーズに回転することができる。
【0071】
また、
図9Aに示すように、突起76が穿刺前位置56aから移動する初期段階(突起76が第1路56に沿って先端方向だけに移動する箇所)では、内筒42のフランジ切欠部80が外筒40の係止凸部68に対向している。このため、内筒42は、係止凸部68に引っ掛かることなく容易に進出することができる。そして、フランジ部74が係止凸部68を越えると、第1路56の傾斜に沿って内筒42の回転が行われる。突起76が案内路54の軸方向中間位置54aに移動した段階では、フランジ部74が係止凸部68の周方向に重なる位置に配置される。
【0072】
その後、突起76は、案内路54の軸方向中間位置54aを介して第2路58に進出し、本体部14がさらに進出すると、
図8Cに示すように、第2路58に沿って先端側の穿刺時位置58aに移動する。突起76が穿刺時位置58aに移動した段階では、針12が外筒40の先端から殆ど露出し、患者の体内に穿刺された状態となる。ここで、注射器10は、針保持部24が比較的短いことで、穿刺時に本体部14の進出量と針12の露出量をユーザの感覚に一致させ易くなっている。よって、ユーザは、針12を適切に操作し穿刺することができる。
【0073】
突起76が穿刺前位置56aから穿刺時位置58aに移動する課程では、
図9A及び
図9Bに示すように外筒40の内側において、係止凸部68が内筒42の先端から基端を通過する。この際、係止凸部68が通過許容部81を通過するので、外筒40の後退と内筒42の回転とがスムーズになされる。
【0074】
針12の穿刺状態で、ユーザは、本体部14の基端側に挿入されているプランジャ18を進出することで、本体部14の貯留空間16に充填されている薬剤を針先から吐出させる。これにより、患者に対する薬剤の投与がなされる。
【0075】
薬剤の投与後は、本体部14を患者から引き離すように後退移動させる。この際、外筒40は、縮小したバネ44の弾性復帰により押圧力を受け、本体部14に対し進出する。穿刺時位置58aにあった突起76は、外筒40の進出により第2路58を基端方向に直線的に移動し、第3路60に案内される。第3路60に入り込む際には、突起76の傾斜部76aが頂部54bに案内されることも可能であり、突起76を第3路60に確実に移動させる。
【0076】
外筒40の進出は、バネ44の弾性復帰にともない、突起76が第3路60の基端側の穿刺後位置60aに移動するまで継続される。突起76が穿刺後位置60aに移動した段階では、突起76が第3路60の基端側の縁部に接触することで、外筒40の進出が停止する。
【0077】
また、
図9Cに示すように、突起76が穿刺後位置60aに移動する課程では、フランジ部74が係止凸部68の傾斜面68bに接触し、フック部64の基端側を径方向外側に弾性変形させる。これにより、フランジ部74は、係止凸部68を乗り越えるように通過して、係止凸部68よりも基端側に移動する。フランジ部74の通過後は、フック部64が弾性復帰することで、係止凸部68の係止面68aが内筒42(フランジ部74)の先端面に引っ掛かる。つまり、突起76が穿刺後位置60aに移動した状態では、内筒42のフランジ部74が外筒40のフック部64に係合することで、内筒42に対する外筒40の後退を規制することができる。よって、注射器10は、外筒40の後退による針12の露出が防止されるので、廃棄処理等において、ユーザは、注射器10を安全に取り扱うことができる。
【0078】
以上のように、注射器10は、内筒42に設けられた突起76と外筒40に設けられた案内路54とにより、針12の穿刺時に外筒40が後退した際に、案内路54に配置された突起76を動作させて内筒42を回転させることができる。そのため、外筒40のフック部64と内筒42が互いに係合する配置関係を容易に構築することが可能となり、穿刺後に外筒40内に針12を収容した状態で、外筒40の後退を規制することができる。よって、注射器10は、穿刺後に、外筒40からの針12の露出を防ぐことができるので、安全性が高まる。
【0079】
この場合、注射器10は、穿刺後位置60aにて外筒40のフック部64が内筒42に引っ掛かることで、外筒40の後退を内筒42により簡単に規制することができる。また、内筒42がフランジ部74及び通過許容部81を有することで、注射器10は、針12を穿刺する際に通過許容部81を介して外筒40の係止凸部68の通過が許容されるので、外筒40の移動を容易に行うことができる。そして、穿刺後にフランジ部74が係止凸部68に引っ掛かることで、外筒40の後退をより確実に規制することができる。
【0080】
さらに、内筒42は、その軸方向長さが案内路54の軸方向長さよりも短い形状(小型)とすることができるため、注射器10全体の小型化を図ることができる。これにより、注射器10は、保管や持ち運びが容易となり、また短く構成された注射器10の先端部分によって、針12の操作性が向上し、針12を効率的且つ精度よく穿刺することができる。またさらに、内筒42が針保持部24に合う程度の軸方向長さとすることで、注射器10の本体部14の形状について特に変更を要求することがない。よって、保護装置20は、従来の注射器に対しても容易に取り付けることが可能な汎用性を有するものとなる。
【0081】
なお、本発明に係る注射器10は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の形態をとり得る。例えば、外筒40に設けられる案内路54は、外部に連通するように形成されるだけでなく、側壁50の内面に溝状に形成されていてもよい。これにより、側壁50は、案内路54を有していても、面一の外観を呈することになり、ユーザや外部環境等による突起76への影響(干渉等)を防ぐことができる。
【0082】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る注射器10Aについて、
図10〜
図13Cを参照して説明していく。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る注射器10と同一の構成、又は同一の機能を有する構成については同一の符号を付しその詳細な説明については省略する。
【0083】
第2実施形態に係る注射器10Aは、保護装置20A(外筒100及び内筒102)が第1実施形態に係る注射器10の保護装置20と異なっている。具体的には、
図10、
図11A及び
図11Bに示すように、外筒100は、中空部48を構成する側壁50の内面に誘導用溝部104を備える。一方、内筒102(
図10参照)の突起106は、この誘導用溝部104の底面に略一致する突出量に設定されて、フランジ部118から側方に突出している。
【0084】
誘導用溝部104は、外筒100と内筒102の組付時に、内筒102の突起106を外筒100の基端側から案内路54に誘導するための通路である。この誘導用溝部104は、案内路54の穿刺前位置56aの基端側に形成された一対の合流路108(第1溝)と、一対の合流路108の基端側に連なる周方向に幅広な進入路110(第2溝)とを有する。
【0085】
一対の合流路108は、内筒102の突起106を案内路54に最終的に誘導するための通路であり、その幅は、案内路54の第1路56の幅と略一致する幅に設定されている。また、各合流路108は、内筒102の挿入方向に平行な直線状に形成されている。合流路108と案内路54の間には、側壁50の内面が存在し、この部分は合流路108と案内路54を隔てる隔壁112として機能する。合流路108の先端側は、隔壁112に向かって傾斜するテーパ面108aに形成されており、基端側から移動してきた突起106を案内路54内に容易に移行させることができる。
【0086】
進入路110は、外筒100の内面側の展開視で、一対の合流路108の入口を先端頂部とし、先端頂部に対し周方向に90°位相がずれる箇所を一対の基端頂部110aとする波状の溝辺110bにより構成されている。進入路110の溝辺110bは、基端頂部110aから合流路108に向かって内筒102の周方向(回転方向)且つ先端方向に滑らかに傾斜している。また、進入路110の基端側は、外筒100の基端開口48aに連なっている。
【0087】
以下、
図12A〜
図12Cに基づき、外筒100と内筒102の組み付けについて説明する。保護装置20Aの組立には、針保持部24に回転自在に取り付けられた内筒102を、外筒100の基端開口48aから挿入していく。この際、内筒102の突起106の周方向位置は、外筒100の誘導用溝部104に対しいずれにあってもよい。例えば、
図12Aに示すように、突起106が基端頂部110aに対向している場合は、挿入にともない突起106が基端頂部110aに接触して、基端頂部110aに連なる一対の溝辺110bのどちらかに突起106を変位させる。つまり、突起106は、溝辺110bに案内されて内筒102が回転することで、溝辺110bに沿って進入路110上を移動していく。
【0088】
そして、突起106は、溝辺110bの先端頂部に連なる合流路108に誘導されることになり、さらに合流路108内を直進して、
図12Bに示すように合流路108の先端部に至る。その後、突起106は、合流路108のテーパ面108aにより、該合流路108から抜け出して隔壁112を乗り越える。これにより、突起106は、
図12Cに示すように、案内路54の穿刺前位置56aに簡単に配置される。
【0089】
このように、注射器10Aは、外筒100が誘導用溝部104を備えることで、保護装置20Aの組立において内筒102の突起106を案内路54にスムーズに誘導することができるので、組立作業を効率的に行うことができる。また、組立時に、外筒100や内筒102の破損等を抑止することもできる。
【0090】
また、注射器10Aの組立では、キャップ46が外筒100に予め取り付けられた状態で針保持部24に装着された内筒102を挿入する。注射器10Aは、誘導用溝部104の合流路108を内筒102の挿入方向に平行な直線状に形成していることで、突起106がこの合流路108に挿入された後で、針12の針先がキャップ46の封止部86c(
図3A参照)に刺さる構成となっている。これにより、組立時には、封止部86cに対し針12の針先を真っ直ぐに刺すことができる。また、突起106が隔壁112を乗り越える前に、外筒100に対する内筒102の回転が合流路108で規制されるため、突起106が隔壁112を乗り越える際に内筒102が回転し難く、突起106を確実に案内路54に誘導することができる。
【0091】
図11A及び
図11Bに戻り、注射器10Aは、外筒100に形成されるフック部114(規制部63A)も、第1実施形態に係る注射器10のフック部64と異なっている。このフック部114は、内側に係止凸部68が設けられておらず、弾性片66と、弾性片66の基端側において直角三角形状に形成されて周方向(案内路54側)に突出し、突起106に直接引っ掛かる爪部116とを備える。また爪部116は、穿刺後位置60aの先端近傍の案内路54内に突出し、外筒100の周方向に対して平行な基端側の係止辺116aと、外筒100の軸方向に対して傾斜する先端側の傾斜辺116bとを有する。内筒102は、突起106が係止辺116aに係合することで外筒100の後退を規制する。
【0092】
一方、
図12A及び
図12Bに示すように、内筒102は、第1実施形態に係る係止凸部68を通過させるためにフランジ部74に設けていた通過許容部81を備えない構成となっている。つまり、内筒102において、基部切欠部78は、筒部71の上部を開かせて針保持部24に装着するために設けられる。このためフランジ部118は、フランジ切欠部80(
図5A参照)を備えずに基部72の先端側の周方向に沿って突出形成されている。なお、内筒102は、突起106を有していれば、その形状について特に限定されるものではなく、例えば、フランジ部118がない筒状やリング状であってもよい。
【0093】
以下、
図13A〜
図13Cに基づき、第2実施形態に係る注射器10Aの患者に針12を穿刺した後の動作について説明する。穿刺時に針12が露出された段階では、
図13Aに示すように突起106が案内路54の穿刺時位置58aに配置されている。この状態で、患者から針12を引き抜くように本体部14を離間させると、バネ44の弾性復帰に基づき、本体部14と相対的に外筒100が進出する。穿刺時位置58aにあった突起106は、外筒100の進出により第2路58を基端方向に直線的に移動し、
図13Bに示すように、第3路60の基端側の穿刺後位置60aまで移動する。
【0094】
突起106が穿刺後位置60aに移動する課程では、突起106がフック部114(爪部116)の傾斜辺116bに接触し、フック部114を弾性変形させることにより、突起106が爪部116を乗り越える。その結果、突起106は、爪部116よりも基端側に移動して、爪部116の係止辺116aが突起106に引っ掛かる。つまり、突起106が穿刺後位置60aに移動した状態では、内筒102の突起106が外筒100の爪部116に係合することで、内筒102に対する外筒100の後退を規制することができる。
【0095】
このように、フック部114(爪部116)が突起106に直接引っ掛かることで、注射器10Aは、第1実施形態に係る注射器10と同様の効果を得ることができる。また注射器10Aは、内筒102に通過許容部81を設けずに済むため、保護装置20Aをより簡単な構成することができる。
【0096】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る注射器10Bは、
図14Aに示すように、外筒120(保護装置20B)に設けられる案内路122の構成が第1及び第2実施形態に係る注射器10、10Aと異なる。外筒120以外の構成は基本的には注射器10と同一であり、
図1及び
図2を参照されたい。
【0097】
外筒120の案内路122は、外筒120の進退時における内筒42の突起76の移動経路として、第1路124、第2路126、第3路128が順次連なる長孔に形成されている。
【0098】
第1路124は、針12(
図2参照)の穿刺前に突起76が配置される穿刺前位置124aを基端部側に有し、外筒120の先端方向に直線状に延びている。第2路126は、第1路124の先端部に連なり、外筒120の周方向且つ基端方向に斜めに延びている。この場合、第1路124と第2路126の連結箇所が穿刺時位置126aとなっている。第3路128は、第2路126の基端部に連なり、第1路124と周方向にずれた位置で、外筒120の基端方向に直線状に延びている。第3路128の基端部は、針12の穿刺後に突起76が配置される穿刺後位置128aとなっている。
【0099】
第1路124と第3路128の間には、外筒120を構成する側壁120aにより分割壁130が形成される。この分割壁130は、外筒120の先端方向に延び第3路128と第2路126の連結箇所で第2路126の傾斜に沿って屈曲し、所定量突出した屈曲片132を有する。第1路124と第2路126は、屈曲片132により部分的に隔てられている。屈曲片132は、第1路124から第2路126に移動することを許容する一方で、第2路126から第1路124に戻ることを規制し、第2路126に沿って案内する機能を有する。
【0100】
第3実施形態に係る注射器10Bは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、針12の穿刺時の外筒120と内筒42(突起76)の動作について説明する。針12の穿刺前は、外筒120が針12及び内筒42を覆った状態にあり、突起76は、
図14Aに示すように第1路124の穿刺前位置124aに配置されている。
【0101】
針12の穿刺時には、本体部14が進出し、外筒120が内筒42と相対的に後退することで、突起76が第1路124内を直進し、
図14Bに示すように、屈曲片132に接触する。さらに、本体部14を進出させると突起76が屈曲片132を弾性変形させて屈曲片132を乗り越え、
図14Cに示すように、穿刺時位置126aに至る。この突起76の乗り越えにより音や抵抗がユーザに伝わるので、ユーザは、針12の穿刺を認識することができ、薬剤の投与を良好に開始することができる。
【0102】
薬剤の投与後、本体部14を後退させるとバネ44により外筒120が内筒42と相対的に進出する。この際、突起76は、屈曲片132に接触することで、
図14Dに示すように第2路126に沿って移動する。特に、突起76に設けられた傾斜部76aが、屈曲片132に積極的に案内されることになり、第1路124に戻ることが阻まれる。さらに、外筒120が進出すると、突起76は第2路126から第3路128に移動し、第3路128に沿って基端方向に直進する。そして、
図14Eに示すように、穿刺後位置128aに突起76が移動すると、第1実施形態と同様のフック部64(規制部63)に形成された係止凸部68(
図9C参照)に内筒42が引っ掛かることになり、外筒120と内筒42の係合がなされる。これにより、内筒42に対する外筒120の後退が規制され、針12の露出を防止することができる。
【0103】
すなわち、第3実施形態に係る注射器10Bも、第1実施形態に係る注射器10と同様に効果を得ることができる。要するに、注射器10、10A、10Bは、案内路54、122の形状について特に限定されず、外筒40、100、120の進退により内筒42、102を回転させて、相互の部材の係合を実現し得る種々の構成を適用できる。
【0104】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態に係る注射器10Cについて、
図15〜
図18を参照して説明する。注射器10C(保護装置20C)は、
図15に示すように、外筒140の外周面を覆うカバー144を備えた点で、第1〜第3実施形態に係る注射器10、10A、10Bと異なる。また
図16に示すように、保護装置20Cは、カバー144の他に、外筒140、内筒142及びキャップ146の構成も保護装置20、20A、20Bと多少異なっている。
【0105】
具体的に、外筒140は、中空部48の周囲を囲う側壁50と、側壁50の先端部に連なり側壁50よりも小径に形成された筒状の突出壁148とを備える。側壁50には、一対の案内路54が設けられると共に、一対のストッパ部150が基端側に一体成形されている。
【0106】
案内路54は、基本的に第2実施形態と同様に形成される。ただし、案内路54に設けられるフック部152(規制部63B)の形状が多少異なる。具体的に、フック部152は、弾性片66と、弾性片66の基端側に設けられる爪部153とを備える。爪部153は、第2実施形態の爪部116よりも周方向(案内路54側)に大きく突出している。爪部153の係止辺153aは、
図17Aに示すように、両端部に対し中央部が先端方向に若干窪み、穿刺後位置60aに向かって開口したV字溝153cを有する。係止辺153aは、外筒140が前進して内筒142が穿刺後位置60aに移動した場合に、外筒140が再後退する動作をしてもV字溝153cに内筒142の突起154を導くことができる。なお、傾斜辺153bについては、傾斜辺116bと同様に形成されている。
【0107】
また、案内路54(第3路60)に設けられる穿刺後位置60aは、周方向に沿って若干幅広(例えば、第2路58の幅に対し多少広い程度)に形成されている。さらに、穿刺後位置60aは穿刺前位置56aよりも基端側に位置している。
【0108】
一対のストッパ部150は、上記一対の案内路54の基端側で、各案内路54に対し位相が周方向に約90°ずれる位置に形成されている。ストッパ部150は、側壁50の周面からカバー144の厚みに略一致する高さ突出しており、カバー144の装着位置を位置決めする。ストッパ部150は、外筒140の基端から先端方向に向かって、案内路54の基端部(穿刺後位置60a)を越え、且つ爪部153の基端位置まで延びている。
【0109】
一方、突出壁148は、側壁50よりも小径の外径を有することで、
図17Bに示すように内側の中空部48も狭めている。従って、側壁50の内周面と突出壁148の内周面の間には段差149が形成され、この段差149は、バネ44の先端部を受ける座となる。また、突出壁148の上端部の内周面には、径方向内側に突出する係止爪148a(封止部材保持部53A)が設けられている。係止爪148aは、突出壁148の内面に沿って環状に周回している。
【0110】
この外筒140は、透明又は半透明に構成されることが好ましい。外筒140が透明であると、例えば不透明なカバー144を装着しても内筒142が穿刺後位置60aに移動した際に、内筒142の基端部が透けて見えるようになる。これにより内筒142の状態が確認し易くなり、注射器10Cが使用前か否かを容易に確認することができる。また、穿刺前の針12の先端部も認識し易くなる。
【0111】
図16に戻り、外筒140の内部に収容される内筒142は、一対の突起154が基端側に設けられる。また、内筒142は、一対の突起154を外周面に備える基端環状部156と、基端環状部156の先端側に連なる先端筒状部158とを有する。基端環状部156は、本体部14の胴体部22の外径に略一致する外径に形成されており、上述したフランジ部74と同様の機能を有する。
【0112】
先端筒状部158は、基端環状部156よりも小径に形成され、針保持部24の軸方向長さよりも短い寸法で基端環状部156から先端方向に突出している。この先端筒状部158には、内筒142の略中間部から先端にわたって比較的幅広な筒状部切欠部158aが一対設けられている。これにより、一対の筒状部切欠部158aで分かれた先端筒状部158の先端部側が、相互に離れるように弾性変形可能となり、針保持部24の括れ部38に対し内側の隆起部72aを容易に取り付けることができる。
【0113】
また、基端環状部156は、先端筒状部158よりも外側に突出することで、バネ44の基端部を受ける段差157を先端面に有する。つまり、バネ44は、段差149と段差157間で支持される。段差157上の所定位置(突起154と周方向の位相が一致する位置)には、一対のバネ支持部157aが設けられている。一対のバネ支持部157aは、バネ44の軸と内筒142の軸とのずれを防止し、バネ44が外筒140の側壁50に接触する機会を低減する。これにより、バネ44をスムーズに伸縮させ、接触による異物の発生を回避することができる。また、バネ44の基端が段差157からずれて外筒140と内筒142との間に嵌り込むことも防止できる。
【0114】
保護装置20Cのカバー144は、外筒140の側壁50より一回りだけ太い筒状を呈し、その内部には軸方向に沿って装着穴144aが貫通形成されている。カバー144は、外筒140の装着状態において、爪部153を覆うことで爪部153が径方向外側に弾性変形することを規制する。
【0115】
カバー144の軸方向長さは、側壁50の軸方向長さに応じて、例えば側壁50の先端からストッパ部150の上端にわたる寸法に設定される。また、本実施形態に係るカバー144は不透明に構成されている。これにより、カバー144は、内筒142の突起154が穿刺前位置56aにあるときに、内筒142全体を覆い、突起154が穿刺後位置60aにあるときに、内筒142の基端環状部156をカバー144より基端側に突出させる。なお、カバー144の装着位置や軸方向長さは、特に限定されず、フック部152の外側への変形を抑制できるように外筒140の一部分に装着されればよく、逆に外筒140の外周面を全て覆う構成であってもよい。
【0116】
キャップ146は、先端側から基端側に向かって、ツマミ部160、延在筒部162及び嵌込部164を備える。ツマミ部160は、外筒140の側壁50の外径に略一致する外径、すなわち先端筒状部158の外径より大径に形成されている。また、ツマミ部160は、充分に厚肉に形成されると共に、中心部に基端方向に窪む凹部160aを備える。凹部160aは、キャップ146を射出成形時のゲートの逃げとして形成される。
【0117】
延在筒部162は、ツマミ部160の基端面から所定長さ基端方向に延びている。また、延在筒部162の外径は、中空部48を構成する突出壁148の内周面の内径よりも小径に形成されている。延在筒部162のツマミ部160と連結する部分の外周面には、外筒140の係止爪148aに引っ掛かり可能な環状突起162aが形成されている。また、延在筒部162の先端側には、針12が穿刺される封止部162b(肉部分)が設けられている。
【0118】
嵌込部164は、延在筒部162よりも小径に形成され、針保持部24の中央支持部34と外側包囲部36部の間に入り込むことが可能となっている。延在筒部162及び嵌込部164は、軸心部に空洞部146aを有し、空洞部146aを介して封止部162bに針12を導くことが可能である。以上のように構成されるキャップ146は、保護装置20Cの組立状態で先端方向に短いため、注射器10Cをさらに小型化することができ、搬送や保管等を一層容易化することができる。
【0119】
注射器10Cは、使用時において、基本的に注射器10と同じ動作が行われる。すなわち、外筒140の先端部からキャップ146を取り外して針12を穿刺可能状態とする。ツマミ部160は突出壁148よりも外径が大きく、キャップ146の装着状態でその基端面が突出壁148に対し段差を形成する。このため、ユーザは、ツマミ部160の基端面に指を引っ掛けて容易にキャップ146を取り外すことが可能である。
【0120】
この穿刺可能状態で、ユーザは、患者に対し外筒140の先端部を接触させて、外筒140と相対的に針12、本体部14、内筒142等を進出させていく。この際、注射器10Cは、カバー144により案内路54及び内筒142の突起154を覆っているため、ユーザの指等が案内路54や突起154に接触(干渉)することを防ぐことができる。この進出に伴い内筒142の突起154は、案内路54の穿刺前位置56aから穿刺時位置58aに移動する。穿刺時位置58aに位置した段階では、針12が外筒140の先端から露出して患者に穿刺され、薬剤が投与される。
【0121】
薬剤の投与後は、注射器10Cを患者から引き離すことで、外筒140がバネ44の作用下に先端方向に進出して針12を覆う。この際、内筒142の突起154は、穿刺時位置58aから爪部153を乗り越えて穿刺後位置60aに移動する。
【0122】
突起154が穿刺後位置60aに移動した状態では、外筒140が後退して突起154が爪部153の係止辺153aに接触すると、突起154をV字溝153cの底部に誘導する。これにより、突起154が爪部153から外れ難くなり、内筒142は、外筒140の後退を強固に規制して、針12の露出を防ぐことができる。仮に、本体部14の進出作用により突起154から爪部153に強い荷重がかかっても、カバー144は、爪部153が外側に変形することを阻み、突起154の進出(すなわち針12の露出)を防ぐことができる。さらにカバー144は、外側からの爪部153への干渉を遮断し、爪部153による突起154の係合を一層確実なものとすることができる。
【0123】
また、
図17Aに示すように、穿刺可能状態では、内筒142の外周面が不透明なカバー144に覆われており、内筒142の外周面を視認することができない。そして、
図18に示すように、内筒142の突起154が穿刺後位置60aに移動した状態では、穿刺後位置60aが穿刺前位置56aよりも基端側に位置しているため、内筒142の基端部はカバー144より基端側に突出する。これにより透明又は半透明な外筒140を介して内筒142の基端部の外周面が視認可能となる。このため、ユーザは、内筒142の外周面を視認することで、注射器10Cが未使用か使用済みかを簡単に認識することができる。特に、突起154が穿刺後位置60aにあるときに内筒142の基端部の外周面が周方向にわたって視認可能なため、ユーザはより簡単に注射器10Cが未使用か使用済みかを認識することができる。なお、外筒140は不透明でもよい。この場合、突起154は、穿刺時位置58aにあるときに不透明なカバー144に覆われて視認できず、穿刺後位置60aにあるときにカバー144から露出する。そのため、ユーザは、突起154の露出(内筒142の回転状態)を確認することで、注射器10Cが未使用か使用済みかを簡単に認識することができる。
【0124】
なお、第4実施形態に係る注射器10Dは、上記の構成に限定されず、種々の構成をとり得る。例えば、カバー144は、第4実施形態では、外筒140や内筒142等と同様に比較的硬質な樹脂材料により構成されているが、プラスチック製フィルム等で外筒140を覆ってもよい。
【0125】
また、爪部153の外面とカバー144の内面との間には、僅かに隙間を設けてもよい。具体的には、爪部153の外面が、外筒140の他の部分の外面より僅かに内側に窪んでいる、又は、爪部153の外面を覆う部分のカバー144の内面が、その周囲のカバー144の内面より僅かに外側に窪んでいることが好ましい。これにより、カバー144の内面が爪部153の外面と接触することがなく、爪部153が周方向にスムーズに弾性変形できる。このため、内筒142の突起154が穿刺時位置58aから穿刺後位置60aに移動する際に、爪部153が周方向にスムーズに弾性変形し、突起154が爪部153を容易に乗り越えることができる。
【0126】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態に係る注射器10Dについて、
図19〜
図24Bを参照して説明する。注射器10D(保護装置20D)は、
図19に示すように外筒170に装着されるカバー174が、外筒170の側壁50の外周面略全部を覆う構成となっている点で、第4実施形態に係る注射器10Cと異なる。また
図20に示すように、保護装置20Dは、外筒170、内筒172及びキャップ176の構成も保護装置20Cと多少異なっている。
【0127】
外筒170は、外筒140と同様に、側壁50及び突出壁148を有するが、フック部196(規制部63C)、側壁50の案内路54に連なる切欠溝178、及び穿刺後位置60bの形状が若干異なっている。具体的には、フック部196は、弾性片66と、弾性片66の基端側に連なり穿刺後位置60bに面する基端側に向かって周方向両側に徐々に幅が広がる爪部198とを備える。爪部198は、穿刺後位置60bを臨む係止辺198aにV字溝198cを有し、また第3路60側の突出部分に傾斜辺198bを有する。
【0128】
フック部196の形状に合わせて、第3路60の基端側に切欠溝178が周方向に連なるように形成されることで、穿刺後位置60bは広めの空間を呈している。すなわち、穿刺後位置60bの基端には、係止辺198aに対向する基端辺199が設けられている。基端辺199には、爪部198のV字溝198cの底部と周方向の位相が略一致する底部を有するV字溝199aが形成されている。
【0129】
また、切欠溝178は、その先端側に周方向に幅広な先端幅広溝178aを有する。さらに、切欠溝178は、先端幅広溝178aの反対側で穿刺後位置60bよりも基端方向に延び、外筒170の基端付近まで側壁50を切り欠いた基端延在溝178bを有する。この基端延在溝178bは、保護装置20Dの組立において内筒172を案内路54に誘導する際に、外筒170の弾性変形を促進する機能を有している。
【0130】
また、
図21Aに示すように、側壁50の内周面には、第2実施形態に係る外筒100と同様に、一対の誘導用溝部180が設けられている。誘導用溝部180は、案内路54の第1路56の基端側にて直線状に延び側壁50の基端に至るように形成されている。誘導用溝部180と案内路54の間には隔壁181が設けられ、この誘導用溝部180の上端側は、内筒172の突起154が乗り越え易いようにテーパ面180aに形成されている。
【0131】
外筒170と内筒172との組付時には、誘導用溝部180に突起154が挿入されるように周方向位置を合わせる。そして、内筒172を誘導用溝部180に沿って奥側に挿入することで、案内路54に突起154を配置する。突起154が隔壁181を乗り越える際、隔壁181と周方向に位相がずれる位置に設けられている基端延在溝178bは、隔壁181周辺部の側壁50を外側方向に容易に弾性変形させる。そのため、突起154は、隔壁181を円滑に乗り越えて案内路54に移動する。
【0132】
図19及び
図20に示すように、側壁50は、外筒170とカバー174を周方向に位置決めし、且つカバー174の基端方向の位置ずれを防止する位置決め凸部182を一対備える。一対の位置決め凸部182は、側壁50の基端に設けられ、カバー174の厚みに略一致する高さで突出している。
【0133】
また、外筒170の突出壁148は、側壁50に対し若干小径に形成され、
図21Bに示すように、突出壁148の内側に段差149を形成している。突出壁148の外周面には、突出壁148の軸心を挟んで一対の切欠面184が平行に形成されている。一対の切欠面184は、キャップ176を外筒170から取り外す際に、キャップ176に対しユーザの指をより引っ掛かり易くする。また、切欠面184両端の稜線の一方(切欠縁部)は、誘導用溝部180と周方向の位相が一致するように設けられるとよい。これにより、内筒172を外筒170に挿入する際に、切欠面184の稜線に突起154の位相を周方向に一致させることで、誘導用溝部180に対し突起154を容易に挿入することができる。
【0134】
図20に戻り、外筒170の内部に収容される内筒172は、第4実施形態に係る内筒142と同様に、突起154、基端環状部156、先端筒状部158(筒状部切欠部158aを含む)を備える。ただし、内筒172は、針保持部24と異なる色(例えば、針保持部24が透明であるのに対し内筒172が赤色)に着色されている。
【0135】
一方、外筒170の外周面を覆うカバー174は、
図19及び
図20に示すように、カバー174を構成する壁面の所定位置に一対の窓部186を備える。窓部186は、カバー174を外筒170に装着した状態で、比較的幅広に形成された切欠溝178の先端幅広溝178aに略重なるように配置される。このため、窓部186は、外筒170よりも内側に存在する針保持部24又は内筒172を視認可能とする。
【0136】
また、カバー174の基端には、一対の位置決め凹部188が形成されている。各位置決め凹部188は、外筒170の位置決め凸部182に一致する形状に形成され、外筒170とカバー174の装着状態で位置決め凸部182が挿入される。これにより、外筒170とカバー174が回転不能に一体化し、窓部186と先端幅広溝178aの周方向の位相を常に一致させることができる。
【0137】
一方、キャップ176は、第4実施形態と同様のツマミ部160と、第4実施形態の延在筒部162と異なる延在筒部190とを備える。
図21Aに示すように、延在筒部190の外周面は、ツマミ部160から基端方向に向かって緩やかに小径となるテーパ状に形成され、延在筒部190を外筒170内に挿入し易くしている。
【0138】
延在筒部190の外周面には、外筒170の段差149(封止部材保持部53B)に引っ掛かり可能な一対の係合突起192が設けられている。一対の係合突起192は、延在筒部190の軸方向の同じ位置で、延在筒部190の外周面上を周方向に所定長さ延びている。各係合突起192の相互間には、係合突起192が設けられていないことにより、一対の隙間194が介在している。なお、係合突起192及び隙間194は、延在筒部190の軸方向の同じ位置に少なくとも1つずつ設けられていればよい。
【0139】
また、延在筒部190の内部には、針12が挿入される空洞部176aが形成されると共に、空洞部176aの先端部には封止部190aが形成されている。延在筒部190の基端部は、針保持部24の膨出筒部32よりも大径な外形に形成され、空洞部176aに連通する基端開口部190bを有する。基端開口部190bの内径は、膨出筒部32の外径よりも僅かに小さく形成され、また基端開口部190bを構成する延在筒部190の内面は、基端方向に向かって大径となるテーパ部190cに形成されている。
【0140】
以上のように形成されるキャップ176は、外筒170の先端部から中空部48に挿入していくと、延在筒部190の基端部が針保持部24の膨出筒部32に被さる。すなわち、延在筒部190の基端方向の挿入に伴い、テーパ部190cが膨出筒部32の先端部に接触して、膨出筒部32を基端開口部190b内に誘導しつつ延在筒部190の基端部を径方向外側に押し広げる。これにより、延在筒部190の基端部と針保持部24が密着して、空洞部176a(すなわち、針12)を良好に封止することができる。
【0141】
また、キャップ176は、一対の係合突起192が外筒170の段差149よりも基端側に位置するまで挿入され、外筒170に組み付けられた状態となる。この状態では、突出壁148の内周面と延在筒部190の外周面の間に多少の空間(余裕)があり、外筒170の中空部48内に滅菌ガス等を流動させ易い。特に、一対の係合突起192の間には一対の隙間194が形成されているので、滅菌ガスを一層容易に流動させることができる。また、一対の係合突起192が段差149に引っ掛かることで、キャップ176の先端方向への移動が規制される。これにより、キャップ176の延在筒部190の基端部と針保持部24との密着が維持される。
【0142】
第5実施形態に係る注射器10Dは、注射器10と同じ動作により針12の穿刺及び薬剤の投与が行われる。すなわち、外筒170と相対的に針12、本体部14、内筒172等を進出させることで、内筒172の突起154が案内路54に沿って穿刺前位置56a(
図22A参照)から穿刺時位置58aに移動する。穿刺時位置58aの移動後は、縮小したバネ44の弾性復帰により内筒172に対し外筒170が進出することで、突起154は穿刺後位置60b(
図22B参照)に移動する。なお、
図22A及び
図22Bは、突起154の位置が分かりやすくなるようにカバー174の図示を省略している。
【0143】
突起154が穿刺後位置60bに移動した状態では、外筒170が後退しようとすると、突起154が爪部198の係止辺153aに強固に係合して後退を規制するため、針12の露出を防ぐことができる。特に、爪部198は、周方向に広がる比較的大きなサイズに形成され、その基端側の係止辺198aにV字溝198cを有することで、V字溝198cの底部と弾性片66の付け根の周方向位置が一致している。よって、突起154がV字溝198cの底部に誘導された際に、弾性片66が周方向に変形し難くなり、係合状態を良好に維持することができる。
【0144】
また、基端辺199に設けられたV字溝199aは、突起154を穿刺後位置60bの幅方向中央部に誘導する。これにより外筒170が基端側に後退しようとすると、突起154が爪部198のV字溝198cの底部付近に当接することになり、突起154と爪部198の係合を一層強固なものとすることができる。また、カバー174は、フック部196が外側に変形する(内筒172から離間する)ことを阻むことで、爪部153と突起154の係合をより一層確実なものとすることができる。
【0145】
また、注射器10Dは、カバー174に窓部186を備えることで、内筒172の外観を視認できるようにし、注射器10Dが未使用か使用済みかを確認可能としている。すなわち
図23A及び
図23Bに示す注射器10Dの使用前(未使用時)には、内筒172の突起154が案内路54の穿刺前位置56aに位置している。この際、窓部186には、外筒170の切欠溝178(先端幅広溝178a)を介して、針保持部24が見えている。内筒172の筒状部切欠部158aが、先端幅広溝178aに重なるからである。すなわち、内筒172の外観とは切欠溝178も含むものであり、ユーザは、切欠溝178を介して針保持部24を視認することで、注射器10Dの未使用を認識することができる。
【0146】
一方、
図24A及び
図24Bに示す注射器10Dの使用後は、内筒172の突起154が案内路54の穿刺後位置60aに位置している。この際、窓部186には、先端幅広溝178aを介して、内筒172の先端筒状部158が見えるようになる。突起154の移動に伴い内筒172が周方向に回転することで、先端筒状部158が先端幅広溝178aに重なるからである。上述したように、内筒172は、針保持部24と異なる色(赤色)に着色されているため、ユーザは内筒172を視認することで、注射器10Dの使用済み(危険性)を認識することができる。
【0147】
なお、カバー174の窓部186の形成位置は、上記の切欠溝178に重なる位置に限定されず、自由に設計してよい。例えば、窓部186は、外筒170の案内路54の穿刺前位置56aに重なる位置に形成されてもよい。つまり、注射器10Dの使用前には、突起154の露出により未使用であることが認識でき、注射器10Dの使用後には、基端環状部156の露出により使用済みであることが認識できる。この場合、成形時において基端環状部156の色に対し突起154の色を変えることで、内筒172の回転状態がより一層分かり易くなる。
【0148】
〔第6実施形態〕
第6実施形態に係る注射器10Eは、
図25Aに示すように、外筒200(保護装置20E)に設けられる案内路202の構成が第1〜第5実施形態に係る注射器10、10A〜10Dと異なる。外筒200以外の構成は、注射器10Cと同一であり、
図15〜
図18を参照されたい。
【0149】
外筒200の案内路202は、上述した案内路54の第1路56及び第2路58を有するが、第3路204の形状が、案内路54の第3路60と異なる。第3路204は、第2路58に連なる先端側部分が第2路58に連続して直線となっているものの、途中位置から斜めに屈曲(又は湾曲)して、斜め基端方向に延びている。これにより、穿刺後位置60cは、穿刺時位置58aに対して穿刺前位置56aと反対側の周方向にずれ、且つ穿刺前位置56aよりも基端側に位置するように形成される。なお、外筒200の外周面には、カバー144が装着されるが、第3路204の基端側(穿刺後位置60cを含む)はカバー144から露出される。
【0150】
また、穿刺後位置60cの入口付近には、一対の爪部206が対向して設けられている。一対の爪部206は、第3路204の内側に向かって突出し、互いの頂部が近接し合い、さらに穿刺後位置60cの空間に対し直交する辺を有するように形成されている。この一対の爪部206は、内筒142の突起154が穿刺後位置60cに移動した際に、突起154に係合する規制部63Dとして機能する。なお、規制部63Dは、一対の爪部206に限定されず、1つの爪部のみで構成してもよい。
【0151】
第6実施形態に係る注射器10Eは、基本的に以上のように構成される。針12の穿刺時には、外筒200の進退動作に伴い、内筒142の突起154が穿刺前位置56a(
図25A参照)、穿刺時位置58a、穿刺後位置60c(
図25B参照)の順に移動する。突起154は、穿刺後位置60cに移動する際に、一対の爪部206を乗り越える。そして、内筒142に対し外筒200を再後退しようとしても、穿刺後位置60cに位置する突起154が一対の爪部206と係合することにより外筒200の再後退が規制されることになる。また、カバー144から突起154が露出する構成であるため、突起154を視認することによって、注射器10Eの使用前又は使用済みを確認することができる。
【0152】
なお、第3路204の形状は、特に限定されるものではなく、例えば穿刺前位置56aよりも基端側、且つ穿刺時位置58aに対して穿刺前位置56aと同じ周方向にずれるように形成されてもよい。
【0153】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。また、第1実施形態の外筒40に第2実施形態の誘導用溝部104を追加したり、第1実施形態のフック部64を第2実施形態のフック部114に変更したりする等、各実施形態同士を適宜組合せてもよい。