(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤は、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分とする。
【0011】
本発明に用いる有効成分のうち、植物抽出物について説明する。
本発明におけるアカキャベツとは、アブラナ(Brassicaceae)科アブラナ(
Brassica)属の多年草で、野菜として広く利用されている。
本発明におけるユッカフォームとは、ユッカ・シジゲラ(
Yucca schidigera)、ユッカ・アラボレセンス(
Yucca arborescens)、ユッカ・モヘーブ(
Yucca mohavensis)などの、リュウゼツラン(Agavaceae)科ユッカ(
Yucca)属の多年草植物の総称である。
本発明におけるステビアとは、キク(Asteraceae)科ステビア(
Stevia)属の多年草植物で、食用、医薬品として利用されている。
本発明におけるタチジャコウソウとは、シソ(Lamiaceae)科イブキジャコウソウ(
Thymus)属の多年生植物で、香辛料として用いられている。
本発明におけるベニバナとは、キク(Asteraceae)科ベニバナ(
Carthamus)属の一年草で、染料や食用油の原料として広く利用されている。
本発明におけるバナナとは、バショウ(Asteraceae)科バショウ(
Musa)属の植物で、食用として広く利用されている。
【0012】
本発明における前記植物は、その植物の全ての任意の部分が使用可能である。例えば、上記植物の全木、全草、根、根茎、幹、枝、茎、葉、樹皮、樹液、樹脂、花、果実、種子、果皮、莢、芽、花穂、心材等の任意の部分、及びそれらの組み合わせのいずれか1つ又は2つ以上を使用することができる。
本発明においてアカキャベツ抽出物を得るには、アカキャベツの葉を抽出することが好ましい。あるいは、赤キャベツ色素(アカキャベツの葉を室温時弱酸性水溶液で抽出して得られる)として市販されているものをアカキャベツ抽出物として用いてもよい。
本発明においてユッカフォーム抽出物を得るには、ユッカフォームの全草を抽出することが好ましい。あるいは、ユッカ・アラボレセンス、ユッカ・シジゲラなどの全草より、熱時水で、又は室温時〜微温時でエタノール水溶液又はイソプロピルアルコール水溶液で抽出して得られたものをユッカフォーム抽出物として用いてもよい。
本発明においてステビア抽出物を得るには、ステビアの葉を抽出することが好ましい。あるいは、ステビアの甘味料(ステビアの葉を室温時〜熱時水で抽出し、精製して得られる)として市販されているものをステビア抽出物として用いてもよい。
本発明においてタチジャコウソウ抽出物を得るには、タチジャコウソウの地上部を抽出することが好ましい。あるいは、地上部の水蒸気蒸留品であり、香辛料として市販されているものをタチジャコウソウ抽出物として用いてもよい。
本発明においてベニバナ抽出物を得るには、ベニバナの花を抽出することが好ましい。あるいは、ベニバナ赤色素(ベニバナの花、又はこれを発酵若しくは酵素処理したものから黄色素を除去し、室温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られる)として市販されているものをベニバナ抽出物として用いてもよい。
本発明においてバナナ抽出物を得るには、バナナの果実を抽出することが好ましい。
【0013】
本発明において用いる、アカキャベツ、ユッカフォーム、ステビア、タチジャコウソウ、ベニバナ、及びバナナの抽出物の製造方法については特に限定はなく、上記植物を通常の方法で抽出することにより抽出物を得ることができる。具体的には、前記植物を乾燥させた乾燥物又はその粉砕物、その粉砕物等を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水蒸気蒸留物、各種抽出溶剤による粗抽出物、粗抽出物を分配又はカラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで精製して得られた抽出物画分などを本発明における抽出物として用いることができる。また、このようにして得られた抽出物画分は、必要により公知の方法により脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。
上記の植物はそのまま抽出に供することも可能であるが、より抽出効率を高めるために、乾燥、細断、粉砕等の工程を加えることも好ましい。また、本発明においては、前記抽出物、水蒸気蒸留物、圧搾物等のいずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、本発明の植物抽出物としては、上記植物を乾燥させた乾燥物又はその粉砕物から、抽出溶剤を用いて得られた抽出物を用いることがより好ましい。
【0014】
抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられる。あるいは、上記溶剤の2種以上を組み合わせた混合物を、抽出溶剤として用いることができる。このうち、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等を用いるのが好ましく、水、エタノール混液を用いるのがより好ましい。
【0015】
本発明で用いられる抽出物を得るための抽出条件については、使用する溶剤によって異なり特に制限はなく、通常の条件を適用できる。例えば、上記植物1質量部に対して1〜10質量部の溶媒を用い、0〜70℃、好ましくは10〜30℃で数時間〜数週間、好ましくは12時間〜2日間、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界抽出、超音波抽出及び/又はマイクロ波抽出を行えばよい。また、水蒸気蒸留によっても前記抽出物を得ることが出来る。抽出効率を向上させるため、併せて攪拌を行ったり、溶媒中でホモジナイズ処理を行ってもよい。
【0016】
上記溶媒で抽出して得られた抽出物はそのまま使用してもよいが、さらに適当な分離手段、例えばゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留、活性炭処理等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。本発明において、植物の抽出物とは、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液、その精製物又はそれらの乾燥末を包含するものである。
【0017】
次に、本発明に用いる有効成分のうち、ベニコウジ黄色素について説明する。
本発明におけるベニコウジ黄色素とは、ベニコウジ菌(例えば、
Monascus pilosus又は
Monascus purpureusなどの糸状菌)の培養生成物から抽出して得られる水溶性の黄色色素であり、その主成分はキサントモナシン類などである。ベニコウジ黄色素の調製方法としては、ベニコウジ菌の培養液を乾燥して粉砕し、微温下で、塩酸やエタノール等で抽出し、中和する方法等があるが、本発明はこれに制限するものではない。本発明において、市販されているベニコウジ黄色素を用いてもよい。
【0018】
次に、本発明に用いる有効成分のうち、β−カロテン、ノートカトン及びメバスタチンについて説明する。
【0019】
本発明で用いるβ−カロテンは下記式で表される化合物である。
【0021】
前記β−カロテンの製造方法に特に制限はなく、通常の有機化学的合成、微生物を用いた合成等により製造することができ、天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。例えば、オオヒゲマワリ科デュナリエラ(
Dunaliella bardawil、
Dunaliella salina)の全藻より、熱時油脂で、又は室温時若しくは熱時で、ヘキサン又は加圧下で二酸化炭素で抽出してβ−カロテンを得ることができる。また、試薬として市販されているものをβ−カロテンとして用いることもできる。
【0022】
本発明で用いるノートカトンとは、4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-6-イソプロペニル-4,4a-ジメチル-2(3H)-ナフタレノンなるセスキテルペンケトンをいう。当該ノートカトンには、8種類の光学異性体が存在する。本発明においては、それら異性体を単独又は混合して用いることができるが、(+)-ノートカトンを用いるのが好ましい。
【0024】
前記ノートカトンの製造方法に特に制限はなく、通常の有機化学的合成、微生物を用いた合成等により製造することができ、例えば、特開2004−123561号公報、特開2003−250591号公報、特表平11−501052号公報に記載の方法により得ることができる。また、本発明で用いるノートカトンは、ノートカトンを含有する天然物から通常の方法により抽出することにより得ることもできる。ここで、抽出は、例えば、水、熱水、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール水、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等の有機溶剤等を用いて行う抽出操作と高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等による精製操作や蒸留操作を適宜組み合わせて行う方法により行うことができる。ノートカトンを含有する天然物としては特に制限はないが、例えばミカン(Rutaceae)科のグレープフルーツ(
Citrus paradisi)、ザボン(
Citrus maxima)、ナツミカン(
Citrus natsudaidai)等が挙げられる。グレープフルーツからノートカトンを抽出する場合、その原料としては例えば、グレープフルーツ果実、グレープフルーツ果皮、グレープフルーツオイル、グレープフルーツ濃縮果汁、グレープフルーツ果汁搾汁後の残渣等を用いることができる。抽出条件は通常の条件を適用でき、例えばグレープフルーツなどの天然物を40〜100℃で1分〜3日間浸漬又は加熱還流したり、圧搾すればよい。
【0025】
本発明で用いるメバスタチンは下記式で表される化合物であり、高脂血症の特効薬として広く利用されている。
【0027】
前記メバスタチンの製造方法に特に制限はなく、通常の有機化学的合成、微生物を用いた合成等により製造することができ、天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。また、試薬として市販されているものをメバスタチンとして用いることもできる。
【0028】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤には、前記有効成分のうちのいずれか1種を利用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前述のように、ATPは蓄尿による膀胱の伸展刺激を受けて膀胱上皮細胞から放出される。このATP放出には、膀胱上皮の伸展という機械的刺激を感知する受容体(メカノセンサー)が関与する。ヒトの膀胱上皮には、ENaC(Epithelial Na channel)ファミリーやTRP(transient receptor potential)ファミリーに属するメカノセンサーが存在することが知られている。過活動膀胱や尿路閉塞患者の膀胱上皮細胞では、これらのメカノセンサーが健常人に比べて高発現しているとの報告がある(Urologia Internationals,2006年,第76巻,p.289-295;Urology View2,2007,第5巻,p.31-36)。さらには、過活動膀胱は頻尿の原因の1つでもある。
後記実施例でも示すように、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物は、ATP放出抑制効果を示す。したがって、ヒトを含む動物がアカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及び/又はバナナ抽出物を摂取又は投与することで、過活動膀胱の予防又は改善や頻尿の予防又は改善が可能となる。
【0030】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤は、医薬品、医薬部外品、食品、飲料等の用途に適用することができる。さらに本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤は、液状、固形状、乳液状、ペースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状等、ヒトや動物に適用されうる各種剤型をとることができる。
【0031】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤を医薬品、医薬部外品に適用する場合、必要により各種添加剤を配合し、前記有効成分を適量含有させて、各種剤形の医薬品又は医薬部外品として調製することができる。例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、腸溶剤、トローチ剤、ドリンク剤等の経口医薬として、又は、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、外用剤等といった非経口医薬として調製することができる。これらの形態のうち、好ましい形態は経口医薬である。このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、各種添加剤を用いて常法に従って製造すればよい。使用する添加剤には特に制限はなく、通常用いられているものを使用することができる。その例としては、薬学的に許容される賦形剤(ソルビトール、グルコース、乳糖、デキストリン、澱粉等の糖類、炭酸カルシウム等の無機物、結晶セルロース、蒸留水、ゴマ油、とうもろこし油、オリーブ油、菜種油等)、液体担体(蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、油性担体(各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等)、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、矯臭剤、細菌抑制剤等が挙げられる。
【0032】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤を飲食品、飼料・ペットフード等に適用する場合、食用又は飲料用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して提供することができる。さらに、前記飲食品は、一般飲食品の他、過活動膀胱の予防若しくは改善、又は頻尿の予防若しくは改善剤をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品等の機能性飲食品の形態とすることができる。
【0033】
飲食品の形態としては特に制限はなく、例えば、パン、麺類等に代表される小麦粉加工食品、お粥、炊き込みご飯等の米加工食品、ビスケット、ケーキ、ゼリー、チョコレート、せんべい、アイスクリーム等の菓子類、豆腐、その加工食品等の大豆加工食品、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、炭酸飲料等の飲料類、ヨーグルト、チーズ、バター、牛乳等の乳製品、醤油、ソース、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、ハム、ベーコン、ソーセージ等の蓄肉、蓄肉加工食品、はんぺん、ちくわ、魚の缶詰等の水産加工食品、調理油ならびにフライ用油等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口経腸栄養食品、機能性食品等の形態としてもよい。
飼料の形態としては特に制限はなく、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
これらの飲食品は、例えば、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、ビタミン類、香料、ミネラル等の添加剤、タンパク質、脂質、糖質、炭水化物、食物繊維等の食品原料を適宜組み合わせて用い、これと本発明の過活動膀胱の予防若しくは改善剤、ATP放出抑制剤又は頻尿予防若しくは改善剤とを含有させ、常法に従って各種飲食品の形態とすることにより調製することができる。
【0034】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤はそのままで医薬品、医薬部外品、食品、飲料等として用いてもよいし、医薬品、医薬部外品、食品、飲料等の添加剤又は配合剤として用いてもよい。
【0035】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤における前記有効成分の配合量はその使用形態により異なるが、医薬品、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤の場合は、固形分濃度として0.001〜100質量%が好ましく、0.01〜95質量%がより好ましい。飲食品やペットフード等に配合する場合は、固形分濃度として0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤の投与又は摂取量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性又はその他の要因に従って適宜選択、決定される。例えば、成人(60kg)1日の投与又は摂取量としては、一般に0.001〜250gが好ましい。また、本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤及び頻尿予防又は改善剤は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
【0037】
上記医薬品、医薬部外品又は食品の摂取又は投与対象として特に限定されないが、過活動膀胱又は尿意切迫感及び切迫性尿失禁等の排尿障害の予防又は改善又は治療を目的とするヒトやヒト以外の哺乳動物が好ましい。なお、摂取又は投与対象には、過活動膀胱の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物も含まれる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
調製例1 アカキャベツ抽出物の調製
アカキャベツ抽出物(商品名:レッドカラーDC、三菱化学フーズ社より入手)を濃度が1%(w/v)となるように50体積%エタノールで希釈した。
【0040】
調製例2 ユッカフォーム抽出物の調製
ユッカフォーム抽出物(商品名:サラキープALS、丸善製薬社より入手)を濃度が1%(w/v)となるように50体積%エタノールで希釈した。
【0041】
調製例3 ステビア抽出物の調製
ステビア抽出物(商品名:レバウディオA7-10、守田化学社製)を濃度が1%(w/v)となるように50体積%エタノールで溶解した。
【0042】
調製例4 β−カロテンの調製
バイオカロチン30MCT(商品名、協和発酵社より入手)を濃度が1%(w/v)となるように99.5体積%エタノールで溶解した。
【0043】
調製例5 ベニコウジ黄色素の調製
ベニコウジ黄色素(商品名:マルカラーYM、丸善製薬社より入手)を濃度が1%(w/v)となるように50体積%エタノールで希釈した。
【0044】
調製例6 タチジャコウソウ抽出物の調製
香辛料抽出物製剤(商品名:タイムSP-61515、三栄源エフエフアイ社より入手)を原液のまま、タチジャコウソウ抽出物として使用した。
【0045】
調製例7 ベニバナ抽出物の調製
ベニバナ赤色素(OCI社より入手)を50体積%エタノールに濃度が1%(w/v)となるように溶解した。
【0046】
調製例8 ノートカトンの調製
ノートカトン(和光純薬社より入手)を濃度が100mMになるように50体積%エタノールに溶解した。
【0047】
調製例9 メバスタチンの調製
メバスタチン(和光純薬社より入手)を濃度が10mMになるように99.5体積%エタノールに溶解した。
【0048】
調製例10 バナナ抽出物の調製
バナナ透明果汁(バナナの圧搾抽出液、雄山商事より入手)を濃度が1.40%(w/v)となるように20体積%エタノールで希釈した。
【0049】
試験例1 ATP放出抑制試験
特開2011−133440号公報に記載の方法を参考に、下記に示すようにATP放出抑制試験を行った。
膀胱上皮細胞株としてHT-1376(ATCC社より購入、下記表1に細胞情報を示す)を用い、下記に示す組成の培地を用いて37℃、5%CO
2条件下で培養した。
HT-1376用培地:MEM(Minimum Essential Medium)
Earle's(Invitrogen社製)に、10%FCS(ウシ胎仔血清)、ピルビン酸ナトリウム(0.055g/500mL)、L-グルタミン(0.146g/500mL)を添加
【0050】
【表1】
【0051】
96wellプレートに、4.1×10
4cells/wellになるようにHT-1376を播種し、上記培養条件にて24時間培養した。培地を吸引除去して等浸透圧液(組成を表2に示す)で2回洗浄し、前記製造例で調製した各成分を表3に示す濃度で含有する等浸透圧液をそれぞれ75μL/well加えて、37℃、5%CO
2環境下で60分インキュベートした。さらに、前記製造例で調製した各成分を表3に示す濃度で含有する低浸透圧液(組成を表2に示す)を75μL/well添加し、37℃、5%CO
2環境下で60分インキュベートし、溶液を回収した。
【0052】
【表2】
【0053】
回収したサンプル中のATP濃度を、ATP Bioluminescent Assay Kit(SIGMA製)を用いてルシフェリン・ルシフェラーゼ法により測定した。すなわち、サンプルと、ATP Bioluminescent Assay Kit中のATP Assay Mix solutionとを等量で混合し、撹拌後にホタルルシフェラーゼ活性を1秒間測定してATP濃度を決定し、ATP放出率を測定した。結果を表3に示す。なお、溶媒対照の低浸透圧液を添加した際のATP放出率を100%としたときの相対値で表した。
【0054】
【表3】
【0055】
等浸透圧から低浸透圧へと浸透圧を変化させることで膀胱上皮細胞を刺激し伸展させると、ATPの放出が亢進する。しかし、表3の結果から明らかなように、浸透圧を変化させても、各有効成分を添加することにより、用量依存的にATP放出が抑制された。これより、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物にはATP放抑制作用を有することが示された。
【0056】
試験例2 ATP放出に対する、前記有効成分のクエンチング効果の評価
試験例1において、ATP濃度はルシフェリン・ルシフェラーゼ法により測定しているが、サンプルに各有効成分が含まれている。そのため、本発明の各有効成分にクエンチング効果がある場合には、ATP濃度が低く計算されてしまい、ATP放出阻害活性が擬陽性となる。そこで、本発明の各有効成分のクエンチング効果を検証する目的で、各有効成分含有サンプルのATP添加回収率を評価した。
【0057】
空の96wellプレートに、表4に示す濃度で各有効成分を含む等浸透圧液を75μL/well添加し、37℃、5%CO
2環境下で60分インキュベートした。さらに、ATP及び表4に示す濃度で各有効成分を含む低浸透圧液(ATP終濃度:5×10
-8M)を75μL/well添加し、37℃、5%CO
2環境下で60分インキュベートし、溶液を回収した。
回収したサンプル溶液は、試験例1と同様に、ルシフェリン・ルシフェラーゼ法により回収したサンプル中のATP濃度を測定した。メバスタチン及びノートカトン以外の各有効成分は終濃度0.01%(w/v)、メバスタチン及びノートカトンは終濃度50μMにて評価した。結果を表4に示す。結果は、各有効成分を含まない溶液のATP濃度に対する相対値(%)で表した。
【0058】
【表4】
【0059】
その結果、各成分に高いATP添加回収性が認められた。これより、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物自体はATP濃度の測定に影響を及ぼさないことが示された。
【0060】
以上のように、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物は、膀胱上皮細胞伸展時に亢進するATP放出を抑制する効果を有する。したがって、アカキャベツ抽出物、ユッカフォーム抽出物、ステビア抽出物、β−カロテン、ベニコウジ黄色素、タチジャコウソウ抽出物、ベニバナ抽出物、ノートカトン、メバスタチン及びバナナ抽出物は、過活動膀胱の予防又は改善効果や頻尿の予防又は改善効果を有する。