(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ヨウ化チタンと前記窒素含有原料とを前記処理室に交互に第1の所定回数供給して前記基板上に前記第1のチタン窒化膜を形成する処理と、前記塩化チタンと前記窒素含有原料とを前記処理室に交互に第2の所定回数供給して前記基板上に前記第2のチタン窒化膜を形成する処理とを、交互に第3の所定回数行って前記基板上に前記積層チタン窒化膜を形成する成膜処理を前記ヨウ化チタン供給系、前記塩化チタン供給系および前記窒素含有原料供給系を制御して実行させるように構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態) 以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
まず、本実施形態で使用される基板処理装置について説明する。この基板処理装置は、具体的には半導体装置の製造装置であり、半導体装置の製造工程の一工程で使用されるものである。以下では、基板処理装置の一例として、一度に1枚の基板に対し成膜処理等を行う枚葉式の基板処理装置を使用した場合について述べる。
【0015】
図1は、本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
【0016】
<処理室>
図1に示すように、基板処理装置10は処理容器102を備えている。処理容器102は、例えば上面視が円形を呈する扁平な密閉容器として構成される。また、処理容器102は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料、または、石英(SiO
2)等により構成される。処理容器102内には処理室101が形成される。処理室101では、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ100が処理される。
【0017】
<支持台> 処理容器102内には、ウェハ100を支持する支持台103が設けられる。支持台103は、例えば、石英(SiO
2)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、または窒化アルミニウム(AlN)により構成される。支持台103の上面には、例えば、石英(SiO
2)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、または窒化アルミニウム(AlN)により構成された支持板としてのサセプタ117が設けられ、このサセプタ117にウェハ100が載置される。支持台103には、ウェハ100を加熱する加熱部としてのヒータ106が内蔵される。また、支持台103の下端部(支柱)は、処理容器102の底部を貫通している。
【0018】
<昇降機構> 支持台103の下端部には、昇降機構107bが接続される。この昇降機構107bを作動させることにより、支持台103を昇降させ、サセプタ117上に支持されるウェハ100を昇降させる。支持台103(サセプタ117)は、ウェハ100の搬送時には後述のウェハ搬送口150の高さまで下降し、ウェハ100の処理時にはウェハ処理位置(図示の位置)まで上昇する。なお、支持台103の下端部の周囲は、ベローズ103aにより覆われており、処理容器102内は気密に保持されている。
【0019】
<リフトピン> また、処理容器102の内部底面には、複数本、例えば3本のリフトピン108bが設けられる。また、支持台103(サセプタ117も含む)には、複数の貫通孔108aが、リフトピン108bのそれぞれに対応する位置に設けられる。支持台103をウェハ搬送位置まで下降させた際は、リフトピン108bの上端が貫通孔108aを通過してサセプタ117の上面から突出し、リフトピン108bがウェハ100を下方から支持する。また、支持台103をウェハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン108bはサセプタ117の上面から埋没して、サセプタ117がウェハ100を下方から支持する。なお、リフトピン108bは、ウェハ100と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0020】
<ウェハ搬送口> 処理容器102の内壁側面には、処理容器102の内外にウェハ100を搬送するためのウェハ搬送口150が設けられる。ウェハ搬送口150にはゲートバルブ151が設けられ、このゲートバルブ151を開くことにより、処理容器102内と搬送室(予備室)171内とが連通する。搬送室171は搬送容器(密閉容器)172内に形成されており、搬送室171内にはウェハ100を搬送する搬送ロボット173が設けられている。搬送ロボット173には、ウェハ100を搬送する際にウェハ100を支持する搬送アーム173aが備えられている。
【0021】
支持台103をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ151を開くことにより、搬送ロボット173により処理容器102内と搬送室171内との間でウェハ100を搬送することが可能とされる。処理容器102内に搬送されたウェハ100は、上述したようにリフトピン108b上に一時的に載置される。なお、搬送容器172においてウェハ搬送口150が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット173によりロードロック室内と搬送室171内との間でウェハ100を搬送することが可能とされる。なお、ロードロック室は、処理前もしくは処理済のウェハ100を一時的に収容する予備室として機能する。
【0022】
<排気系> 処理容器102の内壁側面であって、ウェハ搬送口150の反対側には、処理容器102内の雰囲気を排気する排気口160が設けられる。排気口160には排気チャンバ160aを介して排気管161が接続され、排気管161には、処理室101内を所定の圧力に制御する圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)162、原料回収トラップ163、および真空ポンプ164が順に直列に接続されている。主に、排気口160、排気管161、圧力調整器162によって、排気系(排気ライン)が構成される。なお、原料回収トラップ163、真空ポンプ164は、基板処理装置10が設置される半導体製造工場側に設けられるが、基板処理装置10に設けても良い。
【0023】
<ガス導入口> 処理容器102の上部(後述のシャワーヘッド140の上面(天井壁))には、処理容器102内に各種ガスを供給するガス導入口110が設けられている。ガス導入口110には、ガス供給系(後述)が接続される。
【0024】
<シャワーヘッド> 処理容器202においてガス導入口110と処理室101との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド140が設けられる。シャワーヘッド140は、ガス導入口110から導入されるガスを分散させる分散板140aと、分散板140aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台103上のウェハ100の表面に供給するシャワー板140bと、を備えている。分散板140aおよびシャワー板140bには、複数の孔が設けられている。分散板140aは、シャワーヘッド140の上面およびシャワー板140bと対向するように配置されており、シャワー板140bは、支持台103上のウェハ100と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド140の上面と分散板140aとの間、および分散板140aとシャワー板140bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口110から供給されるガスを拡散させる第1バッファ空間140c、および分散板140aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間140dとしてそれぞれ機能する。
【0025】
<排気ダクト> 処理室101の内壁側面には、段差部101aが設けられる。この段差部101aは、コンダクタンスプレート104を保持する。コンダクタンスプレート104は、内周部にウェハ100を収容する孔が設けられたリング状の板材として構成される。コンダクタンスプレート104の外周部には、所定間隔で周方向に配列された複数の排出口104aが設けられている。
【0026】
処理容器102において支持台103の外周部には、ロワープレート105が係止される。ロワープレート105は、リング状の凹部105bと、凹部105bの内周側上部に一体的に設けられたフランジ部105aとを備えている。凹部105bは、支持台103の外周部と、処理室101の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部105bの底部のうち排気口160付近の一部には、凹部105b内から排気口160側へガスを排出(流通)させるプレート排気口105cが設けられている。フランジ部105aは、支持台103の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部105aが支持台103の上部外周縁上に係止することにより、支持台103の昇降に伴い、ロワープレート105が支持台103と共に昇降される。
【0027】
支持台103がウェハ処理位置まで上昇すると、コンダクタンスプレート104がロワープレート105の凹部105bの上部開口面を塞ぎ、凹部105bの内部をガス流路領域とする排気ダクト159が形成される。なお、コンダクタンスプレート104およびロワープレート105は、排気ダクト159の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0028】
ここで、ウェハ100を処理する際の処理室101内のガスの流れについて説明する。ガス導入口110からシャワーヘッド140に供給されたガスは、第1バッファ空間140cを通過して分散板140aの孔から第2バッファ空間140dへと流入し、さらにシャワー板140bの孔を通過して処理室101内のウェハ100に供給される。ウェハ100に供給されたガスは、ウェハ100外周部に位置する排気ダクト159を通過し、排気口160から処理室101の外部へと排気される。
【0029】
<ガス供給系> 続いて、上述したガス導入口110に接続されるガス供給系の構成について説明する。
図2は、基板処理装置10のガス供給系の構成図である。基板処理装置10のガス供給系は、ガス導入口110に接続された不活性ガス供給系230A、反応ガス供給系230B、第1原料ガス供給系230Cおよび第2原料ガス供給系230Dを備える。
【0030】
(不活性ガス供給系) 不活性ガス供給系230Aは、主に、ガス供給管232a、不活性ガス供給源233a、MFC234a、バルブ235aにより構成される。ガス供給管232aは、その下流側がガス導入口110に接続されると共に、上流側から順に、不活性ガス供給源233a、MFC(マスフローコントローラ)234aおよびバルブ235aが設けられる。本実施形態においては、不活性ガスとして窒素(N
2)ガスを用いる。
【0031】
不活性ガス供給源233aからガス供給管232aに流入したN
2ガスは、MFC234aで所定の流量に調整された後、バルブ235aを介してガス導入口110へ供給される。なお、不活性ガスは、N
2ガスの他、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスであっても良い。
【0032】
(反応ガス供給系(窒素含有原料供給系)) 反応ガス供給系230Bは、主に、ガス供給管232b、反応ガス供給源233b、MFC234b、バルブ235bにより構成される。ガス供給管232bは、その下流側がガス導入口110に接続されると共に、上流側から順に、反応ガス供給源233b、MFC234bおよびバルブ235bが設けられる。反応ガスは、窒素を含有する窒素含有原料であり、窒化源として用いられる。本実施形態においては、窒素を含有する窒素含有原料として、アンモニア(NH
3)を用いる。
【0033】
反応ガス供給源233bからガス供給管232bに流入したNH
3ガスは、MFC234bで所定の流量に調整された後、バルブ235bを介してガス導入口110へ供給される。なお、反応ガスは、NH
3ガスに限らず、N
2、亜酸化窒素(NO)、酸化窒素(N
2O)などを用いてもよい。
【0034】
(第1原料ガス供給系(第1の金属原料供給系))第1原料ガス供給系230Cからは、第1の金属原料が供給される。まず、この第1の金属原料について説明する。第1の金属原料は、第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する。ここで、第1のハロゲン元素とは、後述する第2のハロゲン元素よりも原子番号が大きいハロゲン元素である。好ましくは、第1のハロゲン元素は塩素(Cl)よりも原子番号が大きいハロゲン元素であり、臭素(Br)、ヨウ素(I)またはアスタチン(At)のいずれかである。また、所定の金属元素とは、例えば遷移金属元素である。本実施形態においては、第1のハロゲン元素としてヨウ素(I)を選択し、所定の金属元素として遷移金属元素であるチタン(Ti)を選択した。すなわち、本実施形態においては、第1の金属原料としてヨウ化チタン(四ヨウ化チタン(TiI
4))を用いる。
【0035】
第1原料ガス供給系230Cは、主に、ガス供給管232c、キャリアガス供給源233c、MFC234c、第1原料供給源235c、バルブ236cにより構成される。ガス供給管232cは、その下流側がガス導入口110に接続されると共に、上流側から順に、キャリアガス供給源233c、MFC234c、第1原料供給源235cおよびバルブ236cが設けられる。キャリアガスとしては、例えばN
2ガスを用いる。第1原料供給源235cは、例えば気化器として構成される。
【0036】
キャリアガス供給源233cからガス供給管232cに流入したキャリアガスは、MFC234cで所定の流量に調整された後、第1原料供給源235cに流入する。第1原料供給源235cには固体のTiI
4が収容されており、その気化ガスはキャリアガスと共にバルブ236cを介してガス導入口110へ供給される。なお、TiI
4は常温常圧で固体であり、第1原料供給源235cを所定の温度(例えば120℃)に加熱することによって気化させられる。
【0037】
なお、上記では、第1のハロゲン元素としてヨウ素(I)を例示したが、臭素(Br)やアスタチン(At)などを用いてもよい。また、所定の金属元素として遷移金属元素であるチタン(Ti)を例示したが、これに限らず、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)からなる群から選択してもよい。また、遷移金属以外の金属元素を用いるようにしてもよい。
【0038】
(第2原料ガス供給系(第2の金属原料供給系)) 第2原料ガス供給系230Dからは、第2の金属原料が供給される。第2の金属原料は、上記した第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と、上記した所定の金属元素とを含有する。第2のハロゲン元素は、第1のハロゲン元素よりも原子番号が小さいハロゲン元素である。好ましくは、第2のハロゲン元素は塩素(Cl)であるか、あるいは、それよりも原子番号が小さいハロゲン元素であるフッ素(F)である。本実施形態においては、第2のハロゲン元素として、第1のハロゲン元素として選択したヨウ素(I)よりも原子番号の小さい塩素(Cl)を選択する。また、第2の金属原料が含有する所定の金属元素は、第1の金属原料が含有する金属元素であるチタン(Ti)とする。すなわち、本実施形態においては、第2の金属原料として塩化チタン(四塩化チタン(TiCl
4))を用いる。
【0039】
第2原料ガス供給系230Dは、主に、ガス供給管232d、キャリアガス供給源233d、MFC234d、第2原料供給源235d、バルブ236dにより構成される。ガス供給管232dは、その下流側がガス導入口110に接続されると共に、上流側から順に、キャリアガス供給源233d、MFC234d、第2原料供給源235dおよびバルブ236dが設けられる。キャリアガスとしては、例えばN
2ガスを用いる。また、第2原料供給源235dは例えばバブラとして構成される。
【0040】
キャリアガス供給源233dからガス供給管232cに流入したキャリアガスは、MFC234dで所定の流量に調整された後、第2原料供給源235cに流入する。TiCl
4は、常温常圧で液体であり、第2原料供給源235cには液体として収容される。第2原料供給源235dに収容されたTiCl
4は、第2原料供給源235dに供給されたキャリアガスによって気化され、キャリアガスと共にバルブ236dを介してガス導入口110へ供給される。なお、第2原料供給源235dを加熱することによって第2原料供給源235d内のTiCl
4の蒸気圧を十分に高め、TiCl
4をガスとして供給するようにしてもよい。この場合、第2原料供給源235dをバブラとして構成する必要は必ずしもない。
【0041】
(コントローラ)
図1に示すように、基板処理装置10は、基板処理装置10の各部の動作を制御するコントローラ(制御部)280を有している。コントローラ280は、演算部281および記憶部282を少なくとも有する。コントローラ280は、上記した各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部282からプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。具体的には、コントローラ280は、ヒータ106、昇降機構107b、ゲートバルブ151、APC162、真空ポンプ164、搬送ロボット173、ガス供給系のバルブやMFC等の動作を制御する。
【0042】
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)283を用意し、外部記憶装置283を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。
【0043】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置283を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置283を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶部282や外部記憶装置283は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部282単体のみを含む場合、外部記憶装置283単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0044】
<半導体装置の構成> 次に、基板処理装置10を用いて形成されるトランジスタ(半導体装置)のゲートの構成例について説明する。ここでは、NMOSタイプのトランジスタを例に挙げる。
【0045】
図3は、基板処理装置10を用いて形成されるトランジスタのゲートの構成例を示す図であり、具体的には、NMOSタイプのトランジスタのゲートの構成例を示す図である。
図3に示すように、ゲートは、シリコン基板(Si−sub)の上に形成された酸化シリコン(SiO
2)からなるシリコン系絶縁膜と、このSiO
2の上に形成された酸化ハフニウム(HfO
2)からなる高誘電率膜(High-k膜)と、このHfO
2の上に形成された金属窒化膜(TiN)からなるゲート電極とを積層したスタック構造とされる。ここで特徴的なことは、ゲート電極としてのTiNが、TiI
4を原料として用いて形成された第1のTiN(第1の金属窒化膜。図で「TiI
4−TiN」と示す)と、TiCl
4を原料として用いて形成された第2のTiN(第2の金属窒化膜。図で「TiCl
4−TiN」と示す)との積層体として構成されることにある。
【0046】
<半導体装置のゲート製造工程> 次いで、
図3に示すトランジスタのゲートの製造工程例について説明する。
図4は、
図3に示すトランジスタのゲートの製造工程例を示す処理フロー図である。
【0047】
図4に示すように、まず、シリコン基板を、例えば1%HF水溶液で処理して、シリコン基板に形成された犠牲酸化膜を除去する(「HF treatment」工程)。次いで、シリコン基板上に、酸化シリコン(SiO
2)を熱酸化処理により成膜する(「SiO
2 formation」工程)。SiO
2は、シリコン基板と、この後に形成するHfO
2との界面における界面層として形成される。
【0048】
次に、SiO
2上に、高誘電率膜としての酸化ハフニウム(HfO
2)を成膜する(「High-k formation」工程)。SiO
2とHfO
2により、ゲート絶縁膜が構成される。HfO
2の成膜後、アニール処理を行う(「Post Deposition Annealing」工程)。このアニール処理は、HfO
2中の不純物除去、HfO
2の緻密化もしくは結晶化を目的に行う。次に、HfO
2上に、ゲート電極としての金属窒化膜(TiN)を形成する(「TiN deposition」工程)。図示のように、この工程では、上述したTiI
4を原料として用いるTiN成膜処理と、TiCl
4を原料として用いるTiN成膜処理とを行う。具体的には、TiI
4とNH
3とをウェハ100に供給するTiN成膜処理をX回(第1の所定回数)行う工程と、TiCl
4とNH
3とをウェハ100に供給するTiN成膜処理をY回(第2の所定回数)行う工程とが実行される。そして、それらの各工程が、Z回(第3の所定回数)交互に行われることで、積層金属窒化膜(積層TiN)が形成される。この処理の詳細については後述する。なお、積層金属窒化膜とは、異なる原料を用いて成膜された、同一の金属元素を含有する複数の金属窒化膜が所定数積層されることによって形成された金属窒化膜を意味する。すなわち、積層TiNとは、異なる原料を用いて成膜された複数のTiNが所定数積層されることによって形成された膜を意味する。
【0049】
次いで、レジストをマスクにしてフォトリソグラフィ技術を用いたパターニング(「Gate patterning」工程)を行うと共に、ドライエッチング技術を用いたパターンエッチング(「Gate etching」工程)を行う。その後、当該レジストを除去する(「Resist removal」工程))。そして、水素ガスアニーリング等のFGA(Forminggas annealing)処理を行う(「FGA」工程)。
【0050】
なお、ゲート電極としてのTiNの仕事関数を測定する場合には、当該TiNの上に、さらに例えばPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)によりTiNを成膜することで、仕事関数の測定に必要な膜厚を確保することができる。この場合、PVDによるTiNの成膜は、「Gate etching」工程の前に行う。また、「FGA」工程の後に、シリコン基板の裏面にバックコンタクトとしてのアルミニウム層を形成してもよい。
【0052】
次に、上記した積層TiNの成膜工程(
図4の「TiN deposition」工程)について詳説する。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0053】
図5は、
図4に示す処理フローにおける積層TiNの成膜工程の例を示す処理フロー図である。
図6は、
図5に示す成膜工程におけるガス供給のタイミングを示す図である。
【0054】
なお、本明細書において「ウェハ」という言葉を用いた場合は、「ウェハそのもの」を意味する場合や、「ウェハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウェハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウェハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウェハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウェハの最表面」を意味する場合がある。
【0055】
従って、本明細書において「ウェハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウェハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウェハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウェハ上に所定の膜(または層)を形成する」と記載した場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)上に所定の膜(または層)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウェハ上に形成されている膜や層等の上、すなわち、積層体としてのウェハの最表面の上に所定の膜(または層)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0056】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も「ウェハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウェハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0057】
(ウェハ搬入工程S10) まず、ウェハ搬送口150に設けられたゲートバルブ151が開放され、搬送ロボット173によって搬送室171から処理容器102内にウェハ100が搬送される。処理容器102内に搬送されるウェハ100には、上記した高誘電率膜(HfO
2)が形成されている。なお、高誘電率膜として、HfO
2の他、酸化アルミニウム(AlO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(LaO)、酸化イットリウム(YO)、酸化タンタル(TaO)、酸化セリウム(CeO)、酸化チタン(TiO)、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸バリウム(BTO)のいずれかまたはそれらを2つ以上組み合わせた膜を用いてもよい。また、これらの膜に、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)を含む膜であってもよい。
【0058】
(ウェハ載置工程S11) 処理容器102内に搬送されたウェハ100は、リフトピン108bに載置される。そして、支持台103をウェハ処理位置まで上昇させることにより、ウェハ100はサセプタ117に載置される。
【0059】
(圧力・温度調整工程S12) ウェハ100がサセプタ117に載置されると、ゲートバルブ151が閉じられ、処理室101内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ164によって真空排気される。この際、処理室101内の圧力は、圧力センサ(不図示)により測定され、APC162でフィードバック制御される。
【0060】
また、サセプタ117に載置されたウェハ100は、支持台103に内蔵されたヒータ106によって所定の温度に加熱される。なお、処理容器102には温度センサ(図示せず)が設けられ、当該温度センサが検出した温度情報に基づいてウェハ100が所定の温度となるようにヒータ106への通電量がフィードバック制御される。
【0061】
なお、上記した圧力調整および温度調整は、後述する積層TiNの成膜工程が終了するまでの間、常に実行される。
【0062】
次に、上述した積層TiNの成膜工程を行う。積層TiNの成膜工程は、TiI
4を原料として用いて第1のTiNを形成する工程(第1TiN成膜工程)と、TiCl
4を原料として用いて第2のTiNを形成する工程(第2TiN成膜工程)とを有する。
【0063】
<第1TiN成膜工程> 第1TiN成膜工程では、次の4つの工程を順次実行する。
【0064】
(TiI
4供給工程S13) TiI
4供給工程S13では、処理室101に第1の金属原料としてのTiI
4を供給する。具体的には、ガス供給管232cのバルブ236dを開き、キャリアガスとしてのN
2ガスを第1原料供給源235cに供給する。このとき、第1原料供給源235cされるキャリアガスはMFC234cによって所定の流量に調整される。第1原料供給源235cの内部で気化されたTiI
4は、キャリアガスと共に所定の流量のTiI
4ガスとして処理室101に供給される。このとき、不活性ガス供給系230Aのバルブ232aを開き、TiI
4ガスと共に不活性ガス供給源233aからN
2ガスを処理室101に供給するようにしてもよい。
【0065】
この工程では、APC162により、処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。また、MFC234c(および第1原料供給源235cを加熱するヒータ)によって制御されるTiI
4ガスの流量は、例えば1〜200sccmの範囲内の流量とする。TiI
4ガスと共に不活性ガス供給系230AからN
2ガスを供給する場合、MFC234aによって制御されるN
2ガスの流量は、例えば0.1〜2000sccmの範囲内の流量とする。
【0066】
また、ウェハ100をTiI
4ガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このとき、ヒータ106を制御することにより、ウェハ100の温度(処理温度)は、例えば350〜400℃の範囲内の温度、好ましくは400℃に調整される。TiI
4ガスの供給により、ウェハ100上には、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0067】
(残留ガス除去工程S14) 残留ガス除去工程S14では、バルブ236cを閉じ、処理室101内へのTiI
4ガスの供給を停止する。このとき、APC162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiI
4ガスを処理室101内から除去する。なお、このとき、バルブ235aを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスを処理室101内へ供給する。N
2ガスはパージガスとして作用し、処理室101内に残留するTiI
4ガスを処理室101内から除去する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば2000sccmの流量で、例えば、1秒〜60秒間供給されることによって行われる。
【0068】
(NH
3供給工程S15) NH
3供給工程S15では、処理室101に反応ガスとしてのNH
3ガスを供給する。具体的には、ガス供給管232bのバルブ235bを開き、反応ガス供給源233bに貯留されたNH
3ガスをガス供給管232bに流す。ガス供給管232bを流れるNH
3ガスは、MFC235bにより所定の流量に調整される。流量調整されたNH
3ガスは、ガス導入口110を介して処理室101に供給される。このとき、不活性ガス供給系230Aのバルブ232aを開き、NH
3ガスと共に不活性ガス供給源233aからN
2ガスを処理室101に供給するようにしてもよい。
【0069】
この工程では、APC162により、処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。また、MFC234bによって制御されるNH
3ガスの流量は、例えば10〜3000sccmの範囲内の流量とする。NH
3ガスと共に不活性ガス供給系230AからN
2ガスを供給する場合、MFC234aによって制御されるN
2ガスの流量は、例えば0.1〜2000sccmの範囲内の流量とする。
【0070】
また、ウェハ100をNH
3ガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このとき、ヒータ106を制御することにより、ウェハ100の温度(処理温度)は、例えば350〜400℃の範囲内の温度、好ましくは400℃とされる。
【0071】
処理室101に供給されたNH
3ガスは、ステップS13でウェハ100上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と反応する。これによりTi含有層が窒化され、第1のTiNが形成される。
【0072】
(残留ガス除去工程S16) 残留ガス除去工程S16では、バルブ235bを閉じ、処理室101内へのNH
3ガスの供給を停止する。このとき、APC162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくはTi含有層の窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室101内から除去する。なお、このとき、バルブ235aを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスを処理室101内へ供給する。N
2ガスはパージガスとして作用し、処理室101内に残留するNH
3ガスを処理室101内から除去する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば2000sccmの流量で、例えば、1秒〜60秒間供給されることによって行われる。
【0073】
(処理回数判定工程S17)処理回数判定工程S17では、上述したステップS13〜S16を1サイクルとした一連の工程を第1の所定回数Xだけ実施したか(一連の工程をXセット実施したか)否か判断し、第1の所定回数Xだけ実施されたと判断されるまでステップS13〜S16の処理を繰り返し実施する。ここで、Xは1以上の整数である。ステップS13〜S16のサイクルをX回実施することで、第1TiN成膜工程が完了する。このように、ステップS13〜S16の処理を少なくとも1サイクル以上行うことにより、所定の膜厚(例えば0.01〜20nm)のTiN(第1のTiN)が形成される。なお、上記ではTiI
4ガスをNH
3ガスよりも先に供給するようにしたが、NH
3ガスをTiI
4ガスよりも先に供給するようにしてもよい。
【0074】
<第2TiN成膜工程> 第1TiN成膜工程が完了すると、続いて、第2TiN成膜工程を行う。第2TiN成膜工程では、次の4つの工程を順次実行する。
【0075】
(TiCl
4供給工程S18)TiCl
4供給工程S18では、処理室101に第2の金属原料としてのTiCl
4を供給する。具体的には、ガス供給管232dのバルブ236dを開き、キャリアガスとしてのN
2ガスを第2原料供給源235dに供給する。このとき、第2原料供給源235dされるキャリアガスはMFC234dによって所定の流量に調整される。第2原料供給源235dに収容されたTiCl
4は、第2原料供給源235dに供給されたキャリアガスによって気化され、キャリアガスと共にバルブ236dを介して処理室101に供給される。このとき、不活性ガス供給系230Aのバルブ232aを開き、TiCl
4ガスと共に不活性ガス供給源233aからN
2ガスを処理室101に供給するようにしてもよい。
【0076】
この工程では、APC162により、処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。また、MFC234dによって制御されるTiCl
4ガスの流量は、例えば1〜200sccmの範囲内の流量とする。TiCl
4ガスと共に不活性ガス供給系230AからN
2ガスを供給する場合、MFC234aによって制御されるN
2ガスの流量は、例えば0.1〜2000sccmの範囲内の流量とする。
【0077】
また、ウェハ100をTiCl
4ガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このとき、ヒータ106を制御することにより、ウェハ100の温度(処理温度)は、例えば350〜400℃の範囲内の温度、好ましくは400℃とされる。TiCl
4ガスの供給により、ウェハ100上には、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0078】
(残留ガス除去工程S19) 残留ガス除去工程S19では、バルブ236dを閉じ、処理室101内へのTiCl
4ガスの供給を停止する。このとき、APC162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl
4ガスを処理室101内から除去する。なお、このとき、バルブ235aを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスを処理室101内へ供給する。N
2ガスはパージガスとして作用し、処理室101内に残留するTiCl
4ガスを処理室101内から除去する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば2000sccmの流量で、例えば、1秒〜60秒間供給されることによって行われる。
【0079】
(NH
3供給工程S20) NH
3供給工程S20では、上述したステップS15と同様に、処理室101に反応ガスとしてのNH
3ガスを供給する。具体的な装置動作や供給条件はステップS15と同様なため、説明は省略する。NH
3供給工程S20で処理室101に供給されたNH
3ガスは、ステップS18でウェハ100上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と反応する。これによりTi含有層は窒化されて、第2のTiN膜が形成される。
【0080】
(残留ガス除去工程S21) 残留ガス除去工程S21では、上述したステップS16と同様に、処理室101内に残留するNH
3ガスを処理室101内から除去する。具体的な装置動作や供給条件はステップS15と同様なため、説明は省略する。
【0081】
(処理回数判定工程S22)処理回数判定工程S22では、上述したステップS18〜S21を1サイクルとした一連の工程を第2の所定回数Yだけ実施したか(一連の工程をYセット実施したか)否か判断し、第2の所定回数Yだけ実施されたと判断されるまでステップS13〜S16の処理を繰り返し実施する。ここで、Yは1以上の整数である。ステップS18〜S21の処理をY回実施することで、第2TiN成膜工程が完了する。このように、ステップS18〜S21の処理を少なくとも1サイクル以上行うことにより、所定の膜厚(例えば0.01〜20nm)のTiN(第2のTiN)が形成される。なお、上記ではTiCl
4ガスをNH
3ガスよりも先に供給するようにしたが、NH
3ガスをTiCl
4ガスよりも先に供給するようにしてもよい。
【0082】
(処理回数判定工程S23)第2TiN成膜工程が完了すると、処理回数判定工程S23において、上述した第1TiN成膜工程から第2TiN成膜工程までの一連の工程を第3の所定回数Zだけ実施したか(一連の工程をZサイクル実施したか)判断し、第3の所定回数Zだけ実施されたと判断されるまで第1TiN成膜工程および第2TiN成膜工程(ステップS13〜S22の処理)を繰り返し実施する。ここで、Zは1以上の整数である。ステップS13〜S22の処理をZ回実施することで、積層TiN成膜工程が完了する。このように、TiI
4を原料として用いた第1TiN成膜工程とTiCl
4を原料として用いた第2TiN成膜工程とを交互に少なくとも1サイクル以上実施することにより、所定の膜厚(例えば0.02〜40nm)の積層TiNを形成する。なお、上記では、TiI
4を原料として用いる成膜工程を行った後、TiCl
4を原料として用いる成膜工程を行うようにしたが、TiCl
4を原料として用いる成膜工程を行った後、TiI
4を原料として用いる成膜工程を行っても良い。ただし、TiI
4を原料として用いる成膜工程を行った後、TiCl
4を原料として用いる成膜工程を行うことが好適である。この理由は後述する。
【0083】
(ウェハ搬出工程S24) 積層TiN成膜工程が完了すると、ウェハ搬出工程S24に移行する。ウェハ搬出工程S24では、支持台103を下降させると共に、ゲートバルブ151を開き、処理済(成膜済)のウェハ100を搬送ロボット173によって処理容器102の外部に搬出する。
【0084】
ここで、第1のTINを形成する工程(ステップS13からステップS17までの処理)を行う回数(上述のX、あるいはXとZの乗算値)と、第2のTiNを形成する工程(ステップS18からステップS22までの処理)を行う回数(上述のY、あるいはYとZの乗算値)とにより、ゲート電極としての積層TiNの仕事関数を任意の値に調整することができる。すなわち、積層TiNに含まれるTiI
4を原料として用いて形成された第1のTiNとTiCl
4を原料として用いて形成された第2のTiNの比(積層比)により、積層TiNの仕事関数を任意の値に調整することができる。以下、この理由について説明する。
【0085】
第1のTiNと第2のTiNとでは、仕事関数が異なることを本願発明者は知見した。具体的には、第1のTiNの仕事関数は、第2のTiNのそれよりも低い値を示すことを本願発明者は知見した。これは、第1のTiNと第2のTiNとには、それぞれヨウ素(I)と塩素(Cl)が残留するが、このヨウ素(I)と塩素(Cl)の仕事関数が相違する(ヨウ素(I)の仕事関数は塩素(Cl)のそれよりも低い)ことに起因すると考えられる。また、第1のTiNにおけるヨウ素(I)の含有割合は、第2のTiNにおける塩素(Cl)の含有割合よりも小さい(この理由は後述する)ため、第1のTiNの仕事関数がチタン(Ti)固有のより低い仕事関数に近づくことも、第1のTiNの仕事関数が第2のTiNのそれよりも低い値となる理由の一つと考えら得る。さらに、TiI
4を用いた場合のハロゲン元素の拡散が、仕事関数を引き下げる方向にSiO
2とHfO
2の界面の固定電荷が変動させていることも第1のTiNの仕事関数が第2のTiNのそれよりも低い理由の一つと考えられる。以上のような理由から、積層TiNに含まれる第1のTiNと第2のTiNの比を調整することにより、積層TiNの仕事関数を第1のTiN固有の仕事関数と第2のTiN固有の仕事関数との間の任意の値に調整することができる。なお、各元素の仕事関数の大きさは、仕事関数の実測値、あるいはその理論値の他、仕事関数との相関が知られている電気陰性度を指標に考えることもできる。
【0086】
図7は、積層TiNに含まれる第1のTiNの割合と積層TiNの仕事関数の関係を示す図であり、具体的には、積層TiNの厚さを6nmとしたときの、当該積層TiNに含まれる第1のTiNの割合を0%から100%まで変化させたときの仕事関数を示している。なお、
図7に示す仕事関数は、高誘電率膜としてHfO
2を用いたときの実行仕事関数(eWF)であり、HfO
2/SiO
2界面のダイポール込みの値である。
図7に示すeWFを得たときの上記したX,Y,Zの値を
図8に示す。
図8において、
図7に示すeWFを得たときのZの値は「例1」に示す値である。また、第1のTiNおよび第2のTiNの処理条件は以下の通りである。
【0087】
[第1のTiN] 処理温度(成膜温度)・・・400[℃]、処理圧力・・・60[Pa]、TiI
4の供給時間・・・15[sec]、TiI
4の流量・・・約1[sccm]、NH
3の供給時間・・・20[sec]、NH
3の流量・・・300[sccm]
【0088】
[第2のTiN] 処理温度(成膜温度)・・・400[℃]、処理圧力・・・[60Pa]、TiCl
4の供給時間・・・2[sec]、TiCl
4の流量・・・約5[sccm]、NH
3の供給時間・・・20[sec]、NH
3の流量・・・300[sccm]
【0089】
図7のように、積層TiNに含まれる第1のTiNの割合が多いほど、仕事関数が低下することがわかる。具体的には、積層TiNの仕事関数は、第1のTiNの割合が高いほど(第2のTiNの割合が低いほど)第1のTiN固有の仕事関数(図示の例では4.45[eV])に近づき、第1のTiNの割合が低いほど(第2のTiNの割合が高いほど)第2のTiN固有の仕事関数(図示の例では4.58[eV])に近づく。
【0090】
図9は、積層TiNに含まれる第1のTiNと第2のTiNの比を変化させたときの積層TiNの電気抵抗率と膜厚を示す図である。
図9に示す値を得たときの上記したX,Y,Zの値は
図8に示した通りである。ただし、
図8において、
図9に示す値を得たときのZの値は「例2」に示す値である。なお、第1のTiNおよび第2のTiNの処理条件は上記と同様である。
図9に示すように、積層TiNに所定の割合以上第1のTiNが含まれると、電気抵抗率が大きく低下する。具体的には、積層TiNに第1のTiNが25%以上含まれると、電気抵抗率が300[μΩcm]を下回る。これは、第1のTiNの電気抵抗率と第2のTiNの電気抵抗率とが異なる(第1のTiNの電気抵抗率が第2のTiNのそれよりも低い)ことに起因する。ゲート電極の電気抵抗率は低いことが望ましいが、積層TiNに第1のTiNが25%以上含まれる場合(eWFを4.54[eV]以下の領域で調整する場合)には、仕事関数を調整できることに加え、低抵抗な電気特性をも得ることができる。
【0091】
また、
図9に示すように、積層TiNに含まれる第1のTiNの割合が多いほど、膜厚も増加することがわかる。これは、TiI
4におけるハロゲン元素の結合エネルギーが、TiCl
4のそれよりも小さく、同一の処理条件下ではTi含有層の形成がTiI
4を用いた場合の方が促進されるためと考えられるためである。なお、チタン(Ti)とハロゲン元素との結合エネルギーは、ハロゲン元素の原子番号が大きいほど小さくなる。一例として、TiCl
4におけるチタン(Ti)と塩素(Cl)の結合エネルギーは494[kJ/mol]であるのに対し、TiI
4におけるチタン(Ti)とヨウ素(I)の結合エネルギーは310[kJ/mol]である。
図9に示すように、積層TiNに第1のTiNが25%以上含まれると膜厚、すなわち成膜レートも大きく向上する。したがって、積層TiNに第1のTiNが25%以上含まれる場合(eWFを4.54[eV]以下の領域で調整する場合)には、仕事関数を調整できることに加え、成膜レートも大きく向上させることもできる。なお、上記したように、第1のTiNにおけるヨウ素(I)の含有割合が第2のTiNにおける塩素(Cl)の含有割合よりも低い理由も、TiI
4におけるハロゲン元素の結合エネルギーが小さく、ヨウ素(I)がチタン(Ti)から効率良く切り離されていることに起因すると考えられる。
【0092】
次いで、
図5に示した積層TiN成膜工程において、TiI
4を原料として用いた成膜処理から開始した理由について説明する。上述したように、TiI
4を用いた場合のハロゲン元素の拡散が、仕事関数を引き下げる方向にSiO
2とHfO
2の界面の固定電荷が変動させていることが、第1のTiNの仕事関数が第2のTiNのそれよりも低い理由の一つと考えられる。そのため、仕事関数をより低下させてその調整幅を大きくするために、TiI
4を原料として用いた成膜処理から開始し、TiI
4のハロゲン元素を、HfO
2を介してSiO
2とHfO
2の界面まで拡散させるようにした。
【0093】
さらに、第1のTiNのラフネス(表面粗さ)は、第2のTiNのそれに比して非常に良好であることを発明者は知見した。
図10は、第1のTiNと第2のTiNのラフネスを示す図であり、具体的には、AFM(Atomic Force Microscopy)による測定結果である。
図10に示す値を得たときの上記したX,Y,Zの値は
図8に示した通りである。ただし、
図8において、
図10に示す値を得たときのZの値は「例1」に示す値である。なお、第1のTiNおよび第2のTiNの処理条件は、上記したのと同様である。
【0094】
図10に示すように、平均面粗さ(Ra)、自乗平均面粗さ(RMS)および面内最大高低差(Rmax)とも、第1のTiNの方が第2のTiNよりも良好である。これは、TiI
4におけるハロゲン元素の結合エネルギーがTiCl
4のそれよりも小さいことが、ゲート絶縁膜上における初期核形成密度を大きくしていることに起因すると考えられる。そのため、TiI
4を原料として用いた成膜処理から開始する(換言すれば、TiI
4を原料として用いて初期成膜を行う)ことで、それに続いて形成される膜のラフネスを向上させ、結果として、積層TiN全体のラフネスを向上させることができる。また、初期成膜のラフネスが向上することで、積層TiNとその下層のゲート絶縁膜との密着性が高まり、積層TiNの膜剥がれも生じ難くなる。なお、例えば3D−NANDのようなデバイス構造で、TiNの上にタングステン(W)等の薄膜を形成する場合には、積層TiN全体のラフネスが向上することで、当該タングステン(W)等の薄膜の膜剥がれも抑制することができる。
【0095】
このように、本実施形態にあっては、第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを供給して第1の金属窒化膜を形成すると共に、第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と上記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と窒素含有元素とを供給して第2の金属窒化膜を形成することで、積層金属窒化膜を形成するようにしたので、金属膜の仕事関数を調整することができる。
【0096】
さらに、原子番号の大きいハロゲン元素を含有している原料を用いた成膜処理から開始することで、仕事関数の調整幅の拡大や積層TiNのラフネスの向上を図ることができ、さらには、積層TiNの膜剥がれの抑制等も期待することができる。
【0097】
また、新規な材料を既存の生産ラインで採用するには、インテグレーションの問題(加工、熱安定性、拡散安定性)が生じるが、本実施形態の成膜プロセスは既存の金属窒化膜(TiCl
4を原料として用いて形成した金属窒化膜)であるTiN膜の成膜プロセスをベースとしているため、インテグレーションの問題も回避できる。
【0098】
なお、本発明は、例えば、半導体装置の製造工場に存在する既存の基板処理装置のガス供給系を改造し、プロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0099】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態として成膜技術について説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。例えば、本実施形態では、基板処理装置の例として枚葉装置を記載したが、一度に複数枚の基板を処理する縦型処理装置等についても同様に適用することができる。
【0100】
(本発明の好ましい態様) 以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0101】
[付記1] 基板を処理する処理室と、第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料を前記処理室に供給する第1金属原料供給系と、前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料を前記処理室に供給する第2金属原料供給系と、窒素を含有する窒素含有原料を前記処理室に供給する窒素含有原料供給系と、前記第1の金属原料と前記窒素含有原料とを前記処理室に供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を形成する処理と、前記第2の金属原料と前記窒素含有原料とを前記処理室に供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を形成する処理とを行って前記基板上に積層金属窒化膜を形成する成膜処理を前記第1金属原料供給系、前記第2金属原料供給系および前記窒素含有原料供給系を制御して実行させるように構成された制御部と、を有する基板処理装置。
【0102】
[付記2] 前記制御部は、前記第1の金属原料と前記窒素含有原料とを前記処理室に交互に第1の所定回数供給して前記基板上に前記第1の金属窒化膜を形成する処理と、前記第2の金属原料と前記窒素含有原料とを前記処理室に交互に第2の所定回数供給して前記基板上に前記第2の金属窒化膜を形成する処理とを、交互に第3の所定回数行って前記基板上に前記積層金属窒化膜を形成する成膜処理を前記第1金属原料供給系、前記第2金属原料供給系および前記窒素含有原料供給系を制御して実行させるように構成される付記1に記載の基板処理装置。
【0103】
[付記3] 前記第1の所定回数と前記第2の所定回数は異なる値である付記2に記載の基板処理装置。
【0104】
[付記4] 前記第1の金属窒化膜と前記第2の金属窒化膜は仕事関数が異なる付記1から3のいずれかに記載の基板処理装置。
【0105】
[付記5] 前記第1の金属窒化膜と前記第2の金属窒化膜は抵抗率が異なる付記1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【0106】
[付記6] 前記第1の金属原料は前記第1のハロゲン元素として前記第2のハロゲン元素よりも原子番号が大きいハロゲン元素を含有する付記1から5のいずれかに記載の基板処理装置。
【0107】
[付記7] 前記第1の金属原料は前記第1のハロゲン元素として塩素(Cl)よりも原子番号が大きいハロゲン元素を含有し、前記第2の金属原料は前記第2のハロゲン元素として塩素(Cl)を含有する付記1から6のいずれかに記載の基板処理装置。
【0108】
[付記8] 前記第1の金属原料はヨウ化チタン(TiI
4)であり、前記第2の金属原料は塩化チタン(TiCl
4)である付記1から7のいずれかに記載の基板処理装置。
【0109】
[付記9] 前記成膜処理は、前記第1の金属窒化膜を形成する処理から開始される付記6から8のいずれかに記載の基板処理装置。
【0110】
[付記10] 前記成膜処理は、前記基板の温度が350℃から400℃の範囲で実行される付記1から9のいずれかに記載の基板処理装置。
【0111】
[付記11]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を形成する工程と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と前記窒素含有元素とを供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を形成する工程と、を含む成膜工程を行って前記基板上に積層金属窒化膜を形成する半導体装置の製造方法。
【0112】
[付記12]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを交互に第1の所定回数供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を成膜する工程と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と窒素含有原料とを交互に第2の所定回数供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を成膜する工程と、を交互に第3の所定回数行う成膜工程を行って前記基板上に積層金属窒化膜を成膜する半導体装置の製造方法。
【0113】
[付記13] 前記第1の金属原料は前記第1のハロゲン元素として前記第2のハロゲン元素よりも原子番号が大きいハロゲン元素を含有する付記11または12に記載の半導体装置の製造方法。
【0114】
[付記14] 前記第1の金属原料は前記第1のハロゲン元素として塩素(Cl)よりも原子番号が大きいハロゲン元素を含有し、前記第2の金属原料は前記第2のハロゲン元素として塩素(Cl)を含有する付記11から13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0115】
[付記15] 前記第1の金属原料はヨウ化チタン(TiI
4)であり、前記第2の金属原料は塩化チタン(TiCl
4)である付記11から14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0116】
[付記16] 前記成膜処理は、前記第1の金属窒化膜を成膜する工程から開始される付記13から15に記載の半導体装置の製造方法。
【0117】
[付記17] 前記成膜処理は、前記処理室内の前記基板の温度が350℃から400℃の範囲で実行される付記11から16のいずれかに記載の半導体の製造方法。
【0118】
[付記18]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を形成する手順と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と前記窒素含有元素とを供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を形成する手順と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【0119】
[付記19]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを交互に第1の所定回数供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を成膜する手順と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と窒素含有原料とを交互に第2の所定回数供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を成膜する手順と、を交互に第3の所定回数行う手順をコンピュータに実行させるプログラム。
【0120】
[付記20]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を形成する手順と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と前記窒素含有元素とを供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を形成する手順と、をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0121】
[付記21]処理室内の基板に対して第1のハロゲン元素と所定の金属元素とを含有する第1の金属原料と窒素含有原料とを交互に第1の所定回数供給して前記基板上に第1の金属窒化膜を成膜する手順と、前記処理室内の前記基板に対して前記第1のハロゲン元素とは異なる第2のハロゲン元素と前記所定の金属元素とを含有する第2の金属原料と窒素含有原料とを交互に第2の所定回数供給して前記基板上に第2の金属窒化膜を成膜する手順と、を交互に第3の所定回数行う手順をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。