【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記のような目的を達成するために
i)リチウム含有化合物、チタン酸化物、異種金属M含有化合物および異種金属A含有化合物を両論比で固相混合する段階と、
ii)前記i)の固相混合物を溶媒に分散させ、0.3μm〜0.8μmの平均粒径を有する粒子を含有する時まで湿式粉砕してスラリーを製造する段階と、
iii)前記スラリーを噴霧乾燥して粒子を形成する段階と、
iv)前記噴霧乾燥された粒子を焼成する段階と、
を含み、下記の化学式で表される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法を提供する。
【0007】
[化学式]
Li
4Ti
5−(x+y)M
xA
yO
12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、
0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記異種金属Mは、Zrであり、前記異種金属Aは、Naであることを特徴とする。
【0008】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記Na含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択され、水酸化ナトリウムが湿式工程時に溶解が良好に行われるため好ましい。
【0009】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記Zr含有化合物は、Zr(OH)
4、ZrO
2、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする。
【0010】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記チタン酸化物は、アナターゼ型または含水酸化チタンであることを特徴とする。
【0011】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記リチウム含有化合物は、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムであることを特徴とする。
【0012】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記ii)段階では、溶媒として水を用い、ジルコニアビードを用いて2000〜4000rpmで湿式粉砕することを特徴とする。
【0013】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記iii)段階の噴霧乾燥する段階では、投入熱風温度を250〜300℃、排気熱風温度を100〜150℃で噴霧乾燥することを特徴とする。
【0014】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記iv)段階での焼成工程は、前記iii)段階での噴霧乾燥体を空気雰囲気、700〜800℃で、5時間〜10時間焼成することを特徴とする。
【0015】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、v)前記iv)で焼成された粒子を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする。本発明において、前記リチウムチタン複合酸化物を粉砕するための乾式粉砕法は、特に限定されないが、前記焼成により形成された粒子をマイクロサイズまで粉砕するために、具体的にはジェットエアーミルで粉砕することが好ましい。
【0016】
本願発明はまた、本願発明の製造方法により製造され、1次粒子が集合して形成された2次粒子であって、下記の化学式で表され、前記1次粒子の直径が0.5μm〜0.8μmであり、前記2次粒子の直径が5μm〜25μmであるスピネル構造であることを特徴とする異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を提供する。
【0017】
[化学式]
Li
4Ti
5−(x+y)M
xA
yO
12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、
0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明による異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のD
50が0.7μm〜1.5μmであることを特徴とする。
【0018】
本発明による異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、Li
4/3Ti
5/3O
4のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiO
2のメインピークの強度が1以下、ルチル型TiO
2(R−TiO
2)のメインピークの強度が1以下であり、Li
2TiO
3のメインピークの強度が5以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明はまた、本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質として用いる正極、または負極活物質として用いる負極を提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質として用いる正極を含有するリチウム二次電池、または本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を負極活物質として用いる負極を含有するリチウム二次電池を提供する。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明の製造方法は、原料化合物であるリチウム化合物、チタン化合物および2種の異種金属をドーピングするための異種金属含有化合物を同時に固相混合し、混合される2種の異種金属含有化合物の混合比を調節することによってリチウムチタン複合酸化物を製造することを技術的特徴とする。
【0023】
出発物質として用いるチタン酸化物含有化合物は、塩化物、硫酸塩または有機塩などのいずれでもよい。しかし、本発明のように放電容量または電池特性に優れたリチウムチタン複合酸化物を製造するために出発物質として用いるチタン酸化物含有化合物の結晶構造は、アナターゼ型二酸化チタンまたは含水二酸化チタンを用いることが好ましい。
【0024】
アナターゼ型二酸化チタンは、純度が95%以上、好ましくは98%以上である必要がある。純度が95%未満の場合、活性物重量当り容量が減少するため好ましくない。高純度、例えば純度99.99%のものを用いることもできるが、この場合、費用が高くなる。電極活性物の観点で考慮した場合、純度が98%以上であれば、粒径および形状の影響が高純度化の影響より大きくなる。
【0025】
本発明の製造方法において、出発物質として用いるリチウム化合物は、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、酸化リチウム、炭酸水素リチウムまたは炭酸リチウムのようなリチウム塩が可能である。
【0026】
本発明の製造方法において、前記ドーピングされる2種の異種金属のうち、異種金属Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記異種金属Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択されることを特徴とし、容量特性および構造的特性上、ZrとNaが同時にドーピングされることが好ましい。
【0027】
前記Naを含む化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたはこれらの混合物であることが好ましい。Zrを含有する化合物としては、Zr(OH)
4、ZrO
2またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0028】
本発明において、
[化学式]
Li4Ti5−(x+y)MxAyO12
に示される異種金属Mのドーピング量
xは0.
1以上1.
5以下
であり、前記異種金属Aのドーピング量
yは
0超〜
1以下であり、異種金属Mと異種金属Aの全体ドーピング量
x+yは
2以下であり、異種金属Mのドーピング量xと前記異種金属Aのドーピング量yは、8≦x/y≦9を満たすことが好ましい。
【0029】
前記異種金属Mのドーピング量
xが1.
5超過の場合には、伝導性がむしろ低下して電池の諸般性能が低下するおそれがあり、前記異種金属Aのドーピング量
yが
0の場合には、異種金属のドーピングによる電池の安全性向上の効果が微々になる。
【0030】
本発明によるリチウムチタン複合酸化物を製造する方法は、出発物質としてリチウム化合物、チタン化合物、ドーピング金属を両論比で混合し、前記固相混合物を液体媒体中に分散させ湿式粉砕して作られたスラリーを公知の方法で噴霧して乾燥焼成することによって1次粒子が集合して形成された2次粒子の粗粒の粉末を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法においては、前記同時混合されたリチウム化合物、チタン化合物およびドーピング金属を分散媒に分散させた後、媒体攪拌型紛砕機などを用いて湿式粉砕する方法を用いることが好ましい。スラリーの湿式粉砕のために用いられる分散媒としては、各種有機溶媒、水性溶媒を用いることができるが、好ましくは水である。
【0032】
スラリー全体の重量に対する原料化合物の総重量比率は、50重量%以上であり、60重量%以下とすることが好ましい。重量比率が前記範囲未満である場合は、スラリー濃度が極端に希薄であるため、噴霧乾燥により生成された球形粒子が必要以上に小さくなったり破損したりしやすい。この重量比率が前記範囲を超えればスラリーの均一性を維持しにくい。
【0033】
スラリー中の固形物の平均粒子は、平均粒径D
50が0.3μm〜0.8μmになるように2000〜4000rpmで湿式粉砕することが好ましい。スラリー中の固形物の平均粒径が過度に大きければ、焼成工程における反応性が低下するだけでなく、球形度が低下して最終的な粉体充填密度が低くなる傾向にある。しかし、必要以上に小粒子化するのは粉砕の費用上昇となるため、粉砕物の平均粒径は通常0.3μm〜0.8μmになる時まで湿式粉砕する。
【0034】
本発明のリチウムチタン複合酸化物粉体の噴霧乾燥により1次粒子が結合して2次粒子を形成し、前記1次粒子の直径が0.5μm〜0.8μm、2次粒子の直径が5μm〜25μmである粒子が生成される。
【0035】
噴霧させる手段は特に重要でなく、特定の孔サイズを有するノズルを加圧することに限定されず、任意の公知となった噴霧−乾燥装置を用いることができる。噴霧器は一般に回転円盤式とノズル式に大きく区分され、ノズル式は圧力ノズル型(pressure nozzle)と2流体ノズル型(two−fluid nozzle)に区分される。その他にも回転式噴霧器、圧力ノズル、空気式ノズル、ソニックノズルなどのように当該分野に公知となったすべての手段を用いることができる。供給速度、供給物粘度、噴霧−乾燥された製品の所望の粒子サイズ、分散液、油中水エマルジョンまたは油中水マイクロエマルジョンの飛沫サイズなどは噴霧手段の選択時に典型的に考慮される因子である。
【0036】
前記iii)段階で前記ii)のスラリーを噴霧乾燥する段階では、投入熱風温度を250〜300℃、排気熱風温度を100〜150℃で噴霧乾燥することが粒子の模様、サイズおよび結晶度を高めるために好ましい。
【0037】
このようにして得られた混合粉体は、続いて焼成処理される。焼成温度としては、原料で用いられるリチウム化合物、チタン酸化物、異種金属などその他の金属化合物などの種類によっても異なるが、通常600℃以上、好ましくは700℃以上であり、また通常900℃以下、好ましくは800℃以下である。この時の焼成条件は、原料組成にも依存するが、焼成温度が過度に高ければ一次粒子が過度に成長し、反対に過度に低ければ体積密度が小さく、また比表面積が過度に大きくなる。
【0038】
焼成時間は温度によっても異なるが、通常、前述の温度範囲であれば30分以上、好ましくは5時間以上、また通常20時間以下、好ましくは10時間以下である。焼成時間が過度に短ければ結晶性がよいリチウムチタン複合酸化物粉体を得にくく、また過度に長いことはあまり実用的でない。焼成時間が過度に長ければ、その後に解砕(pulverization)が必要になったり、解砕が困難になったりもするため、好ましくは10時間以下である。
【0039】
焼成時の雰囲気は、空気雰囲気で焼成するが、製造する化合物の組成や構造により窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることができる。これらは加圧して用いることが好ましい。
【0040】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法は、v)段階として、焼成された粒子を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする。前記焼成された粒子は、乾式粉砕法で粉砕することが好ましく、乾式粉砕法は特に限定されないが、前記焼成により形成された粒子をマイクロサイズまで粉砕するために、具体的にはジェットエアーミルで粉砕することが好ましい。
【0041】
本願発明はまた、前記追加的に乾式粉砕する段階により粉砕された粒子を提供する。本願発明において、前記粒子は、乾式粉砕により前記1次粒子間結合が弱くなって1次粒子が分離され、結果的に粉砕された粒子のサイズはD
50が0.7μm〜1.5μmであることを特徴とする。
【0042】
本発明はまた、本発明の製造方法により製造され、下記の化学式で表される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を提供する。
【0043】
[化学式]
Li
4Ti
5−(x+y)M
xA
yO
12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、
0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明において合成される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の各成分の組成は、混合時の各化合物の投入比、つまり、混合比により調整することができる。また、粉体特性である粒度分布、BET比表面積、タップ密度および圧粉体密度は、混合方法および酸化処理により調整することができる。
【0044】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、1次粒子が集合して形成される2次粒子状態で構成され、前記1次粒子の直径が0.5〜0.8μmであり、前記2次粒子の直径は5〜25μmであることを特徴とする。
【0045】
本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、スピネル構造であることを特徴とする。特に、本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、Li
4/3Ti
5/3O
4のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiO
2のメインピークの強度が1以下、ルチル型TiO
2(R−TiO
2)のメインピークの強度が1以下であり、Li
2TiO
3のメインピークの強度が5以下であることを特徴とする。ルチル型二酸化チタンの主ピークが現れる位置は、2θ=27.4である。
【0046】
本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、不純物であって容量を減少させる前記ルチル型二酸化チタンの主ピークのサイズが1以下であり、ルチル型二酸化チタンの含量が非常に少なくて結晶性を高めるだけでなく、電池容量を増加させる効果を示す。