特許第6204576号(P6204576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6204576異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物
<>
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000002
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000003
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000004
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000005
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000006
  • 6204576-異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204576
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20170914BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20170914BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
   H01M4/485
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-515252(P2016-515252)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公表番号】特表2016-523797(P2016-523797A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】KR2014003060
(87)【国際公開番号】WO2014189209
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0058563
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】512150107
【氏名又は名称】ポスコ イーエス マテリアルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】POSCO ES Materials Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ス ボン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ジュン ファ
(72)【発明者】
【氏名】コ、 ヒュン シン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 チェ アン
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−043765(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0114392(KR,A)
【文献】 特開2012−006816(JP,A)
【文献】 特表2008−511528(JP,A)
【文献】 特表2009−542562(JP,A)
【文献】 特開2006−318797(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0257746(US,A1)
【文献】 Ting-Feng YI et al.,Spinel Li4Ti5-xZrxO12 (0≦x≦0.25) materials as high-performance anode materials for lithium-ion batteries,Journal of Alloys and Compounds,2013年 1月,Vol.558,p.11-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00−23/08
H01M4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)リチウム含有化合物、チタン酸化物、異種金属M含有化合物、および異種金属A含有化合物を、下記化学式の化学量論的モル比で固相混合する段階と、
ii)前記i)の固相混合物を溶媒に分散させ、0.3μm〜0.8μmの平均粒径を有する粒子を含有する時まで湿式粉砕してスラリーを製造する段階と、
iii)前記スラリーを噴霧乾燥して粒子を形成する段階と、
iv)前記噴霧乾燥された粒子を焼成する段階
とを含み、下記の化学式で表される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、およびCuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、およびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
【請求項2】
前記異種金属Mは、Zrであり、前記異種金属Aは、Naであることを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記Zrを含有する化合物は、Zr(OH)、ZrO、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記Naを含有する化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記チタン酸化物は、アナターゼ型または含水酸化チタンであることを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記リチウム含有化合物は、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムであることを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記ii)段階では、溶媒として水を用い、ジルコニアビードを用いて2000〜4000rpmで粉砕することを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記iii)段階の噴霧乾燥する段階では、投入熱風温度を250〜300℃、排気熱風温度を100〜150℃で噴霧乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記iv)段階の焼成工程では、前記iii)段階の噴霧乾燥体を空気雰囲気下、700〜800℃で、5時間〜10時間焼成することを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項10】
v)前記iv)で焼成された粒子を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項11】
前記v)焼成された粒子を粉砕する段階では、焼成された粒子をジェットエアーミルで粉砕することを特徴とする、請求項10に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法。
【請求項12】
1次粒子が集合して形成された2次粒子で構成され、
下記の化学式で表され、前記1次粒子の直径が0.5μm〜0.8μmであり、前記2次粒子の直径が5μm〜25μmであるスピネル構造であることを特徴とする、異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物。
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、およびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
【請求項13】
前記異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、X線結晶構造解析により、Li4/3Ti5/3のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiOのメインピークの強度が1以下、ルチル型TiOのメインピークの強度が1以下であり、LiTiOのメインピークの強度が5以下であることを特徴とする、請求項12に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物。
【請求項14】
請求項12に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項15】
請求項12に記載の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むリチウム二次電池用負極。
【請求項16】
請求項14に記載の正極を含有するリチウム二次電池。
【請求項17】
請求項15に記載の負極を含有するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物に関し、より詳しくは、2種の異種金属の混合比を調節して固相混合、粉砕し、噴霧乾燥することによって、不純物の含量を調節することができる異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極を移動することによって充放電が行われる非水電解質電池は、高エネルギー密度の電池であって、活発に研究開発が行われている。最近、Li吸藏放出電位が高いリチウムチタン複合酸化物が注目されている。リチウムチタン複合酸化物は、リチウム吸藏放出電位では原理的に金属リチウムが析出されず、急速充電や低温性能に優れているという長所がある。
【0003】
このようなリチウムチタン複合酸化物には、一般式Li(1+x)Ti(2−x)(x=−0.2〜1.0、y=3〜4)で表されるスピネル型チタン酸リチウムが含まれ、その代表的な例にはLi4/3Ti5/3、LiTiおよびLiTiOがある。この材料は正極活物質として従来から使用されてきており、負極活物質としても活用することができるため、電池の正極および負極活性物として今後の活用が基待される。これらはリチウム基準に1.5Vの電圧を有し、寿命が長い。また、充電−放電時の膨張および収縮を無視できるため、電池の大型化の時に注目される電極材料である。特に前記スピネル(spinel)型チタン酸リチウム(組成式:Li4+xTi12(0≦x≦3))は、充放電時の体積変化が小さく、可逆的に優れているため注目されている。
【0004】
しかし、スピネル型チタン酸リチウムの理論容量は175mAh/gであり、高容量化には限界があった。また、前記スピネル型チタン酸リチウムは、製造過程中で一部がルチル(rutile)型TiO(r−TiO)に相分離されてしまう。前記ルチル(rutile)型TiO(r−TiO)は、岩塩構造で電気化学的活性はあるが、反応速度が低く、傾いた電位曲線を有し、容量が小さいため、得られるリチウムチタン複合酸化物の実効容量を小さくする問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、異種金属をドーピングしてアナターゼおよびルチル型二酸化チタンの生成を抑制し、1次粒子のサイズを制御することによって初基容量およびレート特性が改善された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法、およびこれにより製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記のような目的を達成するために
i)リチウム含有化合物、チタン酸化物、異種金属M含有化合物および異種金属A含有化合物を両論比で固相混合する段階と、
ii)前記i)の固相混合物を溶媒に分散させ、0.3μm〜0.8μmの平均粒径を有する粒子を含有する時まで湿式粉砕してスラリーを製造する段階と、
iii)前記スラリーを噴霧乾燥して粒子を形成する段階と、
iv)前記噴霧乾燥された粒子を焼成する段階と、
を含み、下記の化学式で表される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法を提供する。
【0007】
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記異種金属Mは、Zrであり、前記異種金属Aは、Naであることを特徴とする。
【0008】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記Na含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびこれらの混合物から選択され、水酸化ナトリウムが湿式工程時に溶解が良好に行われるため好ましい。
【0009】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記Zr含有化合物は、Zr(OH)、ZrO、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする。
【0010】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記チタン酸化物は、アナターゼ型または含水酸化チタンであることを特徴とする。
【0011】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記リチウム含有化合物は、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムであることを特徴とする。
【0012】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記ii)段階では、溶媒として水を用い、ジルコニアビードを用いて2000〜4000rpmで湿式粉砕することを特徴とする。
【0013】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記iii)段階の噴霧乾燥する段階では、投入熱風温度を250〜300℃、排気熱風温度を100〜150℃で噴霧乾燥することを特徴とする。
【0014】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、前記iv)段階での焼成工程は、前記iii)段階での噴霧乾燥体を空気雰囲気、700〜800℃で、5時間〜10時間焼成することを特徴とする。
【0015】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法において、v)前記iv)で焼成された粒子を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする。本発明において、前記リチウムチタン複合酸化物を粉砕するための乾式粉砕法は、特に限定されないが、前記焼成により形成された粒子をマイクロサイズまで粉砕するために、具体的にはジェットエアーミルで粉砕することが好ましい。
【0016】
本願発明はまた、本願発明の製造方法により製造され、1次粒子が集合して形成された2次粒子であって、下記の化学式で表され、前記1次粒子の直径が0.5μm〜0.8μmであり、前記2次粒子の直径が5μm〜25μmであるスピネル構造であることを特徴とする異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を提供する。
【0017】
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明による異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のD50が0.7μm〜1.5μmであることを特徴とする。
【0018】
本発明による異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、Li4/3Ti5/3のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiOのメインピークの強度が1以下、ルチル型TiO(R−TiO)のメインピークの強度が1以下であり、LiTiOのメインピークの強度が5以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明はまた、本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質として用いる正極、または負極活物質として用いる負極を提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質として用いる正極を含有するリチウム二次電池、または本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を負極活物質として用いる負極を含有するリチウム二次電池を提供する。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明の製造方法は、原料化合物であるリチウム化合物、チタン化合物および2種の異種金属をドーピングするための異種金属含有化合物を同時に固相混合し、混合される2種の異種金属含有化合物の混合比を調節することによってリチウムチタン複合酸化物を製造することを技術的特徴とする。
【0023】
出発物質として用いるチタン酸化物含有化合物は、塩化物、硫酸塩または有機塩などのいずれでもよい。しかし、本発明のように放電容量または電池特性に優れたリチウムチタン複合酸化物を製造するために出発物質として用いるチタン酸化物含有化合物の結晶構造は、アナターゼ型二酸化チタンまたは含水二酸化チタンを用いることが好ましい。
【0024】
アナターゼ型二酸化チタンは、純度が95%以上、好ましくは98%以上である必要がある。純度が95%未満の場合、活性物重量当り容量が減少するため好ましくない。高純度、例えば純度99.99%のものを用いることもできるが、この場合、費用が高くなる。電極活性物の観点で考慮した場合、純度が98%以上であれば、粒径および形状の影響が高純度化の影響より大きくなる。
【0025】
本発明の製造方法において、出発物質として用いるリチウム化合物は、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、酸化リチウム、炭酸水素リチウムまたは炭酸リチウムのようなリチウム塩が可能である。
【0026】
本発明の製造方法において、前記ドーピングされる2種の異種金属のうち、異種金属Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記異種金属Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択されることを特徴とし、容量特性および構造的特性上、ZrとNaが同時にドーピングされることが好ましい。
【0027】
前記Naを含む化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたはこれらの混合物であることが好ましい。Zrを含有する化合物としては、Zr(OH)、ZrOまたはこれらの混合物であることが好ましい。
【0028】
本発明において、
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
に示される異種金属Mのドーピング量は0.以上1.以下であり、前記異種金属Aのドーピング量超〜以下であり、異種金属Mと異種金属Aの全体ドーピング量x+y以下であり、異種金属Mのドーピング量xと前記異種金属Aのドーピング量yは、8≦x/y≦9を満たすことが好ましい。
【0029】
前記異種金属Mのドーピング量が1.超過の場合には、伝導性がむしろ低下して電池の諸般性能が低下するおそれがあり、前記異種金属Aのドーピング量の場合には、異種金属のドーピングによる電池の安全性向上の効果が微々になる。
【0030】
本発明によるリチウムチタン複合酸化物を製造する方法は、出発物質としてリチウム化合物、チタン化合物、ドーピング金属を両論比で混合し、前記固相混合物を液体媒体中に分散させ湿式粉砕して作られたスラリーを公知の方法で噴霧して乾燥焼成することによって1次粒子が集合して形成された2次粒子の粗粒の粉末を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法においては、前記同時混合されたリチウム化合物、チタン化合物およびドーピング金属を分散媒に分散させた後、媒体攪拌型紛砕機などを用いて湿式粉砕する方法を用いることが好ましい。スラリーの湿式粉砕のために用いられる分散媒としては、各種有機溶媒、水性溶媒を用いることができるが、好ましくは水である。
【0032】
スラリー全体の重量に対する原料化合物の総重量比率は、50重量%以上であり、60重量%以下とすることが好ましい。重量比率が前記範囲未満である場合は、スラリー濃度が極端に希薄であるため、噴霧乾燥により生成された球形粒子が必要以上に小さくなったり破損したりしやすい。この重量比率が前記範囲を超えればスラリーの均一性を維持しにくい。
【0033】
スラリー中の固形物の平均粒子は、平均粒径D50が0.3μm〜0.8μmになるように2000〜4000rpmで湿式粉砕することが好ましい。スラリー中の固形物の平均粒径が過度に大きければ、焼成工程における反応性が低下するだけでなく、球形度が低下して最終的な粉体充填密度が低くなる傾向にある。しかし、必要以上に小粒子化するのは粉砕の費用上昇となるため、粉砕物の平均粒径は通常0.3μm〜0.8μmになる時まで湿式粉砕する。
【0034】
本発明のリチウムチタン複合酸化物粉体の噴霧乾燥により1次粒子が結合して2次粒子を形成し、前記1次粒子の直径が0.5μm〜0.8μm、2次粒子の直径が5μm〜25μmである粒子が生成される。
【0035】
噴霧させる手段は特に重要でなく、特定の孔サイズを有するノズルを加圧することに限定されず、任意の公知となった噴霧−乾燥装置を用いることができる。噴霧器は一般に回転円盤式とノズル式に大きく区分され、ノズル式は圧力ノズル型(pressure nozzle)と2流体ノズル型(two−fluid nozzle)に区分される。その他にも回転式噴霧器、圧力ノズル、空気式ノズル、ソニックノズルなどのように当該分野に公知となったすべての手段を用いることができる。供給速度、供給物粘度、噴霧−乾燥された製品の所望の粒子サイズ、分散液、油中水エマルジョンまたは油中水マイクロエマルジョンの飛沫サイズなどは噴霧手段の選択時に典型的に考慮される因子である。
【0036】
前記iii)段階で前記ii)のスラリーを噴霧乾燥する段階では、投入熱風温度を250〜300℃、排気熱風温度を100〜150℃で噴霧乾燥することが粒子の模様、サイズおよび結晶度を高めるために好ましい。
【0037】
このようにして得られた混合粉体は、続いて焼成処理される。焼成温度としては、原料で用いられるリチウム化合物、チタン酸化物、異種金属などその他の金属化合物などの種類によっても異なるが、通常600℃以上、好ましくは700℃以上であり、また通常900℃以下、好ましくは800℃以下である。この時の焼成条件は、原料組成にも依存するが、焼成温度が過度に高ければ一次粒子が過度に成長し、反対に過度に低ければ体積密度が小さく、また比表面積が過度に大きくなる。
【0038】
焼成時間は温度によっても異なるが、通常、前述の温度範囲であれば30分以上、好ましくは5時間以上、また通常20時間以下、好ましくは10時間以下である。焼成時間が過度に短ければ結晶性がよいリチウムチタン複合酸化物粉体を得にくく、また過度に長いことはあまり実用的でない。焼成時間が過度に長ければ、その後に解砕(pulverization)が必要になったり、解砕が困難になったりもするため、好ましくは10時間以下である。
【0039】
焼成時の雰囲気は、空気雰囲気で焼成するが、製造する化合物の組成や構造により窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることができる。これらは加圧して用いることが好ましい。
【0040】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法は、v)段階として、焼成された粒子を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする。前記焼成された粒子は、乾式粉砕法で粉砕することが好ましく、乾式粉砕法は特に限定されないが、前記焼成により形成された粒子をマイクロサイズまで粉砕するために、具体的にはジェットエアーミルで粉砕することが好ましい。
【0041】
本願発明はまた、前記追加的に乾式粉砕する段階により粉砕された粒子を提供する。本願発明において、前記粒子は、乾式粉砕により前記1次粒子間結合が弱くなって1次粒子が分離され、結果的に粉砕された粒子のサイズはD50が0.7μm〜1.5μmであることを特徴とする。
【0042】
本発明はまた、本発明の製造方法により製造され、下記の化学式で表される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を提供する。
【0043】
[化学式]
LiTi5−(x+y)12
(前記化学式中、前記Mは、Zr、Mg、Al、Ni、Co、Mn、Cuからなる群より選択され、前記Aは、Na、K、VおよびBからなる群より選択され、0.1≦x≦1.5、0<y≦1であり、x+y≦2、8≦x/y≦9を満たすものである)
本発明において合成される異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の各成分の組成は、混合時の各化合物の投入比、つまり、混合比により調整することができる。また、粉体特性である粒度分布、BET比表面積、タップ密度および圧粉体密度は、混合方法および酸化処理により調整することができる。
【0044】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、1次粒子が集合して形成される2次粒子状態で構成され、前記1次粒子の直径が0.5〜0.8μmであり、前記2次粒子の直径は5〜25μmであることを特徴とする。
【0045】
本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、スピネル構造であることを特徴とする。特に、本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、Li4/3Ti5/3のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiOのメインピークの強度が1以下、ルチル型TiO(R−TiO)のメインピークの強度が1以下であり、LiTiOのメインピークの強度が5以下であることを特徴とする。ルチル型二酸化チタンの主ピークが現れる位置は、2θ=27.4である。
【0046】
本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、不純物であって容量を減少させる前記ルチル型二酸化チタンの主ピークのサイズが1以下であり、ルチル型二酸化チタンの含量が非常に少なくて結晶性を高めるだけでなく、電池容量を増加させる効果を示す。
【発明の効果】
【0047】
本発明の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造方法は、異種金属を混合、粉砕し、噴霧乾燥することによってリチウムチタン複合酸化物の表面に2種の異種金属を適切な比率に調節してドーピングすることによって、従来、不純物として含まれていたルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタンおよびLiTiOの含量を減少させて容量特性および構造的特性に優れた二酸化チタンを製造することができ、本発明の製造方法により製造された異種金属がドーピングされた二酸化チタンを含む電池は、初基充放電効率およびレート特性が高い優れた電池特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の一実施例で製造された1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のSEM写真を示す。
図2図2は、本発明の一実施例で製造された1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むテストセルの容量特性およびレート特性を測定した結果を示す。
図3図3は、本発明の一実施例で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のSEM写真を示す。
図4図4は、本発明の一実施例で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のSEM写真を示す。
図5図5は、本発明の一実施例で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むテストセルの容量特性およびレート特性を測定した結果を示す。
図6図6は、本発明の一実施例で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物および比較例のリチウムチタン複合酸化物のXRD写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。しかし、本発明が下記の実施例により限定されるのではない。
【実施例】
【0050】
<実施例1>1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造
出発物質として水酸化リチウム1モル、アナターゼ型酸化チタン1モルおよび異種金属としてZr0.1モルの比率で固相混合し、水に攪拌しながら溶解した。
【0051】
ジルコニアビードを用いて3000rpmで粉砕した後、熱風温度を270℃、排気熱風温度を120℃で噴霧乾燥し、焼成温度を750℃、770℃の2種類にして酸素雰囲気で10時間熱処理し、ジェットエアーミルで乾式粉砕してジルコニウムがドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を製造した。
【0052】
このような方法で異種金属としてAl、Mg、Naをそれぞれ0.05モルの比率で混合してリチウムチタン複合酸化物を製造した。
【0053】
<比較例>
異種金属を含まないことを除いては、実施例1と同様にし、750℃で熱処理してリチウムチタン複合酸化物を製造した。
【0054】
<実験例1−1>SEM写真の測定
前記実施例1で製造された1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物のSEM写真を図1に示した。
【0055】
<実験例1−2>電池特性の評価−容量特性およびレート特性の測定
前記実施例1で製造された1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質とし、リチウム箔を相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(セルガードLLC社製、Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレータとし、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートが体積比1:2に混合された溶媒にLiPFが1モル濃度に溶けている液体電解液を用いて通常知られている製造工程によりコイン電池を製造した。比較例の場合も同様にコイン電池を製造した。
【0056】
前記比較例のリチウムチタン複合酸化物および1種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むテストセルの容量およびレート特性を測定し、その結果を図2に示した。図2でZr、Naをドーピングした場合、Al、Mgをドーピングした場合より容量特性およびレート特性が改善されることを確認することができる。
【0057】
<実施例2>2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の製造
前記実施例1で容量特性およびレート特性が優秀に測定されたジルコニウムとナトリウムの2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を製造した。
【0058】
出発物質として水酸化リチウム1モル、アナターゼ型酸化チタン1モルおよびジルコニウム0.05モルおよびナトリウム化合物として炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウム混合物の混合比率を0.006、0.008、0.01モルにそれぞれ変更させて固相混合し、水に攪拌しながら溶解した。
【0059】
ジルコニアビードを用いて3000rpmで湿式粉砕した後、熱風温度を270℃、排気熱風温度を120℃で噴霧乾燥し、750℃、770℃の酸素雰囲気下で10時間熱処理し、ジェットエアーミルで乾式粉砕して2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を製造した。
【0060】
<実験例2−1>SEM写真の測定
前記実施例2で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物およびZrだけが0.05モルドーピングされた粒子のSEM写真を図3に示した。図3で2種の異種金属をドーピングする場合にも粒子サイズは変わらないことを確認することができる。
【0061】
図4に前記実施例2で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物の1次粒子のサイズを測定した結果を示した。1次粒子のサイズが0.564〜0.757umと測定されることを確認することができる。
【0062】
<実験例2−2>電気化学特性の測定
前記実施例2で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を正極活物質とし、リチウム箔を相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(セルガード社製、Celgard 2300、厚さ:25μm)をセパレータとし、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートが体積比1:2に混合された溶媒にLiPFが1モル濃度に溶けている液体電解液を用いて通常知られている製造工程によりコイン電池を製造した。
【0063】
前記実施例2で製造された2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物を含むテストセルの容量およびレート特性を測定し、その結果を図5に示した。図5で2種の異種金属であるZrおよびNaをそれぞれ0.05モル、0.006モルドーピングし、750℃で熱処理した実施例の場合、比較例のリチウムチタン複合酸化物を含むテストセルよりレート特性が最も大幅に改善されることを確認することができる。
【0064】
<実験例2−3>XRDの測定
前記実施例2で製造された2種の異種金属としてZrおよびNaをそれぞれ0.05モル、0.006モルドーピングし、750℃で熱処理した場合、リチウムチタン複合酸化物および比較例の異種金属をドーピングしていないリチウムチタン複合酸化物のXRD写真を図6に示した。
【0065】
図6で本発明の実施例による異種金属としてNaおよびZrの2種の異種金属がドーピングされたリチウムチタン複合酸化物は、スピネル構造であり、Li4/3Ti5/3のメインピーク強度を100とする時、アナターゼ型TiOのメインピークの強度が1以下、ルチル型TiOのメインピークの強度が1以下であり、LiTiOのメインピークの強度が5以下であることを確認することができる。異種金属としてドーピングされたNaおよびZrがアナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタンおよびLiTiOなどの不純物の含量を調節することによって、電池性能が改善されることが確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6